イベントのリアルタイム情報を配信 筑波大発ベンチャー ラーメンフェスタで挑戦
つくば市の研究学園駅前公園で7日から開催される「つくばラーメンフェスタ」で、筑波大学大学院生の熊谷充弘さん(22)が社長を務めるベンチャー企業「Palames(パラメス)」(つくば市吾妻)が、同フェスタの混雑状況や売り切れ情報などを同社の開発するプラットフォーム「dokoiko(どこいこ)」でリアルタイムに配信する。
dokoikoは「メニュー画像を通じて飲食店を探せる」を掲げるウェブサービスだ。ウェブページにアクセスすると、さまざまなメニュー画像が表示され、気になるメニューがあれば店舗情報を確認できる仕組みだ。現在はつくば市の飲食店を中心に情報が集まっている。熊谷さんは「イベントを中心にして、街が活性化していくことを応援したい」と話す。
授業で集まったメンバー
事業のきっかけは授業での出会いにある。大学が行う起業家を育成する講義「筑波クリエイティブ・キャンプ」の授業で集まったメンバーたちが「授業が終わってからもこのメンバーでなにかをやっていきたい」と意気投合し、会社設立に至る。
熊谷さんたちがまず考えたのは、食堂のデジタルトランスフォーメーション(DX)だ。大学の食堂は、食券機で注文し現金で支払い、料理を受け取る形だ。それをスマートフォンから注文し、電子決済を行い、注文した料理が出来上がったら、スマートフォンに通知が届くようなシステムを発案した。しかし学生の力だけでシステムを開発することは技術的、資金的に困難であると考え、事業転換した。
続いて考えたのがdokoikoだった。熊谷さんは「若者はインスタグラムなどのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)で画像から良い飲食店を探し、気になったところがあって初めてグーグルなどで検索をしてネット上を何度も行き来する。この行き来をせずにメニュー画像から直接お店を探せるプラットフォームがあったら便利なのではないかと考えた」と振り返る。
dokoiko内の店舗情報は、その店舗のスタッフがサービス内の画面から入力できる仕組みだ。
サービスの利用料は、店舗側も一般の利用者も基本的に無料だ。店舗側が利用者にメッセージを通知する機能があり、その機能の利用時には店舗側に料金が発生する仕組みになっている。来年までにつくば市の飲食店の30%が登録し、利用者数が1万人を超えることを目標に掲げている。
2020年の夏ごろから開発を始めた。今年4月に株式会社として登記をし、本格的な収益化に向けてスタートを切った。熊谷さんは今年の4月から同大大学院の理工情報生命学術院システム情報工学研究群知能機能システム学位プログラムに進学しているが、dokoikoに専念するために休学中だ。
現在、会社に関わっているメンバーは8人。そのうちの7人が同大の学生や卒業生などだ。熊谷さん自身もITエンジニアで、高校生時代には学園祭のホームページなどを作った経験もあるという。
イベント後も誘客
ラーメンフェスタでは、熊谷さんらから主催者に対し提携の打診を行い、イベントのリアルタイム情報をdokoikoで提供することが決まった。提供情報は、ラーメンの売り切れ情報や、店舗のメニュー情報、混雑の度合いなどだ。
dokoikoでは、イベントに出店するラーメン店のイベント当日のメニューだけでなく、店舗の通常営業時の情報も紹介できる仕組みになっている。イベントで出会ったラーメン店に、イベントが終わっても足を運んでもらうためだ。
「今後の方向性として、イベント時の情報提供や決済を担うためのプラットフォームとしても機能を強化していきたいと思っている。既存のウェブサービスでは、固定店舗の情報を知るための機能は備わっているが、イベントやキッチンカーの出店についての情報を収集できるサイトはない」と熊谷さん。イベントで出店した店舗の通常営業を利用者に紹介することで、イベントが終わった後もその店舗を利用してもらうことを促すことができるのが、dokoikoの強みであるという。現在、会社の資金調達やさらなるサービス拡大、収益化に向けて活動中だ。ラーメンフェスタでの情報提供は、熊谷さんたちにとっても大きな一歩となる。(山口和紀)
◆dokoikoへのアクセスはこちら。Palamesのホームページはこちら。つくばラーメンフェスタの特設ページはこちら。
16人の交通費を別の学校医に誤送金 つくば市
つくば市は6日、学校医143人に9月29日に振り込んだ3カ月分の交通費(旅費)のうち、16人の支払先を誤り、本来支払うべき学校医とは別の16人に、それぞれ2000円ずつ計3万2000円を上乗せして支払ってしまったと発表した。
学校医は、児童生徒の健康診断をしたり、環境衛生の指導などをする内科医や歯科医、薬剤師などで、市内の小中学校や幼稚園、保育所に計197人が委嘱されている。学校で職務に従事した際は、費用弁償として1回2000円の交通費が数カ月に一度支払われ、報酬については年度末にまとめて支払われる。
市健康教育課によると、5、6、7月分の交通費総額41万4000円分を143人に支払う事務作業をした際、16人が従事した16回分について、誤った情報を会計事務局に送り、別の16人に上乗せして振り込んでしまったという。
担当者が作成した支払伝票を上司が再チェックした際は誤りが無かったが、口座振込を担当する会計事務局にデータを送る際、チェック済みの正しいデータではなく、別の誤ったデータを送ってしまったのが原因という。
10月5日に医療機関から電話があり、誤送金が分かった。143人分について改めて調べたところ、16人の学校医が従事した16回分について、別の学校医16人に支払っていたことが判明した。
同課は6日、まだ支払っていない16人と、誤って上乗せして支払った16人に電話連絡し、謝罪した。来週には医療機関を訪問し、上乗せして支払ってしまった学校医に対しては返還してもらい、未払いの学校医には早急に支払うとしている。
再発防止策として同課は、決済後の伝票のデータと会計事務局に送るデータを複数人で再度突合した上で、データを会計事務局に送付するとしている。
4年ぶり、今年が最後 7日から「つくばラーメンフェスタ」
県内外のラーメン店12店がブースで出店する「つくばラーメンフェスタ」が7日から9日までの3日間、つくば市学園南の研究学園駅前公園で4年ぶりに開催される。2011年の東日本大震災と翌12年の北条竜巻災害からの復興を目指して、12年にスタートした。今年で9回目となるが、当初目的の復興や地域振興を達成し一定の役割は終えたとして今年が最後の開催になる。
同実行委員会(中根才之委員長)が主催し、同市商工会青年部(中泉惠仁部長)が中心となって運営する。市内には約100店のラーメン専門店が点在ししのぎを削っているなどから、ラーメン激戦区つくばを象徴するイベントとなっている。
今年は、県内のラーメン店同士がコラボするのが特徴だ。各店の特色を掛け合わせ、イベントでしか食べられない特別な一杯が提供される。コラボ店は「活龍×甲殻堂」「龍介×特龍」「ドラゴンラーメン×喜元門」「麺堂稲葉×栃木中華そば 神志」「芛堂寺×与しおか」「麺屋必道×中華そば 貴将」。ほかに県外の人気店、新旬屋本店(山形)、よしかわ(埼玉)、ダイニング庵(群馬)、麺や食堂(神奈川)、ど・みそ(東京)、モヒカンラーメン(福岡)の6店が出店する。
1回リセット
中根委員長(44)は「約10年やってきて今回で最後とする。来年から別のイベントを始めたい。1回リセットして、つくばをどうやって盛り上げていくかをみんなで検討し、何が必要なのか熟考し、これから1年間かけてつくり上げていきたい。部員がさらに成長できるようになれればいい」と話す。
同フェスタは10月の3連休に研究学園駅前公園で開催されてきた。例年12~18店ほどが出店し、3日間で10万人~12万人の来場者を集めてきた。会場が駅に近いということもあり、来場者は市内のほか、周辺市町村、東京都や千葉県からも訪れる。
スタート当初から運営に関わっていた市商工会前青年部長の宮川宏行さん(37)は「自分が部長だった年はコロナ禍で開催出来なかった。このままフェード・アウトしてしまうのはあまりに寂しいということで、今回、コロナ前と同じ規模で開催することになった。第1回の2012年は初めてということもあり、会場準備などで大変苦労したが復興への強い思いがあった」と振り返る。「このフェスタをやったことで青年部の質が変わったと思う。人のためになることや人に喜んでもらえることをやった結果が、自分たちのためになるということを実感した」と話す。
18年に実行委員長を務め、現在岐阜県に住む沖村瑠璃さん(38)は「新入部員時代に第4回目のフェスタを体験し、めちゃくちゃ大変だったけれど、めちゃくちゃ楽しかった。2018年に実行委員長となり役割を終えた後、自信を持って物事をやり遂げることが出来るようになった。イベントをやりきることができたことで、イベント構築のノウハウを学んだり、たくさんの大事な友人ができたりとたくさんの恩恵があったと思う。いつまでも同じコンテンツにしがみつかずにやっていこう、という新しい執行部・役員たちの決定を尊重し、イベントを無事終えることができるよう応援したい」と語る。(榎田智司)
◆つくばラーメンフェスタは7日(土)、8日(日)、9日(月・祝)の3日間開催。ラーメン提供時間は各日午前10時~午後7時。会場の研究学園駅前公園はつくば市学園南2-1(TX研究学園駅前徒歩3分)。一部スペースにて「ミニ餃子フェスタ」も同時開催される。入場は無料、ラーメンの価格は全店舗 1杯1000円。詳しくは同ホームページ、または電話029-879-8200(同商工会青年部)
なくなるものと残ったことば 《ことばのおはなし》62
【コラム・山口絹記】最近、撮影機材に新たなミラーレス一眼カメラを導入した(以前の記事に書いたものとはまた別のカメラだ)。
ミラーレスカメラと言うのはその名の通り、ミラーが無いカメラなのだが、このカメラ、機械的なシャッター機構もないのである。ミラーもなければ、シャッターもない。シャッターを切っても、じゃなかった、“写真を撮っても”、カメラの中ではなんの機械的機構も動かない。
これは、私にとってはとんでもないこと、一つの時代が終わってしまったような出来事なのだが、おわかりいただけるだろうか。おわかりいただけないかもしれない。おわかりいただけなくて、たぶんよいのだろう。
フィルムカメラの時代には、シャッターというのはカメラにとって基本的に必要な機構だった。使い捨てのインスタントカメラにも、一眼レフにも、二眼カメラだろうがレンジファインダーだって、作りは違えどカメラにはシャッターがあった。
しかし、カメラがデジタルに移行していくなかで、比較的安価で、コンパクトなカメラが機械的なシャッターのない機構を採用するようになり、今、この記事を読まれているあなたがお持ちのスマートフォンのカメラにも機械的なシャッターはない。
「いや、私のスマホ、写真撮るとシャッター音するけど?」と思われるかもしれないが、それは“シャッター音”をスピーカーから鳴らしているだけだ。使用するアプリを変えたり、スピーカーが壊れればシャッター音はしなくなる。
だから、一般的にはとっくのとうにシャッターなるものはなくなっていたのだが、それがいよいよ本格的なカメラでもなくなり始めたのだ。なぜ本格的なカメラでは、この機械的なシャッターが必要だったのかは、書き始めると長くなるし、この記事の本題ではないので書かない。気になる方は調べてみてほしい。
「シャッターって何?」
それまで生活に根差していたものも、技術が進歩したり、人々の考え方が変わる中でなくなっていくのは一般的なことだ。レコードに針をのせなくても、カセットテープを巻き戻さなくても、CDがなくとも音楽は聴けるようになった。
まだまだ「巻き戻し/早送り」ということばを見聞きすることはあるけれど、そのことばの意味する本質を理解する人は確実に減っていく。シャッターという仕組みがなくなっても、シャッター音、シャッターボタン、なんてことばはしぶとく生き残っていくような気がする。
我々が使うことばはとても儚(はかな)い存在だ。一方で存外にしぶとかったりもする。私もいつか、自分のこども、もしかしたら孫に、「シャッターって何?」と訊(き)かれるかもしれない。そうなった時、私は「昔はね…」なんて語りだすのかもしれない。まったく興味深いものだ。(言語研究者)
石蔵に 踊る100体 テラダヒデジさん 筑波山麓で個展
筑波山麓のつくば市神郡、大谷石造りの米倉を改装したスペース「石蔵Shiten:」で4日から、土浦市生まれのペインター、テラダヒデジさん(43)による個展「ODOLI(踊り)」が開催されている。
展示作品は、自由に踊る人の姿を画面いっぱいに墨で描いた、縦約1メートル、横約73センチの作品など100点。各作品には日本各地に伝わる民謡のはやし言葉が添えてある。会場では民謡を基調とする音楽が流れ、祭りを感じさせる内容となっている。
テラダさんは、日本の伝統や風習、神社仏閣や古建築など、古くから人々の身近にあった形を、デザインやイラストなどに取り入れ、古い形と現代の意味を混ぜ合わせた作品を制作している。
今年8月、浅草花劇場(東京都台東区)で開催された津軽三味線小山流三代目、小山豊さんのイベントの会場装飾として制作されたもので、浅草では会場内を埋め尽くすように吊り下げ、来場者や演者たちと共に会場全体に祭りの息吹を吹かせたという。
石蔵近くに住む藍染作家の紹介で、つくばでの開催に至った。
テラダさんは「テーマは『踊り人、百人集まりゃ祭りとなる』とした。踊りに型のなかった時代、人々は自由に音に乗り、体を揺らし、雑然としながら、一体感を生んでいたと思う。今回展示した、フリースタイルで踊る100体もの人々の姿は、視覚を楽しませるにぎやかな姿となり、音楽を自由に楽しむ呼び水となるはず」と語り、「(作家が)見方や意味を語ってしまうと固定されたイメージがつくられるので、見たままを感じてもらえばいい」と話した。(榎田智司)
◆同展は10日まで。会場はつくば市神郡111。開館時間は午前11時~午後5時。入場無料。開催期間中、カフェ「TSUKUBA36COFFEE」がオープンする。
医療通訳ってどんな仕事なの?《医療通訳のつぶやき》1
【コラム・松永悠】医療通訳ってどんな仕事なの?と、私はこれまでいろいろな人から聞かれました。確かになじみのない仕事ですよね。多くの人にとって通訳というと、会議通訳や観光ガイドのイメージが強いのかもしれません。しかし商談や観光は、通訳が登場する一場面に過ぎません。
グローバル化が進む今では、私たちの隣人や同僚、子供の同級生の中に当たり前のように外国人がいます。そんな彼らも病気になれば病院で受診することになります。日常生活に困らない程度の日本語ができても、病院に来れば話が違ってきます。
治療はインフォームドコンセント(医師の十分な説明と患者の同意)を大前提としているため、患者は医師の説明を正確に理解しなければなりません。誤解や勘違いは、後に大問題になりかねないため、医師も外国人患者に極めて慎重に対応しているのです。
ここでいよいよ医療通訳の出番です。この仕事をするために、語学だけでなく、人体の構造や様々な検査、病気などの専門知識を幅広く勉強して、さらに医療通訳技能検定試験にも合格しなければならず、医療通訳は通訳の中でも極めて専門性の高い職種です。
医療通訳が医師の説明を患者に、そして患者の要望や疑問を医師に、さらに医師の回答を患者に返すということを繰り返していきます。最終的には両者が満足のいくコミュニケーションが取れ、スムーズに治療することができるようになります。
診察中のどこかで誤訳があったら、信頼関係だけでなく、トラブルに発展してしまうので、とにかく責任重大です。忠実に訳すことは基本中の基本で、さらに患者の話に隠された心配や疑問、うまく説明できない部分まで気付き、拾い上げ、確認してから医師に伝えるところまでできれば上級者です。
日本の医療制度を理解するのも大変
母国語で自分の病気を説明するのは簡単だと思う人もいますが、一概には言えません。表現力や語彙(ごい)力の足りない患者もいるのです。
そういうときは、私が誘導して伝えたいニュアンスをうまく引き出すことも非常に大事です。一口に「痛い」と言っても、ズキズキ、ピリピリ、ジンジンもあれば、鋭い痛みに鈍い痛み、波を打つような痛みなど、いろいろあります。ときには時間をかけて説明して、きちんと理解してもらってから次の話に進みます。
診察だけでなく、多くの外国人患者にとって大変なのは日本の医療制度への理解です。保険証の正しい使い方から高額療養費控除まで、わからないことだらけです。ここでも、私から説明したり、病院の医療ソーシャルワーカーさんに力を借りたりと、他の医療従事者と連携プレーをすることで、外国人患者も日本人患者と同じ治療が受けられるようになるのです。
大変な部分ももちろんありますが、そんな苦労よりも、やり遂げたときの達成感が一番のご褒美です。外国人患者を助けることは日本人医療従事者を助けることでもあるので、時間と体力が許す限り、第一線に立ち続けたいと願うばかりです。(医療通訳)
【まつなが・ゆう】北京で生まれ育ち、大学で日本語を専攻した後、日系企業に就職。24歳のとき、日本人夫と結婚して来日し、気がつけば日本にいる時間が長くなっています。3人の子供を育てながら、保護犬1匹、保護猫5匹も大切な家族。子育てが一段落した今、社会のために、環境のために、何ができるか、日々模索しています。
とんこつ味「おいしさ」の官能評価 農研機構食品研究部門に聞く
食欲の秋―、農研機構食品研究部門(つくば市、髙橋清也所長)は11月8日、食品研究成果展示会を開く。メーンの公開講演会では「おいしさ分析の新展開」をテーマの一つに掲げた。「おいしさ」は科学的にどう研究するのか? 分析法の「官能評価」はどうやるのか? 同研究部門食品流通・安全研究領域の中野優子さん、早川文代さんに話を聞いた。中野さんが中心になって開発したのは、動物性・植物性のとんこつ(風)スープに適用可能な官能評価法。ラーメン店やカップめんですっかり定番化した「とんこつ味」だが、一方で宗教上や健康上の理由から動物性を避け、植物性で代替する食品の需要も募っている。しかし、動物性食品と比べて「物足りない」という評価が根強くあって、食品製油メーカーとの共同研究が2021年にスタートした。研究で用いた「官能評価」は、目、鼻、舌など人間の感覚器官を使って、素材の性質を評価する。「おいしさ」は極めて主観的で抽象的な感想だが、これを定性的・定量的にとらえて第三者と共有できる形式にしないと科学的分析にならない。食品研究部門には、一定以上の味覚や嗅覚の感度をもつ「パネリスト」と呼ばれる評価者がいる。現在15人程度が委嘱され、訓練を受けている。今回は7人のパネリストが、市販の33種類の動物性・植物性とんこつ(風)スープについて、実際ににおいを嗅いだり食べたりして、その特徴を言葉で表現した。ここで得られた289語の言葉を整理し、動物性・植物性スープの特徴を表現する33語の評価用語を決定した。パネリストはこの用語に基づいて「塩味」や「うま味」などを0点から150点の間で評価し定量化するのだそうだ。これらのデータについて、今回は「主成分分析」(PCA)という統計解析方法が用いられた。中野さんによれば、「あらかじめ縦、横の座標軸を設けて二次元的に置いていくのではなく、(三次元的な)数値をマッピングしたうえで分散が最大となる軸を新たに見つけ出す」と説明される。多くの変数を持つデータの統計的処理でよく用いられる手法で、再現性も高いという早川さんは、官能評価に関わる語彙(ごい)を扱う専門家だ。今回でいえば、データの特徴を表す第1主成分、第2主成分の軸によって動物性食品らしさ、植物性食品らしさが浮かび上がる。これに動物性のとんこつスープ(5種)、植物性のとんこつ(風)スープ(7種)をあてはめた結果が下図。スープの香りや味の特徴を視覚的に表している。
研究ではさらにとんこつスープの 「動物っぽさ(動物感)」に着目し、一般消費者34人の参加を得て、22種類のスープの動物感の強さを評価してもらった。その結果、動物感の強さの評価には個人差が大きいものの、動物感のとらえ方には複数のパターンがあると分かった。動物性のとんこつスープからは、油脂感、獣臭、しょうゆの香りなどの言葉で表現される特徴が感じられ、一方、植物性のとんこつ風スープからは、ショウガの風味、野菜の風味、鶏がらスープの香りなどの言葉で表現される特徴が感じられた。こうした分析から、植物性のとんこつ風スープの「物足りなさ」を埋める要素の提示は出来たという。スープの特徴と、消費者が実際に食べた時に感じる動物感やおいしさを、個人差を考慮しながら照らし合わせることで、とんこつ(風)スープの味や香りをどのように制御すれば消費者一人ひとりにより高い満足感を与えられるかが具体的に分かるようになるとしている。(相澤冬樹)
◆11月8日につくば国際会議場(つくば市竹園)で開く研究成果展示会では、「おいしさ分析の新展開」が公開講演会冒頭のテーマとなる。早川さんが「官能評価用語に関する最近の話題」を、中野さんが「個体差や個人差を考慮した官能評価の取り組み」を、それぞれテーマに発表するなど4講演が予定されている。詳しくはこちらまで。
駐車場の手前で思ったこと《続・気軽にSOS》142
【コラム・浅井和幸】先日、あるお店に入るのに、小道から駐車場へ右折しようとしました。私が運転する自動車の前を走る自動車は慎重に歩道を歩く歩行者を観察してから右折を始めました。歩行者の動きを確認してから動き始めたはずのその車は、私が考えるコースとは違う方向に徐行し始めたので、私はすぐにその車の後についていかずに、ことの様子を停車したまま見守りました。
私の前の自動車の前を横切る歩行者は、自動車前方から後方へ歩いています。自動車が右折をすることを考えると、歩行者は左側から右側へ歩いている状況です。私の前の自動車は、歩行者の今は空いている前方に向かって徐行し始めたのです。
もちろん、その瞬間は、歩行者はまだ左側にいるので、右側が空いている状況です。しかし、今、左側にいる歩行者は数秒後には右側に移動するのです。結果、自動車は歩行者が向かう数メートル先で数秒後に接触することが予想されます。結局、数秒後に、自動車は自分の目の前を歩行者が歩いていることになったため、停車することとなりました。
徐行ですから、特に危険な場面ではありません。しかし歩行者が先ほどまでいた地点は、現時点では歩行者の後方(自動車からは左側)となり大きく空いているのです。わざわざ歩行者が向かう先に車を移動させて鉢合わせになり停車するよりも、数秒待っていれば歩行者をやり過ごして、私の前の自動車は10秒弱という時間ではありますが早く駐車場に入れたことになります。しかも、歩行者にぶつかりそうになるかもと足を止めさせるような気を使わせずに。
現在の常識は何十年前の常識?
このように人や時間、物事はそこにとどまらずに未来に進んでいます。今現在の止まった感覚で空いているスペースに車を移動させることは、数秒後には空きスペースではなくなることがよくあることです。
将棋やゴルフで活躍し大金を手にするヒーローが出てきて、我が子にもそれらを学ばせようと考えるとします。確かに、そのブームがあることで競技が盛んになり、レベルも上がることでしょう。しかし、競技人口も増え、苛烈(かれつ)な争いに我が子を送り出すことは、賞金から遠くなる可能性もあります。
ブームの店を出すことで、供給過多となり、倒産・借金の道が待っているかもしれません。今考えている常識や普通は、何十年前の時代に合った教えかも知れません。先を見通すことは、我々凡人には難しいこと、いや、できないことだといっても過言ではないでしょう。しかし、これが当たり前だと思い込むことは、悪循環を起こしやすく、そのときは注意して観察、または信頼できる人に相談しましょう。
今や、過去に固執して、それをこれからの流れと思い込んで行動してしまうことは、人の進行方向が10秒後も空きスペースだと勘違いして、結果、その人と接触してしまうような動きをしているのかもしれないのですから。(精神保健福祉士)
2024年の米大統領選挙(1)《雑記録》52
【コラム・瀧田薫】次期アメリカ大統領選挙は前回選挙(2020年)の再現になると予想されている。各種世論調査では、2020年選挙時と同様に、ジョー・バイデン氏(民主党)とドナルド・トランプ氏(共和党)がそれぞれ党指名候補に選ばれる可能性が高いとされている。
バイデン氏については、支持率は4割台前半にとどまり、経済に関しては3割台の低支持率が続いている。彼が80歳の高齢であることを懸念する人も多い。しかし、一方で、彼が2020年選挙でトランプ氏に勝利し、共和党の圧勝が予想された2022年の中間選挙でも民主党が上院の多数派を維持し、下院で失う議席を小幅にとどめた実績が効いていて、民主党内にバイデン氏に代わる候補者が出てこない。
トランプ氏は今年3月に起訴されたことを「魔女狩りに遭った」と主張し、彼の岩盤支持層の熱い支援につなげ、党内での支持率も高めている。ただ、共和党の場合、状況によっては、かつての民主党・オバマ氏のような「超新星・候補者」が現われないとも限らない。
ともあれ、最近のバイデン、トランプ両氏はともに、党内の支持固めよりも本選に備えた布石を打とうとしているようだ。米自動車労働組合(UAW)が待遇改善要求のための大規模ストライキに突入していて、両氏ともにこれへの連帯を示すため、車産業の本拠地・米中西部、特にミシガン州訪問を予定しているという。
2016年の選挙で当選したトランプ氏の勝因は、ミシガン州やペンシルベニア州(もともと自動車労組が強力で民主党の支持基盤)で勝利したことにあった。そして、2020年選挙ではバイデン氏が両州を奪還し、これが勝因となった。両陣営が獲得した票数は二度とも僅差であったから、今回、両氏がミシガンやペンシルベニア、ひいては米中西部各州を重視するには十二分の根拠がある。
UAWストの行方に注目
UAWのストの背景には、米政府が巨額補助によって米自動車産業の電気自動車(EV)へのシフトを後押ししてきたことがある。EVはガソリン車よりも部品数が減るため、労働者側は将来の雇用が抑制されると懸念しており、今回のストについて、バイデン氏は企業側に譲歩を求めている。
しかし、もともと巨額補助に支援されて進めるEVシフトである。企業側にも余裕はない。このストがこじれれば、バイデン政権の産業政策批判に火が付き、大統領選挙の一大争点に浮上することは必至である。共和党がこれを見逃すはずがない。
2024年大統領選挙の前哨戦が、自動車労組のスト絡みで始まったことは、米大統領選の本質を象徴している。つまり、選挙ごとに多くの争点があり、その時の社会や世界の状況によって争点は多様に変化するが、経済問題は常に大争点となる。ここで失敗すれば、他の側面での評価が少々高くても、当選するのは難しい。
来年の11月までの約1年間、この基本を押さえつつ、大統領選挙の今後の動きを追っていきたい。(茨城キリスト教大学名誉教授)
電動アシスト自転車で加速 土浦のシェアサイクル
秋の気配に、土浦市街地でも普段使いの自転車の姿が目立ってきた。この中で客足を伸ばしているのが、関東鉄道(土浦市真鍋、松上英一郎社長)のシェアサイクル「関鉄Pedal(ペダル)」だ。ことし3月、同市内を中心にレンタサイクルのステーションを9カ所設けて20台の電動アシスト自転車を配備したところ、半年で累計2400件の利用を数えた。猛暑もようやく収まりそうな10月、同社は自転車を増やし、ステーションを拡大して攻勢をかける。シェアサイクルはモビリティーシェアサービスのOpenStreet(オープンストリート、本社・東京)との提携で3月23日にスタート。JR土浦駅前はじめ同市内に8カ所と関東鉄道「筑波山口」バス停に、24時間自転車の貸出・返却ができるステーションを設置した。レンタサイクルとしては、15分あたり200円(24時間の上限料金3000円)=税込み。スマホの専用アプリに登録することで、自転車の予約から料金の支払いまでできる。全国6000カ所以上で展開しているOpenStreet系列のステーションであれば、どこでも利用できる仕組みになっている。同社によれば平日と休日で、異なるニーズから利用のされ方をしているという。「平日は通勤利用が多い。朝駅前のステーションで自転車を借り、勤務先近くのステーションで乗り捨てる。帰りは改めて借りたり、別の方法で帰ってもいい。週末・休日は筑波山や霞ケ浦などに向かうレジャー利用が増える」(開発部)つくば霞ケ浦りんりんロードは平たんなコースをたどるが、坂道がなくとも風上に向かって走る場合に、電動アシスト自転車は威力を発揮する。電動で100キロ以上走行できるから、土浦から東京まで行って乗り捨てられたケースもあるそうだ。同社は9月から、鬼怒川サイクリングロードのある常総市にも関鉄Pedalを拡大した。常総線水海道駅、三妻駅と「道の駅常総」などを結ぶ。土浦市内では9月までに9カ所となっていたステーション数を6日に4カ所増やし13カ所とし、電動アシスト自転車は40台に増やす。同日からは関鉄グループバスの乗り放題とシェアサイクルをセットにした1日乗車券を3000円(税込み)で発売する。12月11日まで。
努力義務化のヘルメット着用にどう対応
利用拡大の中で課題はヘルメットの着用だ。改正道路交通法の施行に伴い4月から自転車に乗る全ての人にヘルメットの着用が努力義務化されたが、関鉄Pedalを含めOpenStreetのシェアサイクルサービスではヘルメットの貸し出しは行っていない。アプリで持参を呼び掛ける形にとどまる。同様に市街地でレンタサイクル事業を行っている土浦市観光協会に聞くと、「クロスバイク(スポーツサイクル)に乗る人はヘルメット持参で借りに来るがシティサイクルだとヘルメットを辞退する人が多い。別料金ではないのだが他人のかぶったヘルメットには抵抗があるようだ」としており、レンタサイクルとヘルメットには相性の悪さがある。同社開発部は「公共交通を担う企業として安全は第一に考えなくてはならない。課題認識をもって取り組んでいきたい」としている。(相澤冬樹)
