火曜日, 4月 7, 2026

窓の内側から見たセンター広場 《映画探偵団》47

【コラム・冠木新市】昔見た映画を今見ると印象が変わる場合がある。アルフレッド・ヒッチコック監督の『裏窓』(1954)がそれだった。 J・スチュアート主演の『裏窓』 報道カメラマンの主人公ジェフ(ジェームズ・スチュアート)がケガをし、ギプスで身動きが取れずにいて、窓から正面アパートの住人たちの暮らしを観察する。そのうちジェフは、セールスマンが寝たきりがちな口うるさい妻を殺害したことに気付く。 眼下の小さな庭を囲むビル。アパートには「独身で売れない作曲家」「肌の露出を気にしない若いダンサー」「子犬を子どものように熱愛する中年夫婦」「夫も恋人もなく寂しさを感じている上品な婦人」「現代アート風な彫刻を作る老婦人」ら、窓の内側で暮らす人たちの人間模様がそれぞれ1本の映画のように描かれている。 今見ると、セールスマンの殺人よりもこちらの方にインパクトがあった。新型コロナ感染拡大の状況下で、巣ごもりを強いられた現代と似た景色に見えたからだ。さらに、建物に囲まれた庭がどことなくセンター広場と重なったからかもしれない。 秘かに「妻の遺体を切り刻み」処理 センター広場も、外で眺めるのと窓の内側から見るのとでは印象が変わる。ホテルの眼の形をした11Fから見下すと、小さく見える広場は地球ではなく、どこか遠い惑星かのように錯覚させられる。 だが、吾妻地域交流センター5Fの和室から見ると、意外に庶民的な空間に映る。また、ノバホール3Fの三角窓から眺めると、エキスポセンターから一直線の秩序的な道が階段を降りると混沌(こんとん)とした広場となり、対比をなしていてとても面白い。私のお気に入りは、市民活動センター1Fの印刷室から見た広場の噴水だ。窓枠が額縁となり静謐(せいひつ)な絵となっている。 半年前、「広報つくば」3月1日号に、センタービルのリニューアル計画が初めて発表された。しかしそこには、ノバホール脇の階段が削られ急なスロープになることも、正面玄関の白壁が無くなることも、市民活動センターの窓ガラスが壊され取り替えられることも、何一つ説明は出ていなかった。 これでは、秘かに妻の遺体をバラバラに切り刻み少しずつ処理していく、『裏窓』の犯人と同じ方法といっても過言ではないのではなかろうか。 だから、何か発見あるのではと思って、久しぶりに『裏窓』を見てみたのだが、今回はそんな「犯人」よりも、窓の内側で暮らす「作曲家」「ダンサー」「彫刻家」たちの方が気になった。 改造計画発表後、これまでセンタービルや広場を利用してきたアーチストの声が、賛否を含めてほとんど聞こえてこない。「つくばセンター研究会」のメンバーから、アーチストは市や関係者とのしがらみがあり弱い立場なので、何も言えないのではないかとの声も聞かれた。すでに自由な空気は失われ、匿名の世界でしか発言できない状況なのだろうか。 『つくばセンタービル謎解きツアー』 『つくばセンタービル謎解きツアー』という企画を、メンバーから提案があり「アイラブつくばまちづくり補助金募集」に応募することとなった。センタービルの状況を内側から知るよい機会だと思った。 8月11日、ヒアリング審査がつくば市役所で開かれた。企画内容を説明しようとしたら、すぐ止められ、いきなり質疑応答になった。ところが、議長が促しても質問が出ず、議長から「予算が出なくてもやりますか?」と聞かれ、「やります」と答えた。(その後2名から短い質問があった) 8月12日付で10万円の交付が決定した。センタービルでの活動なので、市の担当部署は中心市街地振興課と思っていたら市民活動課だった。 アイアイモール(これも半分の狭さになる)によって囲まれた、一見何もないように見えるセンター広場には、あるエネルギーが流れているように思える。その正体は何なのか? 『つくばセンタービル謎解きツアー』で解答を示すつもりである。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家)

「はやぶさ2」帰還カプセル展示 10日からつくばエキスポセンター

小惑星探査機「はやぶさ2」帰還カプセル展示が10日から、つくばエキスポセンター(つくば市吾妻)で始まる。14日まで。展示されるのは、2020年12月に「はやぶさ2」が地球に持ち帰った、小惑星リュウグウで採取した砂や石などの調査サンプルを収容していたカプセル。 「はさぶさ2」は、地球の水や有機物の起源、生命誕生の秘密に迫ることを主な目的に、2014年12月に種子島宇宙センターから打ち上げられた小惑星探査機。近地球型とよばれる小惑星「イトカワ」を探査し2010年に地球に帰還した「はやぶさ」の後継機にあたる。「はやぶさ2」が目指したのは、直径900mメートル小惑星リュウグウ。接近時、地球から約3億キロの距離にあった。 そこには太陽系が誕生したとされる約46億年前の水や有機物の痕跡が残るとされる。総飛行距離約52億4千万キロの末に持ち帰ったサンプルは、日本を中心とした14 カ国、109の大学と研究機関、269人が参加する国際チームで進められている。 展示会場には、金色の耐熱材が部分的に残る大気圏突入時の高温にも耐えたパーツや、大気圏を通過後に着地時の衝撃を和らげるためのパラシュートなどの実物が並ぶ。他に、一連のプロジェクトの詳細を解説したパネル展示、映像コーナーも設けられている。 企画を担当する、エキスポセンター展示・催事主任の佐々木貴史さんは「焼け残った金色の耐熱材が残るなど、宇宙を旅した実物が持つ迫力を感じてもらえるはず。宇宙とのつながりを実感してもらうことで、将来、宇宙に関わる分野に進んでくれるお子さんが増えたらうれしい」と話す。 展示と並行し、エキスポセンター内のプラネタリウムでは関連企画として、「HAYABUSA 2〜REBORN 帰還バージョン」(上坂浩光監督)が上映される。 新型コロナ感染対策から、展示、映像作品上映ともに完全事前予約制。ウェブサイトから手続きができる。また上映スケジュールも、同サイト内で確認できる。期間はともに14日までの5日間。(柴田大輔)

県独自の非常事態宣言を延長 リモート授業26日まで

新型コロナの感染拡大により12日まで延長していた茨城県独自の非常事態宣言について、大井川和彦知事は9日、期間をさらに2週間延長し26日までとすると発表した。延長に伴って学校のリモート授業も26日まで延長される。 第5波により8月16日に発令された県独自の非常事態宣言は42日間に及ぶこととなる。一方、8月20日に発令された国の緊急事態宣言も30日まで、18日間延長される。 現在の県内の感染状況について大井川知事は、週平均の1日当たりの新規感染者数は8月23日の週の318.5人をピークに、9月8日の週は213.2人と減少傾向にあるとした。病床稼働状況は、入院患者数が8月27日の499人をピークに、9月8日は381人と減少したがまだ高止まり状態が続いており、特に重症患者数はは8月29日の32人をピークに9月8日も26人と予断を許さない状況が続いているとした。 医療提供体制は、9月1日からコロナ病床を791床に拡充、重症化リスクの高い感染者を対象に、31病院で600件の抗体カクテル療法を実施したとし、投与を受けた9割が入院せずに宿泊・自宅療法を継続し、入院した1割についても重症化した事例はなかったなど効果があったとした。酸素ステーションについては、県南の宿泊療養施設内で3人を受け入れたと報告した。 県独自の非常事態宣言の延長に伴って、学校はリモート授業を26日まで延長する。部活動の全面禁止、学校行事の延期または中止の期間も26日まで延長される。再開する場合は、分散登校をするなど段階的に状況をみながら元の学校生活に戻していきたいとした。 図書館や美術館、公民館など公共施設の休館も26日まで延長となる。 一方、新規感染者数の減少傾向が継続し医療崩壊が防げる場合は、26日を待たずに非常事態宣言を解除するとした。 国の緊急事態宣言は30日まで延長となる。飲食店は酒類の提供を終日停止し、営業時間を夜8時までとする、商業施設は来店客数を通常時の2分の1とするなどの要請も30日まで延長される。飲食店などに対する協力金支給期間も30日まで継続される。

子どもたちのための科学イラスト集 つくばで絵本原画展【秋アート’21④】

茨城県立医療大学(阿見町)の「アイラボキッズ」活動から生まれた絵本の原画による「子どもたちのための科学と医療のイラスト展」が18日から、つくば市天久保のギャラリーYで始まる。同市在住で絵本作家をめざす島本真帆子さん(51)にとって初の個展となる。 科学の巨人、アルキメデス、ガリレオ・ガリレイ、マリー・キューリー、レントゲンらの肖像画をはじめ、動植物や医療器具などを丹念に描いたイラスト多数を展示する。島本さんが長年描きためた長女の成長を追う色鉛筆画のコーナーも設ける予定だ。 島本さんは、東京理科大卒の元薬剤師。「どういうわけか化学だけは得意だった」ため、親の勧めで薬学部に進んだが、薬局勤務は今一つ性に合わなかったそう。「数学と美術はいつも赤点ぎりぎりだった」のに、デザイン専門学校で学び直した経験もある。結婚後、娘が生まれ、その寝姿や仕草をスケッチしているうちに絵の上達に気づいた。 自宅をアトリエに、4コマ漫画を同人誌に投稿するなどしていたが、今は絵本作家としての自立を志す。「10冊ぐらいに出来上がったら出版社に持ち込もうと思っている」という絵本は、最近2年間、医療大学の「アイラボキッズ」活動の中から生まれた作品だ。 小学校に出前授業「アイラボキッズ」 同活動は、地域の小学生対象に医療と科学の体験教室の開催を意図し、20年度から医療大の地域貢献研究費の助成を受けて活動を開始した。大学内にあるシミュレーション教育実習室「あいらぼ」に子供たちを招き、科学実験や観察会を行う予定だったが、新型コロナ感染拡大の影響で、阿見町立君島小(秋山美穂校長)への出前授業としてスタートした。 教室は、医療大放射線技術科学科の鹿野直人准教授がまとめ役になり、毎回テーマを決め体験教室と関係する科学者のお話との2本立てで行う。昨年10月の1回目では「霧箱とレントゲン」と題し、蒸気の凝結作用を用いて荷電粒子を検出するための装置「霧箱」で放射線の飛跡を観察した。島本さんはドイツの物理学者、レントゲンのエピソードなどを紹介する絵本を副読本として制作し、自ら児童に読み聞かせた。 2回目ではガリレオ・ガリレイを取り上げ、3回目は芳賀和夫さん(芳賀サイエンスラボ所長、元筑波大学教授)を特別講師に、折り紙で正五角形作り(オリガミクス)を行った。21年度は5月を休止としたものの、6月と7月は開催。島本さんは毎回体験型の実験を考え、絵本を手作りして開催に臨んでいる。 君原小は全校の児童数が65人。教室で「密」にならないよう、1日3グループに分けて日程を組んでいる。「学校は(20年度に)小規模特認校になったばかりで、体験教室でアピールしたい意向がある。町にはもう2、3校増やしてほしい要望もあるみたい」だそう。ただ、実験装置づくりが大変で、行政からの助成頼みには限界を感じている。 「展覧会はやっぱり子供たちに見てもらいたい。コロナ禍でいっぱい来てねとは言いにくいけど、初めての個展だから、そんなに集まらないですよね」と控えめな期待をふくらませた。(相澤冬樹) ◆島本真帆子「子どもたちのための科学と医療のイラスト展」 18日(土)から26日(日)まで午前11時~午後7時、つくば市天久保1丁目グリーン天久保2階、ギャラリーY(電話029-852-1930)

ヨーロッパは負けない 五輪閉会式パリ紹介動画に思う 《遊民通信》24

【コラム・田口哲郎】前略 TOKYO2020オリンピック・パラリンピックが紆余曲折(うよきょくせつ)を経て開催され、閉会しました。今回はオリンピック閉会式で印象的だったことを書きたいと思います。 次の五輪開催地はフランス共和国の首都パリです。東京都知事小池百合子氏からパリ市長のアンヌ・イダルゴ氏に大会旗が手渡される際に、パリ大会の紹介動画が流れました。オーケストラが、パリの名所を背景に、フランス国歌のラ・マルセイエーズを奏でます。これは何の変哲もない紹介動画として受け流すこともできますし、かつて世界の首都を誇った古都がクラシック音楽にのせられて映し出されることに違和感を覚える必要はないでしょう。 しかし、私は驚きました。口をついてでた言葉は「なぜ?」です。パリはかつての勢いを失っているなどと言われますが、大国フランスの首都であり、ヨーロッパ有数の巨大都市に変わりはありません。パリは古いと同時に新しい。いまだにファッション、ポップカルチャーの発信地でもあります。世界的に文化はサブカル化しています。日本のアニメ、ゲーム、そしてKawaiiは世界を席巻している。正統ではなく亜流がウケる時代のはず。 現に東京五輪への引き継ぎ式のために、安倍前首相はリオデジャネイロでNintendoのマリオに扮して土管から飛び出したではありませんか。ポップ化する世界。当然パリもポップな先進性を強調する動画を流すと思っていました。 しかし、フランス人はクラシック音楽で首都を飾ったのです。背景にはルーブル美術館にある「サモトラケのニケ」の像も移っていました。これは古代ギリシアの彫刻。つまり、ヨーロッパ人はギリシア・ローマ人の末裔(まつえい)であり、古典的文化を継承しているという主張です。古代中国文明圏にありながら近代化した日本はアジア的大らかさを持っている。和を重んずる性善説の人々です。よそ様が喜ぶとなれば、浮かれてコスプレもする。 でも、我々に近代化を迫った欧州人は、浮かれたようなふりをして実は大真面目に自文化を堅守している。決しておどけたりしない。このコンセプトで行くならば、安倍氏は羽織袴(はかま)を着て、琴・三味線を引き連れて「六段の調」をBGMに旗をもらうべきです。 コロナ禍に勝ったヨーロッパ そして、コロナ禍にも関わらずトロカデロ広場に密集する群衆が映り、エッフェル塔展望台のマクロン大統領は「共に!」と叫びました。「了解」と私はつぶやきました。ヨーロッパはコロナ禍に打ち勝ったという主張を受信したからです。ヨーロッパは負けません。むしろ勝とうとします。 彼らは確固たるルーツと世界に誇る古典文化を持ち、「教化」しようとします。コロナ禍後の新生活様式により、グローバル化はますます進展します。ヨーロッパ・スタンダードは国のみならず個人に直接働きかけるでしょう。明治以来の日本の近代化はまだ継続中で、我々は欧州に対抗する自覚を持つべきです。ごきげんよう。 草々(散歩好きの文明批評家)

大規模事業評価スタート つくば市 陸上競技場計画で

つくば市の第1回大規模事業評価委員会が8日市役所で開かれ、10億円以上の大規模事業について必要性や効果などを客観的に評価する大規模事業評価が、陸上競技場の整備計画を対象に始まった。 委員は、東京大学大学院・横張真教授、筑波技術大学・生田目美紀教授、高橋博之公認会計士、筑波大学・藤井さやか准教授、堀賢介弁護士、国立環境研究所・松橋啓介室長の6人。横張教授が委員長、生田目教授が副委員長を務める。任期は今年8月から来年3月末まで。 上郷高校跡地に建設予定の陸上競技場について、必要性、妥当性、優先性、有効性、経済性・効率性、地域への対応の6項目を評価する。 現地視察なども含めて計4回委員会を開催し、11月上旬から中旬に答申をまとめる。答申に基づいて、市は事業を計画通り実施するか、見直すか、撤退するか検討する。 第1回委員会では、市側が事業の必要性など6項目について、委員に説明した。 必要性については、小中学生の公式記録がとれる陸上競技場が市内になく、市PTA連絡協やスポーツ団体から長年にわたる意向がある。妥当性については、未利用地の利活用に資する。優先性については、陸上競技場整備は市民要望の高い長年の課題であるにも関わらず、実現に至ってないため、これ以上先延ばしにすることなく早急に事業に着手することが適切だなどとした。 有効性については、スポーツ推進計画など政策目標が達成され、施設運営や植栽管理など雇用創出が見込まれる。集客に加え、利用者による地域の農産物、特産品の購入や飲食店、公共交通機関の利用が見込まれる、合宿の誘致により宿泊施設の利用が見込まれるなど経済波及効果があるとした。 経済性や効率性については、維持管理費は年間8000万円程度で、民間活力を導入するなどコスト低減を図る。地域への対応については、道路沿いのほとんどが農地であるため渋滞による周辺生活環境への悪影響は少ない、民家が点在するため騒音や光害などに配慮するーなどと説明した。 需要予測は年6回、維持管理費は年8000万円 委員の一人から「需要予想が年6回だとすると他の施設を借りても問題ないことになる。もう少し需要予測が立っていた方がいい」などの意見が出た。 需要予想については、小中学校の記録会や市陸上競技選手権大会の年6回と、そのほか、トラックの内側のインフィールドで、部活動、サッカー、グランドゴルフ、敷地内の園路や多目的広場でジョギングや日常の憩いの空間として活用されると説明された。維持管理費が年8000万円程度で、年6回の開催需要の場合、1回当たりの開催経費は維持管理費分だけで1333万円になってしまう。 陸上競技場の計画概要は、400メートルトラック8レーン、インフィールドは天然芝で投てき競技に対応できるようにし、メーンスタンドは1500席、芝生スタンドは2500席、日本陸上競技連盟の4種公認(整備内容は3種相当)とする。敷地内には多目的広場やジョギングコースなどを整備する、駐車場は400~500台でバス33台分に転用可能。付帯施設としてセミナーハウスを整備する。災害時は避難場所として活用する。 事業費は22億2200万円か22億3600万円。ただしセミナーハウスの整備費、校舎や体育館の解体費、周辺道路の拡張費などは明らかにされなかった。 整備スケジュールは2022年度に基本計画、23年度に基本設計と実施設計を策定し、24~25年度に建設工事、26年度から利用開始となる。 大規模事業評価は、住民投票で白紙撤回になった市総合運動公園事業を教訓に、五十嵐立青市長が2018年9月に要綱を定めた。 一方大規模事業評価をめぐっては、つくばセンタービルのリニューアル事業は10億円を超えるのに、大規模事業評価を行わないのは違法だとして、住民訴訟が起こされている。(鈴木宏子)

延期が決定 つくばの街と山をつなぐ芸術祭【秋アート’21③】

つくばでこの秋最大のアートイベントになると注目されていた「つくばの街と山をつなぐ芸術祭(つくばアートサイクルプロジェクト2021)」が7日までに、開催の延期を決めた。仕切り直しての開催は早くても来春以降にずれ込みそうだが、主催のつくばアートサイクルプロジェクト実行委員会では「いっそうの内容の拡充を図りたい」(野堀真哉さん)と再トライする構えでいる。 芸術祭は14日から26日まで、つくばの街と筑波の山に分散する複数の会場での展開を予定していた。テーマに「アントロポセン-分岐点を超えた景色」を掲げる。アントロポセン(人新世)は、新しい地質年代をさす造語。地質学的な意味づけは「人類の活動が地球規模で環境を激変させ、⻑期的な痕跡を残す時代」。この時代にアーティストは何を感じ表現するのかを問いかけた。 初開催にもかかわらず、参加する作家は35組。国内外から30代、40代の若手が名乗りをあげた。会場はセンター地区(センター広場、県つくば美術館、桜民家園)、研究学園(イーアスつくば内サイバーダインスタジオ)、南麓エリア(筑波山神社、登山道、筑波山温泉江戸屋、旧小林邸ひととき、神郡石蔵シテン、北条川田邸)の3つのエリアで展示を行う計画だった。 実行委員長の野堀真哉さん(37)は、筑波山でゲストハウス「旧小林邸ひととき」を運営する。「つくばという場所で現代アート展を開く意味を提案したかった。地域はホワイトキューブ(白い天井に白い壁の立方体の展示空間)ではないし、アートは主役ではないけれど、この地に確実に残される表現を五感を使って受け止めたい」と運営委員長の山中周子さん(ネオつくばプロジェクト代表)らとプロジェクトを進めてきた。 8月末まで150万円を目標にクラウドファンディングを募集、目標に及ばなかったが142人から114万円余を集めた。9月には会期中各会場を回るための共通パスポート(1500円)の販売も準備していた。運営ボランティアの募集にも、手応えがあったという。 18日のトークイベントは催行 しかし、新型コロナの感染拡大で緊急事態宣言が発出され、県境をまたぐ形となる作家たちの移動も困難となった。会場のひとつ桜民家園は管理するつくば市側から使用が差し止められ、代替会場も見当たらなかったことから、9月初めの会議で延期を決めた。 18日午後5時から、サイバーダインスタジオで予定していたトークイベント「地域×アート」は、オンライン開催で実施される。 延期の日程や内容は作家たちとの仕切り直しになるが、メーン会場のひとつ、県つくば美術館の予約が再調整となることから、開催は早くても来年3月以降となる見込み。改装を控えているつくばセンター広場での展示についても、出展場所の変更や状況を生かした検討を講じるとしている。協賛者やクラウドファンディング支援者には決まり次第連絡を取るという。(相澤冬樹) 詳細情報の確認は「つくばアートサイクルプロジェクト2021」のホームページで。

講演「現在の日本の立ち位置と再生の基軸」 《ハチドリ暮らし》5

【コラム・山口京子】日本コーポレート・ガバナンス・ネットワークの特別プロジェクト「失われた30年 どうする日本」のシリーズ第2回(8月24日)で、寺島実郎氏のオンライン講演を視聴しました。今回は、寺島氏の「現在の日本の立ち位置と再生の基軸」の内容を紹介します。 今の日本で本気に問題にすることは何か? ディベロップメント(開発)を実現させつつ、サステナブル(持続可能)であることではないか。知っておくべきファクトは、埋没する日本を直視すること。「健全な危機感」が問われているとして、世界に占める日本のGDP(国内総生産)の推移を示した。1950年3%、1964年4.5%、1994年17.9%、2000年14%、2010年7%、2020年6%、2030年予想4%―。GDPの額で見ると、日本は2008年来、ほぼ実質ゼロ成長という現実。 アベノミクスを総括すると、三本の矢の一つ目の異次元金融緩和、二つ目の財政出動で調整インフレ政策がとられたものの、資金需要はなく、貸し出しは増えなかった。他方、ジャブジャブマネーは株高と円安に向い、円安は輸出産業の競争のハードルを下げた。しかし、産業構造で食とエネルギーを海外に依存するこの国では、マイナスの面を持つとして、工業生産力モデルにとって円安が望ましいという固定観念には異議を向ける。 アベノミクスは、資本主義の競争を通じて切磋琢磨(せっさたくま)するということより、マネーゲームでラクをして生きる方向に舵(かじ)を切らせたのではないか。株式市場についていえば、公的資金も株高を支えている。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)や日本銀行のETF(上場投資信託)買いなどで85兆円も注入されており、そのため実力以上の株価になっているのは、「自堕落な資本主義」だと釘(くぎ)を刺す。 「食料自給率は現在の38%から70%に」 そして、日本再生の基軸として、脱工業生産力を提起する。今までの「豊かさを実現すれば、平和と幸せはついてくる」というコンセプトから、「国民の安全と安定」(経世済民)と「持続可能な成長」(SDGs)にシフトさせる。ファンダメンタルズは、原点回帰の産業基盤強化で、食と農・医療・防災に取り組む。イノベーションは、DX(デジタルトランスフォーメーション)、グリーン(環境、脱炭素エネルギー)で対応する。 また、食料自給率をカロリーベースで現在の38%から70%に上げる。食と農についていえば、生産・加工・流通・調理のサイクルを強化し、イノベーションを利用し付加価値を高める。医療では臨床研究を重視し、防災は道の駅を防災拠点とする構想を掲げる。 ファンダメンタルズとイノベーションは両方が大切としたうえで、ファンダメンタルズを立て直さないと、日本の安全と安定は図れないと強調する。「戦後、工業生産力モデルでひた走り、忘れてきたことを立て直すことが求められている」という言葉の意味するところは深い。 自分がどこにいるのか、どういう社会に暮らしたいのかを考えるきっかけとなる貴重な講演でした。実家では、ナスの収穫とニンジンの間引き、次の野菜づくりのために土地を耕しました。見渡すと、手入れをする人がいなくなった畑や田んぼの荒れた様子が目立ちます。(消費生活アドバイザー)

カフェベルガ、25年の歴史に幕 つくば 障害者が働くレストラン

つくばカピオの敷地内にあるレストラン「カフェベルガ」(つくば市竹園)が17日に閉店する。25年間、障害者に働く場を提供するとともに、店内で近隣住民が演奏会を開催するなど、市民の憩いの場にもなってきた。「障害者の就労支援とカフェの両立が難しいと感じるようになった。今後はパソコンを活用した就労支援に力を入れていきたい」と代表の吉田美恵さん(71)は話す。 今後は障害者の就労支援に特化 障害者の親たちが1996年4月、障害者の働く場を作ろうと設立した有限会社「友遊舎」により、カフェベルガの営業が始まったのは同年8月1日、つくばカピオが開業した当日だった。メンバーは飲食店の経験がなく、最初は経営することで精一杯だった。学習障害の息子を持つ吉田さんは、開店当初は店長としてカェベルガに関わり、2005年に「友遊舎」の代表になった。 現在は発達障害者を専門としているが、当初はまだ「発達障害」という言葉自体が社会で知られておらず、引きこもりや不登校の人も店舗に通っていた。 同店には障害者支援のための特別なプログラムはない。皿洗いや接客などの仕事を通して、ビジネスマナーやコミュニケーションを身に着ける。吉田さんなど運営側は、障害のある店員に対し、一人ひとりの気持ちを尊重し、やってくれたことには感謝を伝えながら、自分の得意なことと苦手なことが理解できるように接してきたという。 引きこもり等の人の中には、店の手伝いをしているうちに、元気を取り戻し、学校に行けるようになったり、高齢者施設や一般企業に就職した人もいる。発達障害者が主な対象だったが、車いす利用者や知的障害者が働いていたこともある。これまでに30人以上が店員として働いた。 店舗運営と障害者支援の両立への葛藤 障害者自立支援法改正により、発達障害者も障害者福祉サービスの対象になったのを機に、2012年に発達障害専門の就労支援事業所として正式に県から指定を受けた。店舗での接客が苦手な発達障害者もいるため、13年にはパソコンでの作業を中心に行う訓練事業所「カフェベルガ・サポートオフィス」(つくば市天久保)を新しく立ち上げた。テープ起こし、動画編集等の作業や、パソコンを使った調べ学習を通して、コミュニケーション能力や問題解決能力をつけていく。就職に向けて自分の特性などを周囲に伝える練習もする。 「人間関係が苦手で、自分は仕事ができないと思ってしまう人が多い。しかし、パソコンを使えれば、世界中の人とつながることや、様々なソフトを使い、自分の技術を超えたものを作ることができる。社会に出るのが怖いと思っている人にも、パソコンを通して、自分にも働く力があることに気づいてもらえるような支援がしたかった」と吉田さんは話す。 レストランで働ける人数は制限されることもあり、現在は店よりもサポートオフィスに通い、パソコンを学ぶ障害者がほとんどだ。 閉店を決めた理由として、吉田さんは「就労支援として障害者一人ひとりと話し、個々人に合った仕事内容を提案したいが、カフェの場合、接客が優先になり、話を聞いてほしい時に聞いてあげられない葛藤があった」ことをあげる。障害者が働く中で、問題が起これば一緒に解決策を考えたいが、レストランでは時間的余裕がない。 吉田さんは「引きこもっている障害者もたくさんいる。これからは、もっと多くの障害者に対して、一人ひとりと向き合い、困ったときに相談できる力をつけてもらえるような支援をしていきたい」と意気込む。(川端舞)

写真で感じる科学の世界 産総研に特設サイト【秋アート’21②】

フォトグラファー伊藤之一さんが産業技術総合研究所(つくば市梅園)で撮影した写真による最新作「if-then」(青幻舎)を刊行したのを受け、産総研は特設サイト「来るべき明日のために」を公開、18日からはトナリエつくばスクエアキュート(つくば市吾妻)で写真展が始まる。 同サイトは8月27日に公開された。写真自体は産総研ならではの研究ではあるものの、どこの研究所・研究者や科学者以外の人にも共感してもらえる普遍的なサイトとなることを意識したという。 産総研によれば、「世界には多様な研究現場があり、研究に打ち込む研究者たちがいる。産総研は国内最大級の公的研究機関として様々な研究テーマに取り組んでいるが、今回は産総研という場で撮影された写真を通じて、科学の魅力を感じてもらうことを目指した」そうだ。 「キログラム」定義改定がきっかけ 写真のきっかけとなったのは、「キログラム」の国際的な定義が130年ぶりに改定された際の撮影依頼。日本国キログラム原器を管理してきた産総研では、新しい定義に則った1キログラムに相当する原子数のシリコン球を作成した。この撮影を依頼されたのが伊藤さんで、「その写真は科学という営みを人々に伝える映像について研究者が考えていた固定概念とは、異次元のものだった」という。原器から物理定数へ、2019年5月、新しい定義改定は施行された。 以降、通常非公開の研究室での撮影が許されることになり、3年間にわたって撮影が続けられた。伊藤さんは「この写真集は科学を捉えることへの、捉え続けることへの意思表明のような位置付け」と述べている。 写真集は25センチ判型、351ページの大型本で、6月に刊行された。計量標準総合センターのキログラム原器のほか、生命工学領域、エネルギー・環境領域など7領域にわたる実験室風景、研究素材などの写真が収められている。本体価格7000円。 さらに、写真を大きなサイズで展覧したいという声と、撮影の舞台となった産総研のあるつくばで一歩目の写真展を踏み出したいという伊藤さんの思いから、写真展の開催が準備された。(如月啓) ◆写真展「if-then」-科学研究現場の今 9月18 日(土)~26 日(日)午前10時~午後8時(会期中無休)、トナリエつくばスクエアキュート2階(つくば市吾妻)

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