日曜日, 5月 5, 2024
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7月22日水戸地裁で判決へ 常総水害訴訟が結審

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報告集会で、これまでの裁判を振り返る原告団長の片倉一美さん

2015年9月の鬼怒川水害で、住民が甚大な浸水被害を受けたのは国交省の河川管理に瑕疵(かし)があったためだなどとして、住宅や家財、車などの浸水被害を受けた常総市の住民ら32人が18年7月、国を相手取って約3億5800万円の損害賠償を求めて国家賠償訴訟を起こした裁判の口頭弁論が25日、水戸地裁(阿部雅彦裁判長)で開かれ、住民側、国側いずれも最終準備書面を陳述して結審した。判決は7月22日言い渡される。

25日の裁判では原告団長の片倉一美さんが、被害の状況や住民側の主張をまとめた画像を法廷で映しながら、これまでの裁判を振り返り「国の言い分はあまりにも非常識で、論点をごまかす姑息(こそく)な言い換え」だなどと述べ、「国民の生命と財産を守るという使命が微塵も感じられない」などと国の河川行政を真っ向から批判した。

裁判終結後、水戸市内で開かれた報告集会で住民側弁護団の只野靖弁護士は「日本各地で洪水や水害が発生している。自然災害としてやむを得ないものもあるが、鬼怒川の上三坂(堤防決壊)と若宮戸(溢水)に関しては、人災だと確信をもって言える。裁判前は、国は『仕方なかった、もう少しやりようがあったが予算が付かなかった、地主の理解が得られなかった』など、いろいろな制約があったと主張すると思っていた。ふたを開けてみたら中身は空っぽ。(築堤や護岸改修の順番をどう決めるかなど)予算の範囲内で次にどこをやるかをあまり考えないでやっていこうというのが国の河川行政の中身で、計画らしいことが出てこなかった。これでは住民の生命と財産は守れない。この裁判を通してこうした在り方が見直されればいい」と話した。

原告団長の片倉さんは「理不尽な思いから、私たちと同じような被害を最小限にできないかと裁判をスタートした。鬼怒川だけでなく、全国の水害被害者が束になってかかれば裁判官の見方も変わるはず。今回の裁判はそういう一歩となれば」と語った。

裁判は、行政の責任の範囲を限定した1984年の大東水害訴訟最高裁判決の判断基準を元に、河川改修工事の順番が合理的だったかどうかなどが争われた。堤防が決壊した上三坂地区について住民側が、堤防が一番低く最も危険な場所で最優先で工事をする必要があったと主張したのに対し、国側は、堤防の高さだけでなく質も含めた評価を行う必要があるなどとし、堤防の幅を加味したスライドダウン評価という計算上の堤防の高さを元に、上三坂地区の管理に瑕疵はなかったと主張した。さらに砂丘林による自然堤防が掘削されソーラーパネルが設置された場所から水があふれ出た若宮戸地区については、住民側が、国が河川区域に指定していれば掘削を防げた、指定しなかったのは河川法の政令違反だと主張したのに対し、国側は、河川区域の指定は河川改修計画の合理性とは無関係で河川管理に瑕疵があったとは言えないなどと主張した。(鈴木宏子)

世代間不公平という肩車型の脅し 《ひょうたんの眼》45

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サクランボの花

【コラム・高橋恵一】少子高齢化を語るとき、1人の高齢者を働き盛りの年齢層が何人で支えるかを解りやすく表現するのに、イラストなどを用い、騎馬戦型(3人で1人)や肩車型(1人で1人)と呼んだりする。昔は4人で1人だったのに、今は2人弱で1人、将来は1人で1人を担ぐ肩車型になってしまい、世代間の不公平が進むなど、社会保障費の抑制を求める理由とされたりしている。特に、テレビや新聞などのメディアが安易にこの理論に乗ってしまっている。

元々、「年齢3区分別人口割合」は、国連が各国の人口構成をまとめたもので、開発途上国の現状や世界規模での高齢化を予測した統計である。生産年齢人口を15~64歳としたのも、途上国の現状を踏まえたものだ。65歳以上人口の割合が7%以上を高齢化社会、14%以上を高齢社会、21%以上を超高齢社会という。

しかし、この人口区分が現実と符合しないことは、お分かりだろう。日本の15~18歳は、大枠で就労人口に組入れられるだろうか。女性の就労率や、再雇用賃金の面から64歳まで生産年齢人口に換算できるのか。65歳以降の就労など、年齢人口区分の生産年齢人口と、就労・所得の人口割合とは、性格が異なるのだ。

さらに、生産年齢人口に対して、年少人口と高齢人口を合わせたものを従属人口と言う。つまり、騎馬戦の3人は、高齢者1人と年少人口3人を乗せていたのだ。肩車型では、高齢者1人と年少人口1人しか乗せないのだ。世代間負担の理屈は、年少人口の激減を考えなければ、それこそ不公平なのだ。

必要配分と応能負担の原則

高齢人口割合の上昇は、平均寿命の延びと年少人口割合の減少によるもので、日本の場合は、急激な出生人口の減少である。平均寿命の延びは、食糧事情の改善や生活環境の改善、医療水準の飛躍的発展、社会福祉サービスの向上などがあり、世界的にいえば、戦争や治安の悪化により理不尽に命が奪われることのないことだろう。

少子化については、生活水準の向上により、個人の時間や経済と出産・育児のバランスから、少子化はやむを得ない現象であり、人類社会の発展過程で、女性あるいは夫婦が最善の選択をした結果である。

少子高齢化を「国難」と言った総理大臣がいたが、個人の最適な生き方選択の結果が少子化であれば国難ではあるまい。長生きを遠慮させる国策などありえないだろう。

少子化の進行が人口をゼロにしてしまうわけではない。高齢化も無限ではなく、団塊の世代の山が、2040年くらいには平準化し、日本の人口は将来的には7000万人くらいで落ち着くはずだ。現在のドイツやフランス、英国並みの水準になり、人口密度は少々高めだが、海に囲まれ森林が豊富なので、安定した生活を維持できるだろう。

高度な福祉国家を維持する財源はどうするのか。世代間の負担の不公平はどうするのか。答えは簡単だ。「必要配分と応能負担の原則」。少子高齢化の波を正面から受け止め、安心で平和な政策と、それを正しく助長するメディアを望む。(地図好きの土浦人)

延期半年 3月11日から開催へ つくばの街と山をつなぐ芸術祭

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左上:小谷里奈 左下:寺村サチコ 右:植田爽介の各作品(敬称略)=主催者提供

コロナ禍のため延期されていた「つくばの街と山をつなぐ芸術祭(つくばアートサイクルプロジェクト)」の開催が、3月11日から4月10日までと決定した。参加作家は国内外から35人以上、展示拠点は筑波山神社を含む全11カ所となり、仕切り直し前から共に増えた。プロジェクト実行委員会の野堀真哉委員長は「約半年の延期でつくばセンタービルが使えなくなるなどしたが、先行させる筑波山エリアでは1カ月のロングランとなり、色々楽しんでもらえるようになった」と企画の追い込みをかける。

テーマに「アントロポセン-分岐点を超えた景色」を掲げる。アントロポセン(人新世)は、新しい地質年代をさす造語。地質学的な意味づけは「人類の活動が地球規模で環境を激変させ、長期的な痕跡を残す時代」。この時代にアーティストは何を感じ表現するのかを問いかけた。

会場を筑波山周辺の山エリア、つくば駅周辺の街エリアの双方に複数箇所設定するのが特色。つくばでは、アートに関わる様々なイベントが散発的に開催されているが、“街でやっていること”“山でやっていること”と互いの距離感があるよう感じられたのがプロジェクトの立ち上げとなった。展示品のみが主役のイベントではなく、つくばの地域性を知りながら、その場所性を生かした現代アートを通し、芸術に触れ、地域に触れ、歴史に触れる機会を作るのがねらい。当初、昨年9月の13日間の開催が予定されたが、コロナ禍から延期となっていた。(21年9月8日付

仕切り直し後は、山エリアが3月11日からと開催を先行させる。展示会場は、BASE877、筑波山神社、江戸屋、旧小林邸ひととき、神郡石蔵shiten:、北条川田邸を予定。野堀委員長は「登山道を使ったインスタレーションの計画もあり、会期中には筑波山神社の御座替わり(4月1日)も行われる。りんりんロードでは沿道の桜が見ごろを迎えるはず」と芸術鑑賞に留まらない楽しみ方をアピールしている。

センター地区の街エリアは4月2日から10日の開催。つくば美術館、桜民家園が中心になる。研究学園地区イーアス内のサイバーダインスタジオは3月11日~4月10日の会期。

鑑賞には共通パスポートが必要。各会場で取り扱い。昨年実施のクラウドファンディングで、リターンにパスポートを求めた応募者には郵送の予定という。(相澤冬樹)

◆つくばアートサイクルプロジェクト2021-22 ▽日程:山エリア・サイバーダインスタジオ 3月11日(金)~4月10日(日) センターエリア4月2日(土)~10日(日)▽会場時間:10:00–17:00 *最終日15:00まで▽休場日:毎週月曜日(桜民家園10:00–16:00 毎週水曜日休み)▽入場:共通パスポート(会期中何度でも入場可能)一般1500円 学生1100円 (税込み)
会場や出展作家など詳しくはプロジェクトのホームページ

TX延伸に調査費1800万円 茨城県、22年度内に方向づけ

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つくばエクスプレス(TX)=研究学園駅付近

茨城県は2022年度当初予算案に、つくばエクスプレス(TX)の県内延伸の検討を初めて盛り込み、調査事業費1800万円を計上した。22年度内に、現在延伸ルートとして挙がっている①筑波山方面②水戸方面③茨城空港方面④土浦駅方面-の4方面案=図参照、茨城県提供=の中から1本に絞り込む。

橙色の矢印で4ルートを示す=茨城県提供

4ルートは18年に発表された県政運営の指針、県総合計画(18~21年)の「2050年頃の茨城の姿」の中で示された。県を取り巻く環境の変化や発展可能性などを踏まえ、道路や鉄道、港湾、空港などの公共インフラ基盤の将来像を記す中で、県内のTX延伸ルートの構想として4つを示したものだ。

20年の第4回定例会で「基本調査を実施する状況にはない」と発言した大井川知事だが、今回の調査開始について予算発表後の記者会見で「TX沿線、つくばを中心として県南の経済圏、あるいは社会生活圏、これと常磐線沿線、特に県央から県北に向けた生活圏や経済圏を結びつけるためには非常に重要なプロジェクト」とし、どういう形でTXを延伸させるかという議論をするための調査を「このタイミングですべき時」との見解を示した。

4方面ごとに事業費や需要予測

調査は5月から12月に4方面ごとの延伸に必要な事業費、延伸後の事業予測や路線需要予測、費用対効果等を比較整理し、鉄道専門のコンサルタントなど民間の調査機関への委託を含め進める。調査結果に基づき12月から23年2月に、学識者、経済界、県議会、市町村、鉄道事業者らで構成した第三者委員会が絞り込みに向け検討。2月にはパブリックコメントを実施し、3月に決定する。

つくばエクスプレスは起点の秋葉原駅側でも、東京駅まで延伸する計画がある。さらに、臨海地下鉄へ乗り入れて、銀座から晴海を経て国際展示場まで直通運転する構想もある。2016年の国土交通省交通政策審議会答申に「国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクト」として盛り込まれた。東京駅までの延伸開業に時期的な見通しはついていない。

TXのみならず、JR常磐線や地域の鉄道計画のネックとなっている地磁気観測所(石岡市柿岡)の移転の可否が再度クローズアップされそうだが、今回の調査検討の対象にはなっていない。35キロ圏内では直流電源が使用できないことから、県内延伸ばかりでなく、地下鉄線の乗り入れにもかかわってくる。25日開会の県議会で、議論の的になりそうだ。(花島実枝子)

つくば、日本、世界の諸行無常 街は変わる 《遊民通信》35

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元公務員宿舎(つくば市内)

【コラム・田口哲郎】
前略

先日、手代木公園から松代公園までの遊歩道を散歩していたら、公務員宿舎の建物を見つけました。つくば市内に点在する宿舎は順次売却されるそうです。つくば科学万博では明るい未来を描く舞台となったつくば市は、いま変化の過渡期といったところでしょうか。年季のはいった宿舎の建物は「公団住宅」を思い出させるので、私世代にはノスタルジーを感じさせます。

こうして人は街をつくりますが、時がたてば街は変わるのだな、諸行無常だなと思いました。いま、つくば市のみならず、日本、世界が変化の過渡期に直面しています。国の内外がここまで多方面で騒がしいのは、明治維新や先の大戦後のころに似ているのでしょうか。

英の名門パブリック校が「柏の葉」に

そういえば、つくばエクスプレス(TX)沿線の話ですから、つくば市に無関係ではないと思うのですが、2023年9月、柏市・柏の葉に、英国の名門私立校・ラグビー校の分校が開校するそうです。ラグビー校はハロウ校やイートン校と並ぶパブリック・スクールです。

ちなみに、慶應義塾は福澤諭吉がパブリック・スクールを参考にして創設したと言われています。義塾というのがパブリック・スクールに当たるそうです。西洋文明を和魂洋才のスローガンのもとに取り入れてきた日本に、いよいよ西洋の本丸が乗り込んでくるというのは衝撃です。

慶應義塾には付属高校にニューヨーク校というのがあって、ニューヨークに住んでいる家庭の子弟がそこで学んで、日本に進学するというパターンはありました。ほかの大学でも海外校を持っているところはありますよね。

でも、ラグビー校は日本に住む英国人のための学校という感じではなさそうです。すでにシンガポールに分校をオープンさせているそうですから、ラグビー校の海外戦略はシンガポール校を見ればわかるでしょう。

価値観が気軽にやってくる時代

何年か前、常陽銀行が足利銀行と経営統合する際に、共同持ち株会社の本社を東京に移すという話があり、地元水戸の大反対に遭い、中止したというニュースがありました。銀行もいろいろと大変で、地銀同士のナワバリ、つまり県境を守っていては時代についていけないという事情が背景にあるようです。こうした状況は、コロナ禍以降、県境どころか国境にまで広がっていますね。

ICT(情報通信技術)によるネットワークが整備され、「リモート」が進むと、それを主導して推進しようとしている欧米の価値観が日本にも流入すると以前書きましたが、こんなかたちで最初の波が現れてくるとは思いませんでした。精神に関わる教育というものが、本格的なイギリス式になる。それも日本にいながらにして。

これは黒船の来航というよりも、フランシスコ・ザビエルの来日に近いかもしれません。当時は宣教師が命がけでやってきましたが、これからは価値観が通信網に乗って簡単に、いつも気軽にやってくる時代です。ごきげんよう。

草々(散歩好きの文明批評家)

市村すみいさん・典子さん 《菜園の輪》1

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市村さん宅の菜園

【コラム・古家晴美】新タイトルの「菜園の輪」では、人の緩やかなつながりに注目したい。ここでいう「菜園」は、家庭菜園から直売所に品物を出荷する自家用畑まで含む大まかなくくりだ。

そこで主な生計を立てているわけではないが、食生活の一部に深く組み込まれている「菜園」は、様々な形で「人のつながり」をもたらしている。家族で食べきれない野菜をおすそ分けする友人知人。育て方のコツを教えてくれる畑の隣人。土地を貸してくれる地主さん。そして、家族もつながりの中に入る。

初回は3町歩(3ヘクタール)の稲作を行いながら、トマトやキュウリなど栽培している、市村すみいさん(92)と市村典子さん(65)の菜園を紹介したい。

つくば市にある市村さん宅の菜園は、母屋裏手の長さ50メート、幅5メートル弱の長細い畑と、自宅から少し離れた1畝(せ、1アール)の畑の2カ所に分かれている。筆者は30年近く、様々な菜園のあり方を見てきたが、このように、家の敷地内や近くで、日常よく使う葉菜類や果菜類を育て、少し離れた畑で根菜類を育てる自家用畑は多い。

食卓を鮮やかに彩る野菜

家裏手の畑は、土起こしや果樹の剪定(せんてい)以外は、基本的にすみいさんが、種まきから草取り、収穫までを健康維持のために管理している。ほうれん草や小松菜などの菜っ葉類や小豆、えんどう豆などの豆類、聖護院(しょうごいん)大根が中心だ。

聖護院大根の栽培は「普通の大根が霜に当たったときに備えて…」と言う、すみいさんの配慮によるものだ。もう1つの畑は、典子さんが管理している。こちらでは、夫とともにトラクラーを使用して、自家用の大根と白菜を中心に育てている。

これまで菜園のお話をうかがった方は、70代までの方がほとんどで、1人あるいはご夫婦で複数の自家用畑を面倒見ている方が多かった。70代とはいえ、青年に近いほどの気概と迫力をもって、様々なことに取り組んでいる。

では、80~90代の方はどうか。市村さん宅では、2つの畑の運営管理については、お互いに口を出さず、自分のやり方で野菜を栽培している。無論、何10年もなさってきた畑仕事に違いないが、年を重ねれば、それなりの苦労もおありだろう。

陰で家族を支えながら、信頼され任されることにより生まれる、「やりがい」と「心の張り」が、お年を感じさせぬ肌の艶をもたらしているのだと思う。お互いを見守りながら、2つの菜園、そしてご家族が、緩やかにつながり支え合う。

2つの菜園から収穫された野菜が、市村家の毎日の食卓を鮮やかに彩っている。(筑波学院大学教授)

没後5年を前に蔵書など整理 土浦の専門学校に西谷隆義記念室

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郷土資料などを収めた西谷隆義記念室=筑波研究学園専門学校(土浦市上高津)

土浦市上高津の筑波研究学園専門学校(TIST、佐久芳夫理事長)に2月、「西谷隆義記念室」が設けられた。理事長を務めていた西谷さんが2017年4月7日、76歳で亡くなってから、5年が経とうとしている。

同校のほか、霞ケ浦高校(阿見町)、総合科学研究機構(CROSS、土浦市)の理事長職にあり、アジア学生文化協会やつくばインターナショナルスクールをはじめとする教育や国際交流、福祉分野の諸団体の理事・評議員を務めていた。没後、勲五等旭日双光章を追贈されており、その保管場所を兼ねて蔵書などをまとめた資料庫の整備が進められた。

生前の西谷さん。フクロウの置物がある理事長室で=CROSS提供

記念室は学校1号館2階に約35平方メートルの広さで設けられた。生前の西谷さんが毎年開花を楽しみにしていた校庭の桜を望む小部屋に、理事長室にあった蔵書類が書架ごと整理され、愛用のデスク、筆記具などと共に移された。

蔵書は、郷土史はじめ歴史資料、地誌や民俗学関係の文献や図録、字典・辞書類など1000点を超える。学校関係者によれば、「中央省庁への折衝などで出張した際、神田神保町の古書店に立ち寄るのを楽しみにしていて、大事に持ち帰っては書架に並べていた」という。

土浦市選出の元県会議員だった西谷さんは、筑波研究学園都市の建設事業に初期から関わり、晩年まで教育に携わりながら、航空機産業創出や新大学システムを企図する地域振興に取り組んだ。その一方で、古代・中世の仏教が東国にどう伝わったかなどをたどる郷土史研究を精力的にこなした。古希記念の70歳で著した『霊峰筑波山と徳一大師―知足院中禅寺と筑波山神社』(茨城県郷土文化顕彰会、2012年)は地域社会の関心を集め、ちょっとした徳一(とくいつ、奈良時代の宗教家)ブームを巻き起こしている。

徳一関連の著作のほか、『21世紀筑波の軌跡』(STEP社、1998年)、『愚禿釈親鸞の行実(ぐとくしゃくしんらんのぎょうじつ)』(‎茨城新聞社、2017年)などに関わる手書きの原稿や出版時の校正紙なども保管。専門学校がマスコットにしているフクロウの彫刻や置物など、西谷さんが個人的に集めたコレクションも数百体、コーナーにまとめられている。

図書資料は現在閉架状態だが、専門学校では学生・教職員向けに貸し出すほか、研修室などに活用する考え。佐久理事長は「探求心のかたまりみたいな西谷さんは貴重な資料を膨大に残していかれた。その薫陶に触れられる、これらの資料を学校・学業の発展に役立てたいと考えている。記念室の開設が桜の季節に間に合ってよかった」と語っている。(相澤冬樹)

にわかに浮上した 3つのお願い 《続・平熱日記》104

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【コラム・斉藤裕之】昔からお願いはなぜか3つと決まっている。今年で築20年になる我が家でも、にわかに浮上した「3つのお願い」。

1つ目は畳の入れ替え。洋風でもなく民家風でもない我が家にも、畳が7枚半ほど敷いてある場所がある。20年敷きっぱなし。昨年末、思い切って入れ替えることにした。若かりし頃に住んでいたアパートのかび臭い畳も懐かしいが、最近はほとんどがフローリング。

しかし、日本の風土に合ったサステイナボーなタタミフロアーはもっと見直されるべきだ。新しいイグサの色と香りで迎えた新年は、何ともすがすがしく感じられた。

2つ目は洗濯機。壊れたわけではないが、カミさんがそろそろ買い替えたいという。気が付けば、15年選手ということが分かった。ひとつ前のヤツはタッチパネルが作動せずに、いわば脳死状態となってしまったのを覚えている。

電気屋に行ってみると、乾燥機能もプラスされて、縦型やドラム式など、いろんなタイプのものがあって迷う。洗濯物も夫婦2人だとわずかな量だが、娘たちが孫を連れて帰って来ると、一気に増える。こういう場合は口を出さず、カミさんに任せるのがよい。

数日後にやって来た新しい洗濯機と入れ替わるように、古い洗濯機は引き取られていった。その時私は留守だったのだが、子供たちの重い柔道着なんかを一所懸命洗ってくれたことを思い出すと、引き取られていく洗濯機の後姿?に、カミさんは涙がこぼれそうだったとのこと。先代が脳死なら、今回は勇退というところか。

新洗濯機は「なんちゃら方式」が売り

新しい洗濯機は、洗濯槽にシャワー状の水流が自慢の「なんちゃら方式」が売りらしい。しかし前のヤツと比べてとても静かで、いや静か過ぎて、本当に洗っているのか不安にさえなる。カミさんは自慢の方式をその眼で見たいと思ったらしいが、シャワーのような音こそすれ、作動中はフタを開けることもできず、その仕事ぶりを確認することはかなわない。

「まるでツルの恩返しね。私の働いているところは決して見ないでくださいね、みたいな」とカミさんが言うので、私はこの洗濯機を密かに「おつう」と呼ぶことにした。

3つめは給湯器。留学時の経験から、風呂の追いたき不要論者である私だが、その理論が正しいのかどうかは分からない。ガス屋もビックリ! 20年もの間、故障もなく湯を沸かし続けてくれているのだが、壊れないうちに交換を決めた。ところが、例のコロナの影響で入荷が数カ月先らしい。そう聞くと人は不思議なもので、もしも給湯器が壊れたらどうしようと急に不安になる。

実際、テレビでは給湯器が壊れて、銭湯に通う家族の話が取り上げられていた。この寒い時期に、それは困るなあと思っていたら、3回目のワクチン接種の案内が来た。3つ目のお願いがかなう前に、3度目のワクチン接種のお願いとは。

おっと、あの電子音の優雅なメロディーは!おつうが仕事を終えたようだ。(画家)

来春開設サイエンス専科高に整備費計上 つくば工科改編で県

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サイエンス専科校となるつくば工科高校=つくば市谷田部

県立高校改革プランを進める茨城県は22年度当初予算案に、サイエンス専科高校へ改編するつくば工科高校(つくば市谷田部、久松政信校長)の実習室や実習機器の整備費として4憶9900万円を計上した。IT専科高校に改編する友部高校と共に、整備や民間委託を進めるなどして23年春の開設を目指している。

つくば工科高の改編は「科学技術科」の新設が特徴で、AI時代をリードする研究者や高度技術者の育成を目指す。県教育委員会、つくば市教育委員会、同校の関係者が21年に「開設準備委員会」を設置し、実務作業を重ねてきた。

改編に伴う課題の一つ、施設整備には4憶9900万円を投じる。既存教室の改修を進め、機器分析室、バイオ実習室、プレゼンルームなど実習室の整備、無菌作業を行うクリーンベンチ、3Dプリンターなど先端技術を学ぶことができる実習機器の整備を進める。

入試は学科試験だけではなく、部活動や生徒会活動などを通じ、科学技術に対する探究活動を評価する特色選抜制度の利用を含め実施する方向。大井川知事は中高協働研究への発展を意図、昨年には「中学の時から課題実践を通して、サイエンス分野に関心のある生徒に興味をもってもらうような努力をしながら生徒を募集していく」と発言している。

校名については、久松校長を議長とし、県と市の教育委員会関係者や地元有識者による「校名候補選定会議」を設置し検討をスタート、6月にも案が示される見通し。高校教育改革推進室は「校名は地元の方々にはそれぞれ思い入れがあるので、慎重に協議を進めたい」としている。

科学技術科の募集は23年度から

22年度の県立高校志願者枠は既に発表され、同校は機械、ロボット工学、電気電子、建設技術の4学科でそれぞれ40人の定員で募集しているが、既存の学科の募集は22年度が最後。23年度からの募集枠は科学技術科の240人となる。(花島実枝子)

つくば元市議の市政批判はウソだった? 《吾妻カガミ》127

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【コラム・坂本栄】前回「つくば市長の市民提訴…を検証する」(2月7日掲載)では、五十嵐市長による<元市議提訴~和解取り下げ>の経緯をチェック。市長の振る舞いについて、その適格性に問題がある、大人の常識が足りない、広報理念に反する動きがあった、「言論の自由」が分かっていない―と指摘しました。

しかし五十嵐さんは、提訴の誤りは認めながらも、元市議の亀山さんが発行したミニ紙の市政批判記事にはウソが多いと、相変わらず主張しています。提訴時(2020年11月)は22カ所、取り下げ時(2022年1月)には8カ所を挙げていますが、今回は運動公園用地問題に絞って、五十嵐さんの言い分を検証してみます。

「返還交渉」という訴訟テクニック

2016年の市長選挙で五十嵐さんが掲げた目玉公約は運動公園用地関連でした。2020年の市長選の前に、ミニ紙はこの問題について「都市機構(UR)への返還 あれは一体どうなった」(写真右)と、用地返還が実現していないことを批判。これに怒った五十嵐さんは、公約は「返還」ではなく「返還交渉」だったのだから、記事はウソだと指摘。今でも同じことを言っています。

市長選で配られた討議資料(写真左)を調べたところ、大字タテ見出しは「総合運動公園問題の完全解決へ」、「運動公園用地返還交渉を進めます」は中字ヨコ見出しでした。「完全解決」とは、用地UR返還+陸上競技場建設のことですから、公約の主眼は「返還」でした。

つまり、運動公園問題の公約(政策目標)は「返還」であり、「返還交渉」はその手段という位置付けです。「返還交渉」が公約だったとする主張は、ミニ紙の記事がウソだと言い張るための「問題のすりかえ」です。そこで判定。記事は的を突いていました。

五十嵐さんが訴状で「返還交渉」を据えたのは、訴訟テクニックだったといえます。返還は実現しなかったものの、交渉はありましたから、訴状の組み立てに「返還交渉」は便利だったのでしょう。

目玉公約は「フィクション」だった

でもその実態は、UR都市機構の地域支社を訪れ、「市の意向を伝え」(1回目)、「文書による回答を求めた」(2回目)という、「返還交渉」の証拠準備のようなものでした。目玉公約だったのですから、国会議員を動員する政治工作、理屈をこねた訴訟戦術―など、あの手この手を繰り出すべきなのに、形を整えただけでした。

どうして返還交渉がお座なりだったのでしょうか? 五十嵐さんは、市長就任後、用地売買契約書に瑕疵(かし)がない限り、URは買い戻しに応じなくてよい―という条項があることを知ったようです。土地処分を急ぐ「国策不動産会社」URにミスがあるはずがありませんから、熱い交渉をしても返還は無理と判断したのでしょう。

ここで疑問が浮かびます。公約「返還交渉」を作るとき、五十嵐さんはURとの契約書を調べなかったのでしょうか? だとすれば、いい加減な公約作りです。実現ほぼ不可能な、公約になり得ない「返還交渉」を公約に掲げたわけですから、公約はフィクション(虚構)だったといえます。(経済ジャーナリスト)

※参考(青字部をクリックするとご覧になれます)
五十嵐市長の提訴取り下げ声明(1月20日)
亀山元市議の記者会見リリース(1月21日)

サンガイア、つくば連戦 東京Vに1勝1敗で7位

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ライトから打点の高いスパイクを放つ鎌田敏弥=つくばカピオアリーナ(撮影は高橋浩一)

バレーボールVリーグ2部(V2)男子のつくばユナイテッドサンガイア(SunGAIA、本拠地・つくば市)は19、20日、つくば市竹園のつくばカピオアリーナで東京ヴェルディ(同・東京都稲城市)とのホームゲーム2試合を開催。19日はセットカウント3-0で快勝したが、20日は1-3で敗れた。これでつくばは9勝9敗、勝ち点26で15チーム中7位。

2021-22 Vリーグ2部男子(2月20日、つくばカピオアリーナ)

総得点335点でリーグ2位(19日現在)の鎌田敏弥、同じく271点で9位の小松一哉という両エースの打ち合いが注目されたが、小松を擁する東京Vに軍配が上がった。

小技でも魅せるレフトの濱田英寿=同

つくばは第1セット、鎌田や瀧澤陽紀、濱田英寿らにトスを送るが思うように攻撃が機能せず、シーソーゲームから徐々に点差を付けられ、セット終盤は激しい追い上げを見せるものの届かず。第2セットは序盤リードするものの14-14からの7連続失点が響き、このセットも落とした。第3セットはつくばらしさを見せ終始リードを保つが、第4セットは波に乗った相手を止めることができなかった。

「相手の攻撃力に昨日は我慢できたが、今日は自分たちから崩れてしまった。スパイクミスが連続し、簡単なボールでも小さいミスが目立った。自分は後半乗ってくるタイプだが、前半から決定率を出せていれば、こういう結果にはならなかったと思う」と鎌田。

「ホームなので2連勝したかった。チームパフォーマンスは先週より良かったが、今日は相手が対策を立ててきた。ブロック&レシーブが機能せず、内を締める相手の守りを突破できなかった」と瀧澤。

東京Vは前日とはメンバーを入れ替え、特に小松をライトに回したことで、滞空時間と高さのある攻撃が生き、ブロックやサーブも含め29得点を許すなど、調子に乗せてしまった。

先月からリベロとして活躍している曽田一也=同

連敗から脱出も正念場へ

つくばは、コロナの影響もあってチームのパフォーマンスがかみ合わず、直近1カ月で4連敗を喫していた。19日は久々の連敗ストップとなったが、そこで安心感が出てしまったという見方もある。「先週まで苦しい状況だったが、敗戦を機に選手が現状をしっかりと受け止め、質の高い練習を積むことができた。それで昨日はうまく行ったが、今日は相手の変化に対応できず、思うように攻撃を組み立てられなかった」と五十嵐元監督は分析する。

レギュラーシーズンは残り7試合。来月には最後のホームゲーム、千葉ゼルバ戦(3月12日、つくば市桜総合体育館)を控え、踏んばりどころを迎えている。(池田充雄)

「お迎え写真」の撮り方・撮られ方 《写真だいすき》5

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【コラム・オダギ秀】写真講座の講師を長くしていると、たいていは、マンネリと言うか、ダレてくると言うか、飽きがくる状態になる。ところが、そんな時に講義すると、がぜん盛り上がるテーマがある。受講生皆がこれ以上夢中になるテーマはない。必ず、大変な盛り上がりを見せる。それが「お迎え写真の撮り方・撮られ方」だ。

なぜ皆がこんなに喜々として、お迎え写真の撮り方・撮られ方を学びたいのだろうか。

もちろん、お迎え時の写真というのは、その人のお葬式や仏壇に飾る顔写真、つまりポートレイトのことだ。自分が居なくなった後に、最良の顔で見られていたいという願望があるのだろうが、そんな写真を大抵の者は持っていないことに、最大の理由があるのだろう。

撮って、撮って、撮りまくる

そこで今回は、私の講座でやっている、お迎え時に使う写真の撮り方・撮られ方の話をしたい。撮られ方が分かれば、撮り方は自然に分かる。撮られるようにやってもらって、撮ればいいだけだ。

カメラは、コンパクトデジタルだろうが、スマホだろうが、一眼レフだろうが、何でもいい。アクションカメラは、広角過ぎるので、ちょっと撮りづらい。で、なるべくアップに撮ること。ウェストから上だ。

小道具として白い板(アゴレフと言うが)、これを使う。大きなカレンダーの裏の白い紙でもいい。このアゴレフを、身体の前、ウェストあたりに広げておく。前にテーブルがあれば、その上でもいい。すると、アゴの下が明るくなり、しわも目立たなくなる。

そして表情。口が「への字」にならぬよう、両口角を上げる。目は少し開き気味に。少し上を向いたり、下を向いたり。鏡を見ながら、何度も何度も何度もやってみると、いい表情ができるのが分かる。ああ、この顔で撮られればいいのか、と。誰でもいい顔ができるのに、どうすればいいか知らないだけだ。

そして、いろいろな表情を作りながら、何十枚も撮る。撮って、撮って、撮りまくるのだ。数枚でなく、何十枚も。いまはデジタル時代だから、すぐ見直せる。そして、気に入ったものを選び、プリントしてもらう。以上。

「万一の時はこれを使ってほしい」

余談になるが、そのようなお迎え写真がない場合、かつては、葬儀屋さんが作ってくれた。生前の記念写真か何かから顔を取り出し、紋付、背広、礼服などのボディと組み合わせて作っていた。

その土台になるボディの部分のモデルをやれと、写真会社の社長が部下に命じたが、誰も嫌がってやらない。仕方なく、社長自身がモデルをやったが、彼は若くして亡くなった。彼の体は、生きている時から拝まれていたわけだが、早死にしたのは、あの写真のせいだなんて陰口をたたく者もいて、気分は微妙だった。

ボクは、仕事でポートレイトをずいぶん撮影したので、「万一の時はこれを使ってほしい」と言われているのが、たくさんたまっている。だが幸い、使う羽目になった写真はあまりない。人生100年時代だものなあ~。(写真家、土浦写真家協会会長)

ハラスメントに対するハラスメント 《続・気軽にSOS》103

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【コラム・浅井和幸】情けは人のためならず、巡り巡って自分のために。因果応報。目には目を、歯には歯を。罰が当たる。などなど、良いことをすれば良いことが自分に起こり、悪いことをすれば自分に悪いことが起こる―。こういったことは揺るぎない一般常識ですよね(私は全面的に肯定しませんが…)。

しかし、別の方向にゆがんでいくと悲劇が起こります。例えば、何か不運が起こった人は、日ごろの行いが悪いせいだと決めつける。例えば、悪い行いをしている人には、積極的に悪いことをしてやろうと思ったり、あるいは平然と行動を起こしたり。

けがをしている人や、事故に巻き込まれた人に対して、日ごろの行いが悪いからだと考える。コロナに感染した人の家に石を投げつける。嫌な気分をさせられたと、あおり運転をする、土下座をさせる。いじめをした人や集団に対して、もっと大きな集団でいじめる。何かのハラスメントをした人に対して、嫌がらせをする。

悪意に悪意で対抗してもコスパはよくない

何となく正義の執行をしているようで、心地よい部分もあるかもしれません。自分のコンプレックスやストレスから目をそらして、気分のよさを味わえるかもしれません。その感覚に依存的になり、次の悪者を探し回る人もいるでしょう。

それを続けることは心地よい反面、いつも悪いことに意識を使っているので、嫌な世界に居続けることになります。ストレス解消をしているようにみえて、自分のストレスを抑圧し、精神的なダメージを受け続けることになりかねません。

先日、YAHOO!ニュースに「筋トレ、1日3秒でも効果 手軽な運動法開発へ」という記事がありました。

これと同じように、精神的なダメージも、逆にダメージ回復や喜びの習慣も、わずかな時間の繰り返しの中で、身に付くことを想像してください。そして、あなたはどちらの方向に向かいたいのか、探ってみてくださいね。悪意に悪意で対抗することは、長い目で見ると、コスパはよくないですよ。(精神保健福祉士)

スマートIC整備へ予備設計 スクールロイヤー導入 土浦市22年度当初予算案

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2022年度当初予算案を発表する安藤真理子土浦市長=18日、市役所

土浦市の安藤真理子市長は18日、2022年度予算案を発表した。一般会計は前年度当初と比べ5.9%増の526億5000万円、特別会計を合わせた総額は同比3.6%増の941億円で、常磐道桜土浦インターチェンジ(IC)-土浦北IC間のスマートICの整備に向け予備設計などを実施する(2600万円)。

安藤市長は「第9次市総合計画がスタートする年であることから、ウィズコロナ、ポストコロナを見据え、夢のある、元気のある土浦を実現するための、未来に向けた変化の一歩を踏み出す予算を編成した」としている。3月1日開会予定の市議会3月定例会に提案する。

IC周辺については、産業系の土地利用が見込まれる桜土浦IC周辺について、土地利用を促進するための企業ヒヤリングや地権者説明会などを実施する(1250万円)。

公共交通の確保(約6600万円)では、新たに右籾地区でコミュニティ交通の実証運行を実施するほか、土浦協同病院周辺のおおつ野地区で新しい公共交通の実現を目指した「つちうらMaas」の実証実験に取り組む。

サイクリング環境の整備では、昨年12月、同市川口、りんりんポート土浦周辺で全日本選手権シクロクロス大会が開催されたのを機に、シクロクロスの魅力を発信する全国シクロクロスサミット(200万円)を開催する。

教育では、2027年開校を目指し土浦五中近くの上大津地区に、上大津東小と菅谷小を統合した小学校を新設するため用地取得と設計を行う(2億200万円)。

学校でのいじめや事故対応として「スクールロイヤー」を導入し、初期段階から弁護士が保護者や学校との面談に同席し、中立的な立場から助言するほか、複数の弁護士が各学校でいじめ予防の出前授業を実施などする(110万円)。

ほかに、行政サービスのデジタル化に向け、市デジタルトランスフォーメーション(DX)計画を策定する(約1200万円)。

人口が現在の13万8000人から9万6000人に3割減少すると見込まれる2055年に向け、市全体の公共施設の総床面積を30%縮減する公共施設複合化・集約化推進計画を策定する(約540万円)。

歳入のうち市税は、新型コロナからの経済活動の回復が期待されることから4.8%増を見込む。財源不足を補うため財政調整基金などから繰り入れたことから、22年度末の基金残高は前年度末より10億円減って117億8000万円になる。市の借金である市債残高は、過去最高だった17年度から毎年減り、22年度末は910億円になる見込み。

みどりの学校プール24年4月オープン 午後は市民に開放 つくば

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みどりの学校プール完成イメージ図(つくば市ホームページより)

つくば市みどりの地区に計画されている「みどりの学校プール」(仮称)の設計概要が公表された。年間を通して利用できる市営の屋内温水プールで、つくばエクスプレス(TX)沿線の小中学校11校が学校の授業で利用する。学校の利用がない時間帯は市民に開放される。2024年4月オープンする予定。

敷地面積約2.5ヘクタール、建築面積約2950平方メートル、1階建て鉄筋コンクリート造一部鉄骨造りで、25メートルプール2槽と幼児プール(円形型約20平方メートル)、トレーニング室(約120平方メートル)、会議室(約90平方メートル)が設置される。25メートルプールのうち1槽は7レーン。もう1槽は6レーンで、深さ1.5メートルまで調整できる可動床式となり、車いすでも入れるスロープが設置される。駐車場は大型バス8台、普通車250台分が整備される。

2022年度から2カ年かけ建設される。総事業費は約36億4200万円で、内訳は土地購入費約8億5600万円、設計費約8600万円、建設費約27億円。

省エネ、環境対策として、コジェネレーションシステム(熱電併給)によるガス給湯を実施し、屋根には太陽光パネルを設置する。

学校にプールが整備されないTX沿線の新設校や児童生徒数が多い学校、プールが老朽化している学校などが利用する。利用する学校は、香取台小(23年4月開校予定)、研究学園小中(23年4月開校)、学園の森義務教育学校の一部、島名小、真瀬小、谷田部小、谷田部南小、みどりの義務教育学校、みどりの南小中(24年4月開校)の計11校の児童生徒約5000人。5月から11月の午前中に学校が授業で利用する。各学校からはバスで行き来することになる。

学校の利用がない5月から11月の平日の午後と夜間のほか、土日祝日、夏休み、12月から4月の終日は、市民に開放する。みどりの地区には市の交流センターがないことから、会議室は地域のコミュニティスペースとしても利用できる。

市スポーツ施設整備室によると、一般の利用料金や開館時間などはこれから検討する。運営は指定管理者などに委託することを検討している。年間維持管理費などはこれから算定するという。

予定地はもともと小学校の建設予定地で、市が県有地を購入した。小学校の建設場所が約600メートル南に移転し、小中併設校を建設する計画に変更になったことから(2020年6月2日付)、複数の学校が共同利用する学校プールが建設される。

権利を教えてくれた海老原宏美さん 《電動車いすから見た景色》27

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2019年に出版された海老原さんの著書

【コラム・川端舞】昨年のクリスマスイブ、海老原宏美さんが天国に旅立った。何冊か本も出版し、NHKに何度も出演している。私にとっては「権利とは何か」を教えてくれ、子ども時代を肯定するきっかけをくれた人だ。

本人の著書によると、海老原さんは1977年に進行性の障害とともに生まれ、小学校から高校まで車いすで普通学校に通い、大学進学後、24時間介助を受けながら1人暮らしを始めた。

私が初めてお会いした2017年には、人工呼吸器をつけながら、自立生活センター東大和の理事長をしていた。初対面のとき、東京で普通学校に通う障害児を支援していると話す海老原さんに、私も障害児支援に関心はあるが、何をすればいいのか分からないと話した。

海老原さんとの出会いをきっかけに、彼女が代表を務める東京インクルーシブ教育プロジェクト(TIP)に関わるようになった。海老原さんはよく、「どんな障害児でも普通学校に通う権利がある」と言っていた。初めて聞いたとき、権利とは何なのか分からなかった。

しかし、海老原さんやTIPの仲間と国連障害者人権条約を読み込み、「権利とは他の人が当たり前にやっていることを、障害者も当たり前すること。障害のない子が当たり前に通う同じ学校に、障害児も当たり前に通うことなんだ」と理解した。

私の役割

子どものころ、障害のある自分が普通学校に通うのは悪いことなのだと思っていた。だから学校でどんな嫌なことがあっても、我慢しなければいけないのだと。

しかし、海老原さんから権利という言葉を何度も聞くうちに、当時の自分には堂々と普通学校に通う権利があったのだと思えるようになった。障害児がどんなに困っていても、その子どもの支援はすべて介助員に任せ、他の教員は障害児に直接声も掛けない普通学校の環境こそ変わるべきだった。

自分の子ども時代を肯定できたことで、今、普通学校に通っている障害児に対しても「君はそのままでこの学校にいていいんだよ」と言ってあげたくなった。

自分のように普通学校でつらい経験をする障害児が減るよう、子どものころ、周囲の大人にどう関わってほしかったのかを、障害児の保護者や教員に伝えていくことが、私の役割だと思っている。「どんな障害児でも必要な支援を受けながら、普通学校に通う権利がある」と言い続けよう。

障害児が普通学校に通うのは本当に正しいのか迷っていた私の考えを、たった5年間でここまで変えてしまった海老原さん。責任を持って、学校教育の当たり前が変わるまで、天国から見守っていてくださいね。(障害当事者)

小学校 21日から通常登校に つくば、土浦

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茨城県庁(イラストは「いばらきアマビエちゃん」)

新型コロナウイルスの感染拡大により臨時休校となっていた小学校について、大井川和彦知事が16日、21日から原則、通常登校、通常授業に戻したいと表明したのを受けて、つくば、土浦市は小学校と義務教育学校前期課程を21日から再開する。

県の要請で小学校は1月31日から2月18日までの3週間、臨時休校となっていた。大井川知事は16日「リモート学習をお願いした成果もあって、クラスターの数が一番多かった小学校が2月にはだいぶ減った」「小学校の感染状況は2月の頭をピークにかなり下がってきている」とし、「卒業式が近い中、子供たちの教育機会を守る必要がある」とした。一方、感染が確認された場合は、学級閉鎖などで対応する。

原則禁止としていた中学、高校、大学の部活動や県内大会についても、感染対策を行いながら再開する。ただし他校との練習試合や合宿などは引き続き自粛を要請する。

学校行事も修学旅行などを含め実施する方向で検討するとした。

県の発表を受けてつくば、土浦両市とも21日から小学校を通常登校、通常授業に戻す。ただし登校に不安がある児童については欠席扱いとせず自宅学習を認める。通学しない児童への対応については、リモート授業やプリント学習など学校ごとに個別に対応する。

3週間の臨時休校による学習の遅れへの対応について土浦市は、これから各学校に学習の進ちょくについて調査を実施するとしている。仮に3学期の学習に遅れが出る場合は、次年度に対応することになるという。

学校での感染防止対策として土浦市は、すでに実施している毎朝の検温、マスク着用、手洗い、給食時の黙食などのほかに、「手洗いの回数を増やしたり、給食は準備段階から黙食を徹底するなど対策を強化したい」としている。

体育の授業は、接触や密集を避けるよう授業内容を工夫する。

21日から再開される中学校の部活動について土浦市は、当面、土日は活動を見合わせ平日のみとし、感染状況を見ながら土日の部活動を再開させたいとしている。

まん延防止等重点措置の延長を要請

一方、県全体の感染状況について大井川知事は16日、1週間あたりの新規感染者数が1日1000人を超える状況が続いていること、高齢者など重症化リスクの高い人に感染が広がってきていること、病床稼働数が増加傾向にあること予断を許さない状況が続いているとして、国に20日までとしていたまん延防止等重点措置の延長を要請したと発表した。

延長するかどうかは岸田首相が17日夜に発表する。

直近1カ月の感染状況は、年代別では、60歳以上が増加傾向、30代から50代が横ばい、20代以下が若干減少傾向という。入院患者は87%が60歳以上で、増加傾向が続いているとした。クラスターの発生状況については、幼稚園・保育園でのクラスターが1月は県全体で27件だったのが、2月は14日までの2週間で46件と大幅に増えている。

まん延防止等重点措置が延長された場合、飲食店に対しては21日以降も夜8時以降または夜9時以降の営業自粛や酒類の提供自粛などを引き続き要請する。協力金は売り上げなどに応じて中小企業の場合、引き続き1日2万5000円から10万円が支払われる。

ワクチン接種については、2月中に全市町村で高齢者の3回目の接種を終了したいとした。14日時点で、県内の特別養護老人ホームや老健施設など高齢者施設では86%が3回目のワクチン接種を済ませたとした。3回目の接種率は県人口の13%という。

さらに今後予定されている小児接種については、ワクチン供給量が少ないことから、まずは感染すると重症化する可能性が高い重度の基礎疾患のある小児を中心に接種を進めるとし、かかりつけ医や小児救急中核病院で接種してもらい、3月6日から1週間程度は大規模接種会場2カ所で接種できるようにするとした。

【追加18日21時】国は18日夜、茨城県など17道府県へのまん延防止等重点措置の適用を、3月6日まで2週間延長することを決定した。

入浴中の事故防止 《くずかごの唄》102

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【コラム・奥井登美子】夫がお風呂へ入ると、浴槽に漬かって、ウットリしてなかなか出てこない。コロナの騒ぎで、どこにも行けなくなった老人の唯一「ウットリの楽しみ」だと割り切って、私は大目に見てきた。

いつもは20分。今日はもう30分だ。さすがに心配になって、のぞいて見る。

「ずいぶん長く入っているの、ね…」

「うーん」

返事はするけれど、立ち上がる気配はない。

近づいてみて、びっくりした。腰が抜けて、立ち上がれないのだ。立つ力が、完全に抜け落ちてしまっている。

「困ったわね。ほら、私の腕にしっかりつかまってちょうだい」

私が腕を差し出し、彼は気力を振り絞ってつかまるのだが、どうしても立てない。エイ、ヤー。全身の力で引き揚げようと、私も引っ張ってみたが、ダメだった。

風呂に入った人を引き上げるのに、1人ではとても無理なのがわかった。私はとっさに2階にいる娘を呼び出して、孫まで動員し、浴槽から男1匹を引き上げることができたが、1人暮らしの人はどうすればいいのだろうか?

あと15分遅かったら、彼は声を出すことすらできなくなっていたに違いない。危ないところだった。

高齢者は血管の適応力が落ちる

気温が低いと、老人は急に暖かいお風呂に入った温度差で、血圧がものすごい速さで変化して、熱中けいれんを起こしてしまうらしい。若いときは、温度差などすぐに適応できたのに、老人になると血管の適応力も落ちてしまっているのだ。

知り合いや友だち、今年の冬の寒い日に、3人も入浴中に亡くなってしまっている。本人にとって気持ちのよい浴槽が凶器に変わる。

生活の中で、入浴中の事故防止を真剣に考えないといけない、と思う。(随筆家、薬剤師)

エッセンシャルワーカー向けPCR検査所 県がつくばに開設

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つくばウェルネスパーク内に開設されたエッセンシャルワーカー向けドライブスルー方式のPCR検査所。右は現場でPCR検査ができる筑波大学の水素燃料電池バス=16日、つくば市山木

濃厚接触者の早期職場復帰へ

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、濃厚接触者となったエッセンシャルワーカー(社会機能維持者)を対象とした県の無料PCR検査所がつくば市山木、つくばウェルネスパーク駐車場内に開設され、2月1日からドライブスルー方式による検査が実施されている。

自宅待機5日目以降で無症状の医療従事者、保育園や幼稚園職員、警察官、消防士や救急隊員、高齢者や障害者施設の職員などが対象。検査で陰性が確認されれば、早くてその日から安心して職場復帰できる。開設はつくば市1カ所のみで、県内全市町村のエッセンシャルワーカーが対象になる。

筑波大の水素燃料電池バスが出動

抗原検査キットが手に入らなかったりPCR検査が受けられないなど、検査体制のひっ迫が続いていることから、県の要請を受けて、現場で精密なPCR検査ができる筑波大学の水素燃料電池バスが出動し、臨時の検査所が開設された。

現在は1日3時間受け付け、1日最大240人分の検査ができる。2月末まで開設し、平日に検査を受け付ける。検査体制のひっ迫が続けば、3月以降も延長される予定だという。

前日までにインターネットで予約することが必要。会場では、自家用車の車内でだ液を採取し、担当職員に検体を手渡せば、5分程度で終了となる。検体は、会場に駐車してある水素燃料電池バスの車内で1検体ずつ検査され、40分から1時間後に本人のメールに結果が通知される。一般の検査センターでPCR検査を実施する場合に比べ、半日ほど早く本人に結果が届くという。

筑波大によると、2月1日からこれまで、1日平均100人程度、最大で1日169人が検査を実施した。濃厚接触者の場合、自宅待機5日目では1割程度が陽性になるとされるが、筑波大の検査でも169人中11%が陽性だったという。陽性の場合はさらに6日間、自宅待機が必要となる。

16日は午前11時に検査がスタートし、事前予約していたエッセンシャルワーカーの車が次々にやってきて、検体を手渡す姿が見られた。

同大医学医療系感染内科学の鈴木広道教授は「医療従事者などエッセンシャルワーカーの早期職場復帰や、施設内でのクラスター発生防止に協力できれば」などと話している。(鈴木宏子)

つくば生まれのHAL 病院導入にはずみ 4月からの診療報酬改定で

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サイバーダインの装着型サイボーグ各種。右奥が医療用HAL下肢タイプ=つくば市のサイバーダイン本社

装着型ロボットスーツ開発のサイバーダイン(つくば市学園南、山海嘉之社長)の主力製品である「医療用HAL下肢タイプ」が4月から、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や筋ジストロフィーなどの難病で入院する患者への治療に用いられた場合、診療報酬として出来高評価で加算できることになった。診療報酬の増点もあり、病院がHALを導入しやすくなる条件が整った。

9日開催の中央社会保険医療協議会 (中医協)総会で、2022年度診療報酬改定の答申書が承認された。この中で医療用HALによる入院患者への治療については、DPC包括評価の対象外項目(出来高算定項目)に追加された。

DPCは急性期入院医療を対象とした診療報酬の包括評価制度で、1日当たりの定額(包括)の医療費で計算をする方式。投薬、注射、検査などが包括されている対象項目は別々には算定できない。今回の改定案で医療用HALは、包括評価から出来高算定項目に切り替わり、外来患者同様、診療報酬算定ができるようになった。

同時に診療報酬点数の基本点数が900点から1100点に増点され、難病加算や導入加算を加えると4月以降、1回あたりの出来高評価は4000点となる。サイバーダイン社によれば、診療報酬は1回4万円となり、HALを装着して入院中に週2回月9回、各1時間程度の歩行機能改善を行った場合、36万円が出来高分に算入できるという。

難病入院の患者に治療機会

中医協の答申を踏まえ、厚生労働省は3月までに診療報酬の算定方法の改正に関わる告示・通知を発出する見込み。DPC対象病院は難病指定病院の約8割を占める。これまでHALを使った治療を実施しても、診療報酬として加算されなかったDPC対象病院には導入への大きな動機付けになる。

同社の宇賀伸二CFO(最高財務責任者)は「DPC対象は現在全国に約2000病院あるが、導入先は現行60病院にとどまる。これを当面200病院に拡大して、難病患者の治療機会の確保に努めたい」としている。

HALは筑波大学ベンチャーによって開発された装着型サイボーグ。脳から出る生体電位信号を利用して、身体機能を改善・補助・拡張・再生することができる。下肢などの機能回復を促す医療用のほか、作業支援用、介護支援用がある。

HAL医療用下肢タイプは、筋萎縮性側索硬化症や脊髄性筋萎縮症(SMA)、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)など8つの緩徐進行性の神経・筋疾患を対象に、2015年11月に新医療機器として薬事承認され、医薬品医療機器法(薬機法)に基づき、5年間にわたり有効性や安全性の確認を目的とした使用成績調査が実施されてきた。その結果、他に有効な治療方法が確立していない緩徐進行性の患者に対して、既承認薬も含め前例のない顕著な機能改善効果が確認された。さらに安全な治療法であることを証明する「医療技術評価提案書」が日本神経治療学会から提出され、今回の改定案答申に至った。(相澤冬樹)