水曜日, 7月 9, 2025
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【高校野球茨城’19】甲子園目指す100校93チーム 夏の大会開幕

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開会式に97チームが揃い踏みした=ノーブルホームスタジアム水戸

【池田充雄】第101回全国高等学校野球選手権茨城大会は6日、ノーブルホームスタジアム水戸で開会式を迎えた。4つの連合チームを含む100校93チームが参加し、J:COMスタジアム土浦など6会場で熱戦を繰り広げる。決勝戦は24日の予定。

開会式の主催者挨拶では県高等学校野球連盟の塚本敏夫会長が「今はまだ梅雨の最中だが、決勝戦は夏の真っ盛り。1本の細くて長い道が厚い雲の向こうまで、天高く続いている。気の遠くなるような長く険しい道の最初に立ち、登り切ろうとする行いに参加する喜びは生涯残り続け、道を見失いそうになったときも自分を内側から支えてくれることでしょう」と球児たちに言葉を贈った。

2年生6人と1年生8人 土浦工の挑戦

参加97チームにはそれぞれのドラマがある。土浦工業高校は今回、2年生6人と1年生8人というわずか14人で参加。昨年の夏大会を終えて3年生が卒業した後は、連合チームで秋の大会を戦ってきた。このままでは単独チームで次の夏を迎えられないかもしれない。危機感を覚えた感じたメンバーは、中学生対象の部活体験会で積極的に声をかけたり、同級生の後輩に野球経験者がいると聞くと、野球部に誘ってくれるよう頼んだりなど、さまざまな手を尽くした。

スタジアム前で意気込みを見せる土浦工ナイン

「みんながくじけそうになっても、あきらめないよう励ましてきた。春に1年生が入ってくれたときは、これで大会に出られるとうれしくなった」と野島聖良主将。1年生はいずれも軟式野球の経験者で、硬式は高校に入ってから始めた。まだ3カ月だが、選手同士で教え合ったりしてだんだん馴染んできた。

1回戦はあす7日第1試合、県営球場で麻生高校と対戦する。「人数は少ないがチームワークではどこにも負けない。練習ではバッティングを重視してきたので、その成果を発揮したい」と野島主将。小林悟樹監督は「ミスを恐れず全力でプレーしてほしい。勝敗は二の次。まずはしっかりと経験を積み、その勢いを秋以降にもつなげていきたい」と話す。

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チョウの楽園がつくばにお目見え ショッピングモールの一角、無料開放

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「チョウとの触れ合いの中で自然の大切さを学んでほしい」と語る岡澤さん=つくば市稲岡

【大山茂】野山に飛び交うチョウをつぶさに観察してください――こんなふれこみで、つくば市稲岡のショッピングセンター、イオンモールつくば敷地内にチョウの観察小屋が完成し、今月から本格的に無料開放した。市内で農産物直売所を運営する農業法人「みずほ」(長谷川久夫社長)が自然に親しむきっかけになればと設置した。

「チョウの楽園えるふ」の看板が掲げられているのは、イオンモールつくばの敷地内にあるみずほ直営の農産物直売所「えるふ王国」の入口脇。幅5メートル、奥行き15メートル、高さ4メートルの広さで、3方が網で囲われている。

園内にはアゲハチョウなどが飛び交う=同

中に入ると、日本の国蝶として知られるオオムラサキの幼虫のエサとなるエノキ、ツマグロヒョウモンの止まるスミレやパンジー、アゲハチョウのかんきつ類など、十数種のチョウのエサとなる樹木や草花が数多く植え込まれている。

小屋の中では現在、モンシロチョウやアゲハチョウが飛び交っているほか、オオムラサキの幼虫とサナギも手に取るように見ることができる。その他のチョウの卵や幼虫も葉の裏に隠れるように潜んでおり、梅雨明けの時期には大小のチョウが乱舞する光景が見られるという。

監修したのは、ライフワークとしてチョウの採集や生態の研究を続け、下妻市でオオムラサキの保護活動を続けている土浦市内の元公務員、岡澤貞雄さん(74)。長谷川社長に協力を依頼され、昨年秋ごろから園内の設計を手掛け、筑波山麓などで様々なチョウを採集。併せてチョウの幼虫期や成虫期に葉を食べたり、樹液を吸ったりする植物を探し歩いて植栽した。

岡澤さんは「チョウは卵から幼虫、サナギ、成虫と完全変態するので年間を通してその姿を確認することができる。種類によって食する植物が違うので、じっくり観察して自然を大切にする気持ちを育んで欲しい」と話している。

【茨城 高校野球展望’19】8 球数制限は流れ断ち切る 霞ケ浦監督に聞く㊦

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髙橋監督が期待を寄せる地元土浦出身の仕黒大樹選手㊧と復活劇に期待したい福浦太陽投手

​-今話題になっていることを2つ、お聞きしたい。まず球数制限について考えをお聞かせ願いたい。

高校野球でもプロ野球でもピッチャー交代が一番大変な作業です。監督としてはエースで勝ったり負けたりすることほど楽なことはないですよね。エースが壊れようが何しようが、エースでいって勝てば当然、エースが打たれたから負けたというのでは監督は楽ですよね。楽なんですけど私はそれはやりません。最初から2枚、3枚投手を用意して戦います。その根底にはやっぱり肩は消耗品なので、将来性がある子に無理をさせたくないという思いが多分にあります。

インタビューに答える髙橋祐二監督

とはいっても、松坂大輔のようなピッチャーに延長17回250球を投げた翌日にも投げさせることをおかしいとは思わないし、実際に松坂大輔が投げ過ぎたことでプロでは活躍できなかったかというとその逆で大活躍しました。肩を壊したことがありますが、あれは高校の時に球数を制限していたら故障しなかったのか、因果関係が説明できません。

私自身は、球数制限というルールがあってもなくても決まったことをやっていくだけです。練習から本番にかけて様々な要素やメニューを考えて自分で制限をして試合で使っているので、統一ルールとして球数は制限しなくてもいいと思います。

だからと言って、例えば今年、藤代との夏の試合で1対0の試合をやって、寛人がグズグズになりながらも6回終わって160球投げたとします。でもボールの力は落ちていない。1対0で勝っている。あと3イニング。9回まで行ったら200球にいってしまうことが明らかだという時でも、たぶんそのままゲームの流れの中で9回まで投げさせると思うんですね。流れがあるからしょうがないと思うんです。1対0で勝っていても代えたほうがいいという時もあるし、代えることが間違っている時だってあるわけで、そこを考えるから投手交代のタイミングが面白いし、大変な作業なのす。100球だから降板ですというのは試合の流れを断ち切るような気がして面白くなくなるので、別に今のままでもいいと思うんですよね。

―最後に、センバツでも話題になりましたサイン盗みの問題をお聞きします。

うちは一切やっておりませんが、相手がやっていると見ると、こちら側はやらせないような防御策を持っていないといけませんよね。センバツでは優勝候補である星稜がサイン盗みでバタバタしてしまった。星稜の林監督とは面識があり、しっかりした野球をしている印象ですが、サイン盗みの防御・ケアに関しては対応できなかったことが不思議にすら思いました。まあサイン盗みは、スマホのながら運転やスピード違反みたいな交通違反なんかと同じですよね。罰則を厳しくしたってバレなければいいという人は必ずいるんですよ。自己防衛こそが大事だと思います。

―本当に興味深いお話をありがとうございました。
(聞き手・伊達康)

  • 春の大会ではエースの福浦太陽が明秀学園日立に対して6回から登板し、3安打3四死球を絡めて7回に一挙5失点の炎上をしたが、その遠因が何となく分かったような気がする。この夏はプロ注目の鈴木寛人の大躍進が楽しみだが、福浦太陽の復活劇と人間ドラマにも大いに期待したい。大会まであと数日という押し迫った時期にもかかわらず、インタビューを快諾していただき、貴重なお話をたくさんしてくれた髙橋祐二監督に心から感謝申し上げたい。
    =終わり

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宇宙ビジネス参入促進を つくばで8月に第2回サミット

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昨年12月につくば市で開かれた「宇宙ビジネスサミット2018」の展示ブースで、可搬型超小型人工衛星管制局について説明を受ける大井川和彦知事(中央)=県科学技術振興課提供

【山崎実】将来の成長分野と期待されている宇宙ビジネスの創出、支援強化に取り組んでいる茨城県は、8月につくば市で、宇宙飛行士の若田光一さんを招き、昨年に続き2回目の「宇宙ビジネスサミット」を開催する。宇宙ビジネスをリードする企業、研究者、投資家、学生などが集うイベントとなり、振興施策のテンポアップを図る。

昨年8月、県が立ち上げた宇宙ビジネス創造拠点プロジェクトが国の推進自治体の選定を受けたことで、県は12月につくば市で初の「宇宙ビジネスサミット」を開催した。ワンストップ相談窓口を設置したほか、県独自の補助制度を創設し財政支援を行うなど、積極的なビジネス創出に向けた体制の強化を行っている。今年4月には、県内企業やJAXA(宇宙航空研究開発機構)、関係研究機関など43団体で構成する「いばらき宇宙ビジネス創出コンソーシアム」を設立した。

今年度は8社12事業に補助支援

特に、補助支援事業は、研究機関などの試験設備の利用料補助(県外施設も対象)、衛星データを活用したソフトウェア開発費補助など、事業化、製品化に向けた本県独自の施策として事業者から好評だ。

この補助制度で、昨年は5社が選定されビジネスに弾みをつけたが、今年度はさらに8社(12事業)が支援補助事業に決定した。うち、つくば市のOUTSENSE(アウトセンス)とSAgri(サグリ)、牛久市の日豊の3社は、県内に新たな拠点を設置した。行方市のサンテクノは宇宙ビジネスに新規参入した。

各社の事業内容も個性的だ。OUTSENSEは折り紙を応用した技術で宇宙に家を建てることを目指す。SAgriは衛星データを用いたスマート農業支援ソリューションの開発に向け、土壌分析試験に取り組む。日豊は、地殻変動に対応した四次元高精度位置情報解析ソフトを開発する。医療機器を製造するサンテクノは、金属加工技術を活かして衛星部品分野に参入した。県はこれらの研究成果を、事業化に向け支援していく。

また、県内の中小企業が宇宙ビジネスに参入するよう働き掛けを行う一方、8月のサミットに続き、今秋には都内で、企業、研究機関、投資家などとのマッチング会を計画する。

今後の取り組みについて県科学技術振興課は「宇宙関連企業の誘致については、個別に企業訪問を行い、全国トップクラスの企業誘致施策や、本県における科学技術の集積の優位性などを積極的にアピールしていきたい」と意気込んでいる。

◆いばらき宇宙ビジネスサミット2019
8月5日午前10時から、つくば市吾妻のオークラフロンティアホテルつくばで開催。シンポジウム、セミナーのほかマッチングなどが実施される。問い合わせは県科学技術振興課(電話029-301-2515)、または日本宇宙フォーラム内いばらき宇宙ビジネスサミット2019事務局(電話03-6206-4902)。

 

【茨城 高校野球展望’19】7 常総はタレントぞろい 霞ケ浦監督に聞く㊥

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バットでチームを牽引する強打者・天野海斗選手

―髙橋監督が気になっている相手チームはありますか。

毎年各学校の監督さんのカラーが出ますよね。藤代の菊地一郎監督、石岡一の川井政平監督、常総の佐々木力監督と、監督のカラーが出ていて、そこの選手がどのくらいの能力であるかを足していけば、大体チーム力が分かります。監督それぞれの野球が急に変わることはないので、何をしてくるかは概ね察しがつきます。

ただ、土浦日大の小菅勲監督は何をしてくるか分からない。つかみどころがなくて負けたのは土浦日大だけなんです。何をしてくるか分からなくて常総も負けてしまうし、茨城を2年連続で勝ってしまうという本当に面白い状況なので、土浦日大にだけはちょっと負けたくないという思いはあります。

あと、藤代と石岡一はよく似たチームだと思いますが、藤代の方が精度が高くて選手層も厚い。藤代の方が強いようですが、そこを岩本大地投手(石岡一)の力で一気に超えてしまうかもしれない状況にあります。藤代とは中山航投手と寛人の投げ合いと野手同士の戦いの中で面白い試合になると思っています。

―常総学院打線についてはどのように分析されていますか。

常総学院はいろいろな雑誌を見ても分かるように、創部以来3本の指に入る選手層、強さと言われていますしタレントがそろっています。とにかく打線はすごいですよ。先日の土浦市高校野球招待試合で常総学院は春季関東大会優勝の東海大相模とやりました(4対5で東海大相模の勝利)けど、試合後に東海大相模の門馬敬治監督から「常総ってこんなにメンバーそろってるんですね」と電話がありましたよ。日本一になっている門馬監督がわざわざ連絡してくるくらいですから、それだけ常総に脅威を感じたんでしょうね。でも、そのくらいタレントぞろいのチームであっても、秋の関東大会や春の県大会準決勝で負けているというのが興味深いですよね。

―今大会とは別の話になりますが、霞ケ浦には毎年好選手がそろっています。選手のスカウティングについて、言える範囲でお願いします。

うちは他の私立高校よりもスカウティングに力を入れていないと思います。8月後半に1回あるオープンスクールの体験入部に来てくれた選手の中で、目立つ子には声をかけています。私立高校でありながら今の段階で1人も決まっていませんので、他の高校には遅れを取っていてスカウティング力は弱いですし、もっと力を入れないといけないと思っています。昔は特待を使って多少のところは目をつぶって多く集めた時期もありましたが、今は学力が伴って野球の技術が高くなければ特待の条件を出したくありません。後は、霞ケ浦でやりたいといって来てくれた子を叩き上げれば何とかなるだろうとこの20年やってきましたし、実際に何とかなってきたのかなと思います。根性がなくて決勝でいつも負ける戦いをしてしまっているのであまり偉そうなことは言えないですが、無理なスカウティングはしていないですね。

昨年完成したばかりの雨天練習場。もの凄い威圧感だった

付属中の快挙、OBの活躍

―霞ケ浦高校付属中硬式野球部がボーイズリーグの全国大会出場を決めました。

創部4年で県大会優勝、全国大会出場おめでとうございます! 素晴らしい快挙です。柴崎、竹内、木村各スタッフの指導の賜物だと思います。これを機に、部活動、学習面での起爆剤になり、付属中学校全体が益々飛躍することを願っています。

―大学野球に進んだOBの試合はご覧になっているようですね。

大学野球を4年間一生懸命やるのであれば、1回くらいプレーは見てあげたいと思っています。大正大4年の大場駿太は最後のシーズンということで、ちゃんとした球場でやるときは見に行くよと約束していたので、一昨日は休みを取って、神宮球場で大正大と東農大の東都大学リーグ2部3部入替戦を見てきました。また、先日は全日本選手権の東洋大(3年・小川翔平、2年・木村翔大がスタメン出場)を見てきましたが、大学関係者に対する進路のお願いですとか、顔つなぎなどをやっておかないと後輩たちも入れないので、そういうものも含めての大学の試合会場に行っているわけです。OBが頑張っている姿を見るのもいいですけれども、それだけが目的ではありません。(続く)
(聞き手・伊達康)

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【茨城 高校野球展望’19】6 プロ注目の右腕「完成形に近い」 霞ケ浦監督に聞く㊤

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髙橋監督が「プロ入りした先輩よりもボールの質が上」と期待する鈴木寛人投手

【伊達康】毎年安定して好投手を輩出する霞ケ浦だが、今年は、鈴木寛人(3年)という最速148キロを誇るプロ注目の本格派右腕を擁しその戦い方が注目されている。綾部翔(横浜DeNA)や安高颯希(桜美林大4年)を擁して初優勝を果たした第97回大会以来4年ぶりの甲子園出場に向けて心血を注ぐ髙橋祐二監督に、夏の大会に向けた思いや決意を語ってもらった。

―春季県大会では乱打戦の末に明秀学園日立に7対10で敗れ、夏の大会はDシードで臨むことになりました。秋の準々決勝で敗れたAシードの藤代ゾーンに入ったことについて、所感をお聞かせ下さい。

今回、春に初戦で負けてシードを獲れると思っていなかったので、いきなり強いところと当たる可能性もあると心の準備はしていました。藤代ゾーンに入ったことについては一度負けている相手なので是非勝ちたいと思っています。藤代と常総学院を倒さないと甲子園は手に届きません。もし藤代を倒したとしてもBシードの石岡一が待ち受けているので正直言ってきついですね。Bシードの中でも石岡一が一番同じゾーンになりたくない相手でした。

―春の敗戦以降、夏に向けて特別に取り組んでいることがあれば教えてください。

例年、本校は投手力を中心とした守備が売りのチームを作っています。そこに少しでも攻撃力を付けて戦うのがうちの戦法です。実際、投手力や守備力は県内で常総学院や明秀学園日立よりも上だと評価された年が何度かありました。でも、今年のチームはとにかく守備力が弱く例年のレベルに到達していません。守備のイージーミスがよく見られるので、守り負けるもろさをはらんでいます。しかし、鈴木寛人というピッチャーは、先輩でプロ入りした綾部翔(横浜DeNA)や遠藤淳志(広島)を超えるようなピッチャーにまとまってきた感があるので、もしかしたら優勝できるかもしれないという手応えをつかんでいます。

―守備の方では中心選手が抜けた穴が大きかったでしょうか。

中心選手は毎年入れ替わる中で、それでも毎年、二遊間に関しては県内でも1、2位と言われるチームを作ってきました。昨年は能力の非常に高いセカンドの小礒純也(日体大1年)とショートの森田智貴(桜美林大1年)がいましたが、今年は二遊間に限らず全てにおいて守備力が弱いですね。

―打撃に関しては天野海斗選手が中心になるのかなと思いますが、ほかにこの選手に期待したいというのはありますか。

新チームになってずっと天野と黒田悠真を使い続けてきましたけれど、思ったようなリーダーシップが取れないというか、結果が出ていません。うちにはいわゆる4番バッターはいませんが、1年生を入れて打線を組んだことによって、どこからでも点を取れるような打線になりつつあると思います。期待する選手としては仕黒大樹です。茨城出身(土浦三中)の選手ですし頑張って欲しいと思っています。

―1年生とはどの選手でしょうか。

飯塚恒介と宮崎莉汰は練習試合でもスタメンで使っています。特に宮崎は見かけによらず力があって勝負強いので中軸を打たせています。1年生に期待すること自体が悲しいことなのですが、打線の幅はできたように思います。

インタビューに真摯に答える髙橋祐二監督

成長うかがわせるプロ注目右腕

―ピッチャーについて。プロ注目右腕の鈴木寛人投手は春の大会まで背番号はエースナンバーではありませんでしたが、仕上がりはどうですか。

実績がないので自信を持って投げてはいませんが、プロのスカウトからは綾部・遠藤ら2人の先輩よりもボールの質が上だという評価をもらっています。春季大会は早々に負けたので4月下旬から6月第2週までは東海大相模、花咲徳栄、桐蔭学園、作新学院、春日部共栄、東海大甲府といった強豪校との練習試合をどんどん入れ、鈴木寛人にはどんなに打たれようが、点を取られようが9回を投げきるというノルマを課しました。その結果、花咲徳栄には滅多打ちにされ、東海大相模にはもっとボコボコに打たれ、「ああ、この子はピッチャーとしてまとまらないで終わってしまうかな」と思いながらも試練を乗り越えて一本立ちして欲しいという一心で起用し続けました。そうしたら、5月終盤にきて桐蔭学園を8回1安打完封、作新学院を完封、東海大甲府には失点1と着実に結果を出して来ています。この期間、ずっと完投させてきて、マウンド上の立ち姿に大きな変化というかオーラを感じるようになりました。

この状況が夏大(なつたい)になっても変わらなければ、たとえ相手が強力と言われる常総学院打線であったとしても、寛人ならやってくれるのではないかと楽しみです。それくらいの成長を感じています。ロースコアのゲーム展開になったとき、うちの守備にほころびが出る不安はつきまといますが、完成形に近い状態になったと言っていいほど寛人は良くなりましたね。1年秋の関東大会で2試合とも先発させて打たれて負け投手になり、次の春怪我をして、2年夏も棒に振って、秋も結果が出ないという状況の中でほとんど投げていません。ですが、4月から6月にかけて一生懸命やってきたことによって、これだけ成長できた訳です。寛人には昨日、「夏は寛人が中心でいくからな。これだけ成長できたのだから自信を持って存分にやってくれよ」と話したところです。

―これまでエースナンバーを背負ってきた福浦太陽投手はどうですか。

福浦は背番号1にあぐらをかいた状況で、寛人に抜かれることに焦りも感じたと思いますが、やっておかないといけないストレッチをおろそかにして体が鉄のように硬くなってしまいました。柔軟性の数値が1カ月前に比べて驚くほどで悪くなってしまい、こんなに硬くなるかと。胸が張れない。えび反り、いわゆるブリッジができないくらい胸郭が詰まってしまっています。あまりにもひどい状態で今は最速125キロくらいしかで出ません。肩肘はどこも痛くない。でも肘に張りがある。当然ですよ、もともとそんな投げ方はしていましたが、胸を張れないから体を開いて腕を引っ張り上げるしかないので。エースとしての自覚が足りない。昨日は「もしも寛人の成長がなくて山本もいなかったらお前はエースとしてどんな責任をとるんだ」という話をして自覚を促しました。

―それでは春の明秀学園日立戦で先発した左腕の山本雄大投手(2年)が2番手格になるのでしょうか。

福浦のことは突き放してはいますけれど、そうはいってもエースとして今まで君臨してきたわけですから、何とかはい上がって欲しいと期待しています。ただ、今は一切ボールを投げさせていません。ストレッチの数値が元に戻るまでは投げられないことにしているので、1日に3~4時間をストレッチに費やしています。どこまで戻るかは分かりませんが、戻らなければ、寛人と山本、それにもう一人3年生ピッチャーがいるので、この子とうまくつないでいければと考えています。もうトーナメントの組み合わせが分かりましたし、このカードは誰が投げるというのは全試合で想定しています。そうは言ってもやられるときはあっさりとやられますから。(続く)

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【茨城 高校野球展望’19】5 球数制限で新時代に 土浦日大監督に聞く㊦

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小菅勲監督。第99回大会の県大会優勝盾は校舎の入り口正面に飾られている。昨年の優勝旗と盾は野球部寮にあるそうだ

―高校野球全体についてお話をうかがいます。今ホットな話題の球数制限問題=※注1=について、考えをお聞かせください。

私は、基本的に球数制限は賛成です。今後議論をした上で制限する方向にいくのではないでしょうか。球数制限が決まったら速やかに対応していこうと思っています。もしかしたら、高校野球が新しい時代になるんじゃないかと思います。例えば100球制限があるとして、最初にエースを出したらエースが引っ込んでからが勝負になるなど。駆け引き、采配も改めて考える必要がある。最初に背番号10でいって次に背番号1にするのかとか、その逆だとか、駆け引きが大きな要因になって、タイブレークと同じでまた面白くなると思いますね。

―最後に、センバツで話題になったサイン盗み=※注2=についてお聞きします。私も去年夏の明秀学園日立戦を見ていまして、そういったクレームがありましたがどのようにお考えでしょうか。

去年の夏の大会は、明秀戦以降、相手チームが、我が軍のセカンドランナーに過敏に反応するようになりましたが、そんな(サイン盗みをする)余裕はないですし心外です。これについては、野球界に以前からあった疑惑ですし、盗まれない工夫も各チームしてきました。

サイン盗みについて、ペナルティーを与えるか、どのように禁止にしていくか、審判団の対応はどのようにするか等々、今は過渡期にあるようです。審判団もナーバスになっていて、少しの挙動でも試合を止めて注意する方もいます。全県をあげて「やってはならない」という流れにすべきです。今後は、各チームのマナーや品格が問われるでしょう。

  • ※注1 球数制限問題
    以前から、高校野球ではピッチャーの投球数に制限を設けていないため、一人の絶対的エースを酷使し、投球過多の末に肩ヒジを故障する選手が多かった。故障の予防的措置として投球数に制限を設けるべきという意見がある一方で、反対意見も根強い。一律の制限は投手の枚数が少ないチームに不利なので慎重に議論すべき、全員がプロになるわけではないからと酷使を容認したり、野球がつまらなくなるといった見方がある。1990年夏の甲子園では大野倫(沖縄水産)が地区予選から痛み止めを服用しながら投げ続け、甲子園では773球を投じて疲労骨折し二度と投球できなくなった。しかし、昨夏の甲子園では吉田輝星(金足農)が一人で881球を投げ準優勝を果たしたが、肩ヒジに問題は生じていない。
  • ※注2 サイン盗み問題
    昔は制限がなかったが、現在はセカンドランナーが捕手のサインを見てバッターにコースや球種を伝達してはならないことになっている。今年のセンバツでは習志野vs星稜の試合中、習志野のセカンドランナーの動きが不自然で「球種やコースをバッターに伝達しているのではないか」と星稜ベンチからクレームがあった。結果は習志野が勝ったが、星稜の林監督は憤りを抑えきれず、試合後に控室に乗り込んで「フェアじゃない」と習志野の小林監督に直接猛抗議する異例の出来事が起きた。その後、星稜の林監督は学校から一連の言動を問題視され6月4日まで指導禁止とする懲戒処分を受け、サイン盗み問題はセンバツ後も話題になった。
    昨年夏の準々決勝・土浦日大vs明秀学園日立において3対0で土浦日大リードの4回表無死二塁から土浦日大のセカンドランナー富田卓の動きが怪しいと明秀学園日立ベンチから球審にクレームがあった。その後も二塁にランナーが進むたびに明秀ベンチからクレームがあり中断した。この出来事を聞いたのか、準決勝(霞ケ浦)・決勝(常総学院)でも相手チームがセカンドランナーにナーバスになっていることが見て取れた。

3連覇をかけた土浦日大・小菅勲監督には、夏の大会直前のお忙しいなか時間を割いていただき、お話をうかがうことができた。夏に向けた意気込み以外にも、今話題の球数制限やサイン伝達についても率直にお話を聞けたことに感謝したい。
(聞き手・伊達康)

フックン船長、LINEスタンプに登場 全40種つくば市が販売

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つくば市のイメージキャラクター「フックン船長」LINEスタンプの一部

【谷島英里子】つくば市のイメージキャラクター「フックン船長」のLINEスタンプが1日、登場した。市は市民らに活用してもらうことで地元への愛着度向上や内外にキャラクターの周知を図る。

フックン船長は、市の特徴「自然(フクロウ)」と「科学(ロボット・宇宙飛行士)」をモチーフにした宇宙飛行士型ふくろうロボットで、宇宙飛行を夢見ているキャラクター。筑波研究学園都市建設の閣議了解50周年を記念して、2014年に誕生した。

スタンプは全40種1セットで120円(税込み)。日常でよく使う言葉に、フックン船長の口癖である、「~フク!」を付けた、「いいね!フク」「おつかれさまフク。」「がんばってフク!」など。ほかに、筑波山やロケットのイラスト、通勤・通学する人たちやつくばを離れた人たちが、つくばに戻る際に使うフレーズ「つくばっく」なども取り入れた。スタンプの収入は市の事業に広く役立てる。

デザインを担当した市広報戦略課の中林まどか主事は「LINEスタンプをきっかけに、つくばに興味を持ち、好きになっていただけたら」と話す。ダウンロードはLINE STORE クリエイターズスタンプから「フックン船長」で検索する。

「健康」軸に自転車活用拡大へ 6日筑波大でシンポジウム

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霞ケ浦湖岸を走るサイクリスト

【山崎実】サイクルツーリズム(自転車観光)と県民の健康増進などを目的に、全県的な自転車活用運動を推進している茨城県は7月6日、筑波大学(つくば市天王台)で、「いばらき自転車活用シンポジウム」を開く。「健康」をメーンテーマに、自転車活用の楽しみ方と効用、先進的な事例や実践活動に基づく効果などを誰もが共有し、自転車文化の浸透を図るのが狙い。

県は、昨年6月の国の自転車活用推進計画(閣議決定)を受け、「いばらき自転車活用推進計画」を策定した。既に2016年11月に開通している「つくば霞ケ浦りんりんロード」のほか、「奥久慈里山ヒルクライムルート」「大洗・ひたち海浜シーサイドルート」「鬼怒・小貝リバーサイドルート」の4ルートによる自転車ネットワーク路線の構築を目指している。

さらに安全対策面では、県交通安全条例を改正し、自転車事故の未然防止と被害者救済のための、自転車損害賠償保険等への加入を呼び掛けるなど、自転車の積極的な利用と安全対策の両面から支援体制を強化している。シンポジウムを契機に、自転車活用の取り組みをこれまで以上に広げていく考えだ。

トークセッションや実践報告も

シンポジウムでは、ファッションモデルで海外レースにも参加し、アスリートフードマイスターの資格をもつサイクリストの日向涼子さんと、フリーアナウンサーで茨城放送の音楽番組「IBS MUSIC STATE」パーソナリティなどで活躍する木村さおりさんのトークセッションが催される。

事例発表では、フジクラCHO(最高健康経営責任者)補佐の浅野健一郎さんが「始めよう!健康経営と自転車通勤」、シマノ文化推進室の阿部竜士さんが「自転車を活用した健康増進」と題して、それぞれ実践報告する。

この後、ライフクリエーションスペースOVEの室谷恵美さんをコーディネーターに、パネルディスカッション「健康増進に向けた自転車活用」が行われ、自転車活用運動の啓発、推進活動のあり方などを話し合う。

◆シンポジウムは6日(土)午後1時~3時30分、筑波大学5C棟2階216階段教室で開催。参加費無料。事前申し込み必要。問い合わせは県地域振興課交流プロジェクト推進室(電話029-301-2735)。

【茨城 高校野球展望’19】4 相手チーム対策は 土浦日大監督に聞く㊥

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キャプテンとして4番としてもチームを牽引する石渡耀(土浦日大)

―よそのチームのことはあまり考えてないと思いますが、あえて意識するチームをあげるとしたら?

自分たちの野球をするのが第一だと思っています。ただ、常総学院の佐々木力監督は取手二高の同級生ですし、明秀学園日立や霞ケ浦は、甲子園に出るためには必ず立ちはだかる相手です。そういった相手チームの投手はこうで、打線はこうでという対策は、1年間、選手たちと考えを共有しながら取り組んできました。

―相手チーム対策については丸林直樹コーチの果たす役割が大きい?

大会では、アナリストを担当してもらっています。非常に選手も助かっていると思います。練習でも丸さん(丸林コーチ)がリードして、私も選手も「考えもしない」ような練習メニューの引き出しを持っています。

―一昨年、昨年と2連覇したことで、志望者が増えたり入部する選手の技術レベルが上がったりなどはありましたか?

本校は「文武不岐(ぶんぶふき)」を伝統としており勉強にも力を入れていて、野球だけやる子は来ていません。勉強も野球も一生懸命頑張るということで入部してくれています。本校はグラウンドのすぐ脇に寮がありまして、この環境は自分が伸びそうだといって来てくれる子が多いです。野球が大好きな生徒、一生懸命に練習に取り組んでくれる生徒は基本的に受け入れています。1学年で30人ほどの部員がいるのですが、ほとんどが寮生活をしたい、高校野球を全うしたいと希望して来ています。志望者が増えたかというと、増えたのかもしれないですが、特別技術レベルが上の子が来ているわけではないです。しかし、一つだけ言えるのは、みんな「やる気」があります。監督と選手の考えがマッチして同じベクトルを向いて練習できています。

―頭髪は自由とのことですが…

頭髪は全くもって自由です。結構みんな長いですね。エースの荒井なんかも髪の毛が伸びるのが早くて、ボサボサといっていいほどです。丸坊主にしたい子はしていますが、全体の1割弱です。これは自分で選んだ丸坊主なので。私は頭髪を自由にして良い効果があったと思いますし、なんで今までこんなつまらないことにこだわっていたのかなと。高校野球が始まって100年ですから。次の時代に向かって何か新しいことはできないかと考えたとき、頭髪は別に自由で良いのではないかと思い、自由にしました。

―頭髪が自由だからという理由で土浦日大を選んだ選手はいますか?

それはさすがにないと思います。自由な気風は大事にしたいですが、野球環境で選んでもらっていると思います。

―週に何度かは寮で過ごされますか?

金土日とか木金土とか、2~3日は寮に泊まります。選手の様子が分かったり、グラウンドから寮に帰って、気になった選手がいれば呼んで面談できますし、良い環境だと思います。

同門、常総学院・佐々木監督との距離感

―個人的に非常に興味があるのですが、常総学院の佐々木力監督とは今どういった距離感ですか?

まず木内(幸男)監督という偉大な指導者の薫陶を受けたこと、お互い選手として全国制覇した経験を次世代に伝える、義務というか使命を果たさなければならないと思っています。佐々木監督と面と向かってこの話をしたわけではありませんが、彼も同じように思っていると信じています。

距離感? 以前、私が県立高校に勤務していたときにはよく話したり食事したりしていたのですが、今の立場(土浦日大監督)になってから、野球の話は深くはしなくなりました。やはり同門下ですから、野球談義やチーム作りについては研究し合いたいと思っています。これは佐々木監督にかかわらず、他の指導者の方たちともそうしたいと思っています。しかし、手の内、腹の内は見せられないというのがお互いにあると思います。同じ釜の飯を食べた佐々木監督とは、お互いリタイアした後にでも「あのときこうだったよなあ」という話はしたいなと思っています。

―春は常総学院の菊田拡和選手に2本の特大ホームランを浴びました。菊田選手を小菅監督はどう評価していますか?

これまで25年くらい指導者をしてきましたけど、あれだけ飛距離がある子は初めてです。高校の時に見ていた清原和博選手(PL学園)の打球のような放物線に近いかもしれません。天性の素材を持ち合わせています。守備や走塁にも、まだまだ伸びしろがあるようです。是非プロ野球にいってホームラン王を獲れるような選手になってほしいと思います。(続く)
=聞き手・伊達康

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【茨城 高校野球展望’19】3 3連覇をかけた夏 土浦日大監督に聞く㊤

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昨年大会決勝を制し胴上げされる小菅監督=ノーブルスタ水戸

【伊達康】茨城では一昨年に小菅勲監督が就任からわずか1年3カ月で土浦日大を優勝に導き、昨年もドラマチックに連覇を遂げた。3連覇をかけた今大会をどのような心境で迎えるのか。小菅監督に意気込みを聞いた。

夏に照準を合わせてきた

―今年のチームの特徴を教えてください。

今年の3年生はみんな真面目です。練習に取り組む姿勢が良い。下級生の頃からチームワークが抜群でした。クレバーで、「野球勘」を持っている子が多い。打つか、守るかだったら守りのチームです。守りからリズムを作っていくゲームプランをしています。メンバーも上級生になってからレギュラーになった子が多く、去年から出ているのがキャプテンの石渡耀とショートの鶴見恵大くらい。私はチーム作りを急ぐ方ではなく、夏に照準を合わせていますので、上級生になってから試合に出るようになった選手は、夏直前になって良くなってきています。

エースとして期待がかかる荒井勇人

―エースは左サイドの荒井勇人ですか。

そうですね。荒井は3年生ですし昨夏も経験しています。まずはエースが奮闘するのが高校野球です。荒井には頑張ってもらいたい。

―主に継投で試合を作っていきますか。

継投ありきというわけではありません。ですが、なるべく夏の大会は1人のピッチャーに負担をかけないようにという方針はあります。どうしても一発勝負なので流れが決まらないうちとか、単なるイニング数とか投球数だけでは代えられない部分があります。常にその場で、状況を見ながらの判断ということになります。

―2年生の右腕の中川竜哉は春休みの鹿児島遠征で好投したそうですね。

3カ月前と今では大違いかもしれません。ここに来て、どのチームの打線も春先のバッターではなく、夏大(なつたい)を迎えるバッターへと成長してきています。中川も、そうした打線と対決を繰り返し、課題を見つけ、もがきながら成長しています。まだ2年生なので、焦らず着実に伸びていってほしいと思います。

―荒井勇人投手以外に3年生のピッチャーは出てきていますか。

右オーバースローの山崎祐翔が最近急成長してきました。ここのところ、持ち前の実力を発揮できるようになってきました。6月上旬の土浦市内大会でも好投しています。夏前の3年生は「心の“整調”」を果たせば活躍できる要素を誰もが持っています。

甲子園を見続けてきた現3年生

―3連覇がかかる今年、ますます注目されています。是非意気込みをお聞かせ下さい。

この1年、私からも3年生からも「3連覇」というフレーズは使われたことはありません。しかしこの2年間、現3年生は甲子園出場を見続けています。スタンドやベンチの中で「さあ、いよいよ自分たちの出番が来た!」といった様子がうかがえます。プレーヤーとして、この3年間で初めての甲子園を狙う、といった感じです。

夏の大会はいつでも、「その年」「そのメンバー」で戦う「最初で最後の夏」なのです。その一期一会の場に臨む若者たちのパワーたるや恐るべきものがあります。自分たちを信じて、自分たちの培ってきた野球をどんな瞬間にも発揮し続けてほしい。結果にとらわれずに、大好きな高校野球を楽しんでほしい、そう願います。

―去年は富田卓投手(現・日大)がびっくりするくらい一冬越して伸びました。秋に大敗した相手である明秀学園日立戦ではものすごい気合と気迫でした。今年は一冬越えてガラッと変わったようなピッチャーは見受けられないと感じましたが、夏に向けての秘策とか、取り組みはありますか。

特別変わった練習はやりません。練習は日々の積み重ねこそが大事だと思っています。ですので、基礎基本の練習が全体の8割から9割を占めています。それを積み重ねたうえで、最後にどこの地点に到達するかということだと思います。たくさん食べさせたからとか走らせたからといって伸びるわけではない。富田もまさにそうで、日々地道に取り組んだ成果が最後の夏に花開いたということです。富田は友だち思いで、いつでもチームのことを考えていました。上級生になってからは人間的にも成長して、心身共にたくましくなりまして。「今年は自分が甲子園に連れていくんだ」という気迫も大いに感じました。(続く)

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【亥年折り返し】㊦ 昨季イノシシ500頭を捕獲 つくば市、国道125号をめぐる攻防

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イノシシの親子=兵庫県の六甲山系で撮影(仲谷淳さん提供)

【相澤冬樹】つくば市では2018年1月、沼田のつくばりんりんロードで、地元住民がイノシシに襲われケガをする事件があり、4月には金田のさくら運動公園、桜中学校付近で目撃情報がもたらされ、緊張が走った。ここまでくると、学園地区とは目と鼻の距離である。

同市が、イノシシを対象とする鳥獣害被害防止計画を作成したのは2017年度。担当は農業政策課だが、猟友会などと連携した捕獲対策は環境保全課が所管する。19年度までの3カ年、毎年160頭から210頭の捕獲を計画していた。

18年前半の事故と目撃情報から、筑波山ろくの地区長を中心に駆除の要望が高まった。イノシシは11月から翌年3月までが猟期で、銃器とワナによる捕獲体制が強化された。市内には猟友会支部が3地区にあり、協力を呼びかける一方、市も山林上空にドローンを飛ばすなどして生息分布を探り、ワナの適正配置に役立つよう情報を流した。

結果、18年度の捕獲頭数は一気に500頭、計画頭数の倍以上に達した。市環境保全課は「地元にお願いした自助努力の成果が表れた」と胸を張った。筑波山ろくに並行して小田、北条を走る国道125号を越えての目撃情報もぱたり途絶えており、筑波山域への封じ込めには成功しているとみている。地元からも「被害も減っているようだ」(六所地区)と好感されている。

しかし、同課は「手放しでは喜べない」としている。農研機構のイノシシ研究者、仲谷淳さんが指摘していた「捕獲数が多い地域ほど被害も多くなる」状況の可能性を否定できないからだ。500頭もの捕獲がこの先の状況をどう変化させていくか、動向を見守りつづける必要がある。20年度からの鳥獣害被害防止計画の作成に向け、被害情報の収集、狩猟免許取得者の拡大などに取り組んでいる。

仲谷さんによると、イノシシは元来平地を好む生き物なので、山に追い込み、正面から防御すると脇から遠回りに漏れ出す生態がある。筑波山ろくの防御線は土浦市に入ると、旧新治村を通る県道つくば千代田線に変わる。しかし旧土浦市の今泉地区あたりまで侵入跡がみられることから、平地への越境はすでに始まっているようにもみえる。さらに同市東部、市街化が進むおおつ野地区でも出没したとの情報がある。

耕作放棄地や放棄果樹園などを足場に、市街地へ侵入してくると市民生活への影響も懸念される。「市街地では発砲もできず、わなも仕掛けられない。交通事故や安全対策など被害は農地や農作物にとどまらなくなる」(仲谷さん)。

土浦市農林水産課では、「筑波山域には実際、どれほどの生息数がいるのか、実態を計れないところが悩み」という。同市の防止計画はかすみがうら市と共同で19年度に策定。イノシシについては18年度の被害額439万円を21年度に307万円まで減らす目標を立てた。捕獲数の目標は年間150頭。同課によれば、15年以降、直接的な予算は年間250万円ほどで、毎年100頭前後を捕獲してきた。生息実態がつかめないため、これらの計画数値が適正かの判定もできかねているのが実情のようだ。

【亥年折り返し】㊤ フロントラインは県南にあり 農研機構イノシシ研究者が警告

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仲谷淳さん。㊧のグラフはイノシシによる被害率の変化

【相澤冬樹】亥年(いどし)も折り返し。農作物を食い荒らすイノシシ対策の研究に長年取り組んできたつくばの研究者は、捕獲や防除柵の設置対策は、誤ると被害を増加させる可能性があると指摘する。茨城県は現在、県南の未生息地にまで分布が広がるかのターニングポイントに立っており、このフロントラインを突破されると全国1、2を争う被害県となるかもしれないという。イノシシを止める手立てはあるのだろうか。

被害が出てからでは遅すぎる

捕獲されたオスイノシシ(兵庫県内で撮影)=仲谷さん提供

警告を発しているのは、農業・食品産業総合研究機構(農研機構)専門員、仲谷淳さん(63)。イノシシ研究歴は西日本農業研究センター、中央農業研究センターを通じ40年を超える。仲谷さんによれば、農業産出額に占めるイノシシ被害の割合(被害率)で、現在西日本は東日本の4倍程度高いが、近年は茨城、千葉の被害額が拡大しており、茨城県は2001年の30位から、17年には10位に順位をあげた。この増勢が懸念材料だ。

イノシシ対策には、猟銃や檻(おり)による「捕獲」、柵を設置しての「防除」、食物や隠れ場所を取り除く「環境整備」の3対策があるが、いずれも中途半端では被害の拡大につながるおそれがあるという。

実際、捕獲数が多い地域ほど、被害も多くなる傾向がみられる。「統計的に、檻で除去できるのは生育頭数の半数以下にとどまる。ある地域で、1年目に100頭捕獲して次の年200頭捕獲したという場合、取り逃がしたイノシシは1年目には100頭以上だが、2年目には200頭以上。コストをかけて被害を拡散させていることになる」。捕獲数の増加は単純には喜べない。生息数増加の反映とも考えられ、むしろ警戒すべきべき状況とも言える。

防除柵も、設置した場所の被害は着実に減少する。しかし、柵の設置を計画的に進めなければ、押し出すようにイノシシを里や街の中へと誘導し、被害を拡散させてしまう。「江戸時代の対馬藩では、年貢確保のため細切れに柵で囲った中へのイノシシを追い込み、駆除する殲猪令(せんちょれい)という強硬手段で絶滅を図った」(仲谷さん)というが、島の中だからできたことだし、現代社会ではここまでの徹底は難しい。

近年、耕作放棄地が増えて、イノシシは山間から山里へと勢力を拡大し、平地まで下りてきている。全県的にみるとこの分布生息域は行方市や潮来市、稲敷市などに広がって目撃や捕獲例が見られるようになり、放置すれば県南都市部へ進出する勢いという。そのフロントラインがつくば市だと旧筑波町の筑波山ろく、土浦市では旧新治村域を超えて今泉地区あたりに達している。

仲谷さんは「そこを突破されると被害は農作物にとどまらず、対策費も増大する一方となる。予防対策こそ重要で、そのラインに合わせて、捕獲・防除・環境整備の3つの基本対策を連携して徹底的に実施する必要がある」とアピールする。すなわち、被害が出てからでは遅すぎる、見つけ次第捕獲、除去する早期対策が望まれるという。

しかし、被害が出ていない段階で、行政が予算措置を講じて対応に動くのは容易でなく、問題提起にとどまってしまいがちだ。(つづく)

【茨城 高校野球展望’19】2 土浦三、強豪私学と渡り合う力秘める

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エースで4番の土浦三、濱崎鉄平

【伊達康】次につくば・土浦エリアのノーシード校を見ていこう。土浦工は秋に部員不足のため4校連合として出場し、春は地区予選で霞ケ浦に大敗。初戦は毎年しっかりと守れるチームを作ってくる難敵・麻生と対戦する。

土浦三は春の県大会初戦で下館工に4対6で惜敗も、エースで4番の濱崎鉄平(3年)が最速142キロを誇りツボにはまれば強豪私学とも渡り合う力を秘めている。初戦は牛久と、勝てば霞ケ浦と対戦する。

140キロ近い速球が武器の土浦一、古宮学樹

湖北に豪腕投手出現

土浦湖北は春の県大会初戦で多賀に敗退も、6月2日に行われた土浦市招待試合にて春の関東王者・東海大相模を相手に大坪誠之助(2年)が最速142キロをマーク。試合は0対10と大敗を喫したが、豪腕投手の出現に注目が集まっている。

土浦一は古宮学樹(3年)が140キロ近い力強いストレートを武器とする。佐野翔(3年)は分厚い体から柵越えが打てる強打者で、春の地区予選でも土浦日大エース荒井からレフトスタンドに放り込んだ。初戦は太田一と対戦する。

そのほかに土浦二は那珂湊と、つくば工科はつくば国際と、筑波は東海と1回戦で対戦する。いずれも勝機は十分にある。(続く)

トーナメント表

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「感謝して手放したい」 1000体の人形を供養 JAつくば市谷田部

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持ち込まれた人形を祭壇に並べるJAつくば市谷田部の職員たち=つくば市榎戸のJA谷田部つくばホール

【橋立多美】JAつくば市谷田部(横田伊佐夫組合長)主催の人形供養祭が29日、同市榎戸のJA谷田部つくばホール(建物面積1248平方メートル、220人収容)で行われ、持ち込まれた約1000体の人形の供養が行われた。

祭壇に並んだのは、子どもの健やかな成長を願ったひな人形や五月人形、遊び相手として親しまれてきた大小のぬいぐるみ、日本人形、羽子板など。受付は1家族につき20体までとされ、数体持ち込む人がいる一方、箱に入ったままの段飾りのひな人形を運び込む参列者もあった。僧侶による人形供養が執り行われ、読経に合わせて約100人の参列者が焼香して人形に別れを告げた。

フランス人形など7体を持ち込んだ谷田部在住の55歳の女性は「人形に感謝してきちんと手放したいと申し込みました」。70代の女性は「10年前に他界したしゅうとめが大事にしていたフランス人形で、ケースが壊れたので思い切って供養することにしました」。5歳の女児と一緒に参加した30代の女性は「姉と私がかわいがったぬいぐるみを持ってきました。押し入れの奥から出したら娘が喜んで、子ども時代を思い出しました」と話した。

供養祭は「押し入れに入ったままだが、ごみのように処分するのは忍びない」人たちに感謝されているという。今年で3回目。地元谷田部地区のJA組合員だけでなく、近隣住民の参加もある。供養祭を終えた参列者たちは一様に晴れやかな表情でホールを後にした。

【茨城 高校野球展望’19】1 常総が優勝候補筆頭

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高校通算本塁打54本の常総学院、菊田拡和

【伊達康】7月6日に開幕する第101回全国高校野球選手権茨城大会の組み合わせ抽選会が21日に行われ対戦カードが決まった。参加93チーム(出場100校で4つの合同チームがある)のうち、春の県大会で4強に残った藤代、水戸商、常総学院、鹿島学園がAシードを獲得した。

140キロ超え3投手をひた隠し

3年ぶりの夏制覇を見据えた常総学院は、春の県大会で昨夏も中心となって登板したエース級右腕の塙雄裕(3年)や岡田幹太(3年)、菊地竜雅(2年)をあえてひた隠しに、ライバル校に球筋を明らかにしなかった。

この140キロ超え3投手を引っさげつつ、打線は高校通算54本塁打でプロ注目の強打者・菊田拡和(3年)や、長打にバントに補殺と何でもこなせる中妻翔(3年)など世代屈指の打者がそろっている常総学院が優勝候補の筆頭だ。

春優勝の藤代は投手力充実

秋準優勝、春優勝の藤代は最速142キロの中山航(3年)とスライダーの切れ味抜群の一條遥翔(3年)の右腕2枚看板を筆頭に投手力が充実している。

春に常総学院にサヨナラ勝ちで準優勝となった水戸商はエースで4番の小林嵩(3年)が投打をけん引しチーム力で追いすがる。

プロ注目投手擁す霞ケ浦

最速146キロでプロも注目する霞ケ浦の鈴木寛人

春県大会の初戦で明秀学園日立に乱打戦の末に敗れた霞ケ浦はDシードとなったが、プロ注目右腕・鈴木寛人(3年)や福浦太陽(3年)を擁し実力十分。夏は無難に勝ち上がるだろう。

Bシード・石岡一はセンバツに21世紀枠で出場し盛岡大附をあと一歩のところまで苦しめた。しかし春は初戦でエース右腕・岩本大地(3年)が大乱調で水戸商に惨敗。夏も岩本の調子次第だ。

Cシード・明秀学園日立は春の県大会3回戦で、優勝した藤代に2対3と惜敗した。北野凱士(3年)や高橋隆慶(3年)などが強打を誇り例年通り打線は強力だが投手力が例年に比べ劣る状況だ。そんな中、春に目覚ましい活躍をした右腕・佐藤紅琉(1年)が駒不足を解消する可能性を秘めている。

春4強の鹿島学園はびっくりするようなピッチャーはいないが、堅実につないで好機を作る。

土浦日大左腕は左打者翻弄

マウンドに集まる土浦日大の内野陣

3連覇がかかっているCシード・土浦日大は変則左腕の荒井勇人(3年)が左打者を翻弄(ほんろう)するが、右の強打者にいかに対峙するかが見どころだ。キャプテンの石渡耀(3年)は華のある大型二塁手。

秋4強のBシード・水城はエースで4番の櫻井隼人(3年)が大黒柱だが、ここに春公式戦デビューを果たした1年生右腕の樫村佳歩が加わり投手層の厚みが増した。

Bシード・常磐大高は6月16日に行われた大分県高野連強化遠征にて春センバツ4強となった明豊を山田悠斗(3年)が完投して3対2で撃破。今夏の仕上がりはひと味違いそうだ。

Cシード・水戸癸陵は小橋一輝(3年)と定塚涼(3年)のダブルエースに安定感がある。

安定感のあるつくば秀英の吉田青矢

Cシード・つくば秀英は右腕の吉田青矢(3年)とBシード・竜ケ崎一の右腕・幸山耀平(3年)も好投手で打者の裏をかく能力が非常に高い。

秋春と結果を残せずノーシードとなった日立一は不気味な存在だ。(続く)

スマートシティの先の未来のつくば語る 筑波大教授と県局長が講演 筑協総会

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「スマートシティ『つくばモデル』の実現に向けて」をテーマに講演する筑波大の大沢義明教授=つくば市竹園、研究交流センター

【鈴木宏子】つくばの研究機関や民間研究所などで構成する産官学の交流組織「筑波研究学園都市交流協議会」(事務局・文科省研究交流センター)の2019年度総会が28日、同市竹園の同交流センターで開かれた。つくばが国交省の先行モデルに採択された「スマートシティ」をテーマに、今年度から実際に実証実験に取り組む筑波大学システム情報工学研究科長の大沢義明教授と、けん引役の県産業戦略部技術振興局の飯塚一政局長がそれぞれ講演し、スマートシティの先の未来のつくばの姿を語った。

大沢教授は、同大とトヨタがこれまで取り組んできた共同研究の成果を話し、車に搭載されたセンサーなどの情報を収集・分析して、周辺の道路状況を把握したり、災害復旧支援などに活用する近未来の地域社会の姿を語った。

今年度からつくばで始まるスマートシティ先行モデル事業の実証実験の中身も紹介した。筑波大学を行き来する路線バスで、顔認証によるキャッシュレス決済を行うほか、公共交通と医療サービスをつないで、バスに乗った人が顔認証により筑波大附属病院の受診受付や診療費の支払いなどを一括して行えるようにする。さらに排気ガスの心配がない水素燃料電池の路線バスや救急車を運行して、病院の建物の中に直接入る実証実験なども計画しているという。大沢教授は「つくばで日本版スマートシティを実現したい」と意欲を語った。

大沢教授はほかに、車の走行台数と駐車場空きスペースなどさまざまな情報を最適にマッチングさせることで、鹿島アントラーズ試合開催日のサッカースタジアム周辺の渋滞解消や、ゴールデンウイークや紅葉シーズンの筑波山周辺の渋滞解消などに取り組む計画があるという。

県の飯塚局長は、つくばが、国交省のスマートシティモデル事業と新モビリティサービス推進事業の二つの先行モデルに選ばれたことを強調し、その先に「まるごと未来都市」と呼ばれるスーパーシティがあるなどと未来のつくばを話した。

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新たな政治倫理審査会委員決まる 公募市民は含まず つくば市

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市政治倫理審査会条例の改正について採決が行われたつくば市議会本会議=28日、つくば市役所

【鈴木宏子】つくば市が、公募の上内定していた市政治倫理審査会市民委員の議会提案を見送った問題=6月8日付=で、五十嵐立青市長は6月議会最終日の28日、公募した市民委員を含まない、新たな委員7人を追加提案し、全会一致で可決された。

追加提案に先立って、委員の要件から「市民」を削除し「市民で地方行政に関し優れた識見を有する者」に改める市政治倫理審査会条例の一部改正案が審議された。実質的に公募による市民委員を無くすという内容だ。

本会議では「これまでの任命経緯に沿うもの」「(資産報告の審査は)プライバシーに関わるので一歩立ち止まり改めて議論すべき」とする賛成意見と、「公募による市民委員を推進すべき」とする反対意見が出たが、賛成多数で可決された。

続いて追加提案された委員7人を同意するか否かの採決が行われ、全会一致で可決された。公募による市民委員を推進すべきと主張していたつくば・市民ネットワークの4人は採決を退席した。

新たに選任された7人は、司法書士、元郵便局長、税理士、弁護士、大学教授、元市職員、元教育委員。市法務課によると、いずれも同審査会委員を務めた経験があり、条例に定められた法律や会計に専門的知識があって、市長や議員らの職務や市政に知識がある人を選任したとする。

任期は通常は2年間だが、今回は特例により7月1日から2021年3月末までの1年9カ月間の予定。7月に、市長や議員らの資産報告の審査を行い、9月中に審査報告書をまとめて市長に提出する予定だという。

市長や議員らの今年の資産報告は6月14日から公開されており、法務課と議会事務局でそれぞれ閲覧できる。8月1日の市広報誌には市長、副市長、教育長の資産報告概要を掲載する予定という。

つくばの標本470万点を経営資源に 国立科学博物館がイノベーションセンター設立

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記者団に公開された動物研究部所蔵の剥製標本=つくば市天久保、国科博標本収蔵庫

【相澤冬樹】国立科学博物館(科博、林良博館長)は27日、つくば市の科博筑波研究施設に報道関係者らを集め、約470万点に及ぶ科学系標本を収めた収蔵庫を特別公開した上で、「科学系博物館イノベーションセンター」(池本誠也センター長)の設立を発表した。これらのコレクションを、東京・上野の科博本館と結んでのバーチャル展示をはじめ、地方の科学博物館と連携しての巡回展などに役立てることで、博物館の経営資源としても活用、収益を研究人材の育成に振り向けていく枠組みを想定している。

報道発表であいさつする宮田亮平文化庁長官㊧と林良博国科博館長

同センターは政府の文化経済戦略(2017年度策定)に基づく立ち上げで、設立発表には宮田亮平文化庁長官、文科省の中村裕之政務官らも出席。力の入れようをうかがわせた。博物館資源を活用した経営基盤の強化、地域博物館も含めた事業活性化を取り組みの目標に掲げており、そのベースとなるのが筑波研究施設の約470万点に及ぶ標本資源だ。1877年に創立した科博の140年にわたる収集活動の成果だという。

この保管のため整備された筑波研究施設は2012年に開設、8階建ての自然史標本棟には各階1100平方メートルの標本室が確保され、植物、動物、地学、人類、理工学の研究部の標本が収められる。同じ敷地にある筑波実験植物園は一般に公開されているが、収蔵庫は科学技術週間の行事開催時を除き、一般公開されていない。

上野本館と結んでバーチャル展示

2001年に独立行政法人化された科博は当時90万人だった入場者を、第4期に入った現行の中期計画平均で267万人にまで増やしてきた。21年から5カ年の第5期では300万人にまで増やす計画を立てている。科博イノベーションプランと銘打っており、「科学を文化として育む博物館への展開」(林良博館長)を目指している。

入場者数には筑波実験植物園の分も含まれるが、同プランでも収蔵庫の公開は考えていない。標本管理のため温湿度や空調を一定に保つ必要などから公開が難しい。このためデジタルアーカイブ化して上野本館と結んだバーチャル展示などに活用する。

また各地の科学博物館に動物の骨格標本を貸し出したり、共同での巡回展も企画して、新たな収入確保につなげたい考え。センターは科博の横断的な組織として、11人のスタッフにより立ち上げており、来年度には「化石」をテーマにした事業が具体的に動く見通しになっている。

記者団に公開された人類研究部所蔵の人骨標本。手前が縄文時代で奥へ江戸時代まで並ぶ

6年越しの大同団結 つくばJC・RC・LCが災害救援相互協定

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災害救援相互協定を締結した(左から)つくばOAKライオンズクラブの森重英明会長、つくば青年会議所の山谷憲司理事長、つくば学園ロータリークラブの大里喜彦会長=つくば市役所コミュニティ棟

【鈴木宏子】共助の立場から災害時に相互に協力してより効率的な救援活動をしようと、つくば青年会議所(JC、山谷憲司理事長、会員約90人)と、つくば学園ロータリークラブ(RC、大里喜彦会長、会員約90人)、つくばOAKライオンズクラブ(LC、森重英明会長、会員約140人)の3団体が27日、つくば市役所コミュニティ棟で、災害時救援相互協定を締結した。

2011年の東日本大震災と12年の北条竜巻被害の復旧支援活動を立て続けに経験し、6年越しの構想だという。いずれも国際組織である青年会議所、ロータリークラブ、ライオンズクラブが災害協定を締結するのは全国的にも珍しい。

竜巻被害当時、青年会議所理事長で現在は学園ロータリークラブ会員の木村英博さんが、翌年に「つくばのボランティア団体は大同団結しよう」と呼び掛けたのがきっかけ。竜巻被害時、青年会議所はいち早く災害本部を立ち上げ、ロータリークラブやライオンズクラブなどの協力を得て、朝昼晩1日3食を計1000食分、14日間にわたって被災した地域住民に届けた経験があり、協力の重要性を感じていたという。

当時は7団体で相互協定を検討したが方向性が定まらず、いったん話は流れた。その後、全国各地で災害が頻発し、地域の人同士が助け合う「共助」の大切さが改めて認識される中、今回、青年会議所のOBが比較的多い学園ロータリークラブとOAKライオンズクラブとの協定締結が実現した。

3団体のメンバーは主に中小企業の経営者で合わせて300人を超える。市内各地に居住し、業種も多岐にわたることから、日頃から協力体制をつくって、いざという時もネットワークを生かせるようにする。災害時には、行政の支援が届くより前などに、各地域で迅速に機動的な支援活動ができるようにする。

ロータリークラブの大里会長は「実際に役立つよう、温かく大きなものに育てたい」と述べ、ライオンズクラブの森重会長は「これを核として、いろいろな団体が加わっていけたら」と話した。青年会議所の山谷会長は「組織の枠を超えた協力体制を構築し、つくばの防災、減災に貢献出来たら」と語った。

協定締結に立ち会った五十嵐立青市長は「機動性をもって初動で動くことができ、地域の人が継続的に支援をするというのは全国的にも例がない。すごくありがたい」と話していた。