【コラム・岡田富朗】茨城県小美玉市にある「ひょうたん美術館」(同市小岩戸、大和田裕人館長)は、30年ほど前、初代館長の大和田三五郎氏によって開館しました。4500坪(約1.5ヘクタール)という広大な敷地には、60年の歳月をかけて全国から蒐集された瓢箪(ひょうたん)にまつわる美術品が展示されています。
展示品は江戸時代などの古い時代のものだけでも約1万点にのぼり、皿、掛け軸、火鉢、花籠、徳利(とっくり)など、生活文化の中に息づく瓢箪の姿を見ることができます。その図柄をあしらった火鉢は100点以上にもおよび、今なおコレクションは増え続けているそうです。
天井からはたくさんの瓢箪の水筒がつるされており、その壮観な光景に思わず見入ってしまいます。

世界に広がる瓢箪文化
瓢箪は世界最古の栽培植物のひとつで、原産はアフリカ。世界各地へと広まり、容器や食器、装飾品、楽器など、さまざまな形で人々の暮らしに取り入れられてきました。
展示の中には、アフリカの打楽器「バラフォン」を見ることができます。ハワイのフラダンスで用いられる「イプ」も瓢箪を利用して作られた伝統楽器で、楽器製作用に加工前の瓢箪を求めて来館されるお客様もいるそうです。
館内では、加工用の瓢箪から、ランプシェード、スピーカー、現代作家によるオブジェなど、さまざまに姿を変えた瓢箪の作品も展示・販売されています。
無病息災を願う縁起物
古来、瓢箪は「災いを払う縁起物」として広く親しまれてきました。その理由のひとつが、「六つの瓢箪」で「無病(むびょう)息災」という語呂合わせにあります。戦国時代や江戸時代には、兜(かぶと)や鍔(つば)、根付(ねづけ)などの意匠にも瓢箪の図柄や形が多く用いられ、展示されている兜は印象的でした。
また、歴史上の人物にも瓢箪を愛した人は少なくありません。菅原道真公は大宰府の梅の木の下で瓢酒(ひょうしゅ)を楽しんだと伝わりますし、豊臣秀吉の「千成瓢箪」はあまりにも有名です。水戸の藤田東湖も「瓢や瓢…」の詩を残し、その魅力を詠みました。文人の中にも瓢箪を愛した人がいました。富岡鉄斎が愛用した瓢箪も展示されています。
「ふくべ」とも読まれる瓢箪に、昔も今も、人々は「福」を見出してきたのかもしれません。ひょうたん美術館は、そんな「縁起と美のかたち」に出会える場所です。(ブックセンター・キャンパス店主)






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