水曜日, 4月 8, 2026

常陸利根川沿い香取市 佐原の大祭《日本一の湖のほとりにある街の話》13

【コラム・若田部哲】小江戸三市の一つとして知られる、千葉県香取市佐原。江戸時代、江戸を洪水から守るため利根川の東遷(とうせん)が行われたことから、利根川の水運と陸路の結節点として栄えた商業都市です。本コラムは「周長日本一の湖」霞ケ浦の周りの様々な営みをご紹介する連載。香取市って霞ケ浦に接していないのでは?とお思いの方もおられるかと思います。 ですが、古代、霞ケ浦は「香取海(かとりのうみ)」という広大な内海であり、堆積や干拓などの結果、現在の霞ケ浦(西浦)、北浦、常陸利根川へと姿を変えました。広義の霞ケ浦とはこの3つの水系の総体であり、香取市は北側でこのうちの常陸利根川に接しているのです。 この香取市を代表する「佐原の大祭」は300年以上の伝統を持ち、国の重要無形民俗文化財、ユネスコ無形文化遺産にも登録され、その文化的価値が非常に高く評価されているお祭り。今回は、千葉県唯一の重要伝統建造物群保存地区である佐原の町並みの中で開催される、この祭礼についてのご紹介です。 歴史的な町並みを山車が進む 祭りの間、町に響く「佐原囃子(はやし)」は日本三大囃子にも数えられており、このお囃子にのせて、歴史的な建物が建ち並ぶ佐原の町並みの中を、山車が家々の軒先すれすれに進みます。その様は迫力・風情とも圧巻の一言、関東三大山車祭りの一つに数えられるのもさもありなんというものです。 大祭は、7月の「八坂神社祇園祭」と、10月の「諏訪神社秋祭り」の2つのお祭りに分かれており、夏は小野川の東側に10台の山車が、秋は小野川の西側に14台の山車が登場。この山車、町内ごとにそれぞれとても個性豊かで、いずれも総欅(ひのき)造りの本体に重厚な彫刻が施され、上部には江戸・明治期に制作された、高さ4メートルにも及ぶ大人形が飾られています。 人形は「イザナギ」「スサノオノミコト」など日本神話にちなむものや、「神武天皇」「源頼義」などの歴史上の人物など様々。ちょっとユーモラスなものとして、「浦島太郎」や「鯉」などのものもあります。 若頭の打つ拍子木に合わせ、小野川沿いを曳き回される様はもちろん、狭い道路で山車がすれ違う場面も迫力満点。豪快な山車の引き回しと伝統的な町並みが織りなす風情を求め、35万人もの観光客が訪れるそう。まだご覧になっていない方は必見、江戸情緒あふれる素晴らしいお祭りです!(土浦市職員) <注> 本コラムは「周長」日本一の湖、霞ケ浦と筑波山周辺の様々な魅力を伝えるものです。 これまで紹介した場所はこちら

武蔵美卒業生らが茨城支部展 つくばで20回目

県内在住の武蔵野美術大学卒業生らによる美術展「武蔵野美術大学校友会茨城支部展」が4日、県つくば美術館(同市吾妻)で開幕した。20回目を迎えた今年は、30人の作家が絵画や手芸など103作品を展示している。 沼尻正芳さん(73)は、卒業生らが集まる校友会の茨城支部を25年前に立ち上げた。当初3年ほどは展覧会を開くことができなかったが、仲間が集まり、夢だった支部展を2002年につくば市二の宮のスタジオ‘S(関彰商事つくば本社1階)で初めて開催した。以来、スタジオ‘Sから市民ギャラリー(つくば市吾妻)、県つくば美術館へと場所を移し、コロナ禍で中止した2020年を除き、毎年開催している。 沼尻さんは冬の筑波山を描いた80号の油彩画「雪景色」など8点の作品を展示する。武蔵美大工業デザイン学科でテキスタイルデザインを専攻。学生の頃から油彩画が好きで描き続けている。秋の筑波山を描いた「収穫の頃」は5年前から描き始めたモチーフで、同じ構図で描くのはこれが3枚目になる。1枚目は売れ、2枚目は校長を務めていたつくばみらい市立伊奈東中学校に寄贈した。「筑波山はみんなが日々見ているものなので、適当に描けない」と話す。筑波山の木々の緑のグラデーションや、山に落ちる雲の影など、色を丁寧に重ねて描き上げる。 NEWSつくばコラムニストでもある川浪せつ子さん(67)は、沼尻さんと同じ工業デザイン学科テキスタイルデザイン専攻出身。10年前から描きためた160枚のイラスト「おいしい時間」と小品5点を展示する。「おいしい時間」はNEWSつくばのコラムにも掲載しているもので、県南地域の飲食店のメニューを水性顔料のサインペンで描き、透明水彩で鮮やかに着色した作品。絵に描くメニューはあらかじめ決めてからお店に向かうという。「毎回新しい描き方を試している。色が濁らないように気を付けて描いている」と話す。 冨澤和男さんは、武蔵美大通信課程の修了生で、卒業制作だった100号の作品「大地の恵み—冬―」や、つくば市手代木の風景を描いた「ユリノキ並木の大通り」など8点を展示する。「ユリノキ並木の大通り」は元々通勤路で、前から絵にしたいと考えており、去年の秋に描いた。冨澤さんのモチーフは野菜や果物、風景、動物が主だが、今回は人物画にも挑戦し、女性を描いた「黄色い衣装のひと」を展示する。「和綴(わとじ)製本」も制作。5種類の綴じ方で作った本7冊を展示している。 開幕初日は、来場した女性が作品の前で足を止め、作家らに画材や描き方について熱心に尋ねる姿が見られた。沼尻さんは「中央公園を散歩がてらふらっと入ってほしい。無料なので、アートに興味のない方にも見てもらえたら」と来場を呼び掛ける。(田中めぐみ) ◆「武蔵野美術大学校友会茨城支部展」は9日(日)まで。開館時間は午前9時30分~午後5時(最終日は午後3時まで)。入場無料。期間中の8日(土)午後1~3時は、野澤寿子さんによるワークショップ「SDGsなタッセル作り」が開かれ、古布や織物の残り糸を有効活用し、糸などを束ねた房飾り「タッセル」作りが体験できる。ワークショップは定員20人、参加費無料。参加申し込みはmsb.ibaraki@gmail.comへ。

4年ぶりにゴロが戻ってきた【桜川と共に】5

6月下旬、桜川漁業協同組合の2023年度総会がつくば市栗原、栗原交流センターで開かれ、29人の組合員が出席した。組合員の平均年齢はおよそ80歳で、最年少は49歳だ。総会では5月24日に起こったハクレン大量死の経緯や(5月27日付、6月2日付)、今年が10年に1度の漁業権の申請の年となることが報告され、今年度の予算や漁業権行使の規則などについても審議された。 昨年6月の正組合員数は108人だったが、高齢化による脱退で今年5月末には89人と減少。鈴木清次組合長は総会で「組合員や遊漁者を増やす努力が必要。そのためには魅力をつくらないといけない」と話した。外来魚を含む桜川の水産資源の活用について考えることが喫緊の課題となっている。 投網ができること必須 専業はおらず、自分や家族で食べる分だけを捕る組合員が多い。組合員になるには投網ができることが必須で、代々、親や先輩から投網を学んできた。投網を完全に修得するには10年かかるという。 今年、漁業権を申請する漁業の種類は、「こい漁業」、「ふな漁業」、「わかさぎ漁業」、「えび漁業」、「にごい漁業」、「おいかわ漁業」、「はぜ漁業」の7種類。「す建(すだて)」という竹や木を建てて網に誘導する漁法や、刺し網、巻き網などの漁法が許可されている。「す建」は5カ所、竹で十字に組んだ骨組みに網を付けてすくいとる「四手網(よつであみ)」での漁法は5カ所までなどと制限がある。「す建」は最近はやる人がおらず、「四手網」は1カ所のみで操業している。 四手網は全国最大級 桜川に1カ所ある「四手網」は1辺の長さが三間半(約6.36メートル)。川に設置してあるものとしては全国でも最大級ではないかと組合員らはいう。組合員らが知る限り、少なくとも80年ほど桜川で四手網漁法が続いている。「四手網」は竹で毎年作り直すが、作り方は現在、鈴木組合長一人しか分からない。継承しなければ四手網漁は絶えてしまう。 漁協には、「筌(うけ)」と呼ばれる筒状の伝統漁具など、昔から桜川で使われてきた竹材の道具も保存されている。これらも昔は手作りで作っていたが、今は市販のプラスチックのものが使われることが多くなった。 ゴロの遡上に歓喜 組合員の塙雅夫さん(81)は、投網や「長ぶくろ」と呼ばれる網を使った漁法で小魚やエビを捕っている。7月2日、塙さんが4日前に仕掛けた「長ぶくろ」を見に行こうとしていたところ、ゴロと呼ばれるハゼ科の小魚が桜川を帯状になって遡上してくるのを見つけ、知人に電話した。 「急いで網持って来てくんねえか」。電話を受けた知人が小さな四手網を持ってきた。胴長を着た塙さんが四手網を持って川へ入ると、ゴロがどんどん入ってくる。「すごい、すごい」。昼過ぎから3時間ほどで4キロほどのゴロが捕れた。 鈴木組合長もやってきた。「組合長、すごいよ」。「4年ぶりくらいに上がってきた」と鈴木組合長。塙さんの仕掛けた「長ぶくろ」の方にはテナガエビがかかっていた。ゴロと合わせて大漁だ。ゴロは佃煮にしたり、天ぷらにしたりするとおいしいという。集まった鈴木組合長や組合理事の松田七郎さんらは「どんどん入るね。(魚群の帯が)まだまだ来るよ、切れないよ」。「何が原因か分からないけど久しぶり。いいことだね。うれしいね」と話し、顔をほころばせた。(田中めぐみ) https://www.youtube.com/watch?v=jUkDN5QXz9I

防衛予算・財源の見通し《雑記録》49

【コラム・瀧田薫】6月16日、参院本会議で「防衛財源確保法」が可決され、成立した。衆議院のホームページ「立法情報」によれば、法案時の名称は「我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案」とあり、議案の種類としては「閣法」(内閣提出法案)とされている。 条文を一読した感想を率直に述べれば、自民党・防衛族議員を核として集合した利害関係者(与党議員、防衛省官僚と制服組、防衛関連企業とそのエージェント、金融機関その他)、その間で複雑に絡み合う思惑や利害得失、それに伴う権力闘争など、そこに生じた軋轢(あつれき)や混沌(こんとん)の様(さま)が透けて見える法案となっている。 特に財源確保の方法について、問題の先送りが目立ち、近い将来、こうした欠陥の修正が必要になると思わせる内容だ。 たとえば、増税をさけるために、「歳出改革」「決算剰余金」「国有財産の売却」「建設国債の防衛費転用」など、税金以外の収入を複数年にわたって確保することとして、一般会計に「防衛力強化資金」を創設することになったが、どれをとっても安定財源とは言えない代物だ。「歳出改革」は民主党政権時代の「事業仕分け」を思い出させる。 「決算剰余金」はもともと補正予算の財源に充てられてきたものであり、これを防衛費に転用してしまえば、コロナ禍後に膨張した補正予算の財源として赤字国債のさらなる増発が必要になるだろう。「国有財産の売却」は複数年度にわたって確保できるはずもない。 建設国債の軍事転用は戦争の教訓により、戦後長く「禁じ手」とされてきた。建設国債の使い道は公共事業(橋や道路)であり、この場合は資産として国富増につながるが、防衛費に転用すれば、その効用は失われる。建設国債の防衛費転用は増税の幅を少しでも小さくするための苦肉の策であろう。 国力は軍事力だけでなく総合力 結局、防衛費の財源は、赤字国債か増税の二者択一あるいは併用のどちらかに求めるしかないと思われる。いずれにしても、この先、国民にとって厳しい状況が待っている。インフレが続き、金利が1%上昇すれば、国債償還のために年間約3兆円強のお金が新たに必要になる。そうなれば、防衛費増など絵に描いた餅になる。 金利がさらに上昇すれば、財政破綻の可能性すらある。大増税となれば、消費が低迷し日本経済の地盤沈下が加速しかねない。 1940年代、大日本帝国の指導者は「日米開戦やむなし」として、勝算のない国家総力戦に乗り出した。現在、「防衛費増額やむなし」として、そこで思考停止してしまえば、この国の将来に明るい展望が持てなくなる。つまり、今回成立した「防衛財源確保法」については、この国の安全保障を考えるための一つのたたき台でしかないとの認識に立つべきなのである。 本来、国力というものは軍事力だけでなく、外交力、経済力、技術開発力、情報力そして教育も加わってはじめて更新される総合的な力であることを忘れてはなるまい。(茨城キリスト教大学名誉教授)

土浦市議会の珍事 少数派連合が議長選出《吾妻カガミ》161

【コラム・坂本栄】4月の土浦市議選挙で当選した議員による初議会が6月に開かれました。その初仕事ともいえる議長選びで、最大会派から議長を出すという慣例が破られ、複数小会派と無所属の議員が語り合って小会派の代表を議長に選出するという珍事が起こりました。これまで比較的平穏に運営されてきた市議会、これからは一波乱あるかもしれません。 公明党が独自候補→最大会派が敗北 今春の市議選のあと、市議会(定数24)の会派(議員グループ)色分けは、郁政会8、新勇会4、公明党4、共産党2、政新会2、社民党1、無所属3になりました。 議長選びは長い間、郁政会(選挙前は11)から内々候補を出し、公明党が内々支持して選出するというパターンが続いてきました。ところが今回は、新勇会4+共産党2+政新会2+社民党1+無所属2=11が島岡宏明氏(新勇会)を担ぐことで内々合意。公明党4が慣例を破って自会派の吉田千鶴子氏を内々立てたことから、郁政会8+無所属1=9が内々推す勝田達也氏(郁政会)が島岡氏に敗れました。 簡単に言えば、異なった政治理念を持つ小会派と無所属の議員が連合し、公明党が自前の候補を擁立して事実上の中立姿勢を貫いた結果、これまで議長を輩出してきた最大会派が敗北するという図式です。土浦市議会で一体何が起きているのでしょうか? 市長選前哨戦と反郁政会工作の場に 歴代議長(現職では海老原一郎氏→篠塚昌毅氏→小坂博氏。その前の内田卓氏→矢口清氏は今春引退)が属する郁政会の複数議員に何があったのか聞き出しました。 「春の市議選直後に郁政会を抜けて新勇会を立ち上げた島岡氏が多数派工作に動いた。安藤真理子市長は水面下で島岡氏を応援した」「前回市長選で郁政会は4期市長をやった中川清氏を推しており、今秋の市長選で2期目を狙う安藤市長としては郁政会の影響力を弱めたかった」「島岡氏の議長就任によって新勇会を核とする小会派が親安藤市長グループを形成することになる」 要するに、議長選出の場が市長選前哨戦と反郁政会工作の場にもなったということです。ドラマチックな展開であり、土浦市議会も面白くなってきました。 「若い新議員の声を反映させたい」 上記の解説については島岡議長と安藤市長に、郁政会にも小会派連合にも距離を置いた公明党の動きについては平石勝司代表に、聞いてみました。 「若い議員と新しい議員の声を議会に反映させたいと考えていた。議長選に挑んだのはその一環。若手や新人と勉強しながら(郁政会に多いベテラン議員から)若い議員にバトンをつないでいきたい。郁政会を出たのは重要教育関係事案で会派の他議員と考え方が違ったこともある」(島岡議長)。「いろいろな動きがあることは知っていたが、議会がやることに市長は関与してはいけないし、現に関与していない」(安藤市長)。 「他の2議長候補(いずれも3期目)に比べ市議歴が長く人物的にも優れた自会派の吉田議員(6期目)を立てた。議会に出される議案については是々非々(賛成も反対もする)で対応していく」(平石代表)。 いずれにしても、16年続いた中川時代の議会秩序が安藤市政下で崩れつつあるのは確かです。今回の議長選びを機に郁政会が反市長に傾き、議長選出では同調したものの理念が違う少数会派連合がばらけると、独自の立ち位置を保つ公明党が「キャスティングボート」を握ることになります。(経済ジャーナリスト)

県の発表受け「祝賀集会」 TX土浦延伸を実現する会

茨城県がつくばエクスプレス(TX)の県内延伸先を土浦方向に絞り込み、JR常磐線と土浦駅で交差させる構想を決定したことを受け、TX土浦延伸を実現する会(会長=安藤真理子土浦市長)は2日、クラフトシビックホール土浦(市民会館)で活動報告会を開いた。集会には、多くの市民のほか、土浦を選挙区に持つ国会・県会議員も参加、土浦駅接続に向けて活動を続けることを確認した。 大井川和彦知事は6月23日の記者会見で、学者らで構成される第3者グループの提言と、提言に対するパブリックコメント(意見公募)を踏まえ、昨年示した4候補(筑波山、水戸、土浦、茨城空港)から延伸先を土浦駅に絞り込んだと発表した。土浦延伸を実現する会の報告会はこの決定を受けたもので、あいさつ者からは土浦延伸のメリットと実現に向けての課題について発言があった。 「TXのTを土浦と読み替えたら」 安藤市長は「土浦延伸決定は私たちの熱く強い思いが実を結んだもので喜ばしい。皆さまが描いた夢が現実へと大きく動いたものと実感している。ただ、今やっとスタートラインに立ったということだ」と述べ、クリアーしなければならない課題が多い延伸に向けて気を引き締めた。 出席議員からは「つくば市から国会へTXで通っているが、TXで街が変わることを実感している。土浦にとってこの素晴らしい恵みの実現に向けサポートしていく」(国光あやの衆院議員)、「今、私が属する委員会では国土形成計画を審議しているが、これが終わったら広域地方計画をまとめる。この中にTX土浦延伸を盛り込みたい」(青山大和衆院議員)、「集会の名称『活動報告会』は控えめであり、『お祝い会』ではないか。この際、TXのTを土浦と読み替えたらよい」(八島功男県議)などの発言があった。 つくば―土浦に2~3の駅を整備? 最後に土浦商工会議所の中川喜久治会頭がこの日採択する宣言内容を説明。「実現する会のこれまでのスローガンは『TXを土浦へ』だったが、これからは『TXが土浦に』になる」とし、「常磐線とTXの接続により、筑波山・霞ケ浦などの県南観光地のみならず、茨城空港や県内全域の観光地へのアクセス向上が図られる」と、観光ビジネスの活性化に期待を示した。 報告会に先立ち、土浦延伸を実現する会の技術アドバイザーに就任した塚本一也氏(元JR東職員、元県議、大曽根タクシー社長)が講演。土浦方面決定の論点、現TX成功の原因、延伸ルートの決め方、新たな沿線開発―などを説明する中で、「総延長54キロの現TXには駅が20あり、単純に割ると2.8キロに一つ。TXつくば駅とJR土浦駅の間は約10キロだから、2~3の新駅が造られると予想される」と述べた。 さらに、土浦延伸実現に向けての課題として、①新たな利用者の確保②これまでの沿線開発を補完する都市機能の整備③JR常磐線と共存できる接続プラン④1都2県(千葉、埼玉)の理解を得られる延伸計画―などを挙げた。(岩田大志)

五十嵐市長はなぜ市民との責任ある議論を避けるのか【投稿・酒井泉】

議会の議決を経ずに高エネ研南用地を売却 五十嵐立青つくば市長は、2022年9月27日、高エネ研南用地(旧総合運動公園用地)46ヘクタールを外資系のグッドマンジャパンに一括売却しました。売却に先立って、パブリックコメントや市民説明会が行なわれ、市民からは様々な土地利用計画が提案されました。2021年6月に市議会特別委員会が出した提言書も一括売却には否定的であり、市民のための公共利用を優先する方針を提示していました。 また大穂地区の市民説明会では、五十嵐市長1期目の選挙公約の目玉「UR都市機構(国)への返還交渉」の具体的内容について問われましたが、それには答えず、「議会がOKすればそれが民主主義」と開き直っていました。 それにもかかわらず、2022年1月9日の市議会全員協議会で、市長は「(高エネ研南用地は)市土地開発公社の所有であり、市の所有ではないから、市議会の議決は不要」と言って、市議会の議論を経ることなく一括売却を強行したのです。これによってつくば市民が被る損失は以下の3点です。 陸上競技場?豊かな緑地?学園都市の未来? ▼市長も必要性を認めている陸上競技場は、誰もがその最適地と思っている高エネ研南用地ではなく、市の西端の上郷高校跡地に追いやられてしまったのです。 ▼市長が市民に約束した「公共利用」「緑豊かな街づくり」は、高エネ研南用地全体の1割程度の面積に防災倉庫を建設して、その屋上を緑化することで市民を欺こうとしています。市報に公表されている俯瞰(ふかん)図は、広角レンズの遠近強調効果により、まるで用地の半分が緑地であるかのように見えます。平面図は掲載されていません。 ▼これが一番重要な問題ですが、グッドマンへの一括売却によって、筑波研究学園都市の未来が閉ざされてしまいます。もう、新たな研究施設をつくる用地は研究学園都市の内部には無くなってしまいますから、研究学園都市の未来はありません。 市民説明会は時間切れで打ち切られましたが、市議会で十分な議論が行われていれば、これらの問題について、市長は市民が納得する説明を求められたはずです。市長が市議会での議論を避けたことは、市民説明会での「議会がOKすれば、それが民主主義」との発言にも矛盾します。市長の「公約無視」「市民無視」「議会無視」をつくば市民は容認してもよいのでしょうか? 議会裁決拒否の理屈は認められるのか? 五十嵐市長の市議会議決不要の理屈は「高エネ研南用地は、市の土地開発公社が買収した土地で、市の所有ではないのだから、売却について市議会で議論する必要はない」ということです。そして、2022年1月の市議会全員協議会で、一部良識派議員の強い異議申し立てがあったにもかかわらず、市長与党の多数派議員はこれを認めてしまったのです。 市土地開発公社は、公共用地の先行取得を目的につくられた組織であり、理事長は飯野副市長で、市長や部長が役員に連なり、その職員も市職員が兼務しており、給与も支払われていません。実質的に市と一体の組織ですから、この市長の理屈は明らかにおかしい。これが認められたら、市長や市職員が市民の税金を勝手に使うことが可能になります。しかも、議会の与党多数派がこれを認めてしまうのでは、市民は唖然(あぜん)とするばかりです。 地裁却下→高裁控訴、最高裁まで闘う この不条理を正すため、我々は2022年3月29日、住民監査請求を行ったものの、市の監査委員は市長の言い分を認め、我々の請求を却下しました。監査委員は市長が選任するので、これは予想されたことです。そこで我々は取り得る最後の手段として、司法の判断を求め、2022年5月20日、水戸地裁に住民訴訟を提訴しました。これは却下されましたが(2023年6月20日)、即、東京高裁に控訴しました。我々は高裁の判決によっては最高裁で闘うつもりです。 ▼住民訴訟の主旨:①市土地開発公社は、その実態がつくば市の行為であることが明白であるにもかかわらず、②形式的に土地所有者が公社であり、売主が公社であるとして、法の網の目をかい潜り、③地方公共団体の財務会計行為を、民主的なコントロールからすり抜けさせることで市民の目を欺き、市民に不利益な行為を行っている、④従って、グッドマンジャパンへの一括売却契約は無効である。 ▼水戸地裁の判決:公社は実質的にはつくば市であると見ることは相当ではない、として却下。 ▼高裁控訴の理由:①公社の行為実態が、まさにつくば市の行為であることが明白であるにもかかわらず、②非常に形式的に、実質的にはつくば市であると見ることは相当ではない、という理由で地裁は却下した、③地方公共団体の財務会計行為を、民主的コントロールからすり抜けさせることに手を貸すことは、法の番人たる司法府がその責務を放棄することである。 司法で問えるのは不条理の一部 我々は民主主義における司法の役割について諦めてはいません。五十嵐市長の不条理を正すため、司法の場での議論は今後も続けます。しかし、司法の場で問えるのは、市側の「市の土地開発公社は市とは別組織である」という形式論に対し、我々の「市の開発公社は市と事実上一体である」という現実論に限られます。 水戸地裁の判決は形式論を優先して、「(高エネ研南用地は)市の土地開発公社の土地だから、売却にあたって市長が市民(市議会)と議論しないことは合法である」としましたが、市長が市民・市議会と議論しても違法ではありません。違法どころか、市民・市議会と責任ある議論をすることで、問題のより良い解決策が望めるし、市長と市職員に対する市民の信頼度も上がる好循環が期待できるはずです。それにもかかわらず、なぜ違法性のリスクを冒してまで、市長は市民との責任ある議論を避けるのでしょうか? 司法の世界では形式論が優先される場合があったとしても、市民社会や政治の世界は現実論で動いています。市長が市民との議論を避ける不条理と、これがもたらす市民社会の損失については、市民の力(政治の力)の現実論で対抗することが重要です。 センタービル再開発でも議論回避 高エネ研南用地と同様のことは、つくばセンタービル再開発問題についても言えます。再開発に10億円を超える事業費を使うのに、市長はなぜ自分で決めた第三者委員会でその是非を議論しないのでしょうか? その理屈は「街づくり会社への市の6000万円の出資金は事業費とは別だから、(この分をマイナスすると)この事業は10億円を超えない」という形式論を用いた詭弁(きべん)です。 この詭弁に対しては、現実論では違法ではないか?という疑義が生じます。我々はこの点についても、住民監査請求を経て住民訴訟を行いました。しかし、高エネ研南用地判決と同じ日に出された地裁判決は、またしても形式論に堕した「街づくり会社への出資金はセンター地区の再開発の事業費とは別であり、第三者委の審議は不要」というものでした。 「第三者委の審議は不要」が合法であっても、第三者委で議論することは違法ではありません。第三者委での議論があれば、五十嵐市長と関係が深いと言われている人物らが街づくり会社に共同出資することで、センタービルの半分の面積を占有することの是非も議論され、市民が納得できる説明が求められたはずです。(元高エネルギー加速器研究機構准教授、元福井大学教授、つくば市在住)

「転ばないようにね」の危険性《続・気軽にSOS》136

【コラム・浅井和幸】高齢になると転倒事故はとても危険です。大けがにつながったり、歩行困難になる障害が残ったりすることもあるでしょう。なので、出来るだけ「転ばないようにね」と声をかけることは間違っていません。 さらに転倒防止のために、転倒リスクがある場所に手すりをつけたり、滑りにくい素材の床材を使ったり、段差をなくしたりと対応します。これらの手法は、転倒しにくい環境づくりとして推奨されます。 転倒リスクは環境だけではありません。高齢者自身の筋力や運動能力、視力などの衰えも転倒リスクとなります。なので、運動をすることも推奨されるのです。 ですが、環境づくりがうまくいくことで転倒しにくくなりますから、運動などして自分を鍛える必要がなくなるという捉え方もできます。そうなると、自分自身の能力である部分での転倒リスクが上がるということが起こるでしょう。バリアフリーが進みすぎると、余計に転倒しやすくなると言われるゆえんです。 転倒防止のために、運動をして自分自身の転倒リスクを下げることになります。そこで、転ばない練習と転ぶ練習が大切で、両者は似て非なるものです。柔道で相手がこちらを倒そうとしてくるところを、一生懸命にバランスをとってこらえるのが倒れない練習で、自ら積極的に倒れて受け身の練習をするのが倒れる練習と言えるでしょう。 そうは言っても高齢化すれば、努力しても筋力や運動能力が相対的に下がっていくので、転ぶ練習をしろとは言いにくいものです。転ぶ練習で骨折したら目も当てられません。それでも、出来る範囲で練習をした方がよいのではないかなと思います。 それが、まだまだ成長段階の未成年から中高年までであれば、積極的に転ぶ練習をした方がよいでしょうね。転ばない練習で得た身体操作は、いざ転んでしまったときには役に立たない技量ですから。 失敗によって得られる貴重な経験 これは、勉強でも、仕事でも、人間関係でも、他の社会生活でもすべてに当てはまります。自己肯定感とか、成功体験とかの経験、練習はとても大切です。ですが、いかに失敗した経験から立ち直れるかの練習もとても大切なものなのです。成功体験ばかりに意識が偏ってしまうと、いざ失敗した時に受け身が取れずに大きな支障が出てしまうことになりかねないのです。 絶対負けられない試合、絶対失敗してはいけないこと、絶対に…、このような場面が生きていてどれぐらいあるものなのでしょうか。絶対ミスをしてはいけないのであれば物事を行わない、絶対負けないと言うことは明らかに弱い相手と戦うか、試合をしない、ひきこもれということになります。 親や支援者が、子どもや被支援者から失敗によって得られる貴重な経験を奪ってはいけません。自分が前に進めなくなったとき、どう相手に接してよいか分からなくなったとき、失敗しない方法ばかりでなく、どこまでなら失敗してもよいだろう、失敗させてもよいだろうかと考えるくせをつけることで、道が見えることもあります。(精神保健福祉士)

里山の昆虫に見る生物多様性《宍塚の里山》102

【コラム・吉武直子】近年、COP18(国連気候変動枠組条約第18回締約国会議)の生物多様性戦略やSDGs(持続可能な開発目標)に見られるように、健全な生物多様性を保つことが世界的に重要な課題となっています。 里山は人が手を入れて維持管理してきた環境で、林、田んぼ、草地、池、水路、湿地といった、いくつもの異なる小さな環境の複合から成り立っています。そこには多くの生物が生息しています。中でも昆虫は様々な環境に適応し進化した生物で、言い換えればどんなところにでもいるとも言え、このような複合環境では非常に多くの種を確認することができます。 また、植食性昆虫や訪花昆虫に見られるように昆虫と植物の間には利用しあう深い相互関係があり、生息する植物の種数が多ければ昆虫の種数も多いとも言えます。今回のコラムでは、この昆虫についてお話します。 未知の種が見つかる可能性 宍塚の里山からは何種もの昆虫の新種が発見されています。近年での一例を挙げると、1994年にNipponosega yamanei Nicolai V. Kurzenko Arkady S. Lelej 1994 ナナフシヤドリバチ、2020年にPilophorus satoyamanus Yasunaga Duwal Nakatani, 2020 カスミカメムシ科の1種が新種記載されています。 生物の新種は、その種の1個体以上の標本を指定し、特徴や近縁種との区別を明確に記した記載論文を発表することで認められます。これらの種も宍塚で採集された標本を元に書かれています。踏査し、採集し、調べれば、宍塚からこれから先も未知の種が見つかる可能性が大いにあります。 生物種の記録を共有する ある地域にどんな生物種がいるのか、過去どんな生物種がいたのか、地域生物相を知ることは生物多様性の保全の基礎となるものです。生物の種名を決定する同定はその中で不可欠な作業です。 脊椎動物では目視、全形写真、声、食痕や足跡から同定できるものがほとんどです。昆虫は大型種では同定ポイントが写った全形写真、セミ類やコオロギ類のように種固有の鳴音を発する種ではその音から同定ができますが、小さな昆虫では体の外部構造を細かく観察する必要があります。 そのため、小さな昆虫は乾燥してマウントしデータラベルを付けた標本にして同定することが多くなります。また、標本はいつ、どこにどんな種がいたのかを記録する実物の証拠でもあります。最近はSNSに写真を上げて種名を人に聞いたり、記録報告したりすることが多くなりましたが、実物に優れるものはありません。 地域の生物相を記録する標本は重要なもので、公共の財産として扱われるのが望ましいのですが、標本資料はその保管に人の手やスペースを大きく要します。近年、博物館などの文化研究施設が縮小される中、寄贈などで増え続ける標本の保管は問題となっています。標本が失われることを念頭に置いたうえで、それを生かすには分布の報文や種のリストを公共の場に向けて発信することが現状での着地点かと考えています。 生物多様性戦略に向けて、宍塚の会でも生息する生物種の情報を共有しようという動きも生まれ始めています。記録には多くの人の目と手と知識が必要です。年月を重ねて専門性を高めた人でも、最初は「野外を歩いてみよう」「この生きものはなんだろう」から始まります。ぜひ、里山を散策したり、宍塚の会の観察会に参加したりしてみてください。(宍塚の自然と歴史の会会員) 【写真の説明】(左から)カオジロヒゲナガゾウムシ(初夏、雑木林内の菌が入った落枝や朽ち木で見られます) コカマキリ(秋、草地や林縁で見られます) アオオサムシ(春~夏に林床や散策路を歩いている姿が見られます)

共同開発と実証実験施設建設へ 筑波大 つくば駅近くに2027年完成目指す

筑波大学(つくば市天王台、永田恭介学長)は29日、つくば駅近くの同市吾妻2丁目、筑波大職員宿舎跡地約3万3400平方メートルに、大学と企業が共同で開発研究と実証実験を一気に行うことができる施設「ITF.F(イマジン・ザ・フューチャー・ドット・フォーラム)」を建設すると発表した。2027年の完成を目指す。 施設は延床面積約4万3000平方メートルで、企業が研究機器などを設置し大学と共同研究する「研究スロット」(延床面積計約1万4000平方メートル)と、ドローンの実証実験も可能な縦横100メートル×70メートル、高さ22メートルの大きさがある「実証実験(POC)スペース」(同約7000平方メートル)のほか、オープンスペースなどを設ける。開発した成果をすぐに実証実験できることが特徴だ。 大学の研究成果から新商品をつくったり新規事業を創出するシーズドブリン型から、顧客ニーズに基づいてさまざまな企業と新規事業を創出するニーズドブリン型の開発研究を進め、大学の研究力によって、企業や社会の課題を解決し社会実装までつなげていくことを目指す。つくば市が推進している「スーパーシティ構想」とも連携し市の発展にも寄与したいとする。 当初、東京五輪開催の2020年を目指し、スポーツの試合やイベントなどを開催するアリーナの建設を計画していたが、収益性から計画を見直した。 大学債の発行によって調達した資金200億円(2022年10月12日付)などを活用して筑波大が建設し、入居企業から賃料をとって運営する。 実証実験スペースは、実験の利用がない日は、スポーツの試合やコンサートなどイベント開催のほか、展示場としても活用できるようにする。10~20社入居でき、大企業を中心にすでに、AI(人工知能)、エンターテインメント、人工衛星、半導体、スポーツ、金融、小売り、製造分野の10社から参加意向の表明があるという。 現在、職員宿舎の解体工事が始まり、来年3月までに解体を終える。着工は現時点で未定という。

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