行政が、税金未納者に督促状を送ったり滞納者の財産を差し押さえたり、法令違反による許認可の取り消し処分などを行う際、相手の住所が不明で、督促や聴聞の通知が相手に届かず郵便物が戻ってきてしまった場合、役所の掲示板などに紙の通知文を一定期間掲示することで相手に通知が届いたとみなす「公示送達」という制度がある。つくば市議会12月定例会最終日の19日、「公示送達」方法を見直しインターネットで閲覧できるようにするという二つの条例改正案をめぐって、委員会で賛成者ゼロで否決された条例案が、本会議で賛成多数で可決するという珍事があった。
二つの条例は、地方税法の改正に伴う市税条例の改正案と、行政手続法の改正に伴う行政手続条例の改正案。本会議に先立って詳しく審議された総務文教委員会では、市税条例は賛成少数で否決、行政手続条例は賛成者ゼロで否決された。しかし19日の本会議では一転、いずれも可決された。問われたのは、インターネットに個人や会社の不利益な情報が掲載されることにより、拡散されたり、削除が困難となる懸念に対する歯止めだ。
二つの条例はいずれも、政府のデジタル規制改革推進一括法が2023年6月に公布されたのに伴うもの。これまで役所の掲示板に一定期間掲示されていた公示送達の紙の文書を、インターネットでいつでもどこでも閲覧できるようにするという全国一斉の見直しだ。
市納税課によると市税については、宛て所不明や転居先不明で納税通知書や督促状が相手に届かず市役所に戻ってきてしまい、さらに住民票で転居先を確認したり、近隣の場合は現地調査をしても所在が分からなかったり、外国人の場合は出入国管理庁に開示請求などをしても分からなかった場合などに公示送達し、市役所正面玄関脇の掲示場に、通知内容と対象者の氏名などを掲示する。
2024年度中に個人や会社を公示送達した事例は、市・県民税が161人、固定資産税が34人、軽自動車税が115人だった。徴収回数は年に複数回あることから、国民健康保険税を除く市税に関し計836件の公示送達があり、納税通知書が手元に届かず自ら市役所窓口に税金の支払いに来て、自分が公示送達されていることを知ったケースもあったという。
一方、行政手続条例改正案に関し、許認可の取り消しなどを行うにあたり相手の意見を聞く聴聞手続きについて、過去に公示送達を行ったのは0件という。
二つの条例改正案の施行時期は、市税条例は来年6月末までの地方税法改正に合わせて施行し、行政手続条例は来年5月の行政手続法改正に合わせてそれぞれ施行する。施行後、同市では新たに市のホームページに公示送達が掲載されるほか、市の掲示場にも掲示される。
市ホームページに掲載される中身については、デジタル庁が8月に示した運用指針に基づき、市税についてはこれまで、納税通知や督促などの通知内容と個人名や会社名などを掲示していたものを、改正後は、地方税法第〇条に基づく通知とするなど、法令と個人名や会社名を掲載するほか、個人を検索できないよう画像の状態で掲載するとしている。

10日開かれた総務文教委員会では「地方税法第〇条という掲載でも、条文を調べれば内容が分かってしまう」「(目的外での拡散など)悪用を防ぐ仕組みができていない」「SNSで拡散された事例があるので心配している」「リスク管理が不十分な中で拙速に進めるべきではない」などの意見が相次いだ。
19日の本会議では、条例改正に賛成する議員から「住所や所在が不明であっても不利益処分を受ける可能性がある人に意見を述べる機会があることを伝えるための措置。時代に即した必要な対応」だなどの意見が出た一方、「インターネットで公開すると情報が拡散されることが容易になる。一度拡散された情報は簡単に消すことができない。(目的外の閲覧を)取り締まる仕組みや、プライバシーに配慮した運用はまだ整っていない」などの反対意見が出て、二つの条例改正案いずれも賛成多数で可決された。
委員会で反対し、本会議で賛成した議員の一人は「市執行部から委員会後に説明を聞いたところ、上位法がスタートする時から県も市町村も合わせていかなくてはならないということだった。条例が通らないと市職員の負担が相当重くなったり、支障をきたすということなので本会議では賛成した」と話している。
市納税課は条例施行後の市ホームページでの掲載方法について「国や県の取り組みを参考にしながら検討していきたい」などとしている。(鈴木宏子)






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