月曜日, 12月 29, 2025
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古民家改造しチョウザメレストラン 筑波山麓・真壁の養殖業者が店開き

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ひなまつり開幕に合わせて4日オープンの「レストキャビン古民家スタージョン」=桜川市真壁

【大山茂】真壁のひなまつり開幕に合わせ、桜川市に4日、古代魚のチョウザメを食材にした古民家レストランがオープンする。異色の組み合わせだが、総務省の地域振興策「ローカル10000プロジェクト」採択を受け、市内でチョウザメの養殖を手掛ける「つくばチョウザメ産業」(つくば市、白田正男社長)が準備を進めてきた。

店の名は「レストキャビン古民家スタージョン」。スタージョンは英語でチョウザメのこと。場所は造り酒屋「西岡本店」の東隣りで、市が管理している木造平屋の古民家を改造した。

スタージョンは英語でチョウザメのこと=同

メニューはチョウザメの肉を使ったカレーや漬け丼、煮込みうどんなど。全ての料理にチョウザメを使用する。肉は白身で淡白なため、多くの料理に合うのだそう。価格は1000円前後。白田社長は「地元の人たちがお昼に気軽に立ち寄れる場になれば」と話す。

店内に入ると入口に大きなプラスチック製の水槽が置かれている。来店者にチョウザメの泳ぐ姿を見せるという。店内にはチョウザメの生態を紹介するパネルやグルタミン酸、アスパラギン酸などチョウザメの持つ機能性成分の分析表なども展示し、なじみの薄いチョウザメの理解を促す考え。奥に進むとテーブルやカウンターが配置され、15人前後ゆったりと座ることができる。

総務省事業に県内1カ所採択

同事業は、2019年のローカル10000プロジェクトに県内でただ1カ所、採択された。レストランに加え、廃校した小学校のプールを使ったチョウザメの養殖と、プール隣りで飼育水を再利用した野菜の水耕栽培の3点セットが事業内容。地元桜川市を通じて総務省に申請したところ、地域の産業再生と活性化に結び付くとして採択された。事業費は国の地域経済循環創造事業交付金と桜川市の負担分合わせて850万円、それに筑波銀行の事業継続融資分850万円の合計1700万円。

同社は筑波山麓の石材工場跡地に加工・出荷事業所を開設、約10年前から6000匹前後を飼育し、雄の魚肉をホテルや割烹、寿司店などに提供してきた。3年前からは雌の成魚からキャビアを採取しており、瓶詰20グラム6000円(税別)で販売している。結婚式場などから引き合いがあるという。

桜川市では4日から恒例の真壁のひなまつりが開幕する。3月3日までの会期中、市街地の店舗など約160軒におひなさまが飾られ、10万人を超える人出が見込まれている。

大相撲高安関、土浦の激励会で巻き返し誓う

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激励会で挨拶する高安関=土浦市城北町のホテル

【池田充雄】土浦市出身の関脇、高安関の激励会(高安土浦後援会主催)が2日、同市城北町のホテルマロウド筑波で開かれた。高安関はこの日、田子ノ浦親方や部屋の若手力士10人と同市木田余の宝積寺で節分の年男を務めた後、会場入り。中川清会長や安藤真理子市長らの励ましを受け、「土浦の皆様には日頃よりご支援いただき、恩返しするべく取り組んでいる。これからも精一杯努力し、土浦の名を少しでも全国や世界に広めたい」とあいさつした。

乾杯の音頭を取るのは後援会の折本明さん=同

大関復帰を懸けて臨んだ先月の初場所は、けがの影響から思うような相撲が取れず6勝9敗と負け越し。それでも休場せず土俵に立ち続け、最後は2連勝で来場所に期待をつないだ。この日の取材に、高安関は「結果を出せず申し訳ない思いがあった。もう一度鍛え直して気力体力を充実させ、必ず大関に返り咲くとともに、その上の番付を目指して精進していきたい」と誓った。

激励会に集まったファンは約350人。握手や記念撮影には長蛇の列ができた。土浦市田村町の石神道代さん(62)は「十両のころから応援し、テレビ中継は必ず見ている。今は調子を落としているがまだ若いし真面目なので絶対大丈夫。けがを治して体も絞り、コツコツと頑張ってほしい」と期待を述べた。

記念撮影に長蛇の列ができた=同

地元では高安関にあこがれて相撲の道を目指す若者も増えている。弟弟子の序二段・飯塚はつくば市大穂出身。「基礎から全部教えてもらった。教え方も優しいし面倒もみてくれる」と話す。今春から入門予定の高須瑠希亜君(稲敷市出身、霞ケ浦高付属中)は「普通に話すと優しいが相撲を取っているときは格好いい。高安関みたいに強い力士になりたい」と目標を語った。

プラネタリウムが新世代に つくばエキスポセンター

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新番組「地球発、宇宙の彼方へ」のシーン(つくば科学万博記念財団提供)

【相澤冬樹】つくばエキスポセンター(つくば市吾妻、中原徹館長)のプラネタリウムが1日、改修工事を終えリニューアルオープンした。1月31日に内覧会が開かれ、新システムの紹介と新番組「地球発、宇宙の彼方へ~未体験スペースツアーへの招待~」の試写会が行われた。

プラネタリウムは、直径25.6メートルのドーム天井に満天の星空を映し出す光学系の装置に、プロジェクターで投影する全天周デジタルシステムを組み合わせるもので、今回は2012年以来8年ぶりにデジタル系を入れ替えた。6台構成の4Kレーザープロジェクターを使用し、マルチプロダクションシステムによりつなぎ目のないスムーズな動きで、明るく鮮やかな映像をわん曲したドームスクリーンに映し出す。

同センター運営部、瀬戸口啓一部長は「明るさは従来に比べ数値的には1.4倍だが、更新前に比べ5倍近くなっている」と胸を張った。

光と影の動き リアルに再現

全天周プラネタリウムの投影装置=つくばエキスポセンター

搭載される映像技術「メディア・グローブ・シグマ(Σ)SE」により、地球や宇宙の姿をダイナミックに再現する。コンピューターグラフィックスの画像処理と異なり、恒星や星団などデータベース化した膨大な銀河モデルを元にシミュレーションした映像。光と影の動きまでリアルに再現する。

データには地球の地形モデルも含まれ、1日から公開の「地球発…」は冒頭、筑波山を出発し、富士山を経て、エベレストから宇宙に近づくシーンなどが用意された。火星から木星、土星を旅し、途中、小惑星探査機「はやぶさ」がサンプル採集を試みたイトカワなどに立ち寄る40分の番組だ。

ドームスクリーンでの映像展開について、中原徹館長は「科学や芸術など多様な表現に役立たせてほしい。スポーツ中継にも新たな可能性を開くかもしれない」と期待を寄せる。

同センターのプラネタリウムは1985年の科学万博開催に合わせて設置されたのが初代で、光学系は2006年に現在の2代目に更新された。見る場所に応じて、位置の変化する星や星座を映し出す。昨年秋から急速に明るさが低下して関心が持たれているオリオン座の赤色超巨星、ベテルギウスの減光も今回のプログラムに反映されているそうだ。

◆「地球発、宇宙の彼方へ~未体験スペースツアーへの招待~」は2月1日公開、上映期間は5月31日まで。上映は毎日2回。入館料を含むプラネタリウム料金は大人1000円、4歳~高校生500円(税込み)。問い合わせ電話029-858-1100。

➡つくばエキスポセンターの過去記事はこちら

パラスポーツ体験しよう! 2月9日、つくばで「2020」

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「つくパラ2020」で体験できるボッチャ(左)、車いすバスケ(中央上)、ハンドアーチェリー(中央下)、ブラインドサッカー(右)=「つくパラ2020」事務局提供

東京オリンピック・パラリンピックオフィシャルパートナーの東京ガスは2月9日、地元企業のカスミ、関彰商事などと「障害者スポーツを体験しよう つくパラ2020」(カスミ主催)をつくば市桜総合体育館で開催する。

東京パラリンピック正式種目の車いすバスケットボール、ブラインドサッカー(5人制サッカー)、ボッチャのほか、ハンドアーチェリー、卓球バレーなど障害者スポーツをだれでも体験できる。

オリンピックイヤーに合わせて、皆が一緒にいきいき暮らせる共生社会を目指そうと、つくば地域で活動する企業や団体がメッセージを発信する催しだ。

ブラインドサッカー日本代表強化指定選手を輩出する筑波技術大(つくば市)チームの「アヴァンツァーレ」、各地で車いすバスケットボールの体験会を開いているシッティングスポーツ協会(土浦市)などが参加する。ゲストとしてサッカー元日本代表で、鹿島アントラーズの中田浩二さんが来場し市民と一緒に障害者スポーツに挑戦する。

ほかに常磐大学(水戸市)の学生とオリンピックの応援を盛り上げるフェイスペイントを体験したり、アイマスクをして盲導犬と歩行体験をしたりできる。つくば市内の福祉団体による障害者手作りのクッキーやお菓子の販売もあり盛りだくさんだ。

東京ガスつくば支社の樽井謙尚広報課長は「パラリンピックスポーツを体験する機会は少ないので、楽しみながらぜひ体験していただければ」と話している。

◆「つくパラ2020」は2月9日(日)午前10時~午後4時、つくば市流星台63、市桜総合体育館で開催。参加費無料。事前予約不要でだれでも参加できる。当日は体育館用の上履きを持参する。問い合わせは電話029-850-1824(カスミ環境社会貢献部)

オールつくばロケの小さな宇宙映画 2月2日、初の一般試写会

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映画「ASTRO AGE」のワンシーン。JAXA筑波宇宙センターのスペースドームで撮影された(六本企画提供)

【池田充雄】つくばを舞台に昨秋完成した短編映画「ASTRO AGE(アストロエイジ)」の試写会が2月2日、つくば市庁舎で開かれる。「宇宙やつくばが好きな人、夢や目標を持って頑張っている人に特にお薦めの映画。ぜひ感想も聞かせていただきたい」と監督の小川貴之さんは話す。

会話通し宇宙の壮大さ描く

2018年のつくばショートムービーコンペティションでグランプリを手にした当時の小川貴之監督

映画のキャッチフレーズは「宇宙に行かない宇宙の話」。若手サイエンスライターの女性が、さまざまな人に宇宙の魅力を聞きながら、自分の夢を見つめ直す物語だ。「主人公の表情の変化や心の動きをとらえた、しっとりとした映画。SF作品のような派手な展開はなく、会話を通して宇宙の壮大さを描こうと考えた。あまり見たことがない映画体験ができると思う」と小川監督。

重要なテーマの一つが夢。「日本では子どものうちから夢を問われるが、大人になるにつれ、夢へのこだわりを言葉にするのが後ろめたくなる。自分もそうだった」という。つくばとの縁が生まれ、何度か訪れるうちに、ここなら夢と宇宙を一つにした映画が作れるのではないかと考えた。

小川監督は、2018年度のつくばショートムービーコンペティション(筑波学院大など主催)に「つれない男」でグランプリを受賞。同作はグルノーブル屋外短編映画祭で招待上映され、国内外の映画祭に多数入選した。今作の「ASTRO AGE」はグアム国際映画祭入選のほか、セントルイス国際映画祭、神戸インディペンデント映画祭、函館港イルミナシオン映画祭などに出品された。一般向け試写会は今回が初めて。

主演も音楽も旬の才能が集結

主演の小西桜子さんは新人だが「ファンシー」(永瀬正敏主演、2月7日公開)、「初恋」(三池崇史監督、2月28日公開)で立て続けにヒロイン役を射止め、いま最も旬といえる女優。オーディション時から独特の印象があり、カメラが回ったときの集中力や瞬発力も新人離れしていたという。

「短編映画では人物の背景まで描き込めないため、俳優自身にリアリティある生きた人物を表現してもらうのが大事。小西さんは細かく指示しなくても勘良く人物像を作り、抜群の雰囲気を映画に生かしてくれた」

劇中音楽とエンディング曲「僕らは『ゆらぎ』でできている」を担当したのは、つくば発の理系バンドDENSHIJISION(デンシジション)。11年に結成され過去5枚のアルバムを発表、17年には任天堂ゲーム「RXN-雷神-」に楽曲提供、18年にはグルノーブル音楽フェスティバルに出演など、着実に活動の幅を広げている。

グルノーブル行きは小川監督と同時期。つくば市役所での帰国報告で初めて出会い、一緒に作品作りをしようと動き出した。「映画ではバンドの普段の曲とはまた違う雰囲気で、曲想も幅広く臨機応変に対応していただいた。作曲のヨシダシゲルさんは理系の人らしくリズムや音色も理詰めで構築していくのが新鮮だった」

つくばの魅力を映像で再発見

主な撮影地はJAXA筑波宇宙センター、筑波大学、中央公園など。「市内在住の方なら、ここで撮ったのかと分かる場所が多数。とてもきれいな映像で、つくばの魅力をまた違った形で再発見できる」と市文化芸術課の田山牧子さん。

試写会は今年度のつくばショートムービーコンペティションの開催前イベントという位置付け。会場はつくば市役所コミュニティ棟会議室。2月2日(日)午後1時開場、1時30分開演。本編上映(23分)の後、小川監督のあいさつに続いて「つれない男」も上映する(10分)。予約不要、入場無料、市役所駐車場(2時間無料)が利用できる。

➡短編映画祭「つくばショートムービーコンペティション」の過去記事はこちら

つくば市役所にチャレンジショップ 女性2人が2月7日まで開業

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市民がふらりと立ち寄るチャレンジショップ=つくば市研究学園の市役所1階

【橋立多美】つくば市役所(同市学園都市)1階キッズスペース隣の特設会場で若者によるチャレンジショップが開かれ、市民が立ち寄って商品を手に取る姿が見られる。

春をイメージさせるオリジナルトートバックを持つ内堀夢梨実さん=同

出店しているのはTシャツやトートバッグ、ポーチなどオリジナル生活雑貨を展示販売する店と、欧米から取り寄せた子どもを前に抱いて固定する抱っこひものサンプルを展示し無料相談を受ける店の2店。

ショップは、市が今年度から3年間実施予定の「若者地域定着加速化事業」の一環で、市内で起業または新規出店して定住を目指す若者を対象に試行の場を提供し、マーケティングなど準備活動を補助して事業化を応援する事業。昨年秋に出店者を募り、今回出店した2人が選定された。

生活雑貨の店は、筑波大学芸術専門学群4年の内堀夢梨実(ゆらの)さん。同大の学園祭で販売して好評だったオリジナルTシャツと、使い勝手の良さを重視したトートバッグを並べている。いずれも大人とキッズサイズがある。

内堀さんは「学園祭と市役所とでは客層が違い、手に取ってくれるか不安だった」というが、キッズ向け商品を中心に売り上げを伸ばし手応えを感じている。「内定を得たデザイン関連の企業で社会経験を積んだ後、脱サラしてつくばで自分の店を持ちたい」と笑顔を見せた。

抱っこひもで1歳の長女を抱く角田クリスティーナさん=同

もう1店は子育て中でベビーウェアリングコンサルタント=メモ=の角田クリスティーナさん(32)が出店した。子どもが快適に過ごせる欧米の抱っこひもと、伸縮性のある細長い布で子どもを巻きつけて使うことで親が前傾姿勢になっても体がフィットすると注目を集めるベビーラップを体験できる。

クリスティーナさんによると欧米の育児アイテムは進歩しており、抱っこひもは新生児の時期から使えて子どもの身長や体重の増加に応じて調整できる。近年、抱っこひもを着脱するのに操作するバックルを外され赤ちゃんが落ちそうになったという物騒な話があるが、欧米の製品にはロックボタンが装備されたものがあるそうだ。

抱っこひもの選び方や肩の凝らない装着方法、昔ながらのおんぶひもの使い方を教えてくれて体験も可。「便利な育児グッズを使って自分らしい育児ライフを過ごしてほしい」とクリスティーナさんは話す。ハンガリー出身。日本男性と結婚し来日して4年のクリスティーナさんの日本語は完璧だ。

ショップは期間限定で営業日と時間は店によって異なる。雑貨店は31日までと2月3日~7日。時間は午前10時~午後4時。育児アイテム店は31日までと2月5日~7日。時間は午前10時~午後3時。両店とも土日は休み。

チャレンジショップ事業は次年度も出店対象業種や出店期間などを拡充して実施予定で、6月以降に市公式HPなどで募集する。

※メモ

【ベビーウェアリングコンサルタント】赤ちゃんの適切な抱っこやおんぶに関する知識を持ち、赤ちゃんの発達と保護者のライフスタイルに適した育児アイテムをアドバイスする専門家。

4億円超調達しアプリ販売 筑波大出身医師、在宅・遠隔医療で切り込む

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講演する伊藤社長=つくば市吾妻、スタートアップパーク

【相澤冬樹】医療相談アプリ「リーバー(LEBER)」を開発し、法人向けサービスに乗り出したアグリー(AGRIE、つくば市谷田部)社が3億円を目標にした資金調達で、今月末までに4億円超えを達成、売り上げ20億円を目指す戦略が整った。29日、つくばスタートアップパーク(同市吾妻)で開催のつくばイノベーション・リーダース・ミーティングの会合で、講演した伊藤俊一郎社長(40)自らが明らかにした。病院への外来と入院に大きく依存した現代日本の医療体制に、在宅・遠隔医療で切り込もうとする同社の有力な“メス”になりそうだ。

リーバーはスマホを操作して医師と相談するアプリ。ユーザーは「痛い」「かゆい」などの症状を伝え、必要に応じ写真などに撮って送付するチャットスタイルで、自動問診に答える。これを見た医師が最速3分で診断結果を伝え、最寄りの医療機関や適切な市販薬などをアドバイスする仕組み。24時間365日相談でき、110人以上の医師、45以上の診療科で対応するという。

同社ではこれまで、アプリ開発と共に実証実験を行ってきた。2018年の調査では、3052人の相談者中、77%が「不安が減った」と答え、医師による回答は88%が「分かりやすかった」とした。相談の結果、60%が「病院に行かずに済んだ」ということだ。

この結果から同社は、アプリの販売に乗り出すことを決め、まず法人向けサービスから着手、昨年から3億円を目標に資金調達に乗り出した。これまでに地元地銀のほか、東京の大手印刷会社、インターネット関連企業などが出資に応じ、今月末までに4億円を超えての達成見通しになった。

若いスマホ世代と子供たちターゲット

講演では、「病院に行くのが難しい高齢者はスマホが操作できないものが多い。どう対応するか」の質問があった。伊藤社長は「現段階では高齢者は想定していない。多種の治療薬を服用しているため、相談アプリでは合併症などが懸念される」と、主に若いスマホ世代とその子供たちの利用を想定しているという。

医療難民となりがちな高齢者に対しては、在宅医療の展開がカギになる。アグリー社などを束ねるメドアグリケアグループでは、県内外7拠点で訪問診療・看護、リハビリ、入院治療を行っている。伊藤社長は筑波大学出身の心臓外科医で、2015年6月につくばみらい市にメドアグリクリニックを開院。昨年12月にはかすみがうら市に有料老人ホームのアグリケアガーデンかすみがうらを開設するなどしている。

17年度にはつくば市の「つくばソサエティ(Society)5.0社会実装トライアル事業」に、18年度には内閣府「近未来技術等社会実装事業」に採択。医療系ベンチャーとして注目されている。「日本は病院数こそ世界一だが、医師数があまりに少なく、医師の過重労働や医療費の増大を招いている。病院依存の外来診療、入院治療と役割分担する第3、第4の医療が必要」が伊藤社長の持論。5年後には在宅医療と遠隔医療が大きなウエートを占めるだろうと予見し、起業や就労を待っている分野だと強調した。

つくばイノベーション・リーダース・ミーティングは、若者や学生などに「つくばの起業家と夢を語る」機会として設けるもので、29日の開催が第1回だった。次回開催は2月26日、筑波大学システム情報系、鈴木健嗣教授による「サイエンスの勝利」が予定されている。問い合わせは、つくばグローバル・イノベーション推進機構(電話029-869-8034)

起業を目指す学生らが伊藤さんを囲み記念撮影=同

神も仏も習合の節分 土浦・つくばに豆まき行事を拾う

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昨年2月4日催された土浦市木田余の宝積寺の節分会。「福は内」の掛け声で豪快に豆まきする(左から)荒鷲、高安、田子ノ浦親方

【相澤冬樹】2月3日は節分。元々は、新年を控えた大みそかの晩に鬼を追い払った追儺(ついな)の儀式に行き着くらしいが、神社は節分祭、お寺は節分会(せつぶんえ)と呼ぶ神仏習合、極めて日本的な年中行事だ。近在では笠間稲荷、成田山新勝寺で知られるように、神社とお寺が競うように豆まき行事を行う。土浦・つくばで、拾ってみると―。

宝積寺の高安、今年は2日に

笠間稲荷、成田山新勝寺は大相撲の力士や芸能人の豆まきで知られる。土浦・つくばでは、宝積寺(土浦市木田余)と筑波山神社(つくば市筑波)に力士がやってくる。宝積寺では2日午後3時から土浦市出身の関脇、高安はじめ田子ノ浦部屋の力士らが親方ともども勢ぞろいして豆をまくことになっている。筑波山神社は毎年10、11日に催す年越祭の中で豆まきを行っており、ことしは顔ぶれが決まっていないが10日に友綱部屋から力士がやってくるそうだ。

神社では千勝神社(つくば市泊崎)の節分祭祈祷(きとう)・豆まき神事が毎年にぎわいをみせる。3日午前11時からの特別祈祷に加え、午後3時からの餅つき神事をはさんで午後4時からと6時から神事が行われた後、特設の舞台から福豆とともに福物をまく。祈とうは事前申し込みを受け付け中。

小児の安全と成長を祈願する「子育て観音」として知られる慶龍寺(つくば市泉)は5日から春季大祈祷会の時期に入り、その最終日、11日午後1時から4時にかけ年男らによる3回の豆まきが行われる。境内には屋台が出てにぎわう。18日には筑波山大御堂(つくば市筑波)で追儺式、豆まきがあり、お札が配られる。

神社とお寺が相次ぎ豆まきをする土浦中央1丁目の節分

土浦では、神社、お寺相乗りの節分豆まきが3日夕、中央1丁目のまちかど蔵「野村」脇の路地で午後5時ごろから行われる。琴平神社と、隣接する不動院の豆まきで、時間をずらしてお餅やお菓子を放り投げるように大量にばらまく。桜橋交差点を過ぎて旧水戸街道を下ると、東崎の鷲神社へ向かう道と交差する四辻で「まかしょ」という節分行事が行われる。こちらは厄落としのお金をまくことで知られる。

土浦の古い町には氏神さまの神社が少なくない。大概が神職不在の無住だが、地元の氏子らが絶やさず節分を続けているところもある。小松の二十三夜尊(三夜様)は3日、お寺の住職に来てもらって護摩をたき、豆まき神事を行う神仏習合。祭神に月読尊(ツクヨミノミコト)をまつるが、日中は本地仏の勢至菩薩に化身するそうだ。ご祈祷を法泉寺(同市大岩田)住職に頼んで、午後5時ごろから豆まきが始まる。

筑波大お笑い集団 「放課後定期ライブ」展開中!

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ネタを披露する前川正樹さん

【山口和紀】筑波大学の学生サークル「つくばお笑い集団DONPAPA(ドンパッパ)」は、漫才やコントなど「お笑い」を中心に活動している。およそ月に1回のペースで「放課後ライブ」と称した定期ライブを行う。「つくばにお笑いの場を」―を理念に掲げ、お笑いの場が少ないつくばで、様々なお笑い企画を展開している。

メンバーは約15人。理系から文系まで幅広い学類のメンバーが集まる。2018年4月に結成され、今年で2年目になる。現代表は川合福太郎さん(社会学類2年)。

24日には「第6回放課後ライブ ガチンコお笑いライブ」が行われた。およそ30人の観客が集まり、8組のネタが披露された。このライブの企画・運営を担当した同団体の桑田和哉さん(生物学類1年)は「今回のライブから、私の発案で、サークル内で事前にオーディションを行い、披露するネタを厳選することにした。序盤から観客の皆さんに盛り上がってもらえて良かった」と話した。

今回のライブでは上級生だけではなく1年生も活躍した。桑田さんと根本遥隆さん(比較文科学類1年)のコンビ「禅問答」だ。2人のコントの設定はコンビニ店員と買い物客のやりとり。根本さんは「ネタのコンセプトとして、よくいる『迷惑な客』をテーマにしたかった」と話す。なぜか異常なまでにスナック菓子の「うまい棒」を買っていくお客さんと、それに対する店員のリズミカルなツッコミで、会場は大いに盛り上がった。桑田さんは「僕は飲食店でアルバイトをしている。レジの担当ではないが、迷惑な客とのやり取りをイメージしてみた」とネタ作りの経緯を語る。次回のネタは「飲食店で、お冷だけで長時間しのぐ客」をテーマにしたいと話した。

コンビ名「禅問答」の根本さん(左)と桑田さん。「うまい棒」を買いに来たお客役(左)に店員役がツッコミを入れる

この日の観客の多くは学生だったが社会人も来ていた。ライブを見に来た市内に住む社会人の男性は「代表の川合君を見に来た。よくDONPAPAのライブには来ている。若い子たちがどんな風に社会を見ているのかが分かって面白い」と話していた。

DONPAPAは同大の落語研究会のメンバーが「お笑いを通じて、サークルや専門科目の垣根を越えた大会を作りたい」と、14年にお笑いグランプリ「T-1グランプリ」を企画、開催したのが始まり。その後、全国の大学生にも参加を募って投稿型大喜利「お笑いモジュール期末試験」(現在は「全国統一大学生お笑いテスト」に名称変更)を開催したり、筑波大の学園祭で大喜利の参加型展示企画「つくば大喜利ランド」を開くなどしている。

◆次回ライブは3月15日。ライブハウスFROG(つくば市天久保1丁目6-7)で催される。DONPAPAのツイッターアカウントはこちら。ライブの告知もツイッターで行っている。定例ライブは月に1回程度。学外からの参加も歓迎。

➡筑波大学関連の過去記事はこちら

小田の小学生たちが短編映画制作 廃校や思い出たどる つくば

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映画を制作したチーム「おだのこ」と日原監督(右端)、まちづくり振興会の鈴木会長(左端)

【池田充雄】つくば市小田地域に住む4人の小学生が、廃校になるまで通っていた小学校や、地域の思い出深い場所などについて、映画監督の日原進太郎さんと共に映像化した短編映画が完成した。

「おもいでの町」と題する8分の映像作品。同市小田の旧小田小学校で25日、こども映像教室の完成作品上映会が開かれ、地域住民らに映像が披露された。

2018年3月末で廃校になった同小を地域のコミュニティの場として利活用するプロジェクトの一環で、小田地域まちづくり振興会(鈴木真人会長)が主催した。

こども映像教室に参加した4人の小学生は制作チーム名を「おだのこ」という。子どもたちは出演やナレーションのほか、助監督としても撮影の現場に携わった。

教室は昨年11月から月1回のペースで開催。第1回は「小田のまちの思い出」を作文に書き、第2回ではその作文を基に1日がかりで町のあちこちを撮影して歩いた。撮影した映像は日原監督が編集して仕上げた。

完成した作品は子どもたちも上映会で初めて見た。「小田はこういう場所だと紹介できる。これを見ていろんな人が来てくれたらうれしい」「もう1回撮りたい」「作文を考えるのが大変だった」「全部のシーンに自然がいっぱいで、みんなの力になったことがよく分かった」などと感想を語り合った。

登場するのは廃校になった母校や、校庭から見えた裏山、商店街のよく行く店や駐在所、サイクルロード、城跡に作った秘密基地、ザリガニを釣った小川など。そうした子どもたちの個人的な記憶が、映画を見た大人たちの記憶にも働き掛け、それぞれの思い出を語り始めるきっかけにもなった。

「皆さんの地域に対する強い思いを感じた。小田は数時間で歩いて回れる小さな町だが、住んでいる人には一つひとつがすごく大切な存在。たくさんの人のいろんな思い出が詰まっており、だからこそ守りたいとか、より良い形で残したいという気持ちが生まれる」と日原監督。「このような思いは、どの地域の人にも共感できるものだと思う。映像の特性は、人が目にしたものをそのまま残せることや、感情を伝えられること。この映画をお見せして、少しでも皆さんの心を動かすことができたらうれしい」と続けた。

作品は、2月29日、つくば文化会館アルスホール(同市吾妻)で最終審査会が開かれる今年の短編映画祭「第7回つくばショートムービーコンペティション」(筑波学院大など主催)に応募した。

映画を見終わって語り合う参加者

➡旧小田小学校の過去記事はこちら

つくば警察署が完成、3月2日開署 中央署と北署が統合

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つくば警察署の外観。27日報道関係者を対象にした内覧会が開かれ施設が公開された

【鈴木宏子】つくば市学園の森に建設されていたつくば警察署が完成し、3月2日開署する。つくば中央署(同市竹園)とつくば北署(北条)が統合され、市のほぼ中央に移転する。つくば警察署は敷地面積約2万平方メートルと県内の警察署で最大。初めて免震構造が採用され、災害に強く県南の拠点となる。

庁舎は鉄筋コンクリート造5階建て、延床面積約5600平方メートル。災害に備え、大型非常用発電機を備えているほか、敷地内の地下に約2万リットルのガソリンを備蓄する。約380台分の駐車スペース(来庁用は約180台)があり、災害時は駐車場の一部がヘリコプターの離発着場となる。

庁舎1階は中央ホールを囲んで、総合窓口と運転免許更新窓口などが設置され、さらに交通課などの執務スペースと相談窓口などが配置される。2階は刑事課、生活安全課の相談窓口と、さらに取調室18室が設置される。3階は留置施設で男性用が12室、女性用が6室配置。4階は会議室など、5階は道場。

庁舎1階ホール。ホールの両側に総合窓口や運転免許更新窓口などが設置される

庁舎は、県民が利用しやすい、災害に強く県南地域の拠点になる、警察活動を効率的・機能的にする―の3つのコンセプトで設計された。

署員は250~260人が配置される予定で、土浦署よりやや多い規模となる。建設費は約30億円。

中央署は解体、北署は分署に

県警本部の警察施設再編整備計画第2期計画に基づいて統合・新設された。北署は小規模であること、一つの市に二つの警察署があり市内を分断していたことから、統合後は行政や地域住民とより一体となった警察活動を推進する。

移転・開署後、中央署は建物を解体する。跡地の利活用は県庁が検討する。一方、北署は分署として維持し、運転免許の更新などが引き続きできるようにする。

同市の2019年の刑法犯認知件数は2125件(暫定値)と、水戸市を抜いて県内44市町村中、ワースト1位だった。人口当たりの犯罪率は土浦市、神栖市に次いでワースト3位。

「もうかる農業」で注目 つくばのワールドファームが農水大臣賞

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十数人のスタッフが一斉にキャベツを収獲する=24日、つくば市真瀬の畑

【鈴木宏子】つくば市谷田部に本社がある農業生産・加工業「ワールドファーム」(上野裕志社長)が、2019年度6次産業化アワード(6次産業化推進協議会主催)で最優秀の農水大臣賞を受賞することが決まった。2月20日、都内で表彰式が催される。「もうかる農業」のビジネスモデルを確立し、注目されている農業法人だ。

野菜を露地栽培し、カット野菜や冷凍野菜に加工して販売する「もうかる農業」を全国展開している。「アグリビジネスユートピア構想」を掲げて農業の担い手を積極的に育成し、耕作放棄地の活用や農産物の国産化などに取り組んでいることなどが評価された。

2000年に創業。現在、つくば市など県内のほか、秋田県から熊本県まで10県の14カ所に計約300ヘクタールの農地を借り受け、平均年齢30歳のスタッフ約70人が、主にキャベツ、ホウレンソウ、ゴボウ、コマツナの4品目を栽培している。農業と加工を組み合わせ、農作業の無駄を省いて効率を高め、収益をアップしたのがもうかる農業のビジネスモデルだ。

加工工場でキャベツをカットするスタッフ(ワールドファーム提供)

働き方は「晴耕雨工」

野菜を加工することで付加価値を高めたほか、農業は天候に左右されることから、晴れた日は農業をし、雨の日は工場で加工するなどして人件費の無駄を省いた。畑は工場から半径10~15キロ圏内とすることで輸送コストを削減。収獲する野菜は、従来なら大きさや見栄えが規格品の対象外のため廃棄していたものを加工用にすることでロスを無くすなど、作業を徹底的に効率化した。さらに畑を全国各地に確保してリスクを分散したり、産地間リレーをして年間を通して安定量が生産できるようにした。

スタッフは全員を正社員として雇用し、7~8年で一人前の担い手に育てる教育プログラムを導入している。非農家出身者がほとんどで、新規就農意欲が高い若者が全国から集まってくるという。

販路は、近年、加工野菜の需要が増え、さらにコンビニや外食産業、冷凍食品業界などが野菜の国産化を求めている背景から、現在の年間生産量約7000トンに対し18倍もの引き合いがあるという。

農業への参入を計画している企業と合弁会社をつくって、もうかる農業のビジネスモデルを展開したり、農業者として地域で独立した元スタッフと連携した事業も始まっており、今後も事業を拡大していく方針だ。

上野社長は「大変名誉な賞をいただいた。この賞に恥じないように全国でもっと担い手育成をしながら、若い人たちの就農を目指しながら、展開を頑張っていきたい」と話す。

ワールドファームのスタッフ(同社提供)

畑違いの植物工場建設へ 土浦の電気設備業が農業参入

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植物工場の栽培ベッドの写真を説明する植田社長㊧と工場長に就任予定の辻井康介さん=土浦市のTEC本社

【相澤冬樹】電気設備業のつくば電気通信(TEC、土浦市東若松町、植田利収社長)が、畑違いの農業分野に参入する。全額出資の子会社、ベジタブルテック社により、完全閉鎖型の最新植物工場を那珂市に建設する。工場は4月にも着工し、来春の完成時には日量1280キロのリーフレタスを生産・出荷する計画だ。

リーフレタスを毎日6400個

植物工場建設には事業費約13億円を投じる。すでに那珂市堤に5600平方メートルの用地を確保しており、約2000平方メートルの建屋を建設する。工場内には最大で20メートルの長さの「栽培ベッド」が横に16列、縦に8段設置される。培養液が循環し、人工照明が当てられるベッドで、レタスは種子から200グラムの大玉になるまで約40日かけて育てられる。

操業は年間365日、毎日15人程度の従業員で稼働させる。収穫などに人手が必要だが、光合成のための二酸化炭素の量やLED照明を当てる時間調整などは自動制御となる。「農家出身で農業の難しさは十分理解しているが、電気のコントロールなど技術力を武器に参入するならやっていけると思った」と植田社長。「耕作放棄地対策や食料の自給率向上など農村・農業の課題に少しずつ取り組んでいきたい」という。

同社によれば、1個200グラムの大型リーフレタスを生産する完全密閉型の植物工場としては関東初。最大日産6400個、1280キロ収穫する予定で、出荷先となる大手コンビニエンスストアなどと協議に入っている。ハウス園芸と異なり、無菌状態の環境を実現でき、季節を問わず安定供給できるのが強みということだ。

照明や空調などで消費電力がかさむため、夜間割引を活用する時間帯での稼働となるが、那珂市には立地後7年間電気料金の半額程度を交付する制度があり、コスト圧縮を図れることから進出を決めた。植田社長は「1万平方メートル規模で第2期を目論んでいるが、まずはこの工場に全力投入をし、ノウハウや経験を蓄積したうえで展開したい」と意気込んでいる。

TECは1991年設立で電気設備業を中心に業容を拡大し、ネットワークシステムや太陽光発電などから人材派遣、デジタルコンテンツの人材養成スクールなどに進出、2018年度には経産省の「地域未来牽引企業」に選定されている。ベジタブルテック社は18年の設立で、植物工場建設に向け異業種交流会などを通じ情報を収集してきた。今回は、完全閉鎖型植物工場で実績のある木田屋商店(浦安市)、工場プラントでは大気社(東京・新宿)の協力で詳細設計を詰めている。

「常陽新聞がなくなり市民が失ったもの」 茨城大生が土浦シンポで問いかけ 

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研究発表をする茨城大学の学生=土浦市中央の亀城プラザ

【崎山勝功】メディア論の村上信夫茨城大学人文社会学部教授が指導するゼミ主催のシンポジウムが25日、土浦市の亀城プラザで開かれた。土浦・つくばを本拠に活動した地域紙「常陽新聞」が2017年3月に事実上の廃刊をしてから3年を迎えるのを前に、「新聞廃刊のインパクト―常陽新聞がなくなり市民が失ったもの」を掲げての開催で、市民や報道関係者ら約40人が参加した。

集会の第1部では、学生たちが紙面を読み、読者らへの聞き取りを通じ行った調査研究が発表された。地域紙が廃刊することで報道の監視が及ばないエリアが生じることを「取材空白カテゴリー」と定義した上で、同紙が手厚く報じていた土浦など県南地域の①市政②事件事故③街ネタ-の3分野を中心に検証した。

市政では、地域紙の機能の一つに、全国紙や県紙があまり取り上げない市政の問題を取り上げる「報道機能補完」があるが、同紙廃刊で「市政の問題を市民が知る機会が減ったと考えられる」と言及した。

事件事故では、同紙では窃盗事件などの軽微な事件事故の記事が多い特徴を踏まえ「市民への注意喚起や犯罪の抑制効果につながると考えられる」と指摘した。

街ネタでは、土浦市立真鍋小のお花見集会や土浦駅前ハロウィンイベントなどを例に挙げ「地域のコミュニティー形成の要だった」と結論づけた。

パネル討論で話すゲストたち=同

「取材空白域」の出現を危惧

第2部のパネル討論では、朝日新聞東京本社編集局の伊藤宏地域報道部長代理が、水戸総局長時代に発生した八千代町での選挙違反事件に触れ、同社記者の取材に八千代町議経験者が「警察に呼ばれることは無かった。マスコミも取材に来ることも無く怖くなかった」と話し、茨城県内にも報道機関の監視の目が届かない「取材空白域」が出現している現状を明かした。

集会後取材に応じた村上教授は、常陽新聞廃刊をテーマに取り上げた理由を、地元の新聞廃刊を学問的に取り上げる必要を感じていたところに、昨年のゼミ生が「常陽新聞廃刊をテーマに卒業論文を書きたい」と申し出たのがきっかけに始まった。村上教授は、複数の常陽新聞関係者から「論文にしてもらえないか」という申し入れがあったと言い、今後も研究を続ける可能性を示唆した。

同ゼミ所属の3年生、久保葵さん(21)によると、19年5月ごろからテーマを決めて、同年6月から今年1月まで常陽新聞関係者5人を含む計32人にヒアリングを実施したという。久保さんは、常陽新聞廃刊により行政監視機能や防犯機能、地域コミュニティー形成機能が失われる危機感を研究発表で提示した上で、「新聞が無くなって本当に困らなかったのか、訴えたくて土浦でシンポジウムをした」と語った。

➡常陽新聞廃刊に関わる過去記事はこちら

生誕100年の李香蘭から新民謡まで 2日に新春つくばおどり

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李香蘭の「紅い睡蓮」の踊りを稽古する出演者=つくば市天久保

【橋立多美】人生100年時代を元気に踊って長生きしよう―をテーマにした「新春つくばおどり」が2月2日、つくば市小野崎のホテルグランド東雲で開催される。

地元の名コンビが手がける

さまざまな踊り手の共演が楽しめる集いを目標に、昨年発足した「つくばおどり実行委員会」が主催。同市天久保の舞踊スクール、国際美学院学院長で実行委員長の恩田鳳昇さん(88)が舞台制作と振り付けを担当。同市在住の脚本家で副委員長の冠木新市さん(68)が企画・構成した。

つくばおどり実行委員会の恩田鳳昇委員長㊧と副委員長の冠木新市さん=同

幕開けは「李香蘭誕生百年を舞う」で、今年生誕100年(1920年2月12日満州生まれ)の歌姫、李香蘭こと山口淑子の代表曲「支那の夜」「蘇州夜曲」など11曲を、中国舞踊を取り入れた振り付けで17人が踊る。

第二景「おんなの朧(おぼろ)月」は、俳優松平健の新曲「マツケン・アスレチカ」と同市出身の演歌歌手、北条きよ美さんが歌う「きよ美の元気節」が繰り広げる人生賛歌のステージ。

続く第三景「夢二憂愁」は、人生100年を全うするには平和であることが必要との考えで構成された。太平洋戦争末期、旧陸軍の特攻基地が置かれた知覧を舞台にした曲「知覧の母」を演歌歌手、黒岩安紀子さんが熱唱。また竹下夢二をモチーフにした曲「夢二憂愁」も登場して歌と踊りで独特の憂愁と叙情を表現する。

最後の第四景「春夏秋冬花をどり」は民謡が流行し歌い継がれるのは、戦後75年平和が続いているからと構成された。同市北条を舞台とした新民謡「筑波節」や「水戸春秋」「長生きよさこい」などの民謡と踊りが披露され、民謡グループが華やかに踊って終演となる。

恩田鳳昇さんは、日本舞踊はもとより太極拳やフラメンコも教えるマルチな舞踊家。「格式を重んじつつ、振り付けと衣装は枠にとらわれず自由にイメージした」と話した。

つくば、土浦地域のまちおこしを目的に冠木さんが立ち上げた演劇集団「桜川芸者学校」の出演者、ぼたんさんは今回のつくばおどりにも出演する。「恩田先生の教え『心を込めて踊る』を実践したい。舞台は何度経験しても体が震えます」と、稽古の汗を拭いながら笑顔で話してくれた。

チケットは完売も続演決定

冠木さんは「中国で4000年前から続く健身気功やフラメンコ、太極拳とコラボした。つくばおどりは多彩な舞踊がつながる舞台。参加希望の舞踊家や舞踊教室はぜひ連絡を」と話す。また新春つくばおどりはすでに満席となり、年内に次回つくばおどりを開催するという。

問い合わせは、同実行委員会(Eメール:casatakenoko@meil2.accsnet.ne.jp)まで。

土浦駅周辺で働く若い人集まって 生涯学習センターが呼びかけ交流会 

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付箋を貼って参加者は活発に意見を取り交わした=プレイアトレ土浦3階「Lap's」

【伊藤悦子】茨城県県南生涯学習センター(土浦市大和町)が昨年11月から、多業種交流会「はたらくみんなのぷらっとフォーム」をスタートさせた。土浦駅周辺で働く若い人たちに向けた若手プロジェクト事業。29日のイベント開催を前に、同センターの社会教育推進員廣木悠介さん、杉浦彰子さんに話を聞いた。

29日は「読書」をテーマにプレイアトレで

廣木さんによれば、「土浦駅(土浦市有明町)にプレイアトレができ、自転車の街として土浦が活性化してきた。しかしオープンから1年未満。プレイアトレで働く若い人と生涯学習センターとの交流が今までなかった」という。そこで、「さまざまなイベントをしている生涯学習センターとプレイアトレとが交流して、協力関係を築いていけないか」と考えたそうだ。

11月に1回目を企画した。杉浦さんは「プレイアトレをはじめ、土浦駅周辺で働く20代30代の若い人たちが、仕事の悩みやキャリアの悩みなど気軽に相談し合える場所が定期的に開かれるように」という思いがあった。仕事の休憩時間など、ちょっと空いた時間にでも立ち寄って欲しいという思いから「ぷらっと」という言葉を入れた。参加者は15人。それぞれの悩みや意見を書いた付箋(ふせん)を貼り、それを解決する提案を書いた付箋を貼っていくなどして意見を交換した。

若い人たちの思いや意見が書かれたコミュニケーションカードの数々=同

実は杉浦さんは「皆さんすぐに帰ってしまうのでは」と心配したそうだ。しかしふたを開けてみると、1人1時間ほどかけて、やりたいことや日頃の思いを話すなど、思った以上に活発な交流会になったという。

「図書館や生涯学習センターで勉強している高校生たちと一緒に何かやりたい」など前向きな意見がたくさんでたそうだ。一方プレイアトレ土浦で働く若い人たちの悩みもわかった。市外や県外から移り住んできた人も多く、土浦市民とのネットワークがほとんどない。そのため市民に「土浦駅に足を運んでほしい、駅で楽しく過ごしてほしい」という思いを伝える手段がなく、模索しているところだという。

「今の若い人たちは、自分たちの親が歩んできた人生は保証されない時代にいる。だからこそこれからは自分で切り開いていかなくてはならない。交流会は、個人的な悩みや思いを気楽に相談したり話したりできる場にしていきたい」と杉浦さん。今後は駅前のいろいろな施設と一緒に、講座やコラボレーションもできるのではと考えている。

第2回の交流会は29日午後3時から開催する。テーマは「新春 新しい出会いと読書」。プレイアトレ内にある天狼院書店とのコラボ企画で、第1回の参加者から生まれたアイデアだ。会場はプレイアトレ土浦3階「Lap’s(ラップス)」。

おすすめ本のアドバイスや読書好きと読書嫌いのトークショーもあり、本好きの人との出会いが期待できる。若者はもちろん、年齢を問わず参加できるそうだ。前半の交流コーナーでは配りたいチラシや名刺を持って気楽に立ち寄って欲しいという。事前申し込みは不要で、いつ来てもいつ帰ってもかまわない。

2月8日には親子で楽しめるイベント企画

第1回から生まれた企画はもう一つある。2月8日午前9時40分から、生涯学習センターで開く「子どもの未来を考えるネットワークフォーラム」との同時に行われる「親子で楽しめるイベント」企画だ。

「土浦駅前クイズラリー」は土浦駅近くの生涯学習センター、土浦市立図書館、土浦駅STATION LOBBY(ステーションロビー)―3施設に設置したクイズに答えて景品をもらう企画。このほかミニコンサートや筑波大学生グループによる「世界の17の目標SDGs(持続可能な開発目標)を知ろう」といったイベントがエントランスで開催される。

問い合わせは県県南生涯学習センター(電話029-826-1101)

➡多業種交流会をスタートさせた県県南生涯学習センターの杉浦彰子さんを招いたVチャンネルいばらきNEWSつくばチャンネルはこちら

博物館が先陣切る「土浦ひなまつり」 2月からは商店街でも

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「博物館の雛人形」展を案内する関口満さん=土浦市博物館

【伊藤悦子】江戸時代から大正時代に至る3組のひな人形を並べる土浦市博物館(土浦市中央1丁目)の展示を皮切りに、城下町・土浦におひなさまの季節がやってきた。2月4日からは旧市街の商店街を中心に「土浦のひなまつり」が始まる。関係者に話を聞いた。

立春の2月4日から節句の3月3日まで

土浦のひなまつりは、商家などの残る古くからのひな人形やつるしびな、今年の干支「子(ね)」をテーマにした人形、かすみ人形など、様々なおひなさまを楽しむことができる。土浦まちかど蔵(同市中央1丁目)を中心に周辺の店舗128軒に飾られる予定で、昨年より8軒多くなっているそうだ。

まつりの発案者が土浦市観光協会の主任浅川善信さん。2~3月は梅まつりなどで茨城県を訪れる観光客が増える時期だが、土浦は入込客が少なく、寄りたくなるようなイベントが何かないかと考えたのがきっかけだという。

観光協会の浅川善信さん=まちかど蔵

土浦旧市街では、ひなまつりシーズンにつるしびなやひな人形を飾る店舗がすでにあったため、商家に残る古いおひなさまも一緒に展示しようと提案した。2004年に開催した第1回「ひなまつり」のために印刷したポスターは、わずか3枚だったという。地道な活動が実り、おひなさま目当ての来街者も増え、16回目を迎える今年は500枚ものポスターで誘客を図る。

まちかど蔵に展示するひな人形は、江戸時代の人形師、仲秀英(なか・しゅうえい)が作った明治時代のもの。数年前、埼玉県川越市の学芸員が人形を見たときに「もしかしたら貴重なひな人形では? 鑑定をしたい」との申し出があったという。玩具専門の鑑定士が見せた結果、3代目秀英の作と判明した。土浦は湿度が高めだが、人形の保存状態は良好だったそうだ。

浅川さんは「土浦のひなまつりは2月後半からは混むので、前半にいらしていただくとゆっくり見学できます」と来場を呼び掛けている。期間中はスタンプラリーや、和服来場者へのサービスなども実施される。

会期は3月3日まで。問い合わせは土浦市観光協会(電話029-824-2810)

3組並ぶ時代ごとのひな人形

土浦市博物館のひな人形展には、江戸時代後期の「古今(こきん)びな」、明治時代以降の「内裏(だいり)びな」、明治時代から大正時代の「享保(きょうほ)びな」3組が並ぶ。

同館の学芸員、関口満さんに話を聞くと、古今びなは30年以上前、前身の郷土資料館時代からすでに所蔵されていたという。「誰から寄贈されたかなど来歴は不明だが、かなり立派なおひなさま。市内でも1、2番の大きな商家にあったものでは」と話す。

江戸時代、豪商の間でひな人形を飾ることが流行した。過熱して人形がどんどん大きくなっていったため、幕府から大きさを制限するお触れがでたこともあるそうだ。その影響か、同館のひな人形も高さ30センチと大きめ。さらに「玉眼」といって目にガラスが入っているなど細部にもこだわって作られている。

関口さんは「なかなかお目にかかることのできない、一世を風靡(ふうび)した江戸時代のおひなさまに一目会いに来てほしい。時代ごとのひな人形の違いにも注目してほし」と来館を呼びかけている。

「博物館のひな人形展」は3月8日まで。入館料(一般105円、小中高生50円)がかかる。問い合わせは同博物館(電話029-824-2928)

 

つくばR8地域会議「成果報告会」2月開催で参加者募集

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「つくばR8地域会議成果報告会」向けチラシの一部

つくば市は、2月11日に市役所コミュニティ棟で開く「つくばR8地域活性化プランコンペティション2019」採択プラン実証事業の成果報告と周辺市街地活性化協議会のメンバーによるパネルディスカッションの参加申し込みを受け付けている。

R8地域は周辺地区にある北条、小田、大曽根、吉沼、上郷、栄、谷田部、高見原の8カ所の旧市街地。市はこれらを対象に今年度、活性化プランを公募し、採択された4団体が実証事業に取り組んできた。その成果報告に合わせ、パネルディスカッションではそれぞれの市街地を盛り上げるために各協議会等で行ってきた活動について議論する。各市街地には今年度、地域住民等が主体となって地域振興のアイデアを自ら実現していくための市街地活性化協議会が組織されている。

4団体は▽わわわやたべや~からくり伊賀七と進める市街地活性化運動(わわわやたべや町民会議)▽「小田山を芝桜でキレイに飾ろう」プロジェクト(小田地域まちづくり振興会)▽R8ロゲイニング「魅力の発見と発信、賑わいの創出、マップづくりとまち歩き」(筑波大学芸術系環境デザイン領域)▽旅する大八車と小さなパレード(studio weekend)。

開催は11日午後1時30分からで、2月4日まで、参加希望者の事前申し込みを受け付けている。定員100人程度、申し込みは専用申込フォームで、つくばR8地域会議運営事務局(電話は029-257-1234、メールはtsukuba-r8@mikami-web.co.jp)まで。

⇒つくばR8に関する既報はこちら

原木シイタケづくりに大はしゃぎ つくばのNPO法人が体験教室

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親子で原木にシイタケの菌を植え込む作業=つくば市中野

【大山茂】シイタケのできる過程を学んでもらおうと、つくば市のNPO法人「里山再生と食の安全を考える会」は19日、同市内のなかのきのこ園で親子を対象に原木となるクヌギなどにシイタケ菌を植え付ける教室を開催した。

この日は市内外から親子連れ約100人が参加。主催者側が用意した長さ1メートル前後のクヌギ200本にドリルで穴を空けることから作業がスタートし、駒と呼ばれるシイタケ菌の入った1センチ四方のカプセルを埋め込んだ。子供たちはスタッフに手を添えられながら電気ドリルを手にし、真剣な表情で穴あけに挑戦。1本の原木に20~30個の穴を空けると、今度はその穴に菌を埋め込んだ。

種菌は駒菌と呼ばれ、あらかじめ培養された菌糸が直系1センチほどの円錐形に加工されている。簡単に穴に埋め込むことができるため、子供たちは大はしゃぎ。幾つもの駒菌を手にしては作業に興じていた。

小学生2人を連れた市内の30代の主婦は「子供はシイタケをスーパーでしか見たことがないので、どういう風に栽培されているのかを知って欲しかった。私も知らないことばかりで、勉強になった」と楽しそうに話した。

お楽しみは1年後

植菌した榾木(ほだぎ)には各自が名前を書いたプレートを取り付け、同きのこ園で水やりなどをしながら管理してもらうという。シイタケが発芽する1年後をめどに再び現地を訪れ、記念に持ち帰ることになる。

参加者らはこの後、従業員らの植菌作業を見学したり、園内の施設でシイタケ狩りを体験。昼にはJAつくば谷田部産直部会のスタッフによるシイタケカレーがふるまわれ、園内の食堂で楽しいひとときを過ごした。

里山再生と食の安全を考える会は、市内の平地林の保全活動を進めており、定期的に集まっては下草を刈ったり、休耕地を借りて草花や野菜を植えたりしている。

「違いの価値観を理解する」 シェイニー校長、水戸へ出前授業

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熱弁をふるうシェイニーさん=水戸市有賀町、妻里市民センター

【相澤冬樹】価値観の違いより、違いの価値観を理解する方が重要かもしれない―。つくばインターナショナルスクール(TIS、つくば市上郷)校長のシェイニー・クロフォードさんが19日、水戸市内へ出前授業、20年を超す日本滞在で身につけた日本語を巧みに操り、国際理解を進めるアプローチ法を体験的に説いた。

シェイニーさんはこの日、同市有賀町の妻里市民センターで開催の「みと好文カレッジ」の講師に招かれた。1995年に来日し、福島県田島町(現南会津町)で足かけ6年間英語教師を務め、2002年からはつくば市で日本語の勉強や翻訳の仕事など、英語・日本語のコミュニケーションに携わってきた。1992年設立のTISは英語を話す子供たちのために、英語をベースとした教育を進めている学校で、2008年から運営に関わり、11年から校長を務めている。

「ちゃんとさ」が壁になる

講座は「今、つくばがおもしろい」をテーマにした連続講演会の2回目で、双方向のSNSツールを使うなどしてユーモアたっぷりに話を進めた。「つくばでは人口統計が地区別に出るのだけど、おもしろいのは『うち外国人』っていう項目まで集計されているところ」など達者な日本語で会場を和ませた。

シェイニーさんの母国、カナダは外国人比率が20%を超え、カナダ人と外国人を区別しなくなっている。外国人とは何か、カナダ以外で生まれた人か、両親が外国人か、パスポートの国籍か、定義が意味をなさなくなっているからだ。ところが日本で一段と国際化が進んでいるはずのつくばでも、「うち外国人」の感覚からは抜け出せずにいる。そんな環境で「いきなり友達になる」のはとても難しい。

大学などで学生同士が交流するにはサークルに入るのが近道だが、実際に「外国人」が入会・入部する例は極めて少ない。「日本人はものごとを皆で『ちゃんと』考えてから行動をする考えがしみこんでいて、この『ちゃんとさ』が壁になっている」という見方を示した。

 

シェイニーさんの身についている流儀は正確さよりスピード、「とにかく早くやるのが大事だ」という考え方で、文化の違いが見いだされる。これが対立して時にケンカになってしまう。友達をつくるのに1年もかかるのは大変に思えた。

いわば外側に殻をもつ卵が日本人で、自分の中に芯をつくる桃が外国人。卵と桃のどちらが正しいということではなく、「違い」に価値があるということを学んだ。これを理解しないと異文化同士で友達を作るのは難しいし、「実は、日本人同士でも友達になれない」と結んだ。

会場の女性からは「興味のあったインターナショナルスクールの話は聞けなかったけど、違いの価値観という見方は自分にはなく、とてもおもしろいと思った」という感想が聞けた。