手を伸ばし 子育てを“孤育て”にしない【広がる子ども食堂】2
米5キロと食品、洗剤などの詰め合わせを各世帯1箱ずつ無料配布するフードパントリーが1月末、牛久市の三日月橋生涯学習センターの一室で開催され、予約した30世帯に手渡された。毎月1回配布している。食品ロス削減のため規格外品などを引き取るフードバンクや、支援団体NPO全国こども食堂支援センター・むすびえ(東京都新宿区)などからの物品、企業や個人が寄付したものが配布される。この日受け取った女性は「特にお米が助かる。自分では買わない物も入っていて面白い」と話した。会場は牛久市が無料で開放し、活動を支援している。
主催しているのはNPOきらきらスペース(牛久市牛久町、諏訪浩子代表)だ。2016年8月から活動を始め、7年目になる。元々は50人ほどが利用するビュッフェ形式の子ども食堂を開催していたが、コロナ禍で食品を持ち帰ってもらうフードパントリーの形式に変えた。
子育て世帯だけでなく、だれでも利用することができる。「お米や野菜など寄付が集まって活動できている。来る人は大体決まっているので、月1回顔を見て、元気かどうかの安否確認という意味もある」と諏訪さん(53)。
この日参加したボランティアの女性4人は、「子どもに何が欲しいのと聞くと飲み物を欲しがる。お菓子もあるといい。生活のうるおいが大事。子どもは楽しいことがないといけない」、「男親だけ、女親だけの子がここに来て父親、母親代わりのスタッフと疑似体験をしている。自分もおばあさんとして役に立っているのかな」と口々に話し、他愛ない雑談の中で、感想や情報を共有していく。
ウオーキング仲間とスタート
代表の諏訪さんは大学生2人の子を持つ母親だ。PTA副会長を務めた経験もある。同じく子育てをするウオーキング仲間の母親たちと互いの悩みを話し合う中、7年前、「何か子どものためになる活動をしたいね」と子ども食堂をスタートさせた。食を通じて「子育てを孤育てにしない」をモットーに活動しており、子育て相談も随時受け付けている。
スタッフは18歳から85歳まで約50人で70代が多い。全てボランティアだ。市ボランティアセンターからの紹介で参加するスタッフもおり、「グループの周りに応援団がたくさんいる感じ」という。民生委員、児童委員を務めているスタッフもいる。
諏訪さん自らが運転し、フードパントリーに来られなかった人や車のない人に食品の配達もしている。1月末は、荷物を積み込んで2件を回った。「もらいに来る人もいい人が多い。配布するものの中に不良品がたまにあるが、遠慮して言わないことも。互いに許しあえている関係」だ。
フードパントリーの他にも同生涯学習センター前にある古民家「とみさんち」(牛久市城中町)で月1回、「子民家はなみずき」(牛久市牛久町)で毎週土曜日、子ども食堂の少人数カレー昼食会を開いている。かっぱの里生涯学習センター(牛久市城中町)では週1回、無料塾の自習室「一歩」を開催する。
食堂では肉、魚などのタンパク質の寄付が少ないことが悩みだ。タンパク質は成長期の子どもに必要だが、冷凍する必要があるなど輸送が大変でなかなか手に入らないという。「肉、魚はもらえないのできらきらスペースで買うしかない」と話す。
行政につなぎ、行政から依頼も
活動を通して得た情報を牛久市につなぎ、実際に行政の支援につながったケースも多数ある。逆に行政から、食料の支援や古着の制服の提供、不登校の子の居場所の提供、お風呂に入っていない子の入浴支援などを依頼されるケースもある。ママ友同士のつながりで、困っている家庭の紹介を受け、支援につなげたケースもあった。
どこまで支援の手を広げるか、コロナ禍での活動のあり方が課題だという。「きらきらスペースのフードパントリーや子ども食堂は誰でも利用できるが、あまり広げてしまうと本当に困窮している人に支援が行き渡らない恐れが出てくる。困窮者だけに支援と限定すると、来なくなる人もいる。今度コロナが感染症法の5類になると聞く。そうするとまた活動の仕方を変えていかないといけないのか、それとも今までどおりなのか」と諏訪さん。活動の在り方を模索している。
子ども食堂サポートセンターいばらき(水戸市)の大野覚さんによると、外に手を伸ばし、さまざまな組織と連携して、子ども食堂やフードパントリーなどに来られない人にも支援を広げるきらきらスペースの活動は、福祉の分野で「アウトリーチ」と呼ばれる活動だ。県内の子ども食堂を対象に実態調査などを実施してきた大野さんによると、アウトリーチに取り組む子ども食堂はまだ少ない。実態調査では「個人情報保護の壁が高く、支援を一番必要としているところに手が届かないことに歯がゆさを感じている」などの声が寄せられた。大野さんは「アウトリーチは、さまざまな組織とつながりがつくれているかどうか」がかぎになっていると話す。(田中めぐみ)
続く
ふるさと納税の顛末記 ④ 《文京町便り》13
【コラム・原田博夫】ふるさと納税による市町村民税(個人)控除額は2022年度、全国では540億円超で、前年度より168億円増えている。初年度(2009年度)の19億円と比べると、28倍である。控除額=流出額の多い地方自治体はほとんどが大都市である。高所得者で、インターネットやSNSへのアクセスが日常的で、目端(めはし)の利く大都市住民がこの制度を活用しているようだ。
ところが、この市町村民税(個人)控除額の流出のうち75%は、地方交付税制度で多数派の交付団体ではカバーされる。ただ、少数派の不交付団体は、ふるさと納税の流出額はカバーされない。
そもそも地方交付税制度(普通交付税)では、それぞれの自治体ごとに標準的な財政運営と財政収入を想定して、基準財政需要額と基準財政収入額(標準税率による地方税収の75%)を算出して、前者が後者を上回る分を財源不足とみなし、その不足分が交付額になる。
前者が後者を上回れば交付団体となり、下回る場合は財政的に富裕とみなされ不交付団体となる。交付団体において、ふるさと納税の流出額の75%がカバーされるとは、この仕組みによる。
一方、不交付団体ではこうした補填(ほてん)がきかない。不交付団体は2022年度では、東京都と72市町村(市町村総数は1718)である。東京都(および23特別区)はこの地方交付税制度の創設(1954年度)以来、一貫して不交付団体である。都内の市町村の中にも不交付団体がある。現に2022年度は、全39団体中9団体が不交付団体である。茨城県では、つくば市、神栖市、東海村の3自治体である。
他方、東京23区は、東京都と同様に地方交付税制度では不交付団体である。ところが、市町村民税(個人)控除額のランキングでは、全国20位までに東京都23区のうち8区が入っている。特別区長会ではかねてから、ふるさと納税制度の問題点を指摘し、廃止も含めた見直しを要望している(例えば2017年3月13日付)。
2019年6月から新制度がスタート
こうした経緯を経て、2019年6月1日からふるさと納税の新制度がスタートした。返礼品を「寄附額の3割以下の地場産品」に限定し、ルールを守る自治体のみ税優遇を認める、というもの。総務省は2019年5月14日、この新制度を利用できる地方自治体を公表した。この新制度には、東京都はそもそも手を挙げなかった。
また、税優遇を受けることができないとされたのは4市町、税優遇期間が4カ月(2019年9月30日まで)に限定されたのは43市町村(茨城県では稲敷市、つくばみらい市)だった(これらの市町村は、いわばイエローカードで、再度の申請は可能)。
ここ10数年の展開を見ると、この制度の立ち上げをリードしたと自負している菅義偉前首相に、ふるさと納税制度(案)の問題点を縷々(るる)説明した当時の総務官僚の心配、懸念は杞憂(きゆう)ではなかった。とはいえ、せっかくここまで人口に膾炙(かいしゃ)した制度をご破算にするのは難しい。
せめて、ふるさと納税の寄附先を過疎地自治体885団体(2022年度では全国1718市町村=東京23区を除く=中51.5%)に限定するなどの改革で、当初の問題意識を昇華させたい。(専修大学名誉教授)
県内最大規模の物流拠点に つくば市内3つ目の「ZOZOBASE」完成
ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するZOZO(本社・千葉市、澤田宏太郎代表取締役社長兼CEO)は25日までに、つくば市御幸が丘に建設していた新たな物流拠点「ZOZOBASEつくば3」の完成を発表した。8月に稼働を始め、11月に本格稼働する予定。最新機器を導入して自動化を進め、既存拠点と比べて30%省人化する。
同拠点は商品の入出荷や保管をする施設で、同社5カ所目、つくば市内にある拠点としては3つ目となる。延床面積や商品保管数が同社最大規模で、敷地面積約6万8500平方メートル、地上5階建て延床面積13万7000平方メートル。ワンフロアが約3万1000平方メートルあり、県内でも最大規模の物流拠点という。2021年9月に着工していた。投資総額は約100億円という。
取り出した商品を注文ごとに自動で仕分けするシステムなど、国内初となる最新機器の導入により自動化し、既存の倉庫と比較して約30%の省人化を見込む。ZOZO本社や既存のZOZOBASEと同様、使用電力には主にバイオマスや太陽光由来の実質再生可能エネルギー電力を100パーセント導入するとしている。
稼働開始に向けてアルバイトスタッフ約500人の採用を予定しており、地域の雇用創出への貢献を目指す。施設内にはカフェテリアや「デニム」や「プレイド(格子柄)」といったファッションをテーマにした2つの休憩室の整備を予定。労働者の通勤事情を考慮し、571台分の駐車場を確保する。
新拠点は、米カリフォルニア州に世界本社を置く物流不動産開発のグローバル企業、プロロジス(日本本社・東京都千代田区、山田御酒代表取締役会長兼CEO)が開発を手掛けた。同市内ではこれまでに、ZOZOの専用(BTS型)物流施設として「プロロジスパークつくば1」(東光台)、「プロロジスパークつくば2」(さくらの森)の2拠点に3棟の施設を開発している。
同社は昨年10月、つくば市とスタートアップ推進に関する相互の連携協定を締結。御幸が丘の敷地内には4月、インキュベーション施設「inno-base TSUKUBA(イノベース・ツクバ)」をオープンさせる。施設はオフィス、シェア倉庫、実証実験エリアを備え、運営、企画はツクリエ(本社・東京都千代田区、鈴木英樹代表)が行う。オープン記念として、3月2日午後6時30分から、オンラインでトークイベントを開催する。同市政策イノベーション部の屋代知行スタートアップ推進室長のほか、スタートアップ企業の小川嶺代(タイミー)、岡澤一弘(KURANDO)、伊藤茜(Doog)各氏が登壇する予定だ。(田中めぐみ)
多文化共生 みんなの居場所に【広がる子ども食堂】1
子ども食堂の数が近年、顕著に増えている。開設支援や食材確保の仕組みづくりなどに取り組む茨城NPOセンター・コモンズ事務局長で、「子ども食堂サポートセンターいばらき」(水戸市)の大野覚さん(43)によると、県内の子ども食堂は、5年前は20~30カ所だったが、昨年末は約150カ所と5倍以上に増えた。生活困窮世帯の子どもだけに利用を限定している食堂はわずかで「全体の8~9割が『地域の誰もが利用できるみんなの居場所』として広く門戸を開いている」という。
地域の大人が1食200円を先払い
下妻市の中心市街地に、午前11時から午後8時まで平日は毎日開いている子ども食堂「お茶NOMA」がある。国籍を問わず幅広い年代の人たちが気軽に立ち寄れるたまり場を目指して、市民団体「しもつま外国人支援ネットワークTOMODACHI」(小笠原紀子代表)が昨年5月にオープンした。高校生以下の子どもは無料で食べられる。約2200人の外国人が暮らす同市の住民同士が国籍や言葉の違いを認め、支え合って暮らす多文化共生社会に向けて活動を続けている。
「お茶NOMA」は、イベントが盛んな中心市街地の「まちなか広場」に面するコミュニティスペース「かふぇまる」の一角で営業している。午後4時を過ぎると下校した子どもたちの「ただいまぁ」という元気な声が聞こえ、白いかっぽう着を着けたスタッフが「お帰りなさーい」と応えるアットホームな雰囲気だ。
メニューは、おかえり定食(1,000円)と下妻かあちゃんカレー(800円)の2種類。1食分の料金のうち、大人が子どもの食事代を先払いする仕組みで、200円が「未来チケット」という子どもの食事チケットに充当される。子どもはカウンター脇のボードに貼られたチケットを一枚取ってスタッフに渡し、惣菜付きのこどもプレートを受け取る。お腹いっぱい食べられるよう、ご飯はお代わり自由だ。「元気に大きくなってね」など、大人からのコメントが書き添えられた未来チケットは地域の大人たちからの心のバトンと小笠原さん(54)は話す。
運営を担うボランティアスタッフは、「手伝いたい」と名乗りを上げた若いママからシニア世代までの約30人。別のグループが交代で朝の仕込みを担当し、閉店後の片付けまでを家事の隙間時間を活用したスタッフたちが担当する。「スタッフの報酬は食事という現物支給ですが、上下関係や利害関係がないから気持ちよく活動してもらっている」と小笠原さんはいう。一緒に遊んだり宿題を見てくれる中高生のボランティアも、子どもにとって頼れる存在になっている。
食材は農家やJAなどから寄付されるものを多く利用している。メニューはスタッフたちが生活の知恵を生かし栄養バランスを考えて決める。食堂のお母さんをイメージしてそろえたスタッフのかっぽう着30着も寄贈された。
オープンから9カ月。テストなど学校行事で入店が少ない日もあるが利用者は定着し、平日5日間で100人以上の子どもが訪れている。そのうちの1割が外国籍の子どもだ。大人メニューの売れ行きも順調で未来チケットは常に数十枚をストックできている。
スリランカ人と隣り合わせがきっかけ
代表を務める小笠原さんが在住外国人と関わるきっかけは10年以上前。常総市で居酒屋を営み、スリランカ人が経営するレストランと隣り合った。人柄にひかれて役所の手続きや通院など日常の困りごとの相談に乗るようになり、スリランカの公用語シンハラ語を覚えていった。その後同国の食品を扱う店を開いたが、新型コロナの影響で店を畳んだ。
自身が暮らす下妻で外国人支援を考えていた時に、同市在住で、ブラジルで子供を出産した経験がある保育士の松本絵美さんと、ボリビアで青年海外協力隊として活動した保健師の中山美由紀さんに出会った。2人は「現地の人に助けてもらった恩返しをしたいし、外国人が安心して暮らせるまちづくりを」と思っていた。多文化共生を目指す仲間との出会いが2年前に会を発足させ、小笠原さんが代表に就いた。
発足以来、下妻公民館で外国人相談窓口などの支援を続けているが、いつでも気軽に相談できて日本人と仲良くなれる居場所づくりが必要と考え、子ども食堂なら自分たちでもできると運営に乗り出した。
食堂には外国人の子どもたちのほか、夕食を独りで食べていたり、共働き家庭でお腹を空かせて待つ日本人の子どもたち、子育てや仕事に疲れたひとり親、お茶を飲むのにふらっと立ち寄る高齢者など、幅広い世代が集うようになった。スタッフは、「最初、外国人と接した時は戸惑ったが今は普通にしゃべれるようになった」と自然体で交流している。
「外国人も日本人も両方が気軽に来られる場所になった」という小笠原さん。さまざまな年代の子が、ボランティアの中高校生や大人と一緒に同じ時間を過ごす。自然に多様な人との関わりを学ぶことが多文化共生社会の実現につながるとした上で「伸びてきた芽を大事に育てていきたい」と小笠原さんは話す。(橋立多美)
続く
今、考えよう! 無報酬性の限界 《宍塚の里山》98
【コラム・佐々木哲美】私たちの会は、宍塚の里山が土浦市主導による土地区画整理事業で開発されることに危機感を持った人たちにより、1989年9月に設立されました。その後、2003年7月にNPO法人に認証され、2010年に認定NPO法人として承認され、現在に至っています。
認定NPO法人でありながら、専従の職員もいなければ、有償のスタッフもいない、ボランティア団体のままの運営方法をとっています。多くの方に宍塚里山の良さを知って頂き、支援者を増やすために、様々な活動を立ち上げ、ほとんどのイベントを無償で提供しています。
おおらかで自由な雰囲気もあり、新たな参加者が増え、活動も活発に行われ、盛況をみせています。
しかし、活動が広がると、他の人が何をやっているのか関心がなく、自分の興味があるところだけしか参加しない人や、無償のサービスを受けていながら意識しない人が多くなっているように感じます。
組織には、その基盤を支える労力、マネジメント能力を備えた人材と資金が必要です。そういった外部から見えにくい負担が一部の人たちにのしかかってきています。
無償でサービスを提供できるのは、無償で奉仕してくださる方がいるから成り立ちますが、そのバランスが崩れようとしています。また、無償性であることを誇りにして参加している方もいますが、無償にはなじまない専門性が必要な作業もあります。
「NPO=ボランティア」ではない
一番の問題は、行政をはじめ、多くの人が「NPO=ボランティア」と解釈して対応していることにもあります。
これらの食い違いは、NPOへの理解が浸透していないことから発生しています。NPOとは、Non-Profit Organization(非営利団体)の略称です。非営利とは、収益を得てはいけないという意味ではなく、収益を構成員で分配してはならないということで、収益を得た場合は、それをNPOの事業に使いますという意味です。
また、認定NPO法人制度は、法人への寄付を促すことにより、法人の活動を支援するために、税制上の優遇措置として設けられた制度です。
ボランティア活動とは、自主性、公共性、無償制に基づく地域貢献活動です。NPOも求めるものは同じですが、ボランティアとNPOとの大きな違いは無報酬性か非営利性の違いとなります。
また、NPOと株式会社は、ミッションがNPOは社会的利益、株式会社は株主に対する経済的利益と、違いがありますが、株式会社は企業の社会的責任(CSR)が大きく問われるなど、もはや同一レベルにあると言えます。NPOも企業並みの経営感覚が求められます。
私たちは、特定非営利活動促進法(NPO法)の主旨に沿って、独自の収益の道を模索し、最低限の専従職員を雇用し、ボランティア活動の素晴らしさを生かしつつ、理念に基づいた活動をすることです。そのために、行政、一般市民、参加者もNPO団体を支援し、育てるという視点が重要です。(宍塚の自然と歴史の会 顧問)
仏系コンサルティングの日本法人 つくば駅前の複合ビルに入居
フランスの大手コンサルティング会社キャップジェミニの日本法人、キャップジェミニ(本社・東京都港区虎ノ門、殿村真一代表取締役会長)が3月から、TXつくば駅前にあるトナリエクレオ(つくば市吾妻)の5階に入居する。茨城県が同社の情報サービス事業部門の一部と管理部門(本社業務)の一部を誘致したもので、数百人が勤務する。
トナリエクレオは西武百貨店筑波店が入っていた建物。1~3階に物販などの商業施設が入り、4~6階がオフィス用のフロアーになっている。同ビルを所有している日本エスコン(本社・東京都港区虎ノ門)によると、キャップジェミニが使う区画は5階の一部。
キャップジェミニは県の行政効率化についても助言をしており、県と仕事上のつながりがある。つくばへの進出に際しては、県内に工場進出や本社移転した企業への補助金支給制度の対象になる。その額については「3月中旬、県議会に伝えるまでは明らかにできない」(県立地推進課)としている。
知事「質の高い雇用を創出する」
県によると、キャップジェミニはグローバル展開しており、従業員は約35万人。売上高は約180億ユーロ(約2兆5700億円)。金融、製造、公共事業、エネルギー、自動車、消費財販売、通信・メディアなどを対象に、幅広い分野でコンサルティング業務を展開している。
大井川和彦知事は、同社のつくば進出を「グローバル大手コンサルティング会社を誘致できたことは、若者が望む質の高い雇用の創出に向けた大きな成果であり、大変うれしく思う。本県出身の若者が、就職先としてつくばを選ぶ可能性を高めるなど、大きな変化をもたらすきっかけになる」と歓迎した。
同社の殿村会長は「茨城県は東京への近接性のほか、事業環境が非常に優れており、最適な協労機会を備えている。筑波大や茨城大をはじめとした情報・工学系の教育機関も充実しており、産学連携や将来を担う若手人材の採用ができる。さらに、家族向けの教育施設も充実しており、従業員の生活環境も魅力的な地域だ」と述べている。(岩田大志)
金柑と干し柿 《続・平熱日記》128
【コラム・斉藤裕之】古い友人が訪ねてきた。奥さんは小さなビンをくれた。中には金柑(キンカン)のシロップ漬けが入っていた。子供の頃、金柑は人の庭からもいで食べるものだった。だから、買ってまで食べるものではないと思っていた。事実、毎週のように出かける近くのカフェの窓からは金柑の木が見え、ちゃんと断って何度か口に入れてみたが、甘くておいしかったのだけれども、持ち帰ろうという気にはならないでいた。
ただでさえ果物をあまり食べない私。冷蔵庫を開けるたびに目に入る金柑のビン。なかなかふたを開ける勇気がなかったのだが、冬は案外喉が渇くので、ある日サイダーの中に金柑を入れてみた。
コップの底に残った金柑を口に入れた瞬間、あの独特の風味が甘さとともに広がった。それから、毎日、金柑入りのサイダーを飲むのが楽しみになった。ついでに、レシピを聞いて自分でも作ってみようと思った。けれども今年に限って、くだんのカフェの金柑は不出来で、どうやらシロップ漬けにはできない。初めて金柑を買って作ってみたら、なんとなく同じようなものはできた。まあ、金柑の実を砂糖と蜂蜜で煮るだけだから。
それからしばらくして、またその夫婦がやって来た。どうやらメールで送った画像を見て、私の作ったものがいまいちの出来だと思ったらしく、金柑と蜂蜜とレモンまでそろえて持ってきてくれた。
次の日、久しぶりに次女が東京から帰って来た。駅から降りてきた彼女は金髪だった。美容師という職業柄かどうかは知らないが、毎度変わる髪の色にはもう驚かなくなった。美容師という仕事は、かなりブラックに近い肉体労働だということは想像できる。多分疲れているだろうから、その日はどこにも出かけずに、食べたいと言っていたサツマイモ入りの豚汁を作った。
それから、「これ食べていいの?」と、彼女はシロップ漬けになるはずの金柑を見つけて言った。「どうぞ」。彼女はムシャムシャと金柑をほおばった。
憧れのロッキングチェアーに遭遇
翌日は小春日和の快晴。長女の安産祈願をしに、雨引観音に詣でた。次女と2人で出かけるのは久方ぶりだ。車中、仕事場の話や友人の結婚などの話題とともに、政治家のLGBTに対する発言について彼女は熱く語った。七三に分けたおじさん方よりも、この金髪の姉ちゃんの方がよほど筋が通っていると思った。
岩瀬の中華料理店でニンニク油とどっさりニラの入ったレバー炒めを食べた後、益子を回って帰ることにした。途中立ち寄った古道具店で、憧れのロッキングチェアーに遭遇。ただ今入荷したばかりだという店主の言葉に、勝手に運命を感じる。形、値段ともに納得の上、車に乗せて帰宅。
帰りは助手席でぐっすり寝ていた次女。自分を含めて弟や周りの友人も、彼女の歳には先の分からないなりに希望に満ちた日々を過ごしていたことを想い返した。
数日後、長野の知り合いの方から、まことに立派な干し柿が送られてきた。実は干し柿に目のない次女。金柑のシロップ漬けを送る代わりに、益子で買ったお皿といっしょに干し柿を宅配便で送ることにした。(画家)
「むすびつくば」4月から民間施設に 不登校支援でつくば市
不登校児童生徒の学習支援施設運営事業者の選定をめぐる迷走から、つくば市が認定NPO法人リヴォルヴ学校教育研究所(小野村哲理事長)と協働で運営してきた不登校学習支援施設「むすびつくば」が4月の新年度から、民間フリースクールの一つとして運営されることが分かった。
23年度は現在地のまま
小野村理事長は(63)は同施設ついて、4月から「むすびつくばライズ学園」として仕切り直すと話した。同市谷田部地域で20年間続けていたライズ学園の名称を入れた形だ。開所日時はこれまでと同じ週4日(月、火、木、金)午前10時~午後3時。現在は週2日のコースで各20人、計40人程度を受け入れているが、市が他の民間フリースクールを運営する事業者と利用者の補助を23年度から開始するなど、市全体のサポート体制が充実することから、登録定員を30人程度とし、希望があれば相談の上で週4日の通所を受け付ける。
同市は4月から、事業者のリヴォルヴに対し運営費の一部を補助する。利用者に対しては月2万円を上限に利用料の一部を補助する。場所は、23年度は激変緩和のため現在の市産業振興センター(同市吾妻)で継続するが、24年度以降は新たな場所に移るという。
同市の不登校支援をめぐっては、2021年12月に市が実施した「むすびつくば」の運営事業者の選定で、20年10月から同施設を運営していたリヴォルヴが2位となり、新規のトライグループが1位となった。選定結果に対し、むすびつくばの保護者会がリヴォルヴによる運営継続を五十嵐立青市長らに陳情。五十嵐市長は「現在の利用者や保護者に多大な不安を与えてしまった」などと謝罪し、22年度は約2300万円を追加計上して、「むすびつくば」のリヴォルヴによる運営を産業振興センターで継続した。トライは場所を移して、同市研究学園のトライ研究学園駅前校で新たに支援事業を開始するという異例の決着を図っていた。
一方、むすびつくばの一部の保護者などから、市内の不登校児童生徒すべてを公平に支援するよう求める要望が出ていたことなどから、市は昨年5月、今後の市の不登校支援のあり方について検討する「市不登校に関する児童生徒支援検討会議」を設置した。今後の支援策として昨年10月、校内フリースクールを小中学校全校に設置する、民間の支援事業者と不登校児童生徒の保護者の両方に運営費や利用料を補助するーなどの案を示し、14日開会した3月議会に民間フリースクール事業者と利用者への補助事業として約7300万円などを提案していた。
利用には月謝制と補助制度併用
これまでは無料で利用できたが新年度からは月謝制になる。市は、不登校児童生徒の保護者の経済的負担の軽減などを目的に新たな補助制度を設ける施策を明らかにしており、週4日通所の場合、補助金額の上限2万円を超えた月謝は利用者負担となる。
民間フリースクール運営者への補助額は経費の2分の1となる見込みで、24年度以降の場所について小野村理事長は「利便性の高い場所は望めないだろう」とした上で、「考えていた以上に幅広い支援策が検討されていることは進展だと思う」と公表された施策を評価する。一方「(市と民間による)公民協働で不登校の支援にあたる事業の事業者に採択され、教育分野における協働事業の草分けとなれればとの思いで臨んだものの、教育局と十分な協議と調整を図ることができず、協働に関する認識の違いを感じた」とも振り返る。
小野村理事長は「雨降って地固まる。これからはもっと多くの時間を子どもたちと向き合う時間に当てたいと思う」と述べ、「不登校の心に寄り添い、育ち・学びを支えるという姿勢に変わりはない。これからも子どもたちのサポートに取り組んでいきたい」と意気込みを語った。
むすびつくばの保護者会代表だった庄司里奈さんは「市が示した民間施設運営者と保護者への支援は全国に類を見ない先進的な策で、ぜひ実現してほしい」とする一方、「不登校児童生徒と保護者の現実は厳しく、当事者が声を上げていかないと変わらないと感じている」とし、保護者の塩見直子さんは「多くの市民が身近な問題として快く署名に応じてくれたことが支援策につながったと思う。賛同してくださった皆さんにお礼を言いたい」と話す。(橋立多美)
「ただいま」「おかえり」 《短いおはなし》12
【ノベル・伊東葎花】妻と別れて、アパートで独り暮らしをしている。年金暮らしの老人だ。わびしい暮らしの中にも、楽しみはある。隣から聞こえる、ほほ笑ましい会話だ。
隣の部屋は母と娘のふたり暮らしだ。娘は、まだあどけなさが残る中学生だ。母親は8時に家を出て4時半に帰ってくる。娘は部活を終えて5時半に帰る。
「ただいま」「おかえり」「おなか空いた。ごはん何?」「今からカレーを作るところ」「じゃあ私、ジャガイモむくね」
こんな会話が聞こえてくる。何とも幸せだ。私の家も母だけだった。もっとも母は夜遅くまで働いていたから、「おかえり」を言うのは私の方だった。おかずは少なくて、水みたいに薄い味噌汁だったが、今となっては懐かしい。
「部活でレギュラーになれそう」とか、「新しい先生がカッコいい」とか、娘ははしゃぎながら話す。母親は、どんなに疲れていてもきちんと応える。ときどき他愛のないことでケンカもするが、夕方にはやはり「ただいま」と「おかえり」が明るい声で聞こえてくる。ステキな親子だ。
しかしある日、隣の会話が聞こえなくなった。耳を澄ましても、物音ひとつしない。どうしたのだろう。旅行でも行ったのだろうか。気になったが、隣に住んでいるだけで親しいわけではない。訪ねてみるわけにはいかない。
1週間が過ぎた。カーテンは閉じたままだ。まさか入院。いや、きっと実家の両親に何かあったのだ。色々大変だろうが、娘の学校もあるし、週明けには帰るだろう。早く明るい声が聞きたいものだ。
しかし10日たっても隣の母娘は帰ってこなかった。私は、たまりかねて管理人に尋ねた。
「205号室の方を見かけないのですが、何かご存知ですか?」「ああ、引っ越しましたよ」「えっ、引っ越した?」「ここだけの話ですけどね、部屋に盗聴器が仕掛けられていたんですよ」「盗聴器?」「前のダンナが仕掛けたのかもしれないって、怖がってね。あの親子、ちょっと訳ありだったから。それで、夜中にこっそり引っ越したんですよ。まるで夜逃げみたいにね」
ああ、そういうことか。寂しいな。あの明るい「ただいま」「おかえり」を聞くことが、唯一の楽しみだったのに。盗聴器が仕掛けられていたなんて…。
どうしてバレたんだ?(作家)
最短で7月、市と県で条例改正必要 洞峰公園無償譲渡で知事
つくば市二の宮にある県営の都市公園、洞峰公園(約20ヘクタール)について、つくば市が16日付で「無償譲渡に向け正式に協議を開始したい」と県に文書で依頼したのを受けて、大井川和彦知事は21日の定例記者会見で「つくば市からの今回の申し出に、しっかりと意向を尊重する形で話を進めたい」と話した。今後のスケジュールについては「条例改正が必要なので最短でも7月かなと感じている」との見通しを示した。
1月31日までに市から文書による正式な回答が無かったことから進めるとしていた、グランピング施設を公園内の野球場に建設するための事前協議手続きについては「(事業者に)とりあえずストップしていただく」とした。
会見で大井川知事は「(つくば市が無償譲渡を受けることを)決めていただいたからには、スピーディーに、いつまでに譲渡を行うのか、その辺についてもしっかり詰めて、なるべく早くつくば市の意向を実現するよう努力していきたい」とした。
議会での無償譲渡の手続きについて大井川知事は「条例の改正を、お互い、市と県とそれぞれでやらなければならない」とした。その上で「所有権の移転は7月のタイミングになるのかなと思っている。それまでに細かい様々な手続き、あるいはスケジュール感なども調整していく必要がある」と説明した。
県都市整備課によると、新年度の洞峰公園の維持管理については前年度と同じ約9000万円の指定管理料を計上するという。
洞峰公園の無償譲渡をめぐっては、大井川知事が昨年12月の記者会見で「つくば市が自ら公園を管理するのであれば、県としては洞峰公園を無償で市に移したい」「今後のつくば市側の出方を注視したい」などと述べ、大きく動き出した。五十嵐立青つくば市長は同8日の記者会見で、県から無償で公園の譲渡を受け市が管理することも選択肢の一つだと応じ、今月14日、市議会に説明し、16日、県に正式な文書を出した。
一方、市が無償譲渡を受ける場合、新たに市が負担する費用として、維持管理費が年間約1億5000万円、体育館や温水プールなどの大規模修繕費が2027年度までに年平均7800万円、年間で合計約2億2800万円かかることが想定されるほか、28年度以降の大規模修繕にいくらかかるかは不明であることから、市は議会や市民にさらなる説明が求められる。(鈴木宏子)
