お琴に尺八の14社中
邦楽でいう「三曲」は三味線(三弦)、箏(そう=琴)、尺八-の3種の楽器による音楽の総称。土浦三曲会(柳林順一代表)は25日に土浦市亀城プラザで定期演奏会を開く。50回目を迎えるが、半世紀の間に三曲合同の演奏が聴ける機会は随分と貴重になってしまった。
「無理がきかない」
演奏会には尺八の琴古(きんこ)流5社中と都山(とざん)流1社中、箏の山田流2社中、生田流6社中の合わせて14団体、約40人が出演する。三弦の地歌三味線は箏曲に含まれる。
尺八では、かつて虚無僧装束で演じられた古典の本曲「北国鈴慕」「吾妻の曲」2曲の演奏などがあり、箏曲では江戸時代の古今調子である「春の曲」、現代音楽に属する「平安朝風な舞曲」などの曲目で構成される。生田流で宮城道雄の開いた宮城派に所属する池田孝子社中はクラシックの名曲「パッヘルベルのカノン」に挑む。
定期演奏会は50回目となるが特に記念の企画は予定されていない。代表の柳林順一さん(73)は「40回目のときは土浦市民会館大ホールで盛大に開き、出演を記録した記念誌を発行したが今回は難しい。参加団体も減ってしまったし、出演者の平均年齢も上がってしまい無理がきかない」という。

土浦の自衛隊員が先鞭
土浦三曲会の発足は1974年にさかのぼる。戦後、土浦市右籾には「補給処」と呼ばれた陸上自衛隊霞ケ浦駐屯地が出来、多くの自衛官が移り住んだ。隊員の間では精神修養のためか、尺八の演奏が好まれ、同好の士が集まって複数の社中ができあがっていたという。
その中心人物が安宅筑鳳さん(故人)と橋本竹堂さんで、土浦はじめ阿見や牛久などの筝曲社中に呼び掛けて、76年に1回目の三曲合同演奏会を開くに至ったと伝わる。
芸事の粋を次世代に
1992年の開催では尺八7社中、筝曲⒓社中があったというが、以降の活動は先細り。柳林さんによれば「世代交代で当時のメンバーはすっかり入れ替わった。次の世代交代は望めないほど若い人がいない」のが現状という。
昭和百年、戦後80年。詩吟や長唄など町なかに流れていた邦楽の音は遠くなりにけり。柳林さんは「定年を迎えて尺八でも習おうかと訪ねてくる人はいるが、腹式呼吸が難しくてほとんどが即座にあきらめてしまう。30代、40代に始めると長く続けられる趣味だし、仲間ができ健康づくりにも役立つと思う」と次世代に芸事の粋を聞いてほしいという。(相澤冬樹)
■土浦三曲会 第50回定期演奏会は5月25日(日)午前11時から、土浦市中央2丁目、亀城プラザ文化ホールで開催。入場無料。詳しくは柳林竹栄社中(電話029-842-6355)へ。