茨城県南に競馬場があれば…《遊民通信》91
【コラム・田口哲郎】
前略
美浦トレーニングセンターは日本中央競馬会(JRA)の施設です。日本に2つしかないトレセンが茨城県の美浦村にあります。もうひとつは滋賀県の栗東です。
ウィキペディアには、トレセンとは「競馬において、競走馬の管理・調教を行うために各競馬施行体が建設した施設群のこと」とあります。要するに、競馬を開催するために必要な競走馬の育成、騎手の養成という大事なことを行っている、競馬に欠かせない施設ということになります。
美浦の馬は主に東側で開催される競馬―東京、中山、新潟、福島、函館、札幌―に競走馬と騎手を送り出しています。もちろん中京、京都や阪神、小倉でも関東馬が活躍することはあります。
そんな主要な施設が茨城県南にあるのは素晴らしいことですね。広大な平坦な土地があることがメリットでしょうか(平坦ばかりでは馬の調教には良くなかったようで、調教師さんたちは苦労されたようですが)。昔は成田にも皇室の御料牧場があって、軍馬を育成していたようですが、それは関東が古来馬の産地だったからだそうです。
新たな競馬場に最適な県南
さて、私はたまに東京競馬場や中山競馬場に行って、レースを鑑賞するのが好きです。少額掛けて、勝負を楽しむドキドキ感が非日常を与えてくれます。いまは競馬場にも、女性、子どもも増えて、男性だけの娯楽ではなくなりつつあります。競馬場に来ている人びとを見ていると、みんな楽しそうです。
賭け事ですから真剣ですが、みんな楽しんでいるのがよくわかります。馬群の重低音の足音、ゴール前、歓声の中を駆け抜けるジョッキーのかっこよさ。なんといっても頑張って走るサラブレッドたちの勇姿と愛らしさ。競馬場はとてもきれいで明るい娯楽施設になっていると思います。
東京や中山から帰ってくるたびに思うのは、茨城県南にも競馬場があればよいのに、ということです。美浦のトレセンも近くにあることだし、競馬場へ輸送される際の負担も減らせるでしょう。どこかの競馬場の代わりに、というのではありません。もうひとつ新しく競馬場を建てるのです。サラブレットが余っているとも聞きます。レースの機会が増えれば、今後の競馬の発展にもつながると思います。
たとえば、阿見の二所ノ関部屋の後ろには広大な田畑が広がっています。ひたち野うしく駅にも近いです。
田園のなかの競馬場。昔は府中の東京競馬場も中山競馬場もこうした風景のなかにあったのだと思います。治安の問題など解決しなければならないこともありますし、環境破壊の問題もあるでしょう。しかし、自然との共生を目指す娯楽は新たな可能性を街に与えてくれる気がします。緑豊かな街のなかの競馬場…都会の競馬場に行くたびに夢見てしまいます。ごきげんよう。
草々
(散歩好きの文明批評家)
パリ五輪へ 筑波大、選手や競技役員ら多数輩出
大岩剛監督「決勝進出めざす」
7月26日から8月11日まで開催されるパリオリンピック2024に向け、選手ばかりでなく競技役員を含め多数を輩出する筑波大学(つくば市天王台、永田恭介学長)の陣容が整ってきた。27日には、筑波大出身で男子サッカー23歳以下日本代表を指揮する大岩剛監督(51)がつくば市を表敬訪問し、五十嵐立青市長らの激励を受けた。
表敬訪問は、大岩監督がスポーツアドバイザーを務める関彰商事の仲立ちで実現した。在学中の恩師である同市の萩原武久スポーツ担当理事らが同席した。
大岩監督は「パリが会場となる決勝に進むこと。金か銀かいずれかのメダルが確定し、メキシコ五輪の銅以上の成績となる」ことを目標に掲げた。萩原理事は「五輪出場を決めたアジアカップの戦いは感動的だった。ある意味、五輪はワールドカップよりも注目度が高いイベントで、子供たちに夢を与える舞台にしてほしい」と激励した。
大岩監督は筑波大に1991年から94年に在籍し、卒業後Jリーグの名古屋や鹿島で活躍、日本代表にも選出された。2017年から鹿島の監督を務め18年にはアジアチャンピオンズリーグを制覇。22年に21歳以下の日本代表監督となり、今年のU23アジアカップで優勝してパリの切符をつかんだ。「いい準備ができている」という。
23歳以下日本代表は7月11日にフランスに旅立ち、マルセイユで事前キャンプの後、24日の初戦でパラグアイ、27日の第2戦でマリ、30日の第3戦でイスラエルと対戦する。24歳以上の特別枠オーバーエージ(OA)の有無などで注目される18人のメンバーは3日に発表の予定だ。
7月4日に壮行会
筑波大学は7月4日午後、大学会館に出場内定選手らを集め壮行会を開催する。今回の五輪選手団では団長、副団長を同大学出身者が務めるという陣容で、過去133個ものメダルを獲得した同大学の五輪への新たな挑戦が始まる。
これまでに内定した選手(敬称略)は、永瀬貴規(柔道、体育専門学群卒業)、柄本遼香(飛込、人間総合科学学術院人間総合科学研究群在籍)、森秋彩(クライミング、体育専門学群在籍)らで、有力なメダル候補を含む。内定者数は「7月上旬にかけさらに続々増えるだろう」と高木英樹体育スポーツ局長。
日本選手団は海外で行われる五輪では史上最多となる400人余りとなる見通し。選手団長を務める尾縣貢さんは陸上競技者で筑波大学大学院人間総合科学研究科教授。同大体育専門学群卒、同大学院修了、東京五輪2020では日本選手団の総監督を務めた。今回の選手団副団長は2004年アテネ五輪、08年北京五輪で金メダルの谷本歩実氏(柔道、体育専門学群卒業)が務める。
4日の壮行会には、これら内定選手に加え、パラリンピック競技の藤原大輔(パラバドミントン、体育専門学群卒業)、高橋利恵子(ゴールボール、人間総合科学学術院障害者科学学位プログラム修了)が出席する。同日午後3時からはフランス外務省と連携して、社会におけるスポーツの意味と可能性をテーマにした日仏討論会も予定されている。(相澤冬樹)
➡子供たちに向けた大岩監督のメッセージ
https://youtu.be/xo-fPkDsf9o
ヘラルボニー設計 福祉の店がつくば市役所にオープン
障害との出会いの場に
つくば市役所(つくば市研究学園)の正面玄関を入ってすぐのスペースに、福祉事業所の商品を扱う店舗「融点」が27日オープンした。店舗の設計・プロデュースは、障害のある作家の展示会開催や作品を取り入れた商品を開発するヘラルボニー(岩手県盛岡市、松田崇弥・松田文登社長)が担当した。運営するのは市内で活動する15事業所による任意団体「つくば市『福祉のお店』を運営する会」(高野智史会長)。
福祉の店はこれまで期間限定のイベントとして年に数回、市役所で開催していた。常設店舗を設置した理由は、継続的な売り上げをつくることで、店舗で働く障害者の賃金向上を目指すと共に、市役所を訪れる市民と障害がある人たちの接点をつくるためだとする。
店舗には、運営する会に参加する各事業所でつくる農作物や卵、飲料、パン、バッグなどの雑貨、約100点が並ぶ。美術展示ギャラリーを意識した店内には、それぞれの商品に込められた作り手の思いがキャプションとして添えられている。
店舗運営にかかる経費は運営する会が負担する。店舗には各事業所の職員と、事業所を利用する障害当事者数名が立ち、販売された商品の代金から、人件費と手数料を引いた金額が各事業所に支払われる仕組みだ。場所は市が無償で貸し出す。
運営する会の代表で、市内で障害者の就労支援B型事業「ごきげんファーム」などを運営するNPOユアフィールドつくば副代表理事の高野智史さん(37)は「つくば市の自立支援協議会に参加する福祉事業者の中から『事業所で作る商品をもっと広げたい』と話が上がったことがきっかけになり、立ち上がった企画。それぞれの事業所が作る製品の魅力と質を向上させていくためにも、事業所同士で連携、切磋琢磨し、地域に愛されるお店にしていけるよう協力していきたい」と語った。
店舗を設計・プロデュースしたヘラルボニーの松田崇弥社長は「障害のある自身の兄の存在が事業のきっかけになった」と話す。つくば市との出会いのきっかけを、つくばで障害者のアート活動に取り組む自然生クラブとアート契約を結んだことだとし、「今回が行政との初めての仕事の機会になった。つくばは先進都市でいろいろなところにチャレンジしている街という印象。市長からは『縛られずに自由にやって欲しい』と言われ、ありがたい機会になった」と話す。また「これまでしてきたギャラリーなどでの仕事が生かされた店舗設計。それぞれの商品の作品性の高さを感じてもらいたい」とし、「店名の『融点』という言葉が示すように(作り手である障害のある人たちの)温度を感じてもらい、この場を訪れる人たちの気持ちが変化し、たくさんの市民に愛されるお店になってほしい」と語った。ヘラルボニーに対する委託費はホームページの作成を含め約1500万円という。
オープン式典であいさつに立った五十嵐立青市長は「『溶け合う』ことがコンセプト。買い物にくる人がここで働く(障害のある)人と対話をして、福祉に持っていた思い、考え方が解けていく場所になれば」と話した。
店舗に並ぶ卵を提供する「ごきげんファーム」養鶏担当の齋藤蓮さん(23)は「事業所のみんなと心を込めて作った卵。お店ができて自分もうれしい。みんなでおいしく食べてほしい」と思いを込めた。(柴田大輔)
3年連続の赤字 つくばまちなかデザイン23年度決算
つくば市議会つくば中心市街地まちづくり調査特別委員会(塩田尚委員長)が26日開かれ、市が出資するまちづくり会社「つくばまちなかデザイン」(同市吾妻、つくばセンタービル内、内山博文社長)が2023年度決算(23年4月-24年3月)と24年度の見通しなどについて報告した。通常事業の収支である23年度の経常損益は約188万円(税引前)の赤字で、設立以後3年連続の赤字となった。内山社長は、貸しオフィスのテナントが退去し空き区画が発生したほか、「黒字化させることを目指したが(ロボット配送の)受託事業が1月で中止となった」ためだとしている。
24年度は、つくばセンタービル4階の吾妻交流センター跡地にオフィスを整備する改修工事などのため経常損益は2450万円の赤字を見込む。
一方、つくばセンタービル1階を貸しオフィスなどに改修する際に調達した社債約3億1600万円の元本返済が24年度から始まり、24年度は500万円、25年度は2000万円の返済が新たに求められる。
売り上げ1.7倍
23年度の売上高は前年度の1.7倍の約1億4900万円となり、売上高から売上原価や販売費及び一般管理費などの経費を差し引いた、本業で稼いだ営業利益は約600万円になった。一方、利息などの返済に約862万円かかり、約188万円の赤字となった。これにより23年度末の負債残高は約3億4600万円、純資産合計は約6650万円となった。
各事業の内訳は、貸しオフィスやコワーキングスペース(共同オフィス)、カフェなどつくばセンタービル1階のco-en(コーエン)事業は、売上が約4630万円、粗利益は約52万円になった。コワーキングスペースは月額会員が23年度末で56人、ビジター会員利用者は1375人と増えているのに対し、貸しオフィスは急きょ退去したテナントがあった。
地下駐車場は、新型コロナが5類に移行しイベントなどが多数開催されたことから、売上は月100万円を超え計約1360万円となり、粗利益は630万円となった。
つくばエキスポセンターのカフェは、夏休みなど学校の長期休暇期間を除いて週末のみの営業となっていることから、施設としての売上は約2100万円、同社の粗利益は約53万円となった。
23年4月からつくばセンター広場の指定管理者となり、つくばセンタービルのペデストリアンデッキなどを活用したにぎわいづくり事業として、市民がイベントを開催しやすくするためのアドバイスや物品の貸し出しなど29件を支援したほか、イベントが少なくなる夏季にウォータースライダーやプールなど子供が水遊びを楽しめる自主事業を開催し6日間で1454人が利用した。
コンサルタントなどの受託事業は前年度に引き続き、新規建設のマンションに隣接する吾妻1丁目のろくまる公園についてマンション開発事業者から公園リニューアル案の作成業務を受託したほか、スーパーから各家庭などに商品をロボットで配送するサービスの運営を受託した。ほかにつくば駅周辺で実施の実証実験のアドバイザー、県外のまちづくりに関するアドバイザーを受託し、計約6400万円の売り上げがあり、71%の4600万円の粗利益があった。
ほかに、中心市街地のイベント情報を発信するSNSのリニューアル、駅周辺マンションの入居を共同でPRする移住サイトの立ち上げ、県内の飲食店の加工食品を販売する冷凍自動販売機の運営、地域通貨の運営などに取り組んだとしている。
オフィス増設、こども実験教室やカルチャースクール
24年度については、co-enの2期工事に着工し、4階の吾妻交流センター跡地約550平方メートルに20~80平方メートル程度の貸しオフィス7区画などを整備する。ほかに1階を一部改修し、コワーキングスペースを拡張するほか、新たに研究者や企業と連携し子供たちに科学を体験してもらう「こども実験教室」や、ヨガ、親子イベント、スポーツ教室、アート体験などの「カルチャースクール」を開催する計画という。
2期工事の事業費は5000万円弱で、9月に着工、4階のオフィスは12月にオープンし、1階の科学教室などは来年4月から開講する予定だ。(鈴木宏子)
おくすり手帳《くずかごのうた》140
【コラム・奧井登美子】
「処方箋をいただきます。お薬手帳はお持ちですか?」
「内科の手帳なら家にあります。でも、今日は花粉症がひどくて、ひどくて、耳鼻科を受診しました」
「お薬手帳は、大事な健康データなので、医院が違っても、科が違っても、むしろ違った時こそ、普段どんな薬を飲んでいるか分かりますので、大切なのです。今日の薬は印刷した紙をお渡ししますので、その手帳にお貼りください」
お薬手帳はひとり一冊。医療データの記録が大事なので、薬の記録のほかにも医者に言われた大事なことは忘れないように手帳に書いておくこと―と、口をすっぱくして言っているのに、まだ、よく使い方が分かっていない人も多い。
薬というものは、有効性も、副作用も、個人差が大きい。医者、薬剤師、医療従事者―誰が見てもわかるように記録しておかないと、その人にふさわしい医療が成立しない。
和紙や和布で表装してみた
お薬手帳を大事にしすぎて、バッグから取り出すのに時間のかかる友達がいた。私が透明なプラスチックのカバーに、ものすごく派手な柄の和紙を両面テープで張り付けてプレゼントしたら、とても喜んでくれた。
高価な牛革の立派なケースを買ったけれど、持って歩くのに、バッグが重くなってしまって、どうしたらいいか困ってしまっていたという。
和紙や和布なら軽いし、バッグを開けた時にどこに入っているかが、すぐ色でわかる。私は自分のお薬手帳をコピーして、1冊は「緊急脱出用薬袋」の中に入れてある。持ち歩きのお薬手帳カバーに、亡くなったおばあちゃんが大好きだった紫色の羽織の端切れを張り付けてみた。
おばあちゃんは天国にいるけれど、いつも、いつも、働き過ぎだった私の健康を気遣ってくれていた。「登美ちゃん。飛び回っているけれど、けがしないように神様に祈っている。3人の子育て、薬局の仕事で忙しい。おじいさんの介護は私がするから大丈夫よ」(随筆家、薬剤師)
住民税変更通知書の摘要欄に誤記載 つくば市 電子送信の64社110人分
つくば市は26日、市が会社などに14日電子送信した従業員らの住民税変更通知書(市民税・県民税・森林環境税特別徴収税額の決定・変更通知書)について、64事業者の給与所得者ら110人の摘要欄に、誤った税額控除を記載してしまったと発表した。個人情報の流出はなく、徴収税額自体に誤りはないという。
市市民税課によると、今年度分の住民税決定通知書を5月14日に各事業者に送付した後、変更があった分について6月14日、67事業者に115人分の変更通知書を電子送信した。そのうち64事業者110人分の摘要欄に、「寄付金税額控除 〇〇円」「住宅借入金特別控除 〇〇円」など、別人の税額控除の項目と金額を記載してしまったという。
誤記載の原因は、市から変更通知書の作成を請け負った委託業者が、誤ったプログラムで処理をしたため。さらに市職員の確認が不十分だったとしている。
同課は、同日、誤記載があった事業者に電話で謝罪した上で、正しい住民税変更通知書を再度、電子送信した。
再発防止策として同課は、委託業者に対しプログラム内容の確認を強化するよう指示するほか、市職員による納品時のチェック体制を強化するとしている。
生産者紹介サイト立ち上げ つくばに移住し農業をプロデュース
野菜の卸を通じて農業をプロデュースする「よろぎ野.菜よろぎの」(つくば市万博公園西、吉田巧代表)は26日までに、農家自らが情報発信できるオンラインプラットフォーム「いばれる農産人のうさんじん生産者紹介サイト」を開設した。農業におけるモノ・ヒト・チイキをブランド化するプロジェクトの第1弾に位置付け、まずは掲載希望農家の募集を開始した。
つくば市に2011年3月に起業した同社は現在、茨城をはじめ全国各地の農家約100軒と契約し、生産野菜を飲食店や食品スーパーなど約30企業に納入する卸販売を行っている。取引先開拓を続ける中で、これ以上の販売促進には特に生産者のブランド化が不可欠と考えた。
生産者は気候変動の中で作物の安定的な収量確保に毎年のように苦戦しており、流通側はフードロスの抑止や運転手確保の2024年問題に苦慮している。この両者をダイレクトにつなぐのが同社の立ち位置。今回立ち上げたサイトは消費者向けではないが、スーパーや飲食店が、掲載されている生産者に直接コンタクトを取ることができるのが特徴。流通面についても必要に応じて、同社による橋渡しが可能としている。
同社では近年、ドローンによる栽培管理の効率化やIoT化に業容を拡大している。生産者はこれらに積極的に取り組んでいるものの、企業向けの販売促進には手が回らない。約100件の農家のうち自前のホームページを持っているのは5指に満たない。X(旧ツイッター)などのSNS素材では、販促材料として企業へのプレゼンに使えなかった。
オンラインプラットフォームでは、 同社が運営管理者となって写真撮影や記事作成のバックアップ、サイトの告知などを行う。吉田代表によれば生産者の「顔が見える」形で農産物が迅速に流通する仕組みという。
サイトでは生産者、生産地、生産物の3つのカテゴリー別に欲しい情報にアクセスできる。始まったばかりで掲載生産者は県内の2軒、農産物はトマト、トウモロコシ、コメの3種にとどまるが「茨城にとどまることなくネットワークを広げていきたい」と吉田代表。神奈川県出身、OA機器の営業職から脱サラして、茨城に2008年に移住。「産地も販売先もあるが加工部門がないのが茨城の不満」という46歳だ。(相澤冬樹)
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きみは影《短いおはなし》28
【ノベル・伊東葎花】
学校の帰り道、友達が僕の足元を指さした。
「タケシくん、影がないよ」
見ると、こんなに陽が照っているのに、僕の影だけがなかった。
「こわい! タケシくん、妖怪なの?」
「タケシくん、妖怪だ、逃げろ、逃げろ」
僕は泣きながら家に帰った。洗濯物を取り込んでいたお母さんが「どうしたの?」と言った。
「お母さん、僕の影がないんだ。僕、人間じゃないんだ」
お母さんは笑いながら、僕のあたまを優しくなでた。
「バカねえ。タケシは人間だよ」
「だって影が…」
「あのね、タケシ。影はね、ときどきいなくなるんだよ。ときどきどこかに遊びに行くんだ」
「そうなの?」
「そうよ。ほら、もう戻ってきたよ。足元を見てごらん」
下を見ると、僕の影はちゃんとあった。お母さんの影と並んで、長く伸びていた。
それから僕は、歩く人の影を見るようになった。お母さんが言う通りだ。ときどき、影のない人がいる。影も遊びに行くんだ。影もたまには遊びたいんだ。僕たちと同じだ。
夏休みになった。僕は部屋で、ダラダラと宿題をやっていた。
『出かけないのかい?』
足もとから、声がした。
「だれ?」
『きみの影だよ。今日はちょっと遊びに行こうと思っているんだけど、きみが外へ出てくれないとボクも遊びに行けないんだ』
影の声だ。影が僕に話しかけている。ワクワクした。
「どこに遊びに行くの?」
『いろんな所さ』
「何をして遊ぶの?」
『木に登ったり、ジャングルジムの天辺に登ったりするんだ。何しろいつも地べたを這っているからね。高いところで遊ぶんだ』
「ふうん。楽しそうだね」
『代わるかい? ボクが宿題をやってあげるから、きみが遊びに行ってきなよ』
「いいの? でも、そんなことできるの?」
『うん、できるよ。簡単だよ。きみはちょっと遊んで、すぐに戻ってくればいいのさ』
「わかった」
外に出ると、影は僕の姿になった。そして僕は、まっ黒な影になった。さあ遊びに行こうと思ったけれど、僕は動けなかった。僕は、僕になった影の足元で、地べたを這っていた。ニセモノの僕の動きに合わせて、ずるずると引きずられる影になった。「話がちがうよ」と叫んでも、ニセモノの僕は知らんぷりで歩いている。戻りたいと願っても、どうすることもできない。
「タケシ」
お母さんが、外に出て来た。
「一緒に買い物に行こうか」
「うん。行く行く」
僕になった影が、お母さんと並んで歩き出した。
僕は必死で訴えた。
『お母さん、そいつは影だよ。僕はこっちだよ』
お母さんではなく、お母さんの影が答えた。
『タケシ、あんたもだまされたんだね』
お母さんは地べたを這いながら、諦めたように言った。
『大丈夫。そのうち慣れるから』
影になったまま、夏休みが終わった。学校の帰り道、僕になった影が、友達の足元を指さした。
「ゆかりちゃん、影がないよ」
ああ、ゆかりちゃん、きみももうすぐ影になるんだね。大丈夫。そのうち慣れるよ。(作家)
議会から懸念相次ぐ 8月につくば市全域で実証実験 オンデマンド移動期日前投票
最終判断は9月2日 市選管で
ワゴン車に投票箱を積んで自宅前まで出向くオンデマンド型移動期日前投票について、つくば市は10月の市長選・市議選での導入を目指し、8月に市全域で実証実験となる模擬投票を実施する方針を25日開かれた市議会総務文教委員会(木村修寿委員長)で明らかにした。オンデマンド移動期日前投票に対してはこれまで市選挙管理委員会が2度も「時期尚早」だとする見解を出している(5月30日付、6月3日付)。25日の委員会では「(市は)どうやっても突き進むのか」など懸念の声が相次いだ。10月の選挙で実施するか否かの最終判断は、9月2日開催の市選挙管理委員会で出される。
五十嵐立青市長は2021年5月、内閣府の国家戦略特区ワーキンググループに「3年後(2024年)の市長、市議会議員選挙で、必ずネット投票を導入したい」とアピールし、市は22年4月、インターネット投票を看板事業に、国からスーパーシティ型国家戦略特区の認定を受けた(22年8月3日付)。一方、投票の秘密を守る環境の確保や、買収や強要の懸念などネット投票に対する課題が解決されず、今年10月の選挙では導入することができない。これに対し五十嵐市長は、ネット投票導入につながるステップだと位置づけ、オンデマンド移動期日前投票を10月の選挙で実施したい意向だ。今年1月には市北部の筑波と臼井地区で実証実験を実施した(1月26日付)。
7月1日から2000人超に案内を発送
市政策イノベーション部によると、8月の実証実験に向けて7月1日から、自力で歩くことが難しい市全域の要介護度3や4などの対象者2000人から2500人にダイレクトメールで、管理番号を記載した案内を送る。7月4日から18日に電話または市ホームページの電子申請により事前申請を受け付け、併せて市職員が申請者宅に行き、ワゴン車が自宅敷地内に入れるか、自宅からワゴン車までの介助の有無や動線、ニーズなどを確認する。
さらに7月22日~8月2日まで模擬投票の予約を受け付け、8月6~9日までの4日間、ワゴン車2台が北部と南部に分かれてそれぞれ申請者宅を巡回し模擬投票を実施する予定だ。ワゴン車はリフト付きで、申請者は車椅子のまま乗り込み、車内で投票する。
ワゴン車が自宅に駐車できない場合などは、近くの駐車スペースにワゴン車を駐車し、介護タクシーが自宅から送迎などする。申請者は100人程度を想定している。市全域での検証結果や対策を8月中にまとめ。市選管の判断を仰ぐ。
これに対し25日の委員会では委員から「選挙は、失敗は許されない。かなりタイトな日程で、9月2日の1回の選管で協議して判断できるか疑問というか大変」という意見や、「実証実験は周知期間がほとんど無いが、本番は全国に報道されると思うので申込者はもっと増えると思う。実証できても実装できるとは限らない。コストをどこまでかけるか考えた時、このやり方は無理がある。タクシー券を配るので、自力でタクシーに乗れない人は介護福祉タクシーに手伝ってもらって期日前投票所に行くのはどうか。通常の選挙でもミス無くやるのは難しいことは実証されている。選管本来の業務にほころびが出ないか」など、ほぼ全員の委員から懸念が出された。
1月の実証実験は9000万円
さらに実証実験の予算について、今年1月26日に市北部の筑波地区と臼井地区で実施されたオンデマンド型移動期日前投票の実証実験では、予約システムと運行ルートの最適化システムの構築や、影響評価などに計約9000万円の国の事業費をかけていたことが明らかとなった。
8月の実証実験の予算について市は、10月の選挙と一体のものとして、当初予算で計上されている市長選・市議選の予算の中で実施するとし、8月の実証実験に関する予算を別途計上し市議会に諮るべきだとする委員との間で議論になる場面もあった。8月の実証実験にいくらかかるかは委員会で明らかにされなかった。市は当初予算として市長・市議選オンデマンド型移動期日前投票事業に約1300万円を計上している。(鈴木宏子)
苦手克服へ子どもたちがチャレンジ 放課後体育館でNPOが運動教室
放課後の体育館を使った運動教室で、子どもたちがとび箱やマット運動などの練習を行っている。教室を運営しているのはNPO法人ネクストワン(Next one. つくば市松代、井上真理子代表)だ。発足して12年、子どもたちが苦手を克服し自分で目標を設定しチャレンジする心を育てたいと、つくば市の学校体育施設開放事業を活用して小学校の体育館で活動を続けている。
6月下旬、谷田部南小学校に5歳から小学6年生までの子ども約20人が集まり、それぞれが目標とするとび箱や鉄棒など、学校の授業で習う種目を40分間練習した。教室は1回70分で全8回のプログラム。この日はプログラムの最終日で、練習した後にこれまでの成果を披露する発表会が行われる。諦めず、同じ技を何度も繰り返す子どもたちの様子を家族も見守った。「出来てるよ」「その調子」と声掛けをしながら、子どもたちを見守りサポートするのは、代表の井上さんと筑波大学の学生たちだ。
応援し合って成果を披露
練習の後はいよいよ発表会。一人一人が目標にしている技を全員の前で披露した。「仲間を応援しましょう」という井上さんの声掛けで、子どもたちから「頑張れー!頑張れー!」と声が上がる。小学4年の小田部翠葉さんは連続逆上がりを見事に成功させて笑顔。仲間たちから拍手喝さいが起こった。「プログラムに参加して楽しかった。今日は緊張感ゼロでやれた」。小学2年の芝山優衣さんも逆上がりに成功し、これで器械運動の技12種に合格したという。修了証書を手に「サッカーが好き。ワールドカップに出るのが目標」と夢を話した。
筑波大の学生が見守る
子どもたちをサポートしたスタッフの森洸輔さんは体育専門学群の4年生。「子どもたちは本当に素直。声の掛け方次第で子どもたちの力を引き出せるのが楽しく、勉強になる」と話す。教育分野で仕事をすることも夢の一つという。国際総合学類2年の加藤梓栞(しおり)さんは、小児看護を勉強する先輩がスタッフとして活動しており、その紹介で参加した。「子どもが好きで、運動やコミュニケーションも好き。発展途上国の教育制度の問題にも興味を持っている」と話す。
外遊びやアウトドアキャンプも
代表の井上さんも筑波大大学院で体育科学を修了した指導者だ。運動が苦手な子どもも楽しみながら練習できることを目指し、教室を運営している。市の学校体育施設開放事業を利用した「うんどう・たいいく教室」のほか、様々なスポーツ種目のプロ選手などに直接指導を受けられる「スポーツ探検隊」、外遊びで体を動かす「あそびクラブ」、アウトドアキャンプを体験する「ちゃれんじキャンプ」など、子どもたちの心身を養う教室を企画し、ホームページ制作からチラシ作りまで、全て自分で行う。今年度は4月から延べ270人が市内外から教室に参加している。
やった人にしか分からない学びがある
井上さんは大学で小中高の教員免許を取得し、大学院で体育科学の修士課程を修了した。卒業後、生涯スポーツを振興するNPO法人アクティブつくば(同市春日)で活動した。アクティブつくばの事業の一部を引き継いで、2012年にネクストワンを立ち上げ活動を続けている。
学生時代、学校と部活が大好きだったという井上さん。「勝てないソフトボールの部活動が楽しかった」と笑う。高校では理系に進み、一時は大好きな学校を建てる建築士になることを目指した。受験勉強をしながらスポーツと関わらない1年を送る中、自分にとって体を動かすことがとても大切だと気付き、スポーツを学びたいと進路を変更した。「あいさつや人との関わり方、目上の人への対応などスポーツや部活を通して大事なことを学んだ。その種目をやった人にしか分からない学びがある。学校やどこかで誰かにほめられるとうれしい。ネクストワンの活動で何かを得た人が、次に何かを発信できる人になってほしい」と話す。(田中めぐみ)
◆「スポーツ探検隊」では7月に県障害者パラカヌー協会代表の朝日省一さんを講師としたパラカヌー、サッカーやサーフィンの体験を企画している。詳細は同会ホームページへ。
