金曜日, 11月 22, 2024
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つくば市の小中学生の高校進学を考える会 -検索結果

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土浦一高の募集学級削減問題を考える《竹林亭日乗》10

【コラム・片岡英明】牛久栄進高の募集が来年から1学級増えるという、県教育庁のうれしい発表が7月にあった。一方、2020年まで8学級だった土浦一高の募集は、21年に7学級、22年、23年には6学級になり、来年は4学級に減らされることに心を痛めている。 教育庁は11月2日、土浦一高の来年の募集について、付属中からの進級2学級、高校4学級になると発表した。結局、私たちの高校学級削減停止の要望は届かず、土浦とつくばを中心とした県南の高校受験生は大きな苦労をかかえることになる。 そんな中、土浦一高の募集削減の影響を小さくとらえ、「付属中に入る生徒もいるので影響は少ないのではないか」といった疑問に聞くことがある。そこで今回は、高校受験を正確に論じるために、生徒の増減を、県立・私立の中高一貫や県立付属中の生徒を除いた、高校入試の当事者数で考えてみたい。いわば「真水」の分析だ。 中卒者が増えているのに募集削減 先の疑問に応えるため、つくば市の並木中等学校と茗渓学園中学校を除いた「市立中学卒業数」で、土浦一高の高校削減問題を考えてみたい。 23年入試では、つくば市立中学卒業者が入学した県立高校は、多い順に竹園高200人、牛久栄進高129人、土浦二高113人、土浦一高88人で、これらトップ4校の入学者数は530人。これは、つくば市立中学卒業数2183人の24.3%、茨城の県立高入学1265人の41.9%である。 トップ4校の募集学級数とつくば市立中学卒業数の推移を見ると、以下のようになる。 ▽20年:4校とも8学級、つくば市立中卒業生1928人(32学級) ▽21年:土浦一高7学級、          同 1954人(31学級) ▽22年:土浦一高6学級、          同 2065人(30学級) ▽23年:土浦一高6学級、          同 2183人(30学級) ▽24年:牛久栄進9、土浦一高4学級    同  2175人(29学級) 20年入試は4校とも8学級で32学級だったが、県の「付属中を設置しても総学級数は増やさない」との方針で、土浦一高の募集枠は減っている。24年入試では20年と比べ卒業数は247人増えるが、受験者の多いトップ4校の募集は3学級減となる。 付属中設置と並行して、つくば市の高校受験生が減少しているなら、土浦一高の募集削減の影響は小さいが、実態は逆で、生徒増の中での募集削減になる。 生徒増に対応する募集学級増を 県の高校改革プランでは生徒の3分の2を県立高が担うとしているので、つくば市の増加数247人の3分の2に当たる164人分、つまり県立高4学級増が必要となる。そのうちトップ4校が県立入学全体の41.9%を占めるから、生徒増に伴い、トップ4校にはその41.9%の69人、最低1学級増が必要となる。 これは、20年の土浦一高8学級時代の水準を回復するには、24年時点のトップ4校で4学級増が必要であることを意味する。 以上、土浦一高の4学級削減への対策を考えてきたが、つくばエリアの県立高校不足と生徒増の中で、土浦一高の一層の定員削減は受験生にとって「泣き面にハチ」である。入学者の多いトップ4校を中心に、緊急に募集学級増ができないものだろうか。 11月の土浦一高の定員削減発表で、9月のコラムで書いたトップ4校の10学級体制の必要性がさらに高まったと思う。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

土浦一高の募集学級削減問題を考える《竹林亭日乗》10

【コラム・片岡英明】牛久栄進高の募集が来年から1学級増えるという、県教育庁のうれしい発表が7月にあった。一方、2020年まで8学級だった土浦一高の募集は、21年に7学級、22年、23年には6学級になり、来年は4学級に減らされることに心を痛めている。 教育庁は11月2日、土浦一高の来年の募集について、付属中からの進級2学級、高校4学級になると発表した。結局、私たちの高校学級削減停止の要望は届かず、土浦とつくばを中心とした県南の高校受験生は大きな苦労を抱えることになる。 そんな中、土浦一高の募集削減の影響を小さくとらえ、「付属中に入る生徒もいるので影響は少ないのではないか」といった疑問に聞くことがある。そこで今回は、高校受験を正確に論じるために、生徒の増減を、県立・私立の中高一貫や県立付属中の生徒を除いた、高校入試の当事者数で考えてみたい。いわば「真水」の分析だ。 中卒者が増えているのに募集削減 先の疑問に応えるため、つくば市の並木中等学校と茗渓学園中学校を除いた「市立中学卒業数」で、土浦一高の高校削減問題を考えてみたい。 23年入試では、つくば市立中学卒業者が入学した県立高校は、多い順に竹園高200人、牛久栄進高129人、土浦二高113人、土浦一高88人で、これらトップ4校の入学者数は530人。これは、つくば市立中学卒業数2183人の24.3%、茨城の県立高入学1265人の41.9%である。 トップ4校の募集学級数とつくば市立中学卒業数の推移を見ると、以下のようになる。 ▽20年:4校とも8学級、つくば市立中卒業生1928人(32学級) ▽21年:土浦一高7学級、       同 1954人(31学級) ▽22年:土浦一高6学級、           同 2065人(30学級) ▽23年:土浦一高6学級、           同 2183人(30学級) ▽24年:牛久栄進9、土浦一高4学級     同  2175人(29学級) 20年入試は4校とも8学級で32学級だったが、県の「付属中を設置しても総学級数は増やさない」との方針で、土浦一高の募集枠は減っている。24年入試では20年と比べ卒業数は247人増えるが、受験者の多いトップ校の募集は3学級減となる。 付属中設置と並行して、つくば市の高校受験生が減少しているなら、土浦一高の募集削減の影響は小さいが、実態は逆で、生徒増の中での募集削減になる。 生徒増に対応する募集学級増を 県の高校改革プランでは生徒の3分の2を県立高が担うとしているので、つくば市の増加数247人の3分の2に当たる164人分、つまり県立高4学級増が必要となる。そのうちトップ4校が県立入学全体の41.9%を占めるから、生徒増に伴い、トップ4校にはその41.9%の69人、最低1学級増が必要となる。 これは、20年の土浦一高8学級時代の水準を回復するには、24年時点のトップ4校で4学級増が必要であることを意味する。 以上、土浦一高の4学級削減への対策を考えてきたが、つくばエリアの県立高校不足と生徒増の中で、土浦一高の一層の定員削減は受験生にとって「泣き面にハチ」である。入学者の多いトップ4校を中心に、緊急に募集学級増ができないものだろうか。 11月の土浦一高の定員削減発表で、9月のコラムで書いたトップ4校の10学級体制の必要性がさらに高まったと思う。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

どうする?つくばの2024年高校入試《竹林亭日乗》9

【コラム・片岡英明】7月26日、茨城県の教育長は牛久栄進高校の1学級増と筑波高校の進学コース設置を発表し、つくばエリアの高校問題が動き始めた。このとき県が示した中学卒業数推計(2023年)では、水戸2490人、つくば2577人―となっており、両市の高校受験生数が逆転した。 逆転は「時間の問題」と言われてきたが、2023年は高校入試を考える上で大きな節目といえる。これを機に県の姿勢を問い、県への要望を考えてみたい。 今年3月の県議会で教育長は、星田弘司県議(つくば市区)の質問に、①生徒は市内及びエリア内外の県立・私立高など多様な選択肢から進学先を選んでいる、②エリア内の高校数は水戸もつくばも同程度である、③県立と私立の割合も両市とも6割と3割と同程度である―とし、そのため水戸とつくばの高校進学状況に大きな違いはないと答弁した。 この発言には驚いたが、私たちの要望は、つくばエリアの子どもたちの高校入試環境の改善にある。その中で、①県の県立高不足算定は県平均を基準に行っている、②歴史や交通利便性などの違う水戸とつくばを対立的に捉えた比較はなじまない―と考えてきた。 しかし、県の水戸とつくばの状況が同じという答弁があったので、以下、両市の比較を行ってみる。 つくばの入学枠は水戸の3分の1 水戸とつくばの中3生は約2500人で、水戸は全日制県立高校が7校(水戸一高、同二高、同三高、緑岡高、桜ノ牧高、水戸商、水戸工)、2023年の高校募集は52学級、2070人。一方、つくばは3校(竹園高、筑波高、つくばサイエンス高)、募集は17学級、680人である。 つくばの入学枠は水戸の32.8%で、3分の1以下である。両市の歴史や通学条件が違うのは確かだが、それでも、同じ中3生の県立高受験枠がこれほど違ってよいのだろうか。 水戸エリアの県立高校では、市内7校、水戸農高、笠間高、茨城東高の10校。募集枠は68学級、2690人。一方、つくばエリアは、市内3校、石下紫峰高、水海道一高、同二高、守谷高、伊奈高、牛久栄進高の9校。募集枠は53学級、2120人。学校数の差は1でも、つくばエリアは水戸エリアよりも15学級、570人少ない。 2023年の中3生は水戸エリアが3506人、つくばエリアが4229人。つくばエリアが723人多い。そのため2023年度入試の全日制県立高の県平均収容率は68.4%だが、水戸エリアの収容率は76.7%、つくばエリアは50.1%である。 水戸は県平均を上回り、つくばは県平均に届かない。つくばエリアを県平均レベルにする必要学級は72学級であり、現時点で19学級不足。また、水戸エリアに合わせるための必要学級は81学級で、現時点で28学級不足となる。 教育長は、水戸とつくばの共通性を強調したが、両市およびエリアの高校入試の状況は大きく違っている。 早急に県平均水準の県立高校枠を 私たちは水戸市・水戸エリア水準の募集枠を求めているわけではない。つくばエリアの小中学生のために、県平均水準までに入学枠の改善を検討して、11月の2024年県立高募集定員発表の場で、受験生に希望を与えてほしい。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

どうする?つくばの2024年高校入試《竹林亭日乗》9

【コラム・片岡英明】7月26日、茨城県の教育長は牛久栄進高校の1学級増と筑波高校の進学コース設置を発表し、つくばエリアの高校問題が動き始めた。このとき県が示した中学卒業数推計(2023年)では、水戸2490人、つくば2577人―となっており、両市の高校受験生数が逆転した。 逆転は「時間の問題」と言われてきたが、2023年は高校入試を考える上で大きな節目といえる。これを機に県の姿勢を問い、県への要望を考えてみたい。 今年3月の県議会で教育長は、星田弘司県議(つくば市区)の質問に、①生徒は市内及びエリア内外の県立・私立高など多様な選択肢から進学先を選んでいる、②エリア内の高校数は水戸もつくばも同程度である、③県立と私立の割合も両市とも6割と3割と同程度である―とし、そのため水戸とつくばの高校進学状況に大きな違いはないと答弁した。 この発言には驚いたが、私たちの要望は、つくばエリアの子どもたちの高校入試環境の改善にある。その中で、①県の県立高不足算定は県平均を基準に行っている、②歴史や交通利便性などの違う水戸とつくばを対立的に捉えた比較はなじまない―と考えてきた。 しかし、県の水戸とつくばの状況が同じという答弁があったので、以下、両市の比較を行ってみる。 つくばの入学枠は水戸の3分の1 水戸とつくばの中3生は約2500人で、水戸は全日制県立高校が7校(水戸一高、同二高、同三高、緑岡高、桜ノ牧高、水戸商、水戸工)、2023年の高校募集は52学級、2070人。一方、つくばは3校(竹園高、筑波高、つくばサイエンス高)、募集は17学級、680人である。 つくばの入学枠は水戸の32.8%で、3分の1以下である。両市の歴史や通学条件が違うのは確かだが、それでも、同じ中3生の県立高受験枠がこれほど違ってよいのだろうか。 水戸エリアの県立高校では、市内7校と、水戸農高、笠間高、茨城東高の10校。募集枠は68学級、2690人。一方、つくばエリアは、市内3校と、石下紫峰高、水海道一高、同二高、守谷高、伊奈高、牛久栄進高の9校。募集枠は53学級、2120人。学校数の差は1でも、つくばエリアは水戸エリアよりも15学級、570人少ない。 2023年の中3生は水戸エリアが3506人、つくばエリアが4229人。つくばエリアが723人多い。そのため2023年度入試の全日制県立高の県平均収容率は68.4%だが、水戸エリアの収容率は76.7%、つくばエリアは50.1%である。 水戸は県平均を上回り、つくばは県平均に届かない。つくばエリアを県平均レベルにする必要学級は72学級であり、現時点で19学級不足。また、水戸エリアに合わせるための必要学級は81学級で、現時点で28学級不足となる。 教育長は、水戸とつくばの共通性を強調したが、両市およびエリアの高校入試の状況は大きく違っている。 早急に県平均水準の県立高校枠を 私たちは水戸市・水戸エリア水準の募集枠を求めているわけではない。つくばエリアの小中学生のために、県平均水準までに入学枠の改善を検討して、11月の2024年県立高募集定員発表の場で、受験生に希望を与えてほしい。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

竹園・牛久栄進・土浦一・土浦二を10学級体制に《竹林亭日乗》8

【コラム・片岡英明】前回のコラム(8月10日付)で、来年度は牛久栄進高の1学級増でも、土浦一高の高校生募集が6→4の2学級減では、高校入試は逆に厳しくなる―と書いた。今回はこの解消策を考えたい。 つくばの市立中学卒業生2183人(今年)のうち、市内の竹園高には200人入っているが、牛久栄進高129人、土浦二高113人、土浦一高88人と、市外の県立高へ流出している。一方、土浦の卒業生1095人の入学先は、土浦湖北高120人、土浦三高97人、土浦二高86人、土浦工業高81人、石岡一高50人、土浦一高37人、石岡二高36人である。 土浦一高は6学級に対して、土浦37人(15.4%)、つくば88人(36.7%)。土浦二高は8学級に対して、土浦86人(26.9%)、つくば113人(35.3%)。つくばから土浦の伝統校への流入が増え、土浦の生徒の地元伝統高への入学が抑えられ、石岡地区に流れているようだ。 こういった状態で、2024年土浦一高の高校募集を2学級減らしてよいのだろうか? 土浦一高の学級減の影響は、多くの受験生と学校に波及する。このままでは、つくばと土浦の受験生の悩みはさらに深くなるのではないか。 募集数は1987年比65%減 町村合併でつくば市が誕生した1987年、市内には全日制県立高が6校41学級(募集1927人)あった。その後、1989年をピークに第2次ベビーブーム世代が去り、子ども減が起きたが、つくば市の場合は2005年(TX開通年)を底に中学3年生は増加に転じた。 ところが2008年以降、県は市内の全日制高を減らし、現在は3校17学級(募集680人)。募集削減率は65%にもなる。つくば市内の県立高校不足問題の構造的原因はここにある。つくば市の現在の小学1年生は1989年の中学3年生のピーク2574人を越え、2686人(2023年)で、早急な対策が必要だ。 つくばエリアの人口・子ども増は県の発展にもプラスである。この地域の小中学生のために、県の平均的水準まで全日制県立高の入学枠を増やしてほしい。そのためには、現時点で15学級増、2030年までにさらに10学級増が必要と考える。 10学級体制へのシナリオ 学級増の具体策については、以下のような年次シナリオを提案したい。 ▼2024年:牛久栄進高1学級増に加え、土浦一高の2学級削減を止めて、6学級維持。 ▼2025年:牛久栄進高を9学級→10学級に。竹園高を8学級→10学級に。 ▼2026年:土浦二高を8学級→10学級に。土浦一高を付属中からの2学級に加え、高校入学を6学級→8学級に戻す。 つまり、4県立高校を10学級体制にし、高校入学枠を計8学級増やしてはどうか。並行して、県とつくば市が共同で2030年までのエリアの生徒数を正確に推計し、現時点の必要学級数と今後の必要学級数を算出する。 その上で、算出した必要学級数が既存の全日制県立高の学級増で賄えるのか、それとも学級増の一つの形態としての高校新設も必要なのか―を見極めてはどうか。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表) <ご参考>8月30日、電子書籍「若手教師の勘ドコロ―基礎力を磨く授業づくり・HRづくり、教えます」(22世紀アート社)を出版しました。アマゾンkindle版をご覧ください。

竹園・牛久栄進・土浦一・土浦二を10学級体制に《竹林亭日乗》8

【コラム・片岡英明】前回のコラム(8月10日付)で、来年度は牛久栄進高の1学級増でも、土浦一高の高校生募集が6→4の2学級減では、高校入試は逆に厳しくなる―と書いた。今回はこの解消策を考えたい。 つくばの市立中学卒業生2183人(今年)のうち、市内の竹園高には200人入っているが、牛久栄進高129人、土浦二高113人、土浦一高88人と、市外の県立高へ流出している。一方、土浦の卒業生1095人の入学先は、土浦湖北高120人、土浦三高97人、土浦二高86人、土浦工業高81人、石岡一高50人、土浦一高37人、石岡二高36人である。 土浦一高は6学級に対して、土浦37人(15.4%)、つくば88人(36.7%)。土浦二高は8学級に対して、土浦86人(26.9%)、つくば113人(35.3%)。つくばから土浦の伝統校への流入が増え、土浦の生徒の地元伝統高への入学が抑えられ、石岡地区に流れているようだ。 こういった状態で、2024年土浦一高の高校募集を2学級減らしてよいのだろうか? 土浦一高の学級減の影響は、多くの受験生と学校に波及する。このままでは、つくばと土浦の受験生の悩みはさらに深くなるのではないか。 募集数は1987年比65%減 町村合併でつくば市が誕生した1987年、市内には全日制県立高が6校41学級(募集1927人)あった。その後、1989年をピークに第2次ベビーブーム世代が去り、子ども減が起きたが、つくば市の場合は2005年(TX開通年)を底に中学3年生は増加に転じた。 ところが2008年以降、県は市内の全日制高を減らし、現在は3校17学級(募集680人)。募集削減率は65%にもなる。つくば市内の県立高校不足問題の構造的原因はここにある。つくば市の現在の小学1年生は1989年の中学3年生のピーク2574人を越え、2686人(2023年)で、早急な対策が必要だ。 つくばエリアの人口・子ども増は県の発展にもプラスである。この地域の小中学生のために、県の平均的水準まで全日制県立高の入学枠を増やしてほしい。そのためには、現時点で15学級増、2030年までにさらに10学級増が必要と考える。 10学級体制へのシナリオ 学級増の具体策については、以下のような年次シナリオを提案したい。 ▼2024年:牛久栄進高1学級増に加え、土浦一高の2学級削減を止めて、6学級維持。 ▼2025年:牛久栄進高を9学級→10学級に。竹園高を8学級→10学級に。 ▼2026年:土浦二高を8学級→10学級に。土浦一高を付属中からの2学級に加え、高校入学を6学級→8学級に戻す。 つまり、4県立高校を10学級体制にし、高校入学枠を計8学級増やしてはどうか。並行して、県とつくば市が共同で2030年までのエリアの生徒数を正確に推計し、現時点の必要学級数と今後の必要学級数を算出する。 その上で、算出した必要学級数が既存の全日制県立高の学級増で賄えるのか、それとも学級増の一つの形態としての高校新設も必要なのか―を見極めてはどうか。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表) <ご参考>8月30日、電子書籍「若手教師の勘ドコロ―基礎力を磨く授業づくり・HRづくり、教えます」(22世紀アート社)を出版しました。アマゾンkindle版をご覧ください。

牛久栄進1学級増でも山積する地域の課題 《竹林亭日乗》7

【コラム・片岡英明】茨城県の森作宜民教育長は7月26日、2024年度から、牛久栄進高校を1学級増の9学級にし、筑波高校が募集する3学級の中に国・数・英を強化した「進学アドバンストコース」1学級設置する―と発表した。 私たちの会の最初の要望書(2年前)への回答が「学級増は困難」だったことを考えると、来年度の学級増と進学コース設置は小さいが大きな一歩である。県教育庁の担当者をはじめ市議・県議など多くの方々に感謝する。 筑波高を訪れ、定員には満たないものの「つくばね学」を学び、大学進学希望者がいるのに、教員が少ないために十分な指導や指導ができないとの話を聞き、進学指導の充実を県にお願いしてきた。これからも同校を見守り、応援していきたい。 ただ、現在の受験事情を見ると、まだまだ課題が残る。私たちの計算では、「つくばエリア」の県立高校は、県平均よりも現時点で15学級不足し、2030年までを展望すると、さらに10学級不足する。そこで今年4月には、毎年2~4学級の学級増か、学級増の一形態として高校新設を要望したが、牛久栄進が2学級増でなく1学級増にととどまった。 県には「学級増には既存教室で対応し、新校舎は建てない」という縛りがあるようだ。その条件を付けると「つくばエリア」には牛久栄進の次に学級増ができる高校はないから、中学生のために、この縛りを解いて「校舎を建て学級を増やすこと」をお願いしたい。 土浦一高では来年度、付属中の1期生が高校に入る。それに伴い、元々8学級で現在6学級の高校の募集が、来春には4学級になる。「付属中をつくっても総学級数は維持する」との縛りがあるからだ。そのため、来年度、牛久栄進が1学級増えても、土浦一が2学級減り、地域全体の高校入試は厳しくなる。付属中の分を高校で減らすのには疑問がある。 公募校長に求められる高い倫理観 県は7月31日、教員免許不問の民間人を含む校長を採用するため、7名を新規に公募することを発表した。公募校長(来年校長予定の副校長を含む)は現在8名(水戸一高、土浦一高、龍ケ崎一高、下妻一高、水海道一高、鉾田一高、勝田中等、つくばサイエンス高)いるが、日立一高、太田一高、鹿島高、下館一高、並木中等、古河中等、IT未来高に配置するためだ。 高校問題の学習会を開くと、魅力のある高校への期待とともに、民間出身の公募校長に対する疑問の声を多く聞く。県には「民間校長なら県立高校の改革が進む」という固定観念があるのだろうか。 生徒=人間を指導する学校と利益を追求する民間企業では、組織運営の形が異なる。県の学校改革も、校長への信頼があってこそできるものだ。新たな選考要項には、「求める人物像」に「高い倫理観」が加わったようだが、公募採用校長の不祥事が報道され、選考の視点に問題があることに気づいたようだ。 この際、新規の校長公募をいったん立ち止まり、現8校長の学校運営状況を検証してみてはどうだろうか。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

牛久栄進1学級増でも山積する地域の課題 《竹林亭日乗》7

【コラム・片岡英明】茨城県の森作宜民教育長は7月26日、2024年度から、牛久栄進高校を1学級増の9学級にし、筑波高校が募集する3学級の中に国・数・英を強化した「進学アドバンストコース」1学級設置する―と発表した。 私たちの会の最初の要望書(2年前)への回答が「学級増は困難」だったことを考えると、来年度の学級増と進学コース設置は小さいが大きな一歩である。県教育庁の担当者をはじめ市議・県議など多くの方々に感謝する。 筑波高を訪れ、定員には満たないものの「つくばね学」を学び、大学進学希望者がいるのに、教員が少ないために十分な指導や指導ができないとの話を聞き、進学指導の充実を県にお願いしてきた。これからも同校を見守り、応援していきたい。 ただ、現在の受験事情を見ると、まだまだ課題が残る。私たちの計算では、「つくばエリア」の県立高校は、県平均よりも現時点で15学級不足し、2030年までを展望すると、さらに10学級不足する。そこで今年4月には、毎年2~4学級の学級増か、学級増の一形態として高校新設を要望したが、牛久栄進が2学級増でなく1学級増にととどまった。 県には「学級増には既存教室で対応し、新校舎は建てない」という縛りがあるようだ。その条件を付けると「つくばエリア」には牛久栄進の次に学級増ができる高校はないから、中学生のために、この縛りを解いて「校舎を建て学級を増やすこと」をお願いしたい。 土浦一高では来年度、付属中の1期生が高校に入る。それに伴い、元々8学級で現在6学級の高校の募集が、来春には4学級になる。「付属中をつくっても総学級数は維持する」との縛りがあるからだ。そのため、来年度、牛久栄進が1学級増えても、土浦一が2学級減り、地域全体の高校入試は厳しくなる。付属中の分を高校で減らすのには疑問がある。 公募校長に求められる高い倫理観 県は7月31日、教員免許不問の民間人を含む校長を採用するため、7名を新規に公募することを発表した。公募校長(来年校長予定の副校長を含む)は現在8名(水戸一高、土浦一高、龍ケ崎一高、下妻一高、水海道一高、鉾田一高、勝田中等、つくばサイエンス高)いるが、日立一高、太田一高、鹿島高、下館一高、並木中等、古河中等、IT未来高に配置するためだ。 高校問題の学習会を開くと、魅力のある高校への期待とともに、民間出身の公募校長に対する疑問の声を多く聞く。県には「民間校長なら県立高校の改革が進む」という固定観念があるのだろうか。 生徒=人間を指導する学校と利益を追求する民間企業では、組織運営の形が異なる。県の学校改革も、校長への信頼があってこそできるものだ。新たな選考要項には、「求める人物像」に「高い倫理観」が加わったようだが、公募採用校長の不祥事が報道され、選考の視点に問題があることに気づいたようだ。 この際、新規の校長公募をいったん立ち止まり、現8校長の学校運営状況を検証してみてはどうだろうか。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

校舎新設や土浦一高の6学級維持など要望 牛久栄進高1学級増受け つくばの市民団体

来春の県立高校入試で、県教育庁が7月26日、牛久栄進高校(牛久市東東猯穴町)の募集定員を1学級(40人)増やすほか、筑波高校(つくば市北条)に進学対応コースを1学級(40人)を新設すると発表したのを受けて、市民団体「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」(片岡英明代表)は31日、大井川和彦知事と森作宜民県教育長宛てに「ここを第一歩として、つくばの県立高校の入学枠を県平均レベルに合わせるため、学級増、校舎新設、県立高校新設を検討してほしい」など改めて要望した。 県教育庁は、つくば、つくばみらい、守谷、牛久市の一部などつくばエリアの中学卒業者数が増加傾向にあることから、牛久栄進高校(普通科)の募集学級数を来春、現在の8学級から9学級に増やすと発表した。県はつくばエリアの中学卒業者について今年3月は4229人だったのに対し30年3月には524人増えて4753人になるとしている。 定員割れが課題となっている筑波高校については、普通科3学級のうち1学級を、四年制大学進学を目指す「進学アドバンストコース」とするとした。 一方、これまでも学級増や高校新設などを要望してきた同考える会は、今回の県の発表について「一歩進んだ」としつつも、「(既存校に)校舎を新設しない、高校を新設しないという縛りがあるなら問題は解決しない」などとして、校舎新設、県立高校新設を検討してほしいと改めて要望した。 さらに来春は、中高一貫校になった土浦一高の募集が6学級から4学級になり、「牛久栄進が1学級増でも、土浦一高の募集が学級減では、全体としては県立高校入学が今年よりも困難になることは明らかだ」などとし、来春の土浦一高の募集定員について「せめて現在の6学級を維持してほしい」と求めた。

私学の学費補助590万円の崖《竹林亭日乗》6

【コラム・片岡英明】昨年11月の茨城県議会で、県の森作宜民教育長は「中学生の進路選択に影響がないよう学級増の計画を示す」と答弁し、中学生徒に期待を持たせた。そして3月の県議会で、星田弘司県議がその計画を示すように求めた。 すると教育長は、つくば市の中学生がエリア内外の県立高校のほか、「私立学校などを含めた多様な選択肢の中から学校を選んで通学している」と、県立高学級増の計画を示さず、足踏みの答弁をした。 生徒の声に応え、つくばエリア県立高の入学枠を県平均水準まで引き上げる決断を示す場面なのに、後ろ向きであった。まるで、①定員割れの県立高に行って②交通費がかかるエリア外の高校も考えて③授業料は高いが私学もある―と聞こえる。 県が焦点をずらしているので、私たちの学習も、県立高の魅力アップ、通学やスクールバス問題、さらに私学の学費問題へと広がった。そこで、今回は私学の学費補助について考える。 私立高への学費補助の現状 私学振興助成法が1975年に成立し、私学への経常費助成が始まった。主な私学助成は、①学校運営のための経常費助成②生徒への授業料補助③生徒への入学金補助―の3つから成る。 <経常費助成> 茨城の2023年度の経常費助成(私立高校生1人当たり)は、国からの35万4027円に県の2万3505円を加えて、37万7532円である。 公立高校は生徒1人当たり約120万円の経費がかかると言う。その運営経費と私学経常費助成の差が保護者負担となり、私学の高学費を生んでいる。 昨年の茨城の私立高校初年度納入金は平均81万9691円である(内訳:授業料38万4875円、入学金18万3958円、施設費25万0858円=文科省学校基本調査)。 <授業料補助> 国は2010年度からの年収910万円未満の世帯に11万8000円支給することを始めた。さらに2020年度から、私立高校生に対する就学支援策を拡充させ、授業料部分について、年収590万円未満世帯には39万6000円の学費補助を開始した。 <入学金補助> 国と連動して各県も入学金補助を始め、茨城の場合は2017年度から年収350万円未満の世帯には9万6000円、同590万円未満の世帯には4万8000円の入学金補助を開始した。 私学もあると言うなら「崖」の解消を 国の授業料補助が年収590万円を境に低下することから、「590万円の崖」が発生、保護者負担が急増する。そのため各県は国の支援策充実に合わせ、それまで独自に行っていた授業料助成の仕組みを変え、年収基準緩和、補助額アップなどにより、崖の解消に努めた。 関東都県を見ると(独自加算分は県内在住のみ)、▽東京:年収910万まで46万9000円、▽埼玉:同500万まで59万6000円、同700万まで38万7000円、▽千葉:同590万まで52万2000円、同800万まで24万1000円、▽神奈川:同590万まで45万6000円、同700万まで19万3000円、▽群馬:同590~910万まで16万5120円。 茨城は、それまでの県独自の加算を都・他県のように授業料補助アップに切り替えず、県加算をやめた。そのため、私学の授業料補助は国の就学支援のみとなり、都・他県と比べ「590万の崖」は急になった。 高校進学前の中学生に「私学もある」と言うのなら、県は「590万の崖」を全力で解消してほしい。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

私学の学費補助590万円の崖《竹林亭日乗》6

【コラム・片岡英明】昨年11月の茨城県議会で、県の森作宜民教育長は「中学生の進路選択に影響がないよう学級増の計画を示す」と答弁し、中学生徒に期待を持たせた。そして3月の県議会で、星田弘司県議がその計画を示すように求めた。 すると教育長は、つくば市の中学生がエリア内外の県立高校のほか、「私立学校などを含めた多様な選択肢の中から学校を選んで通学している」と、県立高学級増の計画を示さず、足踏みの答弁をした。 生徒の声に応え、つくばエリア県立高の入学枠を県平均水準まで引き上げる決断を示す場面なのに、後ろ向きであった。まるで、①定員割れの県立高に行って②交通費がかかるエリア外の高校も考えて③授業料は高いが私学もある―と聞こえる。 県が焦点をずらしているので、私たちの学習も、県立高の魅力アップ、通学やスクールバス問題、さらに私学の学費問題へと広がった。そこで、今回は私学の学費補助について考える。 私立高への学費補助の現状 私学振興助成法が1975年に成立し、私学への経常費助成が始まった。主な私学助成は、①学校運営のための経常費助成②生徒への授業料補助③生徒への入学金補助―の3つから成る。 <経常費助成> 茨城の2023年度の経常費助成(私立高校生1人当たり)は、国からの35万4027円に県の2万3505円を加えて、37万7532円である。 公立高校は生徒1人当たり約120万円の経費がかかると言う。その運営経費と私学経常費助成の差が保護者負担となり、私学の高学費を生んでいる。 昨年の茨城の私立高校初年度納入金は平均81万9691円である(内訳:授業料38万4875円、入学金18万3958円、施設費25万0858円=文科省学校基本調査)。 <授業料補助> 国は2010年度からの年収910万円未満の世帯に11万8000円支給することを始めた。さらに2020年度から、私立高校生に対する就学支援策を拡充させ、授業料部分について、年収590万円未満世帯には39万6000円の学費補助を開始した。 <入学金補助> 国と連動して各県も入学金補助を始め、茨城の場合は2017年度から年収350万円未満の世帯には9万6000円、同590万円未満の世帯には4万8000円の入学金補助を開始した。 私学もあると言うなら「崖」の解消を 国の授業料補助が年収590万円を境に低下することから、「590万円の崖」が発生、保護者負担が急増する。そのため各県は国の支援策充実に合わせ、それまで独自に行っていた授業料助成の仕組みを変え、年収基準緩和、補助額アップなどにより、崖の解消に努めた。 関東都県を見ると(独自加算分は県内在住のみ)、▽東京:年収910万まで46万9000円、▽埼玉:同500万まで59万6000円、同700万まで38万7000円、▽千葉:同590万まで52万2000円、同800万まで24万1000円、▽神奈川:同590万まで45万6000円、同700万まで19万3000円、▽群馬:同590~910万まで16万5120円。 茨城は、それまでの県独自の加算を都・他県のように授業料補助アップに切り替えず、県加算をやめた。そのため、私学の授業料補助は国の就学支援のみとなり、都・他県と比べ「590万の崖」は急になった。 高校進学前の中学生に「私学もある」と言うのなら、県は「590万の崖」を全力で解消してほしい。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

つくば中学受験事情 分析事始め《竹林亭日乗》5

【コラム・片岡英明】5月の「つくば子どもと教育相談センター」総会で県立高校問題を5分ほど話した。すると参加者から中学受験の質問があり、それを契機に話し合いが盛り上がった。そこで今回は中学受験について考える。 中学受験の背景 つくば市は人口増の中、県立高校が削減され、そこにTX沿線開発で小中学生が激増。さらに2020年から県立付属中設置で高校入学枠の削減が追い打ちをかけた。つくば市の小中学生は自分の進路の選択肢が狭くなり、そのために中学受験に目が向いているのか。 中学受験に対する首都圏からの転入増の影響はどうか。東京の全日制高校は186校の都立より245校の私立の方が多く、その割合は4対6。私学の流れが強い。さらに187校ある私立中の133校(71%)が中高一貫。東京の中学受験の文化がつくば市にも流入しているのか。 しかし、生徒や保護者が知りたい中学受験に関して冷静な情報は少なく、素朴な疑問が解消されないまま、塾ベースの宣伝や口コミに流される傾向がある。そのため保護者にも不安がある。 そこで、「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」は6月の学習会で、つくばの県立高校不足の周辺の問題としてデータに基づいて中学受験についても考えることにした。 中学進学者の推計 まず、最初のデータでつくば市の中学進学数を捉える。つくば市ホームページのopen data(オープンデータ)で前年の小6と次年度の市立中1年の生徒数の差を調べる。これを県立中学、県内私立中、県外私立中などへの中学進学者数とする。もちろん小学卒業時の転出や中学1年の転入もあるので概数である。 <6年間の中学進学者の推移> ▽2018年:中1=1940人、前年小6=2193人。差は253人(11.5%) ▽2019年:差は285人(12.3%) ▽2020年:差は249人(10.4%) ▽2021年:土浦一高が付属中募集開始。差は304人(12.3%) ▽2022年:水海道一高・下妻一高も付属中募集開始。差は331人(12.8%) ▽2023年:中1=2155人、前年小6=2506人。差は351人(14.0%) <上の数字から言えること> ▽つくば市では中学進学者が人数・割合ともに増加傾向 ▽23年は18年より中学進学者が約100人増 ▽22年の小6は17年より313人多く、中学進学増は小学生増に伴う面も ▽正確に把握するには転出などを含む資料や中学別の分析が必要 中学受験 学びの視点 中学受験は、つくばの生徒増・県立高不足・県立中設置・東京などの影響以外にも、生徒・保護者の希望、通学条件や費用負担、私立中や塾の指導など多くの要素が絡んでおり、単純な評価・批判はなじまない。 今は中学受験の論評よりも現状把握が先決である。子どもの気持ちを大事にしながら、まず情報を集め、丁寧に語り合うことから始めてほしい。 小中学生の学びの要点は何か? それはどこで学びのスイッチが入るかにある。生徒に学びのスイッチが入れば、高校や過去の成績に関係なく大きく伸びていく姿を見てきた。ゆえに中学受験を生徒にとっての学びの視点で考えてほしい。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

つくば中学受験事情 分析事始め《竹林亭日乗》5

【コラム・片岡英明】5月の「つくば子どもと教育相談センター」総会で県立高校問題を5分ほど話した。すると参加者から中学受験の質問があり、それを契機に話し合いが盛り上がった。そこで今回は中学受験について考える。 中学受験の背景 つくば市は人口増の中、県立高校が削減され、そこにTX沿線開発で小中学生が激増。さらに2020年から県立付属中設置で高校入学枠の削減が追い打ちをかけた。つくば市の小中学生は自分の進路の選択肢が狭くなり、そのために中学受験に目が向いているのか。 中学受験に対する首都圏からの転入増の影響はどうか。東京の全日制高校は186校の都立より245校の私立の方が多く、その割合は4対6。私学の流れが強い。さらに187校ある私立中の133校(71%)が中高一貫。東京の中学受験の文化がつくば市にも流入しているのか。 しかし、生徒や保護者が知りたい中学受験に関して冷静な情報は少なく、素朴な疑問が解消されないまま、塾ベースの宣伝や口コミに流される傾向がある。そのため保護者にも不安がある。 そこで、「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」は6月の学習会で、つくばの県立高校不足の周辺の問題としてデータに基づいて中学受験についても考えることにした。 中学進学者の推計 まず、最初のデータでつくば市の中学進学数を捉える。つくば市ホームページのopen data(オープンデータ)で前年の小6と次年度の市立中1年の生徒数の差を調べる。これを県立中学、県内私立中、県外私立中などへの中学進学者数とする。もちろん小学卒業時の転出や中学1年の転入もあるので概数である。 <6年間の中学進学者の推移> ▽2018年:中1=1940人、前年小6=2193人。差は253人(11.5%) ▽2019年:差は285人(12.3%) ▽2020年:差は249人(10.4%) ▽2021年:土浦一高が付属中募集開始。差は304人(12.3%) ▽2022年:水海道一高・下妻一高も付属中募集開始。差は331人(12.8%) ▽2023年:中1=2155人、前年小6=2506人。差は351人(14.0%) <上の数字から言えること> ▽つくば市では中学進学者が人数・割合ともに増加傾向 ▽23年は18年より中学進学者が約100人増 ▽22年の小6は17年より313人多く、中学進学増は小学生増に伴う面も ▽正確に把握するには転出などを含む資料や中学別の分析が必要 中学受験 学びの視点 中学受験は、つくばの生徒増・県立高不足・県立中設置・東京などの影響以外にも、生徒・保護者の希望、通学条件や費用負担、私立中や塾の指導など多くの要素が絡んでおり、単純な評価・批判はなじまない。 今は中学受験の論評よりも現状把握が先決である。子どもの気持ちを大事にしながら、まず情報を集め、丁寧に語り合うことから始めてほしい。 小中学生の学びの要点は何か? それはどこで学びのスイッチが入るかにある。生徒に学びのスイッチが入れば、高校や過去の成績に関係なく大きく伸びていく姿を見てきた。ゆえに中学受験を生徒にとっての学びの視点で考えてほしい。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

「十五の春に泣く学園都市」つくば 《竹林亭日乗》4

【コラム・片岡英明】つくば学園都市の県立高校不足。このありえない問題を何とか解消したいと模索している。4月26日、茨城県の森作宜民教育長へ3回目の要望書を提出し、高校改革推進室と2時間ほど懇談した。つくば市選出の県議の皆さんも、この問題を議会で取り上げているが、教育長の答弁には揺れがある。 ▽つくばエリアは生徒増だが、周辺エリアを含めると生徒減(2022年3月) ▽つくばエリアに土浦・牛久・下妻エリアを含めると、生徒増(2022年11月) ▽つくばエリアの生徒増より、周辺の生徒減が大(2023年3月) データ公開と基準設定をスタートに生徒増を議論するのに、その範囲が変動しては議論が進まない。また、生徒増算定の基準年が毎年移動し、2030年までの生徒増数も変動する。 北海道が高校の4~8学級の適正規模の発想をやめた(茨城もやめた)と聞き、道教委HPの「公立高校配置計画」(2022年9月) を調べた。茨城県の「高校改革プラン」(2019年2月)には、生徒数などの基本データの記載がないが、北海道には2022年基準の生徒数、エリア生徒数、道立高の収容率などのデータがある。 北海道はアンケート調査結果も公開。その2問目で希望学科を問い、普通科希望が多いことを確認し、学級増減を計画している。茨城県もアンケート調査を実施したが、その結果はHP上にはなく、文書開示で調べると、希望学科の問いがない。 県は普通科増は困難と思っている? 生徒が急増しているつくば市で、なぜ定員割れのつくばサイエンス高が学級増なのか疑問だったが、少し謎が解けた。アンケートを取れば、当然、普通科の学級増希望となる。 しかし、つくば市は県立高が削減されて少なく、普通科で受験生が多いのは竹園高のみ。その竹園高は8学級。所狭しと校舎が建ち、2学級増となれば校地拡張と校舎新設が必要だ。普通科の牛久栄進高も8学級で、2学級増は困難と考え、つくば工科の学級を増やしたのではないか? つくばエリアに県立高は10あるが、いずれも学級増は困難。並木中等の高校2学級増には、校地拡張と校舎建設に加え、教育課程の変更も必要になる。茎崎校は定時制であり、全日制を入れるのは困難だ。 森作教育長の「進学先を確保し、中学生の進路選択に影響がないよう計画を示す」との答弁(2022年11月)を受け、つくばエリアの不足学級数を算出してみた。すると、現時点で15学級不足、2030年までに25学級増が必要―と判明した。 どうするか? つくば市の県立高の現状をみると、学級増だけを求めるのは不誠実だ。そこで私たちは。学級増の一つの形態として、高校新設も含めた次の3案を県に提案した。①困難だが学級増だけ、②学級増+1校新設、③学級増+2校新設―だ。 県も、現在の中学生のために、データを共有化し、学級増計画を早急に示してほしい。「十五の春に泣く学園都市」の汚名返上がつくば市の緊急課題であり、この問題の解決が茨城の発展にもつながることを、多くの方に知ってほしい。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会・代表) ➡片岡英明さんの過去のコラムはこちら

「十五の春に泣く学園都市」つくば 《竹林亭日乗》4

【コラム・片岡英明】つくば学園都市の県立高校不足。このありえない問題を何とか解消したいと模索している。4月26日、茨城県の森作宜民教育長へ3回目の要望書を提出し、高校改革推進室と2時間ほど懇談した。つくば市選出の県議の皆さんも、この問題を議会で取り上げているが、教育長の答弁には揺れがある。 ▽つくばエリアは生徒増だが、周辺エリアを含めると生徒減(2022年3月) ▽つくばエリアに土浦・牛久・下妻エリアを含めると、生徒増(2022年11月) ▽つくばエリアの生徒増より、周辺の生徒減が大(2023年3月) データ公開と基準設定をスタートに生徒増を議論するのに、その範囲が変動しては議論が進まない。また、生徒増算定の基準年が毎年移動し、2030年までの生徒増数も変動する。 北海道が高校の4~8学級の適正規模の発想をやめた(茨城もやめた)と聞き、道教委HPの「公立高校配置計画」(2022年9月) を調べた。茨城県の「高校改革プラン」(2019年2月)には、生徒数などの基本データの記載がないが、北海道には2022年基準の生徒数、エリア生徒数、道立高の収容率などのデータがある。 北海道はアンケート調査結果も公開。その2問目で希望学科を問い、普通科希望が多いことを確認し、学級増減を計画している。茨城県もアンケート調査を実施したが、その結果はHP上にはなく、文書開示で調べると、希望学科の問いがない。 県は普通科増は困難と思っている? 生徒が急増しているつくば市で、なぜ定員割れのつくばサイエンス高が学級増なのか疑問だったが、少し謎が解けた。アンケートを取れば、当然、普通科の学級増希望となる。 しかし、つくば市は県立高が削減されて少なく、普通科で受験生が多いのは竹園高のみ。その竹園高は8学級。所狭しと校舎が建ち、2学級増となれば校地拡張と校舎新設が必要だ。普通科の牛久栄進高も8学級で、2学級増は困難と考え、つくば工科の学級を増やしたのではないか? つくばエリアに県立高は10あるが、いずれも学級増は困難。並木中等の高校2学級増には、校地拡張と校舎建設に加え、教育課程の変更も必要になる。茎崎校は定時制であり、全日制を入れるのは困難だ。 森作教育長の「進学先を確保し、中学生の進路選択に影響がないよう計画を示す」との答弁(2022年11月)を受け、つくばエリアの不足学級数を算出してみた。すると、現時点で15学級不足、2030年までに25学級増が必要―と判明した。 どうするか? つくば市の県立高の現状をみると、学級増だけを求めるのは不誠実だ。そこで私たちは。学級増の一つの形態として、高校新設も含めた次の3案を県に提案した。①困難だが学級増だけ、②学級増+1校新設、③学級増+2校新設―だ。 県も、現在の中学生のために、データを共有化し、学級増計画を早急に示してほしい。「十五の春に泣く学園都市」の汚名返上がつくば市の緊急課題であり、この問題の解決が茨城の発展にもつながることを、多くの方に知ってほしい。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会・代表) ➡片岡英明さんの過去のコラムはこちら

「まずサイエンス高をテコ入れ」 つくばの市民団体要望に県教育庁

学級増はトーンダウン 人口が増加するつくば市で県立高校が不足している問題で、市民団体「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」(片岡英明代表)は26日、森作宜民県教育長宛てに①現時点でつくば市周辺エリアの県立高校は学級数が15学級不足しているとして、高校改革プラン期間中の2026年までに15学級増やし、30年までにさらに10学級程度増やすこと②中学生が安心して進路選択できるよう学級増の計画を早急に示すことなどを求める要望書を提出した。 要望書を受け取った県教育庁高校教育改革推進室は「サイエンス高校の(定員割れの)状況がひじょうにショッキングな状況だったので、まずはそこをテコ入れしていかなくてはならない」とし、考える会が強く求めたつくば市周辺の県立高校の定員増に対しては「つくばエリア(の中学生)が増えていることは理解しているが、周辺地域を含め総合的に判断させていただき検討したい」との回答にとどまった。 昨年11月の県議会一般質問で森作教育長がつくば市周辺の県立高校について「中学生の進路選択に影響が出ないよう検討する」「適切な時期に県立高校の定員を増やしていくことが必要」と答弁したことを受けて(22年11月4日付)、市民団体が改めて学級増を要望した。一方、今年4月に開校したつくばサイエンス高校(旧つくば工科高)が、定員を2学級80人増やしたにも関わらず定員240人に対し72人の志願者しかなかったなど大幅に定員割れした事態を受けて、今年3月の県議会で森作教育長は「既存高校の魅力化を図ることにより志願者確保に努める」「つくばエリアの増よりも周辺エリアのマイナスの方が大きい」と答弁するなど、学級増に対する答弁をトーンダウンさせている(3月8日付、4月9日付)。 26日要望書を受け取った同改革推進室の増子靖啓室長は「要望について真摯に検討させていただくが、県の考えとしては、つくばサイエンス高校や筑波高校に欠員が出ており、我々のPRがうまくいなかったと反省しているが、魅力化を図って、来ていただける学校にしたいということが我々の取り組みの第一」だと強調した。 さらにサイエンス高について「『(普通科を希望する中学生が多いという)ニーズと離れているんじゃないか』というご指摘を(考える会から)いただいたが、つくばには研究機関がたくさんあり、大学進学のニーズもあることを踏まえ、学校を変えて定員増をしたが、結果として大変厳しい結果となったことは反省すべき点だと思っている」とし「一番残念だったのは、昨年の段階でPRした時、説明会にはたくさん来ていただいたが、(校舎が改修工事中だったため)実際の教室とか実習室とか、科学技術のために新しく整備したところを一切見せることができなかった。実際にこういう場でこういう授業ができるということを実際に見ていただければ中学生や保護者も違うのかなと思う」と話し、今年はサイエンス高のPRを強化するとした。 考える会の片岡代表はこれに対し「定員割れしている学校の魅力を高める問題と、歴史的に県立高校や学級数が削減された中で人口が増えて7人に1人しか市内の県立高校に入れないという問題を混同している」とし、定員割れの問題と県立高校不足問題を別々に検討するよう迫ったが、同改革推進室は「周りの県立高校に影響が出るので切り分けるべきではない」と答えるなど、平行線に終始した。(鈴木宏子)

「つくばサイエンス0.3倍」のメッセージ 《竹林亭日乗》3

【コラム・片岡英明】今年からつくば工科高校は2学級増の理科専科のつくばサイエンス高校となった。しかし、定員240名に対し志願者は72名(0.3倍)であった。昨年は160人に対し133人(0.83倍)だったので、志願者・倍率ともに低下した。 サイエンス高の説明会には約700人の生徒保護者が参加し、高い関心があったというが、なぜだろう。「0.3倍」に示された受験生からのメッセージを読み取ってみたい。 県立高必要地区での定員割れ サイエンス高があるつくば市谷田部地区は、合併時4万の人口が11万を超えているが、県立高はつくば工科1校のみである。県立高5校の取手、同4校の筑西よりも人口は多く、つくば市の中でも最も県立高(特に普通科)が必要な地区である。 つくばエリアには、TXが開通した2005年以降、こども増の中で県立高が逆に削減され、県立高不足という構造的な問題が発生している。一方、子ども増の中での県立高の定員割れという、もうひとつの課題も浮上している。この2つの課題を混同せず、それぞれ独自に解決を図る構えが必要である。 サイエンス高の場所を考えると、通学利便性も重要で、説明会でも通学に対する質問が多かった。利便性が従来のままで、定員割れの解消、さらに学級増まで2ステップ前進をねらった今年のサイエンス高新設は、当初より設定目標が高かった。 説明会参加の多さは新しい高校への期待である。その根底に新設校の豊かな学び・青春・進路への受験生の期待がある。生徒・保護者約700人が、ある意味校門まで来たのだ。楽しさや青春のある学園像を示し、受験の決断を促すもう一押し「祭りのステップ」が必要だった。 4学級理系・2学級文系では? 文系理系という日本独特の狭い分類に縛られている点も気になる。生徒がテーマを持って探求活動、つまりサイエンスを行えば、理系大学やマイスターへの道に加え、文系大学への可能性も当然広がる。そんな学びの深まり方も知らせてほしい。 高校受験段階で理科一本に決めかねている生徒も受けとめる柔らかさ、学びながら進路を考える安心が高校には必要である。あえて文理で考えるなら、4学級を理系、2学級を文系ではどうだろう。今後、時間をかけて評価を高め、谷田部地区の中学生がたくさん入学する地元の人気校になってほしい。 前回コラム(3月8日掲載)で扱った、つくばエリアの現時点での15学級、2030年までさらに10学級―合計25学級の県立高不足の解決が急がれる。特に普通科の学級増が急務だ。 今年のサイエンス高の2学級増に続いて、私たちは2024年入試での学級増と「今後の学級増の計画提示」を県に求めている。4月中に要望書を提出し、担当者と懇談したい。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会・代表)

「つくばサイエンス0.3倍」のメッセージ 《竹林亭日乗》3

【コラム・片岡英明】今年からつくば工科高校は2学級増の理科専科のつくばサイエンス高校となった。しかし、定員240名に対し志願者は72名(0.3倍)であった。昨年は160人に対し133人(0.83倍)だったので、志願者・倍率ともに低下した。 サイエンス高の説明会には約700人の生徒保護者が参加し、高い関心があったというが、なぜだろう。「0.3倍」に示された受験生からのメッセージを読み取ってみたい。 県立高必要地区での定員割れ サイエンス高があるつくば市谷田部地区は、合併時4万の人口が11万を超えているが、県立高はつくば工科1校のみである。県立高5校の取手、同4校の筑西よりも人口は多く、つくば市の中でも最も県立高(特に普通科)が必要な地区である。 つくばエリアには、TXが開通した2005年以降、こども増の中で県立高が逆に削減され、県立高不足という構造的な問題が発生している。一方、子ども増の中での県立高の定員割れという、もうひとつの課題も浮上している。この2つの課題を混同せず、それぞれ独自に解決を図る構えが必要である。 サイエンス高の場所を考えると、通学利便性も重要で、説明会でも通学に対する質問が多かった。利便性が従来のままで、定員割れの解消、さらに学級増まで2ステップ前進をねらった今年のサイエンス高新設は、当初より設定目標が高かった。 説明会参加の多さは新しい高校への期待である。その根底に新設校の豊かな学び・青春・進路への受験生の期待がある。生徒・保護者約700人が、ある意味校門まで来たのだ。楽しさや青春のある学園像を示し、受験の決断を促すもう一押し「祭りのステップ」が必要だった。 4学級理系・2学級文系では? 文系理系という日本独特の狭い分類に縛られている点も気になる。生徒がテーマを持って探求活動、つまりサイエンスを行えば、理系大学やマイスターへの道に加え、文系大学への可能性も当然広がる。そんな学びの深まり方も知らせてほしい。 高校受験段階で理科一本に決めかねている生徒も受けとめる柔らかさ、学びながら進路を考える安心が高校には必要である。あえて文理で考えるなら、4学級を理系、2学級を文系ではどうだろう。今後、時間をかけて評価を高め、谷田部地区の中学生がたくさん入学する地元の人気校になってほしい。 前回コラム(3月8日掲載)で扱った、つくばエリアの現時点での15学級、2030年までさらに10学級―合計25学級の県立高不足の解決が急がれる。特に普通科の学級増が急務だ。 今年のサイエンス高の2学級増に続いて、私たちは2024年入試での学級増と「今後の学級増の計画提示」を県に求めている。4月中に要望書を提出し、担当者と懇談したい。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会・代表)

「ハードル高いと受け止めか」県教育長 志願者減のつくばサイエンス高

茨城県議会3月議会一般質問が7日開かれた。今年4月から科学技術の専科高に改編される県立つくばサイエンス高校(つくば市谷田部、現在はつくば工科高)の志願者数が減少した問題について、森作宜民県教育長は「開校初年度でもあり、進学実績が見えない状況にあったことや、『理系の大学を目指す』と掲げたことでハードルが高いと受け止められた」のではないかと答弁した。 つくば市の人口が増加していることを受けて、県は2023年度から同校の改編と併せて定員を2学級80人増やし240人にした。しかし志願者数は72人、志願先変更後の志願倍率は0.30倍だった。市内にある筑波高校も同じく40人を超える欠員が生じた。 森作教育長はサイエンス高について、今後は中学の教員などに聞き取りを行い、入試の結果を分析し、科学への探求心を育てていく学校であることを理解してもらうよう努めるとした。 さらに、サイエンス高、筑波高2校の定員を充足させる必要があり、既存の高校の魅力づくりによる志願者確保に努め、必要に応じて定員増を検討するとし、筑波高校については、ICT(情報通信技術)を活用したAIドリルによる個別最適化学習などにより、一人ひとりに寄り添った指導体制の充実に努めるとした。 星田弘司県議(いばらき自民党)と、宇野信子県議(市民ネットワーク)の質問にそれぞれ答えた。 市民団体がつくば市などつくばエクスプレス(TX)沿線に県立高校の新設などを求めている問題について森作教育長は「既存高校の魅力化を図ることにより志願者確保に努める」など従来と変わらない答弁を繰り返し、「つくばエリア(つくば、常総、牛久市など)に隣接する周辺エリア(土浦、下妻市など)では、つくばエリアの増加以上に中学卒業者の減少が見込まれることから、県立高校を新設する判断には至っていない」とした。さらに募集定員についても、現状をみるとつくば市の中学校卒業生は他エリア同様、市内だけでなく、広範囲の県立高校や私立高校など多様な選択肢の中から学校を選んで進学していることを上げ、そのような通学実態を考慮して、受け皿が不足することのないよう検討すると話した。 傍聴に訪れていた市民団体「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」の代表片岡英明さん(72)は、県議会でこの問題がクローズアップされてから1年が経過した今、「進路選択に影響が出ないように検討と前回の答弁を聞いたときは、大きく前進したと受け取ることができた。しかし今回の答弁を聞く限り、県はつくばの人口増加をどう考えているのか分からなくなった」と落胆をにじませた。(花島実枝子)

高校不足と土浦一高の学級削減 《竹林亭日乗》2

【コラム・片岡英明】学校とは、3月の卒業式の生徒の笑顔のためにある。自分の指導が行き詰ったとき、私は何度も卒業式の生徒の笑顔を思い浮かべた。卒業式は生徒の笑顔に自信を読み取る日でもある。 3月14日は県立高校の合格発表だが、つくばの中学生にはつらい日である。つくばエリアの中学卒業生に対する県立高校の枠を何とか県平均まで高められないか、そんな思いで小さな「高校進学を考える会」で学習を続けてきた。 昨年11月の森作教育長の「中学生の進路選択に影響がないように学級増を行い、その計画を示す」との発言を受けて、私たちは不足学級数を検討した。その不足学級数と改善案を、2月19日の市民のつどいで説明した。この会合には国会議員をはじめ県議の方が5名参加され、多様な観点から深い議論が行われた。 つくば地区、30年までに25学級不足 私たちの会の計算では、県立高校の平均収容率や高校改革プランから、つくばエリア(つくば市、つくばみらい市、守谷市、常総市)で、現時点で15学級、2030年までにさらに10学級、合計25学級増が必要と分かった。 つくばエリアの中学生のために、25学級増を既存の高校でまかなえるのか? それとも学級増のひとつの方法として、高校新設も考える必要があるのか? 学級増と高校新設は対立的なことではないのだから、冷静に生徒数や算定基準を設定し、議論を積み上げれば、必ず着地点はある。 25学級増には、1校2学級として、12~13校の学級増が必要である。つくばエリアには並木中等や茎崎高校を入れても10校しかない。そのため、エリア外の土浦・牛久・下妻の協力を得る必要がある。また、エリア内の高校でも、校舎の増築・校地の拡張・教育の体制などで、2学級増が実際に可能なのかも検討する必要がある。 土浦一高、24年の入試から改善を 今回の改善案では、25学級増の案、10学級の高校新設含む案、10学級と8学級2校の新設を含む案―3案を提示した。その上で、2024年に県立高校の2学級増と土浦一高の定員削減停止を求めた。 手元に「三六会 卒業60周年記念誌 土中三六回同窓会 H8」がある。片岡久会長の発刊の言葉に始まり、恩師永山正先生からの文もある。地域に根差す伝統校の息づかいが感じられる184ページの大著である。 さて、土浦一高は2020年まで8学級募集だったが、2021年に7学級、2022年には6学級となった。それが、2024年から4学級に半減する。以前は、土浦の一つの中学校から10~20人と入学した話を聞くが、2022年は市内8中学で33人だった。これが4学級となれば、20人ぐらいになると心配している。 三六回の記念誌を読むと、卒業生が地域の伝統校としてネットワークを生かし、土浦の産業や文化を支えていることが分かる。高校を広い視点でとらえ、地元の中学生と高校不足のつくばの中学生のため、さらに土浦地域の発展のために、土浦一高の定員削減を停止してほしい。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会・代表)

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