月曜日, 7月 14, 2025
ホーム土浦いじめをなぜ止められなかったのか 保護者が再調査求める 土浦の中学校

いじめをなぜ止められなかったのか 保護者が再調査求める 土浦の中学校

中学生だった2019年4月から22年3月までの3年間、土浦市内の公立中学校でいじめを受けていた男子生徒(現在は高校2年)の保護者が、市に対し、いじめ防止対策推進法や市いじめ防止基本方針に基づく再調査を求めている。

保護者は昨年5月に要望を出し、市長は同6月「再調査を行う予定はない」などと回答した。保護者はさらに市教育委員会の担当者から同7月「(22年)7月に弁護士と教育委員会の間で、男子生徒に関する問題はすべて終結し、今後、保護者とは対応しないとの確認があった」などと言われ、対応してもらえない状況だという。

障害を揶揄

男子生徒は身体に障害があり、学校では補装具を付けて歩いたり、車いすで移動している。排せつの感覚がないため4時間ごとにトイレに行き、自分で排せつを行う必要がある。5時間以上トイレに行かないと体に悪影響が出る。

保護者によると、小学校の時からいじめがあり、中学入学直後、同じ小学校出身の同級生からいじめが始まり、広まった。「死ね」と書かれた手紙を渡されたり、筆記用具が無くなったり、クラスのグループLINEに写真を掲載され悪口を書かれたりした。休み時間に個室のトイレに入っていた時、ドアを激しくたたかれたり蹴られたりしたことが繰り返しあった。怖くてトイレに行けなくなり、体調が悪くなって薬を服用したこともあった。

車いすを揶揄(やゆ)する悪口や陰口を言われたり、補装具を付けて歩く姿を真似され笑われた。中1の体育祭では「応援合戦に出るな。それがクラス全体の意見だ」と言われ、見学した。男子生徒はクラスに居場所がないと感じ、その後、中1の3学期が終わるまで特別支援学級や市の適応指導教室などで個別学習をするようになった。

学校は、男子生徒から相談を受けたり、保護者から連絡を受けるなどして、その都度いじめに対応。加害生徒も男子生徒に謝罪するなどした。学校はさらにいじめに関しクラスアンケートを取ったり、道徳の時間にいじめについて話し合ったり、加害生徒の家庭訪問を行うなどした。中1の2月に実施されたアンケートではクラスの生徒から延べ30件のいじめの報告があった。

学校と教育委員会はさらに、いじめ重大事態として中1の2月から、第三者を加えたいじめ対策委員会をつくり調査を開始、中2の21年3月までに調査報告書をまとめた。報告書の中で、学校が認定したいじめは9件で、加害生徒は14人になった。報告書にはいじめ防止対策や男子生徒への支援策などが記された。

対策中もいじめ止まず

一方、いじめ対策委員会の調査中もいじめは止まず、中2、中3になってからもいじめは続いた。男子生徒は中2の秋、所属していた部活動でビデオを撮影した際「足手まとい。(男子生徒を)入れずに撮影しよう」と言われ、休部し、別の部活動に移った。同じ時期、クラスの複数の生徒から、近くを通りかかった際、腕や背中、腰を殴られることが継続的にあった。男子生徒は脊椎が損傷しており手術を受けている。背中や腰を殴られれば麻痺(まひ)が広がる恐れもあった。

ところが中2の3月にまとめられた調査報告書には、中2で受けたいじめの調査報告が無かった。中3の3学期にも一部の生徒から廊下や階段で「ざこ」「かす」などと繰り返し言われた。県立高校入試の際は、自分をいじめている生徒が同じ高校を受験することが分かり、受験校を変更した。

中途半端な謝罪で幕引き

中2の1月、いじめ対策委員会が調査を終えることを知った男子生徒の保護者は、学校に対し「(加害生徒の)表面的、形式的な謝罪で幕引きを図っている。(学校は)事態を矮小化し、クラス全体に十分な指導を行わなかったために、いじめはその後も続くことになってしまった。(加害生徒の)中途半端な謝罪を認めることが適切であったか検証すべき」「(息子と)加害生徒との食い違いは解消されておらず、報告書に取り上げられてないいじめが多数あり、事実関係は明らかになっていない。いじめは続いており、学校・教育委員会の取り組みはいじめの再発防止につながっていない」などとして調査継続を求めたが聞き入れられなかった。

この問題は中2だった21年3月の教育委員会定例会に報告され、中3になった翌年度6月、補足訂正の報告が行われた。教育委員の1人から「(いじめが)続いているとしたらこれは相当大変な事案。この年齢になると周りの大概の子供は(障害を抱えている子供に対する)そうした良識を身に付ける。それこそ、いじめをやっている子供たちこそがカウンセリングが必要」などの意見が出た。

調査が不十分

いじめ防止法と市の基本方針は、十分な調査が尽くされてない場合、市長の再調査についても定めている。保護者は「トイレをたたいたり蹴ったりした事案は繰り返し行われ、男子生徒は『ごめんなさい、ごめんなさい』と泣き叫ぶほどだったのに、調査報告には『恐怖と不安を感じた』とだけ記すなど調査が不十分。中1の2月に実施したクラスアンケートでは延べ30件のいじめの報告があったのに、調査されたいじめは9件にとどまっている。中2のときに受けたいじめが調査報告から抜けている。中2の秋に、数人の生徒に背中や腰、腕を殴られた事案は(障害がある男子生徒にとって)まひが広がる恐れがある重大事態だったにもかかわらず調査報告書に記載がない」など、調査が不十分だと指摘する。

話し合い再開してほしい

男子生徒の父親(49)は「教育委員会も学校も『相手にしない』という姿勢で話を受け付けない。教育委員会担当者とは中3の2月以降、学校とは卒業後の4月以降、話ができていない。重大事態調査終結後も、学校、保護者、教育委員会の3者が連携して子供を守る約束だった。なぜ一方的に約束を反故にしたのか。話し合いを再開してほしい」と話す。

市教育委員会指導課は、男子生徒に対するいじめや、いじめ防止の対応などに関するNEWSつくばの取材に対し「関係する生徒等の個人情報やプライバシーに関わることであり、回答を差し控えさせていただく」とし、「本いじめ問題の解決に向けては、本人や関係生徒、関係する保護者等に対して、調査、指導、回答、報告等を丁寧に行い、教育的な配慮に基づいて、粘り強く事実の確認や再発防止のための策を講じてきた」などとしている。(鈴木宏子)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

31 コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

31 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

土浦二 1勝ならず 鹿島学園に6回コールド【高校野球茨城’25】

第107回全国高校野球選手権茨城大会は7日目の13日、4球場で2回戦8試合が行われた。J:COMスタジアム土浦の第2試合では土浦二が鹿島学園と対戦し、6回コールドで敗れた。 13日 2回戦 第2試合 J:COMスタジアム土浦土 浦 二  000000  0鹿島学園 330013X 10 土浦二は序盤の大量失点を取り返せなかったが、試合の中でチームの持ち味を見せることができた。石井咲久也主将は「昨年の先輩の成績を超えたい思いはあったが、簡単には勝たせてもらえないレベルの高さを感じた。来年はもっと強いチームになれる。一日一日を大切に頑張ってほしい」と後輩にエールを送った。 先発投手の橋本真直が初回から打ち込まれた。打者8人に4安打1四球を与え3点を献上。「緩急は通用したが厳しいコースを痛打された。上位から下位まで隙がない恐ろしい打線」と橋本。「ていねいにコーナーを突く投球だったが反対方向に低い打球を飛ばされた」と相良真博監督。 橋本は、打たれた分は自分のバットで取り返そうと、2回表にはチーム初安打を記録。「甘い球を全開で振っていった」という左前打で出塁し、次打者の6番・瀧田遥斗が送って2死二塁。7番・清水陽太のとき捕逸に乗じて三塁を回ったが、三本間で挟殺された。これが唯一の得点機だった。 2回裏の橋本は、2安打1四球に走者と野手が交錯する不運も重なり、再び3点を失ったところで降板。代わりにマウンドへ上がったのはのは信戸葵夷。80~90キロのスローボールを低めにコントロールする投球スタイルだ。「自分は球が遅いので高校で野球を続けることに迷いがあった。だが3年生が『投手は球速ではなく制球力だ』と言い、野球の楽しさを教えてくれた。アウトを重ねて先輩が笑顔でナイスピッチと言ってくれるのがうれしかった」と思いを語った。 鹿島学園はこの投球に惑わされ、3~5回は散発3安打でわずか1得点のみ。「投手のコントロール力を軸に守備位置なども工夫した結果、0点の回をつくりゲッツーも取ることができた。投手と守備が連携し、各ポジションがそれぞれやるべきことをやってくれた」と石井主将。「0点の回を2つ続けられたことは3年生への恩返しになったと思う。球の遅さに悩んでいる全国の高校球児にも勇気を与えられたら」と信戸。 今年の土浦二は1、2年生が大半を占めるチーム構成なので、来年への期待が高い。信戸は「この悔しさを糧に、来年は自分たちが中心になって夏1勝に向け、日々練習に励みたい」と目標を掲げ、橋本は「来年、どこと当たっても絶対打たれない投手になって、また夏のマウンドに立ちたい」と心に誓った。(池田充雄) つくば国際、土浦工業が勝利 13日の土浦、つくば地区の高校の試合結果は、J:COMスタジアム土浦の第1試合でつくば国際が佐和に9回の勝ち越しで3-2と勝利、笠間市民球場の第2試合で土浦工業が八千代に9-3と大勝した。 13日 2回戦 第1試合 J:COMスタジアム土浦つくば国際 110000001 3佐   和 000101000 2 13日 2回戦 第2試合 笠間市民球場八千代 100000110 3土浦工 00003321X 9 ◆3回戦以降の日程は以下の通り

土浦日大 初戦で水戸商に敗れる【高校野球茨城’25】

2年前、夏の甲子園で4強入りした強豪土浦日大が、初戦で伝統校の水戸商業に敗れた。第107回全国高校野球選手権茨城大会は7日目の13日、2回戦8試合が行われた。ノーブルホーム水戸では土浦日大が水戸商業と対戦、1-2で破れた。 13日 2回戦 第1試合 ノーブルホーム水戸土浦日大 001000000 1水戸商業 00000020× 2 強豪土浦日大と、伝統校水戸商業の試合とあって、スタンドには多くのファンが詰めかけた。大会7日目で初戦を迎えた土浦日大の小菅勲監督は「自分を信じて思い切りやれ」と選手に声を掛けて送り出した。 3回表、土浦日大はエラーと四球で1死1、3塁のチャンス。「絶対にランナーを返す強い気持ちで打席に入った」という伊勢山暖は、水戸商業の先発 大内来芭のスライダーをセンターに弾き返し、チーム初ヒットとなる先制のタイムリーを放ち、1点を先制する。 土浦日大の先発 永井柊帆は4回までノーヒットに抑えるが、5回に守備の乱れと初ヒットを許し無死満塁のピンチを招く。永井は「ここを抑えれば(チームが)流れに乗るので絶対に抑える」という強い気持ちで投げ、後続を抑えてピンチをしのいだ。 永井を援護したい打線は7回に1死3塁のチャンスをつかむが、近藤祐哉が凡退。するとその裏、永井は2本のヒットを浴び、2死2、3塁とされ、水戸商の代打菊地拓真にライト前タイムリーヒットを打たれた。2者の生還を許し1ー2と逆転される。 反撃したい土浦日大は9回、先頭の梶野悠仁が2塁打でチャンスをつかむが、続く牛久保亮平が空振り三振、一村璃来がセンターフライに倒れると、最後の大橋篤志の打球はセンターの好守備に阻まれ敗れた。 先発の永井は8回を1人で投げ抜いた。「いつも通り、練習通り、やってきたことができたし、今やれることはやった」と永井。スライダーを中心に真っすぐ、ツーシーム、シンカーを使い分け2失点に抑え好投するも、打線が援護出来なかった。 梶野悠仁主将は「野手が永井を援護出来なかったのが悔しい。自分が主将になってから甲子園を目指しやってきて、チームが上手くまとまらない時があったけど、最高の仲間たちとここで負けてしまったのが悔しい」と悔し涙を流しながら語った。 先制のタイムリーを放った伊勢山暖は「自分は2年生で、3年生に引っ張ってもらった部分が大きかったので、自分が先輩に学んだことを後輩たちに引き継いで、結果で3年生に恩返ししたい」と新チームでの雪辱を誓った。 小菅勲監督は「初戦は難しく、初回から固さが取れず、自分たちのスイングが出来なかった」と振り返り「先発の永井はよく投げた。1点も与えられない展開の中で、自分の限界を超えて頑張ってくれた」と永井をたたえた。「9回の無死2塁の場面では逆転を狙って4番の牛久保に思い切って打たせて、結果的に点が入らなかったが、悔いはない」とも語った。(高橋浩一)

追悼カフェ・ド・コトブキさん《ご飯は世界を救う!》68

【コラム・川浪せつ子】暑い日々が続いております。7月3日、私が絵を描き始めた時からお世話になった「カフェ・ド・コトブキ」(土浦市荒川沖町)の店主さんが、熱中症で突然召されました。8日がお葬式でした。7日までつくば市でグループ展をやっていて、その最終日の翌日。7日がお葬式だったら行けなかった。優しかった店主さん、待っていてくださったのだと思いました。 旧常陽新聞に、私がこの欄を掲載し始めたのは、東日本大震災の翌月からでした。そして、ネット新聞「NEWSつくば」に移り、また掲載させていただいたのが2018年7月からでした。その初回で取り上げたのが「カフェ・ド・コトブキ」。開業が1985年でしたから、39年間で幕を閉じたことになります。 この欄で同じお店を2回取り上げたことはありません。それに、お店は無くなってしまったのに…。今回は、店主さんへの追悼として掲載をお許しください。 何でも先延ばしにしてはいけない かつては、息子の塾通いの送迎時などでよく寄らせてもらい、ミニ展示会もお店で3回させてもらいました。しかし、我が家からは少し距離もあり、最近はご無沙汰していました。「またランチスケッチさせてくださいね」と言いつつ、下の絵(2023年)が最後のスケッチ。今年初めにうかがったものの、3月と7月は私の展示会があり、7日の展覧会が終ったら行こうと思っていたのに…。 残されたご家族に、今まで描いたスケッチをまとめて差し上げたいと思っています。今回つくづく感じたことは、何でも先延ばしにしていては取り返しのつかないことが起きてしまうということ。会いたい人には、直ぐにでも会い、いつかやりたいと思っていることは、なるべく早くやることです。合掌。(イラストレーター)

土浦三 科技日立破り3回戦へ【高校野球茨城’25】

第107回全国高校野球選手権茨城大会は6日目の12日、2回戦が行われた。ひたちなか市民球場ではBシードの土浦三が登場、1回戦で逆転勝ちし勢いのある科技日立を7ー4で破り、3回戦進出を決めた。  12日 2回戦 第2試合 ひたちなか市民球場土浦三高 201002101 7科技日立 000030010 4 土浦三は初回1死から下村悠真のヒットと盗塁で1死2塁のチャンスに、鈴木大芽がセンター前タイムリーを放ち先制した。続く星典蔵、池田翔の連続ヒットで満塁とし、大塚秦多の犠牲フライで1点を追加した。 3回にも1点を追加し3点をリードすると、土浦三の先発池田翔は4回まで科技日立打線を1安打に抑えた。しかし5回、1死後に連続四球と2本のタイムリーと内野ゴロの間に同点とされた。 直後の6回、1死2、3塁のチャンスに山本真聖がセンターへの2点タイムリーヒットで勝ち越し。山本は「(相手が)前進守備だったので、コースを絞って強く叩く気持ちで振り抜いた」と話した。 7回には、2死2塁で先発投手からレフトの守備についていた池田翔に代わって、代打島田優聖がストレートをセンターへタイムリーヒットを放ち、突き放した。「池田の代打とは思わなかったので驚いたが、しっかり準備はできていた」と島田。9回にも来栖大蒼の犠牲フライで1点を追加した。 粘る科技日立は、5回途中から池田に代わりセンターの守備からリリーフした2番手黒田広将を攻め、無死2、3塁と反撃に出るも、黒田がスピリット、カーブ、ストレートを上手く使い分け、気迫のこもった投球で3者連続三振に仕留め、チームを3回戦進出に導いた。野手と投手の二刀流の黒田は「次の試合でも打つ方も守備も投げる方もいつも通りチームに貢献出来るように頑張る」と誓った。  3安打を放って鉄壁な守備でチームに勢いを付けた下村悠真は「夏の大会初戦は自分自身経験したことがなくとても緊張感があったが、楽しみつつ思い切りプレーすることが出来た。先制のホームを踏みチームが盛り上がった。次の水戸葵陵は打力のあるチームなので、自分たちの武器である守備をしっかりやって守備から攻撃に流れを持ち込み勝ちにつなげる」と力を込めた。 土浦三高の竹内達郎監督は「科技日立はしっかり鍛えられた、しぶとい、いいチーム。夏の大会は(対戦相手同士の)お互いの思いがぶつかり難しいが、ひるまずにリラックスして闘えたのが良かった。選手には焦らずに狙い球を定めて自分のスイングをしてこいと伝えた。島田は代打の切り札として春から勝負強さが目立っていた。ストレートをよく打った」と島田をたたえ、「次の試合も1試合ずつ勝っていきたい」と語った。3回戦は16日に水戸葵陵と対戦する。(高橋浩一)