石岡・八郷で記念イベント
石岡市八郷地区で、かやぶき屋根の保存活動に取り組んできた市民団体「やさと茅葺き屋根保存会」が法人化し、「NPO法人 筑波山麓かやぶき文化保存会」(新田穂高代表理事)として新たな一歩を踏み出した。4日、法人設立を記念するイベントが同地区の廃校を活用した朝日里山学校で開かれ、団体関係者や地元住民ら約45人が節目を祝った。今後は保存活動に加え、里山文化を学ぶ講座や散策会、かやぶき民家の見学会などを企画し、地域と都市部を結ぶ交流の場づくりにも力を入れる考えだ。
同法人には現在、石岡市内や近隣地域のかやぶき家屋の所有者をはじめ、活動を支えるボランティア、かやぶき職人、研究者など約70人が参加する。会員は、毎年のかや刈りや、かやぶき作業の補助をしてきた。近年は東京や神奈川など県外の会員も増えているなど、地域を超えた関心が広がっている。
高エネ研のかや場が活動のきっかけ

前身の「やさと茅葺き屋根保存会」の発足は2004年、地域住民らがかや葺き屋根の保存を目的に設立した。管理されたかや場が減り、以前はあった、住民が協力し作業する習慣がなくなるなどし、かや集めに苦労していた。そんな中、つくば市大穂の高エネルギー加速器研究機構(高エネ研)の敷地内にかや場があると知った関係者らが集まり、かや刈りをしようと設立したのが同保存会の始まりだった。
この日の記念講演では、団体設立のきっかけをつくり、長年にわたり八郷地区のかやぶき民家を調査・研究してきた筑波大学名誉教授で日本茅葺き文化協会代表理事の安藤邦廣さんが記念講演した。八郷地区の人々が、かやの確保に苦慮していた際、高エネ研敷地内にかや場があることを紹介したのが安藤さんだった。今後も研究機関と調整し作業するには団体組織が望ましいとの安藤さんからの助言が、設立につながったという。高エネ研でのかや刈りは、現在も毎年続く中心的な活動となっている。
安藤さんは1980年代初めに筑波大学に赴任して以来、八郷地区のかやぶき家屋を調査。「八郷は気候が穏やかで首都圏にも近く、豊かな農家が多かった。そのため福島県会津地方などから多くのかやぶき職人が移り住み、職人の集住地となった」と説明し、地域の歴史や暮らしの中で育まれてきた、かや葺き文化の特徴を紹介した。

里山と都市結ぶ拠点目指す
代表理事の新田穂高さんは「かやぶき屋根を残していくには、これまで以上にしっかりした組織基盤が必要だと感じていた。法人化によって多くの人や団体の協力を得やすくなり、若い世代にも活動を継承していける体制を整えたかった」と法人化の経緯を説明した。
その上で「かやぶき屋根は農村文化の象徴。私たちが大切にしてきたのは建物そのものだけでなく、家主や職人、ボランティアのつながり」だとし、「石岡市でもかやぶき屋根は半数以下に減り、(かやの調達の難しさや経済的な負担から)世代交代の中で『負の遺産』と受け止められるケースもある。一方で若手職人が育つなど希望も生まれている」と話した。
さらに新田代表理事は「昨年は高エネ研をはじめ10カ所のかや場でかや刈りを行った。筑波山麓のかやぶき文化や里山を地域資源として生かし、地域住民や都市住民、子どもたちをつなぐプラットフォームを目指したい」と展望を語った。
理事で石岡市在住のかやぶき職人、渡辺大さん(43)は「かつては、ふき替えもかやの調達も地域住民が担っていたが、現在は家主が作業に関わることが難しく、職人が材料調達まで担うため負担が大きくなっている」と現状を説明。「会ではかやの確保を支援し、空き家となったかやぶき民家の紹介なども行っている。今後もかやぶき家屋を残す取り組みに力を入れたい」と話した。
県内出身で、居住していた東京都から八郷地区に地域活動協力隊員として移住し、同保存会の事務局を務める山藤香織さん(45)は「地域の暮らしや自然との関わり方を学べることは何にも代え難い経験。こうした営みを次世代へつないでいけるよう活動を続けたい」と話していた。(柴田大輔)






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