【コラム・沼田誠】総務省が5月に公表した2025年国勢調査速報値(2025年10月1日時点)で、つくば市の人口が26万8991人となり、水戸市の26万5773人を抜いて県内最多になった。水戸が県内首位を譲るのは1975年以来50年ぶりだという。水戸に縁のある私としては個人的な感慨もあるが、それよりも語りたいのはその先のことだ。
この逆転は突然起きたわけではない。前回コラムで見たとおり、つくばの中古マンション単価は2010年から約15年で46%も上昇した(水戸は+7%)。つくばへの転入者の37%は東京都・千葉県・埼玉県・神奈川県から。首都圏の住宅事情の悪化が、TXで都心とつながるつくばを「子育て世帯の受け皿」に変えつつある。その動きが、人口増の形で表面化している。
現場の感触もこれと重なる。何年か前のこと、あるデベロッパーが十数年ぶりに茨城県でマンションを供給した際、つくばと水戸にほぼ同時に同じブランドを建てた。両市の担当者から別々に話を聞く機会があったが、ターゲットは水戸では地元、つくばでは首都圏から広い部屋を求めて来る世帯とのことだった。つくばでは、別の不動産会社の方から「このマンション販売を機に他物件にも東京圏からの注目が集まった」と聞いた。
旧住民はプリン、新住民はカラメル
ところで、市の人口が増えれば「うまくいっている」ことになるのだろうか? 五十嵐つくば市長はSNS上で、「『増えた』という事実は、『すべてがうまくいっている』を意味しません」と書いている。何がうまくいっていないか、いろいろ解釈があるだろう。私が気にかかることは、新住民の声が市政に届く「経路」がどうなっているのか、ということだ。
何年か前、ある行政関係者がこのような話をしていた。「つくば市はプリンに例えられる。新住民はカラメルで、目立つけど上に少し乗っているだけ。本体のプリンは旧住民。彼らが市政を動かしている」。人口が増えてもその本体は旧住民が担うということだろう。では、「カラメル」の声はどのように市政に届くのか?
地域の要望は、自治会や町内会を通じて行政に上がることが多い。だが転入したばかりの世帯は、その枠の外にいることが少なくない。とりわけマンションの住民は、管理組合という「縦」のつながりは持っても、地域という「横」にはつながりにくい。また、組織された地縁の票に比べ、ばらけて見えにくい新住民の声を、あえて拾い上げようとする市議はいるのだろうか?
もちろん、新住民にも地域に入り汗をかく人もいる。だが、個々人の努力に委ねるだけでは限界がある。問われるのは、行政がいかに能動的に声を拾い、前例に捉われず変化に対応していくか、だ。もっと言えば、旧住民と新住民が「同じ市民」として交わる場をどう設計するか、だ。その必要性は、まだ十分に想像されていない。
新旧を越えた「つくば市民」像を
第1回コラムでは、人口を増やしても、地域に主体的に参画する住民が増えなければ、住みやすい地域にはならないと書いた。人口が県内トップになったことで、つくば市政はこの問いを一段と重く感じるだろう。新住民を「カラメル」のまま終わらせず、新旧の垣根を越えた「つくば市民」像を、行政と住民が共に育てられるか―水戸市とつくば市の人口逆転は、その問いともいえる。(元水戸市みとの魅力発信課長)






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