つくば駅に近い同市東新井に、座席のみでも利用できるカフェ「そらいろラウンジ(LOUNGE)」がオープンし、話題を集めている。食事や飲み物を提供するが、メニューを注文せず座席のみを予約して持参したお弁当を食べたり、パーテーションで仕切られたスペースを個室のように使用することもできる。
障害者就労支援事業を営む民間企業「風」(つくば市稲荷前、山川宏社長)の所属団体である就労支援施設「アシタエ-ラボ(ASHITAE-Lab)」が9月13日にオープンした。アシタエ-ラボは今年5月に同市花畑から一部移転し、作業所を運営したり障害者が作ったフラワーアレンジメントなどを販売する。今回のカフェ開業は地域社会との接点を広げる試みとなる。
プロジェクト責任者の室野智佳さん(27)によると「オフィスなどが多い東新井周辺は、お昼どきの飲食店が混雑して昼食をゆっくりいただけないケースがある。ウェブからの予約によってこの問題を解決したい。席のみ利用の場合、お弁当を持参していただくことも可能。お客様が自分だけの時間を得たいというリクエストも想定し、その場合はパーテーションを使って個室化したスペースを利用できる」と話す。
事前に予約して席を確保できるため、確実に昼食の場所と時間を確保でき「ランチ難民」にならずに済む。
利用時間はランチタイムが午前11時30分から午後2時まで、イブニングタイムが午後3時から5時30分まで。ランチタイムは座席を事前予約できる。いずれの時間帯も「席のみ利用」が可能だ。
ランチタイムの人気メニューは、ランチプレート(税込み1000円)やドリンクサービス(同700円)。席のみ利用なら500円(同)という料金設定も含め、市内にありそうで無かったカフェスタイルだ。食事や飲み物を注文すれば座席代500円は不要。
「私どもは福祉事業に従事する企業なので、料金については利益追求してはならないという理念がある」と室野さん。
アシタエ-ラボは就労継続支援B型の施設だ。同A型が、雇用契約を結び就労規定と賃金を設定するのに対し、B型は、雇用契約を結ばず就労支援を通して要支援者を社会に送り出すことが前提。もちろん就労の対価は提供することとなっており、その原資にはアシタエ-ラボでのフラワーアレンジメントなどの販売や、そらいろラウンジの売り上げが活用される。
「そらいろラウンジは、カフェというスタイルを用いて地域のお客様とつながりを持とうと考えた。アシタエ-ラボ全体でもその姿勢は共通。気づいていただき、楽しみ親しまれる場所を目指しています」と室野さんはいう。
カフェオープンにあたり、明るく生命力のある表現をしたいと、店外にある白壁に壁画を描く企画が立ち上がり、つくば市在住のアーティスト、飯泉あやめさんを起用した。飯泉さんは、独創的な技法と表現で作品を描き、各地で個展を開いている。
飯泉さんは「初めはアートの創作を軸にした教室のようなものを依頼され、プランを練ってきた。コロナ禍でそのプランはまだ実現していないが、代わりに壁画を描いてくださいと、話が大きくなりました」と話す。
飯泉さんは9月初めに4日間をかけて絵を仕上げた。素材は飯泉さんのモチーフの一つである「花」。「いのち」の躍動を意味するという。
「植物は生命力の象徴であり、中でも花は私たちにポジティブなエネルギーをもたらしてくれる。このイメージが、福祉に出合い、つながる場所というイメージにふさわしいと評価してもらった」と飯泉さん
壁画は幅4メートル、高さ1.6メートルほどの大きさ。「風」や「アシタエラボ」の理念やイメージから、空色を基調とした色彩を強調している。(鴨志田隆之)
◆そらいろラウンジはつくば市東新井19-6。ホームページはこちら。ランチタイムの座席はLINEで予約できる。問い合わせは電話029-896-9655(同)。