木曜日, 11月 21, 2024
ホームつくば施設の補修・更新費34億円超 洞峰公園 つくば市、議会に示さず

施設の補修・更新費34億円超 洞峰公園 つくば市、議会に示さず

長寿命化計画で県試算

つくば市が県から無償譲渡を受ける方針を示している県営の都市公園、洞峰公園(同市二の宮、約20ヘクタール)について、園内にある体育館、新都市記念館、フィールドハウス、管理棟の4施設だけで、2024年度以降の維持管理、補修、更新費用などが合わせて34億円以上かかると試算されていることがNEWSつくばの情報開示請求で分かった。県が洞峰公園の各施設の長寿命化計画を策定するにあたって2016年度に調査を実施し、各施設ごとにライフサイクルコストとして算出していた。

情報開示資料によると、各施設のライフサイクルコストは4月に県からつくば市に提供された。さらに6月には補修費用と更新費用の算出根拠となる材料費や単価などが市に示された。

これに対し市は、6月の市議会全員協議会(全協)や7月の市民説明会で、施設の更新費用について見通しを示さなかった。市は議会などに対し、日ごろの維持管理費について年間約1億5100万円かかるとし、施設の修繕費用については80年の目標使用年数を示しながら、「今後、施設全体で想定される施設修繕費の想定額は年間約3500万円程度となる」などと説明していた。今後15~25年間で計約5億8000万円程度の施設修繕費がかかるという試算だが、この数字は、県が算出した公園施設のライフサイクルコストの中の補修費用などを積み上げただけで、最も金額が大きい更新費用は含まれていなかった。

県が長寿命化計画策定にあたって調査し試算した公園施設のライフサイクルコスト。左は体育館アリーナ棟の建物を維持保全するのにかかる試算、右は新都市記念館の試算

更新費用は、老朽化した施設の建築材料や設備機器を新しいものに取り替える費用。補修費用は、施設の大規模な手入れにかかる費用で、いずれも国の指針により長寿命化計画を策定する際に試算することが求められる。県は洞峰公園について、国の公園施設長寿命化計画策定指針や県県有建築物長寿命化実施基準に基づいて、施設の目標使用年数を80年と設定し、国のマニュアルに基づき施設を調査し、ライフサイクルコストを試算した。調査や試算に基づいて長寿命化計画を立て、国の補助金を活用して施設の改修や更新を実施する。

2016年度に県が実施した洞峰公園の調査では、各施設ごとに、建物の完成から50年や60年先の更新見込み年度までにかかる費用をライフサイクルコストとして算出している。ライフサイクルコストには、毎年かかる維持保全費用、5年に1回実施する健全度調査費用と、補修費用、健全度調査費用の計4項目がそれぞれ試算されており、各施設ごとにそれぞれ毎年いくらかかるかを算出している。

1980年に開園した洞峰公園は、プールとアリーナがある体育館、喫茶店やギャラリースペースがある新都市記念館などの施設が今年、築43年を迎える。県が算出した各施設のライフサイクルコストによると▽体育館のプール棟とアリーナ棟の電気・機械設備の更新見込み年度はいずれも7年後の2030年度で、市が無償譲渡を受けた場合、来年度から更新見込み年度の2030年度までにかかると試算されている維持保全・健全度調査・補修・更新費用の合計は約12億1700万円▽プール棟とアリーナ棟の建物の更新見込み年度は2036年度で、今後かかる費用の合計は約15億3200万円▽新都市記念館の更新見込み年度は2040年で、今後かかる費用の合計は約3億9700万円ーなどとなっている。

実際の修繕工事は、建物の状態や予算などを考えて行うため、長寿命化計画で算出したライフサイクルコストとは一致しない。ただし今後、施設の保全にいくらかかるかを調査し、見通した唯一の資料が県が算出したライフサイクルコストになる。洞峰公園にはほかにトイレ、倉庫、井戸などのほか、テニスコート、遊具、園路舗装、ベンチなどの施設や設備が数多くあり、これらを加えると今後かかる費用はさらに膨らむとみられる。

※県長寿命化計画策定資料(公園施設ライフサイクルコ スト算出根拠)より作成。2024年度以降かかる費用は、県が長寿命化計画を策定するにあたって試算した維持保全費用、健全度調査費用、補修費用、更新費用の合計

市が施設の更新費用を議会に示さなかったことについて、これまで市議会一般質問などで大規模修繕費用がいくらかかるかを明らかにするよう求めてきた飯岡宏之市議(自民党政清クラブ)は「(大規模修繕費用について)6月定例会で市は『確認中』と答弁し、最終日の全協でも教えてもらえなかった。この間、市と県とで(資料の)やりとりをしていたのに、なぜ全協で明らかにしなかったのか誠に遺憾。今後は議会に明らかにしてほしい」とし、「県が調査した時点と比べて現在は資材費が高騰しており、現時点で1.5倍以上の費用がかるのではないか」と話す。

これに対し、市公園施設課は「(更新費用については)施設の長寿命化計画を策定の上、国庫補助金を活用しながら施設の長寿命化を図っていきたい」としている。

差額4500万円の内訳は更新費や建物以外の修繕費など

一方県は昨年、パークPFI事業を実施するにあたって、17年度から27年度までで大規模修繕費が年平均8000万円かかるとしていた。市が今年6月、市議会に説明した施設修繕費の年平均の想定額3500万円程度と比べ、4500万円開きがあった。今回情報開示された資料でそれぞれの内訳を確認したところ、県の内訳には、市が試算した建物の補修費などのほかに、市が試算に加えていない建物の更新費と、建物以外のベンチや柵などの更新費などが含まれていた。

つくば市が県から無償譲渡を受けるにあたって、市は市内の建築士に建物の調査をしてもらい、指定管理事業者からの聞き取りと合わせて、修繕が必要な箇所を洗い出した。現在県は、体育館プール棟の雨漏り改修、天井材のボルトの締め直し、プール室内の暖房機器修理、アリーナ棟の空調機器修理、フィールドハウスの外壁レンガの修繕や防水対策などの修繕工事を実施中だ。修繕費用について県は計4000~5000万円になると県議会調査特別委員会で明らかにしているが、引き渡しにあたり現在不具合が生じている箇所の修繕にとどまっており、今回の県の修繕が今後、各施設の補修や更新工事費をいくら減らすことになるかは県も市も調査していない。

洞峰公園は自然林や洞峰沼を生かした筑波研究学園都市最大の都市公園としてつくられ、研究学園都市を南北に結ぶペデストリアンデッキの緑の帯に面する。園内の体育館と新都市記念館はいずれも、著名な建築家の大高正人(1923-2010)が設計した。筑波研究学園都市の名建築の一つで、体育館のプール棟は太陽熱、アリーナ棟は太陽光を利用するなど当時の先進的な技術を取り入れて設計された。新都市記念館は洞峰沼の上に乗り出して建っており、屋根の勾配は圧迫感のない自然な稜線を表現するなど、両施設とも自然と一体となった設計になっている。当時の建設・造成事業費は31億円という。(鈴木宏子)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

29 コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

29 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img
spot_img

最近のコメント

最新記事

県営赤塚公園の秋《ご近所スケッチ》13

【コラム・川浪せつ子】今年のつくば市周辺の紅葉は例年より遅めのようです。つくば市で一番大きい洞峰公園のイチョウ並木も、今年は11月中頃でもまだ緑色。温暖化のせいでしょうか? ですが秋は日々深まりつつあり、至る所で紅葉が見受けられるようになりました。 つくば市役所のホームページによりますと、市内の公園は209カ所だそうです。面積の小さな、駐車場もないような近隣公園もあります。私のお薦めは県営の赤塚公園。駐車場は40台分。市営になった洞峰公園と遊歩道でつながっています。小さな池とかわいらしい水路もあります。 春の桜の季節は見事。とても静かで、近隣の方でないと気付きにくい穴場の公園です。絵のような東屋、ベンチも配置されていますので、ユックリできます。先日は、家族連れの外国の方々が、お子さん達を遊ばせながら、ランチタイム。また、大きな袋を持った女性が、木の枝や実を拾っていました。 近くには、映画館、日帰り温泉… お隣には茗溪学園や住宅。子供たちが遊びに来るからでしょうか、大きな時計も設置されています。先日は、全く水鳥は見えなかったのですが、鳥たちも集まっていることが多いです。自然をそのままに残しているような公園、小さいながら本当に素晴らしいです。 最近、研究学園駅周辺など、新しく移住してくる方が多いですが、どうぞ少し足を延ばしてみてください。赤塚公園の前には、映画館、日帰り温泉、ジム施設などもあります。ジムのボルダリング施設は、オリンピックに出場したスポーツクライミング選手、森秋彩(あい)選手が練習もした所です。(イラストレーター)

中止による減収2億3千万円 土浦花火大会 市が追加負担を決定

市長らの給与減額し道義的責任 土浦市は20日、第93回土浦全国花火競技大会の中止に伴って桟敷席などの収入が無くなり2億3000万円の減収があったとして、同額の補正予算を19日、専決処分で決定したと発表した。併せて、中止により多くの人に心配と迷惑をかけた道義的責任を明らかにするため市長と副市長の給料を減額するとした。 同花火大会は11月2日に開催する予定だったが台風21号の影響により中止。荒天の場合、3日または9日に延期する予定だったが、労働力不足により順延日の警備員を確保できず大会自体を中止とした(11月1日付、5日付、17日付)。 桟敷席の設営や撤去などすでに実施済みの委託業務や、中止に伴い新たに発生する経費を速やかに支払うため、議会の議決を経ないで決定する専決処分としたとしている。2億3000万円は、市が事務局を務める土浦全国花火競技大会実行委員会(会長・安藤真理子土浦市長)に追加補助する。市は当初予算ですでに同実行委に8500万円の補助金を計上しており、中止となった大会の事業費は計3億1500万円になる。全額を市が負担する。 給与の減額は市長が月額20%、副市長が10%を12月から来年2月までの3カ月間減額する。12月の期末手当も市長が20%減、副市長が10%減となる。3カ月間減額する条例についても19日、専決処分とした。 安藤市長は「中止による減収を補うため新たに補助金を増額する結果となってしまったことについて、市民の皆様に心よりお詫びします。開催を心待ちにしていた皆様、 煙火業者の皆様、全ての関係者の皆様に対し、多大なご心配とご迷惑をお掛けしたことについて会長として責任を強く感じています。 今後は花火大会への信頼回復に努め、大会の運営等、様々な課題を検証し、次回の大会につなげて参ります」とするコメントを発表した。

オリジナルレンコン料理専門店開業へ 土浦市産業祭で一部メニューお披露目

日本一の産地である土浦のレンコンを使用したレシピを開発し提供するオリジナルレンコン料理専門店を開業しようと、同市でインターネットテレビ「Vチャンネルいばらき」を運営する会社社長の菅谷博樹さん(55)と、つくば市下広岡で軽食店「ニッチDEキッチン」を運営する増田勇二郎さん(53)が準備を進めている。開業に先立って23、24日開催の第48回土浦市産業祭でオリジナルメニューの一部をお披露目し販売する。 店名は「土浦れんこん物語」。来年1月ごろ土浦駅西口近くの同市川口、ショッピングモール「モール505」の空き店舗に開業し、ランチを提供する予定だ。店を運営する合同会社「土浦れんこん物語」を近く設立する。 菅谷さんによると、土浦にスイーツ店を構えたことがある増田さんと今年9月頃、土浦の活性化について話した際、「レンコン専門店で土浦をもっとアピールしたい」と意気投合したのがきっかけ。 菅谷さんは「レンコンといえば土浦市だが、あまり県外に浸透していないと感じている」と言い、「レンコンを使ったオリジナルメニューを提供し、市内はもちろん全国、海外にも発信したい」と、食を通じた観光促進と地元産業の活性化を目指したいと語る。新店舗のコンセプトについて「農家+料理の職人がコラボレーションしてオリジナルの新しいレシピを作り出していくこと」だと話す。 提供するメニューには、土浦市とJA水郷つくば主催の「日本一のれんこんグランプリ」で2022年と23年に2年連続最優秀賞を受賞した「市川蓮根」(同市田村、市川誉庸代表)」が生産したレンコンを使用する。メニューの開発と監修は、筑波山温泉ホテル一望(つくば市筑波)の料理長を務めた逸見千壽子さんに依頼した。 提供するランチは700円から2000円程度とする予定で、ほかにキッチンカーでの販売も予定し、インターネット販売なども模索している。 コロッケとお焼きを販売 すでにいくつかのオリジナルメニューが完成しており、そのうち「れんこんコロッケボール」と「れんこんお焼き」を23日、24日、モール505で開かれる産業祭で、「ニッチDEキッチン」のキッチンカーで販売する。 れんこんコロッケボールは、レンコンのすりおろしとジャガイモを9対1の割合で配合し、真ん中にカットしたかみ応えのあるレンコンが入っている。食べやすいよう一口大のボール型にしカップに複数入れて販売、クシで刺して食べてもらう。「れんこんお焼き」は、逸見さんオリジナルのレンコン甘辛味噌が入ったお焼きだ。 菅谷さんは「レンコンを使ったオリジナルメニューを今後も開発、提供し、モール505の活性化にもつなげたい」と意気込みを語る。(伊藤悦子)

もったいない(2)《デザインを考える》14

【コラム・三橋俊雄】今回の「もったいない」は、「一物(いちぶつ)全体食」の話からいたしましょう。一物全体食とは、穀物なら玄米のように胚芽まで全部を食べる、野菜や果物なら皮ごと、魚なら骨や頭まで1匹丸ごと食べるという意味で、生物が生きているというのは、丸ごと全体で様々なバランスが取れているということであり、そのまま人体に摂取することで人の身体にも望ましいという考えです。 ウド(独活)の一物全体食 植物のウドも、穂先から茎、皮まで丸ごと食べられる「一物全体食」の食材です。捨てるところがほとんどありません。地中で育つウドの白い茎は酢の物に利用され、穂先の若芽は天ぷらに、硬い皮は細く切ってきんぴらの材料にします。さらに茎の根側の堅い部分は煮付けに用いられるなど、ウドは、それぞれの部位がその特質に合わせて料理に生かされているのです。 ウドという植物を余すところなく食材として使い尽くすこと、そして、前回のコラムでご紹介した「桐材」の多様な利用の仕方も、人間の創造的な知恵の産物であり、「一物全体活用」と言っていいと思います。 さらに、以下にご紹介するのは、一つの「材」ではなく、一つの固有な地域風土が有する「様々な資源」を総合的・循環的に捉えて活用する、三澤勝衛(1885~1937)の『風土産業(1941)』についてです。 塩尻峠横川部落の風土産業 三澤は、横川部落における気候風土の中から、凍(し)み豆腐づくり、養豚、養蚕に着目し、上図に示すような、その地域ならではの循環型資源活用のあり方を提唱しました。 それは、 (1)大豆を購入し、豆腐に加工し、寒い塩尻颪(しおじりおろし)が吹く晩に、凍み豆腐を製造する。 (2)一方、豆腐の搾り粕(かす)の「おから」は、飼っている豚の主要飼料となり、その豚は、肉・皮が利用され、それ以外にも、骨は骨粉にして肥料に、また、油脂も利用する。排泄物は養蚕用の桑や夏期野菜の肥料に使う。 (3)蚕は桑を食べて繭をつくり、その繭は製糸工場で生糸に紡がれる。 (4)繭を売った収入は、冬期の凍み豆腐づくりに向けて大豆購入の資金となる、というものです。 三澤が示したこの「風土産業」は、地域固有の気候風土の中で産み出された様々な資源を、一つの廃物も出さずに全て利用し尽くす循環型の産業であり、今日言われている「循環共生(エネルギーや食を地産地消しながら地域内で資源が循環する自立・分散型の社会づくり)」の先進的モデルと言えるでしょう。そして、広い意味での「もったいない」のデザインと言ってもいいでしょう。(ソーシャルデザイナー)