水曜日, 10月 4, 2023
ホーム 社会 7月22日水戸地裁で判決へ 常総水害訴訟が結審

7月22日水戸地裁で判決へ 常総水害訴訟が結審

2015年9月の鬼怒川水害で、住民が甚大な浸水被害を受けたのは国交省の河川管理に瑕疵(かし)があったためだなどとして、住宅や家財、車などの浸水被害を受けた常総市の住民ら32人が18年7月、国を相手取って約3億5800万円の損害賠償を求めて国家賠償訴訟を起こした裁判の口頭弁論が25日、水戸地裁(阿部雅彦裁判長)で開かれ、住民側、国側いずれも最終準備書面を陳述して結審した。判決は7月22日言い渡される。

25日の裁判では原告団長の片倉一美さんが、被害の状況や住民側の主張をまとめた画像を法廷で映しながら、これまでの裁判を振り返り「国の言い分はあまりにも非常識で、論点をごまかす姑息(こそく)な言い換え」だなどと述べ、「国民の生命と財産を守るという使命が微塵も感じられない」などと国の河川行政を真っ向から批判した。

裁判終結後、水戸市内で開かれた報告集会で住民側弁護団の只野靖弁護士は「日本各地で洪水や水害が発生している。自然災害としてやむを得ないものもあるが、鬼怒川の上三坂(堤防決壊)と若宮戸(溢水)に関しては、人災だと確信をもって言える。裁判前は、国は『仕方なかった、もう少しやりようがあったが予算が付かなかった、地主の理解が得られなかった』など、いろいろな制約があったと主張すると思っていた。ふたを開けてみたら中身は空っぽ。(築堤や護岸改修の順番をどう決めるかなど)予算の範囲内で次にどこをやるかをあまり考えないでやっていこうというのが国の河川行政の中身で、計画らしいことが出てこなかった。これでは住民の生命と財産は守れない。この裁判を通してこうした在り方が見直されればいい」と話した。

原告団長の片倉さんは「理不尽な思いから、私たちと同じような被害を最小限にできないかと裁判をスタートした。鬼怒川だけでなく、全国の水害被害者が束になってかかれば裁判官の見方も変わるはず。今回の裁判はそういう一歩となれば」と語った。

裁判は、行政の責任の範囲を限定した1984年の大東水害訴訟最高裁判決の判断基準を元に、河川改修工事の順番が合理的だったかどうかなどが争われた。堤防が決壊した上三坂地区について住民側が、堤防が一番低く最も危険な場所で最優先で工事をする必要があったと主張したのに対し、国側は、堤防の高さだけでなく質も含めた評価を行う必要があるなどとし、堤防の幅を加味したスライドダウン評価という計算上の堤防の高さを元に、上三坂地区の管理に瑕疵はなかったと主張した。さらに砂丘林による自然堤防が掘削されソーラーパネルが設置された場所から水があふれ出た若宮戸地区については、住民側が、国が河川区域に指定していれば掘削を防げた、指定しなかったのは河川法の政令違反だと主張したのに対し、国側は、河川区域の指定は河川改修計画の合理性とは無関係で河川管理に瑕疵があったとは言えないなどと主張した。(鈴木宏子)

guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

0 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー

注目の記事

最近のコメント

最新記事

駐車場の手前で思ったこと《続・気軽にSOS》142

【コラム・浅井和幸】先日、あるお店に入るのに、小道から駐車場へ右折しようとしました。私が運転する自動車の前を走る自動車は慎重に歩道を歩く歩行者を観察してから右折を始めました。歩行者の動きを確認してから動き始めたはずのその車は、私が考えるコースとは違う方向に徐行し始めたので、私はすぐにその車の後についていかずに、ことの様子を停車したまま見守りました。 私の前の自動車の前を横切る歩行者は、自動車前方から後方へ歩いています。自動車が右折をすることを考えると、歩行者は左側から右側へ歩いている状況です。私の前の自動車は、歩行者の今は空いている前方に向かって徐行し始めたのです。 もちろん、その瞬間は、歩行者はまだ左側にいるので、右側が空いている状況です。しかし、今、左側にいる歩行者は数秒後には右側に移動するのです。結果、自動車は歩行者が向かう数メートル先で数秒後に接触することが予想されます。結局、数秒後に、自動車は自分の目の前を歩行者が歩いていることになったため、停車することとなりました。 徐行ですから、特に危険な場面ではありません。しかし歩行者が先ほどまでいた地点は、現時点では歩行者の後方(自動車からは左側)となり大きく空いているのです。わざわざ歩行者が向かう先に車を移動させて鉢合わせになり停車するよりも、数秒待っていれば歩行者をやり過ごして、私の前の自動車は10秒弱という時間ではありますが早く駐車場に入れたことになります。しかも、歩行者にぶつかりそうになるかもと足を止めさせるような気を使わせずに。 現在の常識は何十年前の常識? このように人や時間、物事はそこにとどまらずに未来に進んでいます。今現在の止まった感覚で空いているスペースに車を移動させることは、数秒後には空きスペースではなくなることがよくあることです。

2024年の米大統領選挙(1)《雑記録》52

【コラム・瀧田薫】次期アメリカ大統領選挙は前回選挙(2020年)の再現になると予想されている。各種世論調査では、2020年選挙時と同様に、ジョー・バイデン氏(民主党)とドナルド・トランプ氏(共和党)がそれぞれ党指名候補に選ばれる可能性が高いとされている。 バイデン氏については、支持率は4割台前半にとどまり、経済に関しては3割台の低支持率が続いている。彼が80歳の高齢であることを懸念する人も多い。しかし、一方で、彼が2020年選挙でトランプ氏に勝利し、共和党の圧勝が予想された2022年の中間選挙でも民主党が上院の多数派を維持し、下院で失う議席を小幅にとどめた実績が効いていて、民主党内にバイデン氏に代わる候補者が出てこない。 トランプ氏は今年3月に起訴されたことを「魔女狩りに遭った」と主張し、彼の岩盤支持層の熱い支援につなげ、党内での支持率も高めている。ただ、共和党の場合、状況によっては、かつての民主党・オバマ氏のような「超新星・候補者」が現われないとも限らない。 ともあれ、最近のバイデン、トランプ両氏はともに、党内の支持固めよりも本選に備えた布石を打とうとしているようだ。米自動車労働組合(UAW)が待遇改善要求のための大規模ストライキに突入していて、両氏ともにこれへの連帯を示すため、車産業の本拠地・米中西部、特にミシガン州訪問を予定しているという。 2016年の選挙で当選したトランプ氏の勝因は、ミシガン州やペンシルベニア州(もともと自動車労組が強力で民主党の支持基盤)で勝利したことにあった。そして、2020年選挙ではバイデン氏が両州を奪還し、これが勝因となった。両陣営が獲得した票数は二度とも僅差であったから、今回、両氏がミシガンやペンシルベニア、ひいては米中西部各州を重視するには十二分の根拠がある。 UAWストの行方に注目

電動アシスト自転車で加速 土浦のシェアサイクル

秋の気配に、土浦市街地でも普段使いの自転車の姿が目立ってきた。この中で客足を伸ばしているのが、関東鉄道(土浦市真鍋、松上英一郎社長)のシェアサイクル「関鉄Pedal(ペダル)」だ。ことし3月、同市内を中心にレンタサイクルのステーションを9カ所設けて20台の電動アシスト自転車を配備したところ、半年で累計2400件の利用を数えた。猛暑もようやく収まりそうな10月、同社は自転車を増やし、ステーションを拡大して攻勢をかける。シェアサイクルはモビリティーシェアサービスのOpenStreet(オープンストリート、本社・東京)との提携で3月23日にスタート。JR土浦駅前はじめ同市内に8カ所と関東鉄道「筑波山口」バス停に、24時間自転車の貸出・返却ができるステーションを設置した。レンタサイクルとしては、15分あたり200円(24時間の上限料金3000円)=税込み。スマホの専用アプリに登録することで、自転車の予約から料金の支払いまでできる。全国6000カ所以上で展開しているOpenStreet系列のステーションであれば、どこでも利用できる仕組みになっている。同社によれば平日と休日で、異なるニーズから利用のされ方をしているという。「平日は通勤利用が多い。朝駅前のステーションで自転車を借り、勤務先近くのステーションで乗り捨てる。帰りは改めて借りたり、別の方法で帰ってもいい。週末・休日は筑波山や霞ケ浦などに向かうレジャー利用が増える」(開発部)つくば霞ケ浦りんりんロードは平たんなコースをたどるが、坂道がなくとも風上に向かって走る場合に、電動アシスト自転車は威力を発揮する。電動で100キロ以上走行できるから、土浦から東京まで行って乗り捨てられたケースもあるそうだ。同社は9月から、鬼怒川サイクリングロードのある常総市にも関鉄Pedalを拡大した。常総線水海道駅、三妻駅と「道の駅常総」などを結ぶ。土浦市内では9月までに9カ所となっていたステーション数を6日に4カ所増やし13カ所とし、電動アシスト自転車は40台に増やす。同日からは関鉄グループバスの乗り放題とシェアサイクルをセットにした1日乗車券を3000円(税込み)で発売する。12月11日まで。 努力義務化のヘルメット着用にどう対応 利用拡大の中で課題はヘルメットの着用だ。改正道路交通法の施行に伴い4月から自転車に乗る全ての人にヘルメットの着用が努力義務化されたが、関鉄Pedalを含めOpenStreetのシェアサイクルサービスではヘルメットの貸し出しは行っていない。アプリで持参を呼び掛ける形にとどまる。同様に市街地でレンタサイクル事業を行っている土浦市観光協会に聞くと、「クロスバイク(スポーツサイクル)に乗る人はヘルメット持参で借りに来るがシティサイクルだとヘルメットを辞退する人が多い。別料金ではないのだが他人のかぶったヘルメットには抵抗があるようだ」としており、レンタサイクルとヘルメットには相性の悪さがある。同社開発部は「公共交通を担う企業として安全は第一に考えなくてはならない。課題認識をもって取り組んでいきたい」としている。(相澤冬樹)

土浦市のいじめ回答拒否 個人情報保護が盾《吾妻カガミ》168

【コラム・坂本栄】土浦市立中学校でのいじめ問題に関する市教育委員会と市議会文教厚生委員会の対応に違和感を覚えています。教育委は本サイトの取材に回答を拒否してメールによるコメントで済ませ、文教厚生委はこの問題を取り上げないことを決めました。教育委の回答拒否と議会の審議回避の理由はなぜか同じであり、「関係生徒のプライバシー保護」でした。 不十分な教育委の対応 2019年春から22年春にかけて、車いすの生徒が受けたいじめがどんなものだったのか、学校と教育委は繰り返されるいじめにどう対応したのか―などは、保護者の証言に基づく記事「いじめをなぜ止められなかったのか 保護者が再調査求める…」(9月3日掲載)に詳しく出ています。 また、コラム166「高齢研究者と車いす生徒に冷たい土浦市」(9月4日掲載)では、教育委の市民にやさしくない対応に疑問を呈しました。 教育委がそれなりの対応をしたにもかかわらず、いじめが続いたということは、一連の生徒対応が不十分だったことを意味します。いじめられた生徒はすでに中学校を卒業しているのに、保護者が再調査を求めているのは、いじめた生徒への指導が不徹底だった原因を調べ、再発防止の教訓にしてほしいと思っているからです。 市議会も教育委に同調

記事データベースで過去の記事を見る