【コラム・坂本栄】前かすみがうら市長の宮嶋さんが提起した土浦市との合併話を機に、隣接市との合併や県南大都市圏の議論が盛んになっています。それらを読むと、発言者の立ち位置の違い、視野の広さ狭さがよく分かります。今回は、本サイトに最近掲載された記事やコラムを紹介しながら、これらの議論を少し整理してみます。
厳粛なデータ、財政力指数
火付け役、宮嶋さんの合併必要論は明快です。記事「合併ムーブの仕掛け人…」(7月28日掲載)の発言を要約すると、①自市の人口構成は若年層が少ないので今後財政運営が厳しくなる、②土浦市も基本的には同じ構造であり合併で両市の潜在性を引き出せる、③両市合併+アルファで50万都市をつくれば県を引っ張るエンジンになる―と、合併が県南活性化の起爆剤になると主張しています。
元水戸市みとの魅力発信(広報)課長の沼田さんは、国依存の地方財政に疑問を投げ、かすみがうら市が土浦市に、そして坂東市が常総市に合併を働きかける動きに注目しています。コラム「…県内市合併の動き…」(7月28日掲載)によると、基準財政需要額に占める基準財政収入の割合(財政力指数)が、かすみがうら市は0.571(2025年度)、坂東市は0.668(同)と、県内市の平均値0.681(同)を下回ります。
国の財政支援がないと自立は大変ということですから、将来展望が悲観的になり、生活仕事圏である隣接市にアプローチする動機がよく理解できます。国が主導した「平成の大合併」は市町村合併で行政コストを下げるのが目的でしたが、今回の両ケースは市の将来を懸念する市内識者の悲鳴の表現であり、こういった動きに真剣さを感じます。
「市民の声を聞く」首長?
しかし、かすみがうらの新市長、金子さんの合併熱量は前任者よりも低いようです。また、土浦の市長、安藤さんの対応も慎重に見えます。記事「合併めぐり土浦市長…」(8月6日掲載)から引用すると、「(あいさつに来た金子さんの発言は)かすみがうら市民の皆さんの声を聞きたい」であり、「(安藤さんの姿勢は)土浦市民の皆さんの考えを聞きたい」だったそうです。
両市長とも「市民の声を聞きたい」と、自分の判断を避けています。自市の現状と将来に関する豊富なデータ、それらを踏まえて打つ多様な対応策―首長にはこういった情報が用意されています。断片的な情報しか持たない市民の声を聞き、市の存続に関わる判断を下すと公言する市長は無責任です。自分の頭で絞り込んだ方向性を市民に問うのが、首長の正しい作法ではないでしょうか。
独自の絵を描ける政令市
大都市圏について、県知事の大井川さんの構想はクリアです。コラム「…大都市圏構想」(7月20日掲載)で引用したように、記者会見では①一定人口規模の都市には利便性が集積する、②自立的に人口を集める規模は最低でも50万人、③茨城の大きな課題の一つは同規模の都市が存在しないこと、④TX延伸を機につくばと土浦が中心となる大都市圏の形成が望ましい、⑤必要ならば政令市(人口要件50万以上)を設けたらよい―と述べています。
しかし、つくば市長の五十嵐さんは、緩やかな大都市圏はすでに存在していると主張し、政令市形成には消極的です。6町村合併で誕生した現市のマネジメントに精一杯で、50万都市を視野に入れる余裕がないのでしょう。また、市民の現状満足度が高いと読み、ポピュリズム「つくばファースト(最優先)」を貫きたいようです。
コラム「…『独立』を考える」(6月15日掲載)で述べたように、私は大都市圏の形成には強い力を持つ政令市が必要と考えています。つくば市も、国による研究学園都市建設、県主導の新鉄道敷設という都市コンセプトがなければ実現しませんでした。つくば市は国と県が整えた基盤の上に存在する「付与された」自治体にすぎず、次のステップを展望するのであれば、新しい「絵」を描ける行政体が必要になります。(経済ジャーナリスト)






最近のコメント