ホーム 土浦 【土浦建築探訪】㊥ 市役所旧庁舎 同じ街に二つ残す

【土浦建築探訪】㊥ 市役所旧庁舎 同じ街に二つ残す

【鴨志田隆之】老朽化と狭あい化によって、土浦市役所旧本庁舎(同市下高津)の移転新築をどうするかという問題は、1990年代に候補地や財源をめぐって白熱の議論が繰り返された。

その後、バブル経済崩壊や2008年のリーマンショックにより景気低迷の時代を迎える。11年の東日本大震災の地震被害も重なり、旧庁舎は建築物としての利用が難しくなっていた。

13年2月、土浦駅前の再開発ビル「ウララ」から旧イトーヨーカドー土浦店が撤退。現在の市役所が移転してから久しい。

現在、旧庁舎は立ち入り禁止になっているが、映画やテレビのロケ地として活用されている。18年のNHK連続テレビ小説「半分、青い。」の劇中に東美濃の地方都市にあるバスセンターとして建物外観が登場し、映画「仮面ライダー平成ジェネレーションズ」では一部館内も映し出された。

自然の地形をシンボルに

旧庁舎とは、どんな建築だったのか。この建物は市民会館より5年早い1963年11月、市民会館と同じ佐藤武夫の設計によって完成した。建設地となった高台、藤塚山は豪族の塚の跡といわれ、庁舎以前に旧海軍の関係施設として使われていた場所だ。

佐藤と、この建物の図面を直接引いた弟子の宮本忠長(1927~2016年)は松や杉に囲まれ、市域(当時)のどこからでも、霞ケ浦の沖からさえ遠望できる立地環境を重視したと、当時の建築雑誌に宮本自身が手記を寄せている。

そこから考えられた庁舎は、計上された予算から鉄筋コンクリート造で4階から6階と考えられた。最大で海抜40メートルに達する建物頭頂部の案は、しかし回避され、藤塚山をできる限り維持し、むしろ自然の地形こそをシンボルへと描き直した。そうして誕生したのが、旧庁舎だった。

閉庁直後の旧庁舎

土浦市は現在、将来の公共施設運営規模を想定し、保有する公共施設の総延べ床面積のうち30%を縮減するスタンスだ。統廃合がそれにあたるが、旧庁舎自体は、仮に解体してもこの縮減率に貢献できない。ならば活用の道があるかというと、耐震基準を満たさず老朽化しておりそのままにもできない。

17年度に策定された市立地適正計画には、同敷地は転用または売却という基本方針が打ち出されているが、実際には手つかずだ。

ここで視点を変えて眺めてみると、1人の建築家が同じ街に心血を注いだ建築を二つ残しているというアングルが見えてくる。市民会館と旧庁舎を後世に残る名建築と呼ぶかどうかは、そこに住まう人々に委ねられる。

佐藤武夫は奇しくも、旧庁舎完成の年に、日光東照宮の火災で焼失した「鳴竜」を完全復元している。(続く)

◆土浦市役所旧庁舎=同市下高津1-2-35。1963年11月開所。敷地面積1万7820平方メートル。建物は鉄筋コンクリート造、地上3階地下2階建て、延べ床面積6880平方メートル。市役所が15年9月24日に土浦駅前に移転したのに伴い閉庁した。

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