芸術とテクノロジーが融合した作品の数々を展示する「つくばメディアアート・フェスティバル」が1日から、県つくば美術館(つくば市吾妻)で始まった。この中で、つくば市からの委嘱を受けたアートユニット片岡純也さんと岩竹理恵さんの2人が、同市大穂の高エネルギー加速器研究機構(KEK)に滞在して想を練った作品が「つくばサイエンスハッカソン」の取り組みとして初披露されている(4月24日付)。
運動する展示
作品は「KEK曲解模型群」のタイトルで一括展示されている。いずれも回転したり弾き飛ばしたり、波の伝わる運作を繰り返す4つの運動群からなる。個々の作品名はなく、展示期間中、作家による説明や解説もないことから、見るものが思い思いに受け止めてくれればいいという構成だ。
2人は共に筑波大学出身。世界各地をめぐって「アーティスト・イン・レジデンス」の取り組みによる作品を発表してきた。今回は、つくば市の委嘱を受け4月18日から5月16日までの約1カ月間KEKに滞在し、28人もの研究者らに取材し14の施設を見学した。
KEKの細山謙二名誉教授には電気が鉄球を弾き飛ばす実験を見せてもらい、触発された片岡さんがエナメル線を巻いて「フレミング左手の法則」を実地になぞるような作品に仕上げた。岩竹さんは、松原隆彦教授の記した「回転の対称性を扱った数式」を板書のようにトレースして回転するボード上に貼り付け、飛翔する紙飛行機の回転と組み合わせてみせた。
「KEK曲解模型群」は10日まで公開された後、14日から20日まで、大阪・関西万博の内閣府・文部科学省主催の企画展「エンタングル・モーメント[量子・海・宇宙]×芸術」に展示される。
過去最大の出展数
つくばメディアアート・フェスティバルは筑波大学の工学・芸術連携リサーチグループの協力のもと展示する。2014年度にスタートし、隔年開催で7回目を迎える。学内公募により選ばれた学生や大学院生ら若手クリエイターたち20組の作品が展示され、過去最大規模の出展数となった。

そのうちの一人、稲田和巳さんの「観測の部屋」は、つくば駅周辺の音を拾ったり、地図上に移動をトレースしたりして24時間を5分間で再現してみせるアートに仕上げた。
◆つくばメディアアート・フェスティバルは8月1日(金)~11日(月・祝)つくば市吾妻2-8、県つくば美術館で開催。開館時間は午前9時30分から午後5時。最終日は午後1時閉館。4日(月)は休館。入場無料。つくば市主催、筑波大学工学・芸術連携リサーチグループ共催。3日(日)午後には美術館2F講座室で「やってみよう!アートプログラミング」と題して、夏祭りをテーマに4つのワークショップを開催する。詳しくはこちら。