木曜日, 2月 9, 2023
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川上美智子

報道をにぎわした「国際女性デー」 《令和楽学ラボ》17

【コラム・川上美智子】3月8日は世界中の女性のための日、「国際女性デー」でした。1975年の国際婦人年に、国連がこの日を「国際女性の日」に制定しました。今年は「持続可能な明日に向けて、ジェンダー平等をいま」がテーマとなりました。国連が2050年に向けて目指す、SDGs 17の目標中の5番目のゴールが「ジェンダー平等を実現しよう」です。 イタリアではこの日、黄色のミモザの花を女性に贈り祝います。私は長年にわたり、県や市町村の男女共同参画計画策定に携わってきましたので、マスコミの紙面で大きく取り上げられるようになったのをうれしく思います。 国際女性デー。1908年のアメリカの縫製労働者の労働条件改善に立ち上がった女性のストライキに端を発し、1910年に社会主義インターナショナルが女性の選挙権獲得などの声を上げ、「女性の日」としたのがその前身です。時を同じくして、日本では1911(明治44)年、平塚らいてうが『青鞜(せいとう)』発刊し、自我の覚醒、女性解放の声を上げました。フェミニズムの登場です。 そもそも日本の女性差別の構造は、鎌倉時代の武家社会の確立と共にあると考えられています。NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が人気となっていますが、小栗旬演じる主人公の北条義時の息子、北条泰時(鎌倉幕府第3代執権)が定めた武家法「御成敗式目(ごせいばいしきもく)」は、仁、礼、忠義、道理など、儒教思想の影響を受けています。 その世界観は、江戸期の封建社会でも貫かれ、強化され、『女大学(おんなだいがく)』に記される三従思想となり、明治期へと受け継がれます。明治国家は平等、人権などの西欧近代思想を取り入れつつも、男女不平等などの基となった家父長制は継承し、労働の分野では若い女性が安い労働力として組み込まれました。 女性の能力が100%発揮できる社会目指して

土浦一高付属中の人材育成 《令和楽学ラボ》16

【コラム・川上美智子】今年度より中高一貫校となった土浦第一高等学校付属中学校を先日、視察しました。土浦一高は、卒業生の皆様であればよくご存知のように、県南の最難関県立高校であり、このほど設立された付属中も同様に、難関受験を突破した生徒が集う学び舎(や)です。 学校案内には、勉学にいそしみ、友と交流し、高い志と社会の規範となる、自負・自尊・矜持(きょうじ)の「ノブレス・オブリージュ(地位の高い人の義務)の精神」をもって学校生活を送ることが掲げられ、付属中の教育にもこの精神と、目の前のことに全力で挑戦する「一高スタイル」の追求、すなわち6年間を通じて日々の授業、部活動、学校行事をとことんやり抜くことを求めています。 さらに、卒業後、これからの社会が今よりも幸せになるため、日本のどこかで、世界のどこかで、自分が「役立っている」「支えている」「貢献している」と、自ら確信を持てる人材に育つことを願うとしています。 中澤斉(ひとし)校長先生からは、次世代で活躍する礎(いしずえ)をつくるGLP[グローバルラーナーズ(広い視野で学ぶ人)プロジェクト ]の特色ある取り組みについてご説明いただきました。GLPは「知とつながる」「人とつながる」「社会とつながる」の3つの構成から成ります。 「知とつながる」の1つは通常より10分長い60分授業とし、生徒相互で授業内容を振り返る「ピア・レビュータイム」を設け、思考力・判断力・表現力の強化を図るものであり、もう1つは「+English(プラスイングリッシュ)」で全ての教科で自分の考えを英語で表現する英語の発信力を磨くものであります。 「人とつながる」は、生徒主体、生徒が主役の交流活動で、グループで企画する修学旅行や水戸一高付属中との『土水交歓会』などが予定されています。「社会とつながる」は、卒業生との『土一ネットワーク』を活用した探究活動で、プレ海外探究のための国内英語キャンプや、探究活動総まとめの卒業研究発表会のプレゼンなどが企画されています。

芸術の秋始まる 《令和楽学ラボ》15

【コラム・川上美智子】茨城県芸術祭美術展覧会(県展)が10月2日(土)~17日(日)、茨城近代美術館で始まります。新型コロナウイルスの感染下にあって開催が危ぶまれていましたが、デルタ株も沈静化の方向で、無事開催の運びとなります。昨日、自分の作品の搬入を終え、発表の場があること、ありがたく思っています。 振り返ると、第23回国民文化祭茨城大会(いばらき2008)の実行委員会で、陶芸家の荒田耕治先生とご一緒したことがご縁で、先生の教室の生徒になり、それから毎年、県展と水戸市展には欠かさず出展し続け、今日に至っています。かれこれ、陶歴も13年。家の中には所狭しと、10キロの大型作品が30点余り鎮座しています。 県展で2回、水戸市展で1回、賞も頂戴し、いつか個展をやりたい、が夢ですが、60歳からのスタート、夢がかなうかどうかわかりません。荒田先生とは、実行委員としての出会いが初めてでしたが、私が結婚し茨城に移った1970年の笠間佐白山の陶器市で目に止まった、黒釉(こくゆう)彩のコーヒーカップセットを購入した時にお名前をインプットしていました。 今も、陶芸に興味をもたせてくれたそのカップは、マイセンやロイヤルコペンハーゲンのカップと並べて大切に飾ってあります。 陶芸の良さは、作品作りそのものが集中力と持続力をもたらしてくれる時間になることです。日頃のストレスフルな生活を忘れて、ひたすら土をこね、器の表面をきれいに仕上げる手仕事に傾注できることにあります。手指を動かすと、脳の感覚中枢や運動中枢の血流が10%くらい上がり、脳の広範囲の神経細胞が活性化すると言われています。 さらに、手順や段取りを考える、形を創造するなどの高次機能も発達させ、日頃と違う脳の使い方をさせてくれます。高齢者の認知症予防に効果があるため、介護領域ではリハビリのための陶芸療法という言葉も生まれ、高齢社会にピッタリの活動と言えます。

養老孟司先生の講演を聴く《令和楽学ラボ》14

【コラム・川上美智子】つくばのホテルグランド東雲で、東京大学名誉教授の養老孟司先生の講演を聴く機会がありました。養老先生は20数年前の現役時代に東大医学部の学生に解剖学実験を指導されていて、当時受講生だった娘が時々その様子を話してくれました。ホルマリンの臭いが充満する教室で、学生たちが人体解剖をしている傍らで、椅子に座ってじっと本を読んでおられたようです。 学生たちも大変ですが、先生にとっても厳しい時間なのではないかと、当時、思ったりしました。たとえ仕事であったとしても、医学の継承のため、若い学生を育てるため、人体を捧げる運命に至った人に最後まで傍らで寄り添い、畏敬の念を抱きつつも送り出さなければならない先生の気持ちを、本が和らげてくれていたのではと思います。 講演で先生は、「生老病死(しょうろうびょうし)」という言葉を黒板に書かれ、これが人の自然の姿だと言われました。最近、宗教学者の山折哲雄も、人生終焉に向かうテーマとして同名の本を出版しています。生老病死とは、人の人生には「生まれること、老いること、病むこと、死ぬこと」の四つの苦しみがあり、これを避けて通れないという仏教語(お釈迦様の言葉)だそうです。 つまり、人が生きること自体が思い通りにならない苦しいことであると、仏教は教えています。先生は、演題「今、私たちは何をすべきか」の中で、そうだからこそ、「生(しょう)」のスタート部分の子ども時代には、生きることの楽しさ、社会の明るさを教えてほしいと訴えました。 子ども時代の一定期間、田舎で過ごすのがよい 先生は今、理想の保育園を目指し、保育園の理事長の職に就いていらっしゃるとのこと。毎日、孫や曾孫のような子どもたちと、虫取り、魚獲りで自然に触れ、子どもたちを幸福にしたい、子どもたちに幸せな生活を送らせたい、という思いで過ごされているそうです。

「つくばインターナショナルスクール」に学ぶ 《令和楽学ラボ》13

【コラム・川上美智子】茨城県の教育委員は、それぞれ年に6校ほど県内小中高等学校の視察を行っています。つくば市の「みらいのもり保育園」の園長になってからは、できるだけつくば市内の学校を回るようにしています。その番外編として、4月中旬、以前から名前だけは耳にしていた「つくばインターナショナルスクール(TIS)」を見学する機会を得ました。 何の予備知識も無く訪れた学校は、まるで軽井沢の森の中に迷い込んだかのような自然あふれる中にあり、その建物は、アメリカ風の緑色を基調にした木造のおしゃれなものでした。 シェイニー・クロフォード校長先生の大歓迎を受けて、全ての学年の授業を見学することができました。TISには、3歳から18歳までの子どもたち、285名が在籍し、開設12年で生徒数が飛躍的に伸びたと言います。 ダイバーシティー(多様性)の言葉がピッタリの、様々な国の子どもたちがキャンパスに学び、親の国籍は25カ国に上ります。両親が日本人の家庭、片親が日本人の家庭、両親が外国人の家庭がほぼ3分の1ずつで、授業はすべて英語で行われていました。 また、3歳から12歳までを対象とするPYP(プライマリー・イヤーズ・プログラム)、11歳から16歳を対象とするMYP(ミドル・イヤーズ・プログラム)、16歳から19歳までを対象とするDP(ディプロマ・プログラム)のすべての国際バカロレア(大学入学資格・教育プログラム)が取得できるのは、県内では本校1校に限られるため、東京圏から通学する子もいるなど、大変人気があるとのことでした。 ユニークな国際人材育成カリキュラム

オオシマザクラのはなし 《令和楽学ラボ》12

【コラム・川上美智子】今年は桜の花の開花が早く、各地から垂れ桜やソメイヨシノの花便りが届いています。ここ茨城県でも既に桜が満開になっているところもあります。 今から10年ほど前、桜の名所である日立市の依頼で、大学の研究室では「オオシマザクラ」の研究に取り組みました。オオシマザクラは、日本に自生するサクラ野生種の1つで、日本の固有種とされ、交雑しやすいため多くのサクラ栽培種の原種となっています。 例えば、明治初期に誕生したソメイヨシノも、DNA解析からオオシマザクラを父に持つことがわかっています。また、オオシマザクラを母種とするサクラも多数あり、これらはサトザクラ群と言われています。原木は木炭や浮世絵の版木、茶筒などに使われてきました。葉は滑らか、無毛で食べやすいところから、桜餅の葉として利用されてきました。花びらは白色でソメイヨシノよりやや大きく、4月ごろ、新葉が出る時期に咲くのが特徴です。 日立市のオオシマザクラは、日立銅山の歴史と深い関係にあり、新田次郎原作・松村克弥監督の映画「ある町の高い煙突」にそれが描かれています。明治後期、銅の製錬による煙害(2酸化硫黄の発生)が大きな問題となり、煙害に強い樹木としてオオシマザクラが採用され、植樹が始められました。 大正4年(1915)に大煙突が建てられるまで、数万本のオオシマザクラの苗木が伊豆大島から移植され、さらに耐煙樹種研究のために作られた農場では、苦心の末、120万本の苗木栽培が行われたと言います。その後、オオシマザクラの苗木にソメイヨシノの苗木の接ぎ木も行われ、日立市全体がサクラの町になって行きました。 「桜香るうどん」の開発は断念

《令和楽学ラボ》11 鬼のはなし

【コラム・川上美智子】漫画、アニメ、映画で超人気作となった「鬼滅の刃」で、鬼が一大ブームになっています。保育園児にとって鬼は恐ろしい存在で、実在すると信じているようです。我が家の2歳半の孫は、イヤイヤ期の真っ只中。親の言うことは一切聞かず、コントロールの切り札は唯一「鬼が来る」です。 よい躾(しつけ)とは思いませんが、子育て家庭では昔から語り継がれてきた手法なのではないかと変に納得しています。子どもたちの多くは、桃太郎の昔話で初めて鬼に出会い、鬼は悪もの、怖いものというイメージをもつようです。 鬼のルーツは中国の「隠(おぬ)」、「陰(おん)」で、姿が見えない妖怪と考えられてきました。「鬼(キ)」という漢字は死体を表す象形文字だそうで、人は死んだら鬼になり、異界(鬼籍)に入ると考えられてきました。日本最古の鬼の記述は『日本書紀』巻第十九で、「亦言鬼魅不敢近之」と、鬼魅(おに)らしきものが佐渡に流れ着いたと記されています。 人の力を超越した恐ろしい出来事、洪水や雷、地震などの自然災害も鬼の仕業と説明されてきました。一方、ネパールのラケーやインドネシアのバリ島で出会ったバロンなどは、鬼の形相をしていますが、守り神として扱われています。また、日本の家屋でも、古く奈良時代から鬼瓦が魔除け・厄除け(雨水の浸入を防ぐ効果もあり)として使われてきました。 インドを発祥とし、中国仏教に取り入れられた風神、雷神も鬼の顔をもちますが、こちらも五穀豊穣のよい神様です。このように、鬼には悪い鬼、よい鬼、神としてあがめられる鬼など、いろいろなタイプがあり、日本の民間伝承として村や家にしっかり入り込んでいます。その流れを、今、私たちが子どもたちに鬼文化として伝えています。 コロナ終息を祈り、心を込めて豆まき

《令和楽学ラボ》10 リンゴ狩に行こう 茨城は南限産地

【コラム・川上美智子】リンゴの生産量のランキングをみると、青森、長野、岩手、山形、福島などの市町村が上位を占め、100位以内に茨城の市町村は入っていません。平均気温10度前後の冷涼な気候を好むリンゴにとり、茨城は南限に位置するので、商業ベースに乗りにくいのであろうと思われます。 茨城では、大子町がリンゴの主産地として有名ですが、日立市、水戸市、石岡市、城里町などでもおいしいリンゴが生産され、観光リンゴ園では手軽にリンゴ狩を楽しむことができます。 リンゴの品種改良が世界一の日本では、本当に多くの品種が栽培されていますが、現在の品種の主流は、「ふじ」「つがる」「王林(おうりん)」「ジョナゴールド」です。子どものころに食べた「国光(こっこう)」や「紅玉(こうぎょく)」は、料理に使いたいと思ってもなかなか手に入れることができません。 先日、蜜が多いことで「幻のりんご」として人気上昇中の「高徳(こうとく)」を食する機会がありました。大子ではこのリンゴを木で完熟させ「奥久慈りんご」として販売しています。実は固めですが、リンゴ本来の甘い香りをもち、甘味も強く感じられました。 この甘い蜜の正体は、ソルビトールという糖アルコールです。リンゴは、葉で光合成の作用で作られたでんぷんをソルビトールに転換して、果実に転流(運ぶ)させる性質があります。運ばれたソルビトールは、果実の中でブドウ糖や果糖に変えられ細胞内に蓄積し、甘さを増して行きます。 完熟のころには、ブドウ糖や果糖が飽和状態になり、芯の部分にソルビトールが蜜となって残ります。そのため、葉がたくさんついた木ほど、蜜がよく入ると言われています。

《令和楽学ラボ》9 茨城の和紅茶づくり

【コラム・川上美智子】「古内(ふるうち)茶の紅茶ができたので1つ持っていってください」と、9月の茨城県議会の折に加藤明良議員から声をかけられました。水戸光圀(みつくに)が愛(め)でた古内の在来種の茶葉100%を原料にした紅茶は、きれいにパッケージされ、高安園の城里和紅茶と名付けられていました。 「昨年、この紅茶を銀座の茨城県アンテナショップ『Ibaraki Sense(イバラキ・センス)』に出品したところ、お客様から台湾の東方美人(オリエンタル・ビューティー)の香りがすると言われたんですよ」と、うれしい報告もありました。 東方美人は知る人ぞ知る最高級の赤烏龍(うーろん)茶です。100グラム〇万円もする高価なお茶で、現在ではなかなか手に入りません。今から25年前にその香りを分析する機会を得、マスカットのような独特の香りが、2,6-dimethyl-3,7-octadiene-2,6-diol(2,6-ジメチル-3,7-オクタジエン-2,6-ジオール)と本物質が脱水したHotrienol(ホトリエノール)の2つの化合物に起因することを突き止めました。 また同時期に、マスカットフレーバーが特徴であると言われるインド・ダージリンのセカンドフラッシュの紅茶試料も手に入り、分析を行うことになりました。この紅茶も、他の紅茶に比較し2化合物の含有比が高いことがわかり、ダージリン紅茶の特有香になっていることを明らかにしました。 そして、赤烏龍茶とダージリン紅茶の共通点を調べているうちに、どちらもウンカ芽(昆虫のウンカの加害を受けた茶芽)を原料にしていることを突き止めました。学会で加害を受けて生成する化合物の発表をしたところ、海外の科学者たちは色めき立ち、最終的に中国の著名な茶の研究者が、2,6-dimethyl-3,7-octadiene-2,6-diolは、加害を受けた茶芽がウンカの天敵の昆虫を呼び寄せるために作り出した化合物であることを明らかにしました。

《令和楽学ラボ》8 光圀公が称えたお茶「初音」

【コラム・川上美智子】水戸藩第2代藩主・徳川光圀(とくがわ みつくに、1628~1701)ゆかりのお茶の試飲会が6月24日に城里町の清音(せいおん)禅寺で行われた。光圀公は1694年にこの寺を訪れ、そこでもてなされた茶を愛(め)で、中国・唐の詩人・盧仝(ろどう)の「七碗茶歌」に準(なぞら)え、漢詩「七碗の竜茶を喫す…人生半日の間、およそ八苦を忘る」を残し、「初音(はつね)」と命名した。 古内(ふるうち)地区茶業協同組合は数年前に「初音プロジェクト」を立ち上げ、境内に残る茶母木(ほうぎ)をもとに若樹(わかぎ)を数年間大切に育ててきた。ようやく今年、生葉5キロが摘採され、わずか300グラムほどの貴重な茶葉に仕立てられた。 その席で、茶の香気分析研究を専門とし、茨城県の三大銘茶(奥久慈茶、古内茶、猿島茶)の香りも明らかにしてきた関係で、「初音」の香味(こうみ)について講評を行った。その香味は、新型コロナウイルスの影響から茶摘み時期が遅れ、葉が育ち過ぎたこともあり、苦渋味(くじゅうみ)が強かったが、茶樹本来の素朴でスッキリとした味わいと、やわらかな甘い焙(ほう)じ香が感じられた。 その際、光圀公が飲まれたお茶が、どのような形態であったのか(抹茶か、煎茶のような淹茶=えんちゃ=か)、よくわかっていないという話をうかがった。確かに、江戸期は、茶の湯文化全盛であった日本に、明代に誕生した新たな茶の飲用法の「葉茶(はちゃ)」が、中国からもたらされた時期でもある。これまで調査してきた黄門料理や茶の歴史に照らし合わせ、その謎を解いてみたい。 城里町古内地区で茶栽培を奨励 まず、「葉茶」が日本に伝来したのは、1654年のことである。日本の煎茶道の開祖と言われる隠元禅師(いんげんぜんじ、1592~1673)が来日し、京都の宇治に黄檗宗萬福寺(おうばくしゅう...

《令和楽学ラボ》7 コロナ禍の保育園事情

【コラム・川上美智子】4月に開園したばかりの本園は、予期せぬ新型コロナウイルス感染症の流行に遭遇し、竣工式も、入園式もすべて中止し、4~5月は、感染予防・感染防止対応に終始しました。特に、首都圏通勤者の多いTX沿線のつくば市などは、4月2日に、知事より不要不急の外出自粛要請が出て、にわかに危機が迫ってきたことを感じ、対策の強化を余儀なくさせられました。 当園では、4月中旬に風邪症状を示す園児が10名前後も出て心配をしましたが、子どもたちは間もなく回復し、コロナではなかったのだと安堵しました。その後、政府の緊急事態宣言などを受け、小学校の休校や保育園の登園自粛などが出されましたが、保育園も、併設の児童クラブも、働く保護者がいる限り休園はしない方針で、保育士始め全職員が前線で頑張ってきました。 もとより、保育園は、新型コロナウイルスに限らず、感染症の宝庫で、次々と子どもたちが病気を持ち込むのが当たり前の場です。また、保育室の中で、子ども同士、保育者と子どもの間の密な環境を避けるのは、ほぼ不可能です。 そのため、感染症が広がらないように、園をつくる段階で、いろいろ感染症対策や安全対策を講じてきました。従来の次亜塩素酸ソーダによる消毒、アルコール消毒に加え、次亜塩素酸水製造装置の導入、非接触型の体温計の利用、おしぼり製造装置の導入、哺乳瓶殺菌庫、玩具のUV(紫外線)殺菌装置、HACCP(危害要因分析必須管理点)に準じた厨房装置などなど、出来る限りの装備をして保育を行っています。 第2波、3波が来たときどうするか 保護者や訪問者には、マスクの着用、ハンドソープ、使い捨てペーパータオルを使った手洗とアルコール消毒をお願いしています。それでも、外から持ち込まれる感染症を予防することは難しい状況です。今後、第2波、3波が来たときどうするか、課題は残ったままです。せめて、PCR検査や抗体検査がスムーズに受けられる環境を国や県にはつくっていただきたいものです。また、治療薬やワクチンの早期開発が待たれるところです。

《令和楽学ラボ》6 「みらいのもり保育園」が開園

【コラム・川上美智子】新型コロナウイルスの流行拡大で、この春、新入園や新入学を迎える子どもたちや保護者にとって、新学期への期待やうれしさがトーンダウンし、不安を抱えてのものとなりました。我が家の孫たちも、水戸の小学校と東京の中学校に合格し、喜びの春を迎えるはずでしたが、入学式が挙行されるのか、正常に学校が始まるのか、また、通学中に感染の恐れはないのか―など、心配の種は尽きません。 待機児童が多く、子育て支援の必要性が高いつくば市で、関彰商事(創業112年)は、社会貢献事業の一つとして保育園開設を目指してきました。2年間の準備期間を経て、セキショウグループの社会福祉法人「関耀会」が、この4月1日に民間認可保育所「みらいのもり保育園」を同市鬼ケ窪に開園します。 保育園の開園にあたり、園長として現在最も配慮を要することは、子どもの安全・安心の基本である感染予防です。新型コロナウイルス対策で求められるのは、従来のインフルエンザやノロウイルス対策よりも一段と厳しい感染予防管理です。 そうは言っても限界がありますが、職員のマスク着用や体温管理(37.1℃以下であること)、園児登園時や保育中の体温チェック(37.4℃以下であること)や、こまめな手洗い、室内の換気、玄関でお子様をお預かりする保護者のマスク着用や手の消毒、室内の次亜塩素酸水による消毒、トイレの次亜塩素酸ナトリウムによる消毒などなど、管理を徹底することにしています。 未来を生きる自信と意欲を育てる 「自分らしさと自ら伸びるチカラで、未来を生きる自信と意欲を育てる」の理念のもと、「子どものやりたいを引き出す」「非認知能力を育てる」「健やかな育ちのスタートを応援する」「発達を促す環境を大切にする」の4つの目標を掲げ、4月は特に園児が園に馴染めるよう楽しい環境を作ることに専念したいと考えていましたが、思わぬ環境下のスタートとなります。 保育園が大切にしている子どもの興味関心を引き出す教育、人間関係の中で培われる協同性と受容や規範意識の醸成、手作りのおいしい給食やおやつの提供、地域を活用した経験活動など、保育園の本来の活動にしっかり目を向け、子どもと保護者の期待に応えて行かなければなりません。特に、ゼロ歳児にとっては保護者不在の中での初めての社会デビュー、最初の2週間は大泣きの毎日になるのは必至ですが、安心できる居場所を築いて行きたいと思います。 地域の皆様にもご支援をいただき、魅力ある保育園の実現を目指してまいりますので、よろしくお願い致します。(茨城キリスト教大学名誉教授、みらいのもり保育園園長) ➡川上美智子さんの過去のコラムはこちら

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やさしい国家が人をしあわせにする 《遊民通信》58

【コラム・田口哲郎】前略 1789年のフランス革命のあとに、「人間と市民の権利の宣言」、いわゆるフランス人権宣言が採択されました。この宣言は世界各国に影響を与え、それは当然、日本の民主主義の根幹にかかわるものでもあります。 フランス共和国の人権宣言をごく簡単にまとめるとこうなります。人間は生まれながらにして自由と平等を保証されている。共和国が基本的権利を保証するのであって、ほかの団体などがその権利を侵害してはならない。つまり国家だけが、福沢諭吉が言ったところの「天は人の上に人をつくらず、人の下にも人をつくらずと言へり」を約束できるということです。国民と国家の信頼関係によってすべては成り立っているわけです。 規則と改革 そんなのあたりまえじゃないかと思ってきました。でも、よく考えると、わたしたちは基本的人権によって自由と平等をあるていど享受しているけれども、その自由と平等は完全ではありません。完全な自由と平等の実現はかなり困難でしょう。でも、それでも人権宣言の理念を目指していかなければならない。そのためには、規則よりも人間の真情に寄り添う姿勢が大切です。 そうなると対立するのは、規則と改革です。ある人が困っている。でも規則はその人の望みを解決することはできない。だからその規則を変えるしかない。いや、規則を変えることは国家の根幹を揺るがすので簡単にはできない。しかし、このままでは国家が保証すると約束したその人の自由がないがしろにされてしまう。

知的障害者に一人暮らしの選択肢を 18日、つくばで映画上映会

市民団体「茨城に障害のある人の権利条例をつくる会」(=いばけんつ、事務局・水戸市)が18日、筑波大学春日エリア(つくば市春日)で映画『道草』(宍戸大裕監督作品、2018年)の上映会を開催する。重度知的障害者が介助者の支援を受けて、地域のアパートで一人暮らしをする様子を映したドキュメンタリー映画だ。同会共同代表の一人、生井祐介さん(45)は「知的障害者が生活する場は、入所施設やグループホームだけでなく、支援を受けながらの一人暮らしという選択肢もあることを、多くの人に知ってほしい」と話す。 知的障害者の一人暮らし 「重度訪問介護」は、重度障害者が長時間、人によっては24時間の介助を自宅で受けられる福祉サービス。従来、対象は重度の肢体不自由者に限定されていたが、2013年の障害者総合支援法施行で、重度の知的障害者や精神障害者にも広がった。映画には、重度訪問介護を利用し、一人暮らしをする重度知的障害者が登場する。 内閣府の2022年度版障害者白書によると、身体障害者における施設入所者は1.7%なのに対し、知的障害者においては12.1%と、施設入所の割合が高くなっている。昨年9月、日本政府は国連から「障害者の施設収容が継続され、地域で生活する権利が奪われている」と懸念され、「施設収容をなくすために、障害者の入所施設から、地域社会で自立して生活するための支援に予算を振り分けること」が勧告された。 全国各地の障害者団体などが国連の勧告を周知するために講演会を開催し、生井さんも何度か参加した。しかし、「一般参加者には内容が難しいのでは」と感じ、「幅広い人に、もっとわかりやすく伝える方法はないか」と考え、今回の上映会を企画した。「知的障害者も公的な介助サービスを利用し、一人暮らしができることはほとんど知られていない。その様子を映像として実際に見てもらうのが一番わかりやすいだろう」

装着型サイボーグのサイバーダイン 《日本一の湖のほとりにある街の話》8

【コラム・若田部哲】多くの研究所が立地する科学のまち、つくば。今回はその中でも最先端企業のひとつ、CYBERDYNE社(サイバーダイン)についてのご紹介です。同社が開発した世界初の革新的技術・製品について、広報の片見さんにお話を伺いました。 サイバーダインは筑波大学の山海嘉之教授により2004年に設立され、世界初の装着型サイボーグ「HAL」をはじめとする機器により、医療をはじめとして様々な社会課題の解決に取り組んでいます。 HALは、装着するだけで「サイボーグ化」する身体装着型の機器。その仕組みは、体を動かそうとするときに脳から発生するごく微弱な信号をセンサーで検出し、認識した動作に合わせてパワーユニットが作動、装着した人の意思に沿った動きをサポートするというものです。 ここまでは、すごいなあと思いつつ、なんとなくイメージしやすいところですが、さらにここからが驚きです! HALが脳からの信号を読み取りアシストした後、その「動いた」感覚は脳にフィードバックされ、それを繰り返すことにより、身体機能の改善・機能再生が図られるそうです。 つまり、弱って動かなくなってしまった身体機能が、HALのサポートで繰り返し動かすことにより回復し、再度動けるようになるとのこと。日本では、神経筋難病という従来は治療が困難とされていた疾患に対し、機能を維持・改善する効果が認められ、病院で治療できるようになっているそうです。 また海外では、脊髄損傷や脳卒中などの治療にも使われているとのこと。介護などの作業支援用や医療用など、様々なタイプのHALが製品化され、世界20カ国で約2500台が稼働中だそうです。

筑波懐古から始まるおカイコライブ 18日に農研機構冬の一般公開

農研機構(本部・つくば市観音台)の「冬の一般公開2023」は18日、昨秋に続きオンライン開催で行われる。「​光るシルクを生み出す家畜!? おカイコ」がテーマだが、最先端の研究現場をのぞく前に、ちょっと道草して古い縁起からひもとく趣向がある。ウィズコロナ時代のオンラインコミュニケーションに、少しだけ懐古趣味、地元回帰の要素を盛り込んだ。 今回の一般公開を担当するのは、生物機能利用研究部門の絹糸昆虫高度利用研究領域カイコ基盤技術開発グループ。笠嶋めぐみ上級研究員ら4人が進行役を務め、プログラムの冒頭は茨城県に伝わる養蚕伝承「金色姫」の話から始めるという。 同研究部門は、つくばに移転してきた1980年時点では蚕糸(さんし)試験場といい、88年の改組で蚕糸・昆虫機能研究所となり、2001年の独立行政法人化で農業生物資源研究所に改編されるまで「蚕糸研」と呼ばれた。絹を生み出すカイコの交配や生態解明を遺伝子レベルから研究してきた。 この経緯から、筑波山麓の同市神郡にある、養蚕をまつる蚕影(こかげ)神社を訪れる研究者が少なくなかった。所長を務めた木村滋さん(2022年死去)らだ。神社に伝わるのが「金色姫」の縁起で、天竺(インド)での受難劇、UFOを思わせるうつろ舟での漂着などの物語が作家や民俗学者らを引き寄せてきた。同様の伝承は県内の神栖市、日立市の神社にもある。 蚕影神社じたいは無住で荒廃久しいが、筑波山神社が春・秋に例祭を催しており、地域の女性たちが繭や真綿の手工芸品を作って奉納に訪れるなど、根強い信奉が見られる。 農研機構によれば、「養蚕の歴史が奈良時代からある茨城県で、新しいカイコ研究を行っている研究所というイントロダクションを用意した」そうで、御物法隆寺錦(正倉院御物)で聖徳太子の妃である膳妃(かしわでのきさき)の帯と伝わる蜀江錦の織物なども紹介するという。