【コラム・坂本栄】土浦の市立中学校で起きた「いじめ問題」を本コラムで最後に取り上げてから8カ月がたちました。169「懸案に苦慮する市議会…」(2023年10月17日掲載)では、議会の文教厚生委員会が調査に乗り出すことを伝え、車いす中学生へのいじめの実態が解明されると期待していましたが、不発に終わったようです。
市民に冷たい市長回答
この問題が本サイトにアップされたのは9カ月前のことです。記事「いじめをなぜ止められなかったのか 保護者が再調査求める…」(23年9月3日掲載)では、息子さんが市立中在学中(2019年4月~2022年3月)に受けたいじめの実態が詳しく報じられています。
息子さんは市外の私立高に進み、今は中学時代のいじめからは開放されています。それにもかかわらず、保護者は、当時の実態を解明して再発防止の教訓にすべきだと考え、市教育委員会に再調査を求めました。しかし、市長の回答(22年6月15日付)は「… 既に、教育委員会からメール、電話、対面などで、ご回答およびご説明をさせていただいておりますので、改めて回答する事項はありません」と、門前払いでした。
そこで保護者は、教育行政をチェックする市議会の文教厚生委に、「うちの息子が(3年間も)経験したようなことが2度と起こらないよう、議会が市教育委をきちんと指導するよう要望する」文書(2023年10月2日付)を送り、議会の調査を求めました。
中途半端な議会の調査
保護者によると、この要望への回答(2024年3月28日付)が議会から届きました。その結論は、「…教育委員会の担当者の〇〇様に対する対応については十分なものと認められました。最終的に市が顧問弁護士の意見を仰いだ上で〇〇様への対応を終了した判断についても支持するものであります」と、再調査は不要とする市長の判断を是認しています。
私は、168「…いじめ回答拒否、個人情報保護が盾」(23年10月2日掲載)で、いじめに関わった生徒、対応した先生たちのプライバシー保護を理由に、再調査を渋る教育委や議会の姿勢に疑問を持ち、「…プライバシー保護を心配するのであれば、文教厚生委を非公開の秘密会にし、固有名詞をA、B、C、D…にすればよい」と提案しました。
ところが、文教厚生委は、保護者と息子さん、いじめに関わった生徒、問題に対処した先生たちを調査の場に呼ばず、「教育委員会およびこども未来部の担当者から当時の手続きの妥当性を中心に聞き取り調査を行った」だけだったそうです。話を聞いたのは、対応に問題はなかったと言い張る市の職員のみということですから、これでは調査の体を成しません。
議会は行政をチェックする議会としての仕事を怠り、教育行政を担当する職員に言いくるめられたようです。
市民<役所ファースト?
以上の流れから明らかになったのは、市はいじめ問題から逃げ回り、教育委の対応にミスはなかったと言い続けていることです。市民ファースト(第一)であるべき市政が役所ファースト(大事)になっているようです。市民からの疑問や苦情をかわすために弁護士を雇い、そのアドバイス=市の対応に問題なし=に頼るという守勢にも笑えます。
市の再調査見送り、議会の執行部追認もあり、息子さんのいじめ問題から教訓を引き出そうとする保護者の試みは頓挫しています。でも、調査を求めるプロセスで、市長、教育委、議会はあまり当てにならないという別の教訓を得ることはできました。(経済ジャーナリスト)