日曜日, 4月 2, 2023
ホーム コラム 船は軽いから水に浮く《続・気軽にSOS》129

船は軽いから水に浮く《続・気軽にSOS》129

【コラム・浅井和幸】船は軽いから水に浮きます。と言っても鉄の塊が軽いと言えるのでしょうか。地球上にあるものはすべからく万有引力の法則をもって地球に引っ張られている。いわゆる物は下に落ちる。あれっ? ヘリウムが入った風船は浮いているなと思う。そうだ、ヘリウムが入った風船は軽いから浮いているんだと考える。

この流れはおおよそ間違っていないと思います。でも、風船より軽いと思われる、ティッシュ1枚や糸くずは下に落ちますね。軽いから浮いて空まで届いていたヘリウム入りの風船と、ゆっくりでも落ちていく糸くずは何が違うのでしょうか。何か引っかかりますね。

この「軽い」という抽象的な言葉が、「引っかかり」の原因となります。軽いとは、何キロ以下が軽いのでしょうか?と考えるのは間違いです。この場合、軽いというのは風船や糸くずの重さが問題ではありません。それぞれの体積に対する重さが、同じ体積の空気より軽いか重いかで、空気に浮くか落ちるかの違いとなります。

冒頭の鉄の塊である船も同じです。船は中が空洞で空気がたくさんあるので、同じ体積の水よりも軽いから浮くわけです。

分かろうとする努力や姿勢が大事

このように基準が違うと、同じ言葉でも全く別のことを指し示し、全く別のふるまいをしてしまいます。明日はいつもよりも早めに家を出るから、早めに用意をするんだよと伝えます。いつもは、8時に家を出ているとします。さて、「いつもより早い」は何時を指すでしょうか。6時30分でしょうか。それとも7時59分59秒でしょうか。

一つの場所でほうきを動かしているだけの子どもがいました。教室全てを掃いてほしいと思った先生は、もっと一生懸命掃除をしなさいと注意しました。その子は、一生懸命一つの場所を倍のスピードで掃き始めました。

一生懸命に頑張っているけれど悪循環を起こしている人に対して、もっと頑張れと言うこと。我慢することも、頑張ることと似た性質があります。頑張ること、我慢することにも、ある程度の心身の余裕が必要です。場合によっては、頑張ることや我慢することのためには、休憩することや手を抜くことも必要になってくることもあります。

うまくいっていない時には、より慎重に、より正確に状況を把握して、より慎重に言葉を選んで使うことが大切です。「より正確に」が大切で、私たちは真に物事を正確に捉えること自体が出来ないのですから、「より正確に」なのです。

分かった気にならず、分かろうとする努力や姿勢を取り続けることは、分かり合えることに近づくとても重要な要素となるでしょう。(精神保健福祉士)

1コメント

guest
名誉棄損、業務妨害、差別助長等の恐れがあると判断したコメントは削除します。
NEWSつくばは、つくば、土浦市の読者を対象に新たに、認定コメンテーター制度を設けます。登録受け付け中です。

1 Comment
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー

注目の記事

最近のコメント

最新記事

開幕戦、男女共に勝利 つくばFC

つくば市を本拠地とするサッカークラブ、つくばFCの男女各トップチームが1日、ホームグラウンドのセキショウチャレンジスタジアム(つくば市山木)で今季開幕戦を迎えた。プレナスなでしこリーグ2部開幕戦の女子は1-0、関東リーグの男子は3-1でともに勝利を挙げ、幸先の良いスタートを切ることができた。 新加入の2人が決勝点 女子 2023プレナスなでしこリーグ2部第1節(4月1日、セキショウチャレンジスタジアム)つくばFCレディース 1―0 ノルディーア北海道前半0-0後半1-0 つくばFCレディースは、昨季2戦2分と拮抗した勝負を繰り広げたノルディーア北海道(札幌市)に対し、前後半合わせて19本のシュートの雨を降らせ、被シュートはわずか2本に抑えるという圧倒的な試合を見せた。 「選手が走り続け、走りきるサッカーができた。開幕戦でみんな緊張しているので、トレーニングでやってきたことをやりきろうと声をかけた。一人一人のキャラクターを生かし、毎回違うヒロインが出てくるようなサッカーがしたい」と、白馬聡監督のコメント。

3年半ぶり完全開催 筑波山神社で御座替祭

筑波山神社(つくば市筑波、上野貞茂宮司)で1日、山頂の本殿と中腹の拝殿で神座が入れ替わるとされる春の御座替祭(おざがわりさい)が催され、祭りのメーンとなる、みこしをかついで中腹の集落を巡る神幸祭(じんこうさい)が3年半ぶりに行われた。新型コロナの影響で神幸祭は2020年の春から6回連続中止となっていた。 男体山と女体山山頂の本殿にある神衣(かんみそ)を新しい衣に取り替える「神衣祭」(かんみそさい)、中腹の拝殿で舞いを捧げる「奉幣祭(ほうべいさい)」と併せて、三つの祭りが2019年秋の御座替祭以来、3年半ぶりに完全開催された。 中腹の筑波山神社周辺ではソメイヨシノと山桜がほぼ同時に満開になり、花びらが春風に舞う様子が見られた。コロナ5類移行が間近に迫る中、マスクを外して見物する人の姿もあった。 神幸祭では黄色や赤、白など色とりどりの装束をまとった約150人の行列が、中腹の筑波山六丁目から筑波山神社拝殿まで、急な坂道や階段をみやびやかに登った。今回は稚児行列も最後に加わった。 御座替祭は毎年4月1日と11月1日の春と秋に催されており、観光資源としての役割も担っている。御座替祭の日に限り、3代将軍徳川家光が江戸時代初期に建造し県指定文化財になっている、神社境内入り口の神橋(しんきょう)を渡ることができる。この日は午前9時30分から午後4時まで特別開門が行われ、たくさんの観光客が橋を渡ったり、記念写真などを撮っていた。 神橋を渡るみこし

「強くしなやかに成長する4年間に」 筑波学院大で入学式

筑波学院大学(つくば市吾妻)で1日、2023年度の入学式が行われ、スーツに身を包んだ新入生たちが新生活のスタートを切った。教職員や理事、保護者らも参列し門出を祝った。中国やウクライナなど5カ国からの留学生7人を含む新入生51人が入学し、新入生代表の田井真央(たいまひろ)さんが「大学生活をよりよいものにし、不安定な社会で貢献できる人材になりたい」と宣誓した。 望月義人学長は式辞で「漫然と過ごす4年と、竹のように節目を付けながら強くしなやかに成長する4年との差は極めて大きい。教職員は皆さんを心から支え応援する」と述べた。また2学期制のカリキュラムを今年度から春、夏、秋の3学期制に、1コマ90分だった授業を105分にしてアクティブラーニング(能動的学習)の時間を増やし、論理的思考力、応用力を養っていくと話した。 式辞を述べる望月義人学長=同 橋本綱夫理事長は「4年間どういったことをやりたいか、探究、模索して見つけていってほしい」と激励し、同大のルーツとなる東京家政学院大学の創設者で家政学の先駆者だった大江スミの建学の精神を同大が現在も受け継いでいることを話した。 今年、同大は東京家政学院大学の創立から数えて100周年を迎える。また4月からは同校の運営法人名が日本国際学園大学に変更された。来年度より大学の名称も日本国際学園大学に変わる。

少子化対策は女性の過剰負担になる 《ひょうたんの眼》56

【コラム・高橋恵一】少子高齢化を「国難」と言った元首相がいたが、昨年の出生数が80万人を割り込んだ結果を受けて、少子化が大きな国政の課題とされている。 少子化が進めば、若い世代が減少し、高齢者を支える社会保障制度が維持できない。さらに、いずれ人口が減り、経済規模が縮小し国力も低下するとされ、少子化問題を説明するために、若者が数人で高齢者を持ち上げて支えているイラストを示し、将来、少子化で支える若者が減る一方で高齢者が増え、若者が支えきれないとして、世代間の確執をあおり、「高齢者の集団自決の薦め」まで登場している。 その論点を整理する必要がある。人口の年齢区分を、国連(WHO世界保健機構)は、年少人口(0~14歳)、生産年齢人口(15~64歳)、老年人口(65歳以上)に3区分している。前述イラストの若者が生産年齢人口、高齢者が老年人口である。また、国連は、年少人口と老年人口を足して、生産年齢に対して従属人口という区分も設定している。つまり、働き手人口全体で、子どもも老齢人口も支えているのだということである。 国連は、高齢化を7.0%からとし、日本の場合1970年に達し、その後も高齢化が急速に進行した。一方、日本の年少人口は、1970ごろまで40%弱あり、従属人口は、50%を下回っていた。このように生産年齢人口比率が高い時代を「人口のボーナス期」というが、大戦終結後の欧米や日本にほぼ同時期に現れ、世界的な高度成長期となった。イラストで言えば、支える若者数が、子どもと老齢者を上回っている時代である。 スウェーデンなどのヨーロッパ諸国は、この余力を、高齢社会に備えて堅実に生かし、1人当たりのGDPは、世界のトップ水準を維持している。日本は、この「余力」を生かすべき時代を、「ジャパンアズナンバーワン」などと浮かれ、社会保障費や医療、教育費などを軽視して、ヨーロッパ社会に後れを取った。 男性優位社会を根底から直せ

記事データベースで過去の記事を見る