【相澤冬樹】国立科学博物館(科博、林良博館長)は27日、つくば市の科博筑波研究施設に報道関係者らを集め、約470万点に及ぶ科学系標本を収めた収蔵庫を特別公開した上で、「科学系博物館イノベーションセンター」(池本誠也センター長)の設立を発表した。これらのコレクションを、東京・上野の科博本館と結んでのバーチャル展示をはじめ、地方の科学博物館と連携しての巡回展などに役立てることで、博物館の経営資源としても活用、収益を研究人材の育成に振り向けていく枠組みを想定している。
同センターは政府の文化経済戦略(2017年度策定)に基づく立ち上げで、設立発表には宮田亮平文化庁長官、文科省の中村裕之政務官らも出席。力の入れようをうかがわせた。博物館資源を活用した経営基盤の強化、地域博物館も含めた事業活性化を取り組みの目標に掲げており、そのベースとなるのが筑波研究施設の約470万点に及ぶ標本資源だ。1877年に創立した科博の140年にわたる収集活動の成果だという。
この保管のため整備された筑波研究施設は2012年に開設、8階建ての自然史標本棟には各階1100平方メートルの標本室が確保され、植物、動物、地学、人類、理工学の研究部の標本が収められる。同じ敷地にある筑波実験植物園は一般に公開されているが、収蔵庫は科学技術週間の行事開催時を除き、一般公開されていない。
上野本館と結んでバーチャル展示
2001年に独立行政法人化された科博は当時90万人だった入場者を、第4期に入った現行の中期計画平均で267万人にまで増やしてきた。21年から5カ年の第5期では300万人にまで増やす計画を立てている。科博イノベーションプランと銘打っており、「科学を文化として育む博物館への展開」(林良博館長)を目指している。
入場者数には筑波実験植物園の分も含まれるが、同プランでも収蔵庫の公開は考えていない。標本管理のため温湿度や空調を一定に保つ必要などから公開が難しい。このためデジタルアーカイブ化して上野本館と結んだバーチャル展示などに活用する。
また各地の科学博物館に動物の骨格標本を貸し出したり、共同での巡回展も企画して、新たな収入確保につなげたい考え。センターは科博の横断的な組織として、11人のスタッフにより立ち上げており、来年度には「化石」をテーマにした事業が具体的に動く見通しになっている。