筑波銀行グループの筑波総研(本社土浦市、瀬尾達朗社長)は9月、同行取引先334社(製造業122社、非製造業212社)を対象に今年の経営コスト動向を調査し10月上旬に集計した。それによると、人件費が上昇したと回答した会社が73.4%に達した。1年前の調査に比べ増えており、原材料費・商品仕入高上昇(81.9%)などのほか、人件費増が経営の負担になっていることが改めて明らかになった。
アンケート調査を担当した上席研究員の山田浩司氏は「資源価格上昇の一服と政府の緩和措置などによって燃料費や水道光熱費は低下したが、賃上げや最低賃金引き上げが続いたことで人件費や外注費が上昇した」と解説している。
「コスト増転嫁できない」18%

コスト上昇を販売・サービス価格に転嫁できたかとの質問には、「1~2割転嫁できた」と回答した会社が34.4%と最も多く、「まったく転嫁できていない」会社が17.7%あった。
山田氏は、回答の中から「取引先には、材料コスト上昇については理解を得られるが、人件費に関しては認められにくい傾向がある」(繊維製造)、「大企業の外注費単価が上がらないため、給与アップには限度がある」(情報通信)、「仕入れ分は価格転嫁できているが、燃料費や光熱費などは企業努力で吸収している」(木製品製造)などのコメントを紹介してくれた。
「デジタル化している」7割強

筑波総研は同時に「デジタル化の取り組み状況」も調査した。それによると、デジタル化を進めている会社が7割強を占めたものの、依然としてアナログな業務が多いと回答した会社が3割弱あった。「デジタル化は従業員規模が大きい会社ほど進んでいる。だが、その経費の負担や担当人材の不足が課題になっている」と言う。

デジタル化の内容については、「インターネットバンキング」が一番多く(全産業で79.5%)、「給与管理ソフト」(同65.3%)、「紙書類の電子化・ペーパーレス化」(同44.2)の順だった。
中小こそAI活用のチャンス
全体の傾向について、山田氏は「従業員が多い会社ほど多くの項目で採用している割合が多い。今回調査項目に入れた生成AI(人工知能)は、中小企業向けのツールも存在しているため、従業員が少ない企業でもその活用が期待できる」と、中小企業こそビジネスに生成AIを活用するよう勧めている。(坂本栄)