水曜日, 11月 12, 2025
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つくば市職員が新型コロナ

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つくば市役所

つくば市は5日、市役所本庁舎1階に勤務する非常勤職員1人が5日、新型コロナウイルスに感染していることが分かったと発表した。

本庁舎では1階と2階に勤務する職員が2日に2人、3日に2人と計4人の感染が判明したばかり。市ワークライフバランス推進課によると、5日に新たに感染が分かった職員は、4人との接触はなかったという。

一方、職場でこの職員の濃厚接触者はいないが、保健所の指導の下、念のため、1階に勤務する職員の一部を自宅待機とし、PCR検査を実施するとした。自宅待機する職員の人数については公表しないとしている。

職員が勤務する部署は消毒を行い、部内の応援を得て、通常通り業務を実施する。

中腹の筑波山観光案内所をリニューアル つくば市

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筑波山観光案内所の完成イメージ図(つくば市観光推進課提供)

つくば市の五十嵐立青市長は4日の定例記者会見で、筑波山中腹の筑波山観光案内所(同市筑波)をリニューアルし、建て替え工事を7月末から来年3月まで実施すると発表した。オープンは来年4月の予定。

新築される案内所は建築面積274平方メートルで旧案内所の2.2倍の広さになる。施設は2階建て、木造一部鉄筋コンクリート造で、1階は機械室のみ、2階に案内スペースのほか、旧案内所にはなかった公衆トイレ、授乳室、周辺観光事業者などが利用できる会議室を設ける。

案内スペースに新たに、日本語、英語、中国語3カ国語のタッチパネル式モニターを整備し、登山ルート、周辺の宿泊施設、グルメなどの情報を案内する。案内所には今年4月からすでに英語で対応できるスタッフが常駐し広域の観光案内を実施しており、外国人観光案内所としてJNTO(日本政府観光局)のカテゴリーⅡの認定を受けた。建て替えにより、コロナ後の外国人観光客の増加を見据えて、外国人の案内機能をさらに強化するという。

新型コロナ前の2019年度の筑波山観光客数は年間約270万人。市観光推進課によると観光案内所利用者の約6%が外国人だったという。

旧案内所が築35年と老朽化していたことから建て替える。旧施設は今年1月すでに解体した。現在は向かい側の駐車場に仮設の案内所を建て業務をしている。

近くの筑波山梅林の隣接地には、案内機能を備えた2014年度建設の「筑波山おもてなし館」がある。役割分担について同課は、おもてなし館は休憩所や自然の展示機能、筑波山の入り口にある観光案内所は案内機能とするとしている。

建設費は約1億6900万円。7月に一般競争入札が実施され飯岡建設が落札した。同28日開かれた市議会臨時議会で工事請負契約が賛成19反対5で可決された。(鈴木宏子)

黄金虫の運命 《くずかごの唄》90

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【コラム・奧井登美子】野口雨情作詞、中山晋平作曲の童謡「黄金虫(こがねむし)」の歌詞。

黄金虫は金持ちだ

金蔵(かねぐら)建てた 蔵建てた

子供に水飴(みずあめ)かって来た

黄金虫は金持ちだ

金蔵建てた 蔵建てた

子供に水飴なめさせた

私たちが小学生のころ、茨城県生まれの野口雨情の童謡をよく歌った。戦中、戦後、甘い物に飢えていたので、水飴を子供になめさせた虫がうらやましかったのかも知れない。

私たちも子供たちも楽しみにしていた「昆虫観察会」も、今年はコロナの感染拡大で急に取り止めになってしまった。

適応力に優れたゴキブリ

「黄金虫は、昔は山にしかいない山の虫で、卵の鞘(さや)が昔の財布の形をしているので、縁起の良い虫として大事にされていました。何十種類もいる中で、頭の良い2種類だけが人間の家庭に進出し、繁栄したのが、いわゆるゴキブリです。残りの種類はまだまだ山の中にたくさんいますので、見つけてみて下さい」

以前の昆虫観察会のときに、私がつい口を滑らせてしまった黄金虫とゴキブリの話。参加のお母さんに叱られてしまった。

「せっかくきれいな森に来たのだから、ゴキブリの話なんかしないでください。私はゴキブリと聞いただけで、ダメ。気持ちが悪くなるのです」

すばしこくて、頭の良い、適応力に優れた昆虫が尊敬されるのかと思ったら、その反対に、その嫌われ方が、蚊や蠅(はえ)などの比ではない。適応力に優れた生物に対しての恐怖。人間の頭脳との競争。なぜだろう? 黄金虫の運命は人間の運命を予告するのかも知れない。(随筆家、薬剤師)

市立学校教員が新型コロナ つくば市

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つくば市役所

つくば市は4日、市立学校教員が3日、新型コロナウイルスに感染したことが分かったと発表した。

教員が勤務する学校での濃厚接触者はいないという。

学校は夏休みのため、休校などはないとしている。

失業したひとり親や学生の雇用を促進 雇い主に交付金上乗せ つくば市

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会見する五十嵐立青つくば市長=市役所

つくば市の五十嵐立青市長は4日開かれた定例記者会見で、失業したひとり親や学生を新たに雇用した市内企業などの雇い主に、市独自の雇用促進交付金を1人の雇用に付き最大15万円上乗せすると発表した。新型コロナの感染拡大により、就職が厳しくなっているひとり親や、アルバイト先が減少している学生の雇用を促進することが目的。4日から受け付けを開始した。

新型コロナ対策として同市は昨年6月から、失業者を雇用した市内の企業や個人などを対象に、週30時間以上、期限の定めなしで雇用した場合は一時金として1人雇用に付き最大20万円を交付してきた。週20時間以上、3カ月以上の期限付きで雇用した場合は1人最大10万円を交付している。学生アルバイトに対しては、週10時間以上勤務する学生を雇用した場合、1人最大10万円を交付している。

4日から新たに、ひとり親を週30時間以上、期限の定めありで雇用した場合は最大15万円、週20~30時間の場合は最大10万円を、これまでの交付金に上乗せして事業主に支給する。

学生アルバイトについては支給対象を拡大し、週10時間に満たなくても、週5~10時間勤務する学生を雇用した場合、1人最大5万円を事業主に交付する。

ひとり親を雇用する中小企業などへの支援については、国の制度として、ハローワークなどの紹介で、週30時間以上、期限の定めなしで雇用した場合は60万円、週20~30時間勤務の場合は40万円を企業に助成する特定求職者雇用開発助成金制度がある。

今回つくば市が拡充した制度は、国の助成対象にはならない、期限の定めありでひとり親を雇用する雇い主に交付するという。

市が昨年6月から実施している失業者を対象にした雇用促進交付金は、2020年度は121社が262人を新規雇用した際に利用し、交付金額は計約3300万円になった。今年度も事業を継続し、当初予算で1000万円を計上したが、7月30日時点で44社から93人を新規雇用する申請があり、交付金額は計1100万円と当初予算を上回った。6月補正でさらに交付金の予算を2400万円追加するに当たって、制度を拡充し、ひとり親と学生の雇用を支援する。

一方、市内の公園などで毎月欠かさず、大学生やひとり親などに食料や日用品を無料提供している市民団体からは五十嵐市長に対し、大学生への現金または商品券の配布など公的支援を求める要望書が6月に手渡されている(6月4日付)。五十嵐市長は「直接的支援はどういうのが可能か、すでに検討している」としたが、具体的な中身は示さなかった。(鈴木宏子)

タペストリーで涼しさを 優秀作品をつくば駅前に展示 筑波学院大

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筑波学院大学タペストリーコンペティションで優秀賞に選れた片岡さん(左)と猫塚さん=つくば駅前トナリエモグ1階交流広場

筑波学院大学(つくば市吾妻)メディアデザインコースの学生がデザインした、大型タペストリーコンペティション優秀賞の表彰式が3日、つくば駅前の商業施設トナリエモグ1階の交流広場、プラザ・パフォーマンス・ギャラリーで開催された。3年の片岡心苑(しんえん)さん作「夏の出会い」と、猫塚美友紀さん作「クラゲの海」が優秀賞に選ばれ、3日から交流広場で展示されている。

今年で7回目になるコンペは、交流広場を同大の学生がデザインし、市民に憩いの場を提供する目的で2015年に始まった。クリエイティブな自己表現を高めるデザイン教育の一環として、つくば交通センターと商業施設が連携して毎年開催している。

片岡心苑さんの「夏の出会い」=筑波学院大提供

コンペには3年生18人が18作品を出品した。審査方法は、6月19日から1週間、トナリエクレオ2階(現・ケーズデンキ)に展示し訪れた買い物客らが投票した。全投票数150票のうち、最高得点である40票を片岡さんと猫塚さん2人が獲得した。

2人共、タブレット端末を使ってデザイン系ソフト、イラストレーターで作品を描き、布にプリントした。タペストリー1枚の大きさは、横1.6メートル、縦2.8メートル。5~6枚並べて吊り下げることで、1つの作品になる。

片岡さんの「夏の出会い」は、色とりどりのアサガオの花と、葉に座った小人がじょうろの水を浴びて驚いている様子が描かれている。アサガオは図鑑や写真を見て描いたという。「受賞できて素直にうれしい。奥行きを出すのに苦労し、構図も締め切り間際まで迷ったが、自分の思ったように作ることができた」と話す。

猫塚さんの「クラゲの海」は、海の中にいるような青色に幻想的なクラゲやサンゴ、貝、ヒトデなどが描かれている。クラゲは心の中にあったものを描いたそうだ。「作品には自信があったが受賞してうれしい。涼しさを感じられるように作った。立体的に描くことを心がけた」と語る。

猫塚美友紀さん「クラゲの海」=同

表彰式で、同大の高嶋啓教授は「暑い今の時期、2人のタペストリーを見て市民の方に涼んでいただきたい。入選しなかった学生も非常に頑張った」とあいさつした。

審査委員長を務めた、つくば都市交通センターの茂木貴志理事長は「今年は普通の夏と違って、マスクや行動制限などもあり息苦しい。2人の作品は涼しげで魅力的。この場を訪れた方に清涼感を与える。市民の皆さんにぜひ見てもらいたい」と来場を呼び掛けた。

8月3日から24日までは片岡さんの作品、24日から9月14日までは猫塚さんの作品がそれぞれ展示される。(伊藤悦子)

つくば市本庁舎職員2人が新型コロナ

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つくば市役所

つくば市は3日夜、市役所本庁舎に勤務する職員2人が、新たに新型コロナウイルスに感染していることが分かったと発表した。

1階に勤務する非常勤職員と、2階に勤務する正職員の2人。市ワークライフバランス推進課によると、前日の2日に感染が分かった1階の正職員と2階の非常勤職員とは、それぞれ接触はないという。

3日感染が判明した1階非常勤職員の濃厚接触者については現在調査を実施している。2階正職員については職場に濃厚接触者はいないという。

1階、2階いずれも職場を消毒し、通常通り業務を実施する。

県独自の緊急事態宣言を発令 6日から2週間

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茨城県庁(イラストは「いばらきアマビエちゃん」)

新型コロナウイルスの新規感染者数、病床稼働数の急増に伴って医療崩壊の恐れが迫っているとして、大井川和彦知事は3日、県独自の緊急事態宣言を県全域に発令すると発表した。期間は6日から19日までの2週間。発令は今年1月以来、2度目。併せて県独自の判断指標を「感染爆発・医療崩壊のリスクが高い状態」のステージ4に引き上げる。国に対しても3日、緊急事態宣言の適用を要請した。

感染拡大のスピードが非常に速く、2週間前(7月14~20日)と今週(7月28日~8月3日)を比較すると、新規感染者数が4.3倍、病床稼働数は2.6倍に増加しているとした。

さらに感染拡大市町村の対象(人口1万人当たりの新規感染者数1.5人以上)となる市町村が、前の週(7月21~27日)はほぼ県南地域だけにとどまっていたが、今週(7月28日~8月3日)は全県に広がってきているとし、今回の第5波は感染拡大の勢いが第4波までと大きく異なると強調した。

海水浴場閉鎖を要請

県独自の緊急事態宣言に伴い、海水浴場の閉鎖を、阿字ケ浦と平磯があるひたちなか市と、大洗サンビーチがある大洗町にそれぞれ要請する。県有施設のアクアワールド県大洗水族館、フラワーパーク、ミュージアムパーク県自然博物館、竜神大吊橋、袋田の滝観瀑台は期間中、休館とする。公園についても園内の屋内施設は利用を制限する。一部利用制限を含め休館となる施設は52カ所となる。

ただしカシマサッカースタジアム、国民宿舎「鵜の岬」、ザ・ヒロサワ・シティ会館、つくば国際会議場などで、すでにチケット販売や予約を受け付けている施設については感染拡大防止対策を徹底した上で受け入れ可能とする。

一方、人が密集せず大声を出す場所ではない県立近代美術館、県立図書館は感染防止対策を徹底し開館を継続する。

学校の部活動については、小中高校、大学いずれも、他校との練習試合の自粛を要請する。

飲食店に対しては、つくば市、土浦市など感染拡大市町村は7月30日からすでに午後8時までの営業時間短縮期間を要請していたが、期間をさらに延長し19日までとする。協力金も支給期間を延長する。

大井川知事はさらに夏休みやお盆の過ごし方についても、帰省はできるだけ避け、他都道府県から茨城県に遊びに来ることを極力避けてほしいと要請した。

外国語を学ぶコツ② 《ことばのおはなし》36

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【コラム・山口絹記】英語の習得に必要なものとは何か。私はこう考える。必要性+緊急性。あるいは(他者からは理解されない類の)情熱。この記事を読んでいるあなたは、誠に残念なことに、今のところ両者を持ち合わせていない可能性が非常に高い。

現実問題として我々日本に暮らす日本人は、今のところ英語ができなくとも不自由なく生きていける。おそらく「英語ができる」というのは、「ギターが弾ける」とか「料理がうまい」程度の価値なのではないだろうか。いや、もっと低いかもしれない。

それでもせっかく読んでいただくのだから、私としては後者の“情熱”というものに、かすかな明かりをつけられるような記事を書いていきたいと考えている。お付き合いいただければ幸いだ。

4つの目標を設定

まずは目標設定をしてみよう。高すぎる目標では、やる気にならないので、こういうのはいかがだろうか。

①大まかなストーリーを知っている小説などをほぼ理解できる程度

②好きで何度も観ている映画が楽しめる程度

③必要に迫られれば、言いたいことの7割を話せる程度

④以上3点を利用して、退屈な単語帳などを抜きに、さらなる語学力上達が日常的にできるようになること

さて、日本の学校教育における英語が実践的なコミュニケーションの役に立たないといったお話、よく目にしないだろうか。たいてい、その代価案として示されるのが、アウトプットの機会を増やすというようなことなのだが、正直に言おう。

「日本人同士で英会話なんて私は恥ずかしい」。純度100%の感情論なのだが、あなたもそうではないだろうか。

アウトプット量が足りないことには理論的には賛同するが、そもそもインプット量が足りていないのが実情だ。とはいえ、やって無駄なことなどこの世には存在しない。足りないなら補えばよい。

いくつになっても学べる

ここから先は、過去の学校教育で真面目に英語を学んだことを前提としておはなしを進める(コレができるのが学校教育の大きな意義だ)。

まず用意するものは、365日、毎日5時間(無理なら3時間)の勉強時間と、TOEFLやTOEIC用単語帳2冊。

これより物量作戦に移行する。例文ごと、できれば文章の一部を自分の好きなものに置き換えながら毎日100単語覚えていく。

方法は自由だが、発音だけは音源をしっかりまねして実際に声に出して練習することを強くお勧めする。

「例文ごと」というのが重要で、大量の英文を覚えるというのは、すなわち、こういう単語のつながりはアリなのだ、という感覚をつかむのに絶対必要な通過点だ。

ここまで少し厳しいおはなしをしてしまったので、慰めになるかはわからないが、言語習得論について言語学的な見地からひとつ素敵な研究結果について述べておこう。それは、語彙(ごい)獲得の臨界期は存在しない、という研究結果だ。どういうことかというと、幼児と大学生の間に、語彙に関する記憶力に差がないということだ。

いくつになっても、ことばは学び続けることができる。私もいまだに学んでいる。(言語研究者)

つくば市職員3人が感染 互いに接触なし

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つくば市役所

つくば市は2日夜、市職員3人が同日、新型コロナウイルスに感染していることが分かったと発表した。3人の間に接触はないという。

市役所本庁舎1階に勤務する正職員と、2階に勤務する非常勤職員、公立保育所職員の3人。

いずれも、職場に濃厚接触者はいないという。

市役所1、2階の職員が勤務する部署は、それぞれ消毒を実施し通常通り業務を実施する。保育所も消毒を実施し、通常通り開所する。

オリンピックと衆院選挙 《雑記録》26

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【コラム・瀧田薫】古代オリンピックは、紀元前776年から紀元393年まで、1200年近くにわたって、ギリシアのオリンピアの地で行われた。この古代オリンピックと近代オリンピックとの違いは、古代オリンピックがゼウス神にささげる宗教的祭典だったことである。大会開催中、参加国は聖なる休戦(エケケイリア)を守り、オリンピアへの往還と神域における武力行使を堅く戒めた。

その結果、1200年間、戦争が原因で大会が中止されたことは一度もないという。一方、近代オリンピック120年の歴史には、2度の大戦による大会中止をはじめ、テロによる選手殺害事件(1972年)や、大国によるボイコットの応酬(1980年、1984年)があった。

西洋史学者の橋場弦(はしば・ゆずる)氏は「商業主義とグローバル資本の論理に翻弄される現代のオリンピックは、どこに向かうのか。金銭を超えた聖なる価値を、オリンピックが見失うことのないよう祈りたい」(UTokyo FOCUS 2020年4月)と述べている。

争点は財政政策(増税か減税)か?

さて、衆議院議員選挙の日程だが、コロナの感染爆発中にオリンピック開催を強行した菅首相だけに、オリ・パラ会期中の選挙はないだろう。永田町では、パラリンピック後の9月6日に臨時国会を召集し、補正予算を通して、28日公示、10月10日投開票というスケジュールが有力視されている。ただし、これも「ワクチン接種」の進み具合で延期される可能性がある。

菅政権としては、選挙前に国民の60%程度の接種を終えておきたいところだ。その場合、選挙日程はギリギリ11月28日になる可能性がある。臨時国会を開き、10月21日の衆院議員の任期満了日に解散する方法だが、さすがにこの日程の現実味は薄い。選挙の争点は、コロナ対策、特に財政政策で、具体的には「増税か減税」か、与党、野党それぞれの思惑が交錯する選挙となるだろう。

政府は、コロナ禍への対応で、20年度に3次にわたる補正予算を編成した。医療現場への補助金、企業向け支援、全国民への一律10万円支給などがその中身だが、財源の大半は国債の追加発行(20年度の新規国債発行額は100兆円の大台を超えた)であり、これは過去に類例のない規模である。リーマン・ショック後には消費税の10%への引き上げがあり、東日本大震災後には所得税、住民税、法人税の上乗せがあった。現在、財政当局の本音は「景気回復を条件とする増税案(消費税15%?)」だろう。

これに対し、自民党は選挙前の「だんまり」を決め込み、菅首相は「10年間は消費税を上げない」と公言している。逆に野党は、この時とばかりに「減税」(れいわ新選組の消費税5%案など)を主張するだろう。選挙民にとっては、どう考え、誰に投票するのか、悩ましい選挙となるだろう。

専門家による投票結果予想としては、自民党の議席減で現政権の退陣もあり得るが、自民・公明両党での過半数は維持できるとの見方もある。選挙の結果がどう出ようとも、その後に、財務当局の増税案が急浮上してくることは確かである。(茨城キリスト教大学名誉教授)

土浦市職員のHPが最優秀賞 イラストと記事で”日本一”の霞ケ浦流域紹介

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最優秀賞を受賞した若田部哲さん 。手描きの絵はイラストの原画

土浦市職員の若田部哲さん(45)が、個人で制作するホームページ(HP)「日本一の湖のほとりにある街の話」がこのほど、ウェブサイトコンクール「TCDアワード2021」で最優秀賞を受賞した。版画のようなオリジナルのイラストと記事で、霞ケ浦流域のグルメやレジャー、文化などを紹介している。

ウェブデザイン会社「デザインプラス」(大阪市)が主催する賞で、「独特な、味のあるデザインのイラストが目を引く」「コンテンツが充実している。まるで懐かしい絵本のよう」などと評価された。

土浦の老舗グルメ、霞ケ浦流域の祭りやレジャー施設、レンコンや江戸崎カボチャなどの特産品、夕映えスポットなど、若田部さんが実際に行って魅力を感じた霞ケ浦流域の地域文化を、5つのジャンルに分けて紹介している。

特に高い評価を得たイラストは、各作品3色だけを使い、濃淡で表現している。手描きでスケッチを描き、色別に写しとってさらに手描きし、パソコン上で彩色して仕上げる。

ホームページは2019年に開設し、毎週平均2本ずつ記事を紹介しており、現在計約170本が紹介されている。グーグルマップなども取り込み、自転車道「つくば霞ケ浦りんりんロード」を走るサイクリストが、ホームページを見ながらグルメを堪能したり、景観スポットを散策できるよう工夫している。

若田部さんのオリジナルのイラストが掲載されたホームページ「「日本一の湖のほとりにある街の話」

ナンバー1をアピール

霞ケ浦は琵琶湖に次いで2番に大きい湖だが、ホームページのタイトルを「日本一の湖—」とした。面積は第2位だが、西浦、北浦、外浪逆浦などを合わせた霞ケ浦全体の湖岸線の長さは琵琶湖を上回り日本一。魅力をPRするにはナンバー1が重要だとタイトルに付けた。

4年前、滋賀県の琵琶湖のほとりで開催された全国市町村職員研修会に参加したことがきっかけになった。全国各地から集まった市町村職員に霞ケ浦を紹介したところ、全国一の琵琶湖はよく知られていても、2番目の霞ケ浦を知らない職員も多く、悔しい思いをした。

土浦に戻り、何とかアピールする方法はないかと考え、湖岸線は日本一であることを「発見」。湖岸線が日本一なら関係市町村も多く経済圏も大きい、オール霞ケ浦で日本一をアピールできないかという思いが、ホームページ制作の動機になったという。「霞ケ浦のイメージを変え、自分たち自身が霞ケ浦を誇りに思うきっかけになれば」とも話す。

昭和レトロの土浦の老舗紹介も

若田部さんは現在、市勤労青少年ホーム(同市文京町)に勤務する。筑波大学芸術系でデザインを学び、同大学院を修了後、建築設計事務所を経て、土浦市職員になった。これまで古い街並みや老舗が残る土浦の魅力を、「昭和レトロ」というキーワードでアピールし、2015年から常陽新聞にオリジナルのイラストと記事で土浦の老舗を紹介する「土浦画報」「土浦老舗博覧会」を連載した。その後、生活情報誌「月刊ろたす」、茨城新聞などにもイラストと記事を連載、「日本一の湖ー」では、これまで各紙に連載してきたイラストも含め紹介している。

霞ケ浦流域の魅力について若田部さんは「一つのカラーでまとめられない、いろいろ違ったおもしろさがある」とし「広域のつながりをもたせて、日本一をアピールしたい」と話す。将来は、関係団体や企業などとコラボして、サイクリスト向けの紙の地図をつくりたいと語る。(鈴木宏子)

五十嵐つくば市政 揺らぐその原点 《吾妻カガミ》112

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つくば市役所正面玄関サイド

【コラム・坂本栄】つくば市政が滑稽なことになっています。広く意見を聴いて施策を進めるという五十嵐市政の基本がお留守になり、市民の関心が強い事業の策定作業がオープンになっていないと、市民グループから批判されています。五十嵐さんは執行部主導で施策を進めた前市長を批判する運動を繰り広げ、その勢いに乗って市長になった人です。ところが、その原点ともいうべきところを突かれるという、おかしな展開になってきました。

「住民監査請求」棄却理由が傑作

問題になっている事案は「つくばセンタービルリニューアル事業」(総事業費10億3800万円)です。市民グループが、この事業は10億円以上を費やす案件だから、策定に際しては広く意見を聴かなければならない大規模事業に当たるのに、その事業評価が不十分だったと、5月中旬、市に住民監査を請求しました。詳しくは「…18人が住民監査請求」(5月12日掲載)に出ています。

7月中旬、市監査委の監査結果が市民グループに郵送されましたが、市の見解を踏まえてまとめられた結論は「大規模事業評価の対象にしなくてもよい」でした。そのポイントは「監査請求を棄却…」(7月14日掲載)をご覧ください。

棄却理由が傑作です。再生事業を担う会社「つくばまちなかデザイン」への市出資金6000万円は事業費ではないから、この額をマイナスすると事業規模は10億円を下回り、大規模事業の定義(総事業費10億円以上)に当てはまらない、という理屈でした。しかも、出資金をどう扱うかは公表されておらず、市職員マニュアルに書かれていたというのです。アウトかセーフかを決めるルールが非公表では、野球も行政も成り立ちません。

自慢の「大規模事業評価」を回避

前市長の大規模事業(総合運動公園建設)策定が執行部主導であったことから、そういった閉ざされた策定作業を反面教師とし、五十嵐さんの手でまとめたのが「大規模事業評価」です。ところが、その事業評価を回避するため、(出資金も一般事業費も税金なのに)出資金は合計から外すという計算式で、市長自慢の評価作業から逃げました。五十嵐市政の(市民の声に耳を傾けるという)原点はどこに行ったのでしょうか。

センタービルリニューアル事業では、市案の「エスカレーター2基設置」も市民の反対に遭い、見直しを迫られています。事業策定だけでなく、事業内容そのものも「NO」と言われているわけです。市長在任5年。何か実績を残さねばと焦っているのでしょうか? 市民の関心が強い事業については評価作業を行う。これが五十嵐流だったはずですが。(経済ジャーナリスト)

追記:上記の展開については「つくば中心地区再生 出だしでつまずき」(5月17日掲載)でも取り上げました。ご参考まで。

一周忌に「根本健一の世界」展 19日からつくば文化郷

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会場のつくば文化郷長屋門入口=つくば市吉瀬

筑波研究学園都市の建設初期から、里山集落の自然と歴史を生かしたサスティナブルな事業展開と文化の創造・発信に取り組んできた、根本健一さんをしのぶ企画展が19日から、つくば市吉瀬の国登録文化財、つくば文化郷で開かれる。

未発送のダイレクトメール

根本さんが66歳で亡くなったのは、昨年8月4日のこと(2020年8月14日付)。その遺品の中から、未発送のダイレクトメールが見つかった。「ルーラル吉瀬アトリエT2のアーティスト展」と題した案内状で、19人の作家名が記されていた。

吉瀬の根本さんの旧宅には、隣接して若い芸術家たちが寄宿していた「アトリエT2」があり、19人は約30年の間に巣立っていった作家たちの名だった。筑波大学名誉教授、蓮見孝さんによれば、「アーティスト・イン・レジデンスの先駆けともいえる活動」と評価できるそう。展覧会の期日も書かれていない案内状こそ、根本さんがやり残した最期のプロジェクトだった。

生前根本さんの周囲に集っていた学者や編集者、クリエーターたちがその遺志をくみたいと実行委員会(井坂敦実委員長)をつくり、遺族の了解のもと一周忌企画展を準備した。文化郷に部屋を借りて活動した斎藤さだむさん(写真)、岩崎真也さん(映像)らも実行委員に加わり、アトリエT2の出身者と連絡を取り合ってきた。

根本さんと「T2」と呼ばれたアトリエ付き住宅

つくば文化郷は根本さんの旧宅で、2015年に国有形文化財に登録された。ここを足場に、根本さんは野良仕事(ブルーベリー園)・手仕事(陶芸舎)・山仕事(フォンテーヌの森)など田園プラン社による事業を展開し、郷土資源である古民家や石倉、風車などを生かした地域起こしに取り組んできた。

斎藤さだむさんは「企画展を準備して改めて根本さんの仕事に向き合ってみると、環境デザイナーというのかな、アーティストとしての姿が見えてきて、アートと仕事とが融合した生き方だったことが分かってくる」と語る。

展示は、井口壽乃(芸術学)、長内夏希(彫刻)、五十殿ひろ美(翻訳)、児玉幸子(メディアアート)、小林努(日本画)、西垣美央(日本画)、比護武司(陶芸)、星加民雄(視覚芸術)、増田聡子(絵画)、山本将之(陶芸)=敬称略=らが出品するアート部門と、つくば文化郷を拠点にした地域づくりなどの足跡をたどる事業活動部門で構成する。

会期は24日まで。21日午後には、山本幸子さん(筑波大学システム情報系)ら3人による講演会、大久保純子さんによるお茶会も企画されている。(相澤冬樹)

◆一周忌企画 実現した仕事・果たせなかった夢「根本健一の世界」講演と展覧=19日(木)~24日(火)午前11時~午後5時、つくば文化郷(つくば市吉瀬1679-1)。問い合わせは実行委員会(電話090-2905-5196)

在宅介護 最近事情 《介護教育の現場から》9

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専門学校の授業風景

【コラム・岩松珠美】梅雨がやっと明け東京五輪が始まった。新型コロナのワクチン接種は進んでいるものの、新規感染者はなかなか収まらない。茨城の場合、65歳以上の高齢者、特別養護施設などの利用者、介護・看護スタッフへの接種に早くから取り込んだため、高齢者施設でのクラスター発生は減っている。

医療機関スタッフも先行して接種、集団接種の体制も整備されたが、遅れたのは障害福祉の分野であった。特に、筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう)など、自宅で医療的ケアを受けながら生活している方々への接種が遅れた。介護保険制度ではなく、障害福祉サービスを活用しながら生活を送っている方々の多くには、まだ接種券が届いていない。

小規模多機能居宅介護事業所

コロナ禍下では、施設の介護実習受け入れも厳しかったが、在宅で療養生活を送る高齢者や障害者を訪問する実習の受け入れは難易度が高かった。介護実習者は留学生が多いこともあり、日本家屋の造りなどに接する機会が少ない。留学生に在宅介護を学んでほしいという受け入れ先もあり、なんとか実現することができた。

今、急性期病院や慢性期病院では、看護師不足だけでなく、患者の世話する介護福祉士の人手不足が問題となっている。病気治療はある程度終えることができても、日常生活の支援を必要とする患者向けの介護サービスがあまり存在しない。

その中で、かすみがうら市にある「小規模多機能居宅介護事業所」が、デーサービス受け入れ、ショートスティ受け入れのほか、訪問介護サービスも提供している。これは住み慣れた家での生活を可能にするものであり、この種のサービスが広がることを期待したい。(つくばアジア福祉専門学校校長)

夏休みのヒントを発見する展覧会 つくばで「夏のキッズアート」

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学生による6例の工作や関彰商事によるアンブレラアートなどが並ぶ会場=スタジオ'S(つくば市二の宮)

子どもたちの夏休みの自由工作を後押しする「夏のキッズアートおうえん展」が8月9日まで、つくば市二の宮のスタジオ’S(関彰商事つくば本社内)で開催中だ。筑波大学芸術学群の学生が考案した工作の実作品や作り方を紹介展示している。入場無料。

学生による工作の展示は6種類。日本画ブースの「風船で和紙のランプシェードをつくろう!」、彫塑ブースの「小麦粉ねんどでオリジナルメダルをつくろう!」など、専攻ごとの特色あふれるものが並んでいる。展示台の高さは子どもの目線に合わせ、各作品の横に設置された小型モニターでは、動画やスライドで作り方も紹介している。

会場では工作の制作キット(主な材料と説明書)も日替わりで配布しており、1日20キット限定で、内容はホームページSNSで見られる。

7月31日には、セキショウブースが紹介する「カラフル♪アンブレラアート」のキットを配布。さまざまな色のビニール傘に自分で絵を描いて楽しもうという内容で、常総市から来た小学2年生の栗原結衣さんは、傘をもらって「色がきれい。いっぱい描けそう」と喜んでいた。

アンブレラアート用のカラフルな傘を来場者にプレゼント

つくば市内の小学5年と2年の姉妹は、洋画ブースの「小石に絵を描こう!」に興味津々。自分で見付けてきた石の形に合わせて、どんな絵を描こうかと考えるのが楽しそうだという。

スタジオ’Sでは2016年から筑波大学と連携して、毎年夏と冬に「キッズアート体験」を行ってきた。会場で子どもたちが学生に指導してもらい、工作を完成させるというやり方だが、コロナ禍で実施が難しくなった。昨年はホームページで紹介した工作を家庭でつくり、写真に撮って投稿してもらうオンライン方式に変更。そして今年は初の展覧会形式での開催となった。

「実物を見ることでより楽しく、制作の参考にもしていただけるのでは」と、スタジオ’Sの浅野恵さん。来場者の一人は「毎年子どもと参加しており、大学生から教えてもらうのも楽しかったが、今年は作品を見てヒントをもらったり、自分で工夫したりして、できる範囲が広がるかもしれない」と話した。(池田充雄)

椅子から転げ落ち 右手が使えない 《食とエトセトラ》13

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台所道具

【コラム・吉田礼子】 青天の霹靂(へきれき)。2週間前、料理教室の後片付けのとき、大鍋を高所に上げようとしたところ、パイプ椅子から転げ落ち、救急車で運ばれた。痛いだけでなく、寒気がして、口が乾いてくる。右手首が曲がり、ありえない方向を向いている。覚悟を決め、これからの3~6カ月を闘いたい。

私事なのでためらいもあったが、友だちに言われ、フェイスブックでお知らせした。思いがけず、たくさんの方からお見舞いや応援メッセージをいただいた。不思議に痛みが和らぎ、この状況に立ち向かう勇気が湧いてきた。オリンピックに限らず、応援によって限界を超える力を発揮できることでは、相通じるものがある。

人は、愛されたり、おいしいものを食べると、幸せホルモンが出てきて、免疫力を高められるそうだ。ありがたいと思う。

ペットボトルは両手でも開けにくい

利き手の右が動かない。初めて実感した、鈍痛、むくみ、痺れ。指を曲げられない。左手しか使えない状態で実感したことがある。ペットボトルが開けられない。牛乳パックを開けるのも無理。袋入りせんべいや豆腐パッケージも開けられない。

最近、ペットボトルは両手でも開けにくいと思っていたが、同年代の多くの人が手の力が弱くなったとぼやき、開けられない自分を責めている。いつから、ペットボトル、びん詰め、袋詰めが開けにくくなったのだろう。オープナーが便利グッズに登場し、しっかり締められるようになった。

その後、(不自由な人が健常者と同じように使える)バリアフリーが普及。1980年代中ごろ、(老若男女、健常者もそうでない人も使いやすい)ユニバーサルデザインが出てきた。台所道具も、グリップが太く、使う人の立場を考えたデザインが登場した。用具のつくり手は、使う人の立場になって、モノづくりをしてほしい。完治はまだまだ先だが、くじけず、まい進したい。(料理教室主宰)

市立学校教員が新型コロナ つくば市

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つくば市役所

つくば市は30日、市立学校教員が29日、新型コロナウイルスに感染していることが分かったと発表した。

市教育局学び推進課によると、学校は夏休み中のため、臨時休校などの措置は実施しない。

学校の濃厚接触者については8月1日にPCR検査を実施するという。

つくば工科高校サポートクラブ(2) 《塞翁が馬》3

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【コラム・三浦一憲】前回「つくば工科高校サポートクラブ」の続きです。見学会一覧(1~11)は前回コラム(6月28日掲載)をご覧ください。

1回:建設中のショッピングセンター見学(1999年7月)

設計した会社の担当者による事前レクチャーのあと、友部の建設現場で受講。学校手配のマイクロバスで移動。教科書には書いてないことを知る現場見学会。生徒にはいい刺激に。

2回:国際会議場、ノバホールなど見学(19998月)

これは挑戦的な企画でした。使用目的の違う3ホールを音響的な側面から見学。建築や音響の専門家でない外部の人間だから、いろいろな疑問に取り組めました。各ホールの音響的な違いを知り、ホールとは何かを感覚的に体験。ラジカセの生音を反響の少ない環境で体感してから、各ホールのステージで鳴らし、1階席、2階席でホールの持つ音響的な特性を体感。

NHKが音響設計したノバホールは反響音が長く、ステージ上に置かれたラジカセの音が豊かに聞こえました。反響音や残響音が豊かな音を作っていることも体験。高校生にはいい勉強になりました。現地で保護者も参加、大人にも刺激に。

3回:ウエディングドレス製作の見学(19999月)

ウエディングドレスのデザインから出来上がるまでを見学しながら、デザイン専門家による講義。最後に、ドレスを女子生徒が着る体験も。デザインから製品になるまでのモノづくり工程を体験。

4回:アメリカン2×4住宅の見学(19999月)

日本の在来軸組み工法とは違う、アメリカ2✕4(ツーバイフォー)プラットホーム工法をモデル住宅で見学。その内装や外観は刺激的でした。当時としては珍しい、ペアーガラス木製サッシの省エネ断熱効果も体験。(まちかど音楽市場代表)

権利獲得目指した障害者運動の歩み語る 「茨城青い芝の会」60周年記念誌

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60周年記念誌「大いなる叫び」を持つ里内龍史さん(茨城青い芝の会会長)

脳性まひ者を中心とする障害者団体「茨城青い芝の会」(里内龍史会長、土浦市神立)がこのほど、60周年記念誌「大いなる叫び―茨城青い芝の会の障害者解放運動」(A5判、251ページ)を刊行した。 

同会は60年前の1961年、脳性まひ者の折本昭子さん=故人=と、千代田村(現・かすみがうら市)上志筑の寺院の大仏空(おさらぎ・あきら)住職らが中心となって結成した。63年には大仏住職の寺に障害者が共同生活をするコロニー「マハラバ村」をつくった。その後、村を出た障害者たちが全国各地で青い芝の会を結成し、70年代には先鋭的な社会運動を起こした。運動を通して生まれた「自分たち抜きに、自分たちのことを決めるな」という訴えは、その後の国内のさまざまな人権運動に影響を与え、現代の「当事者主権」につながったとされる。学術研究の対象としても近年、再評価の動きが起こっている。

記念誌は、14人と1団体による25編の原稿で構成され、障害者の権利獲得を目指した当事者らが、自らの闘いの歴史を振り返っている。当事者主権の思想を育んだ共同生活がどのようなものだったかも垣間見せる。さらに、知的障害者らが殺傷された津久井やまゆり園事件や、新型コロナで論争になった治療の優先順位を決める命の選別問題など、現代もある優生思想や差別について、当事者の視点から語っている。

会長の里内さんは記念誌出版の経緯について「(マハラバ村を経験した)茨城青い芝は僕だけになった。最後の大仏門下生として後世に対して、青い芝の会の偉業を文章化して残したいと思っていた」と話す。

昨年4月、里内さんは「障害者解放運動から」と題した講演を行う予定で一昨年から準備をしていた。里内さんは障害のために、声を出すことが出来ない。そのため、講演のために原稿を作り、それをパソコンで読み上げる予定だった。しかし、コロナ禍でその講演は延期となり、ついには中止になってしまった。

その際「茨城青い芝の60周年記念でもあるので本にしよう」という提案があり、「講演録や大仏和尚が書いた文章、先輩たちが書かれた文章などをまとめて一冊の本として店頭販売したい」と考え、出版に至ったという。里内さんは「この記念誌の読者の中から新しい人間関係が出来てくれればうれしい」と話す。

身体障害者のコロニー マハラバ村

茨城青い芝の会が結成された当時、身体障害者に対する公的な介助サービスは皆無で、重度の障害者は学校教育からも排除され、自宅に軟禁されることも少なくなかった。創設者の折本昭子さんは記念誌の冒頭で、当時、自宅に閉じ込められていた障害者にどのようにして声を掛け、会結成に至ったかを記している。

結成間もない1964年、脳性まひ者が共同生活をするコロニーを、かすみがうら市の閑居山(かんきょざん)に建設し、全国から集まった最大30人を超す障害者たちが共同生活を送った。のちに「神奈川青い芝の会」を創設し先鋭的な社会運動を展開した横田弘さん、小山正義さんらもコロニーの一員で、記念誌は、2人が共同生活を振り返り、そこで育まれた思想について語った文章を紹介している。

記念誌の裏表紙には青い芝の会の「行動綱領」が書かれている。行動綱領を起案した横田弘さんは「この有史以来初めてといってもいい脳性マヒ者解放運動の指針は、一九六〇年後半の茨城『青い芝』の行動の中から必然的に生み出された思想だった」と述べる

コロニーの呼び名「マハラバ」は、サンスクリット語で「大いなる叫び」という意味で、記念誌のタイトルはそこから取られたものだという。

マハラバ村建設の中心になった、閑居山の麓にあった願成寺(がんじょうじ)の大仏空住職は、共同生活の精神的支柱にもなった。会長の里内さんは記念誌で、大仏住職について「体躯は大きく、大の好物は塩辛であった。ガンジーの非暴力主義と毛沢東の解放闘争を高く評価していた」と記す。住職が生前記した障害者の性愛と労働についての文章も2編紹介している。

しかしマハラバ村は長続きせず、1969年頃までに事実上、崩壊したといわれる。村を離れた障害者たちはその後「神奈川青い芝」として知られるようになり、76年に、車いすの乗車拒否に抗議し、路線バスに立てこもる「川崎バスジャック闘争」を展開するなど、各地で先鋭的な社会運動を繰り広げた。

マハラバ村から去った障害者たちが先鋭的な社会運動の担い手として広く知られるようになった一方で、村に残り続けた障害者もいた。残った人たちのことは今まであまり知られていないが、記念誌は、残った障害者たちの生活についても紹介し、マハラバ村は「拠り所でありアジール(聖域)ともなっていった」と記す。

会長の里内さんは1980年に滋賀県からマハラバ村に移り住んだ。1984年、大仏住職が逝去。それをきっかけに里内さんは村を出て、千代田村(現かすみがうら市)で自立生活を始めた。

マハラバ村での暮らしが自身に与えた影響について里内さんは、取材に対し「社会観と歴史観と味覚が変わった」と話す。その後の自立生活について、「(当時は)役所の支援や介護の体制まったくない時代だった」。自立生活の資金は自分たちで作り出すしかなく、よく柏駅や浅草駅で街頭カンパを行い「多い時には一日で5~6万円を得ることもあった」とも記している。

1987年、里内さんは折本さんの後任として会長となった。その後、筑波技術短大建設反対阻止闘争(1988年)、つくば養護学校建設反対運動(1992年)、従業員の知的障害者を暴行・強姦した水戸事件における支援など活動を重ね、茨城青い芝の会は結成以来、障害者解放を目指す運動を続けている。(山口和紀)

◆茨城青い芝の会60周年記念誌「大いなる叫び~茨城青い芝の会の障害者解放運動」は6月30日発行。価格は1000円(税込)。