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茨城 高校野球展望'19 -検索結果
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【茨城 高校野球展望’19】8 球数制限は流れ断ち切る 霞ケ浦監督に聞く㊦
-今話題になっていることを2つ、お聞きしたい。まず球数制限について考えをお聞かせ願いたい。
高校野球でもプロ野球でもピッチャー交代が一番大変な作業です。監督としてはエースで勝ったり負けたりすることほど楽なことはないですよね。エースが壊れようが何しようが、エースでいって勝てば当然、エースが打たれたから負けたというのでは監督は楽ですよね。楽なんですけど私はそれはやりません。最初から2枚、3枚投手を用意して戦います。その根底にはやっぱり肩は消耗品なので、将来性がある子に無理をさせたくないという思いが多分にあります。
とはいっても、松坂大輔のようなピッチャーに延長17回250球を投げた翌日にも投げさせることをおかしいとは思わないし、実際に松坂大輔が投げ過ぎたことでプロでは活躍できなかったかというとその逆で大活躍しました。肩を壊したことがありますが、あれは高校の時に球数を制限していたら故障しなかったのか、因果関係が説明できません。
私自身は、球数制限というルールがあってもなくても決まったことをやっていくだけです。練習から本番にかけて様々な要素やメニューを考えて自分で制限をして試合で使っているので、統一ルールとして球数は制限しなくてもいいと思います。
だからと言って、例えば今年、藤代との夏の試合で1対0の試合をやって、寛人がグズグズになりながらも6回終わって160球投げたとします。でもボールの力は落ちていない。1対0で勝っている。あと3イニング。9回まで行ったら200球にいってしまうことが明らかだという時でも、たぶんそのままゲームの流れの中で9回まで投げさせると思うんですね。流れがあるからしょうがないと思うんです。1対0で勝っていても代えたほうがいいという時もあるし、代えることが間違っている時だってあるわけで、そこを考えるから投手交代のタイミングが面白いし、大変な作業なのす。100球だから降板ですというのは試合の流れを断ち切るような気がして面白くなくなるので、別に今のままでもいいと思うんですよね。
―最後に、センバツでも話題になりましたサイン盗みの問題をお聞きします。
うちは一切やっておりませんが、相手がやっていると見ると、こちら側はやらせないような防御策を持っていないといけませんよね。センバツでは優勝候補である星稜がサイン盗みでバタバタしてしまった。星稜の林監督とは面識があり、しっかりした野球をしている印象ですが、サイン盗みの防御・ケアに関しては対応できなかったことが不思議にすら思いました。まあサイン盗みは、スマホのながら運転やスピード違反みたいな交通違反なんかと同じですよね。罰則を厳しくしたってバレなければいいという人は必ずいるんですよ。自己防衛こそが大事だと思います。
―本当に興味深いお話をありがとうございました。
(聞き手・伊達康)
春の大会ではエースの福浦太陽が明秀学園日立に対して6回から登板し、3安打3四死球を絡めて7回に一挙5失点の炎上をしたが、その遠因が何となく分かったような気がする。この夏はプロ注目の鈴木寛人の大躍進が楽しみだが、福浦太陽の復活劇と人間ドラマにも大いに期待したい。大会まであと数日という押し迫った時期にもかかわらず、インタビューを快諾していただき、貴重なお話をたくさんしてくれた髙橋祐二監督に心から感謝申し上げたい。
=終わり
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【茨城 高校野球展望’19】7 常総はタレントぞろい 霞ケ浦監督に聞く㊥
―髙橋監督が気になっている相手チームはありますか。
毎年各学校の監督さんのカラーが出ますよね。藤代の菊地一郎監督、石岡一の川井政平監督、常総の佐々木力監督と、監督のカラーが出ていて、そこの選手がどのくらいの能力であるかを足していけば、大体チーム力が分かります。監督それぞれの野球が急に変わることはないので、何をしてくるかは概ね察しがつきます。
ただ、土浦日大の小菅勲監督は何をしてくるか分からない。つかみどころがなくて負けたのは土浦日大だけなんです。何をしてくるか分からなくて常総も負けてしまうし、茨城を2年連続で勝ってしまうという本当に面白い状況なので、土浦日大にだけはちょっと負けたくないという思いはあります。
あと、藤代と石岡一はよく似たチームだと思いますが、藤代の方が精度が高くて選手層も厚い。藤代の方が強いようですが、そこを岩本大地投手(石岡一)の力で一気に超えてしまうかもしれない状況にあります。藤代とは中山航投手と寛人の投げ合いと野手同士の戦いの中で面白い試合になると思っています。
―常総学院打線についてはどのように分析されていますか。
常総学院はいろいろな雑誌を見ても分かるように、創部以来3本の指に入る選手層、強さと言われていますしタレントがそろっています。とにかく打線はすごいですよ。先日の土浦市高校野球招待試合で常総学院は春季関東大会優勝の東海大相模とやりました(4対5で東海大相模の勝利)けど、試合後に東海大相模の門馬敬治監督から「常総ってこんなにメンバーそろってるんですね」と電話がありましたよ。日本一になっている門馬監督がわざわざ連絡してくるくらいですから、それだけ常総に脅威を感じたんでしょうね。でも、そのくらいタレントぞろいのチームであっても、秋の関東大会や春の県大会準決勝で負けているというのが興味深いですよね。
―今大会とは別の話になりますが、霞ケ浦には毎年好選手がそろっています。選手のスカウティングについて、言える範囲でお願いします。
うちは他の私立高校よりもスカウティングに力を入れていないと思います。8月後半に1回あるオープンスクールの体験入部に来てくれた選手の中で、目立つ子には声をかけています。私立高校でありながら今の段階で1人も決まっていませんので、他の高校には遅れを取っていてスカウティング力は弱いですし、もっと力を入れないといけないと思っています。昔は特待を使って多少のところは目をつぶって多く集めた時期もありましたが、今は学力が伴って野球の技術が高くなければ特待の条件を出したくありません。後は、霞ケ浦でやりたいといって来てくれた子を叩き上げれば何とかなるだろうとこの20年やってきましたし、実際に何とかなってきたのかなと思います。根性がなくて決勝でいつも負ける戦いをしてしまっているのであまり偉そうなことは言えないですが、無理なスカウティングはしていないですね。
付属中の快挙、OBの活躍
―霞ケ浦高校付属中硬式野球部がボーイズリーグの全国大会出場を決めました。
創部4年で県大会優勝、全国大会出場おめでとうございます! 素晴らしい快挙です。柴崎、竹内、木村各スタッフの指導の賜物だと思います。これを機に、部活動、学習面での起爆剤になり、付属中学校全体が益々飛躍することを願っています。
―大学野球に進んだOBの試合はご覧になっているようですね。
大学野球を4年間一生懸命やるのであれば、1回くらいプレーは見てあげたいと思っています。大正大4年の大場駿太は最後のシーズンということで、ちゃんとした球場でやるときは見に行くよと約束していたので、一昨日は休みを取って、神宮球場で大正大と東農大の東都大学リーグ2部3部入替戦を見てきました。また、先日は全日本選手権の東洋大(3年・小川翔平、2年・木村翔大がスタメン出場)を見てきましたが、大学関係者に対する進路のお願いですとか、顔つなぎなどをやっておかないと後輩たちも入れないので、そういうものも含めての大学の試合会場に行っているわけです。OBが頑張っている姿を見るのもいいですけれども、それだけが目的ではありません。(続く)
(聞き手・伊達康)
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【茨城 高校野球展望’19】6 プロ注目の右腕「完成形に近い」 霞ケ浦監督に聞く㊤
【伊達康】毎年安定して好投手を輩出する霞ケ浦だが、今年は、鈴木寛人(3年)という最速148キロを誇るプロ注目の本格派右腕を擁しその戦い方が注目されている。綾部翔(横浜DeNA)や安高颯希(桜美林大4年)を擁して初優勝を果たした第97回大会以来4年ぶりの甲子園出場に向けて心血を注ぐ髙橋祐二監督に、夏の大会に向けた思いや決意を語ってもらった。
―春季県大会では乱打戦の末に明秀学園日立に7対10で敗れ、夏の大会はDシードで臨むことになりました。秋の準々決勝で敗れたAシードの藤代ゾーンに入ったことについて、所感をお聞かせ下さい。
今回、春に初戦で負けてシードを獲れると思っていなかったので、いきなり強いところと当たる可能性もあると心の準備はしていました。藤代ゾーンに入ったことについては一度負けている相手なので是非勝ちたいと思っています。藤代と常総学院を倒さないと甲子園は手に届きません。もし藤代を倒したとしてもBシードの石岡一が待ち受けているので正直言ってきついですね。Bシードの中でも石岡一が一番同じゾーンになりたくない相手でした。
―春の敗戦以降、夏に向けて特別に取り組んでいることがあれば教えてください。
例年、本校は投手力を中心とした守備が売りのチームを作っています。そこに少しでも攻撃力を付けて戦うのがうちの戦法です。実際、投手力や守備力は県内で常総学院や明秀学園日立よりも上だと評価された年が何度かありました。でも、今年のチームはとにかく守備力が弱く例年のレベルに到達していません。守備のイージーミスがよく見られるので、守り負けるもろさをはらんでいます。しかし、鈴木寛人というピッチャーは、先輩でプロ入りした綾部翔(横浜DeNA)や遠藤淳志(広島)を超えるようなピッチャーにまとまってきた感があるので、もしかしたら優勝できるかもしれないという手応えをつかんでいます。
―守備の方では中心選手が抜けた穴が大きかったでしょうか。
中心選手は毎年入れ替わる中で、それでも毎年、二遊間に関しては県内でも1、2位と言われるチームを作ってきました。昨年は能力の非常に高いセカンドの小礒純也(日体大1年)とショートの森田智貴(桜美林大1年)がいましたが、今年は二遊間に限らず全てにおいて守備力が弱いですね。
―打撃に関しては天野海斗選手が中心になるのかなと思いますが、ほかにこの選手に期待したいというのはありますか。
新チームになってずっと天野と黒田悠真を使い続けてきましたけれど、思ったようなリーダーシップが取れないというか、結果が出ていません。うちにはいわゆる4番バッターはいませんが、1年生を入れて打線を組んだことによって、どこからでも点を取れるような打線になりつつあると思います。期待する選手としては仕黒大樹です。茨城出身(土浦三中)の選手ですし頑張って欲しいと思っています。
―1年生とはどの選手でしょうか。
飯塚恒介と宮崎莉汰は練習試合でもスタメンで使っています。特に宮崎は見かけによらず力があって勝負強いので中軸を打たせています。1年生に期待すること自体が悲しいことなのですが、打線の幅はできたように思います。
成長うかがわせるプロ注目右腕
―ピッチャーについて。プロ注目右腕の鈴木寛人投手は春の大会まで背番号はエースナンバーではありませんでしたが、仕上がりはどうですか。
実績がないので自信を持って投げてはいませんが、プロのスカウトからは綾部・遠藤ら2人の先輩よりもボールの質が上だという評価をもらっています。春季大会は早々に負けたので4月下旬から6月第2週までは東海大相模、花咲徳栄、桐蔭学園、作新学院、春日部共栄、東海大甲府といった強豪校との練習試合をどんどん入れ、鈴木寛人にはどんなに打たれようが、点を取られようが9回を投げきるというノルマを課しました。その結果、花咲徳栄には滅多打ちにされ、東海大相模にはもっとボコボコに打たれ、「ああ、この子はピッチャーとしてまとまらないで終わってしまうかな」と思いながらも試練を乗り越えて一本立ちして欲しいという一心で起用し続けました。そうしたら、5月終盤にきて桐蔭学園を8回1安打完封、作新学院を完封、東海大甲府には失点1と着実に結果を出して来ています。この期間、ずっと完投させてきて、マウンド上の立ち姿に大きな変化というかオーラを感じるようになりました。
この状況が夏大(なつたい)になっても変わらなければ、たとえ相手が強力と言われる常総学院打線であったとしても、寛人ならやってくれるのではないかと楽しみです。それくらいの成長を感じています。ロースコアのゲーム展開になったとき、うちの守備にほころびが出る不安はつきまといますが、完成形に近い状態になったと言っていいほど寛人は良くなりましたね。1年秋の関東大会で2試合とも先発させて打たれて負け投手になり、次の春怪我をして、2年夏も棒に振って、秋も結果が出ないという状況の中でほとんど投げていません。ですが、4月から6月にかけて一生懸命やってきたことによって、これだけ成長できた訳です。寛人には昨日、「夏は寛人が中心でいくからな。これだけ成長できたのだから自信を持って存分にやってくれよ」と話したところです。
―これまでエースナンバーを背負ってきた福浦太陽投手はどうですか。
福浦は背番号1にあぐらをかいた状況で、寛人に抜かれることに焦りも感じたと思いますが、やっておかないといけないストレッチをおろそかにして体が鉄のように硬くなってしまいました。柔軟性の数値が1カ月前に比べて驚くほどで悪くなってしまい、こんなに硬くなるかと。胸が張れない。えび反り、いわゆるブリッジができないくらい胸郭が詰まってしまっています。あまりにもひどい状態で今は最速125キロくらいしかで出ません。肩肘はどこも痛くない。でも肘に張りがある。当然ですよ、もともとそんな投げ方はしていましたが、胸を張れないから体を開いて腕を引っ張り上げるしかないので。エースとしての自覚が足りない。昨日は「もしも寛人の成長がなくて山本もいなかったらお前はエースとしてどんな責任をとるんだ」という話をして自覚を促しました。
―それでは春の明秀学園日立戦で先発した左腕の山本雄大投手(2年)が2番手格になるのでしょうか。
福浦のことは突き放してはいますけれど、そうはいってもエースとして今まで君臨してきたわけですから、何とかはい上がって欲しいと期待しています。ただ、今は一切ボールを投げさせていません。ストレッチの数値が元に戻るまでは投げられないことにしているので、1日に3~4時間をストレッチに費やしています。どこまで戻るかは分かりませんが、戻らなければ、寛人と山本、それにもう一人3年生ピッチャーがいるので、この子とうまくつないでいければと考えています。もうトーナメントの組み合わせが分かりましたし、このカードは誰が投げるというのは全試合で想定しています。そうは言ってもやられるときはあっさりとやられますから。(続く)
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【茨城 高校野球展望’19】5 球数制限で新時代に 土浦日大監督に聞く㊦
―高校野球全体についてお話をうかがいます。今ホットな話題の球数制限問題=※注1=について、考えをお聞かせください。
私は、基本的に球数制限は賛成です。今後議論をした上で制限する方向にいくのではないでしょうか。球数制限が決まったら速やかに対応していこうと思っています。もしかしたら、高校野球が新しい時代になるんじゃないかと思います。例えば100球制限があるとして、最初にエースを出したらエースが引っ込んでからが勝負になるなど。駆け引き、采配も改めて考える必要がある。最初に背番号10でいって次に背番号1にするのかとか、その逆だとか、駆け引きが大きな要因になって、タイブレークと同じでまた面白くなると思いますね。
―最後に、センバツで話題になったサイン盗み=※注2=についてお聞きします。私も去年夏の明秀学園日立戦を見ていまして、そういったクレームがありましたがどのようにお考えでしょうか。
去年の夏の大会は、明秀戦以降、相手チームが、我が軍のセカンドランナーに過敏に反応するようになりましたが、そんな(サイン盗みをする)余裕はないですし心外です。これについては、野球界に以前からあった疑惑ですし、盗まれない工夫も各チームしてきました。
サイン盗みについて、ペナルティーを与えるか、どのように禁止にしていくか、審判団の対応はどのようにするか等々、今は過渡期にあるようです。審判団もナーバスになっていて、少しの挙動でも試合を止めて注意する方もいます。全県をあげて「やってはならない」という流れにすべきです。今後は、各チームのマナーや品格が問われるでしょう。
※注1 球数制限問題
以前から、高校野球ではピッチャーの投球数に制限を設けていないため、一人の絶対的エースを酷使し、投球過多の末に肩ヒジを故障する選手が多かった。故障の予防的措置として投球数に制限を設けるべきという意見がある一方で、反対意見も根強い。一律の制限は投手の枚数が少ないチームに不利なので慎重に議論すべき、全員がプロになるわけではないからと酷使を容認したり、野球がつまらなくなるといった見方がある。1990年夏の甲子園では大野倫(沖縄水産)が地区予選から痛み止めを服用しながら投げ続け、甲子園では773球を投じて疲労骨折し二度と投球できなくなった。しかし、昨夏の甲子園では吉田輝星(金足農)が一人で881球を投げ準優勝を果たしたが、肩ヒジに問題は生じていない。
※注2 サイン盗み問題
昔は制限がなかったが、現在はセカンドランナーが捕手のサインを見てバッターにコースや球種を伝達してはならないことになっている。今年のセンバツでは習志野vs星稜の試合中、習志野のセカンドランナーの動きが不自然で「球種やコースをバッターに伝達しているのではないか」と星稜ベンチからクレームがあった。結果は習志野が勝ったが、星稜の林監督は憤りを抑えきれず、試合後に控室に乗り込んで「フェアじゃない」と習志野の小林監督に直接猛抗議する異例の出来事が起きた。その後、星稜の林監督は学校から一連の言動を問題視され6月4日まで指導禁止とする懲戒処分を受け、サイン盗み問題はセンバツ後も話題になった。
昨年夏の準々決勝・土浦日大vs明秀学園日立において3対0で土浦日大リードの4回表無死二塁から土浦日大のセカンドランナー富田卓の動きが怪しいと明秀学園日立ベンチから球審にクレームがあった。その後も二塁にランナーが進むたびに明秀ベンチからクレームがあり中断した。この出来事を聞いたのか、準決勝(霞ケ浦)・決勝(常総学院)でも相手チームがセカンドランナーにナーバスになっていることが見て取れた。
3連覇をかけた土浦日大・小菅勲監督には、夏の大会直前のお忙しいなか時間を割いていただき、お話をうかがうことができた。夏に向けた意気込み以外にも、今話題の球数制限やサイン伝達についても率直にお話を聞けたことに感謝したい。
(聞き手・伊達康)
【茨城 高校野球展望’19】4 相手チーム対策は 土浦日大監督に聞く㊥
―よそのチームのことはあまり考えてないと思いますが、あえて意識するチームをあげるとしたら?
自分たちの野球をするのが第一だと思っています。ただ、常総学院の佐々木力監督は取手二高の同級生ですし、明秀学園日立や霞ケ浦は、甲子園に出るためには必ず立ちはだかる相手です。そういった相手チームの投手はこうで、打線はこうでという対策は、1年間、選手たちと考えを共有しながら取り組んできました。
―相手チーム対策については丸林直樹コーチの果たす役割が大きい?
大会では、アナリストを担当してもらっています。非常に選手も助かっていると思います。練習でも丸さん(丸林コーチ)がリードして、私も選手も「考えもしない」ような練習メニューの引き出しを持っています。
―一昨年、昨年と2連覇したことで、志望者が増えたり入部する選手の技術レベルが上がったりなどはありましたか?
本校は「文武不岐(ぶんぶふき)」を伝統としており勉強にも力を入れていて、野球だけやる子は来ていません。勉強も野球も一生懸命頑張るということで入部してくれています。本校はグラウンドのすぐ脇に寮がありまして、この環境は自分が伸びそうだといって来てくれる子が多いです。野球が大好きな生徒、一生懸命に練習に取り組んでくれる生徒は基本的に受け入れています。1学年で30人ほどの部員がいるのですが、ほとんどが寮生活をしたい、高校野球を全うしたいと希望して来ています。志望者が増えたかというと、増えたのかもしれないですが、特別技術レベルが上の子が来ているわけではないです。しかし、一つだけ言えるのは、みんな「やる気」があります。監督と選手の考えがマッチして同じベクトルを向いて練習できています。
―頭髪は自由とのことですが…
頭髪は全くもって自由です。結構みんな長いですね。エースの荒井なんかも髪の毛が伸びるのが早くて、ボサボサといっていいほどです。丸坊主にしたい子はしていますが、全体の1割弱です。これは自分で選んだ丸坊主なので。私は頭髪を自由にして良い効果があったと思いますし、なんで今までこんなつまらないことにこだわっていたのかなと。高校野球が始まって100年ですから。次の時代に向かって何か新しいことはできないかと考えたとき、頭髪は別に自由で良いのではないかと思い、自由にしました。
―頭髪が自由だからという理由で土浦日大を選んだ選手はいますか?
それはさすがにないと思います。自由な気風は大事にしたいですが、野球環境で選んでもらっていると思います。
―週に何度かは寮で過ごされますか?
金土日とか木金土とか、2~3日は寮に泊まります。選手の様子が分かったり、グラウンドから寮に帰って、気になった選手がいれば呼んで面談できますし、良い環境だと思います。
同門、常総学院・佐々木監督との距離感
―個人的に非常に興味があるのですが、常総学院の佐々木力監督とは今どういった距離感ですか?
まず木内(幸男)監督という偉大な指導者の薫陶を受けたこと、お互い選手として全国制覇した経験を次世代に伝える、義務というか使命を果たさなければならないと思っています。佐々木監督と面と向かってこの話をしたわけではありませんが、彼も同じように思っていると信じています。
距離感? 以前、私が県立高校に勤務していたときにはよく話したり食事したりしていたのですが、今の立場(土浦日大監督)になってから、野球の話は深くはしなくなりました。やはり同門下ですから、野球談義やチーム作りについては研究し合いたいと思っています。これは佐々木監督にかかわらず、他の指導者の方たちともそうしたいと思っています。しかし、手の内、腹の内は見せられないというのがお互いにあると思います。同じ釜の飯を食べた佐々木監督とは、お互いリタイアした後にでも「あのときこうだったよなあ」という話はしたいなと思っています。
―春は常総学院の菊田拡和選手に2本の特大ホームランを浴びました。菊田選手を小菅監督はどう評価していますか?
これまで25年くらい指導者をしてきましたけど、あれだけ飛距離がある子は初めてです。高校の時に見ていた清原和博選手(PL学園)の打球のような放物線に近いかもしれません。天性の素材を持ち合わせています。守備や走塁にも、まだまだ伸びしろがあるようです。是非プロ野球にいってホームラン王を獲れるような選手になってほしいと思います。(続く)
=聞き手・伊達康
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【茨城 高校野球展望’19】3 3連覇をかけた夏 土浦日大監督に聞く㊤
【伊達康】茨城では一昨年に小菅勲監督が就任からわずか1年3カ月で土浦日大を優勝に導き、昨年もドラマチックに連覇を遂げた。3連覇をかけた今大会をどのような心境で迎えるのか。小菅監督に意気込みを聞いた。
夏に照準を合わせてきた
―今年のチームの特徴を教えてください。
今年の3年生はみんな真面目です。練習に取り組む姿勢が良い。下級生の頃からチームワークが抜群でした。クレバーで、「野球勘」を持っている子が多い。打つか、守るかだったら守りのチームです。守りからリズムを作っていくゲームプランをしています。メンバーも上級生になってからレギュラーになった子が多く、去年から出ているのがキャプテンの石渡耀とショートの鶴見恵大くらい。私はチーム作りを急ぐ方ではなく、夏に照準を合わせていますので、上級生になってから試合に出るようになった選手は、夏直前になって良くなってきています。
―エースは左サイドの荒井勇人ですか。
そうですね。荒井は3年生ですし昨夏も経験しています。まずはエースが奮闘するのが高校野球です。荒井には頑張ってもらいたい。
―主に継投で試合を作っていきますか。
継投ありきというわけではありません。ですが、なるべく夏の大会は1人のピッチャーに負担をかけないようにという方針はあります。どうしても一発勝負なので流れが決まらないうちとか、単なるイニング数とか投球数だけでは代えられない部分があります。常にその場で、状況を見ながらの判断ということになります。
―2年生の右腕の中川竜哉は春休みの鹿児島遠征で好投したそうですね。
3カ月前と今では大違いかもしれません。ここに来て、どのチームの打線も春先のバッターではなく、夏大(なつたい)を迎えるバッターへと成長してきています。中川も、そうした打線と対決を繰り返し、課題を見つけ、もがきながら成長しています。まだ2年生なので、焦らず着実に伸びていってほしいと思います。
―荒井勇人投手以外に3年生のピッチャーは出てきていますか。
右オーバースローの山崎祐翔が最近急成長してきました。ここのところ、持ち前の実力を発揮できるようになってきました。6月上旬の土浦市内大会でも好投しています。夏前の3年生は「心の“整調”」を果たせば活躍できる要素を誰もが持っています。
甲子園を見続けてきた現3年生
―3連覇がかかる今年、ますます注目されています。是非意気込みをお聞かせ下さい。
この1年、私からも3年生からも「3連覇」というフレーズは使われたことはありません。しかしこの2年間、現3年生は甲子園出場を見続けています。スタンドやベンチの中で「さあ、いよいよ自分たちの出番が来た!」といった様子がうかがえます。プレーヤーとして、この3年間で初めての甲子園を狙う、といった感じです。
夏の大会はいつでも、「その年」「そのメンバー」で戦う「最初で最後の夏」なのです。その一期一会の場に臨む若者たちのパワーたるや恐るべきものがあります。自分たちを信じて、自分たちの培ってきた野球をどんな瞬間にも発揮し続けてほしい。結果にとらわれずに、大好きな高校野球を楽しんでほしい、そう願います。
―去年は富田卓投手(現・日大)がびっくりするくらい一冬越して伸びました。秋に大敗した相手である明秀学園日立戦ではものすごい気合と気迫でした。今年は一冬越えてガラッと変わったようなピッチャーは見受けられないと感じましたが、夏に向けての秘策とか、取り組みはありますか。
特別変わった練習はやりません。練習は日々の積み重ねこそが大事だと思っています。ですので、基礎基本の練習が全体の8割から9割を占めています。それを積み重ねたうえで、最後にどこの地点に到達するかということだと思います。たくさん食べさせたからとか走らせたからといって伸びるわけではない。富田もまさにそうで、日々地道に取り組んだ成果が最後の夏に花開いたということです。富田は友だち思いで、いつでもチームのことを考えていました。上級生になってからは人間的にも成長して、心身共にたくましくなりまして。「今年は自分が甲子園に連れていくんだ」という気迫も大いに感じました。(続く)
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【茨城 高校野球展望’19】2 土浦三、強豪私学と渡り合う力秘める
【伊達康】次につくば・土浦エリアのノーシード校を見ていこう。土浦工は秋に部員不足のため4校連合として出場し、春は地区予選で霞ケ浦に大敗。初戦は毎年しっかりと守れるチームを作ってくる難敵・麻生と対戦する。
土浦三は春の県大会初戦で下館工に4対6で惜敗も、エースで4番の濱崎鉄平(3年)が最速142キロを誇りツボにはまれば強豪私学とも渡り合う力を秘めている。初戦は牛久と、勝てば霞ケ浦と対戦する。
湖北に豪腕投手出現
土浦湖北は春の県大会初戦で多賀に敗退も、6月2日に行われた土浦市招待試合にて春の関東王者・東海大相模を相手に大坪誠之助(2年)が最速142キロをマーク。試合は0対10と大敗を喫したが、豪腕投手の出現に注目が集まっている。
土浦一は古宮学樹(3年)が140キロ近い力強いストレートを武器とする。佐野翔(3年)は分厚い体から柵越えが打てる強打者で、春の地区予選でも土浦日大エース荒井からレフトスタンドに放り込んだ。初戦は太田一と対戦する。
そのほかに土浦二は那珂湊と、つくば工科はつくば国際と、筑波は東海と1回戦で対戦する。いずれも勝機は十分にある。(続く)
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【茨城 高校野球展望’19】1 常総が優勝候補筆頭
【伊達康】7月6日に開幕する第101回全国高校野球選手権茨城大会の組み合わせ抽選会が21日に行われ対戦カードが決まった。参加93チーム(出場100校で4つの合同チームがある)のうち、春の県大会で4強に残った藤代、水戸商、常総学院、鹿島学園がAシードを獲得した。
140キロ超え3投手をひた隠し
3年ぶりの夏制覇を見据えた常総学院は、春の県大会で昨夏も中心となって登板したエース級右腕の塙雄裕(3年)や岡田幹太(3年)、菊地竜雅(2年)をあえてひた隠しに、ライバル校に球筋を明らかにしなかった。
この140キロ超え3投手を引っさげつつ、打線は高校通算54本塁打でプロ注目の強打者・菊田拡和(3年)や、長打にバントに補殺と何でもこなせる中妻翔(3年)など世代屈指の打者がそろっている常総学院が優勝候補の筆頭だ。
春優勝の藤代は投手力充実
秋準優勝、春優勝の藤代は最速142キロの中山航(3年)とスライダーの切れ味抜群の一條遥翔(3年)の右腕2枚看板を筆頭に投手力が充実している。
春に常総学院にサヨナラ勝ちで準優勝となった水戸商はエースで4番の小林嵩(3年)が投打をけん引しチーム力で追いすがる。
プロ注目投手擁す霞ケ浦
春県大会の初戦で明秀学園日立に乱打戦の末に敗れた霞ケ浦はDシードとなったが、プロ注目右腕・鈴木寛人(3年)や福浦太陽(3年)を擁し実力十分。夏は無難に勝ち上がるだろう。
Bシード・石岡一はセンバツに21世紀枠で出場し盛岡大附をあと一歩のところまで苦しめた。しかし春は初戦でエース右腕・岩本大地(3年)が大乱調で水戸商に惨敗。夏も岩本の調子次第だ。
Cシード・明秀学園日立は春の県大会3回戦で、優勝した藤代に2対3と惜敗した。北野凱士(3年)や高橋隆慶(3年)などが強打を誇り例年通り打線は強力だが投手力が例年に比べ劣る状況だ。そんな中、春に目覚ましい活躍をした右腕・佐藤紅琉(1年)が駒不足を解消する可能性を秘めている。
春4強の鹿島学園はびっくりするようなピッチャーはいないが、堅実につないで好機を作る。
土浦日大左腕は左打者翻弄
3連覇がかかっているCシード・土浦日大は変則左腕の荒井勇人(3年)が左打者を翻弄(ほんろう)するが、右の強打者にいかに対峙するかが見どころだ。キャプテンの石渡耀(3年)は華のある大型二塁手。
秋4強のBシード・水城はエースで4番の櫻井隼人(3年)が大黒柱だが、ここに春公式戦デビューを果たした1年生右腕の樫村佳歩が加わり投手層の厚みが増した。
Bシード・常磐大高は6月16日に行われた大分県高野連強化遠征にて春センバツ4強となった明豊を山田悠斗(3年)が完投して3対2で撃破。今夏の仕上がりはひと味違いそうだ。
Cシード・水戸癸陵は小橋一輝(3年)と定塚涼(3年)のダブルエースに安定感がある。
Cシード・つくば秀英は右腕の吉田青矢(3年)とBシード・竜ケ崎一の右腕・幸山耀平(3年)も好投手で打者の裏をかく能力が非常に高い。
秋春と結果を残せずノーシードとなった日立一は不気味な存在だ。(続く)