サンスイグループ(東郷治久代表、本部・つくば市小野崎)はいろいろな事業を展開している。新しい分野は2018年春に開校した日本語専門学校だが、本部敷地内にある校舎が手狭になり、別の場所に移すことも考えているという。同グループの歴史と現状、生徒が増えている日本語学校を今後どう展開するのか、東郷さんに聞いた。
「ひとつの業種にこだわるな」
サンスイグループは複数の事業で構成されている。本部を置く「つくば山水亭」を核とした飲食事業、筑波山手前にある「わんわんランド」などペット事業、ペット専門学校に日本語学校を加えた学校法人―の3分野だ。
東郷家の事業は、祖父が1919年に常総線水海道駅前に開業した米穀商が始まり(配給制を受け戦後廃業)。常総鉄道の経営にも手を拡げ(のちに京成電鉄が買収)、筑波山神社前にあった旅館山水荘(つくばグランドホテルの前身)も取得。父の代には県内最多の映画館チェーンを経営した(テレビの登場により撤退)。3代目は、飲食事業、ペット事業、学校法人を立ち上げ、神社前のホテルは2023年に米国の投資ファンドへ売却した。
こういった経緯は常陽新聞の記事(2014年6月16日掲載)、本サイトの記事「…米投資会社に譲渡…」(23年8月10日掲載)に詳しい。
「グランドホテルを処分したことで先々代・先代が始めた事業はすべてなくなった。祖父は『ひとつの業種にこだわるな。ひとつ良い時に違うことをやっておけ。9勝6敗でも構わない。商売は失敗してもよい』と常々言い、チャレンジを大事にした。私もこの家訓を胸に刻み、社会経済の変化を読んで新事業を始め、儲からない事業からは撤退した」
日本語学校にはすんなり入れた
1996年に起業した犬の動物園「わんわんランド」の区画には、ペット専門学校、動物病院、老犬介護ホーム、ペット霊園なども併設され、今では猫とも遊べる総合ペットランドになった。これら施設の中で収益の柱になっているのが、2006年に設立したペット専門学校。
「元々ここで働く人に犬について学んでもらう施設があった。それをペットに関心ある人を受け入れる専門学校にしたら大ヒット。発足時16人だった生徒数が今では500人を超える規模になった。これは東京、大阪、名古屋にある類似の専門学校に次いで全国4位。つくば市に何でそんな規模のペット学校があるの?とよく聞かれる」
ここで東郷さんを刺激したのが「ひとつ良い時に違うことをやっておけ」という祖父のビジネス訓。
「ペット専門学校の生徒募集のために高校回りをしていて生徒数の減少を痛感。日本の労働力不足を補うには外国人にも働いてもらう必要がある。そこで時代に合った学校もやろうと日本語学校を立ち上げた。商社で中近東に駐在していた時にアラビア語を勉強させられたこともあり、日本語学校事業にはすんなり入れた」

サンスイグループの日本語学校の定員は県内で最大。開校時40人弱だった生徒数は、今秋にはネパールやミャンマーからの留学生を中心に200人を超える。東郷さんはこれを300~400人規模にしたいという。それには別の場所に新校舎を建てるか、ビル物を買って校舎に改修する必要がある。早晩、市内のどこかに大きな日本語学校が姿を現しそうだ。
【とうごう・はるひさ】1973年、東北大経済卒、三菱商事入社。開発建設・エネルギー分野を担当、中東のシリアやレバノンなどに3年駐在。83年に商事を退社、家業の東郷商店に戻り、90年から社長。現在は「つくば山水亭」「わんわんランド」「つくば文化学園」などを束ねるサンスイグループ代表。水海道市(現常総市)出身、在住。77歳。
【インタビュー後記】東郷さんの事業展開の最初の柱をペット関連(ホップ)とすれば、日本語学校はステップ、日本語学校の拡大充実はジャンプになる。ただ、移転先案や新計画案を聞いていると(これはオフレコ)、3段跳びはジャンプで終わらず、4段目もありそうだ。グループの事業構造はこれからも変わる? (経済ジャーナリスト、坂本栄)