日曜日, 4月 5, 2026

ウクライナの民族弦楽器バンドゥーラで平和を祈る 16日にチャリティーコンサート

ウクライナ出身で東京都在住の民族楽器奏者、カテリーナさん(37)のコンサートが16日、ノバホール(つくば市吾妻)で開かれる。弦楽器の一種バンドゥーラを奏でるチャリティーコンサートで、収益と募金はウクライナ大使館や同国からの避難学生が学ぶ筑波大学、国境なき医師団に寄付する予定だという。 コンサートを主催するのは、つくば市上郷在住の尾崎秀子さん(75)。「ウクライナへの軍事侵攻がはじまり、これは他人事と思わずに、なぜこのような戦争が起こったのか、当たり前の普通の暮らしがいかに貴重であり、もろく崩れ去るのか、平和な状態をどのようにして維持できるかなどを考えてもらいたいと思った。それで、カテリーナさんの音楽の力をお借りしようと思い至った」と話す。 カテリーナさんは、日本各地でバンドゥーラの公演を行っている。ウクライナのブリビャチ生まれ。チェルノービリ原発から2.5キロの地点で生まれ、生後1カ月で原発事故により被災。自宅から強制退去となり、家族で首都キーウに避難した。被災した子供たちで構成された音楽団「チェルボナカリーナ」に所属し、世界各地に演奏旅行に赴く中、日本にも公演に訪れ、19歳の時に日本に活動の拠点を移した。 今年5月には生い立ちや音楽、戦争についてつづる「カテリーナの伝えたい5つのこと」(ナイデル)を出版した。福島の原発事故にも心を痛め、演奏活動を通じて支援を行っているという。つくばでのチャリティーコンサートは昨年7月にも市民ホールとよさと(つくば市高野)で行い、2回目の開催となる。前回は425人が来場し、チケットの売り上げは経費を除いてウクライナ大使館に寄付した。尾崎さんがカテリーナさんのCDを初めて聞いたのは2010年頃のことで、友人からCDをもらったのがきっかけだった。2013年に兄と姉を3カ月の間に亡くし、その悲しみを慰めてくれたのがバンドゥーラの音色だったという。 「若い方々、学生さんたちには、自分の人生、何を大切にして生きて行くのか、考えてもらいたい。カテリーナさんの歌声とバンドゥ-ラの演奏から何かを感じ取って頂ければうれしい。きっと心に響くものを感じ取っていただけると思う」と来場を呼びかける。(田中めぐみ) ◆カテリーナ〝平和を祈る〟コンサート 16日(日)午後1時30分開場、午後2時開演。 会場はノバホール(同市吾妻) 入場料は大人2000円、18歳以下・学生・障害者1000円。チケット販売はノバホール。 定員800人。問い合わせは事務局(電話080-1118-0289)

杏の里と杏仁豆腐《続・平熱日記》137

【コラム・斉藤裕之】「杏(あんず)の実がなったから!」というギャラリー「art cocoon(アートコクーン)みらい」の上沢さんからの知らせを受けて、またもや信州は千曲市にやって来た。梅雨の晴れ間、杏農家の柳町さんの車で畑に向かう。その光景は…梅に似た何千本? もある杏の樹には、黄色や赤みがかった大きな実がたわわになっていて、花の時期、桃源郷と見まがうばかりの杏畑は、私にとってはより興奮する「花より団子」状態となっていた。 もっと驚いたことに、この街にはいたるところに杏が植えられていて(中には直径50~60センチを超える木も)、街路樹や河川敷、民家の庭にも大きな杏がうそみたいになっているのだ。 こんな街、こんな風景、見たことない! とにかく一つ食べてみた。初めて食べる生杏は思ったより硬い、シャキシャキとした食感で、ただ甘いだけでないワイルドな味。値段も手頃で、生食用とジャム用を買い求めた。夏のような日差しの中だったけれど、信州の空気は気持ちよかった。 さて午後は、個展の案内状をデザインしてくれた西澤さんが松本に連れて行ってくれるという。およそ30年ぶりの松本。まずは日本書紀にも出てくるという浅間温泉のギャラリー「ゆこもり」を訪ねる。先祖から受け継いだという湯治場は、まさに文豪が滞在でもしていそうなたたずまい。高低差のある敷地を廊下で結んだ建物をリノベーションして展示スペースにしたというオーナーは、現在も滞在型のアートギャラリーを目指して改装中とのこと。 続いて、すぐ近くの「松本本箱」という温泉旅館と書店を合体させた、とてもおしゃれな施設も訪ねる。湯船や洗い場までもが本とくつろぎの空間となっていて驚いた。それから市内に移動して、友人が関わっている陶器店を訪ねたが、街は古いものと新しいものがうまく調和して多くの人でにぎわい、活気があった。 北アルプスや上高地などの自然や観光地にも恵まれ、音楽、演劇、クラフトなどでよく耳にする「松本」。市内を流れる女鳥羽(めとば)川の流れも清く、とても魅力的な街に思えた。 松・竹・梅 → 桃・李・杏 ところで、杏の種から杏仁豆腐(あんにんどうふ)を作りたいという上沢さん。実は杏仁豆腐は妻の大好物だったのだが、私は杏仁豆腐がそもそも杏の種の中身「杏仁」からできるなんてなんて思いもしなかった。調べてみると、食べられている杏仁豆腐のほとんどは杏の種とは別の似たものでできているとのこと。また、わりと簡単に種を割ることもできて、杏仁豆腐を作るのもそれほど難しくなさそうだ。 しかし、杏畑はご多分に漏れずの後継者不足で、今はNPO法人がそんな畑の面倒を見ているそうだ。農業体験としての収穫作業ツアーとか…。 世代を経て、「松」「竹」「梅」に代わって、今は「桃」「李」「杏」などの文字が名前によく使われる。名前に杏の字を持つアンズちゃん達を招待しての収穫祭とか。本物の杏を見ると、自分の名前にもより愛着が沸くと思う。6月下旬には、パーコットという桃のような大きさの品種が旬を迎えるそうだ。来年は、いや将来は、季節労働者として訪れるのも悪くない。(画家)

去年の悔しさ背負い基本練習やり続けた 常総 島田監督【高校野球展望’23】

高校野球県南3強チーム監督インタビューの最終回は常総学院高校の島田直也監督。常総学院は昨夏、創部史上初の初戦敗退を喫し、「常総の時代はもう終わった」とささやかれた。しかし、昨秋の県大会では準決勝に進出し、優勝した土浦日大に1対7で敗退した。春の県大会ではその土浦日大との延長10回タイブレークを制し優勝。続く関東大会でも並み居る強豪を撃破して4強入りを果たし、まさにV字回復の途上である。7年ぶりの頂点をかけてこの夏を迎える常総学院の島田監督に意気込みを語ってもらった。 絶対に茨城の1位を獲る ーまずは春の県大会の振り返りをお願いします。準決勝の常磐大高戦の5点差から逆転勝利が印象的ですが、どのような所感がありますか。 島田 春はあの試合に限らず粘り強く戦えたと思いますね。準決勝は選手が最後まで諦めることなく戦った結果、7回と8回で逆転できたのだと思います。 ー常磐大高戦では中林永遠投手が相手打線に捉えられていた中で、だいぶ引っ張ったなという印象があります。そこは何か意図があったのでしょうか。 島田 意図はないです。ただ僕の継投のタイミングが遅れたというだけです。あそこまで連打を浴びないだろうと、どこかで切ってくれるだろうと思っていたのですが続いてしまった。プロのペナントレースとは違う、負けたら終わりの高校野球における継投のタイミングの難しさをあの試合では痛感しました。選手交代のタイミングはまだまだ僕に足りないところです。それでも準決勝は僕の失敗もあったのに5点差を逆転してくれた。選手に助けられたという思いはありますね。 ー決勝戦はもつれた試合になり最後は延長10回タイブレークで勝利しました。 島田 絶対に茨城の1位を獲るという選手の思いと、諦めず戦った結果がこのようになったのではないかと思います。 ー続いて関東大会初戦の関東一高戦はどうでしょうか。 島田 秋に関東に出場できなくて悔しい思いをしましたし、関東で常総学院という名を知らしめる良いチャンスですから当然優勝を目指していました。関東一高戦の入りは良かったんじゃないかと思いますね。先制して追い上げられても突き放した。自分達がやってきた野球が出来ていたんじゃないかなと思います。 ー準決勝は木更津総合に0ー3で敗退でした。 島田 春の大会前の練習試合では大差で勝利したのですが、そこまで力の差はなかったのでロースコアの展開になるかなと思っていました。結果的にはうちはチャンスに1本が出なかった。相手はチャンスをしっかりとものにできた試合でした。 ー準決勝を前に島田監督が「関東大会準決勝の会場が現役時代を過ごした横浜スタジアムで、僕が一番うれしい」とコメントされていました。実際に久しぶりに横浜スタジアムに立ってみていかがでしたか。 島田 新しくウイング席が出来てから初めてグラウンドに立ちました。ここでやってたんだなあと思いながら、マウンドに立たせてもらいました。感慨深かったですね。 次ページに続く 選手の覚悟は相当なもの ー今年のチームはどういう経緯をたどって仕上げてきたのでしょうか。 島田 先輩のあの悔しい思い(昨夏初戦敗退)があったので、選手達の覚悟は相当なものでしたね。新チームはもう一回基本から立ち返ろうということで、基本練習を多めにやってきました。やりたい練習を多くやるのもいいんですけど、毎日基本練習を行って、それが普通に当たり前に出来るようになるまで続けることが大事なんじゃないかと思います。とにかく基本練習をやり続けた結果がこのチームの春の県1位というところにつながったのではないかなと思います。 ー基本練習というワードが多く出てきましたが、新チームになってから基本練習を多めにするに当たってどのような点を変えたのですか。 島田 去年のチームは2020年2月から始まったコロナの関係で4月の入学当初から活動に制限がかかっていまして、下級生の頃から実戦経験が圧倒的に少なかったので、最上級生になってからは実戦を多く積ませました。しかし、それがなかなか結果に結びつきませんでした。練習が足りない分を補うには実戦を経験させるしかないと思っていたのですが、練習不足はやはり練習でしか埋まらないですね。そういう経緯があって、新チームは実戦を減らして基本練習を大事にやっていこうということで実行しています。 意識を共有し合うチーム ーチームカラーを一言で表すとどうですか。 島田 特徴はないですよ。特徴がないところが特徴なのかな。とにかく意識を共有し合うチームを目指して取り組んでいます。僕からしたらまだまだ足りないですが、ダメなプレーはダメだと言い合って共有し合い、良いことは良いと言ってみんなで褒め合う。そういうことが少しずつできているのかなと思います。それが結果につながっているのかなと思います。 ー2年前のチーム(センバツ甲子園出場、夏準優勝)のお話を伺ったときに、島田監督が求めているレベルに達していないとおっしゃっていたんですが、今年はどうでしょうか。 島田 2年前のチームに比べたら力は劣りますが、意識の共有の面では勝(まさ)っている部分はあるかもしれません。 次ページに続く サウスポー同士競争してやっている ー常総学院がベンチキャプテンを選ぶのは珍しいと思うのですが、澤田一徹選手はどんなキャプテンですか。 島田 キャプテンは最上学年の話し合いで決めています。キャプテンは怒られ役ですので例年どおり澤田にも厳しく言っていますね。その代わりよく話し合ってコミュニケーションを取るようにしています。僕の要求を澤田は的確に選手に伝えてくれるし、周りを見て行動で引っ張れる。しっかりとしたキャプテンで頼もしいです。 ー続いて各選手について伺います。エースの諸星蒼空投手はどんな選手で、1年間どんなことを頑張って成長してきたでしょうか。 島田 春の大会の活躍でかなり評価していただいたと思いますが、彼は集中し過ぎて視野が狭くなる部分があります。今回彼を背番号1にしたのには、背番号1の重みを与えて自分のことだけではなく、周りのことを見て責任感を感じてもらいという意図がありました。そういう部分が良い方向に作用したのではないかと思います。彼自身が成長を感じているのではないでしょうか。 1年生の頃は活きの良いボールをただ力任せに投げていて、どうしてもコントロールが定まりませんでした。そこは僕としてもこうすれば良いよとアドバイスをして、取り組み続けてくれてここまで成長してくれたのかなと思いますね。 ープロ注目としても名前が挙がるようですが。 島田 将来的にはあるかもしれませんが、技術とかその辺はまだまだですよ。でもそうやって1番を背負って抑えてきたというのは自信にもつながったと思いますし、周りからも評価されて、本人もよりしっかりしなきゃという良い方向に向かっていくのではないでしょうか。 ー飯塚遥己投手はどのような投手ですか。 島田 飯塚はボールのスピードはないですが、コントロールが良いのでね。相手も球速的には打てると思って打席に入ってきていますが、意外と打てないのはやはりキレが良いのだと思います。これこそピッチャーの球質を持っていると言えるのではないかなと。淡々と投げていますが芯が強く、内に秘めた闘志を持っている子です。諸星と飯塚でサウスポー同士競争してやっているのが良い方向に働いているのかなと思います。 ーこの2人は軟式野球出身だと思うのですが、中学軟式野球のスカウティングは島田監督ご自身でされたのですか。 島田 いや、良い選手がいるという情報をもらって、そこで僕ではなくて松林部長が連絡を取ってくれて、実技を見て是非うちに欲しいという流れですね。 ー続いて小林芯汰投手ですが、1年生から出場していて、球速的には148キロを出して注目されるピッチャーになってきました。今後は大黒柱になっていくと思うのですが、今はどのような状態でしょうか。 島田 148キロという球速で注目されていること自体は決して悪いことではありませんが、コントロールがまだ僕が求めているレベルに達してはいません。持っているものは良いので、一球の大切さとか、コントロールをもっともっと追求してもらいたいなという思いはありますね。この勢いのボールをビシビシ投げ分けられるようになれば鬼に金棒になると思いますが、どうしても大事なところでコントロールミスがあります。甘く入ったら打たれるということは自分で経験して覚えていかないといけないことなので、試合で経験を積ませているところです。どうして試合の大事なところで使われているか考えて投げてもらわないと、ただ力一杯投げているだけでは本人の成長にはつながらない。いくら140キロ後半を投げても今の高校生の技術であれば真ん中に投げれば簡単に打たれてしまいますから。厳しいかもしれませんが、今後の常総を背負うピッチャーになってもらわないと困る訳ですから。その上でも注目されるようなピッチャーになる可能性も秘めていますし、僕自身がピッチャーで大事なのはコントロールだと思っているので、下級生のうちからその辺はシビアに要求していますね。それがものにできれば全国でも勝てるピッチャーになれると思いますので、期待を込めて、要求する基準を高く厳しく指導しています。時と場合によってはかなりきつい口調で言うこともありますね。 次ページに続く 4番武田がポイントゲッター ー続いて野手陣について伺います。クリーンアップは今年かなりの重量打線になっていると思います。 島田 うちは4番の武田勇哉がポイントゲッターとして重要な立ち位置を占めていまして、武田が打たないと勝てないです。2年生で重圧はかかると思いますけど、武田ならやってくれる。上位打線は武田の前になんとかチャンスメイクしようと必死になっていますし、武田が打てなくても後ろを打つ上級生の秋山翔と石井恭悟がなんとか還してくれるというつながりが生まれています。打順は武田を起点にして上手く配置できていますね。個人個人に与えられている役割は分かっていると思うので、春はそれがかみ合ったのかなと思います。 ー武田選手を中心に打線が組まれているのですね。彼は春の県大会決勝戦で、J:COMスタジアム土浦で強い逆風の中、レフト場外にとんでもない当たりのホームランを放ちましたよね。あの当たりには度肝を抜かれました。今はどれくらいホームランが出ていますか。 島田 10本くらいではないですか。たまたま春の練習試合でたくさん出た。好不調の波が激しいのですが、春は好調がキープできていましたね。武田に回せば何とか還してくれるとみんな思っていて期待値がものすごく高い。4番としての仕事ができればチームも本人も乗りますし、本当に中心選手として夏は期待しています。あいつにかかっているといっても過言ではないです。 ー武田選手のパワーはもともと持っているものなのでしょうか。 島田 もともと上体が強いんですね。今はまだ上体だけで打っているから、これが下半身も使えるようになるとバッターとしてさらに成長できますよ。 ーこれだけ監督が言うほどの打線の柱がまだ2年生だということで、この先も楽しみですね。守備の要といったら誰の名前が挙がりますか。 島田 ショートの若林佑真が守備の要として頭角を現して固定していますね。そのおかげで山崎玲恩をセカンドに回して盤石になったところがこのチームの強みです。去年に比べたら今年はポジションやメンバーの移動がなくやれているので、チームとしては良いのかなと思いますね。 ー地道な基本練習の繰り返しが実を結んだと言えそうですね。 島田 冬場はバッティング練習をせずにずっとキャッチボールと守備練習しかしませんでしたからね。守備練習で守備を強化することができますが、下半身強化という副次的な効果もある。だからこそ守備練習を多く取り入れたんです。野球は点取りゲームですが、0点に抑えたら負けることはありません。少ないチャンスで点を取って後は守り勝てば良い。打ち勝つことも野球の醍醐味ではありますが、守り勝つ野球を目指しています。 ー去年の代は内野のエラーが結構出ているなという印象がありましたが、今年は守備が堅く仕上がっているなという印象があります。 島田 僕はそうは思わないんですが、周りの人からは「今年の常総の内野の守り良いよね」って言われます。それはやはり冬場に取り組んだ練習が実になっているのかなと思いますね。バッティング練習をしなくてもあそこまで打ってくれているのですから、やはり土台となる下半身が守備練習で鍛えられたのだと思います。ランメニューに時間を割かずに守備練習を多くしているので下半身もアジリティ(機敏性)も鍛えられてバッティングにも好影響が出ています。守備とバッティングには相関関係が少なからずあると思いますね。 ーキャッチャーについて、秋は土屋海陽選手がスタメンマスクでしたが、春は下級生の片岡陸斗選手になっていました。片岡選手が伸びてきたのですか。 島田 キャッチャーはもともと夏から片岡を使おうと思っていたんですが、片岡がけがをしていて新チームにも間に合わなかったんです。 ーキャッチャー片岡選手の評価はどうでしょうか。 島田 やっぱりキャッチャーらしいキャッチャーですよね。ピッチャーへの声がけもできるし、バッターを見て配球ができている。キャッチャーはグラウンド内での監督なので、片岡がしっかりといてくれることで、チームもまとまってきたなと感じます。 次ページに続く 応援の力ってものすごい ー今年から制限がなくなり、応援団やブラスバンド、チアリーダーも来ることになります。常総学院の迫力の応援が4年ぶりに返ってきます。 島田 生のブラバン演奏での応援は、僕としても監督になって初めてのことなので非常に楽しみですね。やっぱり応援の力ってものすごいんですよ。個人名を大声で叫んで応援してくれるとやっぱり力になるので、どれだけ応援に助けられるのだろうかというワクワク感がありますね。応援からパワーをもらっていつも以上のパフォーマンスが出せると思うので、今年の夏は本当に楽しみです。選手もみんな、たくさんの人に応援されたいと思っていると思います。僕が現役の頃は甲子園を勝ち上がる度に応援してくれる人が増えて、それが快感でうれしくてものすごく力になりました。甲子園に行けばテレビで全国中継される。やっぱりたくさんの人に応援されるというのは力になりますよね。 選手は悪くない、自分がうぬぼれていた ー去年の夏の初戦(2回戦)敗退について振り返っていただきたいのですが、その後の心境の変化や教訓などはありますか。 島田 去年のチームは秋春の公式戦で1勝しかできなくて力はなかったですが、正直言うと僕自信が初戦は負けることはないだろうと思っていました。初戦の入りは難しいぞと周りの監督経験者から聞いてはいたのですが、負けるということは全く考えていませんでした。いくら実戦経験が少ないとか練習が不足していると言ったって、勝たせてあげられなかったというのは僕の力不足だったと痛感しています。選手は絶対に悪くないので、本当に申し訳ないと思っています。自分自身も高校野球の監督って難しいなってつくづく思いました。監督をされている方はみなさん大変な苦労をされているんだなって。最初の年に監督に就任していきなりセンバツ甲子園に出場して1勝できてしまったこともあって、多少うぬぼれていたじゃないですけど、自分がプロまで経験して培ってきたことを子どもたちに伝えたら、勝てるんだろうなという思いがもしかしたらあったのかもしれません。最初に上手くいったので、次の代でも僕が伝えたらできるでしょうと同じように指導していました。しかし、去年の代には去年の代に見合った指導をしないといけなかったなと思います。高校生だけど大人の感覚で見てしまったといいますか、言っても出来ないのなら別の選手を使うという考えになっていたかもしれません。一度伝えたら分かるでしょうではなくて、分かるまで根気強く言い続けるということが大事なんだなと感じた1年でした。そう考えたら僕も高校時代、できるまで厳しく言われ続けていましたね。去年の教訓を生かして今年のチームには分かるまで言い続け、出来るまでやらせるように根気強く指導しています。 正直、厳しいゾーン ー組合せについて所感を伺います。第1シードの常総学院ゾーンにノーシードの強豪校が集まりました。 島田 正直厳しいゾーンになりましたね。でも相手は関係なくどこが来ても勝たなくてはならないですから。春も厳しいなと思っていましたが、緊張感があるゾーンの方が目の前の敵に向かっていけて良いんじゃないですか。 ー最後にこの夏に向けた意気込みをお聞かせ願います。 島田 去年初戦で負けたということがあるので、初戦は選手よりも僕の方が緊張するかもしれませんね。そこは選手達が普段どおりにやってくれると思うので心配はしていません。とにかく去年の先輩の悔しい思いも背負って、今年は相当な覚悟を持って絶対に優勝すると意気込んで一致団結している状態なので、このチームは必ずやってくれると信じています。 ー緊張のお話が出ましたが、プロの試合と今の試合、どちらが緊張しますか。 島田 これはよく質問されるのですが、プレーヤーとしてやっていた方がはるかに楽です。監督の立場の方が緊張しますね。胃が痛くなりますよ。高校野球の監督を長らくやっていらっしゃる方々は、こういうことを毎年繰り返されていてすごいなと心の底からリスペクトします。まだまだ僕みたいな監督になって3年目の若造には想像できない修羅場がたくさんあるのでしょうね。でもこれほどやり甲斐のある仕事はないなと思っています。 ー7年ぶりの頂点に向けてどのような戦いになるのか楽しみにしています。本日はお忙しい中、お時間を取っていただきありがとうございました。 (聞き手・伊達康) 終わり

汚染水を海洋放出しないでください《邑から日本を見る》139

【コラム・先﨑千尋】国際原子力機関(IAEA)のラファイル・グロッシ事務局長は4日に首相官邸で岸田首相と会談し、東京電力福島第1原発の「処理水」を巡り、海洋放出の安全性に対する評価を含む包括報告書を渡した。また原子力規制委員会は7日に東電に海洋放出設備の検査適合の終了証を交付した。国際機関の「お墨付き」を得たので、岸田首相は「夏ごろ」とする放出時期を最終判断する、と伝えられている。 IAEAの報告書は、「処理水」の放出による人や環境への放射線への影響について、「放出計画は国際的な基準に準拠しており、影響は無視できるレベル」と評価。基準を超える濃度の処理水流出を避けるための放出設備の設計・安全管理や、原子力規制委員会の対応も適切、としている。しかし、報告書には「(政府の)方針を推奨するものでも、支持するものでもない」とも書いており、日本政府と一定の距離を置いている。 国と東電は2021年4月に海洋放出する方針を決定した。この決定により東電は放出設備工事を進めてきた。東電の計画では、「処理水」は大量の海水で100倍以上に薄め、トリチウム濃度を国の排出基準の40分の1未満にする。その上で、沖合1キロ先の海底トンネルの先端から放出する。放出時期は30年程度に及ぶ見通しだ。 これらの動きに対して、直接被害を受ける立場の漁業者は反対の姿勢を崩してこなかった。2015年に福島県漁業協同組合連合会(福島県漁連)は国と「関係者の理解なしには(処理水の)いかなる処分もしない」という文書を取り交わし、全国漁業協同組合連合会(全漁連)も、毎年の総会で海洋放出に反対する決議を続けてきている。 先月、西村康稔経済産業相は福島、茨城、宮城の漁連を訪れ、海洋放出への理解を求めたが、いずれの漁連も反対を表明している。 「差止め請求裁判を起こせばよい」 岸田首相は、国の内外に対して丁寧に説明を行っていきたいと語っているが、漁業者は反対の姿勢を崩していない。反対が続けば「理解」を得たことにはならない。村井嘉浩宮城県知事も5月19日、西村大臣に「海洋放出は漁業への風評被害が心配されるので、それ以外の処分方法を検討するよう」要請している。東京新聞は「10年かけてようやくという今、なぜ流すのか。風評被害はもう起きている」と報道している(7月5日)。 事故を起こした原発への地下水の流入を防ぐために凍土壁を作ったが、依然として地下水は原発敷地に入っている。これを止められれば、地下水が原発敷地に流入しなければ今ある「処理水」も増えない。海洋放出を行わないため、さらに廃炉作業を円滑に進めるために、この作業を最優先に進める必要がある。 汚染水の処理方法はいくつかあるが、そのまま保管すればいいではないか。いくら薄めても総量は変わらない。海に流された汚染水がどう動くのか、どのような被害が出るのか、誰も予測できない。 では、海洋放出を止める方法はあるのか。「原発を止めた裁判長」樋口英明さんは、「汚染水の差止め請求の裁判を起こせばいい」と話している(「日々の新聞」6月30日)。(元瓜連町長)

後半粘って土浦一 逆転で初戦突破【高校野球茨城’23】

第105回全国高校野球選手権茨城大会2日目の9日、J:COMスタジアム土浦では一回戦で土浦一が石岡一との一高対決、立ち上がりの失点から5回までに5点を失う苦しい展開となったが、5回と8回に3点ずつを奪い逆転勝ちした。 土浦一が後半に地力を発揮、因縁の相手に逆転勝利を収めた。「石岡一は春大会の地区代表決定戦で敗れた相手。そこから石岡一に勝つチームを目指して頑張ってきた。再戦となった今日は、絶対やってやろうという気持ちで臨み、今までやってきたことが報われた」と土浦一の中里洸介主将は胸を張った。 前半は石岡一ペースで、土浦一は5回までに5点を失った。だが各回とも最小限の失点でしのいだことが、勝利につながったという。「後半勝負はうちのペース。選手があきらめずにやってくれると思い、0-5でも気にせず戦えた」と柴沼剛己監督。 4回2死からマウンドに立った本間航平が流れを変えた。制球に苦しむ場面もあったものの、力の入れ具合などを調節しながら修正し、「決めるところは決めにいけた」という。8回までを1犠飛と1安打でしのぎ、5三振を奪った。 反撃は5回。相手投手の乱れから1死満塁の場面をつくり、本田雅樹の左犠飛でまずは1点。続いて大津翔吾の左前打が敵失を誘い2点を追加した。 8回には大関祐二朗と篠崎元彦の2連打から、遠山勇気の送りバントが相手投手の悪送球を招いて1点を追加。さらに2死満塁の場面で、小野瑛太の打球が左中間を破る2点適時打となった。 この日途中出場で9番に入っていた小野は、もともとは1番を打っていた。春大会で疲労骨折を起こしてから控えに回っていた。1点ビハインドで迎えた絶好機に「自分が打つしかない」との気持ちで臨んだ。打席に入って一塁に目をやると、走者の中里主将が自分の方を見ながら胸を叩いている。「決めてこい」というサインだと受け取り、相手投手の高めの直球を思いきり振り抜いた。「うれしいという言葉しか出てこない。一塁ベース上で涙が出てきた」 土浦一の2回戦は13日、ノーブルスタジアム水戸の第3試合で岩瀬日大と対戦する。(池田充雄)

土浦三 6失点を一気に挽回、コールド勝ち【高校野球茨城’23】

第105回全国高校野球選手権茨城大会2日目の9日、日立市民球場では一回戦で土浦三が科技学園日立と対戦、初回に大量6失点の土浦三は3回に打者一巡の猛攻で一気に逆転、7回までに16点を奪いコールド勝ちした。 初回に先発黒田が満塁ホームランなど6失点で降板した土浦三は、3回に反撃。2死満塁から関川、木口の連続適時打で2点を返すと、代打酒井がレフトオーバーのタイムリーで同点とし、続く中村のヒットでこの回大量7点を奪い一気に試合をひっくり返した。 続く5回にはランナー2人を置いて中村の三塁打で2点を加え、試合を有利に進めると6回、7回にも追加点。結局17安打16点の猛打で科技学園日立を7回ゴールドで圧倒した。 初回の大量失点後、2番手としてマウンドに上がり、逆転打を放つなど中村が投打に大活躍した。「点数は気にせずに自分のピッチングを心掛けた。ベンチ、スタンドからの応援で気分が楽になり力になった。自分の球種である直球、カーブ、スライダー、チェンジアップを上手く使い分ける事が出来た」と自身の投球を振り返った。 竹内達郎監督は「昨年秋の大会、市内の大会でも5点差を逆転されて投手陣が整備されていないので1年生を抜擢した。大きく変えることが大事だ。投手陣には課題を残したが打撃陣は初回に6点取られて開き直れた。選手は思ってたより焦りはなかった。打線がしっかり繋がった」と話す。 4年振りの声を出しての応援が解除されスタンドには応援団、チアリーダー、ブラスバンドを含む全校生徒が応援に駆けつけ選手に熱い声援を送った。チアリーダーの武田空来さんは「声出して応援出来るのはみんなで盛り上がれて一体感があっていい」と楽しんでいた。 2回戦の相手はAシード、霞ケ浦。13日、J:COMスタジアムでの土浦でご近所対決となる。中村は「自分の持ち味を出して全員で戦い勝つ」と力強く語った。竹内監督は「当たって砕けろでチャレンジャー、挑戦者で向かっていく」という。(高橋浩一)

甲子園で勝つため心血注いだ初のチーム 土浦日大 小菅監督【高校野球展望’23】

高校野球県南3強チーム監督インタビューの2回目は土浦日大高校の小菅勲監督。土浦日大は秋の県大会で優勝、春は準優勝し、2季連続で関東大会に出場して安定した強さを誇っている。盤石な左右のエースを有し、下級生から主力を務めたタレントぞろいの今年のチームは、今夏の優勝候補の一角とされる。小菅監督に大会への決意を聞いたところ、例年は「一戦必勝」と控えめな答えだったが、今年は意外な答えが返ってきた。 大勝して狂い生じた ―関東大会を振り返って、所感を教えてください。 小菅 関東大会でベスト4に入る目標を持って臨みました。心身ともに県大会の疲れがあり、あまりいい状態で臨めた大会ではありませんでした。特にメンタル面でモチベーションアップができなかった部分があります。相手の健大高崎(優勝校)に名前負けした雰囲気にならなかったのは良かったと思います。相手が強かったというのが一番の敗因だと思います。相手投手陣を打ちあぐねましたね。どの投手相手にもつなぐバッティングが出来なければ勝ちきれないという経験にもなりました。タイブレークは県大会決勝戦でも経験させていただきましたが、県大会では裏攻撃、関東大会では表攻撃でした。まず経験できたということが良かったと思います。延長10回からのタイブレークは息つく暇もなく試合が急展開します。それを経験できてしのぎ合いをした耐性というか、免疫というか、負けはしましたがこういったところが大きな財産になったかなと思います。 ―タイブレークで表攻撃と裏攻撃の2つの敗戦から何か教訓になったことはありますか。 小菅 取れるアウトを確実に取らないと、必ず最後に点数になって跳ね返ってくるということがありありと分かりました。本当に当たり前のことを当たり前にやる。凡事徹底がいかに大事か分かりました。失点は構わないのですが、相手に余計に献上してしまう進塁や点数があったので、6月はそうした部分を徹底的に修正しました。 ―春の県大会準々決勝ではプロ注目投手でもあるつくば秀英の五十嵐大晟投手から香取蒼太君が2打席連続ホームランを放つなど、9対1で大勝しましたね。 小菅 大会というのは微妙なものがありまして、まさに「好事魔多し」です。大勝してしまったせいで部員の中でちょっと過信してしまった部分が見られました。実は春はあの試合の後から少しチームの方向性に狂いが生じました。春はまだ後日談にできるので、しっかりとみんなで反省して立て直しました。おそらく部員にもいい教訓になったと思います。 ー準決勝の霞ケ浦戦はいかがでしたか。香取君の犠牲フライの1点で勝ちました。 小菅 霞ケ浦の木村優人投手が非常にいいので10三振をくらってもめげずにやろうと、2度や3度はチャンスが巡ってくるだろうと予想し、3点をもぎ取ろうと臨みましたが、1点を取るのが精一杯でした。本当に良い投球をされましたね。好投手相手には三振したから気持ちが沈むということがないように、バットにかすっただけで喜んでいくように気持ちをつくっていかないといけません。 ー決勝戦を振り返ってどうでしょうか。何が敗因ですか。 小菅 春の大会の常総学院は波に乗っていましたね。実力プラスアルファのものが出ているように見えまして、これは嫌だなという感じがしていました。あの状態の常総とよく戦ったものだと思います。よく1失点で最後まで来てと。ツキもなかったですね。中盤に太刀川幸輝のピッチャーライナーで打線の繋がりが途切れた時にこれはまずいなと思いました。7回の一死三塁の勝ち越しを機に3番の後藤陽人が狙い球を絞れなくて少し泳がされてセカンドライナーになってしまった。太刀川、後藤はうちの主軸ですので打順がどこであっても彼らが決めなくてはならない。敗因は決めきれなかったところですね。 次ページに続く 藤本のピッチングが勝敗の鍵 ー今年のチームについて監督さんの言葉で選手について紹介をお願いします。具体的には1年間どういう風に過ごして来て、今どのような立場にいてなど。まずは投手陣からお願いします。 小菅 小森勇凛は陽気でのんきな、いじられキャラです。2年生の夏が終わった頃から目の色が変わってきました。エースを奪るんだとようやくチームを背負ってピッチングができるようになりました。そうした自覚が生まれた1年間で高校球児らしくなってきましたね。実力と共に結果がついてくればそういった部分が開発されると思っているので伸びしろはまだあると思います。もちろん素材としてもプロのスカウトに狙っていただけていますが、大器晩成というかまだ伸びる部分が残されていると思います。体の中でも彼は強い部分と弱い部分があるので、ものすごく練習はしますけれど、苦手なこと辛いこと、例えば走り込みなどをようやく自分からやるようになってきましたので、本当にこれからが面白いなって思います。 ー球速が春にかなり上がったのですが、何がその要因ですか。 小菅 彼は細かい部分でトレーニングとか食事のことだとか体づくりのことだとかを自分のペースでやるんですね。それが合体してきたのではないかと思います。技術的にここが飛び抜けて良くなったとかはないんですが、心技体が安定してきたので、球速に現れたのではないかと思います。 ーもう一つの柱の藤本士生君についてお願いします。 小菅 彼は人間性が抜群です。本当にフォアザチーム(チームのために)でストイックに練習をやりますし、自分にもチームにも興味がある男なのでその辺のところは申し分ないです。ただ優しいところがありまして、例えば相手のインコースに投げきれなかったり、考えすぎてボールを散らしすぎたり、この部分は練習試合で打たれたり抑えたりをしながら6月になって上がってきたところです。大体彼が打たれて負けた試合が多いのですが、それも貴重な経験ですし、チームを背負っているピッチャーなので当然勝敗を背負うでしょう。夏も彼のピッチングが鍵を握る可能性が高いと思います。 次ページに続く 松田がラッキーボーイになれば面白い ー野手陣についてお願いします。 小菅 後藤は下級生の時からショートを守っていて、実戦のボールを捕るとか、プレーを完成させる球際の強さをすごく持っています。バッティングでもすごく良い当たりを打ったかと思えば、無様に凡退するバッターです。そこら辺が彼の課題でもあり魅力でもあります。去年まではチームを背負う気持ちがちょっと足りなかったのですが、最近はみんなで甲子園行こうねと言い出したんです。やはりこの1年間、後藤に対する要求も増えてきまして、それを真摯に受け止めてやってくれています。 太刀川はうちのチームリーダーです。うちは塚原歩生真と太刀川ってキャプテン2人体制です。塚原は俺について来い的なところがありますが、太刀川は細かいところに目が届く選手です。寮生活のこととか、チームの決まりごととか、ボールが落ちているというのを気がつく人間です。少しキャパオーバーまで頑張り過ぎてしまう部分があるのですが、野球の方に専念していって自分のプレーを楽しんでもらって最後を迎えさせてあげたいなと思っています。テクニシャンなところがあるので、それを最後に発揮してもらいたいなと思います。 松田陽斗は勉強面がクラスでもトップで、非常にクレバーに野球をよく見られる選手です。熱くなり過ぎないのが彼の良いところでもあるし悪いところでもある。そういうところって表裏一体ですよね。みんなが打てないところで打ったり、誰も狙ってないボールを狙ってみたりという意外性があります。ファーストというポジションも彼に合っています。もう少しボールを丁寧に扱ってもらいたいなということを彼には要求として言っていますね。非常にマイペースで、打順とか立ち位置からして結構夏は彼が鍵を握るというか、彼がラッキーボーイになれば面白いかなと思います。 中本佳吾は次世代のリーダーです。いろんな部分を頑張りすぎて空回りすることもあるんですが、人間的に非常に優れていますし、学校の成績も優秀です。今は守備もバッティングも覚えている最中です。一つ一つ食らいついてくれるので、必ずいつか伸びると思っていますし、来年はリーダーとして期待しています。 香取蒼太はダイヤの原石です。磨けばダイヤになれるけど、その存在に誰も気が付かずに終わるかもしれない。そんな選手です。今30本くらい打っていますかね。あれだけの飛距離ってなかなかないんですよ。飛ばす力を秘めていますのでこの先も非常に楽しみです。 去年のトラウマ大きかった ー最後に捕手の塚原君についてお聞かせください。 小菅 塚原はもう野球小僧っていう言葉が一番似合う選手です。もういろんな経験をしてしまった。キャッチャーは、打たれたことが怖い経験になるんですね。この3カ月はずっと迷いっぱなしだったんです。去年の夏の(明秀日立との)決勝のトラウマと言いますか、最後の一打(サヨナラ被弾)、あれが大きかったと思うんです。それをピッチャー陣と話しながら、お前が全責任を背負うんじゃないんだよって言い聞かせていますね。彼はよく私とコミュニケーションを取ってくるタイプなんですね。心の整理整頓が付かないまま話しているところが彼の面白いところで、この最後の1カ月くらいは心の整理整頓がついてから私と話すようにと言っているところです。整理されれば力を発揮してくれると思います。 ー新聞で「配球に自信がついてきた」とコメントしているのを見ました。 小菅 普通は塚原ほどのレベルだとそんな弱音や本音を吐かないと思うんですが、よく正直に素直にそう言えたなと思います。何でそういう配球にしたのとか、理由を聞いても高校時代は完成しないで終わると思うんですよ。そういう中での配球だと思うんですね。後悔だけはしないでくれと毎試合よく話しています。 ー打順が結構目まぐるしく変わっていますが、調子を見て決めているのですか。 小菅 やはり調子は大事な要素ですね。あとは相手ピッチャーとの相性です。意外にこちらがこういう打順にしたいと思っても、相手からしたらどうなのかなという視点を持ち合わせていることも大事ですね。向こうがやりづらい嫌な打順を組むことも方法の一つです。打順はあえて固定しないです。 次ページに続く 活躍出来て輝ける環境求める ーどんな打順になるのか毎試合楽しみにしています。今年は特に実力者ぞろいの代ですが、どのような経緯で県外から土浦日大に入学しているのでしょうか。 小菅 本人がうちの環境を気に入って希望して来てくれていますね。高校野球をやりたいと考える最近の中学生は、ただ実績のある強いところというよりも、自分が活躍出来て輝ける環境を求める傾向にあるのかなと感じています。本校は練習環境が抜群ですし、自主性をうたっているので自主練習でいろいろなことができます。勉強もしっかりやれるし、自分で体づくりが出来るのを魅力に感じてくれますね。親御さんも環境をすごく気にされているように思います。ご縁があって希望して本校に集まってくれてこのチームがある。私はこういうのを「球縁」と呼んでいます。球縁の話はミーティングで頻繁にしますね。 ー相手チームの投球や打線を分析するデータ班は監督が個別に任命するのですか。 小菅 日々部員を観察して、野球を知っているなとか、面白い考えを持っているな、分析力があるなというような選手を任命しています。最初は当てずっぽうに近いですけど、やらせると結構当たっているんですね。データ班の人間たちは自分の意見をしゃべれますし分析力もあります。今はちょうど2年生が主軸になってやってくれています。1年生も何人か担当しています。 ー今スタメンで出ているような選手でデータ班出身者はいますか。 小菅 太刀川と塚原ですね。2人とも試合に出るのが早かったですが、考えながら試合を見る目があります。 次ページに続く 昔は型に当てはめがちだった ー指導観が劇的に変化したタイミングやきっかけってありましたか。 小菅 昔は高校野球はこうあるべきだと型に当てはめて考えがちでした。ひと山いくらで見ていたといいますか、一人一人に合った指導をしていませんでした。しかし自分に子供が出来て、子供の成長と共に考え方が変わってきました。やはり一人一人を親御さんから預かっている訳ですから、自分も親になってそういう感覚が分かるようになりました。また、昔は親御さんとは一線を画していましたが、今は親御さんとも一定の距離感は保った上で積極的にコミュニケーションを図っています。毎年12月のオフシーズンに選手と親、私の三者で面談を行うのですが、本人からはこれからどういう風に高校野球に関わっていくかの未来像を話してもらい、それに対して親御さんの意見を伺います。私からは選手の現状や課題、学校生活、育成方針などをお話しし、ざっくばらんに意見交換してコミュニケーションを図っています。 ー中学生に求める選手像や人間像を教えてください。 小菅 素直であって欲しいですね。野球が伸びる1番の要素はこれだと思います。あと野球を好きであって欲しい。たくさん練習して欲しいし基礎基本を大事にしてほしいですね。指導者に言われるままの受け身の子が今の時代にも多いです。間違った指導は疑って欲しい。自分でエビデンスに当たって欲しいです。高校2年生くらいになればみんなができるようになるのですが、それを中学生の頃からやれたらより高校野球にスムーズに入ってこられると思います。 ー野球人口が年々減少していると言われていますが、それに対して何か具体的な動きをされていますか。 小菅 問題意識は持っていますが、実は現場の人間にとってそこが一番欠けている部分だと思います。たくさんの子供たちに野球を好きになって欲しいという考えはもちろんありますけども、私がやれることは魅力的なチームを作って、土浦日大に入りたいとか、高校野球に憧れる子供を一人でも増やすことです。選手たちの青春時代を預かっている限りはそこに全力を注がないと、選手たち、あるいは親御さんの期待を裏切ることになりますよね。ですからあえてこの問題には目を向けないようにしています。 現場の人間には難しいので、そうした危機的状況を組織の上の方が捉えてアイデアを考えて、現場にこういうことをやってくれとか、この小中学校を指導してくれとかいうのがあれば惜しみなく協力します。 次ページに続く ワクワクしながらやってる人間は強い ーWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)をやっている期間は監督も選手も全試合ご覧になったんですか。 小菅 全試合見ました。プロの最高峰の人たちが真剣勝負するというのは最高の材料ですからね。いくらプロでホームランを打っているとはいえ別のプレッシャーがかかるし、ああこの人センター返しするといとも簡単にヒットが出るんだとか。あの人たちが日の丸を背負ってつないでつないでと、心も技も凄く勉強になりました。 ーミーティングでWBCに触れたりもしたんですか。 小菅 もちろん触れました。大谷翔平のセーフティバントどう考える?って話もしました。夏の大会でああいう判断が出てくるかもしれないよねって。それこそフォアザチームじゃないですけどね。実はひょんなことからチケットが手に入りまして、これで大谷翔平を日本で見るのは生涯で最後かもしれないなと思って、中国戦を東京ドームに見に行ったんですよ。なかなかの迫力でしたね。私もこれだけ長く野球をやっていて、目で追えない打球って見たことがないんですよ。左中間にぶつけた当たりなんか、打った瞬間にボンって。普通は打ってしばらくしてボンなんですけど、あんな打球は初めて見ました。本当にすごかったですよね。三塁の横にいたので、本当にドンって感じの。 選手には「大谷は100年に一度の選手で人間性も良い」と、「引退して偉人伝になる前に今見ておくんだぞ」という話をしています。大谷君って結局は野球小僧なんですよね。やはりワクワクしながらやっている人間は強いなと。そして彼は結構チーム愛が強いですよね。勝ちたいってハッキリ言っていますもんね。大谷翔平の勝負にこだわるところは好きです。それこそ野球小僧ですよね。 ー大谷翔平が高校時代に練習試合で下妻二高に来ましたよね。 小菅 私が下妻二高の監督時代に交流があって行き来していましたね。その試合は0対1で負けました。 ースカウトが当時バッターとしても高く評価されていた大谷翔平をエースの諏訪洸選手(下妻二高-亜細亜大-トヨタ自動車)が見逃し三振にとって、諏訪の評価がかなり上がったという話を当時聞きました。 小菅 あの試合は忘れませんね。大谷君と握手してもらいました。これは間違いなく将来メジャーリーガーになる選手だと思いましたし、雰囲気から何から違う。華がありますよね。まさに頭抜けてました。技能じゃないですよ、華が。キラキラっていう華が。 ー大谷翔平と対戦経験がある監督ってたぶん県内見渡しても小菅監督以外にいないんですよ。 小菅 もしかしたらそうかもしれませんね。彼はその試合でセンターフライを打ったんですよ。対空時間が長くて全然落ちてこないセンターフライは初めて見ました。こちらがバントをする場面があったので、一番良いバッターにバントをさせてみたんです。でも出来なかったですね。ピッチャー正面のバントがゲッツーになりました。0対0で進んだ試合でしたが、最後に花巻東が1点をガムシャラにとりに来て、精神面の強さに気圧(けお)されて負けたんですけどね。ただあの年は大谷君は甲子園に行けなかったですね。 次ページに続く 部活制限、絶対的な時間足りない ー今の高校生が知らないような貴重なお話をしていただきました。公立高校の部活動の活動時間制限について、公立高校の教員でいらした小菅監督に伺います。週に2回休みを取らされて、土曜日と日曜日のうちどちらか4時間以内、平日は2時間以内の活動時間制限です。これで強くなれますか。 小菅 絶対的な時間としては足りないと思います。高校野球を3年間で仕上げようと思った時、週の練習時間としては絶対的に足りないですね。野球ほど時間のかかるスポーツはないですし、競技性とか特性を無視して活動時間を設定していますね。やはりそこは全ての競技が一律であってはならないと感じますね。 ー活動時間制限の中で強くなるためにはどうしたらいいでしょうか? 小菅 時間の制限がマストであるならば、今日はこのメニューだけやろうとか、選手と合意して、コンセプトを持って時間の足りない分を何かで補うように工夫します。頭脳やら練習目的やらそういったものを磨いていく。それしかありません。 主役は誰かってことですよね。本人たちは青春時代の全てをかけているのですから。部活動と勉強って青春の両輪ですものね。それが制限されちゃうって苦しいことですよね。親にとっても同じですよね。思う存分に高校野球をやって欲しい、部活動をやって欲しいと願っているのに。一体何から来ているのかってことをもう一回考え直した方が良いと思うんですよ。働き方改革だとか子供の安全面とか、パワハラだ、指導の行き過ぎが拡大解釈となってここに行きついているのではないでしょうか。これだけ議論があるのであればもう一回やり直した方が良いと思うんですけどね。昔に戻るってことはないにしても、もう少し緩和して、子供たちも指導者顧問も、話し合ってやるべきじゃないかなと思いますけど。 ーまさにこれは小菅監督にしか聞けない話なんです。部活動制限問題に出てくるのって公立学校の当事者ばかりですし、私立にとっては関係のない話なので、両方とも経験されている小菅監督ならではの意見を伺いたかったんですね。 小菅 私もこの問題には興味があって、ああ、こうなったんだって残念に思いました。ただ、私立もいずれそうなるかもしれないという危機感は持っていなくてはいけないと思いますね。高校の教員の方たちも、もしかしたら自分は転職するかもしれませんって話をされています。このままやっていても夢が持てないですって話をしていますね。そういった夢とか目標を奪っちゃうことになりますよね。 次ページに続く ー最後にいつもの質問です。夏に向けた意気込みをお願いします。 小菅 公立高校や、低迷していた土浦日大など、これまでは甲子園出場が目標の、茨城大会を勝つためのチームづくりをしてきました。しかし2018年に甲子園で松商学園に初戦敗退したのを機に状況が一変しました。甲子園で勝つ野球が必要なんだと強く意識し、甲子園で勝つためのチームづくりに着手しました。コロナがあり去年までは思う存分指導できませんでしたが、今年の世代は甲子園で勝つために3年間心血を注いだ、私の指導者人生の中でも初めてのチームなんです。ですから2023年茨城大会を勝つんだっていう意気込みは当然持っていますが、是非、甲子園に出て力試しをして、あそこで校歌を歌いたいっていう気持ちです。口が先走っているのではなく本気で思っています。甲子園で勝とうなっていう気持ちを持って入ってきてくれた部員たちなので、それを達成したいという思いが強いです。右往左往しても結果はもう決まっている。人事を尽くして天命を待つだから、結果はもう意識せずに、純粋に目の前の3秒を積み重ねて、ああ試合が終わったなという風にしたい。また一期一会を大切にして、この年に集まったこのメンバーで狙える甲子園なんだから、これはもう俺達チャレンジャーだろうっていう理屈ですね。こういう理屈を部員が落とし込んでくれれば強さを発揮できると思うんですけどね。勝ちたい、勝たなきゃならないという煩悩が入ってくると、ダメだと思うんですね。 ー戦いぶりを楽しみにしています。ありがとうございました。いや、今年もいい話が聞けました。いつもより全然長丁場で、お時間とっていただきましてありがとうございました。 小菅 高校野球ファンの人が最近増えたというか、戻ってきたっていうか、春なんかも大会場にかなり観客がいましたよね。最近はおのおのが独特の見方をしますからね。相変わらず古株のオールドファンはノーマルに見ていますが、やっぱりベンチのすぐ上の方で、スマホで速報したり写真を撮ったり、いろんな見方をされる高校野球でありスポーツですので、良いのかなって感じます。自分で楽しまれていますもんね。すごくそういうのって良いなって思います。自分がもし高校野球の指導者が終わったとしたら、たぶん観戦には行かないと思います。大会場ってやっぱり武者震いする場所なので、あそこでのんきにいいぞ高校野球ってことにはならないって思うんですよね。そうなるまで燃え尽きたいと思います。 (聞き手・伊達康)

つくば工科 開幕戦で敗れる【高校野球茨城’23】

第105回全国高校野球選手権茨城大会が開幕した8日、1回戦1試合がノーブルホームスタジアム水戸で開会式直後に行われた。つくば工科(つくばサイエンス)が登場したが、2ー9で下館一に敗れた。 つくば工科は2回に守備の乱れで失点するも、先発の矢口遼真が5回まで粘り強く投げ、追加点を許さなかった。しかし6回、下館一 横田健留の左中間を破るタイムリー三塁打などで6点のリードを許した。 6回まで下館一先発の海老澤歩夢にノーヒットに抑えられていたつくば工科の打線は、7回に先頭の横嶋翔太がセンター前に初ヒットを放つと、2死一、二塁から岡野修也、秋山昴の連続タイムリーで2点を返す。しかし反撃及ばず、投打で圧倒した下館一に敗退した。 チーム初ヒットを放った主将の横嶋翔太は「自分が長打を狙ってチームを楽にしたかったが、監督からヒットでいいと言われた。がむしゃらに必死になりホームに突っ込んだ」と振り返った。「入学した時から同級生は自分1人で、先輩5人とやってきた」とし、助っ人で大会に参加してくれた同級生、下級生に感謝を述べた。 タイムリーを放った岡野修也は「試合前は緊張していたが、先輩が引っ張ってくれて、回が進むごとに緊張がほぐれてきた。苦しい場面だったが、変化球を頭に入れつつストレートを狙った。点が取れて良かった。自分なりにやり切った」と話した。 佐藤将光監督は「5回までエラーがあっても粘ってくれたので選手たちは成長したと思う。3年生1人の横嶋が本当にチームをよく引っ張ってくれた。助っ人部員が参加してくれたお陰でずっと単独チームでできた。横嶋が本当に1人で頑張ってくれた」と健闘をたたえた。(高橋浩一)

高校野球茨城大会が開幕 4年ぶり全89チーム一堂に

第105回全国高校野球選手権茨城大会が8日開幕し、ノーブルホームスタジアム水戸で開会式が催された。新型コロナが5類感染症になったのを受けて、4年ぶりに96校89チームの選手が勢ぞろいし、開会式に臨んだ。26日まで、甲子園をかけた熱戦が展開される。 午前9時、大洗高校マーチングバンド部「ブルーホークス」の演奏が響き渡る中、昨年の優勝校、明秀日立を先頭に96校89チームの選手が元気よく足並みをそろえて行進した。スタンドからは拍手が響いた。 開会式では県高校野球連盟の榎戸努専務の開会宣言の後、深谷靖会長があいさつし、第101回以来、4年ぶりとなる開会式開催に感謝の言葉を述べた。さらに「甲子園という聖地を仲間と共に目指した経験が、皆を成長させ、生涯忘れることのない思い出になる。選手1人1人のプレーが大勢の人々に元気と勇気を与えてくれることに期待している」と述べた。 選手宣誓では霞ケ浦高校の新保玖和主将が「好きな野球に打ち込み、技術的にも人間的にも成長してきたことに感謝します。コロナ禍での3年間、思うように練習出来ず、試合の勝敗以上に苦しい思いをしてきた先輩方がたくさんいます。先輩方の思いを背負って、今までやり続けてきた夢を胸に、最後の1球まで全力プレーで全ての人に感動を与える戦いにすることを誓います」と力強く宣誓した。 霞ケ浦高校のプラカードを持って選手を先導した水戸女子高校の増田穂佳さんは「初めての経験でグラウンドから見る景色が広いし歓声に感動した。やって良かった」とうれしそうに微笑んだ。開会式の司会進行を務めた下館一高3年の関向日葵さんと境高校2年の塚田有真さんの2人は「緊張して間違えて噛んでしまって心残りはあるが、やって良かったし人生の良い思い出になった」と話した。(高橋浩一)

プロ注目のエース木村起点に役割分担 霞ケ浦 高橋監督【高校野球展望’23】

夏の高校野球県大会が8日開幕した。2019年から始まった県南3強チームの監督インタビューは今年で5回目を迎える。今回も常総学院、土浦日大、霞ケ浦の各監督から熱い話を聞かせてもらった。 1回目は霞ケ浦高校の髙橋祐二監督。霞ケ浦は秋(秋季関東地区高校野球県大会)の準決勝では常磐大高に、春(春季関東地区高校野球県大会)の準決勝では土浦日大に敗れたが、昨夏から3季連続で4強入りを果たしている。プロ注目の木村優人投手を擁してこの夏をいかに戦うのか語ってもらった。 ―毎年恒例のインタビューです。今年もよろしくお願いいたします。まずは春の大会の振り返りをお願いします。準々決勝の岩瀬日大戦は2対1とロースコアになりました。 高橋 春は全体的に打てませんでした。ファーストストライクを振りにいけない、どうしても消極的な場面が目立ちましたので、修正に取り組んできました。岩瀬日大戦は木村以外の2番手以降の仕上がりが課題になることが改めて浮き彫りとなりました。打者との戦いではなく、自分との戦いになってはね。心は熱く、頭は冷静にやっていかなくてはなりませんね。 ―準決勝の土浦日大戦は0対1とこれまたローゲームになりました。 高橋 打てませんね。木村が粘って最少失点に抑えてくれたんですが、攻め手を欠きました。夏は修正して臨みたいと思います。 木村は3段階くらいギア上がった ―今年のチームについて紹介をお願いします。 高橋 今年はキャプテンの新保玖和を中心としたまとまりのあるチームです。新保が私と同じ方向に向かって進んでくれて、強烈なキャプテンシー(統率力)で引っ張ってくれています。チームのことを最優先に考えてくれているんですが、少し根(こん)を詰めすぎるところがある。そこはバランスを取りながら、たまには引くことも大事だよと言い聞かせていますね。 ピッチャー陣はエースの木村優人が抜きん出ています。木村以外の投手陣の力量を見極めて起用の仕方を考えていきながら、なるべく木村に負担が掛からないように役割分担できればいいなと思っています。 打撃陣もやはり新保と木村が起点になります。ここに俊足の山崎隼人が絡んでくると面白い展開になるでしょうね。良い働きを期待しています。キャッチャーは何枚かいますので、ピッチャーとの相性を見ながら起用することになると思います。 ―木村選手はプロ注目投手として名前が上がりますが。 高橋 春は私としても驚くほど木村が成長を見せてくれました。ボールが明らかに強くなったし、3段階くらいギアが上がった感じがします。ただし、これは春だからこそできたことであって、夏の猛暑の中であのピッチングをするのは、いくら木村でも至難の業だと思います。最近メディアでよく取り上げていただいていますが、まだ18歳の高校3年生です。気持ちが浮足立って来ていることが見かけられましたので、そこはギュッと締め直すように、目の前のことに集中して勘違いしないようにと指導していますね。 次ページに続く 選手宣誓は運命的 ―今年は新保玖和主将が選手宣誓の大役を引き当てました。選手宣誓の文章はどうやって考えているのですか。 高橋 副部長の直井先生が国語科教員なので、新保と2人で相談して考えています。新保の気持ちをベースにした中で、いかに新保のオリジナルな言葉で、かつ新保が心の底から発した言葉になるようにと考えています。昨日(7月3日)ようやく本文が出来上がりました。本校の校長がそういうのが好きなんですよ。今は校長が最後の添削をしています。開会式の前日に職員室で朝会の時に、新保に本番さながらに選手宣誓をやってもらうことになっています。みんな学校では盛り上がってますよ。 ―準備は万端ですね。 高橋 本校の選手宣誓は2回目なんです。 ―そうだったんですか。前回はいつですか。 高橋 私が監督に就任して2年目の2002年です。太田浩之というキャプテンが引き当てました。私は2001年にバレー部の監督から野球部の監督になったのですが、春高バレーから帰ってきてすぐに野球部監督になった。その時のメンバーなので本当によく覚えています。太田君は立派な選手宣誓をしました。その太田の息子が太田翔都といって、今年うちの1年生にいる。これは何かの運命ですかね。私にとっての2度の選手宣誓に、太田が絡むという。彼が選手宣誓を引き寄せたのかもしれない。 ―なんだか運命的なお話しですね。 高橋 それと同時に、キャプテンの新保玖和の兄は、5年前の第90回選抜甲子園で瀬戸内高校のキャプテンとして選手宣誓を引き当てています。今回、新保が選手宣誓の大役を任されるということで、何か運命的なものを感じざるを得ません。本校への入学の経緯にしても、あらゆる縁が積み重なって新保と本校の糸がつながったという感じです。新保は人としてもみんなから好かれているし、もう素晴らしいと思います。 次ページに続く 応援、本当にありがたい ―もう新保選手が抽選前から引き当てることが決まっていたかのようなサイドストーリーですね。野球部員とブラスバンド部、チアリーディング部は交流があるのでしょうか。 高橋 うちは文化祭でも3つのクラブがコラボして応援メドレーっていうのを必ず発表しているので、3つの交流はよくやっています。一般生徒は終業式が終わったら応援に来てくれますが、吹奏楽とチア部は1試合目から来てくれます。今年は制限がかからないこれまで通りの応援ができるということで、今回の選手宣誓の文言にもきっちり盛り込まれているけど、やっぱり学校応援があって、普通の方々が来てくれると言うことは気持ちの高まりも違うし、本当にありがたいですよね。 費用負担抜きでは語れない ―公立高校で話題になっている部活動問題について、高橋監督の見解をお聞かせください。 高橋 どこかから聞いた話ですが、日本の部活動制度っていうのは、外国のどこにもない、学校に行っていれば貧富の差がなく平等に部活動の機会を得られるんですよね。他国は地域スポーツだっていわゆるアカデミーみたいなのを立ち上げてっていうとそこにはお金が必要で、お金を払ってチームに入れる。そういう制度になると、貧富の差で受けられなくなる可能性がある。日本の部活動というシステムはそういう側面では優れていたんだと思います。ところが、アカデミーになるとみんな平等に受けられていたことが受けられなくなる。中学も高校も、部活動の指導がしたくて教員になっている人がいっぱいいて、その先生達がやる分には問題ないと思うんだけど、やりたくない先生だっている。先生の働き方改革のためには、別の指導者を雇わなくてはならない。生徒の部活動の機会の確保と併せて費用負担抜きでは語れない問題ですね。 「こういうところを見習おうよ」 ―WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)は全試合ご覧になりましたか。 高橋 全試合見ました。映画(「憧れを超えた侍たち 世界一への記録」)も見ましたよ。1週間前に部員全員を連れてレイトショーを見てきました。選手たちも感動して良かったって言っていたみたいです。映画は特に勉強になりましたね。まだまだ試合が終わってないんだから泣いちゃダメだろうとか、同点に追い付いた後に勝ち越されて、その瞬間にベンチの中が静まりかえった。その時に大谷翔平選手が「大丈夫、大丈夫、大丈夫」って、ベンチ内を大声で練り歩くの。あれ見た瞬間、こんなやついるんだって驚きましたね。静まり返ったベンチが息を吹き返す。プレーだけじゃない。こういうところを見習おうよって、君たちにもできるよってミーテイングで話しました。 ―最後の質問です。大会に向けての意気込みを語っていただきたいと思います。 高橋 今までの経験上、勝ちたい勝ちたいと思っていない方が勝てているように思います。チームは完璧に力のある仕上がりにはなってはいませんが、かと言ってエース級が何人かいても上手くいくとは限らない。そこが難しいところですね。甲子園という素晴らし場所にいけるように選手達は頑張ってきたんだから、優勝したいねって話をしています。なんとか甲子園に出て校歌を歌えるようになれれば良いですね。 ―戦いぶりを楽しみにしています。ありがとうございました。 (聞き手・伊達康)

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