漢方薬品メーカー、ツムラ(本社 東京都港区 加藤照和社長)が、阿見町吉原にある同社茨城工場内の医療関係者向け見学施設「ツムラ漢方記念館」を17年ぶりにリニューアルし、22日メディア向けに初公開した。刻んだ生薬を使って模擬調剤を実習できる模擬調剤コーナー「TSUMURA KAMPO LABO(ツムラ漢方ラボ)」などが新設され、実務実習にあたる薬学部の学生らが調剤を体験することができる。
医療学ぶ学生3000人が来訪
同記念館は、ツムラ創業100周年記念事業の一環として1992年に作られた施設。2008年に全面リニューアルした際には、漢方・生薬に特化した世界で唯一の記念館として日本デザイン振興会が主催するグッドデザイン賞の公共空間・土木・景観を受賞している。

延べ床面積1611メートル、2階建ての施設内には、漢方の原料となる生薬や、江戸時代に国内で刊行された中国の古典医学書「傷寒論」「金匱要略」などの歴史的書物、同社で製造する漢方製剤の製造工程や品質管理に関する資料が展示されている。医療を学ぶ学生をはじめ、医療従事者らが関東を中心に毎年3000人ほど訪れているという。
入り口を入ると大きく吹き抜けになった広い空間に、ガラスの筒や小瓶に入った100種以上の生薬が展示されている。風邪に効くとされる葛根(かっこん)湯に使われる「葛根」や、東南アジア原産で独特の清涼感ある香りが特徴の「薄荷(はっか)」、日本特産の多年草でセロリに似た香りを持つ「当帰(とうき)」など植物由来のものから、動物由来の、セミの抜け殻である「蝉退(せんたい)」やカキの殻の「牡蛎(ぼれい)」、鉱物の「石こう」など多岐にわたる生薬を間近に見ることがでる。小瓶に入る生薬はふたを開けて実際に匂いをかぐことができる。

その他、2階にある大型モニターを使った映像やイラスト、写真を通じて同社の歴史や取り組みを知ることができる。記念館の裏側にある「薬草見本園」では栽培される約300種類の薬用植物を間近に見ることができる。
記念館館長の吉田勝明さんは「今回のリニューアルでは漢方薬やツムラの取り組みを、よりわかりやすく楽しみながら伝えることを目的に、体験コーナーなどを用意した。夏休みには、昨年に続いて今年も、小中学生を対象としたイベントを、ウェブ配信と現地見学の両方で行う予定。現地見学では実際に漢方薬や生薬に触れて、においを嗅ぐなど薬草見本園での植物観察を交えた楽しめる体験を企画する。様々な体験を通じて五感で楽しめる施設にしていければ」と話した。

ツムラは1893年創業で、奈良県出身の津村重舎が、東京・日本橋に津村順天堂を開業し、婦人薬である生薬製剤「中将湯」を販売したのが始まり。中将湯は現在も同社で販売されている。医療用漢方製剤における同社の国内シェアは2023年度末時点で84.2%。厚生労働省が認可している医療用漢方製剤148処方のうち、129処方を製造・販売している。従業員数は約4000人で、茨城工場には、研究施設と工場施設を合わせて約1100人が従事している。(柴田大輔)
◆ツムラ漢方記念館は医療関係者向けの施設で、阿見町吉原3586の茨城工場内にある。一般向けにはバーチャル漢方記念館が公開されているほか、夏休みに小中学生向けの見学イベントが開かれる。
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