月曜日, 12月 29, 2025
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地域を「計画・提案」する《デザインについて考える》6

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イラストは筆者提供

【コラム・三橋俊雄】今回のテーマは「地域をデザインする」です。私は長年、地域を元気にするための活動を、福島、新潟、青森県、京都府などの過疎化・高齢化が進む町や村で行ってきました。それらの地域で、多くの方々から話を伺い、その地で出合った様々な魅力を肌で感じ、あるいは地域の課題を探りながら、その町や村の「これから」についてデザイン(計画・提案)させていただきました。

そうした地域づくりの基本姿勢として、地域が主人公になれるための「内発的」というベクトルを堅持してきたつもりです。

コラム4「南北問題と適正技術」 では、先進国による発展途上国への一方的な援助が、結果として当該地域の問題解決につながらず、そうした中からダグハマーショルド財団の「Que Faire ?(何をなすべきか)」により、「内発的」という概念が提唱されたことをお伝えしました。

日本でも、1900年代後半の過疎化・高齢化対策において、工場誘致や企業誘致などに頼る「外発的」な地域振興策が多くとられてきた中で、果たして住民や地域の自然、社会、文化などが主人公になれる「内発的」地域づくりにつながるのだろうかという疑念を持ちました。

そのような時期に出合ったのが、上のイラストに示した「JRの中吊りポスター」でした。

「内発的」な地域づくりを志向

ポスターには新幹線とホテルやスキー場で楽しむ都会の若者たちの姿が描かれ、キャッチコピーには「例えば新幹線とドッキングしたスキー場の開発」とありました。このポスターからは、目立った産業のない雪国に対して、スキー場を整備して新幹線とつながるリゾートホテルを誘致することで、都会から若者たちが集まり、経済的波及効果によって地域の活性化が図られるという、地域開発のシナリオが読みとれました。

しかし、このような手法によって、自然、歴史、生活文化が生かされ、住民が生き生きと働くことのできる社会を実現することができるでしょうか?

大切な森林が伐採され、若者はスキー場の管理人やホテルの従業員として雇用されるだけという結果にならないでしょうか? スキー場とホテルの完成によって、住民の地域に対する「誇り」や「生きがい」を生み出すことができるでしょうか?

人間は尊厳をもって一個の人格を形成し、自己のアイデンティティーを確立させていきます。同様に、地域づくりの過程においても、「地域格」を形成し、地域のアイデンティティーを確立させていくことが大切であると考えます。そのためには、いかに地域が主人公になり得るかが「鍵」となってきます。

その意味で、「地域をデザインする」というシナリオには、「内発的」な地域づくりを志向するデザイナーの姿勢が不可欠であると考えます。(ソーシャルデザイナー)

望月学長「何度も立ち上がりやり直す生き方こそ指針に」 筑波学院大で卒業式

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望月学長から学位記を受け取る卒業生代表の堀江紅音さん=つくば市吾妻、筑波学院大学

筑波学院大学(つくば市吾妻、望月義人学長)の2023年度卒業式が18日に催された。ビジネスデザイン学科の145人がスーツやはかまに身を包み、晴れやかな表情で式に臨んだ。卒業生代表の堀江紅音さんが望月義人学長から卒業証書を受け取った。

望月学長は、南米ウルグアイの前大統領ホセ・ムヒカ氏を尊敬する人物として挙げ、同氏が述べた言葉を引用し「(ホセ・ムヒカ氏の)貧しいけれども清い生き方は国内外の人々に共感を与えてきた。何度も立ち上がりやり直すという生き方こそ、これから社会の荒波に飛び込む皆さんの生き方の一つの指針となる。人生の価値はどれだけの富や地位を得たかではない。常に自らを磨くために努力を続け進化を遂げていく人の姿はまぶしく映る」と話して激励した。

橋本綱夫理事長は、卒業生が新型コロナウイルス感染拡大の時期に入学したことに触れ、さまざまな制約があったにもかかわらず、我慢して努力し卒業を迎えたことをねぎらった。また「卒業で学びは終わりではない。自分自身で学びたいことを見つけていくことが必要になる。主体的な学びの姿勢は重要で、ぜひ学び続けていってほしい。今の社会は変化に満ちており、さまざまな困難や課題から逃げないで取り組んでいくことが大切」とあいさつした。

卒業生代表として答辞を述べた飯島瑞樹さんは「大学に入学した最初の頃は新型コロナウイルスの影響によって友だちを作ることができず、孤独を感じながら授業を受けていたが、たくさんの友人や先輩と出会い一生の宝物となった。このような多くの友人との出会いによって、これまでの私であれば決してありえなかった経験をすることができた」と振り返り、支えてくれた友人や教職員、家族への感謝の気持ちを述べた。

「たくさんの人との出会いはかけがえのない財産」と答辞を述べた卒業生代表の飯島瑞樹さん

ビジネスマネジメントコースで中国出身のリュウ・ニヘイさんは「6年日本で暮らしたが、時間が短く感じる。卒業後は中国に帰る。まだ何をするか決めていないが、事業を起こしたい」と話した。情報デザインコースの斉藤優希奈さんは「卒業の日を迎えてうれしい。プログラミングやウェブデザインを学ぶことができた。卒業後は県内の製造業で働く」と笑顔を見せた。

同大は来年度から大学名を日本国際学園大学に変更し、仙台キャンパスが開学。つくばと仙台の2キャンパス体制となる。グループである東北外語学園(仙台市)の教育メソッドを取り入れ、語学教育に力を入れていく。(田中めぐみ)

◆日本国際学園大学のホームページはこちら

つくば市長の主公約 陸上競技場始末《吾妻カガミ》179

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つくば市役所正面玄関サイド

【コラム・坂本栄】つくば市の陸上競技場設計作業が来年度から始まります。3月議会に出された基本計画は2年前とほぼ同じで、人口や予算規模で水戸市に肩を並べる県内2番目の市の施設としては、他の県内施設に比べて見劣りするのが気になります。

県内の他施設に比べ地味

上郷高廃校跡に造られる陸上競技場(全天候型舗装8レーンの400メートルトラック)は、▼走路=第4種公認、▼観客席=2900(うち芝生席2000)、▼駐車場=700台(うちバス25台分)―といった計画です。

他の県内競技場を見ると、▼県営笠松:第1種、2万2000席、2700台、▼水戸市営:第2種、1万2200席、2000台、▼日立市営:第3種、8500席、1500台、▼ひたちなか市営:第3種、1万5000席、3000台、▼古河市営:第2種、3700席、1200台、▼龍ケ崎市営:第3種、2600席、174台、▼石岡市営:第3種、2500席、650台―となっています。

これら施設は記録公認に必要な種別が第1種~第3種なのに、つくば市営は第4種と「格落ち」です。これで市民のプライドは保てるでしょうか? 使い勝手を左右する観客席数や駐車台数も、他の施設に比べるとかなり控えめです。

市長は政治的判断を優先

どういった競技場を造るか議論されていたころ、私はコラム99「つくば市の2大案件」(2021年2月1日掲載)で、「県に掛け合って高規格(第1~2種)の競技場をつくば市内に造らせ、県南の各市にも建設費を分担してもらったらどうか」と提案しました。少なくとも水戸市営並み、できれば県営笠松並みを想定していたからです。

どこに造るかについては、「上郷高校跡(7ヘクタール)と総合運動公園計画(メーンは陸上競技場)用地跡(45ヘクタール)が候補に挙げられます。市は前者に誘導したいようですが、アクセス路の利便性や拡張の可能性などは明らかに後者が上です」と指摘、狭い市道に囲まれた上郷高跡よりも国道408号に近い運動公園用地跡を推しました。

しかし、市原前市長が策定した運動公園計画を市民運動で葬った五十嵐市長には、最初から運動公園用地跡を使う選択肢はなかったようです。しっかりした施設をアクセス性がよい場所に造るという判断よりも、前市長の計画を否定する政治的な判断を優先したと言え、行政が政治に引っ張られた形です。

市史に残る「歪んだ選択」

五十嵐市長にとって運動公園用地返還と陸上競技場建設は1期目の主要な公約でした。ところがUR都市整備への用地返還は失敗し、扱いに困って倉庫業者に売り飛ばしました。陸上競技場を造る場所の方は、政治的な思惑から運動公園用地跡を外して、規格、規模、利便性で劣後する上郷高跡を選択しました。政治的な思惑が施策を歪めた事例として市史に残るでしょう。(経済ジャーナリスト)

7位確定 サンガイア ホーム最終戦に敗れる

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第3セット、つくばの架谷也斗(白いユニフォーム)がスパイクを放つ(撮影/高橋浩一)

バレーボールVリーグ2部(V2)男子のつくばユナイテッドサンガイア(SunGAIA、本拠地つくば市)は16、17日、つくば市流星台の市桜総合体育館で2連戦を行った。16日は富士通カワサキレッドスピリッツ(本拠地川崎市)にセットカウント3-1で勝利、17日は埼玉アザレア(本拠地川越市)に同1-3で敗北。これでつくばは11勝15敗、10チーム中7位で今季最終順位が確定した。

2023-24 Vリーグ2部男子(3月17日、つくば市桜総合体育館)
つくば 1-3 埼玉アザレア
25-22
18-25
17-25
20-25

第1セット、速攻を決めて喜ぶ松林(中央)

今季ホーム最終節の2試合、16日は2位を走る富士通から今季初白星を挙げ、勢いに乗ったつくばだったが、17日はリーグ4位の埼玉に敗れ、今季埼玉に3連敗を喫することになった。

序盤は十文字龍翔や松林哲平らミドルブロッカーを軸とした攻撃がさえ、第1セットを奪った。だが第2セットは相手の威力あるサーブにレシーブが安定せず、最大9点差をつけられる展開となった。「簡単なミスが目立ち、自分たちのリズムがつくれなかった」と濱田英寿主将。加藤俊介監督は「ファーストボールがきちんとセッターに返らず、攻撃の形をつくれなかった」と振り返る。

第2セット、ブロックを成功させた于(中央)が川村とハイタッチを交わす

第3セットは両チームともブロックやバックアタックで見せ場をつくるが、ここでも精度で彼我の差があった。「スパイクをワンタッチされてつながれた。もう少し決めきりたかった」と濱田主将。「相手のブロックを外そうとバックアタックを取り入れ、昨日はそれが機能したが今日は外れてしまった」と加藤監督。

追い詰められたつくばは第4セット、見失いかけていた自分たちの形を思い出そうと、トータルディフェンスから建て直しを図るが、徐々に相手の勢いに押され、最後は押し切られた。

「ホームの声援のためにも勝ちたかったが負けて悔しい。次戦は今季の集大成として、みんなで勝利のための準備をし、ファンに楽しんでもらえるようにしたい」と濱田主将。最終戦は24日、川越運動公園総合体育館でアイシンティルマーレ(本拠地碧南市)と対決。これに勝てば12勝目となり、昨季の成績を上回ることができる。

セッター茂太、ホーム初登場

第4セット、ツーアタックを狙う茂太

今節、ホームに初登場となった選手がいる。セッターの茂太隆次郎だ。昨年3月、順天堂大を卒業し加入。22日で23歳の誕生日を迎える。努力家で、選手の個性に合わせたトスワークを心掛けているという。

昨年11月の今季開幕戦でスタメンデビューを飾ったが、硬くなって本来の力を発揮することができず、その後はサブに回っていた。だが正セッターの于垚辰の負傷などをきっかけにポジションをつかみ、3日のきんでん戦からは5試合連続スタメン出場を重ねている。「クイックやパイプ(ミドルブロッカーをおとりに使ったバックアタック)を出すのがうまく、レシーブもいい」と加藤監督の評。本人は「クイックを使ってサイドを楽にさせるのが自分のスタイル」と話す。

速攻の場面では、ワンハンドトスで相手の意表をつく場面も何度か見られた。ただしこれについては「本当はちゃんと両手で上げたい。片手ではクイックしか出せず、状況に応じた使い分けができない」と反省もあるようだ。

つくばではほかにも、アウトサイドヒッターの川村駿介やリベロの谷平倫樹ら、多くの若手選手が出番を待つ。「自分たちの力で、来季はまた違うサンガイアを見せたい」と茂太は意気込みを語る。

この日のMIPを受賞した濱田主将(右)

「世界のもと!」 ゲームやイラストで元素知る企画展 つくば

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アトラクションの説明をするつくばエキスポセンターの齋藤俊明さん

エキスポセンター

「水兵リーベ僕の船!」と、暗記のために理科の授業で声をそろえた元素記号。人間を含む宇宙にあるすべての素になる「元素」を、イラストやゲームを通じて楽しみながら知ることができる企画展「世界の“もと”はげんそ!?」が15日からつくば市吾妻、つくばエキスポセンターで開催されている。

「この世界にあるものは、どんなものでもたった118種類の元素をくみわせてできているんです」と、説明するのは、企画を担当する同館の齋藤俊明さん。企画では、地球の歴史をさかのぼり、人間が暮らす地球をはじめ、人間自身がどんな元素でできているのかという疑問に、ゲームを通じて知ることからスタートする。

電子パネルに人間の体が映る「人体元素スキャナー」では、足元の体重計に乗ると、酸素、炭素、窒素、カルシウム、リン、5つの元素がそれぞれ何キロその人の体に含まれているのかが画面に表示される。

自分の体がどんな元素でできているかを知ることができる

次に並ぶ「ミネラルバランスチャレンジ」は、飲んだり食べたりすることで人が取り込む、生きていくために必要な元素を知るためのアトラクションだ。大きさと色の異なる筒それぞれに、カルシウム、ナトリウム、鉄などの元素がプリントされ、お皿に崩れないよう積んでいく。うまく積み上げるためにはバランスが必要だ。その塩梅が、人が必要とする食事のバランスにつながっている。せっかく積み上げた筒が崩れて落ちないようにドキドキ楽しみながら、毎日の食事の大切さも感じることができる。

ほかに、冷蔵庫やパソコンを冷却するためのモーターや、コンピューターに組み込まれた基盤などの実物の展示では、どんな元素が暮らしのどこにあるのかや、鉄や金などを地中から掘り出すためにどのくらいの開発が必要になるかという地球環境を考える仕掛けも用意されている。

担当者の齋藤さんは「いろいろなゲームを通じて小さなお子さんでも遊びながら『元素』を体験できるものをそろえているし、イラスト付きの元素記号やバッチなどのお土産も用意して、家に帰ってからも楽しんでもらえたら」と話し、子供たちの理科離れに触れながら「小学生より上のお子さんには学校の勉強と重ね合わせながら学びを深めてほしい。その中で『(理科や科学は)難しい』という気持ちを少しでも変えていただければ」と来場を呼び掛ける。

今回の企画は4月15日から21日までの「科学技術週間」の前後をはさむ、3月15日から5月12日までの2カ月間。

◆企画展「世界の“もと”はげ・ん・そ!?」は、つくば市吾妻2-9、つくばエキスポセンター2階の多目的ホールで開催。入館料は大人500円(消費税込)、高校生までは250円(同)、3歳以下無料。4月20日には、日本で作られた元素「ニホニウム」を知るためのワークショップが小学生以上を対象に開催される。参加費300円。詳細はイベントホームページへ。

新年度の土浦の花火は?《見上げてごらん!》25

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第11回土浦の花火フォトコンテストの入賞作品展示(土浦市役所)

【コラム・小泉裕司】記事「土浦市新年度予算」(2月15日掲載)によると、市は、4月1日実施の機構改革において、花火大会に関する情報発信の強化充実を図るために、「花火対策室」を「花火のまち推進室」に改編するとのこと。

1925(大正14)年の第1回大会から数えて、来年の第94回大会で100年、7年後には第100回大会を迎えるが、新年度は大会以外にどのような企画があるのか、実行委員会事務局に聞いた。

開口一番、新年度も「前年度並みの限られた予算規模の中でのやりくり」と釘を刺された。ちなみに、花火対策室の職員数は、昨年10月、1人減員の状態から3人体制に回復したが、大会に向けた準備に専念、新事業への取り組みはないという。

組織の名称変更についても、100年や100回のアニバーサリーに向けた特別な思いを込めたというよりも、連続した花火事故やコロナ禍を経た後の2大会の無事開催を踏まえ、「対策」という対処療法的イメージからの脱却が主たる理由らしい。

それであっても、「100年」「100回」は、遭遇することなど滅多にない希有(けう)な機会だ。何とかみんなで祝いたいと思う。次年度予算への反映に向けて、知恵を絞りたいものだ。

次の100年に向けて

過去、土浦市は、花火を歴史・文化資産としてとらえてこなかったことで、丁寧な資料の保存などが行われず、図録「花火と土浦」(2018年土浦市発行)の編集に際し、資料調査など苦労があったという。

この機会に、県紙である茨城新聞や地域紙であった旧常陽新聞などの記事や広告、大会運営に関わった市民や煙火業者などのエピソードの数々を、図録を補完するアーカイブとして集約し、次の100年に引き継いでいくことが大切ではないか。周囲の関係者に提唱しているところだ。

3月末に、いわゆる役職定年を迎える佐藤亨産業経済部長は、大会本部長を兼ねる。「本職に就いて、初めて花火の奥深さを知ることができた。若い時期に花火の業務を経験していれば、もっと花火の魅力を究めることができたのかも知れない」と、3年の在職を振り返った。

大会が万端整った後は、大会まで、事務所内に祭った気象神社(東京高円寺)のお札に好天を祈る毎日で、無事終了した後、お礼に参詣したとのこと。歴代の本部長が背負う宿命、最大の憂いごとである。ご慰労申し上げると同時に、今後は、現場を経験した「語り部」として、「土浦の花火」の魅力を拡散していこうぜ。

本日は、この辺で「打ち留めー」。「シュー ドドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

古書店主、岡田富朗さん 創業70周年記念し色紙展 つくば

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古書店「ブックセンター・キャンパス」入り口に立つ岡田さん=つくば市吾妻

つくば市吾妻にある古書店「ブックセンター・キャンパス」を経営する岡田富朗さん(88)さんが、都内で古書店を始めて昨年70周年を迎えた。記念展示として同店で「色紙展」を開催し、岡田さんが収集した著名人の色紙を展示している。

「君は必ず古本屋になる」

岡田さんは東京都出身。高校2年の時に小説家丹波文雄原作の映画「恋文横丁」を見て、映画の中に登場する若い古本屋が商売をする姿に憧れ、高校を中退して、神保町の国語・国文学専門古書店「日本書房」で働き始めた。

しかし「学者の先生がいらっしゃって本の名前を言われるが、知らない言葉は聞き取れない。専門用語が分からず、恥ずかしいことに20日で辞めてしまった」と話す。岡田さんが辞めたいと申し出ると、当時「日本書房」店主だった西秋松男さんが「君は将来必ず古本屋になる」と言い、怒りもせず辞めるのを許してくれた。

岡田さんはその後、1953年に18歳の若さで駒込に古書店を開いた。

「(西秋さんは)本当に迷惑だったと思うが、店を辞めてからもよく面倒をみてくれた。『若くてお客さんにばかにされるといけないから、神保町の日本書房にいたと言いなさい』と言って、その後もずっと助けてくれた」と当時を振り返り感謝する。

多くの文化人と交流、出版事業も

本を通じ、学者など多くの文化人との交流もあった。「日本書房」にいた時、当時阿佐ケ谷にあった言語学者、金田一京助さんの自宅に本を届けたこともある。夏目漱石の研究をしていた文芸評論家、荒正人(あら・まさひと)さんは岡田さんの古書店の常連だった。荒さんが、当時資料として無価値と考えられていた大正時代の電話帳や時刻表に着目していたことや、漱石の足跡をたどってロンドンに行ったことなども覚えている。

岡田さんは1966年に豊島書房名義で、古書蒐集家の斎藤夜居著「伝記伊藤晴雨」を出版。これを皮切りに出版事業も手掛け、作家、井上光晴編集の文芸雑誌「辺境」や雑誌「るうじん」などを世に送り出した。「るうじん」で特集を組んだことから漫画家のつげ義春さんとも交流し、穏やかな人柄を覚えていると振り返る。

豊島書房から創刊した雑誌「辺境」と「伝記伊藤晴雨」を紹介する岡田さん。右は色紙が展示してあるショーケース

科学万博前年につくばに移転

駒込の後、店を巣鴨、赤羽西口、旧軽井沢と移転し、つくば科学万博前年の1984年につくば市天久保に店を構えた。つくばへの移転を勧めたのはフランス文学者で慶應義塾大の義塾長を務めた佐藤朔さんだった。岡田さんは当時つくばに行ったこともなかったが、佐藤さんから「これからはつくばがおもしろいかも」と言われて移転を決めた。「当時は筑波大の先生たちが長靴で歩いていたくらい。遊ぶところも何もなかった」と笑う。筑波大の教授らが「古本屋があるから応援してやってくれ」と岡田さんの店を紹介し、学生にも愛されてきた。

当時、天久保には文系、理系、美術系の古書店5店が軒を並べ、古書店街と呼ばれた。その後天久保の店を閉店、古書店街も姿を消した。現在の吾妻には、天久保の店を閉じて20年ぶりとなる2019年に移転した。

岡田さんは「古本屋を通じていろんな人に出会え、いろんな話を聞けて勉強させてもらった。とにかく一流の人たちはすごい。話を聞くのが楽しかった」と70年を振り返る。

著名人の色紙60点以上を展示

店内展示は、人通りの少ない道に面する同店に人を呼び込みたいと2019年から始め、今回の展示は19回目。岡田さんが長年買い集めた著名人の色紙60点以上を展示している。音楽・文学・映画・スポーツなど幅広いジャンルを集め、今年亡くなった世界的指揮者、小澤征爾さんや映画監督の大島渚さん、俳人の水原秋桜子、河東碧梧桐、野球の長嶋茂雄さんなどの直筆を見ることができる。(田中めぐみ)

◆会期は4月28日まで。店内のショーケースに展示している。入場無料。同店は不定休だが急に開店時間が変更になることがある。問い合わせは電話029-851-8100。同店のホームページはこちら

メロンなんて昔は食べたことなかった《写真だいすき》30

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産地のハウス内。活発にメロン畑の手入れがなされている。写真は本文とは関係ありません。撮影は筆者

【コラム・オダギ秀】ボクは農業関係の撮影が多く、そのため農協さんとの付き合いが多かった。今はもうはるか昔の話だが、その頃は、農協がらみの研修旅行がよくあった。研修というのは名ばかりで、実質は慰安旅行、宴会がらみの遊興旅行だった。ボクも関係者ということで、よくそれに同行した。

どこに行った時だったか、宴会の席で、形ばかりの研修をした。よその農協さんが、こちらは茨城なので他県のことなど聞いてはいないのだが、あまり関係のない作物の作柄など適当に報告する。「研修」ということを名目にするための、形作りのものだった。

その時、茨城のとある小さな農協のひとりの男の人が、遠慮がちに色々質問をはじめ、ていねいにメモをとっていた。「ん? 関係ないのに、何しとる?」。ボクはかえって疑問が湧き、あとで彼に尋ねた。するとその人Aさんは、初対面のボクの言い掛かりのような問いかけに、ていねいに応えてくれた。

「農作物というのは、1年かけて育てるものです。どんな遠くのささいなことでも、長い年月の間には、自然はどんな影響を及ぼすかわからない。だから、他の地方の自分とは関係ないような作物のことでも、知っておいたほうがいいこともあるんですよ」と。

ボクは、その時から、そのAさんが大好きになり、何十年も過ぎた今も付き合い、心の支えにしている。仕事をするってことは、こんなことだと思わされた。今は鉾田市となっているが、当時は村と言っていたその村は、昭和が平成に替わったころ、日本一のメロン産地となった。そんなその村のメロンを支えて育てた人こそ、このAさんだったと思う。

いい加減な仕事はしない

茨城県は、メロン生産高日本一なのだが、1976(昭和51)年ごろはまだプリンスメロンが主流で、ネット模様のメロンは、庶民が口にすることは滅多にないものだった。そこに、売って安心、買って安心という「安(アン)心です(デス)」をネーミングにしたネット模様のアンデスメロンが生まれ、市場を席巻していった。

メロン生産農家は午後遅く、収穫したメロンを選果場に持ち込む。Aさんはそれを一つずつ手と眼で選果した。今のようにコンピューターやレーザーのない時代だったから、大変な情熱と労力が要った。選果するとメロンをトラックに積み、午前3時ごろ、東京の市場に間に合うように運んだという。

その厳しい選果をしてきたので、その村のメロンは評価が高まり、その村のメロンとしてブランドになった。Aさんは、寝ているのだろうか、と農家の人から聞いたことがある。「ありゃ寝てないよ」と農家の人は言ったが、それが本当と思えた。その努力があったから、その村のメロンは信頼され、高い評価を受けるようになった。

実直なAさんは地位を望むこともなく、農協の部長止まりだったらしい。だが、あきらかに、この地のメロン産地はAさんがいなければ、名産地とはなれなかった。いい加減な仕事はしない。ボクはAさんから、大切なことを学んだ。(写真家、日本写真家協会会員、土浦写真家協会会長)

遠い宇宙と地球つなぐ大型アンテナの秘密に迫る つくばエキスポセンターで特別展

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美笹深宇宙探査用地上局に立つ直径54メートルのパラボナアンテナ(提供:JAXA/GREAT2プロジェクト)

16、17日 JAXA美笹局プロジェクト完了記念

太陽系と宇宙の起源を解き明かそうと、地球から200万キロ以上離れた遠い宇宙を飛ぶ探査船と交信するための、直径56メートルの大型パラボナアンテナが長野県佐久市のJAXA(宇宙航空研究開発機構)美笹(みささ)深宇宙探査用地上局にある。性能をより向上させる「グレート2プロジェクト」がこのほど完了し、記念イベントが16、17日につくば市吾妻、つくばエキスポセンターで開かれる。「遠い宇宙と地上をつなぐ唯一の絆」だという大型アンテナの魅力と秘密をJAXA職員など専門家から直接聞く機会となる。主催はJAXA。

アンテナは、同じく佐久市にある臼田宇宙空間観測所で30年以上運用されてきた直径64メートルのアンテナの後継機。高度化する近年の宇宙探査に対応するために設計され2021年3月に完成した。今回完了した新プロジェクトは、信頼性と運用性のさらなる向上と、海外機関の探査機支援を柔軟に行うことが目的だ。

イベントでは、エントランスホールで開かれる大型アンテナに関する詳しい解説の他に、コンピュータグラフィックス(CG)による立体映像が上映される3DシアターでのJAXA職員によるミニ講演が催される。17日に開催される専門家による参加型のワークショップでは、パラボナアンテナがどのように宇宙の音を集めているのかを体感できる。

また2020年に小惑星リュウグウの物質を地球に持ち帰り、現在も宇宙空間を飛行し続ける小惑星探査機「はやぶさ2」の実物大模型と、火星衛星探査機「MMX」の50分の1模型が展示される。

エキスポセンターの企画担当者は「今回は、諸事情により大型パラボナアンテナの模型は未完成での展示になるが、実物大の探査機模型を間近で見ることができる。専門家による解説もあり、ぜひ、多くの方に参加していただければ」と来場を呼び掛ける。(柴田大輔)

◆「JAXA美笹深宇宙探査用地上局プロジェクト完了記念 特別展示『美笹局、できました。~深宇宙探査を支える大型パラボラアンテナ~』」は16日(土)、17日(日)の2日間、つくば市吾妻2-9、つくばエキスポセンターで開催。開館時間は午前9時50分~午後5時(入館は午後4時30分まで)、入館料(展示場のみ、プラネタリウムは別途必要)は18歳以上500円(消費税込)、4歳~高校生は250円(同)。
▽美笹局アンテナ解説は①16日午前11時〜➁同午後2時〜➂17日午前10時45分〜④同午後1時30分〜の4回
▽JAXA職員による3Dシアターでのミニ講演は①16日午後1時〜➁同午後4時30分〜➂17日午後2時30分〜④午後4時30分〜の4回
▽専門家によるアンテナ博士の実験教室は①17日午前11時30分〜➁同午後3時〜の2回。いずれも参加自由。

差別し、差別された子ども時代の私へ《電動車いすから見た景色》52

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筆者が作成した手紙のイラスト

【コラム・川端舞】ふと、あなたに話しかけたくなりました。私はあなたを誇りに思います。勉強を頑張っていることでも、毎日学校に通っていることでもなく、生き続けてくれていることに。

多くの学校が、障害のない子どもを前提につくられ、障害児はいないことにされています。今のあなたは、死にたいほど辛いのは、障害のある自分が普通学校にいるからだと思っていますね。でも、それは違います。どんな障害があっても、障害のない同級生と同じ学校に通うのは、国連が認めた権利であり、障害児でも過ごしやすいように環境を整える責任が学校にはあります。あなたは堂々と普通学校に通っていいのです。

私はあなたに、何があっても普通学校に行けとは言えません。一番大切なのは生き続けることだから。本当に苦しかったら、どうか学校を休んでください。でも、あなたが普通学校に通い続けてくれたおかげで、私は一生付き合える友人に高校で出会えました。本当に感謝しています。

自分の差別意識と向き合って

覚えていてほしいことがあります。この社会は「普通」と呼ばれる人ができるだけ過ごしやすいようにできていて、そこから外れた人たちは差別されやすくなっています。あなたも身体障害者という点では差別されることが多いですが、そのほかの点では誰かを差別してしまうこともあるでしょう。

例えば、あなたは同じ学校の特別支援学級にいる知的障害のある同級生を見て、「自分は勉強ができるから、あの子たちとは違うのだ」と思っていますね。または、人間は男女ではっきり分かれるものだとか、家庭にはお父さんとお母さんがいて当たり前だと思っていませんか。そんなあなたの言動が、無意識に周りの同級生を傷つけているかもしれません。

自分が差別していると気づくことは難しいし、痛みを伴います。これはあなただけが悪いのではなく、少数派とされる人たちをいないものとして学校や社会がつくられていることが問題なのです。一方、あなたは障害児としての経験から、差別される痛みを他の人よりは知っているはずです。だから、勇気を出して自分の中の差別意識と向き合い、少しずつ変えていってほしいのです。

社会は簡単には変わりません。でも、あなたの中の差別意識を変え、周囲にも伝えていく。そうすることで、共感してくれる人や、少しだけ考えを変えてくれる人、反対にあなた自身の凝り固まった価値観をほぐしてくれる人が現れます。彼らと対話を重ねていくことが、社会を変えることだと思います。私もそのように生きていきたいです。(障害当事者)

6年間で消費税780万円未払い 障害者相談支援事業でつくば市

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つくば市役所

市町村が実施している「障害者相談支援事業」に対し、全国で消費税の未払いが発生している問題で、つくば市は14日、2018年度から23年度まで過去6年間の消費税780万6020円を、委託先の4事業者に支払っていなかったと発表した。市障害者地域支援室によると、同事業には消費税がかからないと市が誤認していたことが原因という。

今後、市は委託事業者に、修正申告できる過去5年間にさかのぼって18年度までの消費税を支払う。事業者は修正申告し税務署に未納分を納付する。延滞税については税額確定後、市が負担する。

同事業は、障害者福祉サービスの利用方法などについて相談に応じたり、必要な情報を提供する事業で、市は市内の民間4事業者に委託して実施している。23年度の委託費は2000万円ほどで、1事業者当たり平均約500万円。

2011年度までは非課税の事業だったが、12年に障害者総合支援法が施行され、同相談支援事業は消費税の課税対象になった。しかし市は引き続き非課税対象事業として扱っていた。

消費税未払いが全国で発生しているのを受けて国は昨年10月、同事業は消費税の課税対象であること、市町村が民間に委託する場合は委託料に消費税を加えた金額を支払うよう改めて通知した。国の通知を受け、つくば市も消費税未払いだったことが分かった。

通知を受けて市は、税務署に連絡し修正申告について説明を受け、委託4事業者に対し修正申告額の算出を依頼した。再発防止策として市は、国の通知や関係法令の確認を徹底したいとしている。

旧茎崎庁舎跡地にドラックストア開店 「ようやくここまでこぎ着けた」

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オープン初日、カートいっぱいに買い物をしてレジの順番を待つ買い物客たち=ウエルシアつくば小茎店

2010年4月に閉庁になったつくば市小茎の旧茎崎庁舎跡地に14日、ドラッグストア「ウエルシアつくば小茎店」(清水竜也店長)がオープンした。

高齢化が進む茎崎地区で旧庁舎跡地の利活用は長年の懸案だった。跡地の活用検討がスタートしてから市に4回要望書を提出してきた茎崎地区区会連合会の小原正彦会長は「ようやくここまでこぎ着けた。かつて小茎は茎崎の中心部だった。店がまちににぎわいをもたらし生活が便利になってくれれば」と話した。

店舗面積は約1100平方メートルで、調剤と医薬品のほか、日用品、精肉、冷凍食品、介護用品、ペット用品など、スーパーマーケットと見間違う充実した品揃え。朝9時の開店に合わせて多くの住民が入店し、飲料水などを箱買いする客で混雑し、レジの順番を待つ長蛇の列ができた。

茎崎地区にオープンしたウエルシアつくば小茎店の外観

出入り口に近い一角には無料で利用できるコミュニティスペースが設けられた。休憩したり、隣接するバスターミナルの待合所としても利用できる。

3人連れで買い物を楽しんでいた近くの城山団地に住む70代の女性らは「ここなら歩いても15分で来られて便利。オープンを待ちわびていた」と口をそろえた。ベビーカーを押していた近くに住む40代の女性は「いつでも離乳食が買えるのがうれしいし、子どもはすぐに熱を出すので薬局ができて安心」と語り、高齢男性は「店の立地が良く、バスを利用して買い物できるので助かる。欲を言えばお弁当コーナーが欲しい」と話した。

店内に設けられたコミュニティースペース

茎崎地区のスーパーは牛久市に隣接するマスダ茎崎店のみだった。2013年から同市の委託で食品スーパーのカスミが地区内各所で移動販売を行なっている。

誘致計画見直し経て

閉庁した旧茎崎庁舎は2016年に解体され、敷地約2700平方メートルは更地のまま活用方法が検討されてきた。跡地利活用について市は20年8月の住民説明会で、跡地に隣接する茎崎保健センターも同時に解体して一体化し、商業施設を誘致して商業施設内に公共施設を併設する案を示した。住民からは施設誘致に賛成する意見と、茎崎保健センターの存続を希望する声が上がった。

その後、市は方針を見直し、22年6月の住民説明会で茎崎保健センターを存続させ、庁舎跡地に食料品や日用品を販売する小売店を誘致する方向に変更した。同年9月に公募型プロポーザルの候補者選定委員会が開催され、ドラッグストア「ウエルシア」の開業を提案した大和ハウス工業茨城支社と土地賃貸契約を締結した。

一方、行政サービスの継続を求める住民の要望に応えて解体を免れた隣接の茎崎保健センターは、築40年以上経っていることから改修が決まっている。市市民部によると、改修後は会議室や多目的室を備えた地域コミュニティー施設として利活用する方針で設計が進められており、25年度中にリニューアルオープンを目指している。(橋立多美)

◆ウエルシアつくば小茎店はつくば市小茎288。営業時間は午前9時から深夜0時まで。無休。電話029-875-8483。

つくばでハンセン病記録の上映会を開く元教員、村井さとみさん【ひと】

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村井さとみさん=つくば市内

「命が大事にされる社会に」

筑波大学学生の村井さとみさん(58)が15日、つくば市内で、ハンセン病患者と家族の記録映像 上映会を開催する。大阪府泉佐野市で小学校教員を務めていたが早期退職し、昨年4月つくば市に転居してきた。現在、科目履修生として同大情報学群 知識情報図書館学類で図書館の経営や情報について学ぶ。

現場に行き、自分で考えたいと、教職の傍ら、ライフワークとして国内や海外の図書館と、原発、ハンセン病療養所を巡ってきた。小学校教員3年目に自身の身に起こったうつ病と2020年のコロナ禍の経験から、ハンセン病の問題に関心を持ち、患者たちの気持ちを自分ごととして考えるようになった。

上映するのは、東日本大震災直後、いちはやく福島県に入り福島原発事故の放射能汚染地図を作成した放射線衛生学者の木村真三さんが、ハンセン病患者だった親族の存在を偶然知り、記録を探し、過去を掘り起こしていくドキュメンタリーだ。

村井さんは「衝撃を受け、多くの人に伝え一緒に考えたいと思った。ハンセン病への差別や偏見は私たち一人一人の心の中にあり、いろいろな社会問題の根っこにつながり、命を軽視することにつながっていると思う。すべての命が大事にされる社会への一歩として上映会を開きたい」と話す。

うつ病、コロナ禍経験し、孤独や孤立を考えた

村井さんは徳島県出身。愛媛大学を卒業後、中学と高校で理科教員を務めた。結婚をきっかけに退職し専業主婦に。子育てが一段落して大阪の小学校教員に復職した。

学生時代にチェルノブイリ原発事故が起こり、原発に関するさまざまな本を読んだ。子育て中は絵本や児童書に興味をもち、司書の資格を取得した。

小学校教員に戻って3年目。学級崩壊と保護者からのクレームに加え、離婚など家族の問題が重なり、うつ病を発症した。1年近く休職した中、独りぼっちだと感じ、孤独について考え、ボランティアでハンセン病の療養施設に通う友人のことを思い出すなどした。

復職後、東日本大震災が発生。「それまでは本を読むだけで自分の生活を優先していたが、もっと考えないといけない」と、旅先で各地の原発を巡るようになった。

2020年、新型コロナが流行、大型客船で患者が集団発生したニュースが連日伝えられる中、村井さんにも、息苦しさやだるさなどの症状が現れた。学校を休み、検査を受けたいと保健所や病院に電話をしたが、熱が出なかったため断られ、しばらく自宅待機。自分が感染しているのか、いないのか分からない中、迷惑をかけて申し訳ないという気持ちと同時に、孤独と孤立を味わい、かつて本で読んだハンセン病患者の気持ちが分かった気がした。その後は旅先で、各地のハンセン病療養所を訪ねるようになった。

コロナ禍を経験し「人生、何が起こるか分からない」と、教員を早期退職。昨年4月、図書館学の分野で憧れだった筑波大学で学び始めた。つくばに転居後の昨年7月、群馬県草津町のハンセン病の療養所栗生楽泉園があった重監房資料館を訪ねた際、同館で見た学芸員制作のドキュメンタリーに衝撃を受けた。同館からDVDを借りて15日、つくばで上映会を開く。

村井さんは「ハンセン病の歴史を経験してもなお、コロナ禍で差別や偏見があった。立ち止まり、一緒に考える機会になれば」と話し、「上映会を第一歩として、その人がその人らしく、ありのままに生きていける、つながることができる場をつくりたい。大学では、北欧を例に、市民活動の拠点になっている図書館を研究テーマにしており、重なる部分がある」とも語る。(鈴木宏子)

◆上映会「仙太郎おじさん!貴方は確かにそこにいた 蘇るハンセン病患者とその遺族」は15日(金)午後1時~3時、つくば市天久保のBARKスタジオで開催。参加費500円。主催はPlace for lifeー命を守る」。詳しくはこちら

「汚した環境 未来に…」放流体験通し標語 つくばの児童16人表彰【桜川と共に】11

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県知事賞を受賞し、表彰される桜井琴乃さん=つくば市役所コミュニティ棟

県内の小学4年生が河川での体験活動を通して学んだことを標語にする「『水辺に親しむ野外体験学習』標語コンクール」で、つくば市内の小学生16人が県知事賞など5つの賞に選ばれ13日、同市役所で表彰式が催された。

16人は栄小、栗原小、秀峰筑波義務教育学校の4年生で、桜川でフナの稚魚を放流し、体験を通して学んだことを標語にした。今年度は237人の応募があった。

県知事賞に選ばれたのは、栗原小の桜井琴乃さんの「よごしたかんきょう 未来のわたしたちにかえって来る」、つくば市長賞は秀峰筑波の井上結衣さんが作った「フナつかみ 子どもをはなし ふやしてこ」、同市教育長賞は同校の植松瑞希さんの「フナのち魚 全員むれてぼうけんだ」など3句が選ばれた。ほかに県内水面漁業協同組合連合会長賞に3句、桜川漁業協同組合長賞に8句が選ばれ、それぞれ表彰状を受け取った。

県内水面漁協連合会(高杉則行会長)が主催する標語コンクールで、県内の河川や湖沼で実施された漁協主催の「水辺に親しむ野外体験学習」に参加した児童から標語を募る。1996年から始まり、桜川漁協は2005年から参加。桜川流域の小学校に通う児童が毎年夏に体験を行って、学習したことを標語にまとめている。

表彰式には五十嵐立青つくば市長や森田充教育長、県内水面漁協連合会の八角直道専務理事、桜川漁協の鈴木清次組合長らが出席した。

県知事賞に選ばれた桜井琴乃さんは「受賞してびっくり。体験学習で桜川にゴミがあることを知った。水をきれいにしたいと思い、家ではお皿の油を紙で拭いてから洗うようにしている。これ以上汚すことのないよう、私たちが川をきれいにしていきたい」と話した。つくば市教育長賞に選ばれた植松瑞希さんは「受賞してうれしい。フナの放流体験で、魚が群れになって泳いでいくのを見て標語を作った」と述べた。

桜川漁協の鈴木清次組合長は「70年前、桜川は清流だった。魚が群れになって泳ぐ様子を夢にみるくらい。あの頃の清流に戻すためには皆さんの力を借りないといけない」などと話し、児童らの受賞を祝った。県農林水産部水産振興課の土屋圭巳技佐は「今年度は県で309人が屋外学習に参加した。川の環境を守り将来に引き継いでほしい」とあいさつし、児童らに表彰状を手渡した。(田中めぐみ)

郷愁を感じる商店街のアーチ《看取り医者は見た!》15

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写真は筆者

【コラム・平野国美】初めての道を歩いていると、前方に商店街があるとか、ここから商店街に入るのだとわかるときがあります。商店が並ぶさまを見て、自分の中で認識する場合と、ある種の構造物を見て確認する場合です。初めての土地を歩いていて心がときめき、10年ほど前から、そういった「昭和の残影」を探すようになりました。

今回の写真をご覧ください。左は商店街の入り口にあるゲートです。ここをくぐれば、その向こうに何かが待っているような気がして、引き込まれていくのです。あちこちで見ますので、昭和の時代にはかなり設置されていたと思います。その残骸も見つけるときもありますし、取り外されたときにニュースになるゲートもあります。

私はアーチとかゲートと呼んでいますが、法律では「屋外広告物」として扱われ、看板、のぼり、横断幕、アドバルーンなどと同じだそうです。「屋外広告物法」によって、大きさ、高さ、内容(景観に配慮しているか)、設置禁止区域などが条例で定められています。

アーチは各自治体の条例で呼び方が異なりますが、「アーチ」「アーチ看板」「アーチ広告」「アーチ型広告物」などと呼ばれています。「ゲート」「商店街ゲート」「ゲートサイン」といった言い方もあるようです。

「純情商店街」「駅通り商店街」

法律や条例のルール内で制作されるので、奇抜なものは作れないと思いますが、そこは看板職人が腕を振るって制作しているのでしょう。商店街を歩いていると、制作された時代が形態や看板のフォントから感じられます。そして、その土地の風土や文化も感じられます。

左の写真は高円寺純情商店街のゲートです。下にある垂れ幕に「キング オブ コント 14代王者 空気階段 鈴木もぐらさん おめでとう」と書かれています。この街を愛して住んでいる芸人の受賞を祝っているのです。この後、「高円寺芸人」と呼ばれました。

元々、「高円寺純情商店街」という名は存在しませんでした。本当の名前は「高円寺銀座商店街」でしたが、この街の乾物屋の家に生まれた「ねじめ正一」さんの「高円寺純情商店街」が直木賞(1989年)をもらった後、今の名称になりました。風土、文化、サブカルをうまく生かした商店街とゲートなのです。

こんなゲートを近くで楽しみたい方は、常総市にある「水海道駅通り商店街」のアーチが参考になります。右側の写真です。各地にある古典的スタイル、昭和を感じる手書きのフォントなどが見られます。私は時々、夕暮れ時、ここで黄昏(たそがれ)ています。商店街のゲートはなかなか奥深いものがあります。(訪問診療医師)

筑波大で4年遅れの入学式 在校生らが感謝伝える

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式典の最後に同大のメッセージソングを合唱する4年生ら

新型コロナウイルスの感染拡大で入学式が中止となった2020年度入学の筑波大4年生と同大学院2年生のための入学式が13日、同大大学会館(つくば市天王台)で催された。4年前に入学した大学生と大学院生計約4700人のうち約200人がスーツに身を包み参加した。2週間後の3月25日には4年生らの卒業式が催される。

入学式には永田恭介学長や副学長らも出席し、同大管弦楽団の演奏で4年生らを出迎えた。式辞を述べた永田学長は「大学生活最初の年はとてつもなく予想外のものであったはず」と振り返り、「皆さんのコロナ禍での4年間の歩みは無駄ではない。学士としての力を備えているはず。卒業前の2週間に学生生活を振り返ってみてほしい」と話した。

式辞を述べる永田恭介学長

先輩たちに感謝の気持ちを伝えたいと、学生組織「全学学類・専門学群・総合学域群代表者会議(全代会)」が主催した。全代会議長で理工学群社会工学類3年の林凜太郎さん(21)が企画を提案し、昨年12月から本格的に準備を開始した。

式典のあいさつで林さんは「大学1年目で思うような活動ができない中、私たち後輩に対しては、新歓活動や学園祭の運営などを精力的に行ってくれた。そのおかげで充実した学生生活を送ることができている。皆さんの今後のご活躍を祈る」と在校生代表として感謝の気持ちを述べた。

上級生に感謝の気持ちを述べる全代会の林凜太郎さん

同大大学院に進学予定の社会工学類4年の星野明日美さん(22)は「思い描いた以上の入学式で驚いた。行動が制限されていた私たちの学生生活に寄り添った言葉を学長が投げかけてくれていたのが印象的だった」と話した。同大学院に進学予定の理工学群工学システム学類4年、男子学生(22)は後輩からの誘いで参加し「せっかくの機会をいただけてうれしい。初々しい気持ちになった」と語った。

式典の最後に、同大のメッセージソング「IMAGINE THE FUTURE~未来を想え」の合唱も行われた。(上田侑子)

元校長が個展 震災・コロナ禍経て ふるさとへ「祈りのバトン」 

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卒業制作のスクリーンタペストリー「光と空間のイメージ」の前で作品を紹介する沼尻さん=つくば市吾妻、県つくば美術館

沼尻正芳さん

筑波山や板橋不動院などをモチーフに描く画家で、元つくばみらい市立伊奈東中学校校長の沼尻正芳さん(73)による個展「ふるさと・祈りのバトン沼尻正芳展」が12日から、県つくば美術館(同市吾妻)で開かれている。学生時代から現在に至るまで、約56年間の主な作品119点を展示する。開幕初日は100人以上の人が訪れ、作品に見入っていた。

コロナ禍をきっかけに連作したという仏像の油彩画は、油彩ならではの陰影でその迫力を捉えながらも、沼尻さんの温かいまなざしを感じる作品群となっている。沼尻さんは「東日本大震災やコロナ禍を経て、自分にはどうしようもないが、なんとか早く収束してほしいという祈りしかなかった。平和、平常を長くつなげていきたいという思いから個展のタイトルを『祈りのバトン』とした」と制作への思いを語る。

筑波山や地元に自生するヤマユリなどを題材とすることについては「ふるさとに育てられたという思いがある。関連するものを描きながら、ふるさとを大事にしたい、愛する思いを描きたいという気持ちがある」と話す。

17歳の自画像も

17歳の時に描いた自画像や武蔵野美術大学時代に卒業制作したスクリーンタペストリーを始め、つくばみらい市出身の江戸時代の探検家、間宮林蔵を描いた80号の油彩画や、同じく80号で冬の筑波山を描いた「雪景色」など、昨年から今年の新作も展示する。

スクリーンタペストリー「光と空間のイメージ」は麻糸と毛糸で鮮やかに幾何学的な模様を織り込んだ作品で初公開となる。ステンドグラスのように光が透過する縦270センチ、横360センチの大作だ。

沼尻さんは、水海道一高の高校生だった時に絵を始めた。理数系クラスに所属していたが、ある日、美術教師に放送で呼び出され、美術部にスカウトされたことをきっかけに絵を始めた。「放送で呼び出されたときは何か悪いことをしたのかなと。行ってみると美術部にスカウトされて、先生がそう言ってくれるのならやってみようと思った」と話す。武蔵野美術大学造形学部に進学し、卒業後は教職に就いて茨城県南の小中学校で美術教諭を務めた。伊奈東中学校校長を最後に退職した。

去年発足した「つくばみらい市美術作家協会」の代表でもある。2018年から19年にはNEWSつくばにコラム「制作ノート」を執筆していた。沼尻さんは「筑波山などを描いているので、地域の人にぜひ見に来てほしい。子どもたちにも見てほしい」と語った。

会場の様子=同

会場を訪れたつくば市在住の鈴木智子さん(37)は沼尻さんの教え子で、中学校で美術部に所属していた。美術部長を務め、美大に進学した。「しばらく絵を描くことからは離れていたが、先生の絵をグループ展で何回か見て描く気持ちに火が付き、最近また描くようになった。この個展をずっと楽しみにしていた」と話し、作品の作り方やモチーフについて熱心に質問していた。

つくば市在住の野本恵美子さん(65)は、木や石で制作した壺や笛を鑑賞し「ユーモラスな作品があり、おもしろい。友人を連れてもう一度見に来ます」と話していた。沼尻さんは、笑顔のように見える装飾の壺や、丸みを帯びた鳥笛などの造形を紹介しながら「本来の自分が表れているのはこういうユーモラスな作品かもしれない」と語る。つくばみらい市立図書館の元館長で美術評論家の秋田信博さんも「邪心とは無縁の、動物愛護への精神が連綿と伝わってくる」と講評を寄せた。(田中めぐみ)

◆「ふるさと・祈りのバトン 沼尻正芳展」は17日(日)まで。開館時間は午前9時30分~午後5時(最終日は午後3時まで)。入場無料。

確定申告をe-Taxで済ませました《ハチドリ暮らし》35

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写真は筆者

【コラム・山口京子】所得税の確定申告をe-Taxで済ませました。4年前の確定申告の際に、税務署でID・パスワード方式の届出をしたのがきっかけです。

年末調整で終了する場合や、公的年金の収入金額が400万円以下の場合では確定申告は不要です。ですが給与を2カ所以上から受け取っている人など、確定申告をしなければならない人がいます。また還付手続きや雑損控除、医療費控除、寄付金控除は年末調整ではできないので確定申告が必要です。

入力を終え申告内容確認票を見ることで、所得税徴収の流れがわかります。最近まで源泉徴収票を見ても所得税がどのような仕組みで徴収されるのかわかりませんでした。

確定申告の流れ

私の場合での、おおまかな確定申告の流れをお伝えします。

①収入金額を入力します:給与所得の金額と源泉徴収税額、雑所得の年金額や講演料の収入額と源泉徴収税額などを入力し、「所得の内訳書」がでます。

②所得金額が自動的に計算されます:▽給与は給与所得控除額が引かれて出ます▽年金は公的年金などに係る雑所得の計算方法によります▽65歳以上の方は年金額が110万円を超えると年金額に応じて所定の計算のもとに所得金額が出てきます▽講演料は必要経費を入力することでその額を引いた金額が所得金額となります。

③所得から差し引かれる金額が出ます(それぞれの控除金額を入力しますが、本人基礎控除の48万円は前もって記載されています):▽年金保険料や健康保険料、介護保険料などの社会保険料控除額▽生命保険料や地震保険料の控除額▽扶養控除、基礎控除など▽医療費の控除額(医療費控除とセルフメディケーション税制からの選択)

医療費控除に関しては、一般的にかかった医療費から10万円を引いた額と言われていますが、正確には10万円または所得金額の5%のどちらか少ない額です。ですので、所得金額が少ない場合は控除される金額が下がるので、自分の所得金額で計算することが大事です。計算方法は「1年間に支払った医療費-保険などで補てんされる金額-10万円または所得金額の5%=医療費控除額」です。

①②から③を引くことで、課税される所得金額と税額がでます。そこから税額控除されるものを引いて、納めるべき所得税と復興特別所得税額が確定します。所得税は超過累進課税で、税率は課税所得金額に応じて5%から45%となっています。

税金は収入にダイレクトにかかるのではないこと、様々な控除があること、社会保険料の額が思った以上に大きいことに気づきました。そして、控除の種類や金額がどういう根拠で決められているのかが気になりました。(消費生活アドバイザー)

次女、入籍する!《続・平熱日記》153

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絵は筆者

【コラム・斉藤裕之】話は半年前にさかのぼる。「次女にだれかいい人いないかなあ…」なんてこぼしていたら、「私なんか、ある日宅配便で彼氏が送られてきましたよ…」。

「?!」。 内容は思い出せないが、彼氏と宅配便という言葉が新鮮で、要は彼氏も宅配されるご時世だということか。しかし、冗談抜きで次女のことで少々気がかりなことがあって、こんな時に男親はからっきし役に立たねえなあ…。

それから間もなく、「彼氏ができた!」という次女からの報告。そして、それからすぐに「結婚する!」という電話。事の次第を簡潔に言えば、次女のアパートにツタが生い茂って困っているという話を飲み屋でしていたら、植木屋だという若者が、それなら俺に任せろと。

すると、次の日に「ピンポン」とその若者がやってきて、ツタを切ってさっさと帰ってしまった。それがきっかけ。いやいや、本当に宅配便の話じゃないけど、まさかねえ。

次女だから書けることもあるのだけれど、次女だから書けないこともある。よくある話ではあるが、分かっているつもりだったのだけれども、次女のことを分かっていなかった、ということが分かったのはそれほど前のことではない。いわゆる多様性の時代と言われる、多様の中のひとりというか。

差し障りないところでいうと、なぜか彼女だけが家族の中でRHマイナスで、足の人差し指が長くて…。飲み屋で、他の客に「植木屋で一番大事なことはなんだ?」と聞かれ、「掃除ですかね」と答えた彼に、掃除のできない次女はしびれたらしい(そのとき彼は植木屋を辞めて無職だったらしいのだが)。

しかし、もうとにかく、もらってくれる人がいれば「どうぞ、どうぞ」というのが私の正直な気持ちで…。

私とではなく地中海旅行

閑話休題。先日、コーヒーを飲みに行きつけのカフェに行こうと思ったら、その日は牛久シャトーのイベントに出店しているというので、寄ってみた。

実は、カミさんは亡くなる前まで、このシャトーの日本遺産登録に関わる仕事をしていたこともあって、無意識にここに来るのを避けていた(というのもご存じのようにシャトーの運営は市の悩みの種でもある)こともあって、来るつもりもなったのだが。しかし、天候にも恵まれ、日本遺産に関係するイベントは朝から多くの人出で賑わっていた。

同じく日本遺産に登録され出店していた笠間のテントブースに、何気なく立ち寄った私は、栗羊羹(ようかん)を見つけた。次女は栗が大好きで、カミさんは面倒くさがりながらも渋皮煮を作ってやっていたことを思い出した。私は次女の結婚祝いにその栗羊羹を買って帰ることにした。

近い将来次女と行こうと約束していた海外旅行は、どうやら私とではなくハネムーンという名目に変わりそうだ。次女はなぜか地中海の国に行きたいという。フランス留学から帰国する直前に、お腹の大きい妻と小さな長女と共に南仏を旅したことを思い出した。

もちろん本人は憶えているはずもないが、そのときお腹の中にいた次女はちょうど30年の時を経て、地中海を臨むことになる。(画家)

原発震災「若い人たちに伝えなくては」 つくば駅前で市民集会

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「さよなら原発!守ろう憲法!」などと書かれた横断幕を掲げ、つくば駅周辺をパレードする参加者ら

震災13年

東日本大震災から13年経った11日、「さよなら原発!守ろう憲法!」と題した市民集会がつくば駅前のつくばセンター広場で催された。東海第2原発の運転差止めを求め住民訴訟を起こしている原告団共同代表の大石光伸さんが登壇し「若い人たちに原発震災の実態を伝えていかなければならない」などと話した。

市民団体「9条改憲NO!市民アクションつくば連絡会」(山本千秋代表)と「『東海第2原発いらない首都圏ネットワーク』つくば」(阿部真庭代表)が主催した。原発と憲法をテーマにした市民集会は震災翌年の2012年3月11日から毎年、つくば駅前で開催されている。市民約60人が「福島を忘れない」「憲法9条は日本の宝」などのプラカードを手に参加した。

ステージでは歌も披露された=つくばセンター広場

大石さんは、岸田文雄首相が原発推進政策に転換したことについて「22年6月の最高裁判決で国の責任を認めない判決が出され、一気に原発にかじを切った流れがある。これに対し私たちがどう闘っていくかが問われている」と話し、「13年前、私たちは日本の原発をなくしていこう、世界の核兵器をなくしていこうと決意したが、若い子は『さよなら原発』でなく『こんにちは原発』と茶化して言う子もいるなど、国の宣伝が強くなっている。今、原発の在り方が根底から覆されようとしており、若い人たちに伝えていかなくてはならない」などと述べた。

さらに「13年前、つくばでも放射能汚染を経験し、当時、3月15日朝、東海村の研究所では高濃度の放射能プルームが通過したことが分かって、国や県に通報したが、国も県も何もしなかった。こういう状態の中で再び原発事故が起きた時、自治体に対応できるだろうか」と問い掛けた。その上で「1月1日の能登半島地震は、再び原発を動かすことに対する自然の警告だと受け止めざるを得ない。原発震災の中では避難などできないことを改めて訴えていきたい」などと語った。

市民集会ではほかに、東海第2原発再稼働の是非を問う県民投票の2回目の直接請求を呼び掛ける「いばらき原発県民投票の会地域支部つくば原発投票の会」共同代表の小林納深子さん、「憲法9条の会つくば」共同代表の石上俊雄さんなど10の市民団体や政党関係者がそれぞれ震災から13年を迎えた思いや課題などを話し、「実質改憲や東海第2原発再稼働の動きに反対する。まともな政治を取り戻すために力を合わせて活動する」などの集会アピールを採択した。

集会アピールを拍手で採択する参加者

続いて「地震津波国の日本に原発はいらない」「古くて危険な東海第2原発は再稼働するな」などのスローガンを訴えながら、同駅周辺約2キロをパレードした。

初めて参加したつくば市に住む村井さとみさん(58)は「昨年4月、大阪からつくばに引っ越してきた。大阪でもデモに参加していたが、大阪に比べると人数が少なく、楽しく、仲良くやっているなと思った。原発や憲法など、いろんな団体が一緒になってやっているところがいいと思う。憲法を守ろうというのは大事なメッセージになると思う」と話していた。(鈴木宏子)