【コラム・中尾隆友】外資系金融機関は近年、東京大学や東京科学大学の学生の就職先として非常に人気がある。国内の大手企業と比べて、将来にわたって高額な報酬を得られる可能性が高いからだ。特に投資部門で成功すれば、桁違いの報酬を稼げることは周知の事実だ。しかし、日本で投資関連のスキルを持った人材は少ない。
講師は投資実績がある人を
そこで私は、茨城大学や筑波大学で金融学部や金融学科を設立することが地方創生の起爆剤になると考えている(コラム25参照)。投資で真に求められるのは、幅広い分野の知識を持った上で、多種多様な局面で柔軟に対応できるような人材だ。
日本でも金融学科がある大学が複数あるものの、そういった人材が育てられているのかはなはだ疑問だ。歴史を振り返っても、生粋の学者は投資の分野に向いていないからだ。有為な人材を育てるためには、非常勤でもよいので外部から優秀な講師陣を揃えなければならない。当然ながら優秀な講師陣とは「投資で常に実績を残している人たち」のことだ。
投資という複雑怪奇な世界と対峙(たいじ)するためには、実践的な考え方や対応の仕方を学ぶ必要がある。後付けの解釈が得意な証券会社やシンクタンクのエコノミストは必要ないわけだ。実績を残し続けている講師陣をそろえれば(実は意外に簡単に集められる)、優秀な学生が全国から集まるのは間違いない。その帰結として、有為な人材を多数輩出することも可能になるだろう。
地方を拠点にするバフェット
それが実現できるか否かは、自治体の首長の才覚にかかっている。凡庸な首長ではとても決断できない発想だからだ。
地方創生の観点から、外資系金融機関の拠点を大学の近くに置く一方で大学が人材を供給するという協定を、複数の金融機関と結ぶという案はいかがだろうか。金融の中心地は東京である必要がない。世界一の投資家といわれるウォーレン・バフェットが大成功を収めた理由のひとつに、米国の地方都市オマハ(ネブラスカ州)に住んでいるメリットが挙げられるからだ。
金融の中心地であるウォール街では投機的な情報が氾濫しており、長期的に成長する分野や企業を見分けるには雑音が多すぎる。むしろ、地方都市のほうが適しているのかもしれない。投資に関するスキルは、起業や経営で成功するためにも、地方を発展させるためにも、必要不可欠な要素だ。投資の力を生かす取り組みを、自治体と大学が一体となって進めることを期待したい。(経営アドバイザー)