金曜日, 11月 22, 2024
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つくば市の小中学生の高校進学を考える会 -検索結果

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来年の高校受験 100点アップのこつ《竹林亭日乗》22

【コラム・片岡英明】現在、中学校では志望県立高について三者面談が行われている。しかし、志望校を決めても学習はなかなか進まないものだ。そこで今回は、今年の入試問題を解説して受験生の勉強を応援したい。 2024年県立入試 24年は、受験者1万6395人、平均287.52点。科目平均は、国語66.71点、社会57.55点、数学57.57点、理科55.61点、英語50.08点。最後に発表のあった20年の標準偏差99.0を参考に標準偏差を100とする。受験偏差値は平均を50とし、偏差値1は標準偏差の1/10なので、10点である。 500点満点で、偏差値50が287点、偏差値60が387点、偏差値40が187点となる。一般的に40~60が中間層と言われ、全体の2/3を占める。偏差値には±5の誤差があるから、偏差値1点に悩む必要はない。280点の生徒はすでに330点を取る可能性があるのだ。 入試問題の特徴 茨城県は18年から、新指導要領を先取りし記述を増やした。すると、21年に「採点ミス」が発生し、県は教員1000人以上を処分した。そこで、22年から採点ミス防止のため一転して記号問題になり、24年は3年目。 大学共通テストも長文化しているが、茨城の高校入試は長文化と記号化の2つの特徴がある。最近の入試問題は長文化だけでなく図表やグラフも多い。保護者の時代と違って意地悪をしているようにも見えるが、そうではない。問題文の読みを、従来の読解から情報読みへ切り替えるよう求めている。 つまり、なぜ著者がこう書いたかという「読解」よりも、設問に関係する部分を、本文や図表からすばやく探す=「情報読み」で答えるのだ。問題を解くとは問題作成者の意図を読み取ることなので、問いの言葉が重要である。選択肢を読むとなぜか混乱するという人は、選択肢を分析し、問題作成者の工夫を見てほしい。 問題のポイント 例えば、国語で選択肢を4つ作るには、本文にA、B、2つの要素を持つ部分を探し、次のように選択肢を作る。①A〇B〇、②A〇B✕、③A✕ B〇、④A✕ B✕。受験者側はこの選択肢を2つの要素に分離し、本文に沿って正誤を判断する。その判断は自分の思いでなく、あくまでも本文による点が鍵だ。 英語は記号化した22年から難化し、24年の平均は50点台と、英語が一番低い。これは問題6の生徒を悩ませる不要語入りの並べ替え問題のためで、ここは改善が必要だ。 さて、英語は長文が山なので、長文問題の5を例に説明する。毎年、この本文の展開は同じ形で、「以前の状況-出来事-自分の変化」という感想文の形。まず、この展開を押さえる。 設問に関係する部分の探し方は、①段落に番号をつける、②固有名詞と数字をマークしながらあっさり読む、③設問に関係する部分を、マークを目印に見つける―ことが大事だ。 頑張れ!受験生 情報読みだけでは疲れてしまい、学習は深まらない。授業や自主学習では「なぜ、著者はこう書いたか」と時々立ち止まり、いわゆる「著者との対話」の時間を持ってほしい。 普段は著者の意図を深める読解を行い、試験では長文化と記号化の特徴をふまえ、今回のコラムのヒントを参考に情報読みを行えば、3カ月で100点アップは可能である。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

受験競争さらに激化も県「定員増必要ない」 県立高校不足【アングルつくば市長選’24】中

今つくば市の最大の課題の一つが、県立高校が不足している問題だ。人口が増え、子育て世帯が増加し、義務教育の小中学校などは市内のTX沿線地区に新たに7校が開校したにもかかわらず、市内の全日制県立高校の定員は中学卒業者数の6人に1人の枠しかない。市民団体「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」(片岡英明代表)の調査によると、つくばの募集枠は水戸市の3分の1だ。 つくばに県立高校が不足している問題は、市民団体が2021年の市議会9月議会に出した請願をきっかけに顕在化した。以来3年間、市民団体と市選出県議、市などが一丸となって県に対し要望活動を続けてきた。にもかかわらず高校受験を控える中学3年生の受験環境は、3年前よりますます激化している。 これまでの県に対する要望活動の成果として、つくばサイエンス高校の定員が2学級80人増加、牛久栄進高校が1学級40人増加した。一方で、旧制一高に付属中が新設されたことで土浦一高の定員が2学級80人減、水海道一高が1学級40人減、下妻一高が1学級40人減となった。片や県の試算によると、つくば市の中学生は2024年から28年までに254人増え、24年から30年までに380人増える。 前提の算定方法を変更 来年度の県立高校募集定員の発表を前に、県教育庁は今月17日「県立高校の今後の募集学級数・募集定員の見込みを試算」と題する資料を明らかにした。その中で「中学校卒業者数の増加がみられるつくばエリアの状況」という項目を設け、「現時点では定員増が必要との判断には至ってない」とする方針を示した。 同資料によると、つくば市からの主な通学圏は、つくば市内の県立高校のほか、概ね片道1時間未満で通学ができる周辺市の県立高校となっている。このためつくば市の中学校卒業者数増加については、県内を12エリアに分けた「つくばTX沿線エリア」(つくば、つくばみらい、守谷、常総市、牛久市の一部など)とは別に、隣接している土浦市などの「県南北部エリア」の一部、下妻市などの「県西北東部エリア」の一部、牛久市などの「県南南部エリア」の一部を含めた7市17校(筑波、竹園、つくばサイエンス、並木中等、石下紫峰、水海道一、水海道二、伊奈、守谷、土浦一、土浦二、土浦三、土浦工業、牛久、牛久栄進、下妻一、下妻二)の入学状況を踏まえて検討するとした、 さらに、現在の推計では7市の中学校卒業者数が最大7043人となるのは2028年で、24年から180人増加する見込みだが。今年度の筑波高校、つくばサイエンス高校の欠員数の合計は194人で、中学校卒業者数だけで比較すれば現行の募集定員で足りる。魅力づくりにより筑波高とつくばサイエンス高の欠員が解消していくことを前提として28年の対象17校の入学見込みを推計したところ、2024年の募集定員の4120人に収まっている、その後は7市の中学卒業者数は減少が見込まれていることから、現時点では定員増が必要ではないーとの判断だ。背景には県全体で中学生が減少し続けていることがある。 県立高校の適正配置を考える前提として県は、県内を12エリアに分け、エリアごとに検討してきた。今回示された判断は、これまで前提としてきた県内12エリアとは別に、隣接市を含めた7市という新たなエリアを設けており、前提条件を変えるものだ。 これについて県教育庁高校教育改革推進室は「(今回示した判断は)12エリアを原則としベースとするが、エリアの実情を踏まえたもの」だとする。 校舎増築費負担提案に「費用の問題ではない」 つくば市が毎年行っている県に対する来年度予算編成要望が今年は9月5日に行われた。つくば市長は自身のSNSで、9月の予算要望の際「つくば市が既存の県立高校の校舎増築分の費用を市で負担することを提案した。例えば竹園高校を1学年2学級80名分増やすと、3学年で6学級分の建設費をつくば市で持つ」などと発信した。 市の新たな提案に対して県は「提案はあったが、そもそも費用の問題ではなく、現時点で実質的に定員増は必要ないという判断」だと、市の提案を一蹴する。 「事態は深刻に」 市民団体の片岡代表は「(県立高校が不足していることから)つくばでは県立中学を受験するために小学3、4年から塾に行くという状況になっており、その状況が今、土浦市などにも広がっている。事態は深刻になっている」と数字を示して指摘する。「この状況は社会的につくられたもの。個人の努力の問題ではない。社会が、県が、対応しなくてはならない」と話す。 県立高校が不足している問題をどうすべきなのか。▽市長選に立候補している五十嵐立青氏は「既存校の定員増を県に要望し、増設分の校舎の建設費は市で負担する提案をした。県立・私立高の誘致と県立高の定員増に向けた働き掛けをしていく」とする。▽星田弘司氏は「短期的には県立高校の募集定員増を県と交渉し、公立高校の誘致、県立高校の新設、市立高校の設置検討などあらゆる可能性を排除せずしっかり取り組む」とする。(鈴木宏子) 県立高校不足問題をめぐる最近の動き2021年4月 県立土浦一高に付属中併設、定員減2021年10月 市民団体「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」が市議会に出した県立高校新設や既存校の定員増などを求める意見書採択を求める請願が全会一致で採択2022年4月 水海道一高、下妻一高に付属中新設、定員減2022年12月 大井川和彦知事が県総合教育会議で「つくば市立高校をつくってはどうか」と発言2022年12月 つくば市などへの県立高校の新設や既存校の定員増などを求める県議会請願が継続審査に2023年4月 つくばサイエンス高を2学級増2024年4月 牛久栄進高を1学級増、筑波高校に進学対応コースを1学級新設2024年4月 つくば市が高校生に通学費補助など開始2025年4月 つくばサイエンス高に普通科を3学級新設

レスリングの大沢友博さんを悼む《竹林亭日乗》21

【コラム・片岡英明】9月12日、霞ケ浦高校でレスリング部の監督をしていた大沢友博さんが69歳で亡くなった。日本レスリング協会はすぐに「高校レスリング界に不滅の金字塔~大沢友博氏が死去」とHPに掲載。告別式には教え子の樋口黎さん(2014年卒)のパリでの金メダルを胸にかけた写真が飾られた。大沢さんの努力がパリまで届いたなと感じた。 世間では「高校レスリング界の名匠」(レスリング協会のHP)と称されていたが、今回コラムでは大沢友博さんを悼むとともに、彼のレスリング部での出発点を紹介し、若手教師を励ましたい。 体育館の片隅のマット2枚から 大沢さんは1977年、霞ケ浦高校の教諭となった。私も同期で、共に定年まで勤めた。1980年の最初の卒業生は、彼が3組、私は4組の担任。テストの採点をしながら、遅くまで職員室で語り合った。 最初は柔道部顧問だったが、彼はすぐにレスリング部づくりを始めた。八丈島出身で、東京の正則高校から日本体育大学に進んだ彼は、八丈島のレスリング道場で体験した厳しさの中にある楽しさを、部活を通して生徒に伝えようとしていた。 最初の年の夏前には、体育館の隅に体操用マット2枚を広げ、担任に「この生徒を私が面倒みます」と、3人ほど集めて練習を開始。すると部員たちが大きく成長し、大沢さんの指導力を皆が認めた。 部活の伝統校などでは、すでに道があるところを歩む教師が多い。また、部活の顧問から練習条件が悪いと「これでは練習できない」との愚痴も聞く。しかし、彼は部活がないところで、体育館のマット2枚からレスリング部を始め、部員も一人ひとりに声をかけ、自分で集めた。 「やってみなはれ!」の精神 現在、文科省は探求心や創造性を生徒・教師に求めている。創造性を求めるとは「やってみなはれ!」の精神で教師のチャレンジを学校が受けとめるということだ。それならば、愚痴のひとつも言いたい学校の中でも、今こそ教師自身の創造性を発揮するときではないか。 多忙な毎日と管理疲れを癒すには、問いかけに始まる対話を通して生徒の願いをつかむことにある。大沢さんのように、どこか一点からでもチャレンジし、目の前の授業や部活で個性的な実践に取り組んでほしい。生徒・保護者はそれを待っている。「やってみなはれ!」 2年目には、シューズやウエアも整え、レスリングのマットシートも用意された。その後、武道館ができて旧柔道場がレスリング道場となった。その古い木造の道場から大沢レスリング部は10年目の1986年インターハイで優勝した。 悪条件の中でも、いつも生徒と汗を流し、応援する教職員を増やした。そうして、レスリングの自分の原点を次の世代につなげようと、体育館の片隅のマット2枚からパリの金メダルまで突き抜けたのだ。 葬儀で息子さんが「レスリングの生徒はどこかいいところがあるんだよ」との言葉を紹介した。その言葉には、生徒へのぬくもりや可能性への深い信頼が現れているような気がした。大沢友博さん、ありがとう。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

つくば・土浦地区トップ2高の学級増を《竹林亭日乗》20

【コラム・片岡英明】前回(8月13日掲載)は、今年の土浦市立8中学から土浦一高への入学者が18人に激減したと書いた。つくば市の高校受験も、牛久栄進高の学級増や市内のサイエンス高の普通科併設などで改善はしたものの、受験者の増加に追い付かず、状況はさらに深刻といえる。 まず、竹園高校を例に解決策を考えたい。つくば市内中学生の県立高校への入学者を、上位4校について見ると、以下のようになる。      22年  23年  24年竹園高校 222   200   185牛久栄進 127   129   150土浦一高  92   88   70(募集学級 6    6    4)土浦二高  89   113   124 土浦一高の募集減のため、市外からの竹園高への入学者が増え、今年の市内入学者は3年前に比べ37人減った。今年から1学級増えた牛久栄進高へは前年より21人増えた。募集学級が減った土浦一高へは3年前より22人減り、土浦二高へは35人増えた。結果、つくば市からトップ2高(土浦一高と竹園高)への入学者は59人減った。 竹園高への市外入学増と土浦一高の定員削減の両挟みに遭い、進学の悩みが土浦一高・竹園高受験者だけでなく、中学生全体に広がっていると言える。この推移を過去5年について見ると以下のようになる。      20年 21年 22年 23年 24年竹園高校 185  188  222  200  185牛久栄進 129  127  127  129  150土浦一高 109  119  92  88  70(募集学級  8   7   ...

土浦一高は地元中学生に遠い存在?《竹林亭日乗》19

【コラム・片岡英明】土浦の中学生は市内に全日制県立高校が5校あり、高校受験には恵まれていた。それが、土浦一高の付属中設置以降大きく変わった。今回はその現状と受験生への応援策を考えたい。ただし、附属中設置の是非については論じない。 2024年の高校受験では、土浦市立中学8校の卒業生1103人のうち、426人(全卒業生の38.6%)が市内の5県立高校に入学。その人数と比率は、つくば市の市立中卒業生2174人が市内の県立高3校に入った人数302人(同13.9%)に比べると、土浦の比率はつくばの約3倍になる。 土浦の中卒生が進学した県立高を多い順に見ると、①土浦三高115人、②土浦湖北110人、③土浦工業99人、④土浦二高84人、⑤石岡一高・二高各35人、⑥土浦一高(定時)28人、⑦牛久栄進25人、⑧土浦一高18人、⑨竹園高16人―となる。 土浦一高は20年まで8学級を募集していたが、附属中学設置に伴い、21年には7学級、22年、23年には6学級になり、24年からは4学級に減った。地域の伝統校として学習面で成果を上げていた土浦一高は、今や土浦の中学生にとってはランク8位の遠い存在となった。 県は近年、地域の伝統校の定員を削減し、受験生を悩ませている。23年で見ると、土浦の中卒生の土浦一高入学はたった37名だった。 そこで我々は、24年の高校募集を4学級にすると、地元土浦からの入学者が20名ぐらいになると心配し、6学級体制を維持するよう県に求めた。しかし、付属中を併設しても中学用の校舎は建てないとの理由で、中学+高校=24学級体制は変えないとして、高校は4学級に削減された。 上の3パラグラフで示したように、今年、土浦の市立中から土浦一高に進んだ生徒が18人とは、ある意味ショックである。 土浦在住者の高校受験の悩み 土浦一高に入学する市町村別出身者(24年)は、つくば70人、牛久27人、土浦18人、かすみがうら11人、取手8人、阿見・守谷各6人―などとなっている。高校4学級移行を受け、土浦の受験生は土浦一高を敬遠し、牛久よりも入学数が少なかった。県は、土浦の受験生の悩みを汲み取ってほしい。 24年、土浦一高附属中Ⅰ期生80人が内部進学した。土浦一高への高入生に附属中からの内進生を加えると、つくばが高入生70人+内進生29人=99人、牛久が同27人+同10人=37人、土浦が同18人+同26人=44人と、土浦は牛久よりも多い。 土浦一高入学後3年間の学習で十分間に合うのに、土浦の中学生には定員が削減された土浦一高を避ける傾向が生まれているのだろうか? 受験生は伝統校の学びをもっと信頼してほしい。 しかし、「高校からでも大丈夫」との励ましも、土浦一高が内進生に焦点を当てた教育をするならば、高入生の学びは不安になる。今後、①高校を6学級に戻す、②附属中校舎を建て、教育環境を改善する、③入学後は内進生・高入生全員に青春・学び・進路に配慮した教育をする―ことを検討してほしい。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

つくばサイエンス高校訪問記《竹林亭日乗》18

【コラム・片岡英明】県立つくばサイエンス高校はつくば市内の生徒割合が近年増加している。来年からの普通科設置で多くの生徒の受験対象校となり、地元での存在価値が問われる高校となったといえる。 同校のつくば市内の生徒割合は以下の通りである。 年  度 2020 2021 2022 2023 2024定  員  160  160  160  240  240入  学  157  150  134  88  77つくば市  76  80  73  53  53割  合 48.4 53.3 54.4 60.2 68.3 私たちは、5月23日、それから6月14日と27日、サイエンス高を訪問し、先生方と懇談した。今回は、この懇談を通して感じた同高校の可能性や魅力について考えたい。 サイエンス高の良さと課題 訪問前は、パンフレットから硬いイメージを持っていた。まず、私たちは昨年1期生の88人がどう学び、何人が2年生に進級したかに注目した。受験者全員合格なので、多様な生徒が入学し、教育的な苦労を想像していたからだ。 しかし、2年の在籍者は84人。退学や進路変更者も少なく、生徒がそれぞれ楽しく学び、教師と生徒の対話、生徒同士の語り合いの場があることが分かった。全体的として、生徒をていねいに教えていた。少人数の学級が功を奏し、入学後の生徒の満足度も高いことが分った。 このような入学後の生徒たちの学ぶ姿を、ぜひ地域へ発信してほしいと思う。 パンフレットなどでは受験生に高い意欲を求めているので、それが受験減につながるのではないかと少し心配していた。しかし、高いハードルを越えて、2年間、70~80人の科学技術に意欲のあるコアな生徒が入学した。これは今後の土台になる新設高校の準備期間を含めた成果といえる。 今後、学校全体の魅力をハードからソフトへ、コアからその周辺に広げる視点を持てば、科学技術科120人の定員確保は2025年度入試からでも可能であると思う。気になる点は、科学技術科は当初から週34時間(週4回7時間)設定だが、普通科はどのような教育課程なのかである。 2学科制発足の学校案内では「4年制大学進学重視単位制高校」と高らかにうたっている。オープンスクールでも、この具体的な説明が要のひとつとなる。 オープンスクールで魅力発信を 懇談では、新設の普通科も週34時間体制との説明を受けた。これは週31時間・55分授業の牛久栄進校と授業時間で遜色ない。それどころか、授業を5分伸ばすよりも1週間の英数国などの授業数を増やした方が学習効果は上がる。生徒も教師も大変だが、地域の声に応えようとするサイエンス高の努力に期待したい。 サイエンス高の魅力を上げると、①2学科制の幅広い学びある、②全学年がサイエンス高校生で学校が一新、③広いキャンパスでの充実した教育施設の中、楽しい友との出会いや共に進路を考える時間がある―ことである。 魅力ある学校づくりとは、学ぶ生徒の視点であり、地域にとって必要な学校になるということだ。成功するかどうかは、どれだけ多くの教職員が学校づくりを自分事として参画するかにある。そんな魅力ある学校づくりを見たいと思い、8月10日のオープンスクールを申し込んだ。 オープンスクールでは、生徒と教職員が共同で学校の魅力を発信してほしい。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代長)

25年入試から竹園高の募集定員増を《竹林亭日乗》17

【コラム・片岡英明】本サイトの「来年度から半分の3学級を普通科に-つくばサイエンス高」(5月24日掲載)の記事は受験生にとって朗報である。多くの方から喜びの声が上がっている。 4日後の28日、私たちの会は県に6回目の要望書を提出した。その際、①県がサイエンス高の学級編成を設置2年で見直したこと、②普通科を2学級でなく3学級確保したこと、③昨年の筑波高・牛久栄進高の学級編成発表より2カ月早く公表したこと-を評価し、その上で更なる改善を求めた。 サイエンス高校への普通科設置発表後、私たちの会員などから「竹園高の学級増が必要」「せめて1学級でも増やしてほしい」といった声が出ていた。これを踏まえ、要望書を渡した後の県教育委との懇談の場では、つくばエリアでの県立高不足の抜本的解消策のほか、当面の具体策としては2025年度入試からの竹園高の2学級増を求めた。 次の次は県立高の新設が必要 つくばエリアの県立高校定員増要求に対し、県はこれまで「つくば市内に定員割れの県立高があるので、その解消を優先したい」と応じてきた。 そのため、竹園高の学級増は「定員割れ」問題の影に隠れていたが、筑波高の進学コース設置(昨年)とサイエンス高の普通科設置(今年)が実現したことで、受験生・保護者、そして私たちの会員の関心は竹園高の定員増に向かっている。 元々、つくば市内既存校の定員割れ問題とつくばエリアの県立高定員不足問題はあまり関連がない。生徒が増えているのに、県は既存高の定員割れ解決を理由に、つくばエリアの構造的な問題(県立高校定員不足)の解決を先延ばしにしてきた。これに、近年の県立中設置に伴う土浦一高・水海道一高・下妻一高などの定員削減が加わり、受験生にとって入学枠の問題がかなり深刻になっている。 県がサイエンス高に普通科を設置することは、進学先に悩む生徒・保護者にとって好ましい対応と言える。これを契機に、竹園高の定員増(当面の策)を直ちに行い、つくばエリアの県立高新設(抜本策)への道が開けることを期待したい。 改善計画を示すべき 県の発表では、サイエンス高に普通科を設置するものの、定員は増やさない。そこで、つくば市内の県立高定員増策として、来年度入試から、竹園高の2学級増を求めたい。県は「高校改革プラン2019.2」で「エリアの生徒数に応じて募集学級数を調整する」と言っており、つくばエリアの必要学級数を算出し、改善計画を示すべきである。  私たちの試算では、県立高定員を県平均水準にするには、現状で15学級、2030年までにさらに10学級必要である。これには高校を新設しなければ対応できないが、当面の対応=竹園高学級増=は、生徒や保護者の願いである。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

次は竹園高の学級増を つくばの市民団体が要望 県立高校不足問題

つくば市などつくばエクスプレス(TX)沿線で児童生徒数が増加し県立高校の入学枠が不足している問題で、市民団体「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」(片岡英明代表)は28日、柳橋常喜県教育長宛てに、竹園高校を2学級増やし10学級とする、つくばエリアの全日制高校の定員を県平均水準まで引き上げるーなど3項目を要望した。 同会は2021年から県教育長に要望活動をしており、今回が6回目。今回初めてつくば市選出の県議5人全員を含め県議6人と、つくば市議会議長ら市議3人が同席した。 片岡代表はまず、サイエンス高の普通科設置(5月24日付)に対し「開校2年で見直したなど、柔軟な訂正力に注目したい」と普通科設置を評価した。その上で、竹園高について、中高一貫校への移行により土浦一の定員が減り、水海道一、下妻一も25年度からさらに削減されることなどから「中学生の苦労は深刻になる」と話し、「TX沿線は県立高校の不足が地域発展のボトルネックになっている面がある」などと指摘した。 さらに片岡代表は「(県立高校が不足しているため)つくばではクラスの半分以上が中学受験をする小学校もあり、小学3年生ごろから塾に通う。塾の費用は夏期講習、冬季講習などを含めると年100万円くらいかかり、教育格差が広がる」など保護者らの切実な声を紹介した。 要望書を受け取った庄司一裕県学校教育部長は「TX沿線の人口増により(高校問題を)解決しなければならないことは十分認識している。(今年4月から)牛久栄進高の学級増、筑波高の(進学コース設置など)魅力化に取り組み、来年度からはつくばサイエンス高に普通科を設置する。普通科も科学技術科もますます魅力化を図っていきたい」と述べた。竹園高の学級増要望に対しては、県高校教育課の深澤美紀代課長が「ご要望として伺いたい」などと答えるにとどまった。 懇談では県議から、定員割れを解消する方法として「大学の指定校となり推薦枠を確保してはどうか」などの提案が出た。サイエンス高に新設される普通科について、考える会から「科学技術科と普通科とで行き来(転科)できるのか」「普通科は文系も理系も大学進学を選択できるのか」などの質問が出て、県は「科学技術科は1年次に工業科目を履修するので転科はハードルが高い」「普通科は文系、理系どちらも対応できる」などと答えていた。(鈴木宏子)

来年度から半分の3学級を普通科に つくばサイエンス高

2年連続の定員割れ踏まえ 2023年度に科学技術の専科高に改編されたつくばサイエンス高校(つくば市谷田部)が、開校から2年連続で定員割れとなったのを踏まえ、県教育庁高校教育課は24日開かれた定例教育委員会(柳橋常喜教育長)で、25年度から同校に普通科を3学級(定員120人)新設すると報告した。現在6学級240人の科学技術科は、来年度から半分の3学級120人に減らす。学校全体の定数は6学級240人のまま。 新設する普通科は、文系、理系どちらも選択できる文理融合型の選択科目や、総合的な探求の時間に自分の興味を探求できる「サイエンス探求」などを用意する。同校には、電子顕微鏡や分析機器など大学レベルの機材や設備が備えられていることから、普通科でも機器や設備を生かしたサイエンス探求ができるという。一方、科学技術科は、従来のまま2年次からロボット、情報、建築、化学生物の4領域の中から選択できる。 サイエンス高はつくば工科高校を改編し、2023年度開校した。つくばエリアの中学生が増加していることを受けて、定員を2学級80人増やして240人にした。一方、初年度の入学者は、一次募集の志願者が72人(倍率0.3倍)、二次募集を含めた入学者数は88人だった。2年目の今年度はさらに減り、一次募集の志願者は68人(同0.28倍)、二次募集を含めた入学者数は77人にとどまった。初年度の23年度は152人、24年度は163人の欠員が出ていた。 2年連続の定員割れについて県教育庁高校教育課は、開校後の進学実績がまだ見えない中で中学生が志望先に同校を選びにくい、中学3年の段階で理系の進路を選ぶのは難しいとして、普通科を設置する方針を決めた。 普通科設置は10月下旬の定例教育委員会での議決を経て正式決定となる。県は昨年7月、牛久栄進高校の1学級増や筑波高校の進学アドバンスコース新設などを発表しており、今回の募集定員の変更は昨年より2カ月早い公表となる。 ミスマッチに厳しい意見 24日の教育委員会では教育委員から厳しい意見が相次いだ。教育委員の一人、市原健一元つくば市長は「前々から何度も指摘させていただいているが、つくば市はよその市町村と比べ中学生がはるかに多いのに、なぜサイエンス高校の志願者が少ないのか、片方で高校をつくってほしいという要望があり、片方でつくば工科高校をサイエンス高校にして受け皿にしようとしたがミスマッチが起こった。根本的にどこが問題なのか、ニーズをしっかり把握していなかったことになるので重く受け止めてほしい」などと指摘した。 県高校教育課の深澤美紀代課長は「(ミスマッチの)原因の一つとして、中学3年時点で理系進学を決めるのはかなり難しいという意見を中学校から聞いている。高校の特色について地域の方への広報が足りなかった部分も感じている。それぞれの高校の特色をどう伝えたらいいのか、広報のツールについてもしっかり検証していきたい」と答えた。 サイエンス高校の定員割れ問題については、市民団体「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」(片岡英明代表)が28日、県教育長宛てに要望書を提出する予定で、同校に普通科を設置するなど3項目を要望する方針だ。片岡代表は「28日に要望書を出す前に要望の一部が実現しうれしく思う。一歩ずつでも前進したことは良かった。実現してくれた関係者に感謝したい」とし、さらに「竹園高校を2学級定員増やし10学級とすること、つくばエリアの県立高校募集枠を県水準に引き上げることも、実現に向け要望したい」などと話した。(鈴木宏子)

サイエンス高をつくば市の人気校に《竹林亭日乗》16

【コラム・片岡英明】2023年に開校した「つくばサイエンス高校」の2年連続定員割れについて、問題点の指摘や批判、中には否定的な意見も聞こえてくる。しかし、県立高校不足に悩むつくばの小中学生のことを考えると、第三者的な冷たい評論では県立高問題を解決できない。 私は、県がサイエンス高の定員増(4学級→6学級)と学習指導の充実を図った点を評価している。今回は、この2つの芽と開校後2年の経験を生かし、サイエンス高がつくばの人気校になるような方策を考えたい。 受験生からのメッセージ サイエンス高は、東京都が2001年に2つの工業系都立高校を統合・新設した都立科学技術高校を参考にしている。都立科学技術高の当初定員は科学技術科35人✕6学級=210人だったが、24年度からそのうち1学級を創造理数科40人とし215人になった。このことから、学校の基本は少人数の進学型専門高といえる。江東区大島にあり、地下鉄住吉駅より徒歩8分と通学に便利だ。 つくばサイエンス高は、2020年8月の県高校改革実施プランⅠ期(第2部)に基づき、つくば工科の学科を改編して23年に開校した。その基本的な考え方の一つは「TX沿線地域の人口増加に伴う県立高等学校への大学進学ニーズの高まりに対応する」となっており、地域の声を取り入れた学習指導充実を加えた。 前身のつくば工科は、18年までは受験者が定員の160人を越え、19・20年は入学157人とほぼ定員を確保した。しかし、改革実施プラン発表後の21年は150人、サイエンス高設置前年の22年は134人と減少した。 つくば工科は資格を取り就職したいという地元の生徒には人気のある学校であった。それが、「研究者や高度技術者を育て、起業家精神を持つ生徒」の育成を目標とする理系の進学型専門高校となり、受験生に不安が生まれた。この結果、定員を240人にした23年度(1期生)は前年の134人から88人に減り、24年度(2期生)は77人に減少した(充足率32%)。 つくばサイエンス高は、つくば市で最も子どもが増えている谷田部地区にある唯一の県立高校であり、地域の期待も高い。それなのに、定員を増やした新設高校で大きな定員割れが起きている。ここから、軌道修正を求める受験生からのメッセージを読み取りたい。 理系進学科+普通科の2学科制 以下、現在のサイエンス高が持っている2つの芽を生かし、地元の人気校になる案を示したい。 (1)科学技術科を少人数学級にして、理系志向の生徒に充実した教育を行う。具体的には30人✕4学級=120人とし、学科定員を絞る。1年次は共通とし、2年次以降は理系進学探求コースと技術を磨くマイスターコースを設け、就職希望者には工業系の資格も取らせる。 (2)絞った定員の残り分を生かし、要望が強い普通科を併設する。そこで新体制の2年間で作り上げた学習指導体制を生かす。 (3)普通科定員を5学級200人、全体定員を80人増の320人とする。但し、25年度からの定員増が難しい場合は、既存の240人定員のうち3学級120人を普通科とし、26年度から5学級とする。また、2年進級時に学科変更を認めるなど柔軟な体制をとる。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

TX沿線県立高問題 知事の答弁に希望《竹林亭日乗》15

【コラム・片岡英明】茨城県の3月議会で星田県議(つくば市区)が「TX沿線開発と今後のまちづくり」について質問。大井川知事から、TX開通後東京圏から多くの子育て世代が移住し、沿線の人口が8万4000人も増え、今後も増加が見込まれる沿線3市(守谷市、つくばみらい市、つくば市)を一体として魅力あるまちづくりを進めたい―といった趣旨の答弁があった。 TX沿線3市の現状、特に教育環境はどうなっているのだろうか? 先につくば市と守谷市の県立高への進学や通学状況を取り上げたが(23年10月10日付、24年1月12日付)、今回はつくばみらい市も含めた3市の県立高について考えたい。 県立高環境、常磐線>TX 2023年度入試時のつくばみらい市の市立中卒業者は442人。県立高への進学者は、伊奈高79、水海道一高48、守谷高36、藤代紫水高23、藤代高22、取手一高21、竹園高15、水海道二高14、牛久栄進高10、つくばサイエンス高9、竜ケ崎一高8、取手二高8―と、分散している。 人口が増えている同市にとって、通学手段や定員を含む県立高問題は市の将来に関わる重要テーマと言える。そこで、TX沿線3市の市内県立高への入学状況を見ると、以下のようになっている。      市立中卒業数 市内県立高入学  割合▽つくば    2183   318    14.6%▽守谷      642    69     10.7%▽つくばみらい  442    79     17.9%▽合計     3267   466    14.3% 3市とも市内入学は1割台にとどまっている。この数字は常磐線沿線の土浦38.4%、牛久24.0%、取手39.4%に比べると大幅に低い。そこで、TX3市を一体とした県立高入学割合を見ると、以下のようになっている。         生徒 3市県立高入学 割合▽つくば    2183   413   18.9%▽守谷      642    164   25.5%▽つくばみらい  442    139   31.4%▽合計     3267   716   21.9% 常磐線沿線3市を一体として計算した割合は、土浦45.2%、牛久54.4%、取手44.6%、3市合計で47.8%。TX沿線3市合計で21.1%だから、常磐線沿線3市の半分以下という圏内入学率である。 沿線の県立高充実=沿線発展 TX沿線、常磐線沿線のいずれに住むかで県立高校進学条件に大きな違いがある。そのため、TX沿線の中学生には高校選択・通学に大きな負荷がかかっている。今後もTX沿線の人口・子ども増が見込まれることから、このまま放っておくと一層悪化する。 県は、県立高校の定員不足がTX沿線発展のボトルネックになっている事実を見てほしい。その上で、TX沿線・つくばエリアの中学生に県平均水準の県立高枠を確保してほしい。県立高の入学枠を広げることが、TX沿線の発展、ひいては県の発展につながると考える。 3月議会での知事の答弁を聞き、知事も多くの地域住民の願いと同じ方向性を持っていることが分かった。ここにTX沿線3市の中学生の希望を認めた。そして、つくばの高校新設問題の外堀は埋まったと感じた。知事答弁の延長線には、TX沿線への県立高新設があると思うからだ。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

今年の高校入試 土浦一受験者が大幅減《竹林亭日乗》14

【コラム・片岡英明】県立高校入試が2月28日にあり、発表は3月12日である。今年は、土浦一高が4学級に募集減、牛久栄進高が1学級増、筑波高が進学コースを設置―などがあり、注目している。 報道によると、土浦一高は募集160人に対して受験が208人で、倍率が1.3倍と高くなった。昨年は募集240人に対して受験283人と1.18倍だったので、倍率は上がった。しかし、受験者は昨年より75人減っている。今回はこの受験者減について考えたい。 土浦一高に附属中学が設置される前の2020年は、320人の募集に対し受験したのは417人だから、今年の受験者は20年の半分である。募集が半分だから受験者減は当然で、その分、競合校の受験が増えたとの見方もある。 そこで、昨年のつくば在住生徒の県立高進学数を見ると、多い順に、竹園高200人、牛久栄進高129人、土浦二高113人、土浦一高88人だった。ちなみに、この6年間のこれら4校への総志願者数は以下の通りだ。 <定員> ▽2020年まで: 4校とも定員320人           合計1280人 ▽2021年:土浦一が中学設置で1学級減280人      合計1240人 ▽2022年・23年:土浦一がさらに1学級減240人    合計1200人 ▽2024年:土浦一が2学級減160人、牛久栄進が40人増 合計1160人 最近4年で、つくばからの進学者の多い県立4校の定員が120人削減されたことになる。これら定員削減に伴って総受験者数も減少している。 <4校の総受験者数> ▽2019年:募集1280人 受験者1653人 倍率1.29倍 ▽2020年:   1280     1671    1.31 ▽2021年:   1240     1512    1.22 ▽2022年:   1200     1549    1.29 ▽2023年:   1200     1496    1.25 ▽2024年:   1160     1483    1.28 4校の平均倍率は毎年1.2~1.3倍とほぼ一定で、人気校といえる。そういった高校の定員削減によって、受験者が1600人台から1400人台に減少していることがわかる。 志願先変更数からのメッセージ この受験減から、高倍率の人気校を避けざるをえない受験生の苦労を読み取ってほしい。それは、いったん出願した後の志願先変更にも表れている。 今年の4校の当初志願者数と志願先変更後の差は、竹園16人減、牛久栄進2人減、土浦二12人減(昨年1人)、土浦一14人減(昨年8人)である。 竹園は320人募集に、昨年の395人から40人増加し435人、志願先変更で16人減の419人。牛久栄進は募集が320人から360人に増加したが、受験者が449人から440人に減少。志願先変更では2名減の438人と倍率が低下し、定員増の効果が出ている。 一方、土浦一は募集が240人から160人に削減され、受験者が283人から222人と61名減少。志願先変更でさらに14名減の208人となった。土浦二は320人募集に昨年369人から430人と61人増加したが、志願先変更で12名減少し、418人。土浦一・土浦二の志願先変更数の多さから受験生の声を読み取りたい。 定員削減のために発生した高倍率を避ける動きが竹園・土浦二・土浦一で生まれ、結果として志願先変更で4校の受験者は44人減少した。土浦一には、門を狭めずに地域の伝統校として多くの受験者が集まる魅力ある学校になってほしい。 県には、人気校の定員削減が、全体として今回取り上げた4校の総受験者数の減少につながっていることを理解してほしい。また、受験生がいったん志願した高校を変更するときの心情を受けとめてほしい。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

今年の高校入試 土浦一受験者が大幅減《竹林亭日乗》14

【コラム・片岡英明】県立高校入試が2月28日にあり、発表は3月12日である。今年は、土浦一高が4学級に募集減、牛久栄進高が1学級増、筑波高が進学コースを設置―などがあり、注目している。 報道によると、土浦一高は募集160人に対して受験が208人で、倍率が1.3倍と高くなった。昨年は募集240人に対して受験283人と1.18倍だったので、倍率は上がった。しかし、受験者は昨年より75人減っている。今回はこの受験者減について考えたい。 土浦一高に附属中学が設置される前の2020年は、320人の募集に対し受験したのは417人だから、今年の受験者は20年の半分である。募集が半分だから受験者減は当然で、その分、競合校の受験が増えたとの見方もある。 そこで、昨年のつくば市在住生徒の県立高進学数を見ると、多い順に、竹園高200人、牛久栄進高129人、土浦二高113人、土浦一高88人だった。ちなみに、この6年間のこれら4校への総志願者数は以下の通りだ。 <定員>▽2020年まで: 4校とも定員320人           合計1280人▽2021年:土浦一が中学設置で1学級減280人      合計1240人▽2022年・23年:土浦一がさらに1学級減240人    合計1200人▽2024年:土浦一が2学級減160人、牛久栄進が40人増 合計1160人 最近4年で、つくばからの進学者の多い県立4校の定員が120人削減されたことになる。これら定員削減に伴って総受験者数も減少している。 <4校の総受験者数>▽2019年:募集1280人 受験者1653人 倍率1.29倍▽2020年:   1280人    1671人   1.31倍▽2021年:   1240人    1512人   1.22倍▽2022年:   1200人    1549人   1.29倍▽2023年:   1200人    1496人   1.25倍▽2024年:   1160人    1483人   1.28倍 4校の平均倍率は毎年1.2~1.3倍とほぼ一定で、人気校といえる。そういった高校の定員削減によって、受験者が1600人台から1400人台に減少していることがわかる。 志願先変更数からのメッセージ この受験減から、高倍率の人気校を避けざるをえない受験生の苦労を読み取ってほしい。それは、いったん出願した後の志願先変更にも表れている。 今年の4校の当初志願者数と志願先変更後の差は、竹園16人減、牛久栄進2人減、土浦二12人減(昨年1人)、土浦一14人減(昨年8人)である。 竹園は320人募集に、昨年の395人から40人増加し435人、志願先変更で16人減の419人。牛久栄進は募集が320人から360人に増加したが、受験者が449人から440人に減少。志願先変更では2名減の438人と倍率が低下し、定員増の効果が出ている。 一方、土浦一は募集が240人から160人に削減され、受験者が283人から222人と61名減少。志願先変更でさらに14名減の208人となった。土浦二は320人募集に昨年369人から430人と61人増加したが、志願先変更で12名減少し、418人。土浦一・土浦二の志願先変更数の多さから受験生の声を読み取りたい。 定員削減のために発生した高倍率を避ける動きが竹園・土浦二・土浦一で生まれ、結果として志願先変更で4校の受験者は44人減少した。土浦一には、門を狭めずに地域の伝統校として多くの受験者が集まる魅力ある学校になってほしい。 県には、人気校の定員削減が、全体として今回取り上げた4校の総受験者数の減少につながっていることを理解してほしい。また、受験生がいったん志願した高校を変更するときの心情を受けとめてほしい。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

県立中学入試から、学びを考える《竹林亭日乗》13

【コラム・片岡英明】1月6日の県立中入試で、定員920人に2393人が応募した。これは2023年度の県内小学6年生2万3442人の10.2%になり、10人に1人が県立中を受験したことになる。今まで受験といえば高校入試だったが、最近は小学生の中学受験が増えている。 学ぶ力をつけるのは、生徒も含め私たちの一生のテーマであり、学びたいときがスタートだ。しかし、中学受験について保護者の話を聞くと、どうしても塾が話題になる。そういった一方向の流れに疑問を感じながら、中学受験を意識した生徒の学びも応援する、一生モノの「学びの大河」を提起できないかと悩んでいる。 中学入試も貫く「読む力」 県立中試験は、①長い問題文を読む力、②複数の図表から設問と関係する部分を柔らかく読む力、③問い-意見-理由-説明の記述を意識した設問の意図を読む力―を重視している。 2024年の適性検査1は全13ページで算数と理科。問題数は29問、回答時間は45分で、90秒で1問を解く必要がある。算数の問題1は本文13行と図の次にあり、短時間で「問いは何か」「どう解くか」の2ステップで読み解く必要がある。 長文化が指摘される共通テストも、県立中の問題でも、長い文章を正確に速く読むには、文章の型を学び、先を予想する力が要となる。それには、教科書・新聞・本などを主体的に読むための基本となる「3つの読み」が有効である。 情報読み、読解、対話読み 1.情報読み=何が書いてあるか? 文章をキーワードや段落を意識して必要な情報を効率的に探す。設問と関係がある文を探すのもこれだ。 県立中入試のように図表が多い問題は、マンガを読むように、株のディーラーように、拘りのない緩い目の「並行読み」で対処する。でも、情報読みばかりでは当然疲れる。 2.読解=著者はなぜ書いたか? 情報読みで「あっれ」と立ち止まり、新聞の切り抜きをノートに貼る。そのときに、主体的な読解と学びの蓄積が始まる。効率や速さからwhyへの深化だ。 なぜ、この問題を出したか? その意図を考えると、情報読みが読解となる。問題作成者の意図を読み取る学習は、設問と関係する文を探す(正解に接近する)速さを上げ、正解率が高まる。試験で効率的に解答するにも、ゆっくりwhyと考える読解の学習段階が重要だ。 3.対話読み=「そうか?」と著者に問う。切り抜いた新聞記事をノートに貼ると、意見を書きたくなる。著者と自分との対話である。 小論ならば著者の結論や根拠に、物語では山場で主人公が行動で示した著者の思いについて、あれこれ耕す。対話読みとは、言葉がどんな場面で発せられたかを読み解き、自分の意見を著者にぶつけることだ。これを行って、初めて自分の読みが完結する。 読みから記述へ、始まりは読み 読みは、著者がどう書いたか、つまり「表現の工夫」に至る。そこから、読みが記述につながる。そして、記述は話すことに、話すことが聞くことにも広がっていく。始まりは読みである。 学びや中学受験を意識したら、以上の3つの読みを参考に、一生モノの「学びの大河」となる読む力をつけてほしい。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

県立中学入試から、学びを考える《竹林亭日乗》13

【コラム・片岡英明】1月6日の県立中入試で、定員920人に2393人が応募した。これは2023年度の県内小学6年生2万3442人の10.2%になり、10人に1人が県立中を受験したことになる。今まで受験といえば高校入試だったが、最近は小学生の中学受験が増えている。 学ぶ力をつけるのは、生徒も含め私たちの一生のテーマであり、学びたいときがスタートだ。しかし、中学受験について保護者の話を聞くと、どうしても塾が話題になる。そういった一方向の流れに疑問を感じながら、中学受験を意識した生徒の学びも応援する、一生モノの「学びの大河」を提起できないかと悩んでいる。 中学入試も貫く「読む力」 県立中試験は、①長い問題文を読む力、②複数の図表から設問と関係する部分を柔らかく読む力、③問い-意見-理由-説明の記述を意識した設問の意図を読む力―を重視している。 2024年の適性検査1は全13ページで算数と理科。問題数は29問、回答時間は45分で、90秒で1問を解く必要がある。算数の問題1は本文13行と図の次にあり、短時間で「問いは何か」「どう解くか」の2 ステップで読み解く必要がある。 長文化が指摘される共通テストも、県立中の問題でも、長い文章を正確に速く読むには、文章の型を学び、先を予想する力が要となる。それには、教科書・新聞・本などを主体的に読むための基本となる「3つの読み」が有効である。 情報読み、読解、対話読み 1.情報読み=何が書いてあるか? 文章をキーワードや段落を意識して必要な情報を効率的に探す。設問と関係がある文を探すのもこれだ。 県立中入試のように図表が多い問題は、マンガを読むように、株のディーラーように、こだわりのない緩い目の「並行読み」で対処する。でも、情報読みばかりでは当然疲れる。 2.読解=著者はなぜ書いたか? 情報読みで「あれっ」と立ち止まり、新聞の切り抜きをノートに貼る。そのときに、主体的な読解と学びの蓄積が始まる。効率や速さからwhyへの深化だ。 なぜ、この問題を出したか? その意図を考えると、情報読みが読解となる。問題作成者の意図を読み取る学習は、設問と関係する文を探す(正解に接近する)速さを上げ、正解率が高まる。試験で効率的に解答するにも、ゆっくりwhyと考える読解の学習段階が重要だ。 3.対話読み=「そうか?」と著者に問う。切り抜いた新聞記事をノートに貼ると、意見を書きたくなる。著者と自分との対話である。 小論ならば著者の結論や根拠に、物語では山場で主人公が行動で示した著者の思いについて、あれこれ耕す。対話読みとは、言葉がどんな場面で発せられたかを読み解き、自分の意見を著者にぶつけることだ。これを行って、初めて自分の読みが完結する。 読みから記述へ、始まりは読み 読みは、著者がどう書いたか、つまり「表現の工夫」に至る。そこから、読みが記述につながる。そして、記述は話すことに、話すことが聞くことにも広がっていく。始まりは読みである。 学びや中学受験を意識したら、以上の3つの読みを参考に、一生モノの「学びの大河」となる読む力をつけてほしい。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

守谷の視点から県立高問題を考える 《竹林亭日乗》12

【コラム・片岡英明】1月6日に県立中学入試、1月9日には私立高校の推薦入試が始まった。今年も、受験生と保護者・教職員を応援する立場で、高校入試問題を考えたい。 進学志向が強い守谷市民 前回コラム(23年12月12日付)では、TX沿線から水海道一高への入学者が増え、地元常総市からの入学者が減っていることを紹介した。具体的には、2023年の水海道一高への入学者が常総市37人、守谷市78人だったことから、つくばエリアとTX沿線の県立高整備の必要性を指摘した。 23年の守谷市内中学卒業生642人の進学先は、水海道一高78、守谷高校69、伊奈高校55、竹園高校40、藤代高校35、取手一高30、牛久栄進高24、下妻一高19、竜ケ崎一高16、取手二高14、水海道二高13、土浦一高7―となっており、進学先が幅広いことが分かる。 市内守谷高への進学者は11%にとどまっており、県立高不足のために市内県立高入学が15%のつくば市よりも低い。 守谷の中学生の進学状況を見ると、常総線、TX、常磐線などを利用し、各方面の県立高を受験している。受験生、保護者、教師にとっては、対象地域が広く、学校数は多いことから、受験先選定の苦労が多いと推測される。受験県立高の偏差値分布は複雑に重なり合っており、「〇高に届かないから、〇高にするか」といった目標定めが大変そうだ。 こういった受験の不安を解消するには、TX沿線に県立高を新設して、選択肢を増やすとともに、受験高校を安心して選べる高校ランキングの「一本の太い筋」が必要である。 守谷高に進学コース2学級増設を ところで、TX沿線の県立高問題を取り上げると、この地域は千葉や東京への視線が熱く、茨城は意識してないとの批判を受ける。そうだろうか? 守谷の中学生の県内県立高への進学率は65%で、残りは私学や県外に進学している。これは、同じつくばエリアの常総市(74%)、つくばみらい市(72%)よりは低いが、つくば市(58%)、土浦市(61%)、取手市(64%)、牛久市(64%)より高い。 つまり、守谷の中学生は、TXを利用し千葉や都内への進学も考えるが、全体としては県内県立高への期待が高いことがわかる。そうなると、TX沿線の県立高への期待と現在の高校不足のズレが問題になる。そこで、TX沿線の魅力をさらに向上させ、県の発展にもつながる提案を3つ示したい。 1.TX沿線に県立高を新設して入学枠を増やし、上位校から中堅校までの流れを太くする。 2.守谷の高い進学志向を踏まえ、守谷高(現在6学級)に2学級の進学コースを増設する。 3.県と守谷市が協力して、守谷高の通学利便性を高める。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

守谷の視点から県立高問題を考える《竹林亭日乗》12

【コラム・片岡英明】1月6日に県立中学入試、1月9日には私立高校の推薦入試が始まった。今年も、受験生と保護者・教職員を応援する立場で、高校入試問題を考えたい。 進学志向が強い守谷市民 前回コラム(23年12月12日付)では、TX沿線から水海道一高への入学者が増え、地元常総市からの入学者が減っていることを紹介した。具体的には、2023年の水海道一高への入学者が常総市37人、守谷市78人だったことから、つくばエリアとTX沿線の県立高整備の必要性を指摘した。 23年の守谷市内中学卒業生642人の進学先は、水海道一高78、守谷高校69、伊奈高校55、竹園高校40、藤代高校35、取手一高30、牛久栄進高24、下妻一高19、竜ケ崎一高16、取手二高14、水海道二高13、土浦一高7ーとなっており、進学先が幅広いことが分かる。 市内守谷高への進学者は11%にとどまっており、県立高不足のために市内県立高入学が15%のつくば市よりも低い。 守谷の中学生の進学状況を見ると、常総線、TX、常磐線などを利用し、各方面の県立高を受験している。受験生、保護者、教師にとっては、対象地域が広く、学校数は多いことから、受験先選定の苦労が多いと推測される。受験県立高の偏差値分布は複雑に重なり合っており、「〇高に届かないから、〇高にするか」といった目標定めが大変そうだ。 こういった受験の不安を解消するには、TX沿線に県立高を新設して、選択肢を増やすとともに、受験高校を安心して選べる高校ランキングの「一本の太い筋」が必要である。 守谷高に進学コース2学級増設を ところで、TX沿線の県立高問題を取り上げると、この地域は千葉や東京への視線が熱く、茨城は意識してないとの批判を受ける。そうだろうか? 守谷の中学生の県内県立高への進学率は65%で、残りは私学や県外に進学している。これは、同じつくばエリアの常総市(74%)、つくばみらい市(72%)よりは低いが、つくば市(58%)、土浦市(61%)、取手市(64%)、牛久市(64%)より高い。 つまり、守谷の中学生は、TXを利用し千葉や都内への進学も考えるが、全体としては県内県立高への期待が高いことがわかる。そうなると、TX沿線の県立高への期待と現在の高校不足のズレが問題になる。そこで、TX沿線の魅力をさらに向上させ、県の発展にもつながる提案を3つ示したい。 1.TX沿線に県立高を新設して入学枠を増やし、上位校から中堅校までの流れを太くする。 2.守谷の高い進学志向を踏まえ、守谷高(現在6学級)に2学級の進学コースを増設する。 3.県と守谷市が協力して、守谷高の通学利便性を高める。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

地元生徒に厳しい水海道一高受験《竹林亭日乗》11

【コラム・片岡英明】私は霞ケ浦高校で卒業生を10回送り出したが、常総市に住む6回目の卒業生からもらった年賀状に、子どもが中学受験で苦労していると書かれていたので、先日、常総市の受験事情を聞いた。 常総市は人口6万人弱。市内には、水海道一高という伝統校も含め、県立高校が3校ある。つくば市は人口25万人なのにたった3校なので、常総市の中学生の県立高受験環境は恵まれていると思っていたが、どうも違うようだ。そこで、今回はつくばエリア内の常総市の県立高入試を考えたい。 地元の水海道一高入学は37人 2023年春の常総市の中学卒業生は521人。県立高の定員は、水海道一高6学級、水海道二高6学級、石下紫峰高4学級―合計16学級で640人。常総は卒業生より県立高入学枠が大きい市といえる。 では、なぜ常総の受験生が苦労しているのか? その指標として水海道一高への入学数を見ると、2023年入試で常総市から水海道一高に入学した生徒は37人と少ない。 市別の入学者を調べると、①守谷78人、②つくばみらい48人、③常総37人、④坂東30人、⑤つくば29人―である。生徒が増えているTX沿線からの入学が多く、地元中学生が水海道一高への入学に苦戦している。 試験で合否を決めるので、成績上位者が入るのは当然。また、上位者に遠くからでも入学してほしいとの意見もあるが、「地域の伝統校」とは何だろう? 伝統校には、〇〇大学何名合格だけでなく、大卒後の豊かな社会人を視野に入れ、「ノブレス・オブリージユ」をめざす面がある。ともに学び、青春し、進路で花を咲かせる―学習のノウハウもある。さらに、卒業生のネットワークが地元の産業や文化をしっかり支える。 高校はある意味、「港」である。出港し、地元の卒業生は港に戻ってくる。それが地域になくてはならない伝統校の価値をさらに高める。 中高一貫でますます狭き門に 水海道一高に注目して、常総市の中学生の進学先を並べてみる。 ▽21年入試:①水海道二98、②石下紫峰78、③水海道一52(7学級) ▽22年入試:①水海道二99、②石下紫峰69、③守谷56、④水海道一49(6学級) ▽23年入試:①水海道二84、②石下紫峰71、③守谷41、④下妻二38、⑤水海道一37 21年は市内3校が上位を占めたが、22年は水海道一が4位、23年は5位となった。常総の中学生が市外の県立高にかなり入学している。水海道一は付属中設置に伴い、22年から7学級募集が6学級、25年からは5学級となる。地元中学生の水海道一高への入学はますます困難になる。 付属中に入って高校に進級する生徒もいるので、高校の減少分は相殺されるという意見がある。しかし、常総から付属中に入学した生徒は少なく、22年の付属中1期生は4名であった。 つくばエリア内の常総の高校入試でも、TX沿線の県立高校不足のため、このような激震が起きている。つくばエリア全体の小中学生にとって、県立高新設が焦眉の課題であることを示している。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

地元生徒に厳しい水海道一高受験《竹林亭日乗》11

【コラム・片岡英明】私は霞ケ浦高校で卒業生を10回送り出したが、常総市に住む6回目の卒業生からもらった年賀状に、子どもが中学受験で苦労していると書かれていたので、先日、常総市の受験事情を聞いた。 常総市は人口6万人弱。市内には、水海道一高という伝統校も含め、県立高校が3校ある。つくば市は人口25万人なのにたった3校なので、常総市の中学生の県立高受験環境は恵まれていると思っていたが、どうも違うようだ。そこで、今回はつくばエリア内の常総市の県立高入試を考えたい。 地元の水海道一高入学は37人 2023年春の常総市の中学卒業生は521人。県立高の定員は、水海道一高6学級、水海道二高6学級、石下紫峰高4学級―合計16学級で640人。常総は卒業生より県立高入学枠が大きい市といえる。 では、なぜ常総の受験生が苦労しているのか? その指標として水海道一高への入学数を見ると、2023年入試で常総市から水海道一高に入学した生徒は37人と少ない。 市別の入学者を調べると、①守谷78人、②つくばみらい48人、③常総37人、④坂東30人、⑤つくば29人―である。生徒が増えているTX沿線からの入学が多く、地元中学生が水海道一高への入学に苦戦している。 試験で合否を決めるので、成績上位者が入るのは当然。また、上位者に遠くからでも入学してほしいとの意見もあるが、「地域の伝統校」とは何だろう? 伝統校には、〇〇大学何名合格だけでなく、大卒後の豊かな社会人を視野に入れ、「ノブレス・オブリージユ」をめざす面がある。ともに学び、青春し、進路で花を咲かせる―学習のノウハウもある。さらに、卒業生のネットワークが地元の産業や文化をしっかり支える。 高校はある意味、「港」である。出港し、地元の卒業生は港に戻ってくる。それが地域になくてはならない伝統校の価値をさらに高める。 中高一貫でますます狭き門に 水海道一高に注目して、常総市の中学生の進学先を並べてみる。 ▽21年入試:①水海道二98、②石下紫峰78、③水海道一52(7学級) ▽22年入試:①水海道二99、②石下紫峰69、③守谷56、④水海道一49(6学級) ▽23年入試:①水海道二84、②石下紫峰71、③守谷41、④下妻二38、⑤水海道一37 21年は市内3校が上位を占めたが、22年は水海道一が4位、23年は5位となった。常総の中学生が市外の県立高にかなり入学している。水海道一は付属中設置に伴い、22年から7学級募集が6学級、25年からは5学級となる。地元中学生の水海道一高への入学はますます困難になる。 付属中に入って高校に進級する生徒もいるので、高校の減少分は相殺されるという意見がある。しかし、常総から付属中に入学した生徒は少なく、22年の付属中1期生は4名であった。 つくばエリア内の常総の高校入試でも、TX沿線の県立高校不足のため、このような激震が起きている。つくばエリア全体の小中学生にとって、県立高新設が焦眉の課題であることを示している。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

次期県立高校プランにつくばの人口増反映を 市民団体がフォーラム

人口増が続くつくば市に県立高校が少ない問題で、現在、県が策定を進めている2024年度からの県立高校改革プラン実施プランⅡ期(26年度までの3年間)に、児童・生徒数の増加が続くつくば市などの状況を反映させ入学枠の改善などを改めて要望しようと、市民団体「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」(片岡英明代表)が12日、同市役所内で「つくばに県立高校を求める」と題した教育フォーラムを開いた。 小中学生の子供をもつ父母らのほか、市議、県議、国会議員など計約70人が参加した。考える会は、この日のフォーラムで出た報告や意見などをまとめ、近く県に要望書を提出する予定だ。 同改革プランは、県立高校の適正規模・適正配置や学校・学科の在り方などについて方向性を示すもので、県は同実施プランⅠ期(20-23年度)に基づき、つくば工科高校を改編しつくばサイエンス高校を新設などした。つくばエクスプレス(TX)沿線では、改革プラン策定時の2018年時推計を上回って、児童・生徒数が増加している。 基調報告した片岡代表は「改革プランでは県内を12のエリアに分け『エリア区分ごとに募集学級数を調整する』という方針を出しているにも関わらず、県議会などの答弁で県は、周辺エリアを加えエリアを拡大させた答弁をしており、おかしい」などと指摘。つくば市などつくばエリアの全日制県立高校の募集数は2023年度で中学卒業数の50.1%にとどまっていることから「実施プランⅡ期ではエリア区分ごとに募集学級数を調整し、県平均水準(68.4%)までつくばエリアの募集枠を増やしてほしい」などと話した。 フォーラムでは、国光あやの衆院議員や、海外出張中のためビデオメッセージを寄せた五十嵐立青市長から、県が現在、竹園高校の定員増を調査していることなど、新たな動きについて報告があった。 一方、市内に住む小学5年と2年の子供をもつ母親は「5年前につくばに転居し、高校に困ることになることは想像してなかった」と述べ「(つくばは)小学校3年、4年から塾に通っている子がほとんど。学費をねん出するため親はほぼ共働き。子供は夜遅い時間に自転車で塾などから帰宅する。親も子もほぼ家にいない。高校生になると通学に月3万円かかると聞く。通学に時間がかかると子供の時間が失われるのがもったいない。(牛久栄進高校の1学級増など)コトが動いていることも感じるが、(片岡代表が指摘する)ファクトに基づくデータをもっと見える化したい」と話すなど、参加した父母からは切実な声が相次いだ。(鈴木宏子)

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