火曜日, 12月 23, 2025
ホーム文化【戦後74年の夏】6 ドローンで見る廃墟 鹿島海軍航空隊跡地の風化 ㊤

【戦後74年の夏】6 ドローンで見る廃墟 鹿島海軍航空隊跡地の風化 ㊤

【相澤冬樹】夏がくれば思いだす――のは、霞ケ浦に突き出た美浦村の東端、鹿島海軍航空隊跡地のこと。戦争遺跡があったり、心霊スポットの廃墟があったり、水辺レジャーの基地があったり、夏になると注目を集める場所だ。なかでも霞ケ浦分院跡地と呼ばれる遺構は、解体されるのか保全されるのか、「この先どうなる?」とよく聞かれる。許可を得て敷地内に入れてもらい、ドローン撮影を敢行した。

病院跡地に立つ旧軍施設

美浦村大山、南に小野川の河口が切れ込んだ半島状の土地約23ヘクタールが、鹿島海軍航空隊跡地である。国交省管理の水防拠点になっている湖岸の約1.5ヘクタールを除けば、ほぼ7ヘクタールずつ3等分できる。北から国立環境研究所水環境保全再生研究ステーション、中央の東京医科歯科大学霞ケ浦分院跡地、南の堤防の内側にある民有地である。戦後すぐに払い下げられた民有地以外の土地は、1946年から霞ケ浦分院が占めたが、1974年に北側部分は環境研(当時、国立公害研究所)に移管となった。

霞ケ浦分院は1997年までに閉院、最終的に中央部約7.6ヘクタールの土地を村が取得した。中央を走る道路の南側部分3.3ヘクタールは村営のメガソーラー発電所となっており、北側部分4.3ヘクタールは周囲をフェンスで封鎖している。分院跡地と呼ぶが、残っている建造物は旧軍時代からのものばかりである。ランドマークになっている煙突とボイラー棟が、深い夏草のなかから立ち上がっている。

許可を得て取材チームが入った8月初め、旧軍時代の司令部、分院時代の本部として使われた鉄骨コンクリート造の庁舎は民間のセキュリティー会社に管理が委ねられていたが、役場職員がその施錠を解こうとしたところ、ドアノブがバールのようなもので破壊されていて、ついに開錠できなかった。ドローンを飛ばすと、夏草は陸屋根になった屋上にも根を張って繁茂している。

いわゆる廃墟マニア、あるいは心霊マニアの関心をひくスポットだけに不心得の侵入者が後を絶たないらしい。建設から80年、無人となって20年、すさまじい風化のなか保全は成り立つのか、今後が注目されているのである。

左に南岸、右に東岸のスロープ。中央突端部にカタパルトの跡がある=撮影:伊能正登(TSORD)

湖岸のスロープから飛び立つ

鹿島海軍航空隊は、阿見町にあった霞ケ浦海軍航空隊の水上班が移転して1938(昭和13)年に開隊した。水上機の操縦訓練を行う練習航空隊であり、のちに予科練出身の飛行練習生が93式水上中間練習機で猛訓練を行った。いわゆる「赤とんぼ」の水上機バージョンで、滑走のためのフロートが付いていた。第二次大戦末期には特攻作戦の搭乗員として多くを送り出した。

大山地区の突端は、湖に2方向が面していることから、横風に弱い水上機の離陸に適していた。東側と南側の滑走路は、水面に向かって傾斜のついた斜路になっていて、大山スロープ(ゲレンデ)の呼び名がある。

この湖岸施設は現在も国交省管理の水防拠点に位置づけられており、2009年、土木学会選奨の土木遺産に認定された。斜路はプレジャーボートやジェットスキーの船艇搬入に便利なことから近年レジャー客の利用が増え、夏場の週末ともなるとごった返すほどの人出になる。民有地は艇庫が立ち並び、水上飛行機の格納庫も置かれている。(つづく)

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県立高不足「つくばエリアは新たな事態に」 市民団体が学習会

人口増加が続くつくば市やTX沿線に県立高校の学級増や新設を求めている市民団体「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」(片岡英明代表)の学習会が21日、同市役所コミュニティ棟で開かれ、片岡代表が「最近の受験事情について」と題して基調報告した。 県教育庁が県高校審議会に示した資料で、2033年度のつくばエリア(つくば市など4市)の中学卒業見込者数が25年度の4393人より226人増えて4619人になり、日立エリア(日立市など3市)と水戸エリア(水戸市など4市)を合わせた4425人を上回ると推計され、さらに38年度にはつくば市1市だけで中学卒業見込者が3392人と見込まれ、日立エリアと水戸エリアを合わせた3429人に匹敵する推計値が出されていることについて(8月27日付)、「つくばエリアは新たな事態に直面している。このままではさらに重大な事態になる。県立高校の緊急な定員拡大と本格的な対応が必要」だなどと話した。 つくばエリアの県立高校は、学級数で比較すると25年度はすでに県平均より17学級(定員680人分)不足しており、今後も県立高校の定員が変わらないと、子供の数がさらに増える33年度はさらに深刻になるとした。 改善した高校はプラスに ここ数年の受験事情については、つくば市は生徒数が増加する中、県立高校の定員不足に加えて土浦一高の付属中設置による定員削減の影響で、市外の高校に通学する生徒が多く、通学に苦労している。土浦市の生徒は、つくば市から土浦市内の高校への流入と土浦一の定員削減で、志願者数が多い高校が毎年変わるなど進路決定に迷いがみられ、土浦一高を受験するのを控えている。牛久市は進学志向が強いまちだが、土浦の高校から牛久市内の高校への回帰がみられるーなどと昨今の傾向を話した。 一方で、①2024年度に定員を1学級(40人)増やした牛久栄進高校は地元牛久市とつくば市からの入学者が増えた ②25年度に普通科を新設したつくばサイエンス高校は入学者が増え、地元のつくば市内の中学校からも入学者が増えた ③筑波高校は今年度、つくばサイエンス高の普通科設置で入学者数が減ったと考えられるが、地域とつながる小規模多面高校として学校づくりをしているーなどと分析し、「26年の募集定員の発表で、期待していた竹園高校の定員増は実現しなかったが、改善した部分は確実にプラスになっているので、改善が必要だと県に要望していきたい」などと話した。 「当時者として不安しかない」 学習会には小中学生の子供をもつ父母らも参加した。都内からつくば市に転居してきたという母親は「都内から来て、つくばは高校の通学費が月3万円くらいかかると聞き、こんなに通学費が高いんだと驚いた。公立高校は行きやすいところにあることが重要なのに、当事者として不安しかない」などと語った。中学生と高校生の子供をもつ土浦市の母親は「つくばに高校の選択肢が少ないことで、つくばの生徒が土浦や牛久に流れていて、土浦の生徒は、土浦一高と二高は、つくばの出来る子が行くところだと思うようになっている。近い高校に行ける仕組みをつくってほしい」と訴えた。 PTAの活動で、隣のつくばみらい市で開かれた会合に参加したというつくば市の父親は「(会合に)つくばみらい市の小田川浩市長も参加していて、小田川市長から『市立高校をつくりたい』という話を聞いた。つくばみらいには伊奈高校があり、市役所に入ってくる卒業生がすごくいい子だから、地元で地元の子を育てたいということだった。そうしたこともいいのではないか」などと話した。(鈴木宏子)

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