金曜日, 9月 11, 2026
ホームつくば水草の進化と不思議を紹介 見て、触って、学べる企画展 筑波実験植物園

水草の進化と不思議を紹介 見て、触って、学べる企画展 筑波実験植物園

水面に浮く水草は、なぜ沈まないのか。なぜ、大きさも形も異なる、さまざまな葉があるのか―。水草を見て、触って、その不思議を学べる企画展「水草―水辺を生きる多彩なかたち」が7日、つくば市天久保の国立科学博物館 筑波実験植物園(遊川知久園長)で始まった。会場には、水草を美しく配置した水槽をはじめ、様々な水草を実際に触ることができるタッチプール、顕微鏡をのぞいて小さな水草や食虫植物を観察するコーナーなどが並ぶ。夏休みの子どもたちが、水辺の植物を身近に感じられる展示だ。絶滅危惧種に指定されている希少種や南米アマゾン地方に生育するものなど、同園が栽培、保全する約250種の水草を見ることができる。会期は16日まで。

押して分かる、浮く仕組み

「触ってみてください。ここに空気をためることで、水に浮くことができるんですよ」

展示会場の一つ、研修展示館の入り口に設けられた幅約3メートルのプールで、水面に浮かぶ多年生の水草・ホテイアオイを手に、同園研究員で展示責任者の田中法生さん(56)が話す。

研修展示館前に置かれたプールに浮かぶ水草について説明する田中さん

葉の付け根にある膨らんだ部分を指で押すと、内部に空気をためる空洞があることが分かる。空気をためるものや、水をはじく表面を持つものなど、水面に浮かぶ仕組みは植物によって異なるという。同じプールには複数の種類の水草が浮かんでいる。子どもたちは実際に触りながら、それぞれの硬さや形、浮き方の違いを比べることができる。

世界には約2800種の水草がある。同園は世界の水草の約1割にあたる約160種類、国内種に限っては約5割に当たる約120種を栽培・保全している。

大きさも形もさまざま

同園で水草をテーマにした企画展が開かれるのは2024年以来、2年ぶり。今回は、水草が持つ多様な「かたち」に焦点を当てた。

水草の中には、長さが最大7メートルにもなる細長い葉をつけるものや、直径が2メートルほどになる大きな皿のような葉を持つものがある一方で、一つの植物体がわずか0.5ミリほどしかないものもある。会場には、パイナップルのような硬く鋭い葉が特徴で、その独特な姿から「浮き草の異端児」とも呼ばれるストラティオテスや、同園が日本で初めて長期栽培と開花に成功した「オッテリア・メセンテリウム」、つくば市と協力して市内での自生を確認したクロホシクサなど、希少な水草も間近で観察できる。

研修展示館2階には、絶滅危惧種などの希少種が展示されている

水草は水に「戻った」植物

水草が持つ多彩な形の背景には、水中から陸上へ進出し、再び水辺へ戻ってきた植物の長い歴史がある。植物の祖先は水中で誕生し、およそ5億年前に陸上に進出した。その後、陸上でさまざまな姿に進化した植物の一部が、再び水中や水辺で暮らすようになった。それが現在の水草だという。水草には、バラやイモ、イネなど、陸上で身近に見られる植物の仲間も数多く含まれている。

「陸上植物から水草が誕生した出来事は、進化の歴史の中で一度だけではない」と田中さんは言う。DNAを用いた研究で植物の系統樹をたどると、陸上から水中への進出は、進化の歴史の中で約200回起きたと考えられている。数億年前に水中へ入った植物もあれば、比較的最近になって水辺で暮らすようになったものもあるという。

異なる祖先を持つ植物が別々に水中に進出したため、水草はもともと異なる形を受け継いでいる。一方、祖先が違っていても、同じ水中環境に適応するうちに、似た形になることもある。例えば、水の抵抗を受けにくくするために葉が細くなったり、水中から二酸化炭素などを取り込みやすくするために、葉が細かく枝分かれしたりする。「祖先が違うために形が異なる一方で、同じ環境に適応した結果、形が似ることもある。この二つが組み合わさることで、水草の複雑で多様な形が生まれている」と田中さんは説明する。

日本の水草、約4割が絶滅の危機

展示では、水草を取り巻く厳しい状況も紹介する。日本に生育する約270種の水草のうち、約43%が絶滅の危機にあるとされる。水質の変化や湿地の開発に加え、水田やため池の管理方法が変わったことも、水草が減少する原因になっている。

多くの水草は、かつて川が氾濫する場所に生育していた。堤防の整備などによって氾濫する場所が減ると、水田やため池が水草の新たな生育場所になった。しかし近年は、除草剤の使用や農業の効率化、ため池の利用減少などにより、水草が暮らせる場所が再び減っている。アメリカザリガニなどの外来生物に食べられたり、生育地を荒らされたりする問題も深刻だという。企画展では、茨城県やつくば市内に残る希少な水草を展示し、身近な水辺でも植物の減少が進んでいることを伝える。

まずは水草を好きになって

会場では、顕微鏡を使って食虫植物も観察できる。葉についた小さな袋に餌となる生き物が近づくと、入り口が開き、一瞬で吸い込む。タイミングが合えば、水中の食虫植物が獲物を捕らえる瞬間を見ることができる。また、世界で最も小さな花をつける体長0.5ミリ程のミジンコウキクサの、肉眼では気付きにくい花を拡大映像や模型を手掛かりに探すコーナーもある。

顕微鏡をのぞきながら食虫水草に餌をやることができる

田中さんは水草の魅力について「植物全体の中では少数派だが、形や生き方の多様性はものすごい」と語り、「実際に水草を触ったり、観察したりして、いろいろな水草があることをまず知ってもらいたい。たくさんの水草があることで、水辺の生態系が成り立っている。そんなことにも思いをはせながら、水草を好きになってほしい」と話す。(柴田大輔)

◆同展は、つくば市天久保4-1-1 国立科学博物館 筑波実験植物園で開催。開園時間は午前9時から午後5時、入園は午後4時半まで。入園料は一般320円、高校生以下と65歳以上、障害者などは無料。会期は8月16日(日)まで、会期中は休園日なし。教育棟ではプロのアクアリウム レイアウターによる水草水草が展示されている。

◆15日午後1時半からは、研修展示館3階のセミナー室では、高校生以上を対象とした、田中法生さんによる講座「植物研究最前線『水草のかたちの謎』」が開かれる。定員30人、事前予約制。詳細は、同園ホームページへ。

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho





spot_img

最近のコメント

最新記事

別館宴会場「昴」を大改修 ホテル日航つくば

ホテル日航つくば(つくば市吾妻1丁目)は別館大宴会場「昴(すばる)」の大改修を進めていたが、このほど工事が完了、10日、報道機関などへの内覧会を開いた。天井照明装置、影像音響装置、床カーペットなどが一新され、「幅広い用途に対応できる宴会場として生まれ変わった」(古澤聡総支配人)。改修費は約3億円という。 同ホテルは、1985年開催のつくば科学万博に合わせ、1983年「筑波第一ホテル」として開業。別館は1990年に完成した。その後、ホテルオークラ(本社東京都港区)が運営を引き継ぎ、2001年「オークラフロンティアホテルつくば」に名称を変更。さらに経営権もオークラが継承、同社による日本航空系ホテル買収から10年後の2020年、現ホテル名になった。 筑波山稜線、桜川水面をイメージ 改修は大きく分けると3分野。天井照明は蛍光灯からLEDに換え、明るさを従来の3倍にし、スポット照明に動作性を持たせた。プロジェクターは後方壁面に備え付け(これまではフロアーに設置)、壁面スクリーンも電動操作(同手動操作)にし、音響器機には音質劣化抑制システムを導入した。カーペットは、紫峰・筑波山の稜線、市内を流れる桜川の水面などをイメージできるデザインのものに張り替えた。 古澤総支配人は「3分割可能な大宴会場は約700平方メートルの広さがあり、県南にある宴会場としては最大級。式典、宴会、結婚式などの快適性だけでなく、各種の会議に対応できるよう、照明器具や会議装置の機能性もアップした」と話す。 新装で増収目指す 同社の2025年度の売上高は18億2000万円。今年度は20億円を見込む。収入の半分を占める宿泊部門は外国人観光客を呼び込むことで増収を図り、宴会部門は新装会場の稼働率アップで増収を目指す。さらに、両部門の活性化を飲食部門につなげ、レストラン「セリーナ」、中国料理「桃李」、「常陸牛 山水」などの利用者増も狙う。(坂本栄)

投票時間1時間繰り上げ午後6時まで つくば市選管

つくば市は9日、今後実施される選挙について、投票日当日の投票時間を、これまでの午後7時までから1時間繰り上げて午後6時までとすると発表した。1日開いた市選挙管理委員会(野尻等委員長)で決めた。12月4日告示、13日投開票の県議選から実施される。 繰り上げの理由は、期日前投票を利用する投票者が増加していること、当日投票者の9割が午後6時までに投票を済ませていることなど。市選管事務局によると、昨年9月の知事選での同市の期日前投票の投票率は39%、今年2月の衆院選は54%だった。投票所立会人の従事時間が長時間に及んでいることを懸念する意見も出されたという。 投票日当日の投票開始時間に変更はなく、午前7時から。期日前投票の投票時間も変更はなく、市役所投票所の場合、午前8時30分から午後8時まで。 投票時間が繰り上がるのに伴い、12月の県議選の開票作業は、これまで午後8時20分から開始していたものを、午後8時からに20分繰り上げる予定だという。 公選法は午後8時まで 一方、公職選挙法は投票時間を午前7時から午後8時までと定め、特別の事情があり投票に支障をきたさない場合に限り、4時間以内の範囲内で繰り上げなどを認めている。 つくば市では2012年から、投票時間を法定の午後8時までから1時間繰り上げて午後7時までとしてきた。 県選管によると、今年2月の衆院選では、県内44市町村中、38市町村が午後6時で当日の投票を締め切り、つくば市を含め5市町が午後7時までとしていた。公選法の規定通り県内で唯一、午後8時までだった牛久市は今年度から、当日の投票時間を2時間繰り上げ、午後6時までとすると発表している。12月の県議選の各市町村の投票時間について、県選管はこれから調査する予定だとしている。(鈴木宏子) 【訂正 10日午後1時10分】3段落目、市役所投票所の期日前投票の開始時間は午前9時ではなく8時30分からの誤りでした。

ワイン用ブドウの収穫が最盛期 筑波山麓

筑波山麓で8月末からワイン用ブドウの収穫が始まり、最盛期を迎えている。収穫作業は9月末まで続く。つくば市は2017年に「つくばワイン・フルーツ酒特区」に認定され、現在市内には四つのワイナリーがある。 筑波山麓には、筑波大出身で、ワイナリー「ビーズニーズヴィンヤーズ」(同市神郡)を経営する今村ことよさん(53)のブドウ畑が広がる。今村さんは2015年から栽培を始めた。現在、山麓の沼田地区と臼井地区の2カ所に計約1.5ヘクタールあり、白ブドウのシャルドネ、黒ブドウのシラーなど10品種を栽培している。今村さんは今年6トンの収穫を目指している。 ブドウの栽培からワインの醸造まで今村さんが一人で担っているが、収穫作業は人手が必要になる。初日の8月30日にはSNSの呼び掛けで、ワイン作りを学びたいと、つくば市内や東京都、千葉県などから、50歳代の男女6人が集まり、ボランティアで収穫を手伝った。 ボランティアの6人はこの日、沼田地区のブドウ畑でジュースとして利用するメルローなどの品種を収穫した。今村さんから指導を受けながら、剪定(せんてい)ばさみを用いて、ていねいに収穫していった。千葉県習志野市から参加した公務員、角田圭吾さん(54)は「各地域のブドウ畑でボランティアとして収穫作業に参加している。今村さんの指示は的確で細かくありがたい」と語り、都内から参加した50代の男性は「つくばでワインが出来るのに驚いた。山麓の景色の良いところで作業できるのはうれしい」と話していた。 収穫作業と併せて、今村さんのワイナリーでは9月4日から、今シーズンのワインの仕込みが始まった。八千代町と埼玉県入間市の2軒のブドウ農家も加わり、それぞれ収穫したブドウを持ち込み、ブドウの品種や状態に合わせて、機械でブドウの茎や軸を取り除いたり、圧力をかけてブドウを絞る作業などを実施した。 この日持ち込まれたブドウは、今村さんが700キロ、八千代町のブドウ農家が700キロ、入間の農家が220キロの合計1620キロ。仕込み作業で出た搾りかすは、今村さんが肥料として利用する。2軒のブドウはそれぞれ、今村さんが受託しワインを醸造する。 今村さんは「今年はここ数年に比べて気温が低く、ブドウの色づきも良く、昨年よりも良いブドウが収穫出来そうだと期待している。収穫や仕込みの作業がまだまだ続くが、良いワインになるようにがんばっていきたい」と話している。(榎田智司)

「禍根を残す」「立つ鳥跡を濁す」《ハチドリ暮らし》65

【コラム・山口京子】どうやって始末をつけるのか? どう片づけを考えるのか? 個人であれ、社会であれ、「禍根を残さず」とか「立つ鳥跡を濁さず」という言葉は死語になってしまったのでしょうか? 科学技術が軍事利用、商業利用されるにつけ、「禍根を残す」「跡を濁す」ケースが増えているように思えます。 今、近代西洋科学には、自然を人間の都合で改変してしかるべし―という姿勢があるような気がしてなりません。科学を利用する人間の欲望のなせる業なのでしょうか。科学技術の成果が商品化され、社会がどんどん複雑化しているのに対し、人間の思考は単純化していると感じます。次第にお手上げ状態で生きるのではないか―そんな不安がよぎります。 人間のすることは自然にかなわないと分かった東日本大震災。福島原発事故のその後について、なぜ詳しい報道がされないのでしょうか? 緊急事態宣言が解除されたとは聞きません。福島の第一・第二原発の廃炉処理はどうなっているのか? 廃炉のロードマップ、時間・費用・技術など、素人には分かりません。それでも、廃炉の費用は税金から支出されるのでしょう。 経済破綻を戦争でウヤムヤに? パキスタンやアフガニスタンで医療活動に従事した中村哲さんの本に、こんな言葉がありました。「(国連難民帰還の)机上のプランは事情を知らぬものには説得力があったが、我々にはまるで粗悪なカリカチュアとしてしか映らなかった」と。それは彼の地を見続けた医師の声ですが、廃炉にも当てはまるのではないでしょうか。 事態がどうなっていくのか…。あれだけの大きな被害があり、今も将来も続いていくのに、責任はだれも取っていないような…。日本列島は地震の活動期に入ったと言われます。その上に、いくつの原子力発電所が建っているのか…。いつ大きな地震が来てもおかしくない今、それらを稼働させることは悪夢でしかないのでは? 各国ともども軍事費が膨張していくとなれば、未来はどうなるのでしょう? 国家は経済破綻を戦争でウヤムヤにするかもという声を聞きます。将来世代に重い負担が課せられていくでしょう。大きな負担と危険が隣り合わせの暮らしを押しつけることは、許されないはずなのに…。(消費生活アドバイザー)