常総市で式典
2015年9月10日に起きた水害から10年を迎えた常総市で28日、記念式典と水害を考えるシンポジウム「常総水害から10年 水害の記憶を未来へ」が、常総市地域交流センター(豊田城)ホールで開かれた。式典では、水害の記憶を風化させず、安心して暮らしていける社会を築くため、逃げ遅れゼロを目指すーなどの行動宣言が、鬼怒川沿岸の関係6市1町の首長らにより承認された。
主催したのは、国交省下館河川事務所、県と、常総、結城、下妻市など鬼怒川に接する県内6市1町による実行委員会。式典には、神達岳志常総市長ら県市町の首長、地元の国会議員らが登壇した。会場には市民ら1350人余りが足を運んだ。
式典であいさつに立った神達常総市長は「国、県、近隣の市町村も含めて市民と一緒に復旧復興に取り組んできた10年だった。国の緊急対策プロジェクトで600億円を投資しての堤防の整備等、ハード面の整備を進めてきた。それと併せて一番大事な取り組みとして、住民の防災力の向上のため、地域の自主防災組織の活性化に地域と一緒に取り組んだ。防災の取り組みに終わりはないので、しっかり次世代に継承していくために、子どもたちも含めて防災への意識啓発を、共助、自助、公助が連携して取り組んでいきたい」と話した。また今後の治水対策として、大雨により下水道等の排水施設の能力が追いつかず、雨水が排水できなくなり浸水する「内水氾濫」対策が重要だとし、「鬼怒川、小貝川の堤防が決壊せずとも、内水氾濫で水害が起こる気象状況になってきているため、国、県、近隣自治体と連携して進めていきたい」と語った。
大井川和彦知事は「行政、地域住民、企業がそれぞれの役割を認識し、日頃から関係者間の連携を強化し、過去の災害を教訓として想定を超える災害はいつでも起こりうることを念頭に災害に備えることが重要。県として、今後も県民の命と安全を守るため、ハード、ソフトが一体となった流域治水対策に全力で取り組む」と語った。
茨城7区選出の中村勇太衆院議員は「全国各地で甚大な天災が頻発しているが、天災だけでなく、差別やヘイト、分断といった新たな危機に直面する時代となった。これらの危機は一見、全く関係なさそうだが、大切なことは絆を大切にし、人の気持ちを思いやり、力を合わせることが、問題が解決に向かう唯一の方法。水害から10年。改めて家族や近隣住民と深く関わることが大切」だと語った。

シンポジウムでは、旧石下町(現常総市)出身のお笑い芸人で、防災士の資格を取得し「防災芸人」として活動する赤プルさんが、水害時に実際に被災しボートで救助された姉の体験などを踏まえながら、市民目線でできる防災対策について講演した。
パネルディスカッション後半は、河川工学が専門の白川直樹筑波大准教授が進行を務めた。常総市中妻町根新田で、町内会ぐるみで進める防水害活動が防災功労者内閣総理大臣賞を受賞するなど高く評価されてきた同町内会の須賀英雄さんが登壇し、「多くの人が防災は大切だと感じているが、必要物資の備蓄などできていない人は多い。まずは自助の確立が重要。その上で共助は育まれていく」と、一層の防災意識の向上を訴えた。(柴田大輔)

<行動宣言>
- 1.大規模水害に対する逃げ遅れゼロを目指し、防災教育を通じた人材育成を継続し、誰もが水災害リスクを自分ごととして捉え、自らの避難行動につながる取り組みを推進していく。
- 2.災害から人命を守るためには自助・公助とともに、地域住民が協力して助かる共助も重要であり、地域コミュニティを維持・発展させ、より一層の地域防災力の向上に努めていく。
- 3.国・県・市、町はさらなる連携強化のもと、防災体制や防災機能等の向上を図り、住民の命を守るための的確な避難情報発信や支援等に取り組んでいく。
- 4.近年の激甚化・頻発化する水害に対して、行政や企業・住民等、地域全体のあらゆる関係者が協働して水害を軽減させる治水体制、流域治水を推進していく。
- 5.自然環境の保全や地域を生かした魅力ある水辺空間の創出、にぎわいのある街づくりなど、鬼怒川の豊かな水と緑の空間を次世代へ残していく。