金曜日, 11月 7, 2025
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450万円! 返礼品に「貸し切りナイトプール」 土浦市

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貸し切りナイトプールの対象となる「ヒューナックアクアパーク水郷(水郷プール)」の一周270メートルの流水プール

ふるさと納税

ふるさと納税の返礼品に、土浦市が「夜間貸し切りナイトプール」を出品している。霞ケ浦総合公園にあるヒューナックアクアパーク水郷(水郷プール)を夜6時30分~9時まで、一夜貸し切りできる利用券で、450万円の寄付金で利用できる。同市の返礼品の中で最高額になる。

借り切りできるのは、一周270メートルの「流水プール」と「ちびっ子プール」。対象期間は7月28日~8月8日までと8月25~29日まで計17日間。仮設の夜間照明を設置し、プール監視員が配置される。飲食物や椅子などの持ち込みもできる。個人でもグループでも利用でき、グループ利用の場合、利用人数を100人までとする。

ふるさと納税を増やす取り組みの一環で今年新たに実施した。市によると、4日時点で寄付者はまだいないという。

同プールは公営の屋外レジャープールで、敷地面積約1.7ヘクタール、流水プール、ちびっこプールのほか、スライダープール、多目的プールがある。水面面積は約2600平方メートル。2016年にリニューアルオープンした。

今年は、昨年の同時期と比べ来場者が5000人増えるなど日中は大変にぎわっている。厳しい暑さに加え、県内や近県で屋外レジャープールの閉鎖が増えている影響とみられている。(鈴木宏子)

シングルマザーの支援に取り組む弁護士 田中記代美さん 土浦【ひと】

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田中記代美弁護士=7月に土浦市社会福祉協議会と共催で開いたフードパントリー付き相談会会場

土浦市の田中記代美弁護士(59)は、弁護士の仕事を超えてシングルマザーの支援に取り組む。2023年8月、支援団体「ママのホップ・ステップ・ジャンププロジェクト」を立ち上げ年3回、夏休み、冬休み、春休みの前にそれぞれフードパントリー(食糧支援)付相談会を開いている。

自身がシングルマザー。離婚調停や離婚裁判を経験し、当事者としての経験を生かすことができないかと44歳で弁護士になった。土浦市出身。国学院大学で法律を学び、同大学院修士課程を修了後、都内のデベロッパーで不動産調査などの仕事を担った。その後、誘いがあって都内の弁護士事務所に転職、事務長として事務部門を統括した。

やがて結婚し退職、専業主婦になった。結婚して2年目、夫から暴言暴力を受けるようになり、当時1歳11カ月の息子を抱いて土浦の実家に逃げた。「家を出るまでは自分が悪いのではないかと思うこともあったが、家を出てみると自分がいかに理不尽な状況にあったのか客観視できた」と振り返る。

三つのパートを掛け持ち

知り合いの同い年の男性弁護士に離婚裁判を依頼した。一生懸命やってくれたが、家庭内の人間関係、例えば夫の言動から受ける心身の影響の大きさや嫁姑の関係、親戚付き合いなど、悩みの根っこのような前提事実がなかなか伝わらず、もどかしさを感じ続けた。離婚に至るまでの手続きを通して、女性の離婚問題は女性の弁護士が担当した方が状況が伝わりやすく良いのではないかという思いが強まっていった。

当時土浦の実家に身を寄せ、三つのパートを掛け持ちしながら子供を育て、裁判を闘った。朝7時半、子供を自転車に乗せて保育園に送り、朝8時30分から夕方5時まで近所の文房具店で店員として働いた。その後スーパーの花屋で夜9時まで店員として働き、土日は市内の結婚式場で介添のパートをした。

法科大学院に挑戦

別居から離婚調停を経て離婚裁判まで3年掛かって和解が成立。その頃、法科大学院制度がスタートしたというニュースを見た。それまで考えたこともなかった弁護士という仕事が自分にもできるかもしれないと思い、39歳で法政大学法科大学院に入学。奨学金を借り、貯金を取り崩しながら大学院に通った。ちょうど子供が自宅近くの保育園に転園できることになり、実家の母に送迎を頼むことが出来たことが幸いした。

3年間、猛勉強した。土浦から市ケ谷の法科大学院まで、片道約2時間の電車での通学時間は本を読んだり、過去問題集を解く集中できる時間になった。子どもをかかえて後戻りができず試験で点数を取らなければならない状況はとても苦しかったが、何とか合格でき、地元の土浦市中央に「ファミリー法律事務所」を立ち上げた。普通の主婦が普通に生活していて直面しやすい家事事件を中心に「マチベン」としてコツコツと仕事をこなした。

収入を上げていく支援

法律事務所を立ち上げて10年が経った頃、横浜家庭裁判所の家事調停官になった。家事調停官は非常勤の裁判官で、コロナ禍の2020年10月から2年間、週1回横浜に通った。裁判所から見た調停事件では、多くのシングルマザーが弁護士を付けず、おそらく相談もできないまま、一人で養育費などの調停に臨んでいた。その様子を見て「弁護士という専門家の手助けが必要であっても、弁護士への相談がシングルマザーから見ていかに高いハードルか改めて感じた」という。

その後、たまたまソーシャルビジネスの概念を知ったことを機に、シングルマザーの貧困問題解決のためには、本人の収入を上げていく支援が必要だと思い至り、2023年、友人たちと「ママのホップ・ステップ・ジャンププロジェクト」を立ち上げた。

最初の一歩として、フードパントリーがある無料相談会を開き、対象者の相談を受けることから始めた。弁護士の法律相談だけでなく、ファイナンシャルプランナーが担当する教育費や奨学金の相談、保健師が担当する育児や健康の問題、高校の職員やキャリアコンサルタントが担当する進学の相談、社会福祉協議会の職員が担当する福祉制度一般を含むよろず相談なども行うことにした。シングルマザーの悩みはいくつもの問題が複雑に絡み合っていることが多く,どこから手を付けて良いのかわからないこともある。そのような時に、互いに気心が知れた異なる資格のメンバーと解決方法を一緒に考えることもできる。同じ事例を見ても,持っている資格によって見る視点が異なるから、意外な解決方法が見つかることもある。「皆で考えると視野が広がり一人で思いつかないことを発見できる」という。

支援の輪広がる

支援の輪は徐々に広がりを見せ、昨年12月上旬に開催したフードパントリー付相談会は土浦市社会福祉協議会との共催で開催した。今年度は7月と12月に開催する同相談会が市社会福祉協議会との共催となった。高校生や大学生のボランティアも参加してくれるようになり、シングルマザーが相談している間、ボランティアの大学生が子どもたちに読み聞かせをしたり、高校生が輪投げなどのゲームをする場をつくってくれたりしている。市役所の協力を得て防災をテーマに災害時の知識を学ぶ試みも行っている。支援物資についてもフードバンク茨城や関連NPOとの連携ができてきた。

フードパントリー付相談会の次の一歩は、シングルマザーの就業支援の一歩にしたいと考えている。試みにキャリアコンサルタントのメンバーと自身が協力して、アルバイト勤務のシングルマザーが年収300万円を超えるフルリモート勤務に転職することに1件成功したが、後に転職せざるを得なくなり、就業支援の難しさと就職の入り口だけではないその後の伴走の大切さを痛感している。

「児童扶養手当や養育費は子どもが成長すれば受け取れなくなってしまう期間限定のお金なので、シングルマザーの貧困問題はそのまま高齢女性の貧困問題に直結している。だからシングルマザー自身の収入を上げることはその後の人生においてとても大切。このプロジェクトで何か一つのモデルをつくることができれば」と話す。(鈴木宏子)

2mの「粘土の塔」作りに挑戦 小学生が筑波大生と

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学生と創作を楽しむ参加者の小学生

スタジオ’Sで川島史也さん進行

筑波大助教で彫刻家の川島史也さん(35)と同大で芸術を学ぶ学生らによる、小学生を対象とした夏休み企画「造形教室 粘土の塔をつくろう!」が3日、つくば市二の宮のギャラリー「スタジオ’S」で開かれた。午前と午後の2部制で、それぞれ約20人ずつの小学生が市内外から参加した。イベントでは5班に分かれた子どもたちが、、学生らにアドバイスを受けながら、用意された2メートルの木の棒に約100キロの粘土を貼り付けて、オリジナルの塔を完成させた。イベントは、同ギャラリーを運営する関彰商事と筑波大学の連携による芸術活動「スタジオ’S with T」による取り組みとして行われた。

進行役の川島さんが「もっと大きく作っていいんだよ、どんどん粘土を使っていこう」と呼び掛けると、参加者が「よし、ここにトンネルをつくろう」「もっと大きな塊を貼り付けよう」などと声を掛け合う。子どもたちは手足や服を粘土まみれにしながら、ちぎった粘土で好きなキャラクターや食べ物、自然の動植物など、自由に形を作り、木に貼り付けていく。

脚立に上り粘土を貼り付ける子どもたち

桜川市から参加した小学1年生の溝部冬弥さん(6)は、脚立に登って自分の身長より高い場所に霧吹きで水をふりかけながら粘土を貼り付けた。「粘土で動物や海の生き物を作るのが好き。今日は、大きな粘土を思いきり切ったり、くっつけたりできてすごく楽しかった。またやってみたい」と笑顔で話した。

小学5年の子どもと来場したつくば市在住の永井勇治さん(58)は「豊かな発想をもとにいろいろな形を作る子供の様子に『よくできるなあ』と感心した。自由に楽しむことができて、いい機会になったと思う」と話した。

作業する子どもを手伝った同大学院1年の小川晃平さん(22)は「普段は木彫で(装飾的・説明的な要素を削ぎ落とす)ミニマル・アートに取り組んでいる。自由にものづくりに向き合う子どもたちからパワーをもらうことができ、とても良い刺激になった」と語った。

子どもたちに声を掛ける川島史也さん

自身も彫刻家として活動し、多数の受賞歴を持つ進行役を務めた川島さんは「創作の魅力には、大きな作品を作るということがある」としながら、「今の時代では、タブレットやスマートフォンなど指先を使うことは増えたが、手全体を使う機会が減っている。彫刻は、実際にものに触れることができる芸術。ものに触れることで、今、自分が生きていることへの実感につながる。子どもたちには、粘土の感触とともに(制作物の)スケールの大きさを感じてもらいたかった。ぜひ、また大きな作品を作る機会があればチャレンジしてほしい」と呼び掛けた。(柴田大輔)

関心高く300人参加 小規模特認校 保護者説明会 つくば市

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3日開かれた小規模特認校の保護者説明会の様子=つくば市役所

来年4月、谷田部南と栗原小2校

来年4月から、つくば市立谷田部南小と栗原小の2小学校が小規模特認校になるのを前に(24年12月10日)、保護者説明会が3日、同市役所で開かれた。約300人の保護者らが参加し関心の高さを示した。募集人数は2校とも各学年17人(2校6学年で計204人)で、募集人数を超える申請があった場合、抽選となる。

小規模特認校は少人数を生かした特色ある教育をする学校で、通学区域を越えて市内どこからでも通学できる。ただし保護者が送迎するか本人が公共交通機関で通学することが必要。

森田充教育長は説明会で、同市の小規模特認校について「(子供一人ひとりを尊重し自律性や共生を重視するドイツ発祥の教育モデルの)イエナプランの教育理念や取り組みを参考にしながら、教職員が子供たち一人ひとりに深く関わりながら、子供自身が自分らしく、学ぶ意義に気付けるような支援をしていきたい」などとあいさつした。

特色として①きめ細かな学習支援などにより自分のペースで確実に学ぶ②異学年学習などにより友人・先生と深く関わる③体験や探求的学習を中心に、子供の問いにとことん向き合う④専門家や地域住民など外部人材を活用し多くの出会いや発見を得る⑤すべての児童に活躍と挑戦の機会があるーの五つを掲げる。

カリキュラムについては例として▽朝の会、昼休み、帰りの会などに異学年で活動する▽午前中、1~4時間目の国語、算数、社会、理科。英語などは一人ひとりの進度に合わせて自律的に学習に取り組む▽午後の5時間目の音楽、図工、体育、家庭科、市独自の総合的学習時間のつくばスタイル科などは少し長い60分授業とし、外部の研究者を招くなどして自分が疑問に思ったことを探求するーなどが示された。

2023年度から県のパイロット研究推進校として小規模校の良さを生かした実践が行われている谷田部南小と、今年度から準備をしている栗原小からは具体的な取り組みの紹介があり、他の人の話に耳を傾けることを重視しながら異学年で輪になって対話する「サークル対話」、授業前の朝の会で何をするか、自分で1週間分の学習計画を立てる「マイプラン学習」などの実践例が紹介された。

今後は、8月中旬に小規模特認校の就学意向アンケートを実施して希望人数などを把握し、11月下旬から12月中旬まで申請を受け付ける予定だ。卒業後の中学校進学については、自分が住む通学区域にある中学校または小規模特認校の通学区域にある中学校のどちらかを選択できる。

説明会では参加者から「小規模特認校になっても特別支援学級は継続するということでよいか」「成績はどのように評価するのか、他校と違いはどこにあるのか」「谷田部南小は現在児童数が56人で、来年度から児童数が(102人に)増えると思うが、教員の数は増えるのか」などの質問が次々に出て、質問者が途切れなかった。市教育局は「特別支援学級は継続する」「成績評価は原則、他の学校と同じだが、特徴的な取り組みについてどういう頑張りがあったのかは(通知表に記載するなど)お返しする」「少人数の教育を保つため1学年の上限を17人にしている。市として教員を採用し配置するか十分検討したい」などと答えていた。質問できなかった保護者については、市の問い合わせフォームで質問を受け付け、市ホームページで回答するという。

小学3年と5歳の2人の子供をもつ母親は「上の子は人数が多い大規模校に通っている。来年小学生になる下の子は、人数が多いと学習面で付いて行けるか心配なので、少人数の学校に通わせたい」と語った。現在、子供が4歳という母親は「どういったことをやるのか知りたくて参加した」などと話していた。

説明会の参加者が300人に及んだことについて久保田靖彦市教育局長は「小規模特認校に関心ある保護者が多いということが把握できた。我々としても情報発信なども含めしっかりと準備していきたい」などと話していた。(鈴木宏子)

有明骨董ワールドを主催する竹日さん《ふるほんや見聞記》7

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竹日忠芳さん

【コラム・岡田富朗】竹日忠芳(たけひ・ただよし)さんは「生活骨董50年」(里文出版)の著者であり、骨董市創成期の先駆者として知られる竹日忠司さんのご長男として1952年、新潟県に生まれました。立命館大学文学部を卒業後、東京都目白に「人形・骨董 たけひ」を開店、著書「人形今昔」(北辰堂出版、1997年)を刊行されました。

同年、竹日さんが運営事務局長として、東京ビッグサイトで国内最大級の骨董・アンティーク大販売会「骨董ジャンボリー」をスタートさせました。開催は43回を数えましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、2年間の中止を余儀なくされました。

その後、イベント名を「有明骨董ワールド」に改め、同じ会場・同規模で開催を継続。2026年2月21日・22日・23日開催することで、第9回目を迎えます。

有明骨董ワールドは現在、年2回(2月と7月)、各3日間の日程で開催されています。日本全国からディーラーが集結し、古美術品、骨董品、アンティーク、コレクタブルズ、古玩具、ミュージアムピース、さらには刀剣や小道具類に至るまで、さまざまなジャンルの品々が出品されます。

有明骨董ワールドの風景

8月には軽井沢で「蚤の市」

この骨董ワールドは、中国、台湾などのアジア、ヨーロッパ、アメリカなど、海外からもバイヤーが買い付けに訪れるほど、人気の高い骨董市です。

竹日さんが主催する骨董市はこのほかにも、国内で最も歴史ある室内骨董イベント「平和島骨董まつり」「横浜骨董ワールド」「新潟骨董まつり」など、多岐にわたります。

8月には、避暑地・旧軽井沢の「旧軽井沢公民館」で「軽井沢蚤(ノミ)の市」(1日~31日)が開かれます。会場には、駐車場も完備されており、旧軽井沢銀座通りからも近く、軽井沢会テニスコートのそばです。

和洋骨董、アンティークなど、ジャンルを問わずさまざまな品がそろい、珍しい品物の入荷もあります。ご関心がある方は出かけてみてはどうでしょうか。(ブックセンター・キャンパス店主)

ディズニーの国で小児がん克服 陽子線治療センターに新棟 筑波大病院

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ディズニー壁紙お披露目のテープカットに参加した子供たち=筑波大学附属病院

筑波大学附属病院(つくば市天久保)は2日、陽子線治療センター(櫻井英幸部長)に整備した新治療棟の開所式を行った。がんの陽子線治療施設は全国に20カ所あり、県内では1カ所だけだが、同附属病院は特に小児がんの治療で実績を積み重ねている。新しい治療棟ではエントランスから廊下、治療室に至るルートをミッキーマウスなどのディズニーキャラクターを配した壁紙でラッピングし、病気と闘う子供たちの不安をやわらげ治療の負担を安らげる。

開所式には永田恭介学長ら大学関係者、大井川和彦知事、五十嵐立青市長や医療関係者らが出席。これまでに同センターで治療を受けた子供たち8人も招待され、元気にテープカットに参加した。

第3世代の陽子線加速器

陽子線治療が行われる寝台周りの壁紙にはミッキーマウスが描かれた

新治療棟は日立ハイテク(東京)を代表とする企業グループのPFI(民間資金活用による整備)事業で整備された。地上4階建て、建築面積1275平方メートルで、旧棟に隣接している。1階に同病院では第3世代に当たる陽子線加速器を設置した。線形(長さ約3メートル)のライナックと円形(周長約18メートル)のシンクロトロンの構成で、旧棟の従来器よりコンパクトになった。最大230MeV(メガ電子ボルト、従来は同250MeV)まで加速して、水素の原子核である陽子をビーム状にして3階の回転ガントリーシリンダー内の照射部に送る。

治療室は2室設けられ、寝台上で患者を中心に回転させながら位置決めをすることで、360度どの方向からも陽子ビームを病巣に照射できる。照射ノズルで陽子線を絞った上、1点ずつ病巣に照射していく「スポットスキャニング方式」を導入し、複雑な形状の病巣にも高い精度で対応でき、治療の安全性と効果が得られるという。

現在稼働中の治療装置(旧棟)による陽子線治療は2001年から始まり、肝臓や肺など呼吸で動く臓器への照射技術・手法を確立するなどして多くの治療実績を積み上げてきた。熊田博明陽子線医学利用研究センター長によれば、特に肝臓がんへの陽子線治療では世界一の実績があり、小児がんに対しては東日本で唯一の治療施設としてウエートを高めている。海外からの患者も目立ってきた。

子供たちに安心と勇気を

乳幼児、就学前の子供も対象になる小児がん治療は、患者の肉体的、精神的な負担が大きい。放射線治療では、寝台に子供をひとり導き、患部が動かないよう安定させる難しさなどが障害になって、各治療施設での受け入れが進まない。保護者が付き添うことはできす、鎮静剤で眠らせるケースもあるが、1回約15~30分間かかる治療は10回から50回以上、毎日のように続く。

同センターで実際の治療にあたるのは診療放射線技師。そのうちの一人、宮本俊男さん(45)は旧棟で、子供たちの心をなだめ、安心して診察台に乗ってもらう環境づくりに腐心してきた。旧棟では犬のアニメキャラクターを使った壁紙を治療室に至る動線に設置して効果をあげたが、新治療棟の計画が浮上した2020年以降、「誰にでも受け入れられる素材を探して」(宮本さん)、ウォルト・ディズニー・ジャパン(東京)に協力を要請した。同社は病気と闘う子供たちとその家族を支援するため、こども病院などに様々なプログラムを提供している。

ディズニー社に協力を要請し環境づくりを推進した宮本俊男技師

ディズニー社の日色保社長は「最初はコールセンターにかかってきた1本の電話で、何のことかわからなかったが、話を聞いているうち是非やるべきだと思った」。同社による支援は国内5例目だが、大学病院では初めての取り組みとなった。

支援プログラムのメーンは、数多くのキャラクターが登場する「壁紙ラッピング」。治療棟3階の待合室で、患者は家族と離れ更衣室を経て管理区域に入り、治療室に向かう。長い廊下を通り、回転する寝台の置かれた照射室では対向する広い壁面に迎えられる。これらをミッキーマウス、ミニーマウス、ドナルドダックなどディズニーの人気キャラクターが埋め、長い廊下にはファインディング・ニモ、ライオンキングなどの物語世界に入っていく空間演出が施された。

病院側の希望でシンデレラも描かれた。宮本さんによれば「シンデレラは変身がテーマ。病気からも変身してほしい」との願いを込めたという。日色社長は「病院とのディスカッションを繰り返して物語世界をつくりあげた。すごいなあと思う出来だ」と感想を述べた。

治療開始は9月から

テープカットに参加し、ディズニー社からドナルドダックのぬいぐるみをプレゼントされた鏑木恵衣さん(6歳)は、4歳だった昨年2月に17日間、鎮静剤で眠らされることなく陽子線治療を受けた。「ばんざいしてタブレットでアニメを見ているうちに終わった。ちっとも痛くなかった。怖くなかった」という。

陽子線治療センターの新治療棟は9月から治療を開始。旧棟で受け入れていた患者はそのまま治療を続け、年内を目途に新棟への切り替えを完了する予定だ。(相澤冬樹)

5連勝ならず アストロプラネッツ

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7回表栃木1死二・三塁、三ゴロからの送球ミスで栃木の走者2人が返る。捕手は茨城の草場悠(撮影/高橋浩一)

栃木に敗れる

プロ野球独立リーグ・ルートインBCリーグの茨城アストロプラネッツは1日、土浦市川口のJ:COMスタジアム土浦で栃木ゴールデンブレーブスと戦い、1-7で敗れた。茨城の通算成績は20勝19敗1分で東地区3位。2位栃木との勝差は2.5に広がった。土浦で今季最後の試合だった。

【ルートインBCリーグ2025公式戦】8月1日、J:COMスタジアム土浦
栃木 020000221 7
茨城 000000010 1

1回裏茨城無死、先頭の山本が中前へチーム初安打を放つ

茨城は7月23日の群馬戦から28日の神奈川戦まで4連勝と波に乗っていたが、その勢いをつなげることができなかった。かつて日本ハムや巨人などで活躍した栃木の先発投手・吉川光夫に、7回まで散発3安打に抑えられた。

「吉川は球速は130~135キロ程度だが、甘く入るストレートがない。それが全て。コースぎりぎりの厳しいストレートを打たされ、甘い変化球を打てなかった」と茨城の巽真吾監督。「コントロールがいいだけでなく、打席ごとに配球も変えてくる。打ちづらい投手だった」と4番の原海聖。

2回裏茨城1死、鈴木寛太が右前へチーム2本目の安打

例えば原の第1打席、過去の対決から変化球で入ると読んで打席に入ったが、この日は外角低めの厳しいコースへのストレートで攻め込んできた。それでもカウント3-2まで粘ったが、最後はチェンジアップを呼び込みすぎて遊ゴロに倒れた。4回の第2打席ではスライダーから入り、2球目を芯でとらえたもののサード正面のゴロとなった。

「甘いまっすぐは来ないので、カウントを取りに来る変化球をしっかりとらえないと。打席ごとに考え方や狙い球など、アプローチを変え、同じようにやられない工夫が必要だった」と原の振り返り。

3回表栃木無死一・二塁、マウンドに集まる茨城ナイン

茨城の先発投手は金韓根。初回は三者凡退に抑えたが、2回に2安打と四球で2死満塁とされ、左翼線への適時打で2点を先制された。「初球でストライクが取れず、厳しいところへ投げなくてはという気持ちになっていた。走者が溜まっていたので外野フライでも1点入ってしまう状況だった」と金。

茨城の先発、金

その後は6回まで互いに無得点。次の得点がどちらに入るかで流れが大きく変わる状況で迎えた7回表、茨城の投手は5人目の佐藤友紀。2四死球から1死二・三塁のピンチを招くと、三ゴロから一塁への送球がそれ、一気に走者2人の生還を許した。8回表の投手は6人目の長尾光。内野安打と暴投、野選で無死一・三塁とされ、二ゴロはバックホームがそれて1失点、さらに内野ゴロでもう1点を失った。

8回裏、栃木の投手は2人目の嶋田航。ここで茨城打線が目を覚ました。先頭の1番・山本仁が内野安打、2番・高田龍が右前打で無死一・三塁。3番・新太郎の内野ゴロで1点を返し、4番・原の右前打で1死二・三塁。5番・北原翔が三振に倒れたところで、代打・杉木優斗が送られた。ここで栃木も3人目の堀越歩夢がマウンドに向かう。「相手はBCリーグでも一番の速球投手。それを初球の入りで捉えるイメージだったが、タイミングが合わず空振った。代打の1打席で結果を出すのは難しいが、割り切れて強いスイングをできたことは良かった」と杉木の振り返り。

8回裏茨城2死二・三塁、代打・杉木が空振り三振に倒れる

「厳しい場面で投手が四球などでリズムを崩し、野手もエラーなどで投手を支えきれなかった。苦しいときも持てるパフォーマンスを出しきることが課題」と巽監督。「明日も栃木との連戦になる。反省はするが引きずらず、いいゲームをするため集中したい」と気持ちを切り替えた。(池田充雄)

試合終了、観客席にあいさつする茨城ナイン

日本でも格差拡大が深刻に《地方創生を考える》31

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純金融資産別の保有所帯数=野村総研ニュースリリース(2月13日付)から転載

【コラム・中尾隆友】歴史を振り返ってみると、インフレが進む社会では格差の拡大が進み、豊かな中間層が疲弊して厚みをなくす。そして、既存の政治が信頼を失い、ポピュリズム政治が台頭する。

アメリカではすでに富裕層と庶民との格差が絶望的なまでに広がり、ポピュリズム政治が台頭する素地が形成された。その結果、トランプ政権が二度も誕生し、深刻な国家の分断が起こった。先日の参院選では、我が国でも同じことが起こることを予感させてくれた。

野村総合研究所が2005年から1年おきに実施している調査によれば、日本でも過去10年あまりで、格差拡大が恐ろしいほど進んでいた実態が浮き彫りになっている。

同調査では、純金融資産(金融資産の合計から負債を引いた額)の保有額に応じて、「超富裕層」(金融資産5億円以上)、「富裕層」(同1億円以上5億円未満)、「準富裕層」(同5000万円以上1億円未満)、「アッパーマス層」(同3000万円以上5000万円未満)、「マス層」(同3000万円未満)―と5つの層に分類している。

アッパーマス層の変化=同リリース記載のデータから中尾氏作成

2025年2月に公表された調査をみると、2023年時点の「超富裕層」「富裕層」「準富裕層」の世帯数は、大規模金融緩和開始前の2011年時点と比べると、それぞれ2.4倍、2.0倍、1.5倍に増えた。「マス層」も9.3%増えている。一方で、中間層に位置する「アッパーマス層」だけは9.7%減となった。

ポピュリズム政治の台頭を懸念

この推移が意味するところは、中間層から準富裕層以上に昇格する世帯が一定数いたのに対し、中間層からマス層へこぼれ落ちる世帯数が圧倒的に多かったということだ。アメリカほどでないにしても、日本の格差拡大の進行は深刻な状況にある。

2024年以降も株高とインフレが継続しているので、格差拡大が一層進んでいるのは間違いないだろう。今後はアメリカのようにポピュリズム政治が台頭し、国家が分断されるリスクは十分に考えられる。日本は大きな岐路に立たされている。(経営アドバイザー)

当事者家族の写真提供を知人に依頼 つくば市消防長を訓告処分

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つくば市役所

救急車不搬送事案で

高熱を出したつくば市の3歳男児(当時)が2023年4月、救急車を呼んだが病院に搬送されず、その後、重い障害を負った事案で(3月26日付)、つくば市は1日、市消防本部トップの青木孝徳消防長が当時、男児の家族の顔写真の提供を個人的に第3者の知人に求めていたことが分かったと発表した。

実際には写真を入手しなかったが、青木消防長の行為は公務員としての自覚を欠き、消防本部の長として不適切なものだったとして、市は7月28日付で消防長を訓告処分とした。訓告は懲戒処分ではなく厳重注意に当たる。

市消防本部によると青木消防長は、不搬送事案発生から約1カ月後の2023年5月中旬ごろ、男児の家族を知る知人に、家族の写真があったら送ってほしいと求めた。当時、不搬送案事案について家族から市消防本部に問題提起があり、家族と意見の食い違いがあったことから、どのような人物像か個人的に知りたかったためだと青木消防長は釈明しているという。

今年4月、男児の家族から、写真を入手しようとし、公務員及び消防長としてふさわしくない、などの申し出があり発覚した。

申し出を受け市人事課は青木消防長に聞き取りを実施、7月7日、市職員分限懲戒委員会を開催し、同28日、訓告処分とすることを決定した。市消防本部によると青木消防長は、軽率だったと反省しているという。

五十嵐立青市長は「今回発覚した行為は誠に不適切なもの。ご家族に対し心からお詫びすると共に、消防長の任命者としての責任を痛感している。消防長に対しては職責を再認識し、日ごろの業務を通じて市民及び職員からの信頼回復に努めるよう強く指導した」などとするコメントを発表した。

誤った宛名で21人に発送 つくば市 県戦没者追悼式の案内文書

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つくば市役所

つくば市が、県戦没者追悼式に参列予定の市民50人に7月25日発送した案内文書について、同市は31日、21人の封筒に記載された宛名に誤りがあり、11人に郵送されたと発表した。10人は「宛所に尋ねあたりません」として郵便局から市に返送された。

文書は参列予定者の送迎バスの集合時間や場所を案内する内容。29日午前9時ごろ、通知を受け取った市民から、名前が誤った封筒で届いている旨の問い合わせがあり、分かった。29人の封筒に誤りは無かった。

市社会福祉課によると、担当職員が名簿から封筒に印字する宛名データを作成した際、欠席者の氏名のみを削除してしまったため、氏名と連動していた住所がずれたことが原因という。さらに複数でチェックをしていなかった。

同課は7月29日と30日、対象者宅を訪問して謝罪し封筒を回収した。まだ連絡がとれてない市民については謝罪の文書を送付し、引き続き封筒の回収を行うとしている。

再発防止策として同課は、文書を発送する際には封筒に記載の住所、氏名について名簿と相違ないかを複数でチェックするとしている。

物理法則や数式が芸術に 1日からつくばメディアアート・フェス

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片岡純也さんと、フレミング「右手の法則」に着想を得た作品

芸術とテクノロジーが融合した作品の数々を展示する「つくばメディアアート・フェスティバル」が1日から、県つくば美術館(つくば市吾妻)で始まった。この中で、つくば市からの委嘱を受けたアートユニット片岡純也さんと岩竹理恵さんの2人が、同市大穂の高エネルギー加速器研究機構(KEK)に滞在して想を練った作品が「つくばサイエンスハッカソン」の取り組みとして初披露されている(4月24日付)。

運動する展示

作品は「KEK曲解模型群」のタイトルで一括展示されている。いずれも回転したり弾き飛ばしたり、波の伝わる運作を繰り返す4つの運動群からなる。個々の作品名はなく、展示期間中、作家による説明や解説もないことから、見るものが思い思いに受け止めてくれればいいという構成だ。

2人は共に筑波大学出身。世界各地をめぐって「アーティスト・イン・レジデンス」の取り組みによる作品を発表してきた。今回は、つくば市の委嘱を受け4月18日から5月16日までの約1カ月間KEKに滞在し、28人もの研究者らに取材し14の施設を見学した。

KEKの細山謙二名誉教授には電気が鉄球を弾き飛ばす実験を見せてもらい、触発された片岡さんがエナメル線を巻いて「フレミング左手の法則」を実地になぞるような作品に仕上げた。岩竹さんは、松原隆彦教授の記した「回転の対称性を扱った数式」を板書のようにトレースして回転するボード上に貼り付け、飛翔する紙飛行機の回転と組み合わせてみせた。

「KEK曲解模型群」は10日まで公開された後、14日から20日まで、大阪・関西万博の内閣府・文部科学省主催の企画展「エンタングル・モーメント[量子・海・宇宙]×芸術」に展示される。

過去最大の出展数

つくばメディアアート・フェスティバルは筑波大学の工学・芸術連携リサーチグループの協力のもと展示する。2014年度にスタートし、隔年開催で7回目を迎える。学内公募により選ばれた学生や大学院生ら若手クリエイターたち20組の作品が展示され、過去最大規模の出展数となった。

「観測の部屋」と名付けられた作品

そのうちの一人、稲田和巳さんの「観測の部屋」は、つくば駅周辺の音を拾ったり、地図上に移動をトレースしたりして24時間を5分間で再現してみせるアートに仕上げた。

◆つくばメディアアート・フェスティバルは8月1日(金)~11日(月・祝)つくば市吾妻2-8、県つくば美術館で開催。開館時間は午前9時30分から午後5時。最終日は午後1時閉館。4日(月)は休館。入場無料。つくば市主催、筑波大学工学・芸術連携リサーチグループ共催。3日(日)午後には美術館2F講座室で「やってみよう!アートプログラミング」と題して、夏祭りをテーマに4つのワークショップを開催する。詳しくはこちら

「普通」が壊れたとき 彼は希望の光に《看取り医者は見た!》43

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写真は筆者

【コラム・平野国美】大震災で崩壊した図書館で「いつも通り」に行動し、パニックに陥った周囲を動かしたKさん(7月4日掲載)。彼の不可解にも見えた行動は、実は人類がその内に秘めた「多様性」という希望の光だったのかもしれません。

その行動を理解する鍵は「神経多様性(ニューロダイバーシティ)」という考え方にあります。脳や神経の働き方は人それぞれに異なり、それを優劣や正常・異常で分けるのではなく、一つの「個性」として捉える視点です。私たちが「発達障害」と呼ぶものも、その多様性の一つの現れとされています。

Kさんの行動は、自閉症スペクトラム(ASD)の特性と重ねてみると、深く理解できます。一つは「ルーティンへの強いこだわり」です。ASDの特性を持つ人の中には、決まった手順や日課を厳密に守ることで心の安定を保つ人が多くいます。震災という非日常において、彼が「定時出勤・定時退勤」というルーティンを崩さなかったのは、それが彼の世界を支える柱だったからです。

そして、その「変わらない姿」が、結果的に日常を失った人々の心の拠(よ)り所となりました。

もう一つは「シングルフォーカス(一点集中)」という才能です。周りの混乱した「空気」や人々の感情といった、曖昧で複雑な情報を処理するのは苦手かもしれません。しかし、その分、目の前の「本を分類し棚に戻す」という明確なタスクに対しては、驚異的な集中力を発揮します。誰もが途方に暮れる中で、この才能が復旧への一歩を踏み出す力になったのです。

平時であれば、彼の「空気が読めない」「融通が利かない」といった特性は、社会生活を送る上での「弱み」や「困難さ」として映ったかもしれません。しかし、震災という危機的状況において、それらは「パニックに動じない冷静さ」や「秩序を回復させる実行力」という「強み」へと劇的に反転したのです。

「みんなと違う」ことが存在意義

これは、人類の生存戦略そのものとも言えます。考えてみれば、私たちの祖先が厳しい自然界を生き抜いてこられたのは、集団の中に多様な個性が存在したからではないでしょうか。

危険をいち早く察知し、衝動的に行動する多動(ADHD)的な人がいたから、捕食者から逃げ延びることができたのではないでしょうか。Kさんのように、どんな時も変わらぬ手順を貫き、集団の知恵や技術を安定して維持する自閉(ASD)的な人がいたから、コミュニティは崩壊を免れ、文化を次世代へとつなぐことができたのかもしれません。

「普通」という型に全員を押し込める社会は、想定外の出来事に対して非常にもろい可能性があります。Kさんの物語は、神経の多様性は決して欠点ではなく、予測不能な世界を生き抜くために人類が進化の過程で手に入れた「才能の宝庫」ということを教えてくれます。こう考えると、Kさんの存在意義は、彼が「みんなと違う」ことにあったと考えられないでしょうか。(訪問診療医師)

TX東京駅延伸 機運醸成へ、効果を調査 首都圏新都市鉄道 

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「長期ビジョン2025」を発表する首都圏新都市鉄道の渡辺良社長

つくばエクスプレス(TX)を運行する首都圏新都市鉄道の渡辺良社長は31日、つくば市内で記者会見し、沿線自治体などから要望がある東京駅と土浦駅の南北二つの延伸のうち東京駅延伸について、秋以降、東京駅延伸がもつ社会・経済的意義について調査を実施し、機運醸成を図る一助としたいと話した。一方、土浦駅延伸についてはコメントする立場ではないとした。

今年8月に開業20周年を迎えるにあたり策定した「長期ビジョン2050」発表の記者会見の中で明らかにした。東京駅延伸については昨年12月、茨城、千葉、埼玉、東京の沿線11市区による「期成同盟会」(会長・松丸修久守谷市長)が発足し、今年6月、延伸効果の調査などを求める要望が出されたことを受けて、調査を実施するという。

調査内容については①鉄道整備による沿線の地価上昇効果が、東京駅延伸によりさらにどれだけ増えていくのか②東京と交流が増えることで、柏の葉やつくばなど産官学の研究機能がさらにどのような効果をもたらすのか③沿線で進められている持続可能なまちづくりに、さらにどのような効果が出てくるのか④首都直下型地震や自然災害が発生した時、防災機能をもつつくばと直結することで大きな効果を発揮するのかーなどを挙げる。

渡辺社長は「若い世代が、割と短時間で通勤できる沿線に住宅を確保できることによって、首都圏全体の労働環境が整備されることがもつ社会・経済的意義が議論される中で、機運の醸成を図る一助になれば」とし、「東京駅延伸の建設主体、運行主体がどこになるのか何も決まってないが、期成同盟会からの要望に対する答えとして調査を実施したい。鉄道会社としても調査研究は意味のあることで、東京駅延伸の社会・経済的評価を把握したいとする」とする。秋以降、民間シンクタンクなどに委託し、1年ほどかけて調査を実施する方針だ。

土浦駅延伸に対して「コメントする立場にない」としたのに対し、東京駅延伸については延伸効果の調査を実施するとしたことについて渡辺社長は、東京駅延伸は交通政策審議会で位置付けられ、さらに審議会で採算性の評価がされていて、1を超えると費用対効果が得られるとされる費用便益分析(B/C)が1を超えていること、期成同盟会を構成する沿線11市区がもつ同社の株式が5割を超えていることなどを挙げた。

東京駅延伸をめぐっては、国の交通政策審議会が2021年7月、東京駅と臨海副都心を結ぶ「都心部・臨海地域地下鉄構想」を、TXとの接続も含め事業化に向けて検討の深度化を図るべきだとする答申を出し、22年11月には東京都が、同地下鉄構想の事業計画案の発表で、TX延伸との接続を今後検討するとした。

コラボで何世代も住んでもらえるまちづくりへ

首都圏新都市鉄道の「長期ビジョン2050」は、TX20駅の鉄道ネットワークを基盤に、首都圏新都市鉄道と企業、住民、自治体、教育研究機関などが連携を強化して、技術革新を先導したり社会課題を解決するなど社会をリードしていこうという構想。渡辺社長は「沿線の人口は2045年まで増えるといわれているが、成長している時こそ次の手が打てる。沿線では流山市などで何世代にもわたって住んでいただけるような持続可能なまちづくりがされており、一緒にコラボし、沿線全体に広がっていくお手伝いができれば」と語る。(鈴木宏子)

山中たい子氏が立候補を表明 県議補選つくば市区

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山中たい子氏

知事選と同日の9月7日投開票で行われる県議補選つくば市区(欠員1、告示は8月29日)に、元県議で共産党つくば市委員長の山中たい子氏(73)が31日、同党から立候補すると表明した。同補選には元県議の塚本一也氏(60)=自民=が立候補を表明しており(6月27日付)、2人目となる。

山中氏は「参院選では、物価高や暮らしの大変さ、自民党裏金問題に対する怒りが現れた。自民党県政と正面から対決する共産党の議席を増やして、県民の多様な意見や願いを県政に届け、県民の命と暮らしを守るための県政に変えていきたい」と話す。

つくば市の課題として、県立高校が不足している問題を挙げ「(牛久栄進高校など)一部定員を増やすなどの改革がはかられてきたが、子供たちが増えていることに対する抜本的な対策が示されない」と批判する。県全体の課題としては「東海第2原発は防潮堤の施工不良問題で工事を来年12月まで延長することになったが、原発回帰の政策が推し進められようとしている中、再稼働反対・廃炉を訴える議席を増やさなければならない」などと話す。

その上で公約として①国保税、介護保険料、後期高齢者医療保険料の引き下げなど、暮らしと福祉を守る②児童生徒数増に見合う県立高校新設とクラス増設を進めるなど、教育と子育て政策を推進する③危険な東海第2原発の再稼働をストップし廃炉にするなど、食と農・環境を守るーなどを掲げたいとする。

山中氏は福島県小野町出身、日本大学Ⅱ部法学部新聞学科卒。千葉県商工団体連絡会に勤務。つくば市に転居後、1984年から旧桜村議・つくば市議を4期を務め、2003年から県議を4期を務めた。前回2022年12月の県議選は次点だった。現在、共産党県常任委員などを務める。(鈴木宏子)。

子連れ筑波山《ことばのおはなし》84

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写真は筆者

【コラム・山口絹記】金曜夜の仕事の帰り道。娘からメールが届いた。今週は忙しかったし、「お疲れ様」的な内容を予想しながら開いてみると、目に入ったのは「明日山登りに行ける?」という文面。ここしばらくの週末は、とんでもなく暑いか天気が悪いかのどちらかだったので、比較的涼しく天気もよさそうな明日はチャンスかもしれない。う~ん、重い体にムチを打ちつつ、「いいよー」と返信する。

翌朝、当然のようにたたき起こされ、寝ぼけまなこで登山用の服に着替えてパッキングを済ませる。今回は上の娘と下の息子を連れて、3人での初登山となった。息子は登山自体が初めてだったが、絶対行くと言って譲らなかった。最悪、途中から背負うことも考えなければならないが、できれば避けたい。ということで、登りはケーブルカー、下山のみのコースにした。

下山が目的であれば、途中で何かあったとき、こどもたちに登頂を諦めさせる必要がなくなるからだ。ある程度経験を積んでも、途中下山の判断をするのは難しいものだ。

先頭をずんずん進んでいく娘と、それに負けじと追いすがる息子。私は最後尾でふたりの様子を見る。すぐに音を上げると思っていた息子は姉への対抗心か、転んでも泣かずに立ち上がっては黙々と歩を進める。

明日は寝坊させてもらう

30分にも満たない外出でも疲れるとすぐに抱っこをせがむ息子が、自分で足場を探りながら山道を歩いている姿は親としてはなかなか感慨深いものがある。上の娘が初めて山登りをしたときは、自分の体に合ったルート取りをするということをしっかり教えなければならなかったのだが、息子は自然とそれができるようだ。

やはりきょうだいと言えど、違う人間なのだと実感する。普段と違う環境で子どもと過ごす価値というのは、こういうところにあるのだろうと思う。

3時間以上かかったが、無事に下山することができた。車のエンジンをかけてバックミラーで後部座席を見やると、お土産を胸に抱いて子どもたちはすでに爆睡している。いつでもどこでも体力がゼロになるまで動き続けられるのはこどもの特権だ。父の体力も限りなくゼロに近いのだが。明日こそ寝坊させてもらおう。それくらいの権利を主張したって許されるとうれしいんだけどな…と父は思うのだ(言語研究者)

TX茨城空港延伸へ活動を継続 7市議会期成同盟

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あいさつする長島幸男小美玉市議会議長

TX(つくばエクスプレス)の茨城空港延伸を目指す「TX茨城空港延伸議会期成同盟会」の2025年度総会が29日、土浦市内のホテルで開かれ、メンバー7市の議会議長が活動の継続を確認した。現在つくば市止まりのTXをJR土浦駅まで延伸することについては茨城県の方針が決定しているが、さらに茨城空港(小美玉市)まで延伸するかどうかについては将来の検討課題になっている。

期成同盟会は2018年5月に土浦市で発足、それから7年間活動を続けてきた。メンバーに名前を連ねている議会議長は、土浦、石岡、つくば、かすみがうら、行方、鉾田、小美玉(会長市)の7市。この日の総会には、つくば市を除く6市の市長あるいは副市長・市長公室長も参加した。

小美玉市の長島幸男市議会議長はあいさつの中で「土浦方面延伸は県からその構想が発表されているが、空港を取り巻く環境が変化した場合は、次の段階として空港への延伸を議論することになっている」と述べ「沿線開発に伴う交流人口の増加などを促すためにも、空港延伸に向けた運動を引き続き展開する」と、活動の継続を訴えた。

期成同盟会発足の地である土浦市の安藤真理子市長は「今年2月に県から土浦延伸に向けた事業構想が発表され、TX延伸実現に向け一歩踏み出した。延伸で人の流れを常磐線に引き込むことで周辺市の活力を引き出し、県全域に波及させることができる」と、鉄道延伸の経済効果を強調した。

改めて空港延伸を議論

来賓として参加した茨城県の小松英雄政策企画部次長は「開通から20年がたち、TXは首都圏鉄道ネットワークの中で重要な役割を担っている。沿線開発により人口が9万人も増え、企業や商業施設の進出も活発になり、沿線地域の発展に大きく寄与している」とTX効果を総括、「空港延伸については、第3者委員会から『空港を取り巻く状況が変化した時には改めて空港延伸を議論する』との提言をもらっている」と述べた。

県は今月「茨城空港将来ビジョンー首都圏第3の空港を目指して」と題する報告書を発表。この中では「県が推進するTX県内延伸構想に関しては、土浦延伸実現後、空港を取り巻く総合的な状況の変化などを見極めた上で、改めて茨城空港延伸について議論することにしている」「同構想の進捗を注視しながら、将来における空港アクセスの充実について検討していく」と記載されている。

茨城空港の役割として「羽田・成田空港とともに、首都圏第3の空港として、日本の国際・国内空港需要に対応する空港」と、茨城空港の将来を位置付けている。TXを首都圏第3空港への重要なアクセス手段と考えているようだ。(坂本栄)

夏を彩る大型タペストリー 今年もつくば駅前商業施設に展示

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優秀賞を受賞した日本国際学園大の(左から)生井さんと鈴木さん

つくば駅前の夏を彩る、恒例の大型タペストリー作品展が商業施設トナリエつくばスクエア トナリエMOG1階のプラザ・パフォーマンス・ギャラリーで始まった。展示されるのは、日本国際学園大学の学生がデザインした作品。同大学とつくば都市交通センターが連携して実施している「TUTCタペストリーアートコンペティション」で優秀作品に選ばれたに2作品が、それぞれ約3週間ずつ展示される。

同展は2015年から始まり今年で11年目を迎える。今年は8月につくばエクスプレス(TX)が開業20周年を迎えることから、例年のテーマである「夏を彩る大型タペストリー」に「つくばらしさ」をテーマに加えて作品を募集した。応募のあった7作品から、生井妃萌乃さん(20)の「水鏡」と、鈴木翔斗さん(21)の「ガマと筑波山」が選ばれた。

同大情報デザイン学科3年の生井さんは、湖に映る夏の青空と、筑波山を描いた。筑波山の二つの峰を右上に天地逆さまに描き、大空を舞う鳥と漂う白い雲の姿を、水面の揺らぎとともに鮮やかに表現した。生井さんは「夏の涼しさを幻想的にイメージした作品。選ばれてうれしいし、これほど大きな作品を作ったことはなかったので自信になった」と受賞の喜びを語ると、「大学では、カフェなどお店のチラシやポスターを制作している。将来はデザインを通して自分が作りたいものを届けていきたい」と今後の目標を話した。

同じく情報デザイン学科3年の鈴木翔斗さんが描いたのは、筑波山ロープウェイつつじケ丘駅前にあるガマ大明神だ。2021年に閉館した、三井谷観光が運営していた食堂や物産展、子ども向け遊具を併設した観光施設「ガマランド」の敷地内に今もある高さ約5メートルの大型のガマを描き、下から見上げる大胆な構図が評価された。

鈴木さんは「ガマの迫力が伝わるデザインにしたかった。今回の作品のために改めて筑波山に行ってみると、目の前に広がる自然など筑波山の新たな魅力に気づく機会になった。筑波山にはガマの油売りなど他にはない魅力的なスポットがある。受賞には驚いたが、とてもうれしい。将来はデザインを生かした仕事に就きたい」と語った。

選考委員長を務めたつくば都市交通センター理事長の関俊介さんは「今年はTX開業20周年にちなんでつくばをテーマに設定した。センター地区の交通インフラを支える立場で、つくばを盛り上げ、にぎわいの演出に貢献できればと考えている。応募作品には、夏のイメージにつくばをどう表現するか工夫した作品が多かった。受賞した2作品を通じて、道行く人にもつくばの夏を感じていただきたい」と語った。

日本国際学園大学教授で審査員の高嶋啓さんは「応募作品には、つくばに広がる田んぼや、TXの車両、祭りつくばのねぷたなどがあった。大きくメッセージが入るなど、遊び心を取り入れたユーモアあふれる作品もあった。受賞した作品を通じて、つくばの新たな一面を知ってもらう機会になるとともに、清涼感を感じてもらえたら」と語った。(柴田大輔)

◆「TUTCタペストリーアートコンペティション」優秀賞受賞作品による大型タペストリー展は、つくば市吾妻1-6-1 トナリエつくばスクエア トナリエMOG1階プラザ・パフォーマンス・ギャラリーで9月8日(月)まで開催。生井妃萌乃さんによる「水鏡」は7月28日(月)から8月19日(火)まで、鈴木翔斗さんによる「ガマと筑波山」は8月19日(火)から9月8日(月)まで。入場無料。

子どもを育む居場所、遊び場に期待《令和楽学ラボ》36

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こども大学の授業風景

【コラム・川上美智子】イオンモールつくば(つくば市稲岡)に全天候型遊び場、「ミライパーク」が整備されたという。気候変動による猛暑が続く夏場は、熱中症アラートが連日のように発せられ、子どもたちが外で遊ぶことはほぼ不可能になった。ちょうど、夏休みに入ったところであるが、子どもたちの声は聞こえず、公園にも道路にも人の姿は見えない。このような全天候型の遊び場が身近にあることは、幼小の子どもの育ちに不可欠なのかもしれない。

日立市では6年前、雨天でも親子で遊べる屋内型子どもの遊び場「Hiタッチらんど・ハレニコ」を駅前(現ヒタチエ・4階)にオープンした。北関東最大と言われる㈱ボーネルンド監修による人気の遊具が整備されており、県内のみならず東京方面からの来場者もあり、本年2月には入場者50万人セレモニーが開催された。筆者が学長を務める特定非営利活動法人(NPO)「子ども大学常陸」が、設立時よりこれに関わり、日立市の指定管理者として運営を行っている。

あそび・まなび場は、安全を確保するため、12歳までの子どもと保護者が一緒に入場するスタイルになっており(13歳以上の未成年も家族と一緒であれば入場可能)、定員250人、90分入れ替え制となっている。ベビーゾーン、ロールプレイゾーン、アクティブゾーン、芝ゾーンには、たくさんのボーネルンドの遊具が整備されている。

日立市の「ハレニコ」内部

また、通路を挟んで無料の子育てサポートエリアと管理エリアがあり、親子遊び、各種講座、一時預かりサービス、相談事業など、保護者が利用できるスペースが設けられていて、子どもたちのうれしそうな声が絶えない。

知的好奇心を刺激し学ぶ楽しさを知る

そもそも子ども大学は、子どもたちに大学レベルの教育を施すために2002年、ドイツの大学で発足し、日本でも2008年にスタートした。子ども大学常陸も、学校とは異なる第2の学び場、体験の場、冒険の場としての役割を果たしたいと、2014年に日立に誕生した。子どもの知的好奇心を刺激し学ぶ楽しさを知ってもらうために、茨城キリスト教大学や茨城大学の教授陣を中心に、ゼミと称して、それぞれの専門性を活かした授業を分かりやすく、実技などの活動を交え、アクティブラーニング形式で進めている。

このほか、設立以来、誰よりも力を注いできた山名芙美理事長の手腕により、日立市や地域の団体、企業と連携して数えきれないほどの事業を実施し、日立市の子育ち・子育て拠点の役割を果たすまでに成長した。

昨年度の事業を見て行くと、ふるさとの歴史を知る「ひたち自然史パンテオン」、「あそびコンシェルジュの設置」、「サッカー大会」、「親子で楽しいリズム」、「パンポン教室」、「日立科学遊び隊の体験イベント」、「おはなし会」、「ライフケア日立連携事業」、「茨城キリスト教大学ゼミ生による無料託児」、「ママの自分時間プロジェクト」、「キラキラワークショップ」、「お誕生日会」、「ハレニコマルシェ」、「ママサロン」、「ハイハイレース」などの自主事業、職場体験、シビックセンター・サクリエ、森の学校、丸善イベント、日立産業祭、パンダフェス、保育園情報交換会、県北ママコミュ等の協力事業などがある。

子どもの安全管理、28人の従業員の労務管理、研修など保育園運営に負けず大変な面があるが、子どものゼロ歳からの学び支援と子育て中の保護者支援として重要な施設であることだけは確かである。つくば市に発足した新施設が、子どもたちの多様な活動の拠点になるよう期待している。(茨城キリスト教大学名誉教授、関彰商事アドバイザー)

土浦の8中学校77人 強豪関彰商事野球部から実技指導受ける

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関彰商事野球部選手の指導を受けながら打撃データを計測する中学生(手前右)

社会人軟式野球の強豪で国体、天皇杯茨城大会2連覇を果たした関彰商事野球部による野球教室と合同練習会が27日、J:COMスタジアム土浦で催され、土浦市の地域クラブ「ブルーオ―シャン」に所属する8つの中学校の中学生77人が二つのグループに分かれ指導を受けた。

守備の指導を受ける中学生

熱中症対策として午前8時に開会式を行い、キャッチボール、バッティング、ポジション別練習などを実施した。弾道計測器など最新機器を使ったデータ計測も行われ、一人一人の打球速度、打球角度、打球飛距離を計測した。投手は投球スピードの測定を行った。

走塁練習の指導を受ける中学生たち

フリー打撃では、最初に関彰商事の選手がバッティングを行いスタンドに打球を叩き込むと、子供たちから大きな歓声と拍手が響いた。

バッティングの手本を見せる関彰商事の選手(右)

球場内にある室内スペースでは、けがの予防、動きを良くする股関節のストレッチ指導も行われた。

打撃指導を受ける中学生

関彰商事の藤井楽監督は「野球を楽しんでやってほしい。みんなの成長を期待している。高校、大学、プロで活躍を祈っている。頑張って欲しい」と今後の成長に期待を寄せた。飯田涼太主将(都和中学校出身)は「いろんな子供たちと触れ合えて楽しかった。技術の指導は顧問の先生に任せて軽くアドバイスして基本的なことを教えた。中学生から野球を始めた子供もいるのでまだまだ成長段階、伸びしろはある」などと話した。

打撃のアドバイスをする関彰商事の飯田涼太主将(中央)

参加した新治学園義務教育学校8年(中2)の岩瀬健心さんは「楽しかった。ためになることを多く学んだので9月から始まる新人戦に生かしていきたい」と話し、土浦ニ中1年の東洸祐さんは「日頃練習出来ないこと、学習出来ないことを選手が分かりやすく教えて下さって、一人一人に合ったトレーニングを教えてくれたので、これから野球をやっていく中で、学んだことを練習や試合に生かしたい。次は自分たちが学んだことを後輩たちに教えてつなげられるようにしたい。新人戦では市内で優勝して県南、県大会に出場してみんなで協力して優勝したい」と抱負を語った。(高橋浩一)

野球教室に参加した土浦市内の中学生と関彰商事野球部の選手たち

与党・既存政党が敗けた参院選で思うこと《文京町便り》42

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土浦藩校・郁文館の門=同市文京町

【コラム・原田博夫】7月20日が投開票だった第27回参議院議員通常選挙は、自民・公明の与党が予防的に低めに設定した勝敗ライン50にも届かず、与党の敗北が明白になった。とりわけ鮮烈なのは、参政党の大躍進である。

2020年3月に政治団体として届け出、同年4月に結党されたばかりの参政党は、第26回参議院議員通常選挙(2022年7月)で比例区1議席(神谷宗幣)を獲得でき、比例区5人(いずれも落選)の得票で約3.3%(176万票)を獲得して政党要件2%を上回り、政党交付金の支給対象となった。

第50回衆議院議員総選挙(2024年10月)で小選挙区に85人・比例代表に10人の候補者を擁立し、小選挙区では全員落選するも、南関東・近畿(比例復活)・九州の3ブロックで1議席ずつ獲得した。さらに認知度を高めた上での第27回参議院議員通常選挙である。選挙区7名・比例7名の計14名の当選で、非改選1名を加えると、15名の参議院議員に至った。立派な国政政党である。

今回の選挙結果からは、与党(自民、公明)の低迷・退潮、新興政党(参政党、国民民主、維新、れいわ、保守、みらいなど)の躍進に加えて、立憲・共産・社民など、いわゆる伝統的左派(リベラル系)政党の不振も明らかだ。

この背景には、⑴現下の物価高騰との対比での手取りの伸び悩み・生活の窮迫感、⑵ワンイシューの新興政党に、全方位型の与党の支持基盤が浸食されたこと、⑶インターネットやSNSなどへの依存度の高い若い世代(10代~40代)には新興政党への親近感が高かったこと、⑷21世紀に入ってから重視されるようになった(外国人との融和、LGBTや選択的夫婦別姓の導入・推進など)ポリティカル・コレクトネスへの人びとの心理的な躊躇(ちゅうちょ)などがあった―とする分析がある。

小選挙区と大選挙区の混在は問題

私はこの際、選挙制度に関する2点を付言しておきたい。第1は、衆議院と参議院で採用されている選挙制度にねじれのあることである。

衆議院議員は定数465人で、うち289人が小選挙区選出議員、176人が比例代表選出議員である。小選挙区の区割りは国勢調査人口に基づき最長10年ごとに見直される。比例代表は(都道府県域よりも広域の)全国11ブロックから選出される。候補者は小選挙区と比例代表の重複立候補が可能で、小選挙区で落選しても比例代表で復活当選が可能になる。

対して、参議院の定数は248人、うち100人が比例代表選出議員、148人が選挙区選出議員で、3年毎に半数の改選がある。比例代表選出は全国を一つの選挙区にしているが、選挙区選出は都道府県ごとの45選挙区(合区が2つある)で選出される。人口の多い都道府県では複数の議員が選ばれる大選挙区制、人口の少ない県では一人の議員を選ぶ小選挙区制が採用されている。

本来、民意に忠実であるべき衆議院では小選挙区が、良識の府であるべき参議院では大選挙区制が採用されるべきであるにもかかわらず、現職議員に過度に配慮して両制度が混在し、しかも組み合わせは逆の方向にねじれている。この大いなる矛盾を、そのままに放置している21世紀の日本人の政治的無神経さを疑う。

第2に、細かな点だが、投票の際の立憲民主党と国民民主党の政党略称は、分党以来いずれも「民主党」である。事後的に案分してもらうそうだが、これは国民に対して不謹慎ではないか。次回の国政選挙からは改めてもらいたい。(専修大学名誉教授)