日曜日, 1月 18, 2026
ホームコラム6年ぶりに常陸大宮で農村歌舞伎《邑から日本を見る》189

6年ぶりに常陸大宮で農村歌舞伎《邑から日本を見る》189

【コラム・先﨑千尋】少し古い話題だが、常陸大宮市で10月25日に行われた「西塩子(にししおご)の回り舞台」を紹介する。

西塩子地区は常陸大宮市にある山間部の小さな里山集落で、戸数は50戸ほど。戸数は減り、高齢化も進む。ここで、江戸時代から地域の娯楽として農閑期の田んぼなどで農村歌舞伎が演じられ、住民らに親しまれてきた。しかし1945年を最後に行われなくなり、道具類は地域の倉などに納められていた。

1991年、当時の大宮町歴史民俗資料館の石井聖子さんらが調査に入り、同地区の組立式舞台が江戸時代後期の文政年間のものと判明した。現存する日本最古の組立式農村歌舞伎舞台で、回り舞台もある本格的な舞台だ。現在は県の有形民俗文化財に指定されている。

舞台は公演後には解体されてしまう。94年に回り舞台保存会が結成された。97年に隣県の歌舞伎伝承者らに指導を仰ぎながら、半世紀ぶりに公演を復活させ、原則3年おきに公演が行われてきた。これまで、定期公演の他に「ふるさと歌舞伎フェスティバル」など多くの催しに出演し、「サントリー地域文化賞」などを受賞している。

前回の公演は2019年。その後、新型コロナウイルスの拡大が活動を直撃した。さらに保存会メンバーの高齢化による担い手不足や資金集めなど課題が重くのしかかり、延期が続いた。

伝統の灯は消えなかった

しかし、地域文化の伝統の灯は消えなかった。「ふるさとの伝統文化をなんとか残さなくては」と、有志の市民や茨城大学の学生らでつくるNPO法人が支援の輪を広げ、6年ぶりの公演再開が決まった。昨年10月には再開を支援するためのシンポジウムも開かれた。クラウドファンディングも実施された。

真竹や木材約500本で組み立てられる舞台は、間口、奥行き20メートル、高さ7メートルで、壮麗なアーチ型が大きな特徴。地元の竹林から竹を切り出し、屋根は「いぼ結び」という独特の結び方を駆使して作られる。今回は、高齢化や人手不足により、建設業者やとび職人の手を借りて約1カ月かけて作られた。学生たちも竹の伐り出しや桟敷席の設営などの手伝いをした。

そうして迎えた公演当日。あいにくの小雨模様だったが、客席は満員。午前10時半から子ども歌舞伎を地元の大宮北小の3~4年生が、常磐津「子宝三番叟」と「白波五人男」の稲瀬川勢揃いの場面を演じた。午後は、友好関係にある栃木県那須烏山市の山あげ保存会芸能部会が歌舞伎舞踊「蛇姫様」を演じ、続いて、市内の常磐津伝承教室で小学生が学んだ常磐津「将門」を披露した。

トリを務めたのは、西塩子地区の若手住民と大宮北小の児童らでつくる地芝居一座「西若座」で、「太功記十段目 尼ヶ崎閑居の場」を演じた。観客から拍手や喝さいが沸き起こり、「おひねり」も飛びかった。

保存会の大貫孝夫会長は「高齢化が進み、復活へなかなかやる気が起きてこなかったが、多くの方々に後押しされ、歩み出せた。地域の宝を残すために今後も続けていきたい」と話している。この取り組みはNHKテレビの「小さな旅」でも、11月30日に「常陸大宮市〝西塩子の回り舞台〞復活に向け奮闘する人々の物語」として全国放映された。(元瓜連町長)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

2 コメント

2 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

サンガイア 7連勝 土浦市民デーを飾る

バレーボールVリーグ男子のつくばユナイテッドSunGAIA(略称サンガイア、本拠地つくば市)は17日、土浦市大岩田の霞ケ浦文化体育会館で埼玉アザレア(本拠地 埼玉県狭山市)と対戦し、セットカウント3-1で勝利した。これでサンガイアはリーグ戦7連勝、通算成績11勝2敗で東地区2位。18日も午後2時から同会場で埼玉と再戦する。 2025-26 Vリーグ男子(東地区)レギュラーシーズン(1月17日、霞ケ浦文化体育会館)サンガイア 3-1 埼玉アザレア25-1825-1922-2525-22 サンガイアは第1セットの立ち上がりからペースを握り、第2セットも序盤の5連続得点によるリードを生かすなど、危なげなく2セットを連取。だが第3セットでは終盤に埼玉の追い上げに遭い、初めてセットを失う。第4セットは中盤まで僅差で追う展開だったが、終盤にサンガイアが逆転し勝利をつかんだ。 「第1、第2セットは自分たちのプレーができた。第3セットは相手のペースに飲まれてミスが増えてしまった。第4セットは自分たちのやるべきことをやろうと話し合い、しっかり勝ちきることができた」とアウトサイドヒッターの畑中大樹。この日は2本のサービスエースを含む12得点を挙げた。 「相手はレシーブが良いチームなので、拾い負けないようにしようと話し合っていた。第3セットもラリーはつくれていたので頑張ってレシーブを上げ、第4セットもラリーから勝ちきることができた」と、同じくアウトサイドヒッターの長谷川直哉。チームトップの19得点を挙げている。 「チームの長所がたくさん出た試合だった。後半は相手も良さを発揮したが引き離されず、伯仲した展開から勝てたことは大きかった」と加藤俊介監督。第3セットで逆転を許したのは、相手がサンガイアの攻撃に慣れてきたことに加え、ローテーションの変更も要因の一つ。前列と後列を入れ替え、相手はサンガイアの守備陣に対し高さのギャップをつくり出してきた。そこでサンガイアはセッターに高さのある森居史和を入れ、攻撃陣にはバックアタックの得意な村松匠を加えるなど、チームの総合力で最終的に埼玉をねじ伏せることができた。 「簡単な試合は一つもないが、チームの状態は非常にいい。今の状態を維持し、コンディションを整えながら冷静に試合に臨んでいけば、おのずと結果はついてくると思う。残り15試合を総力戦で走りきりたい」と、加藤監督は後半戦に向けて意欲を示した。 市内小中学生らがエスコート この日は土浦市民デーとして、市内在住者50組100人が試合に招待され、安藤真理子市長が始球式を務めた。試合前に選手と手をつないで入場するエスコートキッズにも市内在住の小中学生8人が参加、そのうちの一人、大島蒼太さん(荒川沖小5年)は「初めてで緊張したが、選手はみんないい人だった。頑張って勝ってほしい」と感想を話した。 大島さんは昨年11月に初めてサンガイアの試合を観戦、選手たちのサーブの速さやレシーブのうまさに感動し、もっと深く知りたいと思って今回のエスコートキッズに応募した。スポーツは野球やバドミントンを楽しむほか、お母さんに付き添ってママさんバレーの練習にも参加しており、「一つ一つの小技が重要で、うまくなるほど面白い」と、やりがいを感じているという。(池田充雄)

土浦の花火100年の紡ぎ《見上げてごらん!》48

【コラム・小泉裕司】上の写真にあるオフィシャルカレンダー「100周年記念/土浦の花火カレンダー2026」の制作に当たっては、土浦全国花火競技大会実行委員会や土浦市立博物館とともに、私も企画監修に加わった。毎年、大会パンフレットを担当するいなもと印刷(土浦市板谷)のノウハウや熱い思いとコラボして、13枚組の重厚な仕様になった。 このカレンダーの大きな魅力は、彩り豊かな花火写真に眼福を得るにとどまらず、暦をめくりながら100年の歴史が理解できる特別仕様になっている点。歴史書をひも解かずして、競技大会として果たしてきた役割や、数々の名作花火が生まれた背景をめぐりながら、大正時代から連綿と続く花火師たちの誇りと、それを紡いできた先人たちの土浦の花火への思いが伝わればうれしい。 秋元梅峯と山本五十六 1月は、大会のルーツを解説。大会の第1回は1925年、土浦市内の神龍寺住職、秋元梅峯(ばいほう)が霞ケ浦海軍航空隊(場所は今の阿見町)の殉職者慰霊、地域商工業の復興、秋の収穫への感謝を目的とし、私財を投じて霞ケ浦湖畔で開催した花火大会にさかのぼる。慰霊と願いが込められた、意義深い始まりであった。 1924年9月、霞ケ浦海軍航空隊の副長兼教頭として赴任した山本五十六大佐(戦死後元帥)は、隊規律刷新、航空事故防止、殉職者慰霊の3つの施策を行った。「海軍航空隊ものがたり」(阿見町、2014年刊)によると、当時、神龍寺山門のそばに居住していた山本大佐が、懇意になった梅峯和尚に、殉職者慰霊や供養について相談をしたそうだ。 山本大佐の依頼を受けた梅峯和尚は、航空安全と殉職者慰霊のための花火大会を霞ケ浦湖畔の岡本埋立地(現川口運動公園)で開催したと伝えられているが、土浦市立博物館はその事実を確認できていないという。新潟県長岡出身の山本大佐は、日本3大花火の一つと呼ばれる長岡花火を小さいときから見て育ったことからも、「民ファースト」の梅峯和尚の琴線(きんせん)に触れたに違いない。 神龍寺境内に、梅峯和尚の銅像、41名の航空殉職者の名が掘られた供養塔が建立されており、今も、大会前日には神龍寺本堂において、大会関係者の参列の下、慰霊供養が行われている。山本大佐が滞在したと伝わる貸家付近は、当時松林だったようだが、今は土浦花火の発展に貢献した北島義一氏の墓所がある辺りだろうか? 私はこの地を「土浦花火の聖地」と呼んでいる。 未来に伝えたいエピソード 3年前、100周年の区切りとして、大会運営を支えた人々、特に公にされていないエピソードをアーカイブすることについて、某新聞社の協力約束を得て、実行委員会に提案したのだが、2年前に起きた想定外の大会中止に対する批判が高まる中、いつの間にか立ち消えになった。今年1年、カレンダー記事をベースに、未来に伝えたいエピソードを書き留めたい。 このカレンダーは、土浦市内のまちかど蔵「大徳」や「きらら館」で販売されているが、高精細の印刷に耐える上質紙は450gで通常の2倍の重量。壁掛けに注意が必要と思う。本日はこれにて、打ち留めー。年初の5段雷「トン バンバンバンバンバン」(花火鑑賞士、元土浦市副市長)

川口公園で火災 芝生2500㎡焼ける つくば市

17日午前10時53分ごろ、つくば市が管理する同市上郷、川口公園で芝生が燃える火災が発生し、同公園北側の芝生の一部約2500平方メートルが焼けた。消防車6台が出動し、火は午前11時23分に鎮火した。けが人はいないという。 市公園・施設課と市中央消防署豊里分署によると、出火時、公園内に人がいたどうかは不明という。現在、消防署で出火原因などを調査している。 同公園は広さ約5ヘクタールで、小貝川の近くにあり、公園内には三つの池がある。周囲は田んぼや林などに囲まれている。

研究者、経済人、政治家が集い つくばで賀詞交歓会

つくば市商工会主催による「つくば市新春賀詞交歓会」が17日、市内のホテルグランド東雲で開かれ、国や民間研究機関の関係者、市内に支店を置く大手企業や地元企業の関係者、国会・県会・市会議員など約400人が参加した。恒例の賀詞交歓会は昨年まで、市、商工会、研究機関交流協議会、筑波大学の4者共催だったが、今年から商工会の単独主催になった。 今年から商工会が主催 最初にあいさつした桜井姚商工会会長は、研究学園の可能性について「熊本県に半導体工場が集中しているが、これは水の質がよいからと聞いている。市内にある研究機関の技術力を動員すれば、自然と同じぐらいの質の水は人工的にできる。今やつくば市は、世界が必要とする半導体を全部つくれるぐらいの学園都市に育った」と述べ、研究力を駆使した事業地域化構想をぶち上げた。 また、五十嵐立青つくば市長は、主催を商工会に移譲した理由について「行政が主催すると、(ビジネスなど)次につながらず、形式的なところで終わってしまう。これだけ地域の皆さんが集まるところだから、地域経済の糧になる、市の魅力を形にできるような賀詞交歓会にするには、主催者は市でない方がよいのではないかと思い、桜井会長に相談したら『まかせておけ』と引き受けてくれた」と説明した。 立ち話の話題は衆院総選挙 国会議員で開会時から参加したのは、いずれも茨城選挙区の上月良祐、加藤明良、桜井祥子の参院議員3氏だけだった。国光あやの衆院議員(比例)は副外相の仕事で外国訪問のため欠席、青山大人衆院議員(茨城6区)は開会式の途中で駆けつけた。 参加者の間では、総選挙が大方の予想より早まって2月になること、立憲民主党と公明党が一緒になり「中道改革連合」が誕生したこと―など中央政局の話題と、つくば市が入る茨城6区の票の行方に話題が集中、各種情報を基に票読みがなされた。6区では青山氏(立憲)と国光氏(自民)のほか、堀越まき氏(参政)の立候補も確実になっており、桜井議員と一緒に名刺を配る同氏の姿も見られた。 筑波大学長が「2つの約束」 国会議員のあいさつの後、永田恭介筑波大学長は「ここで2つの約束をしておきたい」とし、①つくば市には科学技術の研究所がたくさんあるが、それらが一堂に会して全体でパワーを示すシステムを4月にスタートさせたい、②大学には文学系の学生も体育系の学生もおり、多様な学生たちに参加してもらい、大学としてもつくば地域の未来に貢献したい―と述べた。しかし、新たなシステムの詳細は明らかにしなかった。(坂本栄)