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2023
「超断熱素材」売り出し中のNIMS発ベンチャーに大賞 いばらきイノベーションアワード授賞式
2023年12月7日
第4回いばらきイノベーションアワード(同アワード実行委員会制定)の授賞式が8日、水戸市の茨城県庁で行われた。賞金100万円の大賞受賞のThermalytica(サーマリティカ、本社・つくば市桜、小沼和夫代表)と優秀賞受賞の3企業に大井川和彦知事から表彰状が手渡された。 同アワードは先端技術を活用した新製品や新サービスを対象に募集し、革新性や市場性を評価し顕彰する事業。茨城県が事務局となる。今回大賞に選ばれたのは、断熱材「TIISA(ティーサ)」を開発し、本格的な事業展開に乗り出したサーマリティカ社。物質・材料研究機構(つくば市)の研究成果をもとに、2021年起業したNIMS発ベンチャーだ。 「TIISA」は、エアロゲル(酸化シリコン)の一種で、特殊な微細構造により、軽量かつ液体のような流動性を持つ粒子として開発された。市販の断熱材よりも桁違いに高い断熱性と遮炎性(耐火性)を備えており、「超断熱素材」として売り出している。断熱塗料として利用できるので、建物の断熱性や工場の加熱設備の保温性を高めることで地域の省エネルギーに貢献できるという。 加えてマイナス253℃の極低温でも優れた断熱性能を発揮するため、極低温保冷断熱材として非常に高い優位性を持つ。また、液化水素の保冷材として利用すれば水素の気化損失を大幅に防ぎ、地域の水素利用の促進に貢献できるとしている。建設関係から自動車、家電など各方面から照会や提案を受けており、同社はこの春、新たな資金として1億1250万円を調達、素材の量産化と多用途対応に乗り出している。 この成果に大井川知事は「夏の暑さがこたえる昨今、塗るだけで断熱効果が期待できるという素材はインパクトある。急いでビジネスチャンスをつかんでいってほしい」とエールを送った。 小沼和夫代表は「断熱材は今役に立つ技術だが、一方で水素社会に向けた脱炭素をはじめとする環境関係から多くの引き合いをいただいて手ごたえを感じており、今回の表彰を励みにしていきたい」と語った。(相澤冬樹) ◆このほか、優秀賞の3社は次の通り。(県外本社企業も県内に研究拠点などを有している)▽Octa Robotics(本社・埼玉県さいたま市、鍋嶌厚太CEO、前川幸士COO)自律移動型サービスロボットを、エレベーター・自動ドア等の設備と連携させるサービス「LCI」▽クォンタムフラワーズ&フーズ(本社・水戸市、菊池伯夫代表)中性子線照射による突然変異の誘発を利用し、生物資源の開発改良を行うサービス▽ピクシーダストテクノロジーズ(本社・東京都中央区、落合陽一代表、村上泰一郎代表)誰が何を話しているかをリアルタイムで可視化し、聴覚障がい者と聴者をつなぐサービス「VUEVO(ビューボ)」
鉄道ファン格好の撮影アングル、10日で見納め 土浦
2023年12月7日
二番橋8日開通 一番橋は通行止め、撤去へ JR常磐線をまたぎ土浦市富士崎2丁目と小松ケ丘町を結ぶ跨線(こせん)人道橋、通称「二番橋」が8日午前10時に開通する。昨年9月から通行止めとなり、架け替え工事が行われていた。この開通を待って11日には、同じく通称「一番橋」が通行止めとなり、解体・撤去工事が始まる。二番橋は自転車歩行者用の橋。土浦市が管理する市道で、常磐線3号橋が正式名称。同4号橋が正式名称の一番橋の撤去とセットになった工事で、21年6月からJRの関連会社が基礎工事や橋脚の設置を行い、市が橋げた製作と橋面舗装を行ってきた。延長32メートル、幅員3.7メートル、開通後も自動車の通行はできない。隣り合う2橋は2016年の点検で、構造物の機能に支障が生じる可能性があり、早期に措置を講ずべき状態であると位置付けられた。橋脚や手すりに古レールを使った構造で、建設時期は不明ながら戦前にさかのぼると見られ、老朽化が著しかった。17年度の交通量調査(日量)では一番橋が63人、二番橋が450人だったことから、二番橋のみ架け替えし、一番橋は撤去することになった。 8日の開通は渡り初めなどのイベントはなく、一連の事業は11日から一番橋の解体・撤去に移る。同橋は土浦市街地をふかんするロケーションにあり、鉄道写真ファンには格好の撮影スポットになっていた。撤去工事は来年5、6月ごろまでに完了する。同市道路建設課によれば、常磐線の環境整備などを含む全体事業費は約11億円になる見通し。同市には常磐線をまたぐ市道が1号橋(荒川沖)から6号橋(神立町)まであるが、一番橋の撤去により4号橋は欠番になるという。地元、小松ケ丘町の松下恒正区長は「安全面から架け替えは待ち遠しかった。生活道路として大切に使っていきたい。一番橋が無くなるのはさびしいけれど、歴史的な古道の上にある橋、二番橋の名が残されてよかった」と語る。橋名を示すプレートには「常磐線3号橋(二番橋)」と記されている。(相澤冬樹)(相澤冬樹) ➡一番橋と二番橋の過去記事はこちら(2018年2月6日付、22年9月24日付)
巨大都市パリの郊外から見えるもの《遊民通信》78
2023年12月7日
【コラム・田口哲郎】 前略 先日、NHKのBSで「地下鉄のザジ」というルイ・マル監督のフランス映画が放映されていました。1960年の作品です。冒頭はパリの郊外からパリ中心部に入る列車のフロント窓の風景が映し出されます。列車はパリの南東にあるオステルリッツ駅に向かうわけですが、沿線の風景を見て驚きました。 その風景は、郊外から東京都心に向かう京浜東北線や中央線、東海道線、常磐線から見える風景と変わらないからです。いわゆるパリと言われたら思い浮かべる、古いながらも豪華な外装のアパルトマンが立ち並ぶシャンゼリゼ通りのような風景ではなく、日本のどこにでもある機能的な建物が延々と続くのです。 パリは19世紀には世界の都と言われるほどに発展しました。世界の都というのは近代的な政治、経済、文化の中心という意味です。いま私たちが普通に目にしている大都市は、19世紀のパリやロンドンが人類史上最初だったと言えます。江戸も大きかったのですが、石づくりで道路も舗装されていたいわゆる近代都市としては、パリのほうが先でした。 パリの人口は増え続け、拡大してゆきます。古いパリはグラン・ブールヴァールという環状道路の内側で、新しいパリはその外に無限に増殖してゆくのです。東京の山手線の内側が古い東京、外側が新しい東京と言われるのに似ています。 欧米の枠組みとしての近代都市 東京も浅草や日本橋のような江戸風情の残るところを「東京」とするように、パリも19世紀の雰囲気が残る凱旋門の辺りを「パリ」とします。それが街の顔ですが、その周りには、どの国にも似たような「郊外」が広がっている。 前代未聞の巨大都市パリのような都市が、欧米文化の広がりとともに世界に広がりました。それはグローバル化の波と一致しているのだと、パリの郊外の風景を見ていて気づきました。江戸も当然、その波にのまれ、大きな変貌を遂げ、いまの東京があります。 コロナ禍を経て、欧米の価値観がどんどん流入してくるだろう、と以前に書きました。忘れてはならないのは、いまの私たちの生活基盤である都市も実は欧米の枠組みによって作られているということです。そういう意味で、日本にも欧米の価値観を受容する下地はつくられていて、ソフト面が入ってくる環境は整っていると言えます。 あたりまえの「都市」を見直すことで、新たな気づきがあるかもしれません。ごきげんよう。 草々 (散歩好きの文明批評家)
給食開始が最大50分遅れ つくば市の9小学校
2023年12月6日
つくば市は6日、学校給食に米飯を納入する業者の炊飯機械が同日故障し、米飯が学校に到着する時間が遅れ、市内の9小学校で最大50分、給食開始時間が遅れたと発表した。 学校では、5時間目の授業を給食前に繰り上げて実施したり、掃除の時間を前倒しにするなどして対応したという。 市健康教育課によると、同日午前9時ごろ、米飯を炊いて学校に納入する業者の炊飯機械のローター(回転子)部分に漏電が発生し、炊飯できなくなった。 同市の学校給食の米飯は、県学校給食会を通じて、2つの業者が小中学校と幼稚園にそれぞれ納入している。炊飯機械が故障した業者は、市内の幼稚園2園と小中学校14校の米飯を炊いて納入していた。 このうち2園と5校については、米飯の到着時間が遅れたものの、給食の開始時間に間に合った。 一方、小学校9校の計約3400食分は間に合わず、午後0時10分に給食を開始する予定だったが、最大で50分遅れ、午後1時に給食開始となる小学校もあった。 炊飯機械は修理が終わり、7日からは通常通り提供できるという。市は米飯業者に対し、設備管理の徹底を図るよう指示したとしている。
「魔女の学校」が地域住民と音楽祭 クリスマスに筑波山麓で
2023年12月6日
子供たちに体験と交流の場を 筑波山麓の廃校で手作り品などを販売するマルシェ「魔女のフェスタ」を開催してきたアロマテラピー教室「魔女の学校」(いしざき緑子さん主宰)が、クリスマスの25日、山麓のつくば市国松で地元有志の協力を得て、子供たちのための「魔女の学校 シリウス音楽祭」を開催する。 会場はいしざきさんが「筑波山天国」と名付けたガソリンスタンド跡地。数年続いたコロナ禍で、生の音楽や地域住民との交流が希薄になった地域の子どもたちに、地元住民がサンタクロース役になって、豊かな体験と地域住民との温かい交流の場をプレゼントしたいという。 「魔女の学校」は2019年4月から独自に、いしざきさんやアロマテラピー教室に通う生徒らが、いずれも廃校となった石岡市柴内の朝日里山学校やつくば市国松の旧筑波小学校でオーガニックな手作り品などを販売するマルシェを6回ほど開催してきた。今回は地元住民有志と、地域と一体となったイベントを開く。 シリウスは冬の空に輝くおおいぬ座の1等星。主催者は「暖かい薪ストーブの火を囲み、シリウスの光を浴びながら、多彩な音楽と素敵な魔法を持ち寄ったお店屋さんたちと豊かなクリスマスのひと時を過ごそう」と参加を呼び掛ける。 音楽祭では、アフリカン太鼓、生バンド、ピアノや弦楽器の演奏が無料で聞ける。当日は地元陶芸家による、陶芸体験も無料で開催。好きなことや得意なことを仕事にしている飲食、クラフト、占い、セラピーなど多彩な出店者が、イベントを盛り上げる。 主催するいしざきさんは「激変する社会でいま子供たちに必要なのは、多様な人との出会いや体験が重要であると思い企画した。多様性を拒む現代の教育からはみでた子供たちに豊かな体験をプレゼントできたら」と語る。 地元区長の岡田実さん(72)は「少子高齢化と言われる中、子供たちが外で遊ぶ姿が見られなくなった。筑波山麓という自然環境に恵まれた地域で、元気に遊ぶ子供たちの姿を見たいと思う。子供たちのためという趣旨に賛同し、シリウス音楽祭を大いに応援したい」と語る。 ◆「魔女の学校 シリウス音楽祭」は25日(月)午前11時~午後8時、つくば市国松162-1、筑波山天国で開催。入場無料。音楽祭ステージの出演者は▷ケイタモモ(栃木県・アフリカンジャンベ奏者)▷beee(千葉県・ドラム、ギター、ベースの生バンド)▷もっさん(茨城県シンガーソングライター)▷塚T&kiki(筑波山麓元シンガーソングライター)▷meiko(埼玉県・祈りのピアニスト)▷河村英之(千葉県・墨絵画家。ライブペインティング)▷村上忠(茨城県・魂の絵画家。ライブペインティング)など。
借金をして死ぬと家出《続・気軽にSOS》144
2023年12月6日
【コラム・浅井和幸】日々、様々な相談に対応している浅井心理相談室。過去に下記のようなやり取りがあったとか、なかったとか。 「甥(おい)っ子が家出をして、どうしてよいかわからない」と、叔母に当たる女性から相談がありました。親子の不仲が原因の一つであるのは間違いないのですが、甥っ子は借金をしていました。無職の甥っ子は母親(来談者の姉)にそれをとがめられ、死んでやると家出をして、1週間ほど行方不明になっていました。 LINEをしても、電話をしても、応答がありません。うろたえている姉を見かねて、その方は相談に訪れたそうです。もう諦めたほうがよいのでしょうかという来談者に、とりあえず下記のことをしてみるように伝えました。 ▽今までの半分のペースで、LINEを送る。内容は、何かをアドバイスするのではなく、心配しているとか、あいさつ程度の短い内容のものにする。 ▽LINEで、浅井という人に相談していることを伝える。電話番号も一緒に。心配しているよと。 「アルバイトで返せる額じゃないかな」 次の日の昼、来談者の甥っ子から私に電話がかかってきました。 浅井「はい、浅井です」 甥っ子「〇〇です。叔母から聞いて電話をかけています」 浅井「ずいぶん、つらそうだね。力も出ない様子だけど、ちゃんと食べている? 心配だな」 甥っ子「一昨日ぐらいから何も食べていません。もう死にたいです。死ぬしかないんです」 浅井「どうして?」 甥っ子「借金をして、仕事もしていないし、返せないし…。このままだと、親にも迷惑をかけてしまうから」 浅井「そうなんだ。それはつらいね。ところで、君みたいに若い男の子が死ななければいけないほどの借金って、何億円ぐらい借りたの? というか、よくそんなに借りることができたね」 甥っ子「いえ、そんなには大きい額では…」 浅井「そっか。じゃ、何千万円ぐらい借りたの?」 甥っ子「いえ、そんなには…」 浅井「そうかぁ。細かくはいいから、だいたい、どれぐらいの借金があるの?」 甥っ子「〇〇〇万円です」 浅井「それは大変だね。でも、そのぐらいの額だったら、ちょっと良い大きめのバイクか、軽自動車の新車が買えるぐらいだね。君ぐらい若い男の子ならば、その辺のアルバイトをして返せる額じゃないかな」 甥っ子「そんな感じですか? でも、何もかも嫌になって」 「今日1日は生き、また電話して」 この間に色々と話をして、本人の様子や、どんな場所にいるのか、雰囲気で予想していました。 浅井「でも周りが敵ばかりに感じて、つらいよね。もうどうなってもよいって感じるんだね」 甥っ子「はい」 浅井「遠くにいるということだけど、場所さえ教えてくれれば、迎えに行くか、何か方法を考えるよ。でも、すぐにとも、無理にとも言わない。その代わり、今日1日は生きてみて。夏だけど、ちょっと外は寒いかな。けど頑張って考えてみて。それでよかったら、明日、また、電話してよ」 甥っ子「わかりました。もういいです」 後日、私が電話をした次の日に帰ってきたと、母親から電話がありました。その後、来談者からも、お礼の電話とおいしいクッキーが届いたとか、届かないとか。いや~、いただきものはうまい。(精神保健福祉士)
農業委員の選考会始まる つくば市 前回は紛糾、警察捜査も
2023年12月5日
つくば市農業委員会委員の任期満了(定数24、任期は来年5月18日まで)に伴って、新しい農業委員の候補者を選考する同市農業委員会委員候補者選考会(会長・飯野哲雄副市長、9人で構成)が4日始まった。 3年前の前回の改選時は、地区別人数割や農地法違反をめぐって紛糾した(21年5月20日付、同28日付)ほか、会長選をめぐって警察の捜査が入り、農業委員の一人が贈賄申し込みの罪で罰金50万円の略式命令を受け辞任するなどの事件に発展した。前回、紛糾の種になった地区別人数割や農地法違反の扱いをどうするかが注目される。 応募は39人 市は来年の改選に向け、10月2日から31日まで公募を実施。4日開かれた選考会では、39人の応募(うち農業委員会業務に利害関係がない中立委員は1人)があったことが報告された。 さらに前回の改選で問題になった地区別人数割や農地法違反について委員の一人から質問が出た。地区別人数割について飯野会長は「(法令では)市内全域が一つの選挙区になっているが、(選考会委員が採点する)選考シートの結果について極端な差があると後の運営に差し障りが出るのではないかということもあるので、一時的な評価の結果を見てみて、結果によってさらなる検討が必要な状況かどうかを判断して、それから会の中でどうしていくか、皆さんで協議をしていきたい」とした。 応募者の農地法違反については委員から「前回、親が違反転用して(本人は)全く知らなかったということがあった。前に親がやったことに対し責任を取るのか」などの質問があり、同事務局から「違反転用を本人以外の親がやった場合、(農業は)基本的に同一世帯の家族経営なので『親がやったから知らない』は好ましくない。(採点は)農地法に反する転用があるとマイナス5点、農地法と他法令に反する転用があり農地への復元も困難だとマイナス10点になる。前回は(違反者の)人数が多かった。今回、本人から聞き取りをしたが、今回はそんなにいない」などと説明した。 今後の日程は、選考会の委員9人がそれぞれ、候補者39人に対し、農地法に違反する転用があるか、委員としての責務を理解し意欲があるかなど、選考シートに基づき17項目(中立委員は11項目)について評価し評点を付けた上で候補者を選考し、五十嵐立青市長に答申する。 前回は地区別人数割のルール変更に反発 農業委員会は、担い手への農地利用の集約化、遊休農地の解消、新規参入の促進など農地利用の最適化を図ることを目的に、農地法に基づく農地の売買や賃借の許可、農地転用案件の意見具申などを行う。委員の任期は3年。つくばエクスプレス(TX)沿線開発などの影響で、同市は農地法に関する許可申請件数が県内で最も多い。 農業委員の選出方法は、2015年の農業委員会法改正により、選挙で選ぶ公選制が廃止され、議会の同意を得て市長が任命する方式に変わった。同市では18年から任命制が始まり、3年前の前回の選考から選考会が設置された。 地区別人数割については同市ではこれまで、地区ごとの農地面積や農家戸数に応じて農業委員が選ばれ、農家が最も多い谷田部地区は他地区と比べて委員数が多かった。3年前の選考会では事務局案として当初「農業委員会の活動は各地区ごとに、農地の所有権移転や農地転用などの許認可を行っているため、各地区の選出人数は各地区での活動に支障をきたさないよう、農地面積及び農家戸数に許可申請件数を加味した人数が望ましい」とする案が示されたが、選考会が、地区別の農業委員の人数を一律で「各地区3人以上」と変更し、農地転用の調査件数が多いのに地区別人数が減った谷田部地区などの農業委員から反発が出て、紛糾などした。(鈴木宏子)
バイデン大統領、中東政策で失点:米大統領選(3)《雑記録》54
2023年12月5日
【コラム・瀧田薫】バイデン米大統領は、これまで推進してきた「中東の安全保障構想」をハマス(ガザ地区を実効支配するアラブ武装勢力)のイスラエル奇襲によって根底から覆され、彼の中東外交は苦境に立っている。 バイデン政権は水面下でサウジアラビアとイスラエルとの国交正常化交渉を後押ししてきたのである。ウォール・ストリート・ジャーナル(8月上旬)によれば、サウジは米国に対し、イスラエルとの国交正常化をするための条件として、原発など民生用核開発計画への支援、安全保障関係の強化(対イラン)、パレスチナ政策でイスラエルに譲歩させる―の3点を要求したという。 一方、中東分析の専門家(reuters.com 10月4日付)によれば、パレスチナ自治政府とハマスは、パレスチナをバイパスして動いていく中東情勢に危機感を抱き、アラブの大義(全アラブがパレスチナ独立国家の樹立と反イスラエルで結束する)を取り戻そうとした。そのためにとった強硬手段が今回のテロである。 イスラエルのネタニヤフ首相を挑発し、彼の過剰反応(ガザ侵攻・市民に対するなりふり構わぬ暴力行使)を引き出せば、アラブ諸国はパレスチナ支援と反イスラエルで再結集せざるを得ず、自動的に米国が主導する中東新秩序構想を打ち砕くことができるとの判断である。 ハマスの意図を読んだバイデン氏は、9.11同時多発テロの経験を引いてネタニヤフ氏に自制を求めたが、彼は恐怖心と復讐心に駆られ、暴力への衝動を止めることができなかった。 ロシア→イラン→ハマス 一方、アラブ連盟とイスラム協力機構は、11月11日、サウジの首都リヤドで緊急の首脳会議を開いた。しかし、会議を支配したのは形式的な「口さきだけの介入」を思わせる雰囲気でしかなく、緊張感を見せたのはサウジのムハンマド皇太子とイランのライシ大統領による1対1の会談だけだった。 もともと、サウジやスンニ派のアラブ王制国家はシーア派大国イランによる革命の輸出(王制批判と民主化)を極度に恐れており、最近勢力を増し、核武装もささやかれるイランへの警戒心を募らせてきた。そうした背景のゆえに、サウジ以下のスンニ派諸国と米国そしてイスラエルとがお互いに接近する地経学上の理由があった。 つまりアラブ諸国は、イスラエルの軍事力と技術に期待し、米国の安全保障枠組みに参加すれば、イランに対抗できる。イスラエルは中東における国の安全保障環境を改善できる。米国は中東の安定により、ロシア、中国への対抗に余裕をもって向かうことができる。 しかし、今のパレスチナの状況では、こうした目論(もくろ)みに沿った交渉はしばらく停止するしかないだろう。 サウジとイスラエルが急接近しているとの情報がハマスに伝えられたとき、ハマスはテロ決行を決断したとの見方がある。情報の出先はロシア、そこからイランを経由したと思われる。パレスチナ紛争の背後にロシアの存在が垣間見られる。 情報戦において、イスラエルも米国も完全に出し抜かれた。両国にとって、パレスチナの存在を軽視したことのツケは大きく、アラブ諸国との関係修復はご破算となった。パレスチナの失ったものもあまりに大きい。暴力からは何も生まれないと、後々痛感するのではなかろうか。(茨城キリスト教大学名誉教授)
もっと“ムダ”なことを つくばで障害者の青春を語り合うトークイベント
2023年12月4日
9日 障害者週間 知的障害がある若者たちの「青春を楽しみたい、もっと学びたい」という思いを実現させる学びの場「福祉型専攻科シャンティつくば」(つくば市天久保)が、障害者週間(12月3~9日)最終日の9日に、市内でトークイベント「知的障害者の豊かな人生を考える学習会」を開催する。シャンティつくば代表の船橋秀彦さん(68)にイベントへ向けた思いを聞いた。 選択肢が欠如 「普通」の若者のように、仲間とたくさん“ムダ”なことをして青春を楽しみ、夢や希望を見つけてほしいー。そう語るのは、障害のある子を持つ保護者らによって2016年に設立されたシャンティつくば代表の船橋さんだ。 「福祉型専攻科」は主に知的障害や発達障害がある若者が中等教育卒業後、社会生活に欠かせない力を伸ばすための、「就労」「就学」とは異なる「第3の場所」として、近年、全国で拡大している。利用する人は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス「自立訓練(生活訓練)事業」等の制度を活用し、2年から3年間通うことができる。 シャンティつくばでは現在、特別支援学校や高校を卒業した7人が、月曜から金曜の午前9時から午後3時まで、詩作、外国語、パソコン、芸術、性や人権教育の授業を通じて自己表現を学び、地域活動にも参加している。福祉型専攻科の意義を船橋さんは、「社会に出る前の『自分探しの場』」だとし、背景に「障害者の進路選択肢の狭さ」が問題にあると指摘する。 文科省によると2021年、一般高校を卒業した約75%が大学、専門学校等へ進学したのに対し、特別支援学校高等部の卒業生の同進学率は約2%。その中でも知的障害がある人に至っては0.5%と、一般高校卒業生との差は大きく、障害のある若者の90%以上が社会福祉事業所に入所・通所するか一般企業に就職している。障害のある若者には、大学や専門学校で勉強やスポーツに打ち込んだり、仲間と他愛のない時間を過ごす中で将来を選択する時間を得る機会がないのが現状だ。 船橋さんは「(障害のある若者の)進路選択では就職が前提となるため『できる・できない』が重視され、『できない』人だと分けられ傷つく人がいる」とし、「できないことへの劣等感から自信をもてず、自分が何に関心があり、どんな人生を歩みたいか表現するのを怖がる人がいる」と言う。「障害があることで劣等感を持つことなく、『自分は自分でいい』と気づいてほしい」と力を込める。 「できる」ことより「やりたい」思いを 「夢や希望を育てていくことが、豊かな人生を歩む第一歩。友達とワイワイやって、周りがムダだと思うことをたくさんしてほしい。青春期に経験する『ムダ』なことから自分の生き方を見つけられるはず。長い人生を考えると、そんな“ムダ”が人生でぶつかる困難を乗り越える力になる」と船橋さんは話し、「知的障害があっても青年期に楽しく豊かに色々な経験を積むことで自分探しができる。それはアイデンティティの形成に大きな意味を持つ」とし、「自分は自分でいい。そう思ってほしい」と、今回の企画への思いを語る。 9日に開催される「知的障害者の豊かな人生を考える勉強会」では、トークイベントのゲストに、筑波山麓を拠点に知的障害者や精神障害者らが農業やアート活動に取り組む場を作る自然生クラブの柳瀬敬さん、つくば市内で放課後等デーサービスなどを行うにっこりの森の菊池涼代さんらのほか、障害のある子を持つ親たちも登壇する。(柴田大輔) ◆トークイベントの会場はつくば市春日2-36-1、春日交流センター。スタートは午前9時50分から。入場無料、予約不要。問い合わせは福祉型専攻科シャンティつくば(メール、電話029-893-3970)へ。
洞峰公園市営化問題 つくば市の変な調査《吾妻カガミ》172
2023年12月4日
【コラム・坂本栄】つくば市は11月、県営洞峰公園の市営化問題についてアンケート調査を実施しました。問題のキモは県営⇒市営の是非にあるはずですが、市が考える公園の形に関する質問を中ほどに配し、市営化の是非は最後に聞く流れでした。これは市民の判断を「是」に誘導する手法であり、市民の声をきちんと聞く調査とは言えません。 回答者を誘導する質問の流れ 洞峰公園問題は県の公園運営コンセプトに市が異を唱えたことが始まりです。園内に民営のグランピング施設を設け、その収益で公園を管理したい県。そういった施設に反対し、現在の姿形の延長で公園を管理したい市。この対立を収める策として、県が公園を無償で市に譲渡し、市が自らのコンセプトで運営するという基本合意ができました。 ということは、市営化に伴う市の財政負担と市が考える公園の形を市民に説明し、市営化の是非をズバリ問うのが正しい手順です。ところが質問の流れは、①~⑤回答者の属性や公園の利用法、⑥~⑨市が考える公園の形の是非、⑩肝心の公園市営化の是非、⑪自由記述スペース―と、回答者を市案(下欄参考「ケチ・ボロ」計画で解説)賛成に誘導する構成でした。 調査の体を成していない調査 調査の欠陥は質問の順番だけではありません。この種の調査は回答者1000~2000人を無作為抽出(ランダムサンプリング)して聞くのが正しい手法です。ところが、希望者だけに回答用紙を回収箱に入れてもらう+市のホームページ(HP)に書き込んでもらう方式ですから、作為的な動員によって「是」「非」を操作できます。市民の賛否を正確に把握し、市政運営の参考にするのが調査の目的であるのに、これでは調査の体を成していません。 現市長には、シロをクロに塗り替える市政運営で前科があります。運動公園用地売却について市民の意見を聞くパブコメは、寄せられた回答を都合よく分類し、賛成はたった3%だったのに、賛成多数という結論をひねり出しました。前市長の運動公園計画を住民投票で撤回させた現市長は、市民の声を大切にする理念を忘れてしまったようです。 執行部に甘く見られた市議会 この調査の変な点をもう一つ挙げると、市のHPに「…本アンケートは無償譲渡への賛否の多寡を主眼とせず…」と書かれていたことです。これでは、市案を前提にした調査であると宣言しているようなもので、上の方のパラグラフで指摘した「回答者誘導」&「作為的手法」どころか、最初から「結論ありき」の調査になります。 12月議会に上程される洞峰公園市営化条例案、同公園管理予算案の取り扱いに悩んでいる市議さんは、ずいぶん甘く見られたものです。市執行部は条例案と予算案が議会で問題なく承認されことを前提に、行政プロセスを進めているのですから。(経済ジャーナリスト) <参考> ▽ケチ・ボロ計画:コラム「つくば市の洞峰公園『劣化容認』計画」(11月20日掲載 ) ▽変なアンケート:記事「洞峰公園問題で市民アンケート開始…」(11月15日掲載) ▽無作為抽出調査:コラム「洞峰公園の市営化、住民投票が必要?」(3月20日掲載) ▽運動公園パブコメ:コラム「…ダメでしょ『…市の行政手順』」(22年9月19日掲載)
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