【コラム・坂本栄】つくば市長の五十嵐さんがミニ新聞の記事に名誉を毀損(きそん)されたと裁判に持ち込んだ件については、本欄でも2度ほど取り上げました。その審理が5月半ばから水戸地裁土浦支部で始まるそうです。今回は、訴状で名誉を傷付けられたと主張している22箇所のうち、「総合運動公園用地返還交渉の回数」と「市職員増=人件費増の読み方」について検証します。
原告・市長の主張は「言い訳」
先のコラム「名誉毀損提訴を笑う」(3月1日掲載)と「名誉毀損提訴を検証する」(4月5日掲載)では、記事と訴状を読み込んで、▼総合運動公園用地返還「公約」は、返還の実現(記事)VS単なる返還交渉(訴状)、▼谷田部給食センター建設「補助金なし」は、当初からの計画(記事)VS県との交渉不調の結果(訴状)―と整理しました。その詳細と私の「判定」については、青字でリンクを張った上記コラムをご覧ください。
ざっくり言うと、いずれも、五十嵐さん側の論述は「言い訳」に終始しているということです。ミニ紙の市政批判記事を「フェイク(虚偽)」と主張するこの提訴、五十嵐市政にプラスではなく、マイナスに作用するかもしれません。
「返還交渉」は「アリバイ作り」?
▼検証「運動公園用地返還交渉の回数」:ミニ紙が「(公約では都市再生機構=URと用地を返還する交渉をすると大見えを切ったのに)わずか1度交渉しただけで(返還を)断念した」と書いたのに対し、訴状で「複数回の交渉を行っている」と反論している箇所です。原告の主張は、複数回交渉しているのだから、交渉は1度だけという記事は間違いであり、市長としての名誉を毀損された―という組み立てになっています。
複数回とは何回なのか? 市が議会に提出した資料(今年2月19日付)によると、たった2回だったそうです。市長がUR首都圏ニュータウン本部を訪ね、「市の意向を伝えた」のが1回目、「文書による回答を求めた」のが2回目。市長選挙時の熱い返還キャンペーンを思い起こすと、やる気に欠ける「アリバイ作り」のような交渉でした。それに、1回も2回も「わずか」ですから、裁判でその回数を争うのは「喜劇」ではないでしょうか。
市人件費の著増は「ファクト」
▼検証「市職員増=人件費増の読み方」:ミニ紙が「(五十嵐市政3年目の人件費は前市長時代の人件費に比べて年間)7億6500万円も増えており、(前市長時代の)努力が水泡と消えてしまいます」と、行革の後戻りを批判。これに対し訴状で「あたかも原告の施策により市の税金を無駄に使っているかのように誘導するもの」と論述している箇所です。
この記事は「市総務部人事課資料」を使って書かれており、4年前に比べ、正規職員が195人、非正規職員が326人増え、その結果、人件費が年7億数千万円増えたことを示すデータも掲載されています。問題はこの数字をどう読むかですが、五十嵐市政の行革の「緩さ」は否定しようがありません。ミニ紙の筆が走ったとしても、記事の数字は「ファクト(事実)」であり、フェイクではありません。(経済ジャーナリスト)