日曜日, 9月 29, 2024
ホームスポーツ全国からトップ選手が参加 日本発祥 視覚障害者テニス大会

全国からトップ選手が参加 日本発祥 視覚障害者テニス大会

22、23日 つくば 洞峰公園体育館

日本発祥の視覚障害者テニス「ブラインドテニス」の国内大会「第22回関東ブライドテニス茨城オープン大会」(主催 日本ブラインドテニス連盟関東地域協会)が22、23日の2日間、つくば市の洞峰公園体育館で開催される。ブラインドテニスは1980年代に視覚障害者の競技として日本で誕生し、世界30カ国以上で楽しまれている。今大会には全国から日本のトップ選手らが集まる。

3次元のスポーツ

宙を飛ぶボールの音を頼りにラリーを打ち合い、ボールの落ち際へラケットを持つ手をいっぱいに伸ばして打ち返す。まるでボールを目で追っているかのような激しいプレーに観客はぐいぐい引き込まれる。主催団体で事務局長を務める佐々木孝浩さん(43)はブラインドテニスの魅力を「見えていない中で、空中に浮いたボールを打ち合う『3次元』のスポーツ」だと話す。佐々木さん自身、視覚障害の当事者として競技に打ち込んできた。

ラリーをする佐々木さん

視覚障害者の球技はフロアバレーボールやサウンドテーブルテニスなど、床やテーブルといった平面を転がるボールを打ち合う2次元競技が多い。3次元競技のブラインドテニスは、バウンドしたり、回転したりする際にボールから聞こえる音を頼りに空中を行き交うボールを打ち合う。音が出る特殊なボールを使う。スポンジボールの中に入る金属球同士が、ボールの動きによって中でぶつかり音が出る仕組みだ。変化する音を頼りに選手はボールの位置を把握する。

「空中の音、バウンドした時の音で距離、位置、高さを推測する。回転も音で分かる。スライスをかけられると空中で音が消えることもある。打った時の音でいかにそこ(打点)に入れるか。平面に比べて難易度が高い一方で、他の競技では体験できない感覚を味わえる」と、佐々木さんは競技の醍醐味を話す。

試合は、視力や視野に応じて全盲の「B1」から弱視の「B3」まで3クラスに分かれて行われる。バドミントンと同サイズのコートには、テープで引かれたラインの下にタコ糸をはわせ、盛り上がる糸の感触を頼りに、選手は自分の位置を確認する。

競技は屋内で行われる

80年代に誕生、世界へ

主催団体によると、ブラインドテニスの始まりは1980年代。埼玉、東京、神奈川の障害者スポーツ関係者と視覚障害の当事者が中心になり、視覚障害者もプレーできるテニスの開発が進められた。1990年、国立身体障害者リハビリテーションセンター(埼玉県所沢市)で最初の全国大会が開催されたのが、競技としての始まりだ。2007年からは海外にも紹介され、現在までに5大陸30カ国以上に普及した。近年は国際協会が発足し、ヨーロッパを中心に毎年国際大会が開かれている。参加する日本選手は上位に食い込み、発祥国として世界をリードしている。

茨城大会の始まりは01年。当事者のメンバー有志と日本女子テニス連盟茨城支部の協力で始まった。当初はひたちなか市内の体育館を使用していたものの、11年の東日本大震災で会場が被災したのをきっかけに、同年からつくば市の洞峰公園体育館に移り、18年に牛久市で開催した以外は、洞峰公園での開催を続けている。20年、21年はコロナ禍で中止となった。

普及のきっかけに

現在、国内の競技人口は約300人。国内の代表組織である日本ブラインドテニス連盟では、全国各地で体験会を開いたり、国外へ赴いたりするなど競技の普及に努めている。同競技の地域組織で、今大会を主催する同連盟関東地域協会の杉本唯史副会長(46)は「大会を開く意義は、プレーヤーが競い合い、活躍の場を提供すること。同時に、プレーを色々な方に見ていただき、視覚障害の当事者に興味を持ってもらうこともある。『空中のボールを打つ』という迫力あるプレーを、当事者以外にも見てもらい、競技の魅力を伝えたい」と大会開催に込める思いを語る。同協会の新井彰会長(41)は「今大会には北海道から鹿児島まで、全国からトッププレーヤーが参加する。1試合目から高いレベルの選手同士のラリーが見られるはず。一人一人の独自のプレースタイルを築く選手たちの姿を見てもらいたい」と来場を呼び掛ける。(柴田大輔)

◆第22回関東ブラインドテニス茨城オープン大会は、6月22日(土)が午前11時から午後6時、23日(日)が午前8時半から午後4時まで、つくば市二の宮2-20 洞峰公園体育館で開催。入場無料。来場は事前申し込み必要。問い合わせは関東地域協会事務局(メール jimukyoku@kanto-bta.jpn.org)へ。

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

1コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

1 Comment
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img
spot_img

最近のコメント

最新記事

茨城の食材を使ってインドネシア料理《令和楽学ラボ》31

【コラム・川上美智子】公益財団法人茨城県国際交流協会の事業の一つに「世界の料理ミーティング」というプログラムがある。今年度第1回目はインドネシア編ということで、インドネシアの留学生が故郷の料理を作り、交流した。 当方は毎回、調理サポートとしてこの活動を楽しんでいる。今回は、県立産業技術短期大学の留学生2名と茨城大学大学院農学研究科農学専攻アジア展開コースの留学生4名の茨城県留学生親善大使が参加し、指導役の短大生ディアナさんの指示に従い、2時間かけて料理3品、飲み物1品を仕上げた。 このプログラムには、JICA茨城デスクとJA茨城中央会が協力をしており、JAの情報発信基地である「クオリテLab」(水戸市、JA会館1階)のキッチンが使われている。JAにとっては、茨城のおいしい野菜や農産物を発信する機会でもあり、県産品が異文化とコラボする機会にもなっている。 一緒に料理をしながら、ハラル認証の調味料の購入方法を教えてもらったり、普段は何を食べているのか、日本に留学した理由や卒業後の進路を聞いたり、学びの多い時間でもあった。 昔、母校、お茶の水女子大学食物学科の恩師の食品や調理の先生方とジャワ島を一周し、茶畑やジャスミンティー製造工場を見学し、大学などを訪問したことに思いをはせながら、留学生と時間を共有することができた。 Gado-gado、Nasi Goreng、… 出来上がった料理メニューは、ハラル店舗で購入したガドガドソースをかけた前菜「Gado-gado(ガド ガド)」。ゆでた野菜(トウモロコシ、もやし、白菜、さやいんげん、ジャガイモ)にソースをかけたものである。 2品目はインドネシアの焼き飯「Nasi Goreng(ナシ ゴレン)」。長粒米を真っ白に精白したジャスミン米をやや硬めに炊飯器で炊き、ゆでたエビ、小松菜、ネギと一緒にサラダ油で炒めて、ナシゴレン用の調味料を加え仕上げたおいしい焼き飯である。これに目玉焼、レタス、トマト、きゅうりを添えるのが定番のようである。 3品目は「Salad Buah(サラダ ブア)」。果物に加糖練乳をかけたものである。この日は、茨城の梨と巨峰を使ったが、どちらも皮付きのままで食べているとのことでビックリした。飲み物は「Asem Gula Jawa(アセム グラ ジャワ)」。とても酸味の強いタマリンド(マメ科の常緑樹の実)を使った飲み物である。黒糖と砂糖で適度に甘みを加え、ホットでもアイスでも飲める梅ジュースのような味であった。 故郷の料理に喜ぶ留学生を見て、ともにインドネシアを旅した気分になれた貴重な1日であった。多文化共生とか国際交流とか言いながら、まだまだこのような機会が少ないのが残念である。(茨城キリスト教大学名誉教授、関彰商事アドバイザー)

「聴こえるハザードマップ」土浦市が公開 視覚障害者や高齢者にも届く情報を 

土浦市が今月12日から、音声で伝える「聴こえるハザードマップ」を、市の公式YouTubeチャンネルで公開している。これまでは、被災想定区域や避難場所などを活字や地図などで示したハザードマップを印刷物や市ホームページで公開していた。今回、障害者や高齢者など目が不自由な人にも届くようにと、市として初めて、音声で情報を得られるハザードマップを作った。 市防災危機管理課は「ここ数年、各地で水害による被害が増えている。8本の河川と霞ケ浦がある土浦市でも、多くの方にハザードマップの内容を周知し、防災につなげたいという思いで作成した」と語る。 聴こえるハザードマップは、水害や土砂災害が発生した際に想定される被災想定区域の地区名、市内各地の避難場所や避難手順、緊急時に情報を入手できる情報発信元などを音声で発信している。「洪水ハザードマップ」と「土砂災害ハザードマップ」の2種類があり、「洪水」は水害時の心得、避難情報、浸水想定区域、避難場所、情報収集について、「土砂災害」は避難手順、危険箇所、避難場所について、それぞれ1分から5分程度の内容で五つの音声データに分け、わかりやすい言葉でゆっくりと人の声で情報を読み上げている。 すでに印刷物として配布している「土浦市洪水ハザードマップ」と「土浦市土砂災害ハザードマップ」の2種類を元に作成している。印刷物は、イラストや表、地図とともに、異なる大きさの文字や複数の色を使い分けることで、必要な情報を視覚的にわかりやすく表現している。今回作成した聴こえるハザードマップでは、既存の文字情報を読み上げながら、地図上に色分けされている浸水想定区域や土石流の発生、斜面の崩壊などが想定される区域について、河川ごとに地区名を細かく読み上げることで、聞くだけで位置が特定できるよう工夫をした。 同課は「視覚にハンデのある方にもわかりやすい情報をという要望が届いていた。視覚に障害のある方、高齢の方などにもわかりやすく情報を届けたいという思いで作成した。災害が起きてから危険な場所を知るのでは遅いので、視覚障害のある方、高齢の方、それぞれのご家族に是非、音声のハザードマップを利用し日頃からの備えにしていただければ」と呼び掛ける。(柴田大輔) ◆「聴こえるハザードマップ」は市の公式YouTubeチャンネルで無料で公開されている。今後、同じ内容を録音したCDを作成し、個人や団体に向けて貸し出しできるようにする。詳しくは同市のホームページへ。

農家と協働「田んぼさわやか隊」《宍塚の里山》117

【コラム・福井正人】今回は、私たちの会と地元農家との協働作業である「田んぼさわやか隊」について紹介します。この隊は、毎月第3日曜日の午前中に活動しています。活動エリアは宍塚大池を水源とし備前川に流れ込む、流長約2キロの農業水路流域にある水田(休耕田を含む)と水路になります。この農業水路については、一昨年春、フナののっこみとその水路で見られる魚たちについて書きました(22年3月25日掲載)。 上流域には里山の中心をなす谷津田が、中流域には耕地整備されたものの、貴重な土水路が残された水田が広がっています。 さわやか隊の活動の意義として、①地元農家と非農家の協働作業である、②活動のメインエリアである水路中流域の水田地帯が里山を守るように広がっている、③活動地域のほとんどの水路が土水路として残されており、たくさんの生き物を育む場所となっている、④休耕田を復田して、貴重な湿地を増やす―の4点が挙げられます。 なかでも、地元農家との協働作業であることが、田んぼさわやか隊の最も大きな活動意義です。ほとんどが非農家の当会会員にとって、さわやか隊は貴重な農作業を体験できる場であり、地元農家の側からは、高齢化や離農で人手不足が進みつつある現在、多少なりとも作業の軽減につながっています。 農家とWIN-WINの関係 このように、WIN-WIN(ウィン-ウィン)の関係が、里山における「人」を中心としたパートナーシップの構築に役に立っています。活動中の我々の姿を見て、「ありがとう」と言ってくださる地元の方に会うと、とてもうれしくなります。会員の中には、月1回のさわやか隊の活動に限らず、地元農家の方と、田植えや稲刈り、除草作業などを行う人もおり、活動の幅は広がっています。 また、さわやか隊の活動は、生物多様性の保全にも大きく寄与しています。特に農業水路が土水路として残されているため、デコボコができ、水の流れには緩急ができて、さらに植物も生えることから、生き物にとって過ごしやすい場を提供します。 もしこれが三面コンクリートの水路であったら、大雨の際には激流となって小さな生き物は隠れる場所もなく流されてしまいます。もちろん管理はコンクリートのほうが楽です。だからこそ、貴重な生き物の生息場所を守るための手間を、地元の農家だけに負担させるのではなく、保全団体の我々も積極的に関与しなくてはいけないと思っています。 最近では、当会が始めた里山体験プログラムにおいて、さわやか隊の活動が必修科目となり、大学生などの若い参加者も増えています。少しでもさわやか隊の活動にご興味を持たれた方は、活動に参加してみてください。(宍塚の自然と歴史の会 副理事長)

車検切れ公用車を公務で使用 土浦市

土浦市は27日、車検が切れた公用車1台を5月9日から9月25日まで4カ月半、市農林水産課が公務で使用していたと発表した。 市によると4カ月半の間に、同課の職員6人が37日間、39回公務で運行していた。運行距離は計1376キロ。車検切れの間、事故などはなかった。 9月25日に同課の職員が車を使用した際、車検証の写しを確認し、車検切れであることが分かった。 同車の車検については、管財課が4月10日ごろ農林水産課に文書で通知していたが、農林水産課が車検の手続きを失念してしまったという。 判明後、市はただちに同車の使用を中止。さらに市が所有するすべての車両の車検期間について改めて調査を実施したところ、車検切れで運行している公用車はほかには無かった。 再発防止策として同市は、公用車を管理する各課に対し、管財課が文書で車検満了日を通知するだけでなく、新たに庁内ネットワークで周知し、各課の課長にメールで通知した上で、各課から管財課に車検予約日の報告を義務付けるとしている。さらに運転日誌の表紙に車検の有効期間を掲示し、運転者の意識を改善するとした。 安藤真理子市長は「市民の信頼を損なうことになってしまい深くお詫びします。今回の事態を真摯(しんし)に受け止め、二度と同様の事案が発生しないよう迅速に改善に取り組みます」などとするコメントを発表した。