障害があっても「好き」を仕事に 手作りバッグ販売 さくら学園 つくば
「障害があっても、好きなことを仕事にしたい」。障害のある利用者や、支援員のそんな思いを込めた手作りバッグを、つくば市で障害者の就労支援に取り組む「さくら学園」(同市島名、NPO法人明豊会運営)が製作し、28日、つくば市役所で開かれるマルシェで販売する。
独特のセンスとユーモア
白地のバッグに描かれる、卵が乗るご飯とTKGの文字。「T(たまご)K(かけ)G(ごはん)」の略称だ。その他にも、街の風景や、「最後の晩餐」などの見慣れた絵柄が、独特のセンスとユーモアであしらわれている。描くのは、さくら学園を利用する、つくば市の根本歩美さん(25)。ある時、学園での創作時間に根本さんが描く絵の魅力に、生活支援員の鈴木芽未さんが気付いた。「好きなこと、得意なことを仕事にできたら」と鈴木さんら職員たちが思いを強くした。
才能あっても生かす場ない
「さくら学園」では、障害によって働くことに困難がある人に対して、梱包作業や清掃業務、パソコン入力などの仕事を通じて、一般企業への就職を目指す「就労移行支援」や、その後のサポートをする「就労定着支援」、就労訓練を提供し工賃を支払う「就労継続支援B型」などの就労支援をしている。
支援の現場では、利用者の適正に応じた就職先を施設職員が一緒に探すのが一般的だという。鈴木さんは「障害のある人が選べる職種の幅は、非常に少ない」とし、「『好き』を仕事にできる機会はさらに限られている」と言う。才能があっても生かす場がないのが現状だ。バッグの製作・販売は、こうした状況を変えるための試みだ。
28日、根本さんもマルシェに
利用者それぞれの得意なことや、好きなものを一緒に見つけるのも、支援の一つだという。根本さんの「TKG(卵かけご飯)」の絵も、そんな思いを抱く職員とのやりとりから生まれた。
バッグはリバーシブル。根本さんらが描いた絵の反対側には、さくら学園で行われている「手織り教室」で作られた織物があしらわれている。サイズは、大・小2種類。
今回、さくら学園が出展するマルシェは、28日午前10時から午後2時まで、つくば市役所庁舎南側の芝生前広場で開催される。つくば市にある障害者就労施設ら12事業所が参加する企画だ。
さくら学園ではバッグのほかに、根本さんらの絵をモチーフにしたポストカードも販売する。当日は、職員と共に、根本さんも売り場に立つ。
鈴木さんは「目の前で商品が売れたら、描いた人はうれしいし、夢もふくらむはず」とし「障害があっても、自分の好きなことで食べていけるようになれば、他の障害者の方にも夢を与えると思う」と意気込みを語った。(柴田大輔)
◆バッグの値段は、大(幅37×高さ35×奥行き13センチ)4000円、中(31×35×11センチ)3500円、小(32×18×8.5センチ)2200円。
30年が、たった40分! 《写真だいすき》6
【コラム・オダギ秀】大学を出てからずっと、写真を撮ることを仕事にしてきた。どのくらいの時間、写真を撮ってきたかと、フィルムを使っていた昔、計算してみたことがある。仕事として写真を撮って30年ぐらい過ぎたころだ。そしたらなんと、40分ほどにしかならない。
と言うのは。
フィルムの時代だから、36枚撮りフィルムを月に100本撮ったとして3,600枚。1年にすると43,200枚。それを30年続けて1,296,000枚。撮る枚数が少ない大判カメラで撮ることも多いから、実際にはその半分としても、約60万枚以上の写真を撮ってきたことになる。
その写真のシャッター速度を、1枚当たり平均250分の1秒で撮ったとすると、1/250秒×60万枚。するとそれは、合計40分ほどになる。たった!
つまり、ボクが、一生懸命、30年間、写真を撮り続けてきたと言っても、シャッターを切っていた時間は、ほんの1時間にも充たない、約40分でしかないということなのだ。
こんな話をすると、大方の人は「ふふうん」と、感心したような顔をする。それが狙いでこんな話をしているのだが、しかし、この話にはウソがある。実は、一度のシャッターに、何十分もかかることもあるのだ。
30~40分かけて1枚のシャッターを切る
たとえば、薄暗いお堂の中の仏像を撮影させていただく時など、30~40分かけて1枚のシャッターを切るというようなことは、ごく当たり前のことなのだ。自分の体が動いてカメラに振動を与えてしまわないよう、そっとシャッターを開き、暗いからフィルムに写真が写るまで、じっと身をすくめて時が流れるのを待つ。
寒さで身体が震えたり、暑さで汗がしたたっても、ただじっと、30分も1時間も、時が過ぎるのを待つのだ。
そのような時は、30年かけて切ってきた60万回のシャッターと同じ長さの時間を、たった1回のシャッターに費やすことになるのだ。数回シャッターを切れば、それだけで何時間にもなるのだから。
考えてみると、「製造」時間に、そんなにも差がある製品なんて、他にあるだろうか。ある時は、数百とか数千分の一秒で生み出されるのに、ある時は、その何万倍もの時間をかけて作られる。その製品を見る者は、そんなことを意識することはまずなく、同じ次元で評価する。
写真というのは、面白い世界だと思う。(写真家、土浦写真家協会会長)
驚異の1000ナノメートル超えで国際カーレース優勝 つくばNIMS-MANAチーム
フランス・トゥールーズで開催の国際ナノカーレースで、日本から参戦の物質・材料研究機構(NIMS、つくば市並木)のチームが優勝した。ナノメートル(10億分の1メートル)サイズの分子マシンを24時間走らせて競うレースは、日本時間で24日から25日にかけて行われ、同チームのナノカー「Slider-Spider(スライダー・スパイダー)」は1054ナノメートルを走り、ターン数でトップ(同数)だったスペインチームと優勝を分け合った。
参戦したのは同機構国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(MANA)副拠点長の中山知信さんをチームディレクターとするNIMS-MANAチーム。第2回大会の今回は、開催国のフランスをはじめ世界6カ国から計8チームが参加した(3月15日付)。
参加チームのドライバーはフランス国立科学研究センターに集結し、会場に設置されたコンピューター端末を操作しナノカーを走らすが、マシンはそれぞれの所属先に設置の走査型トンネル顕微鏡(STM)の内に置かれる。NIMS-MANAチームからはドライバーの川井茂樹さんらが現地入りしたが、中山さんらはつくばでSTMの様子を見守りながら、現地から送られるライブ映像をネット放送する実況の解説を行った。
「Slider-Spider」は全長約2.5ナノメートルの分子マシン。レースの前半で分子の一部が壊れるというトラブルに見舞われるが、前半終了時点でトップに立った。中山さんは「一歩一歩は小さいがコツコツと緻密な動作を繰り返すドライバーのテクニックで距離を稼いだ」と解説した。
日本時間の25日正午過ぎ、福島県沖で地震があり、デリケートなSTM上のコースに影響がないか心配されたが、川井さんはフランス側のモニター越しに地震を察知、難を逃れるというシーンもあった。
25日午後7時のレース終了時、「Slider-Spider」は参加8チーム中、唯一マイクロメートル(100万分の1メートル)レベルに到達する1054ナノメートルを走り切った。ジクザクした概ね100ナノメートルのコースを4周半する軌跡をたどった。
文句なしの優勝と思われたが、主催者発表では678ナノメートルだったスペインのNANOHISPA(ナノヒスパ)チームと同率の1位となった。ナノカーで重要とされるターン数(ジクザクに曲がる回数)でもNIMS-MANAチームと同数の54。スペインチームの広く大きく取ったコース取りが評価されたという見方が示された。
これにはネット放送の視聴者から疑問が多数上がった。レース終了時点で累計3万8000人もが視聴したが、「そんなの聞いてないルールが出てきた」「芸術点みたいな採点があったのか」などといぶかる声だ。
解説の中山さんは「前回は1ナノメートルでリタイヤしたのだから、マシン1台で走り切って1000ナノ超えは上出来。まさに何が起こるか分からない24時間レースだった」と会心の笑みを浮かべた。(相澤冬樹)
四季ごとに打ち上げる 「土浦花火百年の計」商工会議所提言
土浦全国花火競技大会が4年連続中止となっている状況の中、土浦商工会議所(中川喜久治会頭)は25日、「花火のまち土浦の発展に向けて」と題した提言書をまとめ、安藤真理子市長に手渡した。年間を通して四季ごとに特徴のある花火打ち上げを検討する、土浦花火館を創設するーなどを提言し、長期ビジョン「土浦の花火百年の計」を策定するよう求めている。
会場は現行の桜川河川敷が適地
①恒久的・安定的に花火競技大会が運営できる会場の設定②年間を通じた花火のまちの創出③花火に関する拠点とネットワークの整備ーの3点を提言している。
会場については、現在の同市佐野子、桜川河川敷は、全国花火競技大会の中でも日本一臨場感がある、駅から会場まで交通アクセスが良いなどから、現在の会場が適地だとした。一方、近年は開催時期に大雨が相次ぐなどしていることから増水対策など改善を図るよう提言している。
一方、長期的な取り組みとして50年先を見据えて、大会会場を買収し市有地化する、会場を防災公園として整備し、花火大会開催時は、打ち上げ場所、観覧席、保安距離区域などの安全を確保することが考えられるとしている。さらに100年先を見据えて、霞ケ浦湖上、土浦港周辺、霞ケ浦総合公園など会場移転の研究を進め、霞ケ浦周辺自治体と連携した広域大会の可能性も研究するよう提言している。
年間を通じた花火のまちの創出については、春夏秋冬と四季ごとの打ち上げを提言し、例えば、春は桜川畔の夜桜と花火が競演する「桜花火」、夏は土浦新港で二尺玉の打ち上げが見られる「キララ花火」、秋は「土浦全国花火競技大会」、冬は水郷イルミネーションとコラボした「ウインターイルミネーション花火」の打ち上げを提言している。
さらにコロナで中止となった花火大会の代わりに20年と21年に市が打ち上げたサプライズ花火を「コロナ禍、密の回避と共に、沈滞した人々の心を元気づけた」と評価し、これを応用し、企業や個人が記念日や祝い事などにプライベート花火を打ち上げられる仕組みをつくる、花火競技大会のライブ配信を継続するなどを提言している。
常設の資料館創設で拠点化
拠点とネットワークの整備については、総合的な情報発信拠点として「土浦花火館」など常設の資料館を設置し、観光スポットになるような、プラネタリウムなどで実物大のバーチャル花火を体験できるコーナーを設けたり、花火に触れ合えるイベントを開いたり、小中学生が花火の歴史や花火の作り方を学んだりする施設の創設を提言している。
ほかに、花火競技大会の運営をサポートするボランティア団体「土浦花火倶楽部」の創設、市の玄関口となる土浦駅前の市役所庁舎壁面への花火プロジェクションマッピングの実施、花火関連事業者の市内誘致、花火に関する土産品、グルメ、家庭用花火などの商品開発支援、インターネットや雑誌などを活用した情報発信の強化などを提言している。
提言は同会議所創立75周年にあたり、25日市内で開かれた通常総会に合わせて発表された。来賓として総会に出席し、提言を受け取った安藤市長は「提言を重く受け止め、先人が築き上げてきた宝をもっと磨き上げて、チャレンジさせていただきたい」などと話した。具体的には、今後検討したいとしている。
毎年秋に開催される土浦全国花火競技大会は、秋田県の大曲、新潟県の長岡と共に「日本三大花火」と称され、県内のほか首都圏各地から例年70万人が訪れる。一方、2018年と19年の大会は事故によりけが人が出て途中で中止、20年と21年は新型コロナの影響で中止となっている。
こうした状況を踏まえ、商工会議所は昨年8月から企画委員会(大山直樹委員長)で検討を重ね、提言に至った。(鈴木宏子)
春は「フナののっこみ」の季節 《宍塚の里山》87
【コラム・福井正人】私たちの会は毎月第3日曜日、地元農家と「田んぼさわやか隊」を結成し、宍塚の里山周辺の水田の整備活動を行っています。このエリアの農業水路には、春になると「フナののっこみ(産卵のための遡上=そじょう=)」が見られます。今回はそこで見られる魚たちを紹介します。
宍塚大池を水源とするこの水路は、大池から備前川までの約2キロ、宍塚の里山から北東に流れています。上流域は里山の谷津田の脇を流れる土水路で、昔ながらの水路の景観を残しています。中流域が田んぼさわやか隊の活動エリアで、圃場(ほじょう)整備された田んぼの脇を流れていますが、土水路のまま残されています。
下流域は三面コンクリートになっていますが、中流域から流出した土砂が堆積していることが生き物にはプラスになっているようです。残念ながら、上流域の里山内の水路と中流域の土水路の間には、コンクリートU字溝暗渠(あんきょ)と約40センチ水位差がある場所があります。このため、上流域と中流域の魚類の行き来、特に遡上を阻害しています。
会が地元の方のお話をうかがってまとめた聞き書きには、昔はウナギをはじめとして多くの魚類が下流側から宍塚大池まで遡(さかのぼ)っていたことが紹介されています。それを思うと残念ですが、里山内の水路には、いまでもドジョウやヨシノボリなどの魚類や多くの生き物を育んでいます。
備前川から産卵のために遡上
中流域に目を向けると、水路は里山の谷津田域のそれに比べると直線的ではあります。でも、土水路として残されているため、側面や底面にデコボコがあり、植物なども生えるため、水の流れに緩急ができ、隠れ場所もあって多くの生き物に生息する場を提供しています。
特ににぎやかになるのが、田んぼに水を入れ始まる4月~初夏です。4月になるとフナが備前川の方から産卵のため遡ってきます。これが「のっこみ」です。特に、雨が降って水量が増えた翌日に多く見られます。水位の上昇や水の濁りが遡上を誘発しているのかもしれません。
5~6月になると、この水路でふ化したフナの子どもが見られるようになります。また5月下旬から初夏にかけては、ハゼの仲間(ウキゴリ、ヨシノボリ、ヌマチチブ)の子どもたちが霞ケ浦から備前川を経て遡ってきます。この水路が「魚のゆりかごと」して機能していると思うと、うれしくなります。
水量が少なくなる秋には、これらの魚たちは備前川の方へ下っていきますが、秋から冬の間も常に水が流れているため、水が枯れることはなく、ドジョウやヨシノボリなどは通年見ることができます。こうして見ると、田んぼさわやか隊の活動エリアが、多くの生き物を育む場所としても重要なことが分かります。
田んぼさわやか隊では隊員を募集しています。興味を持たれた方のご参加をお待ちしています。(宍塚の自然と歴史の会理事)
都市の中の「自然」から学ぶ 洞峰公園・不忍池 《遊民通信》37
【コラム・田口哲郎】前略
つくば市の洞峰公園は手入れがゆきとどいていてきれいなので、たまに散歩します。ある朝方、遊歩道脇の草むらにカモがあおむけに転がっていました。おそらくネコかカラスにやられたのでしょう。思わず目をそらし、かわいそうにと心の中で手を合わせました。でも、こんな近代都市のなかの公園も「自然」なのだなと感じました。この地球、いえ宇宙はあまねく自然の摂理に支配されていますから、当然なのですが。
大学に行くときに上野の不忍池の脇を通ります。コロナ禍終息がまだ見通せず、すべての講義がオンラインでしたが、資料を借りに行く場合は、どうしてもキャンパスまで行かねばなりません。不忍池にはカモやハトに混じってユリカモメがいて、手すりにとまって休んでいます。このユリカモメ、東京都の鳥ですが、『伊勢物語』のあずまくだりに都鳥(みやこどり)として出てくることは以前書きました。
東京という街は1000年余りでかなり変わりました。東国のひなびた土地だったのが、太田道灌(おおた・どうかん)のころから里になりはじめ、江戸時代、明治・大正を通じて世界有数の大都市に。戦争で焼け野原になって復興したけれど、今度は目に見えない微細生物のせいで、大きな変化をせまられている。このユリカモメはそんな人間社会の変化をあのつぶらな瞳で見つめてきたのです。
人間が社会を必死につくってはこわしてまたつくる苦労をしているのを、悠然と眺めている姿に「自然」を感じます。人間社会も有無を言わさずに「自然」なのかもしれませんね。いまだに人の世は食うか食われるかの原理から脱していないように思えます。洞峰公園のカモが身をもって教えてくれたことです。動物は生きるためには食わなきゃいけません。摂理ですから仕方がない。でもそのどうしようもない営みを反省するのは、人間だけができることとも言えます。
罪なき「自然」と人間
遠藤周作はキリスト教作家ですが、小説やエッセイの主なテーマのひとつは原罪です。人間は生きているうちに、知らず知らずのうちに他人を傷つけてしまっている。意図して傷つけたなら悔いる理由もあるが、無意識に傷つけたら傷つけたという意識すらないので、もっとも恐ろしいというのです。
この生まれながらにしての罪というテーマは、人間が生きているかぎり必ず生まれるものです。夏目漱石の『こころ』の先生が自殺した理由も同じ罪の意識でしょう。人間は自然の摂理から逃れられないのですから、罪からも逃れられないわけです。
キリスト教はこの問題にとくにこだわって考えてきたように思います。摂理だから罪つくりは仕方ないと割り切るのではなく、悔いあらためて神との対話のなかで罪を消化しようとする。これはあまり原罪のような意識を持たない日本人にはよく分からない話です。とはいえ、罪は絶対に悪いことに変わりありません。罪なき「自然」は決して幻想ではない、と思うのです。ごきげんよう。
草々(散歩好きの文明批評家)
2カ所の不登校支援事業をつくば市議会可決 支援事業者リヴォルヴ・小野村哲理事に聞く
つくば市議会は3月議会最終日の23日、不登校児童生徒学習支援事業2カ所の予算決議案の採決を行い、可決した。
不登校児童生徒が通所する「むすびつくば」は、2020年から市とNPO法人リヴォルヴ学校教育研究所が協働で運営してきた。契約終了に伴い、新年度からの委託事業者を公募型プロポーザルで選び、リヴォルヴは次点に沈んだ。保護者会が存続を求めて市に陳情書を提出(1月20日付)、4502筆の署名が集まった。事態を重くみた五十嵐立青市長は、リヴォルヴが新年度も事業を継続する施策を公表。プロポーザルで選定されたトライへの事業費とは別に、リヴォルヴによる事業費を追加提案した(3月3日付)。
保護者会が、リヴォルヴによる事業の継続を求めた問題はひとまず決着したが、契約期間3年のトライに対しリヴォルヴは1年。保護者からは早くも「1年先はどうなるのか」の不安の声が上がる。この状況下でリヴォルヴはどう活動していくのか。リヴォルヴの理事、小野村哲さん(62)に今後の取り組みなどについて聞いた。
市民に説明できるプロセスに
ー今回の事態の原因は何だったと感じているか。「保護者や子どもたちの意見を聞く姿勢が市教委になかったことと、プロポーザルの運用に問題があったと思う。7人の選定委員中、むすびつくばを見学したのは1人だけという状況で採点が行われた。選定委員の人選とプレゼンを公開にして透明性を持たせ、市民に説明できるプロセスに改めなければ」
ー五十嵐市長はこの1年で、不登校支援のあり方を検討するとしている。「私たちは手続き上は委託でも、市教委と保護者、運営スタッフ、臨床発達心理士が一堂に会し、民官が手を携えて支援のあり方を考える運営協議会を準備している。学習支援の活動を誰がどう評価するかも並行して検討したい」
「公募のあり方も課題で、事業者の選定は公平性を確保し、既存の事業者が続行して新規事業者の参入を阻むことにならないよう、かといって事業者がころころ変わって子どもたちを不安にしないよう考えたい。リヴォルブは既得権益を守るつもりはない」
ー市教委の不登校への施策をどう見ているか。「授業の進度をいたずらに早めない、テストを強制しないなど、勉強についていけない子どもを置いてけぼりにしない指導が行われれば、確実に不登校は減らせる。授業の進め方や何を教えるか、また時間割は学校の自由で(改革は)すぐにでも始められる」
「新年度中に校内フリースクール1校を開校するという。全国的に見て、一挙に数校に配置したが単に空き教室に『校内フリースクール』の看板を付け、手の空いた教職員が見に行くだけという自治体がある。1校から始める当市は真剣に考えていると思う」
子どもたちの幸せとスタッフへの責任
ー次年度以降もむすびつくばの運営を目指しているか。「子どもたちのために新年度は続けながら、子らの心を大切にした支援目標を市教委や保護者と共有して支援のあり方を検討する。手ごたえがなければ引く可能性がある。私には子どもたちの幸せとスタッフへの責任があり、スタッフの生活が安定しなければ良い支援はできないということ。委託費約2100万円の全部を12人の人件費に回せるわけではない。フルに働く常勤スタッフ2人ですら月に20万円ほどしか払えない」
「私もスタッフもこれまで続けてきたのは子どもといるのが楽しいに尽きる。将来、通所している子どもたちが『むすびつくばがあったから今がある』と言ってくれたらうれしい」(聞き手・橋立多美)
受け継がれる土になじむ習慣 《菜園の輪》2
【コラム・古家晴美】最寄り駅から徒歩圏内にあるつくば市内の貸し農園を利用している、40代の中本暁子さん親子―息子の容太郎くん(小学校低学年)、70代の父の川島弘之さん、母の和子さん―に、お話をうかがった。暁子さんは、農園近くのマンションに13年前に引っ越してきてから、同僚の紹介によりここで野菜作りを始めた。畑は約30平方メートルで、年間使用料は約1万円である。
前のアパートでも庭先を使って野菜を作っていた。父が家の庭で畑仕事をする姿を見て育ち、自然と植物の成長を見守ることに楽しさを感じるようになったと言う。暁子さんは独学で野菜作りに取り組んでいたが、8年前の妊娠で畑の手入れが十分にできなかった。
そこに手を差し伸べたのが弘之さんだ。平日の畑の管理を和子さんと行い、週末には孫の容太郎くんと畑で会うという楽しみもできた。容太郎くんは歩けるようになると、ほどなく、はだしで畑に入り、土遊びを始めていたと言う。現在でも友達を呼んで、共にじゃがいも掘りをしたり、ミミズを関心深気に観察したりと、農業に対する関心も高い。
父の参加により、菜園は新たな段階に入る。暁子さんによれば、父が牛糞(ふん)や山からいただいてきた腐葉土を畑に入れてくれたことにより、収穫量が大幅に増えた。
中本暁子さん・容太郎くん、川島弘之さん・和子さん親子
弘之さんは農家の出身で、幼いころから土いじりになじんでいた。土がないと落ち着かないと言う。教員生活の合間に、庭先でずっと野菜作りをしてきた。しかし、全く苦労がなかったわけではない。秋蒔(ま)きで越冬させねばならない三度豆(さんどまめ)は、この畑ではその時期に蒔くと枯れたり、カラスに食べられた。試行錯誤を繰り返しながら、遅蒔きにして5月に収穫することにした。
また、容太郎くんのリクエストに応えて作り始めたスイカも、最初の2年はうまく実がならなかったが、摘果(てきか)の工夫を重ね、昨年は10玉近く収穫できた。基本的に無農薬で有機肥料しか使わないので、安心して大根の葉っぱも食べられるし、何といっても、植物が育つのを見守る楽しみは農耕民族のDNAでしょうね、と暁子さんは言う。
今年は冬が寒く氷点下の夜になり、菜花(なばな)は全滅し、ほうれん草も乾燥してしまった。大根は地面から下は食べられたものの、地上に出ている部分は凍ってしまい、食べられなかった。自然に左右されることが多い野菜作りだが、親子3世代、親の背中を見ながら、土となじむ習慣は、脈々と受け継がれているのではなかろうか。(筑波学院大学教授)
お姫様の絵柄封切り ミルキークイーンで純米大吟醸 阿見町の産学官共同開発
ミルキークイーンにプリンセス・ミチコときては、是非ともお姫様で-と阿見町がたってのお願い。東京農業大学(東京都世田谷区)や浦里酒造店(つくば市吉沼)などと産学官共同開発した純米大吟醸酒「桜翔(おうしょう)」は、ラベル担当のイラストレーターの応諾を得て、ようやく新デザインが完成、22日から同町内外の酒販店に並んだ。
諏訪原寛幸さん手掛けるイラスト
ラベルデザインを手掛けたのは、阿見町出身のイラストレーター、諏訪原寛幸さん(52)。「真・三国無双」「戦国無双」などのゲームキャラクターや歴史刊行物へのイラスト提供などで活躍してきた。町の観光大使(あみ大使)に就任している縁で、デザインを依頼した。
「桜翔」は、同町産の食用米ミルキークイーンが原料。東京農業大学がバラ「プリンセス・ミチコ」(品種名)から分離した花酵母「PM1」を用いて、浦里酒造店が醸した。産学官共同は20年に、町が同町商工会へ製造を委託する形でスタート。初年度醸造分はコロナ禍で疲弊する町内の飲食店への支援事業で造られ、小売りはせず飲食店だけで振舞われた。
ミルキークイーンの特徴である芳醇な甘みと、バラを想わせる華やかでフルーティーな味わいが特徴という。昨年行われたアンケートで好評価を得て、販売してほしいとの声が多数を占めたため、今年度醸造分から一般販売を行うことになった。まん延防止等重点措置の適用解除を待ち、満を持しての22日発売開始となった。
芳醇な甘みとほのかな香り
初年度醸造分はラベルのイラストに戦国武将らしい兜武者が描かれたが、「女性は苦手」と渋る諏訪原さんを説き伏せて、お姫様の絵柄が実現した。「桜翔」は町商工会青年部のネーミング。桜は阿見町の木になっており、町に伝わる昔話「姫塚」にもちなんでいるという。
「霧筑波」醸造元の浦里酒造店、浦里浩司代表は地元産米を使った地酒にこだわりをもっている(1月16日付)。浦里さんによれば、「ミルキークイーンは本来、酒造りには向かないコメだが、花酵母の使用が許されたことなどにより芳醇な甘みを活かした日本酒に仕上げることができた」という。酒造店には例年12月に3週間ほど、東京農大醸造科学科の学生が研修で蔵に泊まり込み、日本酒の仕込みを実践体験している。「桜翔」の酒造りにも参加した。
純米大吟醸「桜翔」は原料米に阿見町産ミルキークイーンを100%使用、精米歩合50%、アルコール度数15%。内容量720ミリリットル入り1980円(税込み)で発売中。阿見町内ではカスミ阿見店・荒川本郷店、菊水酒店などで取り扱い、ふるさと納税返礼品にもリストアップされた。つくば市内では浦里酒造店のほか、たがみ酒店、イオンつくば店などで販売される。(相澤冬樹)
問い合わせはあみ観光協会(阿見町役場商工観光課内)電話029-888-1111
7事業者が提案、イノベーション拠点誘導に厳しい意見も つくば市吾妻70街区
昨年実施されたつくば駅近くの吾妻2丁目70街区の国家公務員宿舎跡地約5.7ヘクタールの土地利用調査について(2021年10月26日付)、財務省関東財務局とつくば市は18日、民間事業者の意向調査(サウンディング型市場調査)結果を公表した。
財務省など市場調査結果を公表
土地活用の意向がある建設業者、不動産業者など計7事業者が参加し、マンションや戸建て住宅、商業施設、イノベーション施設などの提案があった。今後、関東財務局とつくば市が議論して開発の条件などの活用方針を検討し、二段階一般競争入札=メモ=で処分を行うとしている。関東財務局によると今後のスケジュールは未定という。
提案があったのはほかに、スーパーや飲食店、学習塾、書店、無人店舗など生活支援施設、社宅、学生寮、シティホテル、コワーキング施設、教育施設など。
「理念より現状把握を」「行政の補助必要」
つくば市が中心市街地まちづくり戦略で掲げている、研究学園都市の研究成果や最先端技術を実現する場となる「イノベーション拠点」の誘導に対しては、「2000坪をイノベーション施設、残り2000坪をオフィスとするイノベーションエリアの開発を想定する」(2000坪は約6600平方メートル)などの提案があった一方、「イノベーション拠点は一定規模導入可能で、近隣のスタートアップ施設とニーズの取り合いにならないよう差別化を図るが、今後の需要調査でニーズを把握し慎重に判断することが必要」「活用方針であるスタートアップ支援施設などは、周辺の既存施設に多数存在するが十分に活用されていない。理念より現状を正確に把握した上で市民にニーズのあるものを整備することが最優先」など厳しい意見も出され、市場のニーズと市の方針に乖離(かいり)があることが浮き彫りになった。
さらに70街区にイノベーション拠点を整備する場合の事業者が参加しやすい仕組みとして、「イノベーション施設は収益性が低く、行政の支援など積極的な協力、関与を希望する」「補助金、土地を安く貸す、施設の運営を市が行うなど行政の補助が必要」など、行政の支援を求める意見が出された。「ラボを整備する場合、危険物の貯蔵が必要となるケースがあり、第二種住居地域や近隣商業地域の用途では十分な貯蔵容量を確保できない。危険物貯蔵量の緩和など行政の特段の配慮を要望する」などの意見もあった。
こうした市場ニーズに対し、つくば市学園地区市街地振興課は「イノベーション拠点については厳しい意見もあるが、そうでない意見もある。市場ニーズは把握できたので、調査結果をもとに国と調整したい」としている。
事業コンセプトや事業内容については、ほかに「おしゃれで高級感のあるつくばらしい街づくりをする」「新たな買い物体験の場であるイノベーティブショッピングセンターを形成する」「スーパーは3000~4000坪を想定する」「商業施設、マンションの規模はマーケット分析を行い慎重に検討する」などの意向が示された。
処分方法については、売却、定期借地、PFIなどさまざまな意見が出た。処分時期も「可能な限り早く」「柔軟に対応可能」などさまざまな意見があった。(鈴木宏子)
※メモ【二段階一般競争入札】開発の条件をあらかじめ設定し、入札参加者から土地利用の企画提案書を提出してもらい、国が設置する審査委員会で開発条件との適合性を審査した上で、審査通過者による価格競争で落札者を決定する入札の方法。
