日曜日, 12月 7, 2025
ホームスポーツ運動栄養学を学ぶ筑波大生 「アスリートレストラン」開催 事業化目指す

運動栄養学を学ぶ筑波大生 「アスリートレストラン」開催 事業化目指す

【田中めぐみ】筑波大学体育専門学群で運動栄養学を専攻する3年の佐々木雄平さんが、学生団体「つくばアスリートレストラン」(TAR)をつくり、昨年10月から同大の学生宿舎などで、アスリート向けの食事会「つくばアスリートレストラン」を開いている。26日には市内のパブで一般向けイベントを開催する。

この日の献立(つくばアスリートレストラン提供)

「おなか減ったー」「いただきまーす!」。筑波大学の学生宿舎グローバルヴィレッジコミュニティステーション2階で4月28日、アスリートレストランが主催する食事会が開かれ、男子ラクロス部員35人が集まった。

TAR代表の佐々木さんがラクロス部のために考えた献立は、ひじきと豆腐のサラダ、水菜のコールスローサラダ、鶏むね肉のキノコあんかけ、ワカメと卵の味噌汁、カブのガーリックオリーブ炒め。ブドウと牛乳も付いており、17品目の食材を使っている。管理栄養士で同大大学院人間総合科学研究科1年の中村萌香さんが栄養バランスのチェックをした。佐々木さんと中村さんが調理のほとんどを行ったが、部員たちも率先して手伝った。

おかわりが進み、ご飯はあっという間に売り切れ。しっかり食べた後には栄養クイズ大会が開かれた。スマートフォンを使ってクイズに参加し、その日食べたものがどのような働きをするのか、楽しみながら学ぶ形式だ。1問ごとに得点順位が発表されると部員たちは一喜一憂し、会場は盛りあがった。

調理をする代表の佐々木雄平さん(右)と管理栄養士の中村萌香さん

全料理で5大栄養素摂取

アスリートレストランは今回で8回目となる。主食・主菜・副菜・汁物・果物・乳製品を提供する。参加費は500円。すべての料理で身体に必要な5大栄養素を摂ることができる。食事会に協力しているスタッフは32人で、協力の頻度はまちまちだが集まれる人が参加して運営している。食事会には毎回20~30人のスタッフが集まっているという。

食事会の前には「食生活バランスチェックシート」に記入を行い、それぞれが日ごろの自分の食生活を省みる。ラクロス部で人間学類3年の早稲田拳さんは「シートに記入して牛乳や乳製品が足りていないことが分かった。元々あまり野菜が好きではなく、親と暮らしている時は食べたくないなあと思っていたが、1人暮らしを始めてから意識して食べるようにしている」と話す。社会工学類3年の岩見悠太郎さんは「部活の朝練をしているのに朝ご飯を食べずに授業に行くことがある。1人暮らしなので品数をそろえるのが難しい。毎回献立を決めるのも面倒なので食事会はありがたい」と話す。

きっかけはインスタ

佐々木さんは大学に入学してから料理の楽しさに目覚め、インスタグラムに自作の料理写真を投稿してきた。写真を見たアスリートの友人から「おいしそう」「食べてみたい」という声が挙がり、「材料費を出してくれたら家に食べに来てもいいよ」と友人を招いたのがきっかけでアスリートレストランを主宰するに至った。

食事会の開催にとどまらず、佐々木さんは、食を通じて地域とアスリートとのつながりを作る方法を考えている。この日使った材料のカブは千葉県我孫子市の農家が作った。同大の農業サークルの学生が手伝いに行き、代わりに提供してもらったという。「地域には、農作業をする人がいない、野菜が余っているといった声がある。若者の手を借りたい地域と、栄養のある食事をしてスポーツの応援をしてほしいという若者の声をマッチングさせるプラットホームを作ることができれば」とプロジェクトを練っている。

つくば市内の農家からの協力も得、今後、米やキノコ、ヤーコンなどの材料を提供してもらう予定だ。将来的には事業化を目指しており、つくば市都市計画部主催の「つくばR8地域活性化プランコンペティション」=メモ=に応募するという。「人が喜ぶこと、人の役に立つことが一番の原動力になる」という佐々木さん。アスリートの食事を充実させ、食を通じて人々の交流を創生するのが目標だと語る。

◆26日の一般向けイベントは、アスリートレストラン開催10回目の記念として、パブ「ブラッセリー&バー・フィンラガン」(つくば市天久保2-9-2、リッチモンド2番街B-203)で開催する。午後6時から午後9時までの間の予約が可能で、無農薬の有機野菜を使ったメニューを予定しているという。料金は学生800円、一般1200円。定員40名。予約は掲載のQRコードから。

26日の一般向け食事会の予約用QRコード

◆つくばアスリートレストランは

ホームページ https://www.u.tsukuba.ac.jp/~s1711833/index.html

インスタグラム https://www.instagram.com/tar_pr_/?hl=ja

ツイッター https://twitter.com/TAR_PR

※メモ

【つくばR8地域活性化プランコンペティション】つくば市がR8(北条、小田、大曾根、吉沼、上郷、栄、谷田部、高見原)を元気にするための地域活性化プランを募集するもの。コンペで採用されたプランに1 件最高200万円の支援金を支給し、提案者に実証事業として取り組んでもらう。

➡筑波大生の活動に関する過去記事はこちら

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

日本人はロボットとの親和性が高い?《看取り医者は見た!》47

【コラム・平野国美】前回、介護ロボットへの私の懐疑的な視点と、友人が自作の「鉄腕アトム」に心を奪われたという対照的な出来事を紹介しました。この現象の背景を探る鍵は、業界紙が報じたドイツ有識者のインタビュー記事に見出せます。 その記事には、ドイツの専門家アルムート・ザトラパ・シル博士による次のような警鐘が記されています。「ロボットがケアについて自律的に判断してしまうと、人間をサポートするどころか、支配してしまうことになりかねません。『人間とは何か』という根本的な問題にも関わってくるでしょう」 この言葉は、私がデモで見た無機質なロボットから感じた「痛々しさ」の正体を的確に示しています。欧米では、ロボットはあくまで人間の作業を代替する「便利な道具」として捉えられており、それゆえに道具が人間を支配することへの警戒心が強いのだと理解できます。 しかし、友人がアトムに感じた「胸がキュンとなった」という、道具に対するものとは思えない感情は、この文脈だけでは説明がつきません。長い時間をかけて完成させたアトムは、スイッチを入れた友人に「やっと、会えたね」と語りかけました。この一言が、友人にとってアトムが単なる「道具」ではなく、幼い頃から物語を共有し、自らの手で組み立てた「魂のこもった存在」であったことを物語っています。 ここに、日本独自のロボット観が隠されていると考えられます。欧米の映画でロボットが悪の兵器として描かれがちなのに対し、日本では『鉄腕アトム』や『鉄人28号』のように、正義の味方、時には人間以上に豊かな感情を持つ存在として描かれてきました。戦後の日本人は、こうしたロボット観に深く親しんできたのです。 これは、業界紙の記事で指摘された「日本人はロボットへの親和性が高い」ことの一つの大きな理由でしょう。さらに驚くべきは、人間同士や人とペットとの絆を深めるホルモン「オキシトシン」が、人間とロボットとの関係においても分泌されることが確認されたという研究です。 道具も含め万物への畏敬の念 私たちが無意識のうちにロボットに「心」や「物語」を求め、そこに絆を見出す。この「心を通わせる」分野こそ、日本人が最も得意とするところかもしれません。 その根底には、日本人の独特の宗教観、すなわちアニミズムがあるのではないかと私は考えるのです。このアニミズムとは、自然や道具を含むあらゆるものに魂や霊が宿るという世界観です。具体的には、山、川、木、風など、数多くの自然や現象に神が宿る「八百万(やおよろず)の神」の考え方が神道の基盤となり、動植物だけでなく道具にまで万物への畏敬の念が深く根付いています。 現代において、この感覚は失われたように見えても、私たちの意識のどこかに今も残っています。それが、単なる道具ではないロボットとの強い親和性を生み出す源泉となっているのかもしれません。最近では、この癒し系ロボットと過ごされる方も出現してきました。(訪問診療医師)

ポルシェセンターつくば 6日 リニューアルオープン

ドイツの自動車メーカー・ポルシェの正規販売店「ポルシェセンターつくば」が6日、つくば市学園の森にリニューアルオープンする。5日には、運営会社でセキショウグループのザルツブルグ・モータース(本社・つくば市)の関正樹社長、ポルシェジャパン(東京都港区)のイモー・ブッシュマン社長ら関係者による開所式が同所で開かれた。 式の中でブッシュマン社長は「ポルシェのみならず、自動車業界そのものが電動化・デジタル化など多くの変化と課題に直面している。ポルシェとして未来に向けて準備を進めている。素晴らしい製品とサービスを提供することで信頼をいただき、自然と科学が共存する筑波研究学園都市で、今後の成長を目指すイノベーターとなっていきたい」と語った。 ポルシェセンターつくばは、2015年にポルシェセンター水戸(ひたちなか市)が移転し、名称を改め開店した。開店10年となる今回のリニューアルでは今年4月から既存の建物の改装工事を行ってきた。 同店は鉄骨造2階建て、敷地面積約8240平方メートル、延床面積約3089平方メートル。約1035平方メートルのショールーム内を「Eパフォーマンス(電動モデル)」「レーシングカー」などコンセプト別に色分けし、最新モデルをはじめ最大10台が展示される。また敷地内には最大150キロワットの出力を持つ電気自動車用急速充電器が引き続き設置され、有料で24時間365日利用できる。店舗奥には新たに168インチ(3840mm×2160mm)の大型LEDモニターが設置され、プロモーション映像などが映される。 ポルシェセンターつくばの栗原裕治店長は「つくばを起点にポルシェブランドの伝統と革新を力強く発信し、持続可能なブランドづくりを実現していきたい」と述べ、ザルツブルグ・モータースの関社長は「世代を超えてポルシェに乗っていただければ」と語った。(柴田大輔)

ハープギター国際イベントで3位 岡田英典さん 6日つくばで演奏披露

米国リトルロックで11月に開催されたハープギターの国際イベントで3位に入賞した取手市在住のミュージシャン、岡田英典さん(59)が6日、つくば市内2カ所で演奏を披露する。岡田さんは「日本でハープギターを弾く人は知っているだけで4~5人しかいないので、ハープギターを広めたい、呼ばれればどこでも行って演奏したい」と話す。 ハープギターは、ギターにハープのような高い音や低い音を出す追加の弦を取り付けた楽器。国際イベントは「ハープギターギャザリング」で、ハープギターの愛好家や演奏家、楽器職人らが集まり、セミナーや演奏会などが催される。23回目の今年は初めてコンテストが実施された。 イベントは米国、ベルギー、オーストラリア、イギリスなどから約100人が参加した。日本からの参加は岡田さん一人。岡田さんは、前から行きたかったイベントで、初めてコンテストが実施されると聞いて「記念受験のつもり」で参加した。また亡き友人のものと岡田さんのハープギターを製作したベルギーの楽器職人も出席すると聞いて、彼の前で演奏したかったという。 3位になった理由について「ハープギターのスーパートレブルという竪琴のような弦の音とテクニックがよかった、印象的だったと参加者らに言われたので、おそらくそこが評価されて3位になったのではないか」と語る。 予選では日本の歌謡曲「秋桜(コスモス)」など、決勝ではビートルズの曲目とアイルランド民謡を演奏した。 20年たって購入 岡田さんは中学2年からギターを弾き、大学生の頃ハープギターを弾きたいと思うようになった。カナダ出身のロックバンドがハープギターを弾いている映像を見たのがきっかけだ。楽器を手に入れたいと思いいろいろな店を訪ねたが、珍しい楽器なので手に入れることができなかった。 40歳になり、たまたま入った楽器店に中古のハープギターが売られているのを見つけ、20年たってようやく購入できた。1902年に作られたもので故障が多く、修理してくれる楽器店もなかなか無かった。 友人の急逝がきっかけ 現在、岡田さんが演奏するハープギターはベルギーの楽器職人が製作した。2018年にハープギター奏者の友人が56歳で急逝したことがきっかけだった。友人は演奏中に倒れ、ハープギターは壊れた。ベルギーの楽器職員が製作したものだった。 その後、友人の妻から「一周忌で弾いてほしい」と頼まれ、岡田さんは友人のハープギターを預かった。修理のためにベルギーの職人とメールで何度もやり取りし、一周忌で演奏、ハープギターを遺族に返した。 メールでやり取りしているうちに自分が演奏したいハープギターのイメージがわき、ベルギーの楽器店に製作を依頼した。完成した岡田さんのハープギターはギター弦6弦、ハープ弦13弦と、低音を出すためにベース弦が8弦張ってある。長さ約1.3メートル、横幅約50センチで、重さは11キロある。 6日はつくば市内2カ所、来年2月1日は土浦で演奏する予定だ。(伊藤悦子) 〈つくば、土浦の岡田さんのコンサート予定〉◆12月6日(土)午後1時~2時、つくば市吾妻1丁目8−10、BiViつくばイベントホールで開催の「もりのうさこ絵本読み聞かせ」で、BGM演奏後、少しソロ演奏する。参加費無料。問い合わせは「音色のまちづくり実行委員会」(メールinfo@chrimachi.art)。◆同日午後6時から、つくば市花室989-4、パブリックハウスf’inn(エフイン)で開催の「冬のヨナヨナ夜長ライブ」に出演。フードとドリンクの注文が必要。問い合わせは電話029-850-6172(同店)◆2026年2月1日(日)午後6時から、土浦市桜町1丁目5-2 桜Ⅰビル1F、土浦LEO’S LIVE BAR(レオズ ライブバー)のライブイベントに出演。岡田さんの出演は午後7時20分から。3500円+1ドリンクの注文が必要。予約はメールleos.livebar@gmaii.comへ。

過ぎたる部分の緩和《続・気軽にSOS》167

【コラム・浅井和幸】「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」は、私が好きな言葉です。もう何十年も好きな言葉トップ10に入り続けています。もちろん、苦しみ悩むことも、こだわり続けて体力の限界まで頑張っていくことを否定しているわけではありません。むしろ、それはそれで推奨するし、尊敬もしています。 しかし、「~過ぎる」ことは、目的を達成すること、喜びを感じることから遠ざかってしまうことにもなりかねません。注意が必要です。 不安で苦しんでいる人は、不安なんてなくなってしまえばよいと考えるでしょう。体の痛みがつらい人は、痛みを感じない体が欲しくなるかもしれません。疲れを感じない体と精神力を得られれば、仕事も勉強もスポーツもうまくいく気がします。 しかし、不安やネガティブな気持ちがあるから、将来起こるかもしれないリスクに備える行動をとれるわけです。貯金をしたり、勉強をしたり、ブレーキをかけたり、保険に入ったり。体の痛みを感じなければ、けがをしているのに動けなくなったり後遺症が残ったりするまで動き続けてしまうかもしれません。 疲れを感じなければ、実際に疲労している心身を休ませず、ある時に突然倒れこむことになるでしょう。 不安もない、体の痛みも疲れも感じない状態で山登りや受験勉強をしたら、休憩をとることを忘れて、むしろ頂上や合格に届かなくなることが考えられます。疲れたら上手に休憩することが、自分が行きたい目的地に近づくひとつのコツになります。 緊張のし過ぎと、リラックスのし過ぎの中間点に程よい緊張があり、それが物事を成すために必要な状態です。緊張がよくない、リラックスがよいという、ゼロか100かの問題ではないのです。休む時はゼロに近いリラックスで、動くときはそれに見合った程よい緊張というイメージでしょうか。 何かこの嫌な習慣がゼロになってほしいという気持ちが浮かんだとしたら、「過ぎた」部分を緩和しようと、言葉だけでも言い直してみることをお勧めします。 公共の福祉に反しない限り… 完全な悪とか善とかも、ほとんど存在しません。格好よく言い切ったり、飛び抜けた表現をしたりすると、刺激的でとても魅力的に感じるでしょう。周りは愚鈍で自分は先を見据えた賢明な人間だと、気持ちよく感じるかもしれません。 カウンセリングでは、思うことも過激な発言もその場限りで、守秘義務があるのでかなり自由です。ですが、カウンセリングルーム内でもそうですが、特にカウンセリングルームの外では行動化はしないようにというのが約束となります。 人は生まれながらにして自由で、行動も言論も自由があるのだというと、素敵に感じます。ですが、限度があるものです。どこが限度かというのはケースバイケースですので難しい問題ですが、「公共の福祉に反しない限り」という表現は便利な言葉ですし、何かしらの指標になるのではないかと思います。(精神保健福祉士)