金曜日, 3月 29, 2024
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土浦 花火 -検索結果

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新年度の土浦の花火は?《見上げてごらん!》25

【コラム・小泉裕司】記事「土浦市新年度予算」(2月15日掲載)によると、市は、4月1日実施の機構改革において、花火大会に関する情報発信の強化充実を図るために、「花火対策室」を「花火のまち推進室」に改編するとのこと。 1925(大正14)年の第1回大会から数えて、来年の第94回大会で100年、7年後には第100回大会を迎えるが、新年度は大会以外にどのような企画があるのか、実行委員会事務局に聞いた。 開口一番、新年度も「前年度並みの限られた予算規模の中でのやりくり」と釘を刺された。ちなみに、花火対策室の職員数は、昨年10月、1人減員の状態から3人体制に回復したが、大会に向けた準備に専念、新事業への取り組みはないという。 組織の名称変更についても、100年や100回のアニバーサリーに向けた特別な思いを込めたというよりも、連続した花火事故やコロナ禍を経た後の2大会の無事開催を踏まえ、「対策」という対処療法的イメージからの脱却が主たる理由らしい。 それであっても、「100年」「100回」は、遭遇することなど滅多にない希有(けう)な機会だ。何とかみんなで祝いたいと思う。次年度予算への反映に向けて、知恵を絞りたいものだ。 次の100年に向けて 過去、土浦市は、花火を歴史・文化資産としてとらえてこなかったことで、丁寧な資料の保存などが行われず、図録「花火と土浦」(2018年土浦市発行)の編集に際し、資料調査など苦労があったという。 この機会に、県紙である茨城新聞や地域紙であった旧常陽新聞などの記事や広告、大会運営に関わった市民や煙火業者などのエピソードの数々を、図録を補完するアーカイブとして集約し、次の100年に引き継いでいくことが大切ではないか。周囲の関係者に提唱しているところだ。 3月末に、いわゆる役職定年を迎える佐藤亨産業経済部長は、大会本部長を兼ねる。「本職に就いて、初めて花火の奥深さを知ることができた。若い時期に花火の業務を経験していれば、もっと花火の魅力を究めることができたのかも知れない」と、3年の在職を振り返った。 大会が万端整った後は、大会まで、事務所内に祭った気象神社(東京高円寺)のお札に好天を祈る毎日で、無事終了した後、お礼に参詣したとのこと。歴代の本部長が背負う宿命、最大の憂いごとである。ご慰労申し上げると同時に、今後は、現場を経験した「語り部」として、「土浦の花火」の魅力を拡散していこうぜ。 本日は、この辺で「打ち留めー」。「シュー ドドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

新年度の土浦の花火は?《見上げてごらん!》25

【コラム・小泉裕司】記事「土浦市新年度予算」(2月15日掲載)によると、市は、4月1日実施の機構改革において、花火大会に関する情報発信の強化充実を図るために、「花火対策室」を「花火のまち推進室」に改編するとのこと。 1925(大正14)年の第1回大会から数えて、来年の第94回大会で100年、7年後には第100回大会を迎えるが、新年度は大会以外にどのような企画があるのか、実行委員会事務局に聞いた。 開口一番、新年度も「前年度並みの限られた予算規模の中でのやりくり」と釘を刺された。ちなみに、花火対策室の職員数は、昨年10月、1人減員の状態から3人体制に回復したが、大会に向けた準備に専念、新事業への取り組みはないという。 組織の名称変更についても、100年や100回のアニバーサリーに向けた特別な思いを込めたというよりも、連続した花火事故やコロナ禍を経た後の2大会の無事開催を踏まえ、「対策」という対処療法的イメージからの脱却が主たる理由らしい。 それであっても、「100年」「100回」は、遭遇することなど滅多にない希有(けう)な機会だ。何とかみんなで祝いたいと思う。次年度予算への反映に向けて、知恵を絞りたいものだ。 次の100年に向けて 過去、土浦市は、花火を歴史・文化資産としてとらえてこなかったことで、丁寧な資料の保存などが行われず、図録「花火と土浦」(2018年土浦市発行)の編集に際し、資料調査など苦労があったという。 この機会に、県紙である茨城新聞や地域紙であった旧常陽新聞などの記事や広告、大会運営に関わった市民や煙火業者などのエピソードの数々を、図録を補完するアーカイブとして集約し、次の100年に引き継いでいくことが大切ではないか。周囲の関係者に提唱しているところだ。 3月末に、いわゆる役職定年を迎える佐藤亨産業経済部長は、大会本部長を兼ねる。「本職に就いて、初めて花火の奥深さを知ることができた。若い時期に花火の業務を経験していれば、もっと花火の魅力を究めることができたのかも知れない」と、3年の在職を振り返った。 大会が万端整った後は、大会まで、事務所内に祭った気象神社(東京高円寺)のお札に好天を祈る毎日で、無事終了した後、お礼に参詣したとのこと。歴代の本部長が背負う宿命、最大の憂いごとである。ご慰労申し上げると同時に、今後は、現場を経験した「語り部」として、「土浦の花火」の魅力を拡散していこうぜ。 本日は、この辺で「打ち留めー」。「シュー ドドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

「土浦の花火2023」を振り返る《見上げてごらん!》21

【コラム・小泉裕司】好条件に恵まれて、「土浦の花火2023」は無事に幕を閉じた。とは言え、途中、10号玉が上空で開花せず落下、地上開発(爆発)、競技中断のアクシデントもあった。詳細は、記事「地上で10号玉開き10分間中断」(11月6日掲載)をご覧いただくとして、今回は、前回の「土浦の花火 歴史と見どころ」(11月3日掲載)に沿い、受賞作品を中心に大会を振り返ってみたい。 全日本種目別選手権 国内最高峰の内閣総理大臣賞は、大曲の全国花火競技大会と土浦全国花火競技大会のみに授与されている。大曲は、28社限定、各社4種目に出品し順位を争うことから、「全日本総合選手権」。土浦は、今回57社が2種目以下に出品、3種目の優勝者から選ばれることから、「種目別選手権」に例えるとわかりやすい。  10号玉の部 優勝は、昨年に続き、山﨑煙火製造所(つくば市)の十八番(おはこ)「昇曲付五重芯銀点滅」。相変わらず見事な消え口の「銀点滅」に加えて、今年は「芯」の見え方を少し変えたことで、残像がより印象的になった。 上位入賞した野村花火工業(水戸市)や小松煙火工業(秋田県)もいつも通りと言いたいところだが、優勝作品以外は芯の乱れが気になり、結局、6社による五重芯対決は、昨年から安定した成績を残している山﨑煙火の1強という印象。 上位5作品には、「自由玉」2作品が入賞。北陸火工(新潟県)の「椰子芯入り」は、大きな盆と星先変化が特徴。マルゴー(山梨県)の「瞬き閃光」は、色彩豊かな星々をこれでもかと点滅させた。歓声が、審査席に届いたのだろう。 創造花火の部 優勝は、型物花火を復活した北日本花火興業(秋田県)の「夜空にしんちゃん!オラは人気者」。これで17回目の優勝。 準優勝は、芳賀火工(宮城県)の「軌跡を見せます!!トライ&ゴール」。技術貢献度の高い作品に贈られる日本煙火協会会長賞も受賞。特等の北陸火工「ジュワッと揚げたて!えびFLY」とともに、見る前から「想像力」をかき立てるタイトルと奇想天外な花火センスはぴかいち。会場を大いに沸かせたが、残念ながら「型物の神様」に、つま先分及ばなかった。 和火屋(秋田県)の「ゴッホのひまわり」やファイアート神奈川(神奈川県)の「スマイル×スマイル=」などを含めて、創造花火の部は、その名の通り、花火師の創造性を存分に発揮した作品ひしめく狭き門となり、入賞者一覧からも、順番を付けなければならない審査員の葛藤が垣間見えるよう。  スターマインの部 優勝した菊屋小幡花火店(群馬県)のスターマイン「風神雷神」は、実は8月の大曲に出品した「風神雷神炎舞」のリメーク作品。閃光雷や群声、十八番のフレッシュグリーンを場面ごとに散りばめながら、圧巻の連発でエンディングまで息もつかせぬ怒濤(どとう)の展開。 大曲より100発多い、土浦の400発以内というレギュレーションを存分に生かした、音と光の迫力ある「速射連発型」の作品に仕上げてきた。 5代目小幡知明(としあき)社長は、表彰式のあいさつで、勝利へのこだわりや地元群馬県へのふるさと愛を披露しつつ、遅い打上順番や客席に一番近い打ち上げ位置など、幸運にも恵まれたことを勝因に挙げ、その謙虚なメッセージは私を泣かせた。思えば、今年の花火初めは、1月2日、菊屋小幡花火店の「New Year HANABI」(1月15日掲載コラム)だった。 内閣総理大臣賞 内閣総理大臣賞は、今回もスターマインの部の優勝者が受賞。これで20回のうち、19回がスターマインの部から、1回が10号玉の部からとなった。 「スターマインの土浦」と呼ばれていることから、至極当然のようだが、10号玉の部優勝の山﨑煙火はスターマインの部でも入選。秀作・奇作多数の創造花火の部の充実ぶりもあって、もしかしたら「総理大臣賞はスターマイン以外から!?」という、淡い期待を抱いて帰路に着いたのだが…。 いつまでも、至極の花火作品を堪能した感動の余韻に浸っていたいのだが、すでに来年の花火大会に向けた「宿取り」レースがスタート。遅ればせながら参戦すべく、本日は、この辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

「土浦の花火2023」を振り返る《見上げてごらん!》21

【コラム・小泉裕司】好条件に恵まれて、「土浦の花火2023」は無事に幕を閉じた。とは言え、途中、10号玉が上空で開花せず落下、地上開発(爆発)、競技中断のアクシデントもあった。詳細は、記事「地上で10号玉開き10分間中断」(11月6日掲載)をご覧いただくとして、今回は、前回の「土浦の花火 歴史と見どころ」(11月3日掲載)に沿い、受賞作品を中心に大会を振り返ってみたい。 全日本種目別選手権 国内最高峰の内閣総理大臣賞は、大曲の全国花火競技大会と土浦全国花火競技大会のみに授与されている。大曲は、28社限定、各社4種目に出品し順位を争うことから、「全日本総合選手権」。土浦は、今回57社が2種目以下に出品、3種目の優勝者から選ばれることから、「種目別選手権」に例えるとわかりやすい。 10号玉の部 優勝は、昨年に続き、山﨑煙火製造所(つくば市)の十八番(おはこ)「昇曲付五重芯銀点滅」。相変わらず見事な消え口の「銀点滅」に加えて、今年は「芯」の見え方を少し変えたことで、残像がより印象的になった。 上位入賞した野村花火工業(水戸市)や小松煙火工業(秋田県)もいつも通りと言いたいところだが、優勝作品以外は芯の乱れが気になり、結局、6社による五重芯対決は、昨年から安定した成績を残している山﨑煙火の1強という印象。 上位5作品には、「自由玉」2作品が入賞。北陸火工(新潟県)の「椰子芯入り」は、大きな盆と星先変化が特徴。マルゴー(山梨県)の「瞬き閃光」は、色彩豊かな星々をこれでもかと点滅させた。歓声が、審査席に届いたのだろう。 創造花火の部 優勝は、型物花火を復活した北日本花火興業(秋田県)の「夜空にしんちゃん!オラは人気者」。これで17回目の優勝。 準優勝は、芳賀火工(宮城県)の「軌跡を見せます!!トライ&ゴール」。技術貢献度の高い作品に贈られる日本煙火協会会長賞も受賞。特等の北陸火工「ジュワッと揚げたて!えびFLY」とともに、見る前から「想像力」をかき立てるタイトルと奇想天外な花火センスはぴかいち。会場を大いに沸かせたが、残念ながら「型物の神様」に、つま先分及ばなかった。 和火屋(秋田県)の「ゴッホのひまわり」やファイアート神奈川(神奈川県)の「スマイル×スマイル=」などを含めて、創造花火の部は、その名の通り、花火師の創造性を存分に発揮した作品ひしめく狭き門となり、入賞者一覧からも、順番を付けなければならない審査員の葛藤が垣間見えるよう。 スターマインの部 優勝した菊屋小幡花火店(群馬県)のスターマイン「風神雷神」は、実は8月の大曲に出品した「風神雷神炎舞」のリメーク作品。閃光雷や群声、十八番のフレッシュグリーンを場面ごとに散りばめながら、圧巻の連発でエンディングまで息もつかせぬ怒濤(どとう)の展開。 大曲より100発多い、土浦の400発以内というレギュレーションを存分に生かした、音と光の迫力ある「速射連発型」の作品に仕上げてきた。 5代目小幡知明(としあき)社長は、表彰式のあいさつで、勝利へのこだわりや地元群馬県へのふるさと愛を披露しつつ、遅い打上順番や客席に一番近い打ち上げ位置など、幸運にも恵まれたことを勝因に挙げ、その謙虚なメッセージは私を泣かせた。思えば、今年の花火初めは、1月2日、菊屋小幡花火店の「New Year HANABI」(1月15日掲載コラム)だった。 内閣総理大臣賞 内閣総理大臣賞は、今回もスターマインの部の優勝者が受賞。これで20回のうち、19回がスターマインの部から、1回が10号玉の部からとなった。 「スターマインの土浦」と呼ばれていることから、至極当然のようだが、10号玉の部優勝の山﨑煙火はスターマインの部でも入選。秀作・奇作多数の創造花火の部の充実ぶりもあって、もしかしたら「総理大臣賞はスターマイン以外から!?」という、淡い期待を抱いて帰路に着いたのだが…。 いつまでも、至極の花火作品を堪能した感動の余韻に浸っていたいのだが、すでに来年の花火大会に向けた「宿取り」レースがスタート。遅ればせながら参戦すべく、本日は、この辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

地上で10号玉開き10分間中断 4日の土浦全国花火競技大会

4日行われた第92回土浦全国花火競技大会(実行委員長・安藤真理子土浦市長)で10分間の中断があったことについて、安藤市長は6日の市長定例会見で、10号玉が上空で開かず落下し、地上で開いたためと説明した。一般人の立ち入りが禁止されている保安区域内に落下し、けが人が無かったこと、周囲に大きな損傷が無かったことなど安全が確認されたことから、会場の本部席にいた実行委員らで協議し再開を決めたとしている。 同実行委事務局を務める市商工観光課によると、同日午後6時6分、競技花火29番目の長野県、伊那火工堀内煙火店が、打ち上げ会場になっているイオンモール土浦の駐車場で10号玉を打ち上げたところ、約300メートル上空まで上がったが花火が開かず、そのまま落下し、地上で直径約300メートルにわたり花火が半球状に開いた。 落下場所や花火が開いた場所が保安区域内で、花火業者関係者や事務局の市職員らがいたが、けがは無かった。市職員らが直ちに、けが人の有無、打ち上げ会場の損傷、後続の打ち上げへの影響などを確認したところ安全性に問題が無かったことから、同実行委で協議し、10分間の中断後、同6時16分、打ち上げを再開した。 ただし落下地点のアスファルトに一部へこみが出たなどしたことから、実行委が修繕する。なぜ上空で花火が開かなかったのかについては現在、打ち上げ業者が原因を調べているという。 安藤市長は「けがが無かったので、正直心からほっとしている。過去に事故があって、途中で中断しなくてはならないことがあった。火薬を扱う花火大会は(立ち入り禁止など)保安距離を設け、何かあるかもしれないことを前提に準備を進めている。今回、地上で開いた時、事業者や関係者がきちんと対応してくれた」などと話した。 ドローン飛行、警察が捜査 一方、会場付近ではドローン2機が無許可で上空を飛行していることが確認されたとし、現在、警察が捜査を進めているという。市によると、警察は今年、ドローンに特化した対策チームを編成して対応に当たった。昨年はドローン1機の飛行が確認され、航空法違反の疑いでかすみがうら市の男性が書類送検されている。 4日は約2万発の花火を打ち上げて全競技を終えた。昨年より約15万人多い約60万人が観覧した。安藤市長は「新型コロナの行動制限はなくなったが、3年ぶり開催となった昨年の教訓を生かして、桜川の土手の上には屋台を設置しない、いす席を設けるなどして臨んだ。体感としてお客様が増えているなと感じた」などと話した。

「土浦の花火」の歴史と見どころ《見上げてごらん!》20

【コラム・小泉裕司】再来年の2025年、「土浦の花火」は100年を迎える。1925年9月、神龍寺(土浦市文京町)住職の秋元梅峯和尚が、霞ヶ浦湖畔で開催した「土浦町全国花火競技大会」がルーツ。当時も今と同様、全国から花火師が集ったという。 山本五十六元帥も関係?  この花火大会は、霞ヶ浦海軍航空隊殉職者の慰霊、秋の収穫への感謝や商工業の活性化が開催の趣旨とされている。長岡花火(新潟県)を見て育った山本五十六元帥が航空隊に副長として着任し、神龍寺山門近くに下宿していた時期と重なることから、資料としては確認されていないものの、彼が大会誕生に関わりがあったとしても不思議はない。 戦争や水害、天皇の崩御、最近では連続した花火事故、コロナ禍などによる中止や中断を乗り越えながら、11月4日(土)に第92回大会を迎える。これまで、大会の発展に尽くした先人の優れた知恵や計り知れない苦労があったに違いない。 戦後の大会の再開と発展に貢献したのが、北島義一氏(元土浦火工㈱社長、1908~79)。数々の競技大会で優秀な成績を収めるなど、花火技術の発展に寄与すると同時に、後進の育成にも力を注いだ。義一氏の教えは、山﨑芳男氏(山﨑煙火製造所会長)や今野正義氏(㈱北日本花火興業会長)など、その後の日本花火をけん引する花火師達に引き継がれている。 20回目の内閣総理大臣賞 毎年、大会に前後して、義一氏とゆかりのある煙火業者の面々が神龍寺の北島家の墓所を訪れ、墓前に白菊が手向けられる。その姿を、大会の始祖・梅峯和尚の銅像がかたわらから見守る。もちろん、筆者も大会前後に神龍寺を訪れ、大会の安全を祈願して両所で手を合わせる。 2000年から授与され今回で20回目の「内閣総理大臣賞」には、こうしたご縁に導かれた経緯がある。そもそもは1961年にさかのぼる。この年から、義一氏の努力により「通商産業大臣賞」が授与されることになったが、俯瞰(ふかん)的視野の義一氏の後押しがあって、1964年から大曲花火(秋田県)にも同賞が授与されることになった。 時は流れ、2000年。大曲に「内閣総理大臣賞」が授与される際には、通産大臣賞の恩返しとばかり、大曲から国への働きかけによって、土浦にも授与されることになったという。まさに同志としての「友情物語」が、両大会の発展の礎になっていることは間違いない。 10号玉、創造花火、スターマイン 土浦全国花火競技大会は、打ち上げてから消えるまでのわずか10秒前後の間に幾重もの同心円を描く「10号玉」、花火師のクリエイティブなセンスと新技術が楽しめる「創造花火」、夜空を千紫万紅に彩る「スターマイン」の3部門に分かれて、優勝を目指して競技が展開する。 各部門の優勝者の中から、最も優れた作品を打ち上げた業者に、花火師最高位の名誉である内閣総理大臣賞が授与される。技術力、芸術性、創造性、品質性などで日本最高峰の花火作品が、晩秋の澄んだ夜空に集結する。花火師にとっては、今年1年の集大成とも言うべき頂上決戦が始まる。 今年から審査標準玉を変更 さて、大会進行で変更となる点、注目すべき作品や煙火業者を紹介しよう。まず、競技開始の直前に打ち上げる「審査標準玉」が今年は変更となる。昨年まで、芯が2つ、全体で3つの円を描く10号玉割物「八重芯変化菊」を採用していたが、今年からは芯が3つ、全体で4つの円の「三重芯変化菊」を採用する。 八重芯が初めて登場したのは1928年と歴史も古く、今年の八重芯出品は1玉となっており、妥当な変更といえる。むしろ遅すぎた感も否めない。審査員長が採点した標準玉の点数を参考として、以後89作品の審査が行われるのだが、例年は70点中盤がアナウンスされる。そのわけは、ここで高得点を付けると、実績豊富な業者が登場する後半の採点の際、大いに困ることになるから。 10号玉の注目は、6業者が挑戦する「五重芯」だろう。まさに匠(たくみ)の技。完璧な6つの真円を描いた作品が優勝に最も近いといえるが、目視できなければ意味がない。すべて手作りで作られる粋な花火に、ビデオ判定などもってのほか。 ハートや動物の「型物」に注目 今年の創造花火は、「型物」に注目したい。「型物」は、たとえば、ハートや動物の形などを模した2Dの世界なので、審査員に意図した形が見えるどうかがポイント。今年は「型物の神」と言われる㈱北日本花火興業(秋田県)、㈱芳賀火工(宮城県)、北陸火工㈱(石川県)の女性花火師の作品が要チェックだ。 スターマインの最近の傾向は、レギュレーション(規定)の400発をめいっぱい打ち上げる「スターマインの土浦」ともいわれる「迫力系」と、1玉1玉をじっくり見せる「しっとり系」に分かれる。いずれにしても、すべての作品が音楽付きなので、曲と花火のマッチングが優劣を決めることになる。 打上げ時は人の前を歩かない! 最後に、有料観覧席で見る皆さんにお願いがある。花火が打ち上がっているときは、人の前を歩かないこと。作品は、上空、中空、低空を効果的に、まさに生け花のごとく描き出す。これからという佳境に、「あなたの顔は見たくない」。 花火の公式パンフレットで、作者のコメントを読みながらイマジネーションを膨らますのもよし、何も考えず、ただひたすら音と光の世界に没頭するもよし-。花火の楽しみ方は、それこそ自由。 私は、東京高円寺にある「気象神社」から木箱入りのお守りを取り寄せた。どうか御利益がありますようにと安全祈願。恒例の「打ち留め-」は、大会終了まで、「おあずけー」「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

「土浦の花火」歴史と見どころ《見上げてごらん!》20

【コラム・小泉裕司】再来年の2025年、「土浦の花火」は100年を迎える。1925年9月、神龍寺(土浦市文京町)住職の秋元梅峯和尚が、霞ケ浦湖畔で開催した「土浦町全国花火競技大会」がルーツ。当時も今と同様、全国から花火師が集ったという。 山本五十六元帥も関係? この花火大会は、霞ケ浦海軍航空隊殉職者の慰霊、秋の収穫への感謝や商工業の活性化が開催の趣旨とされている。長岡花火(新潟県)を見て育った山本五十六元帥が航空隊に副長として着任し、神龍寺山門近くに下宿していた時期と重なることから、資料としては確認されていないものの、彼が大会誕生に関わりがあったとしても不思議はない。 戦争や水害、天皇の崩御、最近では連続した花火事故、コロナ禍などによる中止や中断を乗り越えながら、11月4日(土)に第92回大会を迎える。これまで、大会の発展に尽くした先人の優れた知恵や計り知れない苦労があったに違いない。 戦後の大会の再開と発展に貢献したのが、北島義一氏(元土浦火工㈱社長、1908~79)。数々の競技大会で優秀な成績を収めるなど、花火技術の発展に寄与すると同時に、後進の育成にも力を注いだ。義一氏の教えは、山﨑芳男氏(山﨑煙火製造所会長)や今野正義氏(㈱北日本花火興業会長)など、その後の日本花火をけん引する花火師達に引き継がれている。 20回目の内閣総理大臣賞 毎年、大会に前後して、義一氏とゆかりのある煙火業者の面々が神龍寺の北島家の墓所を訪れ、墓前に白菊が手向けられる。その姿を、大会の始祖・梅峯和尚の銅像がかたわらから見守る。もちろん、筆者も大会前後に神龍寺を訪れ、大会の安全を祈願して両所で手を合わせる。 2000年から授与され今回で20回目の「内閣総理大臣賞」には、こうしたご縁に導かれた経緯がある。そもそもは1961年にさかのぼる。この年から、義一氏の努力により「通商産業大臣賞」が授与されることになったが、俯瞰(ふかん)的視野の義一氏の後押しがあって、1964年から大曲花火(秋田県)にも同賞が授与されることになった。 時は流れ、2000年。大曲に「内閣総理大臣賞」が授与される際には、通産大臣賞の恩返しとばかり、大曲から国への働きかけによって、土浦にも授与されることになったという。まさに同志としての「友情物語」が、両大会の発展の礎になっていることは間違いない。 10号玉、創造花火、スターマイン 土浦全国花火競技大会は、打ち上げてから消えるまでのわずか10秒前後の間に幾重もの同心円を描く「10号玉」、花火師のクリエイティブなセンスと新技術が楽しめる「創造花火」、夜空を千紫万紅に彩る「スターマイン」の3部門に分かれて、優勝を目指して競技が展開する。 各部門の優勝者の中から、最も優れた作品を打ち上げた業者に、花火師最高位の名誉である内閣総理大臣賞が授与される。技術力、芸術性、創造性、品質性などで日本最高峰の花火作品が、晩秋の澄んだ夜空に集結する。花火師にとっては、今年1年の集大成とも言うべき頂上決戦が始まる。 今年から審査標準玉を変更 さて、大会進行で変更となる点、注目すべき作品や煙火業者を紹介しよう。まず、競技開始の直前に打ち上げる「審査標準玉」が今年は変更となる。昨年まで、芯が2つ、全体で3つの円を描く10号玉割物「八重芯変化菊」を採用していたが、今年からは芯が3つ、全体で4つの円の「三重芯変化菊」を採用する。 八重芯が初めて登場したのは1928年と歴史も古く、今年の八重芯出品は1玉となっており、妥当な変更といえる。むしろ遅すぎた感も否めない。審査員長が採点した標準玉の点数を参考として、以後89作品の審査が行われるのだが、例年は70点中盤がアナウンスされる。そのわけは、ここで高得点を付けると、実績豊富な業者が登場する後半の採点の際、大いに困ることになるから。 10号玉の注目は、6業者が挑戦する「五重芯」だろう。まさに匠(たくみ)の技。完璧な6つの真円を描いた作品が優勝に最も近いといえるが、目視できなければ意味がない。すべて手作りで作られる粋な花火に、ビデオ判定などもってのほか。 ハートや動物の「型物」に注目 今年の創造花火は、「型物」に注目したい。「型物」は、たとえば、ハートや動物の形などを模した2Dの世界なので、審査員に意図した形が見えるどうかがポイント。今年は「型物の神」と言われる㈱北日本花火興業(秋田県)、㈱芳賀火工(宮城県)、北陸火工㈱(石川県)の女性花火師の作品が要チェックだ。 スターマインの最近の傾向は、レギュレーション(規定)の400発をめいっぱい打ち上げる「スターマインの土浦」ともいわれる「迫力系」と、1玉1玉をじっくり見せる「しっとり系」に分かれる。いずれにしても、すべての作品が音楽付きなので、曲と花火のマッチングが優劣を決めることになる。 打上げ時は人の前を歩かない! 最後に、有料観覧席で見る皆さんにお願いがある。花火が打ち上がっているときは、人の前を歩かないこと。作品は、上空、中空、低空を効果的に、まさに生け花のごとく描き出す。これからという佳境に、「あなたの顔は見たくない」。 花火の公式パンフレットで、作者のコメントを読みながらイマジネーションを膨らますのもよし、何も考えず、ただひたすら音と光の世界に没頭するもよし-。花火の楽しみ方は、それこそ自由。 私は、東京高円寺にある「気象神社」から木箱入りのお守りを取り寄せた。どうか御利益がありますようにと安全祈願。恒例の「打ち留め-」は、大会終了まで、「おあずけー」「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長) 【3日午前10時】花火の写真を差し替えました。

11/4 J:COM生中継 土浦全国花火競技大会

県南地域でケーブルテレビを運営するJ:COMは、11月4日(土)に開催される「第92回土浦全国花火競技大会」を当日午後5時から、J:COMの全サービスエリアで放送する「J:テレ」とJ:COM茨城サービスエリアで放送する「J:COMチャンネル」、4K専門チャンネル「ケーブル4K」で同時生中継する。また、無料の地域情報アプリ「ど・ろーかる」でもライブ配信を行う。 J:COMの加入やサービスエリアに関わらわず、自宅のテレビやパソコン、スマートフォン、タブレットなどで全国どこでも視聴できる。 生放送のポイントは ①全ての花火をドローンを使った空中からの映像も交え生中継 ②花火鑑賞士による競技花火解説 ③大会参加業者最多の「内閣総理大臣賞」に輝いた野村花火工業のインタビューなど煙火業者の魅力に迫る 番組HPはこちら     <POINT> ①全ての花火をドローンを使った空中からの映像も交え生中継 ②花火鑑賞士による競技花火解説 ③大会参加業者最多の「内閣総理大臣賞」に輝いた野村花火工業のインタビューなど煙火業者の魅力に迫る   番組HP https://www2.myjcom.jp/special/jch/matsuri_hanabi/ibaraki/tsuchiura_hanabi.shtml    

観覧席チケットが高額転売 土浦全国花火競技大会

定価の3倍以上も 11月4日に開催される第92回土浦全国花火競技大会の有料観覧席チケットが、インターネット上で高額転売されている。転売されているのはネット上のオークションサイトや不用品販売サイト、その他チケット専用の売買サービスサイトなどで、オークションサイトでは定価2万4000円の桟敷席に39件の入札があり、2.5倍の6万1000円で落札されたケースもあった。 28日時点でも、C席のイス2席で定価6000円のチケットが3.8倍の2万3000円、B席のイス2席で定価8000円が1.8倍の1万4500円など、定価より高額での販売が確認されている。SNS上でやりとりし、売り買いするケースもあり、主催者の大会実行委員会事務局が重ねて注意喚起している。 一般の有料観覧席は事前申し込みによる抽選販売で、申し込み期間は9月1日から30日までだった。当選結果は10月4日に発表され、チケットの配送は10月中旬から順次郵送で行われている。 県外に住む友人と抽選の申し込みをした牛久市の女性は「5人で見ようと、それぞれイス席2席と3席を2人で申し込んだが、自分だけ当選して友人ははずれてしまった。3人分が足らず、再販売はないかとインターネットで検索したら、定価をはるかに超える高額なチケットが出てきて驚いた」と困惑する。 大会実行委員会事務局の土浦市商工観光課は「抽選に漏れた皆さんが(高額転売を)残念に思われることは、もちろん主催者としても大変残念に感じている」とし、「本大会は、国内最高峰の競技花火の大会であるという自負があり、本当に花火を見たい方にチケットを購入していただきたいという思いから、利益を得ることを目的に購入される方には強い憤りを感じている」と吐露する。 人気の入場券や観覧券などのチケット類を転売目的で購入し、法外な値段で売るいわゆる「ダフ屋」行為は法律で禁止されている。2019年6月から「チケット不正転売禁止法」が施行された。 さくらパートナーズ法律事務所(土浦市文京町)の中島隆一弁護士は、転売されているチケットが同法で定義されている「特定興行入場券」に該当し、他の要件も満たせば、規制の対象になり得ると指摘する。中島弁護士は「20年8月には人気アイドルグループのコンサートチケットを不正に転売した者に対し、裁判所が、懲役1年6カ月(執行猶予3年)、罰金30万円等の有罪判決を下した事例もある。法も内容を変えながら進化していくものであり、以前大丈夫だったから今回も大丈夫、という安易な考えを持つべきではない。チケット本来の目的に沿って、本当に必要な人にチケットを利用してもらうことが主催者の願いであり、その願いに思いを巡らす必要がある」と警告する。 大会実行委員会では、高額転売が確認された場合、販売サイトに連絡し掲載の削除依頼を行っている。また、チケット購入時の注意事項やチケットへの注意書きに転売禁止を記載し、チケット購入者に対して注意事項文を送付、ホームページでも転売禁止文を掲載するなど、重ねての注意喚起を行っているが、高額転売がなくならないのが実情だ。 市商工観光課は、チケットの高額転売は、全国の花火大会で長年の懸案事項であり、解決策を模索しているという。転売できないようにするため、顔認証システムや電子チケットなども検討しているが、いずれも様々な課題があり導入には至っていない。今後、チケット会社や他の花火大会と連携し、有効な手立てを研究していくとしている。 同大会の一般桟敷席は1人1マスまで、イス席は1人4席までの申し込みとなっており、桟敷席とイス席を両方申し込むことはできない。また、チケット当選後のキャンセルはできない。チケットの金額は、4人桟敷席が2万4000円、2人桟敷席が1万2000円、イス席はA席が1席5000円、B席が1席4000円、C席が1席3000円となっている。(田中めぐみ)

土浦の花火in大曲《見上げてごらん!》19

【コラム・小泉裕司】今回は、「土浦の花火」史上、特筆すべきイベントに立ち会うことができたので、その概要を報告したい。 10月7日(土)、秋田県大曲の秋の夜空で、「土浦の花火」と「大曲の花火」の競演が実現した。そもそも、新型コロナウイルスの影響で第90回土浦全国花火競技大会が中止となったことを受け、昨年1月から2月にかけて、実行委員会が「土浦の花火~後世に伝える匠(たくみ)の技」(2022年4月17日掲載)を霞ケ浦湖畔で開催。最終日、大曲の4社と土浦の6社合同による「二大花火競技大会『土浦』『大曲』夢の競演!!」として打ち上げたのがきっかけ。 「大曲の花火 秋の章」の第2幕、「土浦の花火物語」と題し、日本煙火協会茨城地区会が共同して、土浦全国花火競技大会の打上規定にそった作品、10号玉6発、創造花火2組、スターマイン2台をPART1と2に分けて打ち上げたもの。 芯入り割物を中心とした「10号玉の部」は、6社が1発ずつ出品。芯の数が多ければいいというものでもないが、競技大会で常に上位を占める山﨑煙火や野村花火が5重芯ではなく4重芯だったのは、地元として少し寂しいけれども、完璧な正円を披露したのはさすが。 「創造花火の部」には、茨城勢は大会に出品しておらず、今回に限り、山﨑煙火が担当した。これまで10号玉とスターマインに出品、創造花火は未経験の世界だった。独創性やタイトルと花火の整合性など、見る側の想像力をかき立てる、他に例のないユニークな競技部門となっているが、その楽しみを今一つ伝え切れなかったのは残念。 「スターマインの部」は、大曲での経験豊富な堀米煙火店が土浦の規定(4号玉から2.5号玉まで400発以内)に準じた作品を披露し、野村花火は、昨年の土浦で優勝した「水無月のころ」をリメイクし、5号玉を加えた大曲バージョンを披露した。 野村ブルーをふんだんに盛り込んだ八方咲きや1玉1玉の見せ方など、目の肥えた大曲市民を満足させるに十分な作品に仕上げ、会場の拍手喝采を浴びた。 地元の風土・歴史で育まれる花火 大曲の広大な夜空に上がる堀米煙火店のスターマインは、見事な色彩や打上構成を披露したが、上空のすかすか感が多少気になった。それも当たり前。開花時の最大高度200メートルの4号玉と250メートルの5号玉では、そもそも上空の暗闇部分を埋め尽くす広がりが違う。 逆を言えば、土浦の狭あいな空間では、4号玉以下で十分迫力ある構成に仕立て上げることができることを再確認できたことは、意外な収穫となった。改めて、両競技大会は、地元それぞれの歴史や風土に育まれてきたのである。 「土浦の花火」が姫神山をバックに雄物川の対岸から打ち上がるという、考えたこともない企画は無事終了し、来場者への土浦花火の認知度向上という所期の目的は十分に果たしたように思うし、今後もないだろう歴史的な瞬間に土浦市民の1人として立ち会えて、至福のひとときを味わうことができたのである。 実現に至るまでの土浦、大曲の花火関係者や煙火業者の皆さまに、心から敬意を表する次第。 ちなみに、当日の午後、花火伝統文化継承資料館「はなび・アム」(大仙市)で、「土浦の花火、大曲の花火」をテーマとした「花火特別セミナ-」(日本花火鑑賞士会主催)を開催したところ、入場しきれないほど多くの皆さまにご来場いただいた。 両花火競技大会が長年築き上げてきた「友情物語」について、来場者の皆さまが理解を深めていただく一助になったとすれば、5カ月をかけ準備を進めて来たスタッフ、そして講演者の1人として「がんばり」が報われたというもので、うれしい限り。本日は、この辺で「打ち留めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

土浦の花火in大曲《見上げてごらん!》19

【コラム・小泉裕司】今回は、「土浦の花火」史上、特筆すべきイベントに立ち会うことができたので、その概要を報告したい。 10月7日(土)、秋田県大曲の秋の夜空で、「土浦の花火」と「大曲の花火」の競演が実現した。そもそも、新型コロナウイルスの影響で第90回土浦全国花火競技大会が中止となったことを受け、昨年1月から2月にかけて、実行委員会が「土浦の花火~後世に伝える匠(たくみ)の技」(2022年4月17日掲載)を霞ケ浦湖畔で開催。最終日、大曲の4社と土浦の6社合同による「二大花火競技大会『土浦』『大曲』夢の競演!!」として打ち上げたのがきっかけ。 「大曲の花火 秋の章」の第2幕、「土浦の花火物語」と題し、日本煙火協会茨城地区会が共同して、土浦全国花火競技大会の打上規定にそった作品、10号玉6発、創造花火2組、スターマイン2台をPART1と2に分けて打ち上げたもの。 芯入り割物を中心とした「10号玉の部」は、6社が1発ずつ出品。芯の数が多ければいいというものでもないが、競技大会で常に上位を占める山﨑煙火や野村花火が5重芯ではなく4重芯だったのは、地元として少し寂しいけれども、完璧な正円を披露したのはさすが。 「創造花火の部」には、茨城勢は大会に出品しておらず、今回に限り、山﨑煙火が担当した。これまで10号玉とスターマインに出品、創造花火は未経験の世界だった。独創性やタイトルと花火の整合性など、見る側の想像力をかき立てる、他に例のないユニークな競技部門となっているが、その楽しみを今一つ伝え切れなかったのは残念。 「スターマインの部」は、大曲での経験豊富な堀米煙火店が土浦の規定(4号玉から2.5号玉まで400発以内)に準じた作品を披露し、野村花火は、昨年の土浦で優勝した「水無月のころ」をリメイクし、5号玉を加えた大曲バージョンを披露した。 野村ブルーをふんだんに盛り込んだ八方咲きや1玉1玉の見せ方など、目の肥えた大曲市民を満足させるに十分な作品に仕上げ、会場の拍手喝采を浴びた。 地元の風土・歴史で育まれる花火 大曲の広大な夜空に上がる堀米煙火店のスターマインは、見事な色彩や打上構成を披露したが、上空のすかすか感が多少気になった。それも当たり前。開花時の最大高度200メートルの4号玉と250メートルの5号玉では、そもそも上空の暗闇部分を埋め尽くす広がりが違う。 逆を言えば、土浦の狭あいな空間では、4号玉以下で十分迫力ある構成に仕立て上げることができることを再確認できたことは、意外な収穫となった。改めて、両競技大会は、地元それぞれの歴史や風土に育まれてきたのである。 「土浦の花火」が姫神山をバックに雄物川の対岸から打ち上がるという、考えたこともない企画は無事終了し、来場者への土浦花火の認知度向上という所期の目的は十分に果たしたように思うし、今後もないだろう歴史的な瞬間に土浦市民の1人として立ち会えて、至福のひとときを味わうことができたのである。 実現に至るまでの土浦、大曲の花火関係者や煙火業者の皆さまに、心から敬意を表する次第。 ちなみに、当日の午後、花火伝統文化継承資料館「はなび・アム」(大仙市)で、「土浦の花火、大曲の花火」をテーマとした「花火特別セミナ-」(日本花火鑑賞士会主催)を開催したところ、入場しきれないほど多くの皆さまにご来場いただいた。 両花火競技大会が長年築き上げてきた「友情物語」について、来場者の皆さまが理解を深めていただく一助になったとすれば、5カ月をかけ準備を進めて来たスタッフ、そして講演者の1人として「がんばり」が報われたというもので、うれしい限り。本日は、この辺で「打ち留めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

土浦花火弁当 お披露目

11月4日開催の「第92回土浦全国花火競技大会」で販売される土浦花火弁当がこのほどお披露目された。地元の飲食店が土浦の食材を使って作った料理を、花火の打ち上げ筒に見立てた3段重ねの容器に詰めた花火大会限定の弁当だ。昨年は飲食の制限があり300個ほどしか販売できなかったが、今年はコロナ禍前と同じ3000個の販売を目指す。 今年は日本料理店やレストランなど飲食店6店と1組合が提供する。販売するのは▽ふぐ・あんこうの「喜作」(同市神立中央)▽老舗料亭の「霞月楼」(中央)▽弁当・ケータリング・会食の「さくらガーデン」(宍塚)▽和食の「蓮の庭」(阿見町実穀)▽「寿司の旦兵衛」(大和町)▽つくだ煮とうなぎの「小松屋」(大和町)▽土浦飲食店組合。 土浦のレンコンや霞ケ浦のシラウオなどの地元食材や、常陸牛、アンコウなど茨城の食材をふんだんに使った炊き込みご飯、天ぷら、ローストビーフ、煮物などを提供する。花火大会は肌寒くなる季節に開催されることから、釜めしは観覧席で容器に付いたひもを引っ張ると加熱され熱々の状態で味わうことができるなど心づくしのメニューを用意する。 土浦花火弁当は、飲食店などでつくる「土浦市食のまちづくり推進協議会」(堀越雄二会長が、土浦名物の花火弁当をつくって全国から訪れる見物客に味わってもらおうと2006年から販売を始めた。同弁当部会の嶋田玲子部会長は「食を通して土浦の良さをPRしていきたい」と意気込みを話す。市観光協会の中川喜久治会長は「土浦の食材を使って腕によりをかけて提供する。去年はコロナの制約があったが、今年は何とかコロナ禍前に戻って、土浦のお店の力を全国に発信したい」と話す。 弁当の価格は物価高の影響で昨年より若干高くなり、2000円台から4000円台になる見込みという。 ◆花火弁当は事前予約が必要。花火大会当日、桟敷席近くで受け取ることができる。市観光協会のホームページ(HP)と各飲食店のHPで案内し、事前予約を受け付ける。詳しくは電話029-824-2810(市観光協会)へ。

土浦の「春花火」2連発 ドッドーン 《見上げてごらん!》12

【コラム・小泉裕司】「ただいま霞ケ浦湖畔で打ち上げているのは、花火師研修のための花火です」。3月11日(土)午後6時30分を少し回ったころ、花火画像とともに、このメッセージが土浦市の公式SNSに流れた。 コロナ禍、花火大会の中止が相次ぐ中、花火業界は直接的な打撃を受け、未来を担う人材育成にも赤信号がともり始めるなど、世界最高峰と言われる日本の花火技術の継承が危惧される状況にあった。そこで土浦全国花火競技大会実行委員会では、国の支援制度を活用、昨年、「花火技術後継者育成事業」を起ち上げた。 内容は、後継者育成プログラムに、「花火道」を志す全国32業者95人の花火師が参加、実績豊富な花火師による花火製造と打ち上げ技術のオンライン講習を8月から計5回開催。その成果として、参加者それぞれが製作した4号(直径約12センチ)菊型花火7発、同牡丹花火7発を順次打ち上げ、できばえを確かめたもの。 本日、「振り返り」研修をもって事業は完了。昨年にも増して花火大会の再開が予定される今年、経営危機は脱しつつあるようだが、今回の研修成果が、未来に向けて、持続可能な花火産業構築のきっかけになることを願う。 防波堤2カ所からの対打ち(同時打ち上げ)による間断無き連打1300発は、とても斬新な光景、まさに、初春を彩る「菊」と「牡丹」の品評会のごとし。作品の出来具合はピンキリだったが、これもまた一興。見上げ続けること45分、万年肩こりが、また悪化した。 三浦春馬さんをしのぶHEART花火2023 正真正銘の美青年。品のあるストイックさと才能あふれる輝きで、多くの人を魅了した三浦春馬さんの突然の訃報から今年で3年。今でも、春馬さんに思いを寄せる多くのファンが、生誕の地・土浦を訪れるという。 「HEART花火」プロジェクトは、こうした思いを共有する皆さんが、春馬さんをしのび、4月5日の誕生日を祝って、故郷土浦で花火を打ち上げるイベント。昨年に続き、第2回目の今年は、4月1日に土浦新港で開催する。 土浦市の花火マッチング事業がサポート役となり、山﨑煙火製造所(つくば市)が打ち上げを担当。かかる経費はクラウドファンディングで募集。300人を超える賛同者から寄せられた144万円の支援でまかなうという。春馬さんが土浦の花火に魅了され、故郷の誇りとして大切にされたことは「見上げてごらん!」4(2022年7月17日掲載)のとおり。 彼へのリスペクトを込めて、筆者も些少(さしょう)ながら、今回の募集に参加。当日午後6時、打ち上げに先立って行われるセレモニーで、土浦の花火や春馬さんへの思いを参加者に伝えしてほしいとのオファーが届いた。何時間あっても語り尽くせぬテーマを5分にまとめるなんて、至難の業。千思万考は、当日まで続く。 春真っ盛りの花火を見ながら、主催者の思いを共有しよう。「春馬さんへの思いを込めた花火が少しでも皆様の心を癒やし、さらには、大切な人に思いを巡らせ、平和を祈る…そんな機会にもなってほしい」。本日は、この辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

「土浦の花火」~未来へ~《見上げてごらん!》8

【コラム・小泉裕司】天気、風力、風向き良好。佐藤亨・土浦市産業経済部長が参拝した日本で唯一の「気象神社」の御利益なのか(10月16日掲載)、近来まれにみる好条件に恵まれた第91回土浦全国花火競技大会は、「無事」終了した。今回の「無事」は、Safe(安全)に加えて、No problem(問題なし)、All good(すべてよし)、Complete(完璧)、Success(達成)と英訳したいほど、見事な大会だった。 とりわけ、18都道県から出品された89作品すべての打上げが完了し、コロナ禍を含め4年間途絶えていた歴代入賞者一覧に、新たに業者名が追記されたことがうれしいし、未来につなぐ第1歩を刻むにふさわしい大会になったと思う。 出品作品については、全般的に斬新性や話題性というよりも、今年1年の集大成的な作品が多かったように思う。むしろ、そうした秀作・力作の数々が土浦の夜空に集結し、披露されたことそのものが、贅沢(ぜいたく)の極みなのだ。 部門別では、10号玉の部における茨城県勢の安定した完成度が際立った。特に、優勝した山﨑煙火製造所の作品「昇曲付五重芯銀点滅(のぼりきょくつき いつえしんぎんてんめつ)」は、色のコントラストもさることながら、5つの芯と一番外側の輪を加えた6層の同心円が見事に真円を描いた。聞けば30代の花火師の手によるとのこと。 コンダクター役の山﨑智弘社長は「昨年から、競技大会は若手で作り上げようと取り掛かった。諸先輩から継承した技術を若手がどこまでできるのか試してみたかった」と、「攻め」を強調した。「この業界は次の世代にどう伝承させていくかがとても重要」と続けた。 期せずして、最近の若手花火師の活躍に触れた佐々木繁治前大曲商工会議所会頭の言葉が重なる。「若手は勝手には育たない。素晴らしい実績を残した先輩がいて、初めて若手が育つ」。まさに言い得て妙。 創造花火の部では、女性花火師の感性豊かな作品が高評価を得た。特に、私のお気に入りの花火師、芳賀火工の石村佳恵さん(5月14日掲載)の作品「アマビエに願いを込めて☆」が準優勝。表彰式の集合写真では、最前列に安藤真理子土浦市長と横並びに着座。この土浦で石村さんの笑顔を拝見できたことが、とてもうれしい。 3年後は「土浦の花火100年」 山﨑社長は「コロナ禍、たくさんの方々の支えがあり、大曲や土浦で多くの方に応援をいただき感謝の気持ちでいっぱい。来年は挑戦者として謙虚な気持ちで挑みたい」と、てらいのない言葉で結んだ。主催側の大会実行委員会本部長を兼ねる佐藤部長も山﨑社長と同様、「成功体験を大切にしながら、慢心することなく、反省すべきは検証し、未来につなげたい」と、緊褌一番(きんこんいちばん)の決意を語った。 煙火業者や実行委員会の面々のこれまでの様々な努力や苦労は、部外者には計り知れないものがあったと思う。あらためて、「無事」の開催を成し遂げた皆さんに、慰労と祝福の拍手を送りたい。そして、過去に懲りずに、再訪いただいた観客の皆さんには、心からの感謝の念を伝えたい。「これからも、よろしくお願いします」と。 一方、競技部門ごとのあり方や、スタッフの入れ替えに伴う運営の不慣れなど、確かに気になる点もあった。「土浦の花火100年」に向けて、次回以降、本稿でも再確認してみたい。 これも3年ぶり。翌日早朝の清掃活動は、いまだかつてないぐらい、観客の行儀の良さを実感しながら、拍子抜けするほどの短時間で終了。大会から10日が過ぎて、安全対策の看板類も撤去され、桜川沿いの自宅周辺は、晩秋の静寂な情景を取り戻した。本日はこの辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

「土浦の花火」~未来へ~《見上げてごらん!》8

【コラム・小泉裕司】天気、風力、風向き良好。佐藤亨・土浦市産業経済部長が参拝した日本で唯一の「気象神社」の御利益なのか(10月16日掲載)、近来まれにみる好条件に恵まれた第91回土浦全国花火競技大会は、「無事」終了した。今回の「無事」は、Safe(安全)に加えて、No problem(問題なし)、All good(すべてよし)、Complete(完璧)、Success(達成)と英訳したいほど、見事な大会だった。 とりわけ、18都道県から出品された89作品すべての打上げが完了し、コロナ禍を含め4年間途絶えていた歴代入賞者一覧に、新たに業者名が追記されたことがうれしいし、未来につなぐ第1歩を刻むにふさわしい大会になったと思う。 出品作品については、全般的に斬新性や話題性というよりも、今年1年の集大成的な作品が多かったように思う。むしろ、そうした秀作・力作の数々が土浦の夜空に集結し、披露されたことそのものが、贅沢(ぜいたく)の極みなのだ。 部門別では、10号玉の部における茨城県勢の安定した完成度が際立った。特に、優勝した山﨑煙火製造所の作品「昇曲付五重芯銀点滅(のぼりきょくつき いつえしんぎんてんめつ)」は、色のコントラストもさることながら、5つの芯と一番外側の輪を加えた6層の同心円が見事に真円を描いた。聞けば30代の花火師の手によるとのこと。 コンダクター役の山﨑智弘社長は「昨年から、競技大会は若手で作り上げようと取り掛かった。諸先輩から継承した技術を若手がどこまでできるのか試してみたかった」と、「攻め」を強調した。「この業界は次の世代にどう伝承させていくかがとても重要」と続けた。 期せずして、最近の若手花火師の活躍に触れた佐々木繁治前大曲商工会議所会頭の言葉が重なる。「若手は勝手には育たない。素晴らしい実績を残した先輩がいて、初めて若手が育つ」。まさに言い得て妙。 創造花火の部では、女性花火師の感性豊かな作品が高評価を得た。特に、私のお気に入りの花火師、芳賀火工の石村佳恵さん(5月14日掲載)の作品「アマビエに願いを込めて☆」が準優勝。表彰式の集合写真では、最前列に安藤真理子土浦市長と横並びに着座。この土浦で石村さんの笑顔を拝見できたことが、とてもうれしい。 3年後は「土浦の花火100年」 山﨑社長は「コロナ禍、たくさんの方々の支えがあり、大曲や土浦で多くの方に応援をいただき感謝の気持ちでいっぱい。来年は挑戦者として謙虚な気持ちで挑みたい」と、てらいのない言葉で結んだ。主催側の大会実行委員会本部長を兼ねる佐藤部長も山﨑社長と同様、「成功体験を大切にしながら、慢心することなく、反省すべきは検証し、未来につなげたい」と、緊褌一番(きんこんいちばん)の決意を語った。 煙火業者や実行委員会の面々のこれまでの様々な努力や苦労は、部外者には計り知れないものがあったと思う。あらためて、「無事」の開催を成し遂げた皆さんに、慰労と祝福の拍手を送りたい。そして、過去に懲りずに、再訪いただいた観客の皆さんには、心からの感謝の念を伝えたい。「これからも、よろしくお願いします」と。 一方、競技部門ごとのあり方や、スタッフの入れ替えに伴う運営の不慣れなど、確かに気になる点もあった。「土浦の花火100年」に向けて、次回以降、本稿でも再確認してみたい。 これも3年ぶり。翌日早朝の清掃活動は、いまだかつてないぐらい、観客の行儀の良さを実感しながら、拍子抜けするほどの短時間で終了。大会から10日が過ぎて、安全対策の看板類も撤去され、桜川沿いの自宅周辺は、晩秋の静寂な情景を取り戻した。本日はこの辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

土浦全国花火競技大会 5年ぶりフィナーレまで完走

色とりどりの花火が大音響と共に土浦の夜空に戻ってきた。第91回土浦全国花火競技大会(主催・大会実行委員会、委員長・安藤真理子市長)は5日、土浦市佐野子、学園大橋近くの桜川河川敷で開かれ、開催を待ちわびた多くの見物客でにぎわった。 内閣総理大臣賞をかけて花火師が技を競う国内最高峰の大会の一つ。2018年と19年は事故により途中で打ち切り、20年と21年はコロナ禍で中止となった。今年はコロナ対策と安全対策を徹底して、3年ぶりに開催された。 大会は、従来より30分早い午後5時30分に最初の一発が上がり、午後8時過ぎまで約2時間半にわたり、音と光のスペクタクルが繰り広げられた。空高く轟音を伴って打ち上がる10号玉、トリッキーでユニークな形状の楽しめる創造花火、土浦の花火名物といわれる華やかなスターマイン、競技大会参加の93作品、広告花火を加えると100近いプログラムが次々に夜空を染めた。 新型コロナ対策として、有料観覧席の入場者を例年より4割減らし約3万5000席に制限し、入場する際は検温と手指消毒を求め、飲食時以外のマスク着用を徹底した。 18年と19年の事故を教訓に、安全対策として打ち上げ場所付近の立ち入りを規制する保安距離を200メートル確保したほか、一本の花火筒に2つ以上の花火玉を入れて打つ「重ね玉」を取り止めて臨んだ。 待ってましたの観客でごった返す 会場周辺は開催を待ちわびたファンで早々に混雑し、ごった返した。午後3時過ぎにはJR土浦駅から会場に向かう人たちで、桜川左岸の堤防道路に長い行列ができた。屋台の仕込みが始まり、堤防下の河川敷では早々にブルーシートが広げられ、場所取りが始まった。 土浦大橋から学園大橋の間の桜川左岸は桟敷席以外も有料の椅子席となり、堤防道路との間は黒い遮へい幕で花火の打ち上げも見られないようシャットアウト、立ち止まらないよう警備員らが早い時間から交通整理に張り付いた。実行委員会は約2000人で誘導など行う警備体制を敷いた。 生田町のスーパーでは仮設トイレを設け、駐車場を開放した。駐車場にシートを敷いて見物する家族連れなどでごった返した。桟敷席対岸の下高津側では市の用意した駐車場が早々に埋まり、1台3000円が相場の民間の駐車場前にも車列が出来た。 あまりの人出と警備誘導にあきらめ、見通しのきく道路の路肩に座り込んで花火見物する人たちも少なくなかった。11月の花火に「やっぱり寒い。10月開催に戻してほしい」との声も聞かれた。 打ち上げが始まると観客の一部は入場が制限されていた河川敷に入ったが、収拾がつかない状況には至らず、草むらから整然と花火を見上げ、歓声をあげた。ほかに目立ったトラブルもなく大会は終了。軽快なビートの躍動と共に繰り広げられる花火のロックンロールで5年ぶりのフィナーレを迎えた。

待ちわびた土浦の花火まで あと19日《見上げてごらん!》7

【コラム・小泉裕司】今回のコラムは、土浦全国花火競技大会実行委員会への取材を元に、煙火業者と出品作品の両面から、今大会(11月5日午後5時30分~8時)の注目ポイントにアプローチしてみた。 花火愛好者が今、最も注目する業者といえば、8月27日の全国花火競技大会(秋田県大仙市大曲)の部門別で優勝2、優秀賞1と圧倒的な成績で内閣総理大臣賞を受賞したマルゴー(山梨県)だろう。キレのよい色使いが持ち味。土浦では、2007年(第76回)、スターマインの部で優勝、同時に内閣総理大臣賞を受賞している。 土浦と大曲の両大会で同大臣賞を受賞したのは、マルゴーのほか、紅屋青木煙火店(長野県)、野村花火工業、山﨑煙火製造所(いずれも茨城県)の4社のみ。このビッグ4は、各競技大会で常に上位に名を連ねており、今大会もファンの期待を超える作品を打ち上げてくれるに違いない。 今年2月11日、霞ケ浦湖畔で開催した「2大花火競技大会『大曲』『土浦』夢の競演」(土浦全国花火競技大会実行委員会 YouTubeチャンネル)に、雪深い大曲から遠路駆けつけてくれた大曲の小松煙火、北日本花火興業、和火屋、そして10数年ぶりに出品する響屋大曲煙火の4社は、いずれも過去、土浦で部門優勝している強豪。こちらも要チェックだ。 ただし、煙火業者によっては、作品の製作担当がいつも同じとは限らず、社内コンペや順番で割り振られるケースもあるので、企業ブランドや過去の成績という先入観は、いったん脇に置いて、55社各社の得意玉を鑑賞してほしい。 土浦は種目別オープン選手権 花火競技は、10号玉の部、創造花火の部、スターマインの部の3部門に分かれる。10号玉の審査は、開花して4~8秒間の間に、形や色のコントラストの鮮明さなどを見極めて採点するのだが、「四重芯菊(よえしんぎく)」や「五重芯菊(いつえしんぎく)」ともなると、芯の数を数えているうちに花火は消え失せてしまう。 特に五重芯は、私たちの動体視力の限界を超えたと言われているが、今大会45玉のうち史上初となる6玉がエントリーされている。過去4大会連続で五重芯が優勝していることからも、この中から優勝作品が選ばれる可能性は高いが、正円で明瞭な色彩の四重芯であれば高得点で優勝争いに加わることができるかもしれない。 創造花火は、その名のとおり、花火のクリエーティブさを競う競技種目。前もって作品タイトルとコメントを見ておくことで、感性豊かな製作者の人柄を想像しながら、作品をより深く味わうことができる。5号玉(直径15センチ)7発の組み合わせで表現する。 今大会は、四季折々の草花や輝く宝石を表現する作品が多いようだが、はやりのパステルカラーをこれでもかというほど仕込んだ花火が主流ではないかと、想像を膨らませている。 以前は速射連発と言われたスターマインは、時間制限2分30秒、4号玉(直径12センチ)から2.5号玉(同7.5センチ)400発以内と、玉数の多さからも土浦はスターマイン日本一を決める大会と言われている。 全作品音楽付は例年と変わらないが、英文字やカタカナだらけの曲名リスト、タイトルやコメントを読んでも、ストーリーは具体化しない。スターマインは、むしろ余計な先入観を排除した白紙の状態で、各社の「持ち味」を堪能するに限る。 「気象神社に行ってきました」。土浦全国花火競技大会実行委員会本部長を兼ねる土浦市産業経済部長の佐藤亨氏は、休暇を取ってJR高円寺駅近くの「高円寺氷川神社」境内に鎮座する「気象神社」を参拝。無事の開催祈願のお札とお守りを受けてきたとのこと。 日本で唯一のお天気にご利益のある神社として実績があるそうで、必ずや願いがかなうことを信じて、あと19日。本日はこの辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

待ちわびた土浦の花火まで あと19日《見上げてごらん!》7

【コラム・小泉裕司】今回のコラムは、土浦全国花火競技大会実行委員会への取材を元に、煙火業者と出品作品の両面から、今大会(11月5日午後5時30分~8時)の注目ポイントにアプローチしてみた。 花火愛好者が今、最も注目する業者といえば、8月27日の全国花火競技大会(秋田県大仙市大曲)の部門別で優勝2、優秀賞1と圧倒的な成績で内閣総理大臣賞を受賞したマルゴー(山梨県)だろう。キレのよい色使いが持ち味。土浦では、2007年(第76回)、スターマインの部で優勝、同時に内閣総理大臣賞を受賞している。 土浦と大曲の両大会で同大臣賞を受賞したのは、マルゴーのほか、紅屋青木煙火店(長野県)、野村花火工業、山﨑煙火製造所(いずれも茨城県)の4社のみ。このビッグ4は、各競技大会で常に上位に名を連ねており、今大会もファンの期待を超える作品を打ち上げてくれるに違いない。 今年2月11日、霞ケ浦湖畔で開催した「2大花火競技大会『大曲』『土浦』夢の競演」(土浦全国花火競技大会実行委員会 YouTubeチャンネル)に、雪深い大曲から遠路駆けつけてくれた大曲の小松煙火、北日本花火興業、和火屋、そして10数年ぶりに出品する響屋大曲煙火の4社は、いずれも過去、土浦で部門優勝している強豪。こちらも要チェックだ。 ただし、煙火業者によっては、作品の製作担当がいつも同じとは限らず、社内コンペや順番で割り振られるケースもあるので、企業ブランドや過去の成績という先入観は、いったん脇に置いて、55社各社の得意玉を鑑賞してほしい。 土浦は種目別オープン選手権 花火競技は、10号玉の部、創造花火の部、スターマインの部の3部門に分かれる。10号玉の審査は、開花して4~8秒間の間に、形や色のコントラストの鮮明さなどを見極めて採点するのだが、「四重芯菊(よえしんぎく)」や「五重芯菊(いつえしんぎく)」ともなると、芯の数を数えているうちに花火は消え失せてしまう。 特に五重芯は、私たちの動体視力の限界を超えたと言われているが、今大会45玉のうち史上初となる6玉がエントリーされている。過去4大会連続で五重芯が優勝していることからも、この中から優勝作品が選ばれる可能性は高いが、正円で明瞭な色彩の四重芯であれば高得点で優勝争いに加わることができるかもしれない。 創造花火は、その名のとおり、花火のクリエーティブさを競う競技種目。前もって作品タイトルとコメントを見ておくことで、感性豊かな製作者の人柄を想像しながら、作品をより深く味わうことができる。5号玉(直径15センチ)7発の組み合わせで表現する。 今大会は、四季折々の草花や輝く宝石を表現する作品が多いようだが、はやりのパステルカラーをこれでもかというほど仕込んだ花火が主流ではないかと、想像を膨らませている。 以前は速射連発と言われたスターマインは、時間制限2分30秒、4号玉(直径12センチ)から2.5号玉(同7.5センチ)400発以内と、玉数の多さからも土浦はスターマイン日本一を決める大会と言われている。 全作品音楽付は例年と変わらないが、英文字やカタカナだらけの曲名リスト、タイトルやコメントを読んでも、ストーリーは具体化しない。スターマインは、むしろ余計な先入観を排除した白紙の状態で、各社の「持ち味」を堪能するに限る。 「気象神社に行ってきました」。土浦全国花火競技大会実行委員会本部長を兼ねる土浦市産業経済部長の佐藤亨氏は、休暇を取ってJR高円寺駅近くの「高円寺氷川神社」境内に鎮座する「気象神社」を参拝。無事の開催祈願のお札とお守りを受けてきたとのこと。 日本で唯一のお天気にご利益のある神社として実績があるそうで、必ずや願いがかなうことを信じて、あと19日。本日はこの辺で「打ち止めー」。「ドン ドーン!」。(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

土浦の花火から消える「風物詩」 《吾妻カガミ》143

【コラム・坂本栄】11月5日、桜川畔の「土浦の花火」大会が3年ぶりに開かれることになりました。コロナ禍がまだ残っていることもあり、実行委員長の安藤土浦市長はどうするか迷ったようですが、知恵を絞ったコロナ対策を立て、開催を決めました。そのメニューを聞くと、緊張感が伝わってきます。 河川敷の席取りがなくなる 人が密になるのを避けるため桟敷席の密度を減らすとか、観覧区画の入口で体温を計るとか、おしゃべりを減らすため飲酒はできるだけ控えてもらうとか、いろいろな手を組み合わせるそうです。具体的な対策は、記事「3年ぶり 11月5日開催決定 土浦全国花火競技大会」(9月5日掲載)をご覧ください。 記事には載っていませんが、花火の「風物詩」がいくつか消えるのは残念です。その一つは、有料桟敷席手前の河川敷に向かい、できるだけよい場所を押さえようと、陣取りに走る光景がなくなることです。これまで、パワフルな場所取りの話を聞くと、花火が近づいたことを感じたものですが…。 早い者勝ちだった河川敷の一画は、今年は有料の椅子席になります。密をつくらないようにする対策ですが、椅子席新設で収入を増やす狙いもあるようです。市も考えるものです。 市の大会補助は以前と同じ 土浦市花火対策室長の菊田雄彦さんによると、今年の大会予算は2億2000万円(収入は有料席販売が中心)。市財政からの補助は8500万円、警備要員(警察官と市職員は除く)は450人と、いずれも従来とほぼ同じということ。運営方法はいろいろ変えても、補助金と警備体制は維持されます。 無くなる「風物詩」のもう一つは、桟敷席券の販売風景が消えたことです。以前は、販売日の早朝、霞ケ浦総合公園内の体育館入口に設けられた販売所には、長蛇の列ができました。私は散歩を兼ねてその列を見に行き、桟敷席への思いを聞くのが楽しみでした。これも密を避けるという理由で、今はやりのネット販売に切り替わりました。 土手の露店は2割減の800? 無くなりはしないものの、抑えられる「風物詩」もあります。催事を盛り上げる露店です。花火の帰り、値引きされた焼きソバや焼き鳥を買うのは楽しいものですが、これも密を減らすために、従来の約1000店から約800店になる可能性もあります。 菊田室長によると、土浦橋から桟敷席に向かう土手は露店ゼロになるそうです。桜の古木が連なるアクセス路のお祭りムードは抑えられます。打上げ区画前の桟敷席に向かうとき、気分を高めてくれる露店チェックができなくなるのは残念です。 コロナ禍はいろいろなことを変えました。仕事もパソコンを使い遠隔でやるのが当たり前になりました。花火大会の運営も変わり、「風物詩」が無くなるのは仕方ありません。災い転じて福となす。コロナ禍によって花火大会も洗練された形になります。(経済ジャーナリスト) <参考>花火大会の安全対策については、コラム116「また中止された土浦の花火を考える」(2021年9月20日)で、打上げ場所の話などを取り上げました。

土浦の花火から消える「風物詩」 《吾妻カガミ》143

【コラム・坂本栄】11月5日、桜川畔の「土浦の花火」大会が3年ぶりに開かれることになりました。コロナ禍がまだ残っていることもあり、実行委員長の安藤土浦市長はどうするか迷ったようですが、知恵を絞ったコロナ対策を立て、開催を決めました。そのメニューを聞くと、緊張感が伝わってきます。 河川敷の席取りがなくなる 人が密になるのを避けるため桟敷席の密度を減らすとか、観覧区画の入口で体温を計るとか、おしゃべりを減らすため飲酒はできるだけ控えてもらうとか、いろいろな手を組み合わせるそうです。具体的な対策は、記事「3年ぶり 11月5日開催決定 土浦全国花火競技大会」(9月5日掲載)をご覧ください。 記事には載っていませんが、花火の「風物詩」がいくつか消えるのは残念です。その一つは、有料桟敷席手前の河川敷に向かい、できるだけよい場所を押さえようと、陣取りに走る光景がなくなることです。これまで、パワフルな場所取りの話を聞くと、花火が近づいたことを感じたものですが…。 早い者勝ちだった河川敷の一画は、今年は有料の椅子席になります。密をつくらないようにする対策ですが、椅子席新設で収入を増やす狙いもあるようです。市も考えるものです。 市の大会補助は以前と同じ 土浦市花火対策室長の菊田雄彦さんによると、今年の大会予算は2億2000万円(収入は有料席販売が中心)。市財政からの補助は8500万円、警備要員(警察官と市職員は除く)は450人と、いずれも従来とほぼ同じということ。運営方法はいろいろ変えても、補助金と警備体制は維持されます。 無くなる「風物詩」のもう一つは、桟敷席券の販売風景が消えたことです。以前は、販売日の早朝、霞ケ浦総合公園内の体育館入口に設けられた販売所には、長蛇の列ができました。私は散歩を兼ねてその列を見に行き、桟敷席への思いを聞くのが楽しみでした。これも密を避けるという理由で、今はやりのネット販売に切り替わりました。 土手の露店は2割減の800? 無くなりはしないものの、抑えられる「風物詩」もあります。催事を盛り上げる露店です。花火の帰り、値引きされた焼きソバや焼き鳥を買うのは楽しいものですが、これも密を減らすために、従来の約1000店から約800店になる可能性もあります。 菊田室長によると、土浦橋から桟敷席に向かう土手は露店ゼロになるそうです。桜の古木が連なるアクセス路のお祭りムードは抑えられます。打上げ区画前の桟敷席に向かうとき、気分を高めてくれる露店チェックができなくなるのは残念です。 コロナ禍はいろいろなことを変えました。仕事もパソコンを使い遠隔でやるのが当たり前になりました。花火大会の運営も変わり、「風物詩」が無くなるのは仕方ありません。災い転じて福となす。コロナ禍によって花火大会も洗練された形になります。(経済ジャーナリスト) <参考>花火大会の安全対策については、コラム116「また中止された土浦の花火を考える」(2021年9月20日)で、打上げ場所の話などを取り上げました。

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