火曜日, 4月 22, 2025
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「つながり」テーマに現代社会を可視化 若手写真家ら11人が作品展

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作品展の会場の様子。左から吉野絢人さん、横井るつさん、高田憲嗣さん、田嵜裕季子さん=つくば市吾妻、県つくば美術館

県つくば美術館

「つながり」をテーマに、災いや病、故郷と家族、人間と土地の営みなど、現代社会が生み出す課題と向き合う若手作家ら11人による作品展「ヴィジュアル・コミュニケーション展2024 リレイト:ここではないどこかで」が、8日から県つくば美術館(つくば市吾妻)で始まった。今年で8回目の開催で、写真を中心とした映像作品や立体物など約50点が展示されている。

何気ない風景に対立の歴史

都内在住の写真家、吉野絢人さん(23)は、都内や周辺地域にある「境界未定地」をテーマにした写真作品「リフレーミング」を展示する。展示スペースの中央に並ぶ2点の写真は、水辺に茂る木々を池の両岸から写したものだ。一見、どこにでもある穏やかな景色に見えるが、この池は東京都と埼玉県の境にあり、境界線が決まらない「境界未確定地」なのだという。東京都側の都立水元公園(同都葛飾区)と、埼玉県側の県営みさと公園(同県三郷市)の間に挟まれた「小合溜井(こあいためい)」と呼ばれる池で、江戸時代、8代将軍の徳川吉宗が、農業用の水を貯めおくために造らせた。完成当時から両岸の住民の間で境界を巡り対立が続き、互いの主張が折り合わずに現在に至っている。近年は、葛飾区と三郷市の間で締結された管理協定により水面管理が行われているという。

争いごとを抱えていることなど知らずに、何気なく見てきた風景が、対立の歴史の中にあることへの驚きが、一連の作品の出発点になったと吉野さんは話す。その他、東京都大田区と江東区の間で境界が未確定の「中央防波堤埋立地」、東京都と千葉県の間で協議が続く旧江戸川の河口、現在も住所がない有楽町駅前にある商業施設「銀座インズ」の一帯などを写した作品が並ぶ。

吉野さんは「境界地を撮影し、複雑で曖昧な境界線のあり方を提示した。境界線や差異を乗り越え、両者の関係性を捉え直し、共に生きる方法を模索した」とし、「どの場所も、目に見える形で争いがないということがテーマに取り組むきっかけになった。今後は、日本各地、国と国の境界にも関心を持っていきたい」と話す。

「交換可能な風景」もふるさとに

高田憲嗣さんの作品「メモリーズ 僕たちの平成/令和の原風景」

デザイナーで兵庫県在住の高田憲嗣さん(30)が、埼玉県在住の勝見知周さんと制作したのが、写真と立体物による「メモリーズ 僕たちの平成/令和の原風景」だ。高田さんは、「交換可能な風景」と揶揄(やゆ)される、赤や黄、青など原色が彩るドラッグストアーやファミリーレストランの看板が並ぶ、郊外の国道沿いの風景を「唯一無二の心のふるさと」と感じる人たちがいると話す。自身も郊外出身だという高田さんは「田舎に行くと、どこに行っても同じ風景があると批判的に言われるが、ちょっと待てよと思った。その土地の人にとっては、そこでの出来事こそが故郷の思い出、原風景となり、自分の思い出とも重なる」と作品作りの動機を語る。被写体に選んだのは、チェーン店が増え始めた平成初期に青年期を過ごした30代から40代の人物が中心だ。それぞれが、部活帰りに友人と過ごしたファミリーレストランや、子どもの頃に胸をときめかせて通ったファストフード店での楽しかったり切なかったりする思い出話を、高田さんによる明るいポップなデザインで写真と共に作品に仕上げている。

東京都在住の写真家、横井るつさん(23)は、コンクリート壁や床、草が茂る地面にプロジェクターで投影した人肌や体の一部の写真を、カメラで再撮影した映像作品「フムス」を展示する。ラテン語で「地面」「大地」を意味するタイトルで、横井さん自身が都市での暮らしで感じることができずにいた自然とのつながりを再認識する試みだと話す。「本来、人間も動物も、人生が終わったら土に帰っていくもの。東京で生きてきて、地球で生きているのにこの循環を感じられなかった。人の体を映写し、都会に体を染み込ませることができないかと考えた。土葬のイメージもある」と語る。

ほかに、沖縄の与那国島に数年間通い、土地の死生観を表現した野口哲司さんの「ユノリ」や、自身の病に向き合う根岸雄大さんの「メイト」、認知症の祖母の過去と現在に向き合う都築真歩さんの「来し方行く末」、コロナ禍で突きつけられた日常と非日常の境界に独自の視点で向き合う熊万葉さんの「アウト オブ タッチ」などが展示されている。

分断をつなぎ直したい

主催団体「ビジュアルコミュニケーション研究会」の代表で、市内在住の写真家、田嵜裕季子さんは「現在の社会では、国や地域間での戦争だけでなく、SNS上など様々な場所で対立が起きている。問題を二元論で捉えて分断してしまう考え方をつなぎ直す必要がある。サブタイトルの『ここではないどこか』には、誰もがここではないどこかでつながっているという思いを込めた。一見、つながっていないように見えている人や問題も、根っこではつながっていることを感じてもらいたい」とし、「作品を通じて人と人、作品と鑑賞者などのつながりが生まれる展示になれば」と語った。(柴田大輔)

◆「ヴィジュアル・コミュニケーション展2024 リレイト:ここではないどこかで」は14日(月)まで、つくば市吾妻2-8、県つくば美術館で開催。開館時間は午前9時30分から午後5時(最終日は午後3時まで)。13日(日)午前10時30分からキュレーターの菊田樹子さんを招いてギャラリートークを開催。いずれも入場無料。イベントの詳細は、ビジュアルコミュニケーション研究会の公式サイトへ。

稲敷市の「江戸崎まんじゅう」店《日本一の湖のほとりにある街の話》28

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イラストは筆者

【コラム・若田部哲】1929年創業、稲敷市の老舗和菓子店「青木菓子店」。看板商品である、農林水産大臣賞受賞の「江戸崎まんじゅう」をはじめとする様々なお菓子が、稲敷市の代表的銘菓として広く親しまれています。今回は、現在の当主である3代目の青木利浩さんにお話を伺いました。

江戸崎まんじゅうは、一見するとお土産ものでおなじみの茶色い温泉まんじゅう。ですが、一口食べれば違いにビックリ。しっとりしつつ、ふうわり柔らかな皮と、こし餡(あん)のバランスが絶妙です。一度に大量に購入していくお客さんが多いのも、さもありなんというもの。

そのおいしさの秘密を伺うと「一般的なおまんじゅうの3~4倍、手間と時間をかけて丁寧に製造しているところです」と青木さん。味はもちろんのこと、蒸籠により強く蒸し上げる昔ながらの製法でないと作れない、しっとりとした食感も重要なポイントだそうです。

夏は1日1500個、寒い時期には2000個以上も売れるというこのおまんじゅう。それだけの手間がかかるものを作り続けるのはさぞ大変なことと思いますが、青木さんは「自分が食べておいしいと思うまんじゅうになるように」と、日々さらなる技術の向上を心がけているとのこと。

どら焼き、黒どら、青栁も

他にも様々な定番商品と季節商品があり、江戸崎まんじゅうに次いで「どら焼き」「黒どら」「青柳」の順に人気とのことですが、私のイチオシはどら焼き! おいしいパンケーキのような皮と、餡のコラボレーションは、ワンダフルなおいしさです。草餅や水無月(みなづき)といった季節ごとのお菓子もおいしいので、ぜひ折々にお求めになり、コンプリートしてみてください。

ご家庭で甘味を心ゆくまで楽しむも良し、贈答にも良しと、使い勝手バツグンな稲敷市の名店。茨城県南の味として、ぜひお楽しみください。(土浦市職員)

<注> 本コラムは「周長」日本一の湖、霞ケ浦と筑波山周辺の様々な魅力を伝えるものです。

➡これまで紹介した場所はこちら

名称変更し「筑波嶺会」美術展開幕 筑波銀行ギャラリー

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8日開幕した筑波嶺会土浦支部美術展の会場=つくば市竹園、筑波銀行つくば本部2階ギャラリー

油彩画、水墨画など70点を展示

筑波銀行の退職者でつくる筑波嶺会 土浦支部美術展が9日、つくば市竹園の筑波銀行つくば本部ビル2階ギャラリーで始まった。今年6月に会の名称を筑波銀行OB会から筑波嶺会に変更して初めての開催となる。同会に所属する22人が、退職後に制作した油彩画、水墨画、写真、書、彫刻、陶芸など約70点を展示している。

筑波嶺会のメンバーら

これまでのOB会という名称は男性を対象とする言葉であることから、名称を変更した。筑波山は男体山と女体山の二つの嶺からなる名山であり、男女等しく活躍する組織を目指すという意味から「筑波嶺会」とした。

同銀行は2010年に関東つくば銀行と茨城銀行が合併し誕生した。水戸支部、下妻支部、土浦支部の3支部があり、今回、昨年に引き続き土浦支部が主催した。メンバ―は60代後半から70代後半が中心という。

彫刻「七福神一刀彫」を出展した糸賀士さん

糸賀士さんは、彫刻「七福神一刀彫」を3点展示する。1本の小刀で彫る一刀彫という技法を使いた。1体出来上がるまで2カ月かかるという労作だ。「(七福神なので)全部で7体作らなければならないので、これからもずっと続けていきたい。七福神は福を寄せると言われていることからも、作品を作り、みんなに幸せになってもらえれば」と語った。

松葉統子さんは陶芸部門で「落ち葉皿セット」など9点を展示する。「小学校のPTAをやっている時に陶芸と出合った。今では窯が使われなくなり、作ることが出来なくなった作品も展示している。今回は還元焼成や酸化焼成など、いろいろな手法を使ったものを並べている」と語る。

松葉統子さん陶芸作品(下)

筑波嶺会会長の徳宿彰さんは、水墨画の作品「カラマツの全景」など3点を制作し展示する。「水墨画は退職後に始めたが、奥が深いのでこれからも続けていきたい」と語り、「数ある銀行の中でもこうした芸術を愛好する退職者の会があるのは稀有(けう)なこと。親睦を深める中で作品の質も高めていけたら」と述べた。

水墨画を出展した筑波嶺会会長の徳宿彰さん

同土浦支部美術部会長の染谷則嘉さんは「今年も昨年に引き続き開催出来て大変うれしい。ただ、高齢になったり、引っ越したりして会員が減っており、昨年より3名減となった。今後は新しいメンバーをもっと発掘したい」と述べる。(榎田智司)

◆会期は15日まで。会場はつくば市竹園1-7。開館時間は午前9時30分~午後4時30分(最終日は午後3時まで)。期間中無休。入場無料。

共生社会創成学部を新設 筑波技術大 2025年度から

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大学本部がある、筑波技術大天久保キャンパス

「手に職」から社会創造へ

聴覚と視覚に障害のある学生を対象とした国内唯一の国立大学、筑波技術大学(つくば市天久保、石原保志学長)が2025年度から新しく、共生社会創成学部を開設する。定員10人の視覚障害コースと、5人の聴覚障害コースの2コースを設ける。新学部は、障害者を含む多様なマイノリティが活躍できる社会システムをつくる人材の育成を目指すとし、専門技術を持つ職業人の養成に取り組んできた同大にとって新しい取り組みとなる。

一方、定員割れとなっていた学科で定数を減らす。保健科学部保健学科鍼灸学専攻が定員10人減、産業技術学部産業情報学科が3人減、同総合デザイン学科は2人減とする。

筑波技術大学の石原保志学長

石原学長(67)は「学生の希望職種が多様化する中で、大学で高度な技術を身に付け就職しても、職場での障害に対する理解不足から力を発揮できずに体調を崩すなどして離職してしまうケースを見てきた」とし、新学部では「総合的な教養と権利意識を身につけ、自信を持って意志を伝え、障害があっても生き生きと能力を発揮できる社会を主体的につくっていける人材を育てたい」と語る。

国は企業や公的機関に対して一定の割合で障害のある人の雇用を義務づけ、今年4月からは、音声読み上げソフトや筆談の導入など、障害の特性に応じた配慮をする「合理的配慮」が民間企業にも義務化された。障害者が社会に参加するための制度が整備されつつある一方で、「障害者を採用する企業の人事は合理的配慮の意味を知っていても、配属される現場での理解が進んでいない」と石原学長は言う。

障害者政策をつくる人育てる

新学部で重視するのは、必要な支援と権利を自ら説明する「セルフアドボカシー」と、意見を伝えるために自分に自信を持つための「エンパワーメント」だと石原学長は説明する。在学中は、誰もが必要とする情報に簡単にたどり着き利用できる「情報アクセシビリティ」や、障害と社会の仕組みを学ぶ「障害社会学」などの授業を通じて人権意識を身に付ける。一般的なインターン制度よりも長期間、企業や公官庁で就業体験をすること通じて、より実践的な職場体験を積むカリキュラムも設ける。

さらに、バリアフリーに対応する企業に障害当事者として意見を伝えるなどし、社会の一員としての意識を育てるとする。他大学と共同で授業を行うなどの連携や、新学部内で視覚障害学生と聴覚障害学生が同じ教室で学ぶ授業を通じて自分の障害を客観的に知る機会を積極的に設けるなどするという。

石原学長は「周囲との関係の中で、適切な環境を自発的に作るための具体的なスキルを在学中に身に付けさせたい」とし、「障害のない人と障害者が同じ暮らしを送ることができる環境作りを、国や自治体の中に入り、政策として築いていける人材を育てたい」と話す。

「昔は(障害者は)かわいそう、自分の身内に生まれるとできるだけ隠しておこうという時代があり、障害があることで、どうしても遠慮してしまう人もいる」とし、「これからは、それぞれが身を置く場所で生き生きと能力を発揮できる、自信を持って自分から前に出ていける学生を育てていきたい。今は、社会環境が整備され、将来の可能性はますます広がっている。障害があってもなくても、誰もが幸福に生きられる社会の実現を目指し、それぞれの社会環境に合わせて能力を発揮できるような意識と意欲をもってこの大学に入ってきてほしい」と呼び掛ける。(柴田大輔)

広告宣伝に取り囲まれている生活《ハチドリ暮らし》42

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写真は筆者

【コラム・山口京子】家にいて本を読む時間が増えています。関心のある問題については、もっと知りたいと、その問題に取り組んでいる団体の通信やブックレットを購読しています。そうして感じることは、「さまざまなメディアが発信する広告のイメージと、実際の商品や企業の実態との隔たり」です。

わたしたちの暮らしは広告宣伝に取り囲まれているといっても過言ではないでしょう。また、テレビのニュース番組は、ニュースを報道しているというより、娯楽番組になっているような気がします。どんどん新しいニュースが流れ、情報として消費されるだけで、その背景や構造について問うことはないまま、知るべきことが知らされていないのでは…。広告が伝えることではなく、事実がどうなっているのか…。

たとえば、毎日の営みである食べること。テレビのコマーシャルではさまざまな食品が”おいしい・たのしい・お手軽・お得”といったイメージで流れています。ですが、違和感はありませんか。

次々あふれ出る疑問

こんなにたくさんの食品があれているのはなぜかしら? 原材料はなにかしら? 生産地はどこかしら? どんな作られ方をしているのかしら? 農薬や成長ホルモン、抗生物質や添加物、遺伝子組み換えやゲノム編集などはどうなっているのかしら?

国が定める基準はどうなっているのかしら? 個別単体では基準値以下でも、複合的に多くの食品を長期間摂取すると人体への影響は大丈夫なのかしら? その作物や家畜を育てるために必要な水や肥料、エサなどはどのくらいなのかしら? 流通にはいくらかかっているのかしら?

製造段階・輸送段階などで消費するエネルギーや排出する二酸化炭素はどうなっているのかしら? この食品を食べた場合のカロリーや糖分、脂質、塩分はどのくらいなのかしら? ゴミとしてどんなものが、どのくらい廃棄されているのかしら? この商品価格の場合、生産者が得られる取り分は何割くらいなのかしら?

企業の利益はどのくらい出ているのかしら? この商品価格に占める広告宣伝費はいくらなのかしら? その業界団体はどんなロビー活動をしているのかしら? これからも食品は十分に供給されるのかしら?

自分で調べることが大事

ですが、現実に買い物に行けば、深く考えることなく、商品をカゴに入れている自分がいます。多様多彩な映像に覆われて、世界がカモフラージュされ、現実の商品の実際のところが分からなくなっているような…。

自分で調べるという習慣がますます大事になっています。そんなとき、農林水産省ホームページ(HP)の、新たな国民運動「食から日本を考える。ニッポンフードシフト」の記事が目に留まりました。(消費生活アドバイザー)

福来みかん自家製パウダー 料理に添え提供 筑波山麓のレストラン

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筑波山麓にあるレストランキャニオンの平田ことさん

郷土の味と歴史伝えたい

筑波山麓にあるつくば市下大島のレストランキャニオンは、来客が注文した料理に地元特産の福来みかんの皮から作った香りのパウダーを添え、料理の味わいを深めるサービスを提供している。このパウダーは同店専務の平田ことさんが手作りしており、市販はされていない。どんな手間がかかり、何を伝えようとしているのか。

福来みかんパウダー(左上)と引き立て合う料理

調べ物に興じる

ことさんは、同店の店主、平田貴夫社長の母親。創業者である故・平田和夫さんと半世紀、店を切り盛りしてきた。

最初は、地域で販売されている七味唐辛子の中に含まれる福来みかんの皮の粒に、どんな意味があるのだろうと疑問を感じたことが始まりという。ことさんは、調べ物に興じた。

福来みかんは、筑波山麓で広く栽培されてきた「橘(たちばな)」がもともとの出自として万葉集や常陸国風土記に出てくることを知り、ことさんは調べ物を通して、意外にも地元の食材から郷土の歴史を歩み、薬膳にも使われたなどの逸話を知ることとなった。

特産の福来みかん

「これはきっと、みかんの実のことを示しながら、どこかで皮を天日干しする利用方法が広まったのだなと考えた。そんなときに市の観光協会だったと思うが『福来みかんで何かメニューを作れないものか。地元の観光資源のような形で協力してほしい』という相談を持ち掛けられたんです」

そこで、店主の貴夫さんにメニューを開発してもらいながら、福来みかん自体をどうやって利用するか、ことさんは試行錯誤した。

乾燥に次ぐ乾燥の日々

福来みかんの皮は古くから陳皮(ちんぴ)と呼ばれ、皮を利用するレシピは、インターネットサイトでも紹介されている。七味唐辛子に利用するため皮を乾燥させて粉にするという作り方も、昔と変わっていない。

「よく水洗いした福来みかんを水切りして、皮を材料にするのは陳皮づくりそのまま。皮は水分がなくなるまで何日も乾燥させ、水分が抜けたところでミキサーにかけてすりつぶすが、粒の大きさをどの程度まで細かくするかは何度か試しながら決めていく。パウダーと呼べるまで粒を小さくしながら、風味を無くさないように容器に入れて密封する」

加工作業

キャニオンではこれまで、パスタ料理やカレーライス、豚肉を使ったハンバーグなど、福来みかんの風味を感じられるメニューを作り出している。定番の料理にもこのパウダーは提供される。味噌汁に振りかけても風味が良くなる。

「5キロくらいの量を生産者さんから買い付けると、当面は店で出せる分を確保できる。大量生産するような設備はないし、それができてもパウダーそのものを市販するというのはつくばの食文化に失礼な気持ちがあるので、うちの料理に添えさせてもらうだけで充分」

粒子状に加工された福来みかんの皮

間もなく福来みかんの収穫期がやってくる。平田家ではまた皮をむき、乾燥の日々が始まる。このパウダーは家庭でも作ることができるが、平田家の手間と苦労を思うと、食事に出かけていった方が良いかもしれない。

ところで、「実」の方は利用価値がないのだろうか。「マーマレードなどに使えると思うが、そこまでやってない。実については家族総出で食べています」。ことさんはにこやかに「苦みと酸味で大変よ」と言う。

レストランキャニオンでは、福来みかんの話を聞くこともできる。(鴨志田隆之)

レストランキャニオン

本サイトは発足から7年《吾妻カガミ》193

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トークセッションの様子

【コラム・坂本栄】このニュースサイトは今秋でスタートから7年目を迎えました。地域紙の元記者だったライターが核になり、市民記者も参加するネットメディアですが、なんとか形が整ってきました。そこで9月下旬、7周年記念の意味合いも込め、土浦の老舗料亭が保有するお宝の写真展、小説家と社会学者に土浦の歴史と文化を語ってもらうトークセッションを開きました。NPOメディア活動の延長上のイベントです。

写真展と討論会を主催

トークセッションの様子は、記事「…海軍予備学生の寄せ書き屏風…」(9月30日掲載)をご覧ください。また、写真展の内容については、記事「…霞月楼所蔵品展が開幕…」(9月24日掲載)をご覧ください。

開幕記事には、4年前の12回連載記事「霞月楼コレクション」へのリンクも張ってあります。今回の霞月楼所蔵品展は、この連載から選んだ写真を展示しようと、2020年秋に予定していたものです。ところが、コロナ禍で延期を余儀なくされ、4年後に実現しました。リンク先に飛べば、今回展示したコンテンツの数倍の写真とその解説をチェックできます。

また「グラーフ・ツェッペリン あの夏の飛行船」(2023年7月、早川書房刊)の著者・高野史緒さんと、「『軍都』を生きる 霞ヶ浦の生活史 1919~1968」(2023年2月、岩波書店刊)の著者・清水亮さんにお願いした「ツェッペリン伯号と湖都・土浦を語る」は全て録音録画し、YouTubeにアップしました。トークセッション記事の末尾にリンク先が張ってありますので、2時間の「語り」を視聴できます。

ネットメディアの強みは、サーバー内に格納した過去記事にアクセスできることです。また、他のサイトにリンクを張り、その内容を本サイトの記事で紹介する工夫もしています。さらに、Googleニュースなどのプラットフォーム経由でも本サイトの記事を読めます。

文字(テキスト)や写真(静止画)だけでなく、動画を扱えることもネットメディアの強みです。今回のトークセッションの録音録画は、土浦市内にスタジオを構えるネットテレビ局「Vチャンネルいばらき」にお願いしました。

大戦間に飛来した飛行船

巨大な飛行船が霞ケ浦畔の旧海軍航空隊基地に飛来したのは1929年8月のことでした。第1次世界大戦と第2次世界大戦の間、第1次大戦の反省の上に立って平和の必要が叫ばれ、経済的な豊かさが追求されていた時代です。まだ飛行機が珍しいころ、旅客船並みの飛行体が飛んできたわけですから、地域の住民は大騒ぎでした。

当時の資料を駆使して書かれた清水さんの本を読むと、ツェッペリン伯号を迎えた土浦エリアの熱狂がよくわかります。高野さんのSF小説は、土浦二高パソコン部の女子学生と光量子コンピューター研究所(場所は土浦市東真鍋にあった結婚式場マニフィカ跡)に仕事でやって来た男子東大生が時空を超えて出逢い、95年前に飛んできたツェッペリン伯号を目撃するという話です。

ツェッペリン伯号の乗員は霞月楼で開かれた歓迎宴に招かれました。このため、霞月楼には当時の写真がいろいろ残っています。ここで霞月楼所蔵品展とツェッペリン伯号がドッキング、「ツェッペリン伯号と湖都・土浦を語る」が実現しました。

2つのイベントは、土浦ツェッペリン倶楽部に手伝ってもらいました。同クラブの協力がなければ実現は難しかったでしょう。また、地元の有力企業や社会奉仕団体に協賛していただき、必要経費をまかないました。その意味で、各種法人の寄付によって運営しているNPOメディアらしいイベントになったと思います。(NEWSつくば 理事長)

5年ぶり ライブや模擬店も 学園祭「KVA祭」19日開催 日本国際学園大

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KVA祭実行委員と学友会のメンバー。左から小林亮太さん、野口千咲さん、菊地大輔さん、石嶋萌夏さん、大和田廉さん、柴田心歩さん、日高悠希さん=つくば市吾妻、日本国際学園大学

日本国際学園大学(旧筑波学院大学、つくば市吾妻、橋本綱夫学長)の学園祭「KVA祭」(大和田廉実行委員長)が19日開催される。大学の名称が日本国際学園大学に変わって初めての学園祭となる。コロナ禍で開催できなかった軽音サークルのライブや、学生による模擬店での飲食物販売を5年ぶりに開催する。

学生団体、学友会の会長で経営情報学部ビジネスデザイン学科4年の日高悠希さんは「学生が模擬店で食べ物を売るのはコロナ明けとなって初めて。そういった意味でも大変重要な意味がある学園祭になる。今年のKVA祭で本来の形を取り戻したい」と話す。

無駄な出会いはない

今年のテーマは「どのような出会いも無駄にはならない」という意味の「No Encounter is Ever Waste(ノー・エンカウンター・イズ・エバー・ウェイスト」。実行委員長の3年 大和田さんは「新たな世代の融合と、新しい大学名に変わった思いから付けた」とし「コロナ禍でサークルの引き継ぎがうまくいかなかったという苦労もあった」と思いを語る。

KVA祭の横断幕を、市内の大通りに架かる陸橋などに掲示してPRしている。横断幕は、実行委員で模擬店を担当する3年 菊地大輔さんと、広報を担当する2年 柴田心歩さんがデザインした。柴田さんは特設サイトでのPRも担当する。「先輩がデザインで関わっているのを見て、自分もできることはないかと実行委員会への参加を決めた」と話す。

KVA祭の横断幕デザイン

国際色豊か

模擬店は、留学生が多い同大ならではの国際色豊かな点が特徴だ。スリランカ人留学生らは母国のスパイスを利かせたフライドポテトを販売する。中国人留学生らは模擬店で、茶道や折り紙を体験できる「三銃士茶道折り紙屋台」を出店する。ほかに学友会が芋煮会を開いて販売する。

模擬店を担当する菊地さんは、食品を調理して販売するため保健所とのやりとりなどの準備で多忙な日々を送っていると話す。

外部からキッチンカーも出店し、ケバブ、クレープ、焼きそば、から揚げなどを販売する。キッチンカーを担当するのは実行委員の3年 野口千咲さんによると、アリーズケバブの店長は、同校の卒業生だという。

大教室では、お笑い芸人を招いたライブが午後0時30分から開催される。ほかに軽音サークルのライブが同会場で催され、学生バンド2グループが出演する。ギターの弾き語りやピアノ演奏なども予定されている。

お笑い芸人を呼ぶメーンイベントの運営は3年 石嶋萌夏さんが担当する。軽音サークルのライブ開催を担当する実行委員会副会長で2年の小林亮太さんは「私自身軽音サークルの部長であり、軽音ライブは5年ぶりなのでうれしい。成功させたい」と意気込みを語る。

実行委員長の大和田さんは「模擬店も出るので盛り上がったらうれしい。多くの人にご来校いただき、1日楽しんでいただきたい」と語る。(伊藤悦子)

◆KVA祭特設WEBサイトは、日本国際学園大学KVA祭2024 (craft-student.org)へ。

つながるハロウィン《けんがくひろば》11

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昨年の会場風景

【コラム・島田由美子、吉田絵里子】10月に入り、まちのそこここにハロウィンの飾りを見かけるようになりました。今回は、研究学園駅(けんがく)地域の活動団体と地域の商店や企業が連携して開催する「けんがくハロウィン2024」(10月26日開催)企画のいくつかをご紹介します。

パンプキンがいっぱい

「けんがくハロウィン」のメーン企画は、地域のお店を訪ねてお菓子をもらう“トリックオアトリート”です。31もの店舗が協力してくださるので、家族で歩いて、まちを再発見してください。お菓子は総合受付でお渡しするシールとの交換です。

“ハロウィンクラフト”では、ゴミ拾いで使ったゴミ袋や軍手をパンプキンに変身させ、梨袋を使ったランタンを作ります。ハロウィンにちなんだ“フォトスポット”をたくさん設置し、参加者と一緒に“バルーンアート”を作っていきます。

みんなで会場をパンプキンでいっぱいにして、フィナーレで一斉に風船を割りましょう。軍手パンプキンと梨袋ランタンは、駅前の街路樹に1週間飾り、けんがく地区をパンプキンでいっぱいにします。

仮装deいいね大作戦

今年、大きく変わるのが仮装イベントで、“仮装コンテスト”が“仮装deいいね♡大作戦”となります。つくば市イメージキャラクター「フックン船長」と「けんがくハロウィン2024」のオリジナルコラボステッカー5枚を先着600名様にお渡しいたしますので、「すてきだね」「いいね」と思った仮装参加者にステッカーをプレゼントしてください。

ステッカーは8種類あります。コンプリートを目指したり、交換し合ったりするのも楽しいかもしれません。

昨年までのコンテストは地域のお店のご厚意で豪華賞品がそろって大盛況でしたが、やや過熱化しており、軌道修正の必要性を感じていました。私たちけんがくまちづくり実行委員会は、けんがく地区の住民同士がつながったり、この場所に誇りや愛着を持つきっかけになってほしいと考えて「けんがくハロウィン」や「さくらまつり」を企画しています。

そこで今回の仮装イベントは、その目的によりフォーカスした「つながるきっかけづくり」になる企画へ変更しました。

「すてきだね」「いいね」

“仮装deいいね♡大作戦”で配布するステッカーは、けんがくハロウィンの場だけではなく、その後も住民の皆さんがあたたかい気持ちで「つながる」きっかけになってほしいと願っています。「すてきだね」「いいね」のようなポジティブな言葉が当たり前にあふれる街なら、ますます住みやすくなるのではと考えました。

ステッカーはこの日にしかないオリジナルで、けんがく地区周辺在住のデザインを学ぶ学生さんがデザインしました。たくさん描いていただいたデザイン案から8種類を選りすぐりました。私たちは地域のみんなで地域のイベントを創り、盛り上げていきたいと考えています。(けんがくまちづくり実行委員)

「けんがくハロウィン2024」のポスター

まちを巡って演劇鑑賞を 今年は神立駅周辺で 

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「つち浦々まちなか演劇めぐり実行委員会」の久保庭委員長(前列左)と実行委員会のメンバー

26、27日 飲食店5店で4劇団が回遊型イベント

まちの各所で上演される演劇を巡り、まちを歩きながら、演劇とまちの魅力を知ってもらおうと、土浦市神立地区で26日、27日、回遊型の演劇イベント「つち浦々まちなか演劇めぐり 神立編」(つち浦々まちなか演劇めぐり実行委員会主催、久保庭尚子委員長)が開かれる。昨年に続いて2度目の開催。昨年は土浦駅周辺の飲食店や寺社など10カ所を会場に、2日間で10団体が会場ごとの特色を生かした演劇を上演した(23年1月1日付同9月27日付)。今年は神立駅周辺の飲食店5店舗で、4団体が演劇や朗読劇などを上演する。

昨年はお寺や中華料理店で

「まちを巡りながら美術作品を楽しむというイベントが各所で行われている。演劇もそういった形で上演できたらと思った」と話すのは、主催団体の委員長で、朗読会や舞台の演出も手掛けるかすみがうら市在住の俳優、久保庭尚子さん。寺社や飲食店など普段は演劇会場としてはあまり使われない場所で開いた昨年の上演を振り返りながら、「お寺では背景に仏様があったり、中華料理店では1階と2階を利用したりするなど、会場に合わせた上演方法をアーティスト自身が考えた。照明も劇場のように暗くせずその場の照明を利用し、声の響きも劇場とは異なる中で、演じる方も、お客さんも、新鮮さを感じていたと思う」と話す。

車での移動が市民に根付く土浦で、実際にまちを歩きながら複数の上演会場を巡ってもらえるのか不安もあったというが、昨年は会場の地図が描かれたチラシを手にまちを歩く人たちが行き交い、「土浦を知るきっかけになった」「改めて演劇が好きになった」という声が、演劇を見にきた人からだけでなく、会場を提供した人たちからも聞こえてきた。

昨年、生家の古民家を上演会場として提供した、市内で設計事務所を営む高橋農さん(39)は「私は土浦に生まれて、東京で仕事をして、また土浦に帰ってきた。土浦を盛り上げたいという思いは強かった」と言い、「その一端が担えれば」と、今年は実行委員会のメンバーとしてイベント開催に臨んでいる。

いつものお店で気軽に楽しんで

今年は、神立地域の飲食店や製造業者などによる神立商工振興会が協力し、神立駅周辺にある「鳥吉 神立店」「喫茶・酒場 のすたるじあ」「居酒屋 寿々喜」「金澤屋」「中国料理 盛榮」の5店舗を会場に、「劇団ルート6」「三月劇場(斜三次)」「玉響~たまゆら~」「よませてヨマセテ」の4団体が朗読劇や演劇を上演する。

「鳥吉 神立店」「喫茶・酒場 のすたるじあ」「金澤屋」で上演されるのは、劇団ルート6の「Trash Fish A・B」。会場ごとに「A」と「B」の二つの演目を演じて、一つの物語を複数の視点で見つめるオリジナルストーリーで、同劇団の福田バツマルさん(48)が演出・脚本を手がける。

イベントの打ち合わせに参加する「劇団ルート6」の福田さん(左)

実行委員長の久保庭さんは「地元を盛り上げたいという思いがある。演劇を劇場で見ることに敷居の高さを感じる方もいるかもしれないが、いつも食事しているお店や、飲みに行っているお店で何かやっているぞ、という気軽な気持ちで、普段とは違ったお店の顔や雰囲気を味わいつつ演劇を楽しんでいただけたら。今後も続けていきたい」と語った。(柴田大輔)

◆「つち浦々まちなか演劇めぐり 神立編」は10月26日(土)、27日(日)、土浦市神立地区で開催。
鳥吉 神立店(神立中央1-10-16)=26日午前11時~、午後3時30分~、27日午前11時~、午後2時~、劇団ルート6が「Trash Fish -sideA-」を上演。
喫茶・酒場 のすたるじあ(神立中央2-3-2)=26日午後1時~、午後4時30分~、27日午後4時~、劇団ルート6が「Trash Fish -sideB-」を上演。
居酒屋 寿々喜(神立中央1-12-6)=26日午後2時~、27日午後7時~、3会場で上演の3作品を「美味しいお芝居」としてまとめて上演。27日正午~、三月劇場(斜三次)が「極私的演劇温故知新」を上演。
金澤屋(神立中央1-11-18)=27日午前11時~、玉響~たまゆら~が「金子みすずの詩歌(うた)〜音楽とともに〜」を上演、27日午後5時~、同劇団が「朱川湊人『栞の恋』」を上演。
中国料理 盛榮(神立中央1-14-4)=27日午後3時~、よませてヨマセテが「グリム童話『ねずの木』他」を上演。
◆各会場でスタンプを集めるとオリジナルのステッカーやトートバッグがもらえるスタンプラリーや、演劇を巡りながら演劇や神立のまちで撮影した写真をハッシュタグ(#)「つち浦々フォトめぐり」とともにSNSに投稿すると抽選でギフト券が当たるなどの企画も同時開催される。
◆チケットは、各会場での1演目を1回鑑賞できる「1演目券」が1000円、26日午後2時からと、27日午後7時から「居酒屋 寿々喜」で上演される3作品を見ることができるチケットは2000円。購入は専用の販売サイトへ。詳細はイベントの公式サイトへ。問い合わせは、つち浦々まちなか演劇めぐり実行委員会のメール(tsuchiuraura@gmail.com)か、電話029-896-3099へ。

はらぺこあおむしと森のくまさん《続・平熱日記》167

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絵は筆者

【コラム・斉藤裕之】南向きの掃き出し窓を開けると、そこには大きめの鉢が2つ。ひとつはレモン、もうひとつはコブミカン。どちらも膝の高さぐらいに剪定(せんてい)してある。レモンの方は何度か実がなったことがある。コブミカンは当時タイ料理が好きだった妻のためにたまたま見つけて買ったものだが、結局、その葉を使ってトムヤンクンを作ることはなかった。

いつまでも暑い日が続いたこともあって、エアコンをつけて閉めっぱなしだった掃き出し窓を久しぶりに開けてビックリ。レモンの葉がきれいに無くなっている。犯人はすぐに見当がついた。隣のコブミカンに目をやると、合計4匹のりっぱなあおむしがいる。すぐにでも、あおむしの強制退去といきたいところだが、数日後に虫好きの孫が来ることを思い出して、そのままあおむしに在留許可を与えることにした。

孫は「はらぺこあおむし」という絵本が大好きで、うちに来ると、大きな声ではらぺこあおむしの歌をよく歌っているのだ。そんな話をある友達にしたら、「うちにも金柑(きんかん)とスダチの木があるんだけど、同じ柑橘系でもあおむしはスダチが好きなのよ。一度スダチに着いたあおむしを金柑に移したことがあるんだけど、またスダチに戻ってきちゃって…」。そういえばうちの場合も、まずはレモンの葉っぱから坊主になっている。ということはレモンの葉を食べつくした時点で、あおむしたちは隣のコブミカンに引っ越していったということ?

ところ変わって、山口の果樹園。主にぶどうと梨を作っていて、ここで働く義妹は8月から9月いっぱいまではほぼ休みはないという。今年は台風の被害もなく天候にも恵まれ順調な収穫期を迎えられたと思いきや、農園にクマが出たらしい。「1頭は罠(わな)にかかったんじゃけど、もう1頭がなかなか捕まらんのよ」

聞けば、既に相当な被害が出ていて、確かにクマにとっても、やれ幸水だのシャインマスカットだのは一度口にしたらリピートしたくなるご馳走に違いない。はらぺこあおむし同様、パディントンやプーさんなど、絵本の中ではクマはとても愛らしいキャラクターとして描かれているが、実際のはらぺこクマさんは放っておくわけにはいかない。

「森のくまさん」という愉快な歌がある。親切にも「お嬢さんお逃げなさい」というクマさん。できればクマさんも人に会いたくないだろうに。かわいそうだが、害獣として駆除の対象になるのも仕方ないのか。

さて後日、やって来た孫はあおむしを見て大喜び。こちらとしては、早くさなぎになってもらわないとコブミカンも坊主になってしまうので気が気ではなかった。ところが翌朝、孫があおむしを見ようと掃き出し窓を開けたところ、あおむしが1匹になっていた。恐らく鳥に食われてしまったのだろう。「はらぺこあおむしははらぺこ鳥さんに食べられちゃった」

ちょうど義妹から梨とブドウが届いたので、東京に帰る孫に持たせた。結局、最後は人間が全部食っちゃうんだなあ。(画家)

2人世帯23%、4人世帯22%引き上げへ 水道料金値上げ条例可決 来年4月から

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水道料金を値上げする条例改正案の電子採決の様子。白が値上げに賛成の議員、青が反対の議員、灰色は欠席議員

つくば市議会閉会

つくば市議会9月定例会議最終日の4日、本会議が開かれ、水道料金を来年4月から平均15%引き上げる市水道給水条例改正(7月30日付9月3日付)のほか、市長退職金の金額をネット投票で決める市長給与特例条例など議案19件、認定7件などを可決して閉会した。

水道給水条例が改正されるのを受けて、水道料金の引き上げは来年4月から実施される。値上げは2018年以来。モデルケース別の試算では、一人暮らし世帯は15%、2人暮らしは23%、4人暮らしは22%の引き上げになるとされている。

水道料金の引き上げに対しては反対意見として小森谷さやか市議(市民ネット)から「今回の値上げ案の算出ベースとなっている企業債残高対給水収益比率350%と、資金残高30億円という数字を見直すべき。(350%は)世代間負担平準化のバランスのかじ取りの見極めが不十分だし、(30億円は)災害時の事業継続に必要な経費として確たる根拠はなく不十分。平均15%の値上げを10%に抑えることは十分可能。値上げ幅を抑えるため再考が必要」などの意見が出た。

山中真弓市議(共産)からは「水道事業会計は純利益が8億円、現金預金も22億円まで増えており、老朽管や電気設備の更新など施設改良費を自己資金でまかなえるほど豊か。公共設備は計画的に企業債を取り入れながら工事を行い整備すべきで、自己資金は料金値上げを抑えるために使用すべき。水道未普及地域の管路整備は福祉向上のため一般財源も繰り入れながら整備すべき。物価高で市民生活はひっ迫し、値上げは物価高で苦しむ市民生活をさらに圧迫することになり、中止すべき」などの反対意見が出た。

裁決の結果、賛成15、反対9の賛成多数で可決された。

下水道料金の改定も審議

市は現在さらに下水道料金の改定についても審議している。水道料金は5年ごとに見直しを検討するとしている。(鈴木宏子)

可否同数、議長裁決で可決 市長退職金額のネット投票 つくば市議会

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議場のモニターに写し出された電子採決結果。白が退職金額のネット投票賛成議員、青は反対議員、灰色は欠席者=つくば市役所議場

つくば市議会9月定例会議に五十嵐立青市長が提案していた、市長2期目の退職金約2000万円の金額をマイナンバーカードを使ったインターネット投票で決める条例案について(8月26日付)、同市議会最終日の4日、採決が行われ、賛成12、反対12の可否同数となり、五頭泰誠議長の裁決により可決された。

科学の街の務め

本会議では、賛成意見として「筑波研究学園都市は科学技術を世界に波及する先進地として建設された。退職金のネット投票は、選挙のインターネット投票の実証実験の意味も含んでいる。課題を抽出し新しい取り組みをより良いものにするのは科学の街つくばの務め」(木村清隆市議)、「つくばはスーパーシティとして全国に先駆けて先進事例にチャレンジする責務を負っている」(小村政文市議)などの意見が出た。

不公平、市長個人のため疑問

これに対し反対意見として「市長個人のために市民の税金をネット投票に使うのは疑問だし、市職員の仕事を増やしてしまう。マイナンバーカードは任意なのに、マイナンバーカードとスマホアプリを使っている市民しか投票できないのは公平性が無い」(橋本佳子市議)、「市長は8年前『1期ごとに2000万円、3期で6000万円の市長特権の退職金廃止』を公約に掲げて当選した。その後いつの間にか公約を変えてしまった。金額を市民に聞いて決めることと退職金廃止はまったく別もの。まず公約を改めると言うべき。マイナンバーカードとスマホアプリを使っている市民は1万9000人しかおらず不公平。(ワゴン車に投票箱を積んで自宅前まで行く)オンデマンド型移動期日前投票を実施したい(すでに実施見送りが決定=9月2日付)と言った時は『だれ一人取り残さない』とさんざん言っていた。市民の意見を正しく取り入れるなら3000人抽出すればいいし、どうしてもやりたいのなら、投票で決まった金額にネット投票の投票率を掛けて決めるべきだ」(飯岡宏之市議)との意見が出た。

採決の結果は、欠席議員を除く25人のうち、賛成が、最大与党の「つくば自民党・創生クラブ」の6人、「公明党つくば」の2人、1人会派の4人の12人。反対は「自民党政清クラブ」の5人、「つくば・市民ネットワーク」の4人、「日本共産党つくば市議団」の2人と1人会派の1人の12人となり、議長裁決となった。

窓口センターでも準備

一方、投票できる市民が1万9000人に限られている問題について賛成議員からも「市民窓口で対応できるよう工夫してほしい」などの意見が出た。五十嵐市長は「電子署名機能が付いたマイナンバーカードを持っている人は13万人おり、期日を決めて、スマホをもってないとか、持っていても操作が分からない人は、窓口センターで職員がサポートしながら投票できる仕組みを準備している」とした。退職金額のネット投票は11月1日~11日に実施される予定。

審議会審議や市民への説明ない

同条例をめぐっては、9月定例会議開会前に市民団体「新しいつくばを創る市民の会」から「ネット投票に参加できない市民が出て公平性に欠ける、2000万円の費用がかかる、審議会の審議や市民への説明もされていない、市長の評価は退職金のネット投票で決まるものではない」などから慎重審議を求める請願が出ていた。

本会議に先立って9月17日に開かれた総務文教委員会(木村修二委員長)では審議の結果、3対3の同数となり、委員長裁決で条例は否決となっていた。

一方、市民団体の請願についても審議が行われ、委員会は3対3と同数となり委員長裁決で採択、本会議は12対12となり、議長裁決で不採択となった。(鈴木宏子)

◆本会議の採決結果は以下の通り(敬称略、議長除く)。

賛成(12人)▷つくば自民党・創生クラブ=小村政文、高野文男、長塚俊宏、黒田健祐、神谷大蔵、小久保貴史▷公明党つくば=浜中勝美、小野泰宏▷新社会党つくば=金子和雄▽山中八策の会=塩田尚▷清郷会=木村清隆▽つくばチェンジチャレンジ=川久保皆実

反対(12人)▷自民党政清クラブ=宮本達也、木村修寿、塚本洋二、飯岡宏之、鈴木富士雄▷つくば・市民ネットワーク=川村直子、あさのえくこ、小森谷さやか、皆川幸枝▷日本共産党つくば市議団=山中真弓、橋本佳子▽新緑会=中村重雄

日本発の疾患概念「ひきこもり」《看取り医者は見た!》28

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写真は筆者

【コラム・平野国美】日本発の疾患概念として「ひきこもり」が米国精神医学会の診断基準DSM-5-TRに、2022年、「Hikikomori」と掲載されたという話を聞きました。DSMは精神科医にとって診断のためのバイブルのようなものです。そこに記載されたのは、名誉とか不名誉とかとの話を超えて驚きです。

調べると、確かに「Hikikomori」と記載されていますが、診断名としてではなく、「Cultural Concepts of Distress」(文化的苦痛の概念)の章で、日本特有の現象として説明されているのです。

厚生労働省などのガイドラインでは「ひきこもり」を様々な要因の結果として、社会参加(義務教育を含む就学、非常勤職を含む就労、家庭外の交遊など)を回避し、原則的に6カ月以上にわたっておおむね家庭内にとどまり続けている状態―と定義されています。あえて、日本特有と記載されるのはなぜでしょうか?

訪問診療していると、患者さんのご家族の中に「ひきこもり」の方が存在することをよく経験します。高齢の患者さんにとっては、同居する家族に介護的に経済的に頼りたいのだが頼れない状態なのです。これが8050(はちまる・ごうまる)問題と呼ばれるもので、50代の子どもたちが80代の親に経済的にも精神的にも依存しているという社会問題となっております。

50代の子供が自立した生活を送れないため、80代の親の年金に依存しているケースが多く、その資金を親の介護に使えない状態も多いのです。このまま親子ともども高齢化していくと、自動的に9060問題となっていくのです。このようなケースは、我々の仕事の現場で統計以上に出くわすものです。

日本の社会的・文化的病理

なぜ「ひきこもり」が増えてきたのか? よく考えることがあります。江戸時代には、こういったカテゴリーは存在したのか? 武士が罪を犯した際に蟄居(ちっきょ)という自宅に幽閉される刑罰はありました。また、隠遁(いんとん)と呼ばれ、俗世間を離れて静かに暮らすこともありました。これは、意図的に社会から距離を置き、精神的な修養や自己探求を行う意味などもあります。

「ひきこもり」は、いつ、どこから現れたのか? 他国にも存在するのか? 単なる個人の病的な資質なのか? 米国精神学会のDSMに「ひきこもり」が文化的苦痛の概念、日本特有の現象と書かれたのは、この現象が個人の資質によるだけの問題ではなく、日本の社会的・文化的背景が要因になっている社会病理と考えられているようです。

ちなみに、「ひきこもり」のような社会からの孤立は海外にも存在するようです。興味深いのは、家族主義がある韓国、イタリアでは「ひきこもり」の形態が多く、個人主義の米国、英国では子供が家から独立する傾向があるため、「ホームレス」の形態となるそうです。文化や生活習慣によって発症の形態が異なります。(訪問診療医師)

市議選43陣営が出席 つくば市で立候補届出書類の事前審査

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つくば市長選・市議選届け出書類事前審査の会場案内板

任期満了に伴って20日告示、27日投開票で行われるつくば市長選・市議選(定数28)の立候補届け出書類の事前審査が2日と3日、同市役所で行われ、市長選は1陣営、市議選は定数15人超の43陣営が出席した。

市長選は新人で自民推薦の星田弘司陣営が出席した。現職の五十嵐立青陣営は後日、書類審査を受けるとみられる。

市議選の43陣営は現職18、新人25。8月の立候補予定者事前説明会(8月18日付)は38陣営が出席しており5人増えた。今後さらに現職1人が事前審査を受けるとみられるほか、立候補を検討中の新人が複数いるとみられる。43陣営の男女別は男性31、女性12。

4年前の2020年の市議選は13人超の41人が立候補した。

霞ケ浦にハワイを見っけ! フラダンス8教室 土浦に集結

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出演ハラウ。 2023年の開催時に霞ケ浦総合公園の会場で撮影=ALOHA PARTY実行委員会提供

土浦、つくば両市にあるフラダンスの教室が20日、土浦市大岩田の霞ケ浦総合公園に集結、「ハワイの風景にそっくり」という湖畔の芝生広場を会場に、日がなフラのパーティーに興じる。

ALOHA PARTY(アロハパーティー)実行委員会による2回目の開催。ハワイ語でフラダンス教室の意味になる「ハラウ」8団体が集結する。

実行委員会を束ねる桑名美千代代表によれば「フラダンスのイベントは公民館とか市民会館とかで行われていたけど、コロナ禍以来みんなで集まりにくくなった。やっぱりフラは太陽の下踊るもの。騒ぎが癒えたら、屋外で集まりたいね」とよく話していたという。

そんなとき霞ケ浦総合公園にある国民宿舎水郷「霞浦の湯(かほのゆ)」の2階の窓から見える霞ケ浦の景色にびっくり。入り江の芝生広場が「ハワイの風景によく似ている」と昨年秋、土浦、つくば両市の各教室に呼び掛け、7団体の参加で1回目を開いた。

これが好天にも恵まれ、好評。今回は8つのハラウに拡大した。Kapā Hula O Kulia ikeākea(カパー フラ オ クーリアイケーア)、LANIKEA HULA STUDIO(ラニケア フラ スタジオ)、Hālau Hula ‘O Mino’aka(ハーラウ フラ オ ミノアカ)、Hālau Hula O Wailani(ハーラウ フラ オワイラニ)、Hoa Hele O Kuwana(ホア ヘレ オ クワナ)、Hula O Moana(フラ オ モアナ)、カラニ ハワイ フラスタジオ、土浦フラサークルの8教室だ。

20日は、受け継がれてきたハワイの宝を守る気持ちで踊る「He Lei Aloha」をオープニングに、朝10時から午後4時まで深まる秋の霞ケ浦に「常夏」のパフォーマンスを演出する。

3つのハワイアンバンドが出演するほか、ハワイアンアクセサリーや雑貨のマルシェも開催。出店するキッチンカーもすべてハワイアンフードでの味付けになるという。

桑名代表は「フラを学ぶ子供たち、保護者たちの交流の場として始めたが、地域の人たちにも参加してもらって輪を広げたい。ぜひお越しいただきたい」と呼び掛けている。雨天の場合は「霞浦の湯」で屋内開催となる。(相澤冬樹)

何かになりたい《ことばのおはなし》74

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写真は筆者

【コラム・山口絹記】最近、ふと「今の仕事は、こどもの頃からの夢だったんですか?」と聞かれたことがあった。不意の質問だったので、「ええ、まぁ…はい」と答えてしまった。「よかったですね、やりがいがありますね」と言われ、なんとなく、もやもやとした気持ちになった。

私はこの「夢」ということばが好きではない。それが、なんらかの「職業」を指しているならなおさらだ。この「夢」ということばはカタチを変えて日常のそこかしこに潜んでいる。それは、「なりたい自分」とか、「自己実現」とか、「志望」とかいうことばであり、人生のそこかしこで、ふと目の前に現れては人の心をかき乱す。

一度ことばにして「夢」というものを自分の中で定義してしまえば、それはいとも簡単に自分の心の中に根をはり、場合によっては自らを縛る呪いのようなものになっていく。安直で雑な呪いだ。

実際のところ、ここで言う「夢」というのは、一時の状態でしかなく、その状態に行きつくまでは、頭の中のことばでしかない。そして、その「夢」がかなった状態になったとしても、当然のことながら続きがある。仕事であれば辞めるという選択肢があり、自分の意思とは関係なく辞めざるを得ないときがあり、そして、死ぬまで続けることができる仕事というのは限られているのだ。

どうなりたいか

一度「夢」という状態がかなったとして、その状態をやめるということは、「夢」を諦めるということにはなるまいか? かなった「夢」という状態が、いつかはしがみつく対象になることはないのだろうか? これはあまり健全な状態であるとは言えないだろう。

実のところ、これは「夢」と言うものの定義設定の問題であると、私は思うのだ。「夢」というものを一時の状態に設定しまうのは安易ではあるが、だからこそ何かがおかしくなってしまう。

大切なのは、何になりたいか、ではなく、「どうなりたいか」なのだから。「どうなりたいか」の途中に「何になりたいか」があり、何になるかについては、常に選択肢があり続けるのが健全だ。そして、どうなりたいか、という自分は、自ずとその時々の自分に寄り添って変わっていくだろう。

難しい話ではない。最初は、「優しくありたい」なんてことでよいのだ。いっそ単純なほうがよい。他人と同じでよい。小さい時は友達にやさしくあればよい。孤独な時は自分に優しくあればよい。大切な人ができたなら、その人に優しくあればよいではないか。単純だが、十分に難しいことでもある。

そして、一生をかけて、その優しさを自分なりに研ぎ澄ませていく。そうすれば、なぜ自分が「優しくありたい」と思ったのか、わかる日が来るかもしれない。私はそう考えている。(言語研究者)

つくば秀英が夏の雪辱果たす 霞ケ浦を破り初優勝【秋季高校野球茨城】

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初優勝を決め、スタンドに向かってガッツポーズをするつくば秀英の選手達

第77回秋季関東地区高校野球茨城県大会は2日、ひたちなか市民球場で決勝が行われた。夏の決勝と同じ対戦となった今回は、つくば秀英が霞ケ浦を5−2で破り、見事に夏の雪辱を果たし悲願の大会初優勝を勝ち取った。

第77回秋季関東地区高校野球茨城県大会決勝(10月2日、ひたちなか市民球場)
つくば秀英 013 000 100 5
霞 ケ 浦 000 002 000 2

つくば秀英の先発、中郷泰臣投手

試合前、つくば秀英の桜井健監督は「夏のリベンジを果たす考えは持つな。新しい代になり新チームで新たに勝ちに行く」と選手を送り出した。

つくば秀英先発の中郷泰臣は初回、霞ケ浦打線を3者凡退に抑えると、2回に先頭の知久耀がセンターにヒットを放ち出塁。さらに稲葉煌亮が送ってバントを決め2塁へ進んだ。2死後、沢畑悠斗がまっすぐを振り抜き打球はライトへのタイムリーヒットに。知久がホームインし先制した。

2回2死2塁、沢畑がライトへ先制のタイムリーを放つ

つくば秀英は3回に1点を追加、なお2、3塁のチャンスに、稲葉がセンターへ2点タイムリーを放って4−0とリードを広げた。

一方、5回まで中郷に2安打に抑えられていた霞ケ浦は、6回にヒットと四球、送りバントで2塁、3塁のチャンスをつくり、鹿又嵩翔のライトへのタイムリーで1点を返し、さらに満塁とする。西野結太が、代わったつくば秀英の2番手斎藤柾希から押し出しの四球を選び1点追加、2点差に追い上げた。

6回1死2・3塁。霞ケ浦の鹿又がライトへタイムリーを放つ

つくば秀英は、7回に稲葉が2本目となるタイムリーを放ち突き放すと、7回、斎藤が霞ケ浦打線を3者凡退に抑えた。8回、9回は羽富玲央が抑え、つくば秀英が3人の継投で霞ケ浦打線を5安打2失点に抑えた。霞ケ浦は9年ぶり5度目の優勝は果たせなかった。 

7回に追加点が入り盛り上がるつくば秀英ベンチ

優勝したつくば秀英の桜井監督は「夏の決勝を経験し、落ち着いて強い気持ちでプレーが出来た。関東大会までにワンランク強くしてレベルアップし、関東の強豪校相手にくらいついていきたい」と話した。チームに勢いをつける先制のタイムリーを放った沢畑は「関東大会ではチーム一丸となりベスト4以上を狙う」と意気込んだ。

霞ケ浦の大橋泰祥主将は「必ず優勝して関東大会に行く気持ちで試合に挑んだが、練習でやってきたことが出来ずミスが出た。関東大会では2回勝ってセンバツに行く」と誓った。

来春のセンバツ(春の甲子園)出場の選考基準となる秋季関東大会は、26日に神奈川県で開幕する。つくば秀英は初出場、霞ケ浦は2019年以来5年ぶりの出場となる。(高橋浩一)

夏から秋にシフト 国環研の一般公開 事前申込受付中

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地球温暖化をテーマに研究者と理解を深める体験イベントなどが開かれる(2023年撮影、国立環境研究所提供)

「夏が年々暑くなっている」判断から

今年創立50周年を迎えた国立環境研究所(国環研、つくば市小野川、木本昌秀理事長)の地域向け一般公開は今年、初めての秋開催に切り替えられ、10月19日午前10時から開かれる。入場は自由だが、「これからの50年」を見据えて、児童生徒向けのイベントを充実させ、事前参加申し込みを受け付けている。

今年の開催テーマは「環境をまもりはぐくむ。国環研の50年と、これからの君へ」。

国環研は1974年に国立公害研究所として開設され、90年に国立環境研究所に名称を変更。2004年から昨年まで「夏の大公開」として開かれていたが、「気候変動によって夏が年々暑くなっている」判断から秋の開催に切り替えた。

施設公開をはじめ、体験・展示コーナー、講演会の開催を予定している。

講演では、つくば科学教育マイスターの一ノ瀬俊明さんによるトーク「空から地面の温度を見てみよう」が4回予定されている。温度が見えるカメラ(赤外線サーモカメラ)をドローンに装着して、いろいろな場所の動画を空から撮影した。同市の洞峰公園や土浦花火大会、長野の山や茨城の海などの動画を上映しながら、クイズをまじえて各地の温度の特徴などの解説を聞くことができる。対象は小学5年生以上対象、各回先着順最大10人。

体験コーナーで事前申し込みが必要なのは、▽すごろく「気候変動適応への道」=遊びながら気候変動への適応行動を学べるすごろくゲーム。対象は小学生以上、会場は大山記念ホール▽研究者と話そう!「ココが知りたい地球温暖化」=小学5年生以上、同▽ エコチル調査を体験しよう!「体組成測定&食事習慣質問票」=測定体験により自分の身体や食事のバランスを知ることができる。小学5年~中学3年、環境保健研究棟など。それぞれ3回の開催が予定されている。

展示では、「田んぼダム」の仕組みを見てみよう=田んぼダムの仕組みを再現した模型に水を実際に流す実験を行う。4回、各回抽選で6人受付ーなどがある。(相澤冬樹)

◆事前申し込みの詳細はこちらから各申し込みフォームに。同ホームページでは当日整理券を配布するイベントの紹介もされている。

当日は自動車での入構はできない。つくば駅、ひたち野うしく駅から「環境研究所」行きの路線バスがあるほか、当日は「無料バス」を運行予定。

正しい自分を分かってほしい《続・気軽にSOS》154

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【コラム・浅井和幸】人は争うものです。小さなことから大きなことまで。個人対個人から国対国まで。時には前向きに捉えられる争いもありますが、ほとんどの場合、誰も得をしないのではないかなと思う争いが多いものです。

私が国の争いに首を突っ込むことはできませんが、個人間や団体内であったり、団体同士の仲裁や整理に立ち会うことはあります。全く意見が対立していることもありますが、意外に多いのは、目的が一緒であるのにちょっとした順番や言葉の行き違いです。みんな不安でおびえているのかもしれません。

そして、相手の言動が意味することに対する推測が大きく間違っているのです。自分に対してこのような言動をするのは自分をつぶしたいからだと推測をしているが、実は相手は褒めてほしいだけ―など。

残念なことに、私たちは戦略的によく考えてコミュニケーションをとっていると錯覚しているだけで、単に感情的であったり、目的に即した言動よりも思い付きでの言動で生活していることがほとんどです。特にささいなことでの争いは、自分を分かってほしい、そうしてもらわないと怖いという、不安に振り回されているものです。

私は間に入るときに、争わずに仲良く生きることがよいという価値観を伝えるつもりはなく、単純に各々の目的や感情などを整理したり通訳をしたりしているイメージで対応しています。それは、それぞれの事実と推測を分けて考えること。推測は確実ではないので、3つぐらい別の可能性を考えられるとよいですね。

共通の言語や相手の言葉で伝えること、例えば、出来るだけ頑張ると言ってもどれぐらいが「頑張っている」を指すのか分からないので、頑張って3日以内に回答するなど、数字で伝えられるとよいですね。

いくつかの可能性、筋道を考える

自分の目的に気づくこと大切です。もし自分を分かってほしいというのであれば、安全な状態で相手を分かってあげることですし、何かを達成したいのであれば、それに即した方法を考えるべきです。そして、自分の目的を達成するのに、たった一つしか方法に限定せずに、いくつかの可能性、筋道を考えてみることです。

争いになっている状況で、相手のことは理解しようとせず、自分の意見だけを通そうとする。自分が普通であることだけを主張しても、争いは大きくなり溝は深まるばかりですから。(精神保健福祉士)