21日 薬局の待合スペース
自身の体や性に悩みを抱える若者たちの力になろうと、筑波大学附属病院の産婦人科医と同大の医学生らが協力し、10代や20代の若者を対象とした性に関する理解啓発活動に取り組んでいる。17日、企画の発起人である産婦人科医の天神林友梨さんと西田恵子さんがつくば市役所を訪れ、五十嵐青立市長に活動を報告した。
ポップにかわいく
もっと気軽に婦人科を受診してほしい− そんな願いを込めて天神林さんと西田さんが始めたのが「ふらっと、さんふじんか」だ。2023年、周囲の医師や学生らに声を掛けて筑波大の学園祭で2日間ブースを構えたのが始まり。
正しい避妊の仕方、性感染症や子宮頸がんのこと、どんなときに、どんな準備をして産婦人科を受診すればいいのかなど、知ってほしい情報をたくさんのイラストを用いたポスターにまとめて展示した。ほかに、つくば市や近隣地域の産婦人科を、関係者が実際に取材し各医院ごとの「イチ押しポイント」と共にまとめた地図や、専門医による相談ブースなどを用意した。来場者には、用意した生理用ナプキンや企画に賛同する企業から寄せられたコンドームを無料で配布。2日間で約600人が訪れた。

2年目となった昨年の学園祭では学生を中心に1000人を超える参加者があった。男性に向けた展示も用意したところ約300人の男性が足を運んだ。「彼女の生理が重くて…」、そんな相談をする男子学生もいた。設営時に気をつけたのは「ポップにかわいく」することだ。明るい雰囲気を演出することで、1人でも多くの人が気軽に足を止めてもらえるよう気を配った。
もっと日常に近いところで
日頃、外来患者に対応する中で、天神林さんと西田さんが感じてきたのが「自分たちが思うよりも多くの人が、産婦人科の受診に高いハードルを感じている」ことだった。誰にも悩みを打ち明けられずに性の問題に悩み、症状が重くなってから受診する多くの若者たちと出会ってきた。「こんなに来づらいところなのか。院内にいると、気づかなかった」と、西田さんは言う。
「知識不足から望まない妊娠をしてしまう女性もいた。学校を休まなければいけないほど辛い生理に何年も悩んでいる学生もいた。生理はコントロールできるもの。もっと早く受診してくれたらと思う女性たちがいた」と話す。「知っておくべき正しい情報が伝わっていない。もっと日常生活に近いところで彼女たちに伝えたいと思った」のが活動のきっかけだった。
2人は昨年5月、先進的な取り組みを知ろうと、無料または低予算で性に関する悩みを相談でき専門医と繋がることができる欧州の「ユースクリニック」を視察した。スウェーデンでは世界最大規模の公営ユースクリニックを訪ね、デンマークでは積極的に行政の協力を得ながら若年妊娠に応じるクリニックを視察した。
「新生児を遺棄してしまうニュースなどに触れ、どうにかできないかと思うことがあった。外来に来てくれる方の相談には乗ることができるが、病院に来てもらえないと会えない。私たちは病院にいるだけでいいのか。病院に来られない人も助けたい。活動では、気軽に相談できる窓口を用意し、知っておくべき正しい情報を提供し、自分の体について考えるきっかけにしてもらいたい。そして、産婦人科を受診するハードルを下げることに繋げていきたい」と西田さんが思いを語る。
大学の外で初めて
21日には、筑波大学附属病院の向かいにあるクオール薬局つくば桐の葉モール店(つくば市天久保)の待合スペースにブースを構える。パネルを展示するとともに、天神林さんと西田さんを含めて3人の女性医師が待機し相談に応じる予定だ。「大学の外で初めての開催。中・高・大学生くらいの若者が来てくれたら嬉しい。いきなり産婦人科は受診のハードルが高いと思うので、勉強の合間などでもふらっときて、生理や避妊などの悩みについても話してもらえたら。男性も是非来てください」
訪問を受けた五十嵐市長は「つくば市でも5月から、(保健師や助産師などの専門家が相談に応じる)『青のカフェ』を大穂保健センターで始めた。親や先生、友達にも相談できない状況にある子どもが、ひとりで気軽に相談できる場所が必要だと考えて始めた取り組み。『ふらっと、さんふじんか』は、厳しい状況にある若者たちの救いになる活動だと思う。ひとりでも多くの若者の救いになれるよう、連携を模索していきたい」と語った。(柴田大輔)
◆「ふらっと、さんふじんか」は6月21日(土)午後1時から午後4時まで、つくば市天久保2-1-1 アメニティモール1階 クオール薬局つくば桐の葉モール店で開催。参加費は無料。問い合わせはメール(flat.sanfujinka.tsukuba@gmail.com)で筑波大学産婦人科「ふらっと」担当者へ。