古典主義的意匠の外観が評価
国の諮問機関である文化審議会(佐藤信会長)は24日、土浦市東真鍋町の土浦市民会館(クラフトシビックホール土浦)を登録有形文化財(建造物)に登録するよう文科相に答申した。建築音響工学の大家として知られる佐藤武夫(1899-1972)が設計した。建物正面の列柱と、正面全幅の大階段など古典主義的意匠による外観が造形の規範となっていると評価された。
コンサートホールが登録有形文化財になるのは県内で初めて。関東では最大規模になる。官報に告示後、登録される。
同市民会館は1969年に完成した。地方自治体が所有する音楽などの多目的ホールとしては先駆け的な施設だ。建物の設計を担当したのは佐藤武夫設計事務所(現佐藤総合計画)で、主宰する佐藤武夫は建築音響工学の大家、古典主義建築の専門家として名をはせた。
大小の講堂やホールを総称したものをオーディトリアムと呼ぶ。単一の音楽ホールではなく、あらゆる催しものとそれに集う多人数が活用する多目的ホールとして計画され、様々な機能を用途目的に応じて独立して使用しながら、総合した一括使用が行える施設という特徴を持つ。近年、多目的ホールにはそのような機能が標準で備わるが、当時からオーディトリアムを目指す文化施設が増えつつあった中で、土浦では極めて早い時代にこれが実現していた。

施設の内装は、低域の吸音を重点に置き、素材や構造がまとめられたという。音響設備だけでなく、ホールの照明も意匠と機能を両立させた美しいデザインで表現されている。
市民会館は佐藤晩年の建築であり、当時の若手技術者が実際の設計を仕上げているが、音響実験に関してユニークな話がある。
音波が音源から伝播する経路を観察する方法を佐藤は自ら開発し「煙箱法」と名付けた。金属鏡で作った断面模型をガラス箱に収め、音ではなく光を使い、タバコなどの煙を充たす。後光が射すような光を当てると反射の経路が判り、音の伝播にも応用できるという仕組みだ。市民会館の音響性能は、こうした工夫の蓄積からもたらされている。
土浦市民会館は鉄筋コンクリート造3階建て、建築面積約3250平方メートル、延べ床面積5920平方メートル。築51年経った2020年には、意匠を保全しながら約21億6300万円かけて改修工事を実施し、耐震補強のほか、外壁の塗装や補修、大ホールや小ホールの客席の全面交換、トイレの改修やエレベーター新設などを実施した。吹き抜けのホワイエは当時のまま。
市文化振興課によると、登録申請に向けては、2021年11月に文化庁の調査官が現地確認し、今年2月、市が登録を申請した。
24日の答申を受けて安藤真理子市長は「大変うれしい。今から50年以上も前に県南地域の文化振興の拠点施設として建設された施設が、当時の外観・内装をできるだけ生かした大規模改修工事を経て、登録されることは、歴史ある本市において大変意義深い。半世紀にわたり、多くの皆様に愛されてきた当施設をこれからも一層ご利用いただき、文化芸術活動の発展につながるよう願っています」などとするコメントを発表した。
今回の登録により、県内の登録有形文化財(建造物)は295件になる予定。土浦市民会館は文化・福祉系施設に分類されるもので、県内には旧共楽館(日立武道館 日立市)、幕末と明治の博物館別館(大洗町)、個人医院など5件の登録建物が存在する。(鴨志田隆之)
➡土浦市民会館の過去記事はこちら(2020年5月16日付)
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