土曜日, 10月 10, 2026
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九州大の安達千波矢氏に江崎玲於奈賞 有機LEDを高性能化

ナノサイエンスやナノテクノロジー、量子化学の分野で、顕著な業績を挙げた研究者を顕彰する2025年度の江崎玲於奈賞に、九州大学工学研究院の安達千波矢主幹教授(62)が選ばれた。茨城県科学技術振興財団(つくば市竹園、江崎玲於奈理事長)が28日発表した。安達氏は、スマートフォンや薄型テレビの表示画面に用いられている有機LEDの研究者で、新しい発光分子をつくり出し、有機LEDの高性能化に取り組んだ。第三世代の有機LEDの実用化に向けた道を開く研究だと評価された。

同賞は2004年度に創設され、いずれもノーベル賞を受賞した江崎理事長のほか、白川英樹氏、野依良治氏、小林誠氏らが審査委員を務める。受賞者には副賞として協賛の関彰商事から1000万円が贈られる。今年ノーベル化学賞を受賞した京都大学の北川進氏は2013年に第10回江崎玲於奈賞を受賞している。江崎賞の受賞者がノーベル賞を受賞したのは初めてで、江崎理事長は「今後も(江崎賞受賞者の中から)ノーベル賞受賞者が出ることを期待している」と語った。

安達主幹教授が研究する有機LED(有機EL)は、有機材料に電気を流した時に発光する現象を利用した表示デバイスで、1987年に米国で、薄い有機材料の膜を二層重ねる構造が考案されて実用化が実現した。一方、発光効率が最大25%であるなどの課題があり、効率を高めるための研究が続けられている。

安達主幹教授は1988年、薄い二層の膜の間に、三層目の膜を入れた構造を初めて実現し、材料選択の自由度を広げた。さらに発光層の分子を量子化学に基づいて分子設計して創製し、90%を超える発光効率を達成した。続いて蛍光材料など三つの材料で発光層を構成すると、ハイパー蛍光と呼ばれる高効率の発光が得られることを示した。

白川氏は「ナノサイエンス、ナノテクノロジー、量子効果を駆使した研究で、省エネ効果が高い」とし、野依氏は「安達さんは旅する科学者。九州大学で学位を取得してから六つの研究施設に移り、移籍するたび新しい着想を手にしたのではないか。若い研究者のロールモデルとなるさっそうとした科学者」だと語った。小林氏は「従来の発光メカニズムとは違う、発光効率を飛躍的に上げることを緻密(ちみつ)な分子設計で実現した。将来の有機LEDの道を切り開くと大いに期待している」と評価した。協賛の関正樹 関彰商事社長は「授賞式でご家族と一緒にお会いできるのを楽しみにしている」などと話した。

一方、顕著な研究成果を収めた県内の研究者に贈る「つくば賞」(副賞は500万円)は、全固体電池の研究開発に取り組む物質・材料研究機構の高田和典フェロー(63)が選ばれた。若手研究者が対象の「つくば奨励賞」(副賞100万円)は、断熱材技術の展開と社会実装に取り組む物質・材料研究機構のウー・ラダー主任研究員(44)と、水中における通信と測位を実現する音響無線技術の研究に取り組む筑波大の海老原格准教授(39)に授与されることが決まった。

つくば賞の高田フェローは、現在使われているリチウムイオン電池が、可燃性の有機溶剤を用いているため大型化によって安全性が低下することから、不燃性の固体電解質を用いる全固体リチウム電池の開発に取り組み、全固体電池のエネルギー密度と出力特性を現行のリチウムイオン電池に匹敵するまでに向上させた。間もなく実用化されようとしている車載用電池の開発や再生可能エネルギーの貯蔵に大きく貢献すると期待されている。

つくば奨励賞のウー主任研究員は、微粒子を利用して粒子間の空間を制御し、ひじょうに低い熱伝導率を有する断熱材の開発に成功した。断熱材は安全で安価なアモルファスシリカ材質の流動性固体で、材料を微細化して粉体を作製し、断熱性を制御し熱伝導率を低減した。使用可能温度が-253℃~1300℃と広範で、従来の断熱材と比べて優れた性能と経済性を兼ね備えた材料であることから、自動車、家電、建築物など多岐にわたる分野での応用が見込まれている。

海老原准教授は、海中でロボットやセンサー、カメラなどをインターネットに接続して通信し、海洋環境をモニタリングしたり、海洋資源を管理したり、災害を予測などする海中IoT実現の基盤技術である水中音響通信を研究する。電波がほとんど伝わらない水中で、電力対策やドップラー対策を確立し、音波を利用した効率的で安定した通信技術の開発に取り組んでいる。(鈴木宏子)

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