つくばエクスプレス(TX)を運行する首都圏新都市鉄道の渡辺良社長は31日、つくば市内で記者会見し、沿線自治体などから要望がある東京駅と土浦駅の南北二つの延伸のうち東京駅延伸について、秋以降、東京駅延伸がもつ社会・経済的意義について調査を実施し、機運醸成を図る一助としたいと話した。一方、土浦駅延伸についてはコメントする立場ではないとした。
今年8月に開業20周年を迎えるにあたり策定した「長期ビジョン2050」発表の記者会見の中で明らかにした。東京駅延伸については昨年12月、茨城、千葉、埼玉、東京の沿線11市区による「期成同盟会」(会長・松丸修久守谷市長)が発足し、今年6月、延伸効果の調査などを求める要望が出されたことを受けて、調査を実施するという。
調査内容については①鉄道整備による沿線の地価上昇効果が、東京駅延伸によりさらにどれだけ増えていくのか②東京と交流が増えることで、柏の葉やつくばなど産官学の研究機能がさらにどのような効果をもたらすのか③沿線で進められている持続可能なまちづくりに、さらにどのような効果が出てくるのか④首都直下型地震や自然災害が発生した時、防災機能をもつつくばと直結することで大きな効果を発揮するのかーなどを挙げる。
渡辺社長は「若い世代が、割と短時間で通勤できる沿線に住宅を確保できることによって、首都圏全体の労働環境が整備されることがもつ社会・経済的意義が議論される中で、機運の醸成を図る一助になれば」とし、「東京駅延伸の建設主体、運行主体がどこになるのか何も決まってないが、期成同盟会からの要望に対する答えとして調査を実施したい。鉄道会社としても調査研究は意味のあることで、東京駅延伸の社会・経済的評価を把握したいとする」とする。秋以降、民間シンクタンクなどに委託し、1年ほどかけて調査を実施する方針だ。
土浦駅延伸に対して「コメントする立場にない」としたのに対し、東京駅延伸については延伸効果の調査を実施するとしたことについて渡辺社長は、東京駅延伸は交通政策審議会で位置付けられ、さらに審議会で採算性の評価がされていて、1を超えると費用対効果が得られるとされる費用便益分析(B/C)が1を超えていること、期成同盟会を構成する沿線11市区がもつ同社の株式が5割を超えていることなどを挙げた。
東京駅延伸をめぐっては、国の交通政策審議会が2021年7月、東京駅と臨海副都心を結ぶ「都心部・臨海地域地下鉄構想」を、TXとの接続も含め事業化に向けて検討の深度化を図るべきだとする答申を出し、22年11月には東京都が、同地下鉄構想の事業計画案の発表で、TX延伸との接続を今後検討するとした。
コラボで何世代も住んでもらえるまちづくりへ
首都圏新都市鉄道の「長期ビジョン2050」は、TX20駅の鉄道ネットワークを基盤に、首都圏新都市鉄道と企業、住民、自治体、教育研究機関などが連携を強化して、技術革新を先導したり社会課題を解決するなど社会をリードしていこうという構想。渡辺社長は「沿線の人口は2045年まで増えるといわれているが、成長している時こそ次の手が打てる。沿線では流山市などで何世代にもわたって住んでいただけるような持続可能なまちづくりがされており、一緒にコラボし、沿線全体に広がっていくお手伝いができれば」と語る。(鈴木宏子)