【コラム・岡田富朗】国土地理院の歴史は、1869年(明治2)に設立された庶務司戸籍地図掛に起源を持ち、内務省地理局、参謀本部陸地測量部、内務省地理調査所など数々の機関を経て、1960年(昭和35)には現在の「国土地理院」と改称されました。1979年(昭和54)に筑波研究学園都市へ移転し、1996年(平成8)に「地図と測量の科学館」が開館しました。
この施設では、古地図から最新の測量機器まで、視覚的に理解しやすい展示が豊富にあります。地図や測量の世界が、天文学や宇宙、地震、災害などの広い世界といかに密接につながっているかを改めて感じることができ、子どもから大人まで楽しめます。
古地図の展示箇所では、1482年に作成されたプトレマイオスの世界図(複製)や、茨城にゆかりのある長久保赤水の『改正日本輿地路程全図』(複製)が展示されています。赤水は 1717年に茨城県高萩市赤浜の農家に生まれ、20余年の歳月をかけて、伊能忠敬の「伊能図」完成より40年以上前の1779年、日本で初めて経緯線を入れた日本地図『改正日本輿地路程全図』を刊行しました。
江戸後期「伊能図」は秘蔵され、一般の目に触れることはなかった一方で、赤水の地図は版を重ね「赤水図」と呼ばれ、唯一信頼し得る地図の定番として広く普及しました。
赤水の地図の並びには、「伊能図」(複製)や測量器具(複製)も展示されています。江戸時代、忠敬は日本全国を測量して歩き、わが国最初の実測日本地図を作り上げました。その地図は総称して「伊能図」と言われています。『大日本沿海輿地全図』は、1800年から17年にわたる測量により作成された日本全土の地図です。忠敬の没後、1821年に完成し、幕府に上呈されました。

伊能図は江戸時代の地図ですが、明治維新後も、近代測量による地図が整備されるまで、国家の地図作成に利用されました。伊能図完成から200年目を迎えた2021年、企画展が開催されました。その際、国土地理院所蔵の伊能中図(模写)が特別公開されました。
企画展『日本の地形を知ろう―地図から学ぶ―』
国土地理院の特別収蔵庫には、古地図などの貴重な資料約3000点が保管されており、その一部はデジタル化され、「古地図コレクション」としてインターネットで公開されています。 閲覧可能な地図の数は約1500点あり、1600年代初頭~1900年代前半のものがあります。
茨城県には、赤水のほかにも、山村才助、沼尻墨僊、間宮林蔵、鷹見泉石、赤松宗旦など、江戸時代に地理学の発達の上で忘れることのできない業績を残した人物が数多くいました。
今回は国土地理院「地図と測量の科学館」の方にご協力いただき、取材させてもらいました。 3月18日~6月22日、国土地理院で企画展『日本の地形を知ろう―地図から学ぶ―』(入場無料)が開催されます。(ブックセンター・キャンパス店主)